『武器が語る日本史』の何が新鮮なのか

 本書の取材に関しましてはじつに多くの方々からのご協力を賜りました。
 みなさま、どうも、ありがとうございました。

 以下、本書の特色の一部です。

 多くの戦国論者がおざなりにスルーしてきた山鹿素行のテキストから細かく有益情報を拾ったこと。

 多くの論者が原文を敬遠してきた――たしかにひどい説明力IQの悪さなのだが――
『甲陽軍鑑』から有益情報を拾ったこと。

 それによって、昔から秘密ではなかった「長篠合戦」のシンプルな事実を浮かび上がらせたこと。

 大部なため原文を読み通すだけでも大手間な『太平記』から、「楯」関係の情報をすべて抜き出して情報を整理したこと。 

 同様に『将門記』までさかのぼる著名な軍記物と説話文学にあたっていること。

 次。
 WYATT OLSON 記者による2019-10-24記事「Navy’s underground fuel tanks in Hawaii are impenetrable to attack ? and that’s the problem」。
    ハワイのレッドヒルの地下には米海軍の燃料貯蔵タンク群がある。
 火山性の地盤だが、WWII中に設けられた。2億5000万ガロンの水上艦用重油、潜水艦用軽油、航空機用ガソリンを貯蔵でき、近接したパールハーバーとヒッカム飛行場へ供給できた。

 この施設は1995年に、「米国の歴史的な土工ランドマーク」のひとつに選定されている。

 米海軍としてはこの施設の延命工事をしたいのだが、地下岩盤中に巨大空洞を掘って内側にスチールを張った構造なので、改修といっても重機のアクセスが難しい。

 例によって環境団体は施設の維持に反対している。ホノルルの上水に油脂が混じってしまうだろうという懸念を焚き付けている。

 しかしこの燃料施設は今日でも、ハワイ所在の海軍、空軍、州兵の燃料需要に応えているのだ。
 インド-太平洋域で米軍が作戦するときの、戦略的予備燃料ストックでもある。

 じっさい2014年にはジェット燃料2万7000ガロンが漏れ出した。地勢的に上水施設より高所にあるため、とうぜん汚染が心配された。

 小さな漏れは過去に何度もあった。だから水脈から油脂が検出されている。

 2015年の改修プランでは、タンクを二重張りにしてリークを防ごうとした。

 タンクから取り出すパイプ経路にあるノズルがリーク源になりやすいので、このノズルの数も削減する、と。

 オアフ島の地上に燃料タンクを置いておくと日本軍の攻撃でやられるから地下化しようという話は1930年代にスタートした。

 最初の計画。4基の、30万バレルタンクを、地下に埋める。1基は、長さ1100フィート、幅20フィート。これを横に長く、寝かせて埋めるというものだった。

 場所はレッドヒルに選定された。パールハーバーよりも高所なので、モーターポンプなしで、重力だけでパイプラインの送油圧が得られる。

 縦長のタンク20基を埋めればいい、というデザインは、民間技師のジェームズ・グローデンが考えた。
 こうすることにより、岩盤帯に横長トンネルを掘るよりも工期を短縮できた。切り端の数を増やせるので、人を集めて一斉に工事を進めさせることができる。しかもタンクとタンクの間隔も密集させられる。

 垂直坑をまず丘の嶺から掘り下げる。これが各タンクのセンター軸になる。最底部では、横にシャフトをつなげる。これで全タンクが連結され、給油が合理化される。

 空洞拡張工事の段階では、坑夫たちは、岩をどんどん下へ落とすだけ。いちばん低いところにコンヴェイヤーがあって、岩屑を外へ運び出してくれた。
 この合理的な工法によって、工期も工費も驚くほど節約できた。

 竣工したのは1942-9のこと。それまで3000人近くが24時間、3年間弱、働いた。
 労務者の死者は、17人だけで済んだ。

 完成した20基のタンクは、それぞれが、幅100フィート×高さ250フィートで、10基づつ2列に配置された。タンクの上端は、丘の嶺から100~175フィート、地中にあるのだ。

 ※2016年にわたしが『地政学は殺傷力のある武器である。』(徳間書店)の中でレッドヒルの逸話を紹介するまで、日本語の文献でこれについて教えてくれたものを知らない。米本国ではこの貯蔵施設の情報は1991年に秘密解除されていた。

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 Tyler Rogoway 記者による2019-10-24記事「Coast Guard Cutters Once Carried Harpoon Anti-Ship Missiles And They Could Again」。
     米沿岸警備隊の新鋭の有力な警備船である『レジェンド』級は、57ミリ砲と、1基のファランクス、25ミリ単装ピントル式機関砲などを備える。

 今後、米コーストガード船は、『LCS』化していくだろう。そうするしかない趨勢だ。

 冷戦中、『ハミルトン』級の警備船に、ハープーン対艦ミサイルを搭載した。
 もっとさかのぼると、1960年代に設計された警備船は、駆潜艇にもなるように考えられていた。魚雷や対魚雷デコイを搭載可能だったのである。

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 ストラテジーペイジの2019-10-25記事。
  米陸軍の空挺部隊は、フリーズドライされた血漿のキットを携行することになった。
 別梱包の無菌水に混ぜると、輸血液になる。