パタヤで思った、インド人はよくわからん。そしてマニラで思った、日中はそら衝突するよね/管理人U

1年ほど前、タイのパタヤは晴れていた。
東南アジア最大の歓楽街。

ビーチロードを歩く。
所謂 『立ちんぼ』 が海を背にして何十人も立っている。
いつもの光景。

犯罪被害を恐れて日本人はあまり『立ちんぼ』には声をかけないが、白人はそうではない。インド人も違う。私は海を眺めるため柵に肘をついた。

背後には女の子──20代中盤くらいか?
5人のインド人に囲まれて、その交渉に呆れた顔を返している。
インド人は1バーツ単位で値切ってくると聞いたが、その交渉術に辟易しているのだろうか?
いや、それだけではない。

彼らの交渉を背後に聞きながら、私はまた歩き出した。

パタヤでは必ず立ち寄る、ビアバーが蝟集したエリア。その一つでカウンター越しにビールを受け取る。
イスを回転させて海を臨む。ハイネケンに口をつけた。

声をかけてきた店員に挨拶を返す。
それから、私は尋ねた──「インド人って、沢山の人数で女の子に話しかけて、何がしたいの?」

栗色に染めた髪を肩で揃えた、タイ東北部出身らしい肌の白さ。女の子の瞳が、三日月形に歪んだ──インド人は皆でヤるのが好きだから。

それ、楽しいの?
「女の子は嫌がる」
表情が苦笑に変わり、そう呟いた。

白人でも2人組が立ちんぼに声をかけているのは見かける。
ただ、たいてい片方の男には既に女の子付いていたり、少なくとも今から探すのだろうと思えた。
インド人はそうではない。どう考えても、そうではない。

東南アジア最大の風俗街とはいえ、パタヤには家族連れも多い。
女に溺れた男が、薬に溺れた女がたまにホテルのベランダから落ちてくる街とはいえ、家族旅行を許容する明るさがパタヤにはある。

フェリーに30分も乗っていれば綺麗な海水浴場を擁するラン島もある。
それでも、中国人や白人の家族連れ、韓国人のカップルは目にするが、あまり日本人のファミリーは見かけない。

私は全くタイ通ではないが、それでもパタヤで日本人のプレゼンスが年々低下しているように感じる。
代わりにインド人が増している。水タバコが吸えるビアバーも増えた。
風俗店の看板にはインド人好みの濃いメイクをした女の子が微笑んでいる。

先ほど耳にしたインド人の交渉を思い出して──黒く揺らぐ海にまた目を向けた。
……日印同盟が可能とは思えんな。
壮大な感想を抱いてしまう。しかしね、彼らとは、なんというか、好みが違う気がするんだよ、生き方も女の子の好みも色んなものが。

コルカタのスラムのルポを以前読んだ。あんな地獄を許容する人々が、日本人と気が合うとは信じられん。まあ、だからなんだという話でもあるが。

数か月後、マニラに私はいた。

知人が待ち合わせ場所に指定してきたのは『エドサ・コンプレックス』。
風俗店が集まった、その為だけの施設だ。ただし、店の女の子も利用する食堂がある。

私は食事をしながら知人を待っていた。

長い黒髪、細い身体、明らかに日本人好みの顔をした女の子が私に微笑んで、店のドアの中に吸い込まれていった。

それを追うように、たぶん日本人の2人組が後に続く。だが、ドアから中に入れず、引き返してきた。

目の前を横切った食堂のオバサンに声をかける──「あの店は入れないの?」

「中国人の貸し切り。他の店からも女の子を集めてる」

欲望に正直だねえ。
「チャイナマネーだ。凄いね」──「有難う」
日本語でお礼を加える。
「アリガトー」
オバサンは私に笑顔とカタカナを投げ返して、テーブルに残された皿を片付けた。

店に吸い込まれる女の子を眺めていると──どう考えても日中韓の男が好みそうな女性ばかりだ。
中国人団体の『幹事役』は優秀だと確信した。

ここまで好みが似通ってたら、そりゃあ日中は倶に天を戴けんわな、と苦笑する。

知人からLine。画面を見て嘆息する。
『やっぱりエルミタ地区で呑まないか?』

配車アプリ『Grab』を起動させながら私は椅子から離れた。

車を待ちながら少し考えた。インド人と中国人、二大人口大国。
どちらも欲望に正直。
ああでなければならん、気もする。ああはなれない気も、する。

(管理人U)