Jonathan Hall 記者による2018-11-29記事「Hybrid War in the Sea of Azov」。
5月16日にロシアは、占領地クリミアとケルチ半島を直結する橋を架けた。
ロシアがアゾフ海からウクライナ艦船を締め出すのは、大蛇が巻き付いて獲物を窒息させようとする戦法に他ならない。
この橋の下を2018-6いらい150隻以上のコンテナ船が通航してアゾフ海の2つの港(マリウポリ、ベルデャンスク)に入ったが、ロシア海軍はいちいち臨検して厭がらせをした。
臨戦は1隻につき24時間以上。これで船主には4000~5000ドルの損が出る。
船舶によるウクライナ商品の輸出の8割がアゾフ海のこの2港を利用するものである。使えなくなればドンバス地区で数千人の失業者が生ずるはずだ。
11-25日の事件。
オデッサからマリウポリへ向かうタグボートを、ウクライナ海軍の砲艇『ベルデャンスク』と『ニコポリ』が護衛してケルチ海峡に入った。
すると海峡南口にてロシア沿岸警備船『ドン』がタグボートにラミング。さらにロシア側はタンカーによって水道を封鎖した。
さらにロシア側は個人携行火器によってウクライナの砲艇2隻を銃撃し、水兵6名を負傷させた。
続いてスペツナズ(特殊部隊)がウクライナの艦船に突入し、合計24名を捕縛した。
続いてロシア軍の2機のジェット戦闘機+2機の軍用ヘリが現れ、騒ぎの背後に露軍がいることを誇示した。
11-26にウクライナ大統領は30日の戒厳令を宣言し、ウクライナ議会はそれを承認した。戒厳令は、ロシアとの国境県、黒海、アゾフ海等で施行される。露軍は地上侵攻作戦発起の兆候を示していた。
ただしポロシェンコがこの大権を利用して独裁を続ける懸念を払拭するべく、議会は来年の大統領選挙の日程を3月31日と確定もした。
ポロシェンコは9-17に、「1997対露友好条約」は無効だと宣言した。
これは、ロシア漁船がアゾフ海のどこに入ってもかまわないとした「1993対露漁業協定」の破棄に結びつく。
また、アゾフ海とケルチ水道は両国により共用され、同時に両国の領有する内海であると確認した「2003対露合意」の破棄にも結びつく。
それは何を意味するのかというと、その後は、アゾフ海の問題は「公海」の問題になり、国連の海洋条約であるUNCLOSが適用されることになる。
※だから、NATOの軍艦がケルチに入ってFONOPしてくれ、という要求もできるようになる。国際海峡となるから。しかし、そもそもウクライナは、最初から「内海」合意などするべきではなかったのである。これは日本への教訓だ。もし露探だらけの日本外務省に対露交渉を進めさせれば、国後島の周辺に国際海峡ではない「領海」「内海」を勝手に設定する二国間合意があっさりとできてしまうだろう。結果、一方的に日本だけが永久にその不自由に手を縛られることとなるのは、竹島、尖閣をめぐる外務当局の既往からして、見えているではないか。主権を切り売りする外務当局の売国奴を許すな!
ケルチ海峡横断橋が開通してちょうど1週間後の5-22に、ロシア系分離工作部隊がタカロフカ市を砲撃した。同市はマウリポリに近いドネツク地方にある。
露軍は、アゾフ海のどこにでも軍隊を上陸させられる。主導権は露軍側にあり、兵数の足りないウクライナ軍はアゾフ海の全沿岸を分厚く防禦することはできない。
ドニエプル河流域からは穀物がシリアへ輸出されているが、意図的な河水操作によって旱魃を起こしてやることもできる。
※この記事に興味を持った人は、拙著『地政学は殺傷力のある武器である』の第4章、それも156ページ以降のスターリングラードの石油地政学上の意味について解説した部分を読み返してくだされば、嬉しい。
次。
ストラテジーペイジの2018-12-3記事。
中共メーカーが発表した小型のヘリコプター型UAV=「テッポウウオ A2」が凄いという。
いまのところ、機関銃で武装したUAVとしては世界最小だそうである。
機関銃のかわりに7kgの荷物を積むこともできる。それを抱えて20km飛行できる。
空荷で偵察ビデオカメラだけの場合、滞空1時間が可能。
ローター径は2m16cm。1軸である。動力は電池。
最大離陸重量が35kg。
中共メーカーは2017年に、120kgまでの荷物を吊るせる垂直離陸型UAVを発売している。「AV500W」という。これなら人間も楽に運べる。
軽量なレーザー誘導式ミサイル×4発と、8000mまで照射できるレーザーデジグネーターと、ビデオカメラも搭載できるようになっている。
中共メーカーが、人間一人を吊り上げられるUAVを発表したのは2011年であった。「V750」といい、ペイロード80kgを達成している。レスキュー用に提案されたのである。
中共がヘルファイアもどきの50kg級の空対地ミサイルを商品化したのが2011年であった。
その半分の軽さ、すなわち8kg級の軽量レーザー誘導ミサイルも中共は作った。レンジが5000m。しかしこちらは輸出が試みられてはいない。
2012年に海自が、中共のフリゲートがヘリ型UAVを発艦させている写真を撮影して公表した。後甲板に3機、映っていた。
これは豪州のメーカー「Schiebel」社製の「S-100」に似ていた。同製品の対外輸出は米国のボーイング社が代行している。
中共は2010年に豪州本社から直接に「S-100」×18機を輸入した。
それを国内でコピーした製品をフリゲートに積んだらしい。
西側から中共に武器を売ることは禁じられている。しかし、警察用なら構わない。この抜け道を、「S-100」も通った。
S-100は、自重が200kg。高度5500mまで上昇できる。
最大速力は220km/時である。
これまでの累積販売機数は200機強と見積もられる。
米国には「MQ-8B ファイアスカウト」という、小型有人ヘリを無人化した1.5トンの本格的な機体がある。アフガニスタンにも持ち込まれた。これは米海軍が、狭いフリゲート艦用として開発した。
陸軍は垂直離着陸にこだわる必要がないので、提案された偵察型の「RQ-8B」をリジェクトした。おびただしい数の固定翼の偵察UAVをすでに有しているのに、なんで滞空時間の短いヘリ型UAVなどを買わなきゃならないんだというのが、米陸軍の見解。
MQ-8B ファイアスカウトのペイロードは272kg(=600ポンド)である。滞空8時間可能。