SNSに昨日から出回っている。
泥道と草地の境界で1両の宇軍のレオ2が遺棄されている状態。右側の最終(第7)転輪がもげているようだ。泥に半ば埋まっているので、第6転輪は確認ができない(第6転輪も吹き飛んだのかもしれない)。右側履帯は切れている。砲塔バスルの右側面に、内部からめくれたと見られる大破孔。周辺は黒焦げだ。砲塔前半部に損傷は見当たらないが、ドライバーズハッチから焔が上がったのではないかと疑われる、炙られたような変色あり。エンジンルームはあきらかに火災に罹っている。
磁気信管地雷でなかったとすれば、この戦車は、たまたま後進したところで、右側履帯で地雷を踏んだのだろう。
バスル側面には、放射線状の焼け瑕がみられないので、対戦車弾がバスルに側方から当たったとは考えられぬ。
それにしても旧型レオ2の砲塔前面は、わが「90式」とクリソツなので、ひとしお、不気味さが迫ってくる写真だ。もちろん、デザインを後から頂戴したのは日本。「74式」も、試作段階ではほとんど「レオ1」の模倣のようなものだった。
次。
Sofiia Syngaivska 記者による2023-6-30記事「The russian Forces Are Withdrawing From Zaporizhzhia Nuclear Power Plant」。
露軍は段階的に、ザポリッジア原発から立ち退きを開始している模様。
※核物質を搬出しているだとか、爆発音が聞こえたとかいうルーモアも流されたが、続報がないから、西側に通牒した上で粛々と退却していると見られる。この原発から放射能が漏れたならNATOへの攻撃と看做す、という事前の脅かしが効いたと想像していいだろう。
次。
Joseph Menn 記者による2023-6-30記事「Cyberattack knocks out satellite communications for Russian military」。
水曜日に何者かのサイバーアタックが成功したようで、露軍の衛星通信がダウンした。
次。
Marianne LeVine 記者による2023-6-29記事「Mike Pence makes surprise trip to Ukraine」。
マイク・ペンスがウクライナを電撃訪問し、ゼレンスキーに面会した。
次の米国大統領選への出馬を表明しているペンスが、他の共和党の候補者たちとは違うんだというところを行動で示した。
トランプらの他の共和党の立候補者が煮え切らない態度をとっている中、ペンスは、ロシアの侵略者が追い払われるまで、対宇支援が必要だと記者団に力説した。
トランプはプーチンのことを「天才だ」と褒めたものである。ペンスは「私は天才と戦争犯罪者の違いを知っている」と語った。フロリダ知事のロン・デサンティスは、ウクライナ戦争は領土紛争だと失言してマスコミに叩かれるや見解を修正している。ペンスは「私は、領土紛争と侵略戦争の違いを知っている」とも語った。
共和党の2024大統領選挙立候補者のうち、戦時下のウクライナを訪問したのは、ペンスのみである。
ペンスの訪問は2週間前から計画されていたという。※大叛乱進行中の訪問になったかもしれないわけ。その場合は、さぞ劇的な効果が生じただろう。
次。
謹告。
わたくし兵頭二十八は2023年7月1日より、カワサキモータース株式会社(兵庫県明石市)の業務をお手伝いする社外の契約者となりましたので、ここに謹んで皆様にお知らせ申し上げます。
本日以降、KMCの各種新兵器開発企画やマーケティング戦略とクロスしてしまいそうな話柄は、このブログでは避けて通ることが多くなります。どうぞその点、ご諒察のほどを願い上げます。
あわせて、KMCと競業の関係にある他メーカーさんを不必要に利してしまいそうな提案も、向後はいろいろと自粛するでございましょう。
陸上自衛隊の陸士長にすぎなかったOBが、世界的有名企業の助言者になった前例は、多くはないのだろうと想像しております。一層、身を引き締めて参ります。
次。
Eve Sampson and Samuel Granados 記者による2023-6-30記事「Evidence mounts for use of banned mines by Ukrainian forces, rights group says」。
NYCに拠点がある「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」によると、ウクライナ軍は、手のひらサイズの対人地雷を、ロケットを使って、露軍が占領中のウクライナ東部領土に撒布している。
昨年も数千個をバラ撒き、親露派住民が負傷したりしている。
じつはウクライナは1997年の対人地雷禁止条約に署名しているので、この行為は違法だ。ウクライナの外相は、侵略を受けている国としての自衛権だと反論しているが。
地雷は「PFM-1S」で、ソ連が開発した。設計者は、1時間から40時間が経過すると自動で無害になるタイマーがついていると言い張っている。
本体はプラスチックで、蝶の羽様の薄い形状。
中心部にカプセルがあって、液体状の爆薬が37グラム入っている。
11ポンドから55ポンドの踏圧がかかると、轟爆する。破片は3フィートまで毀害力がある。
ロシアは対人地雷禁止条約には署名していない。そしてすくなくも13種類の対人地雷を戦場で使用中だ。
人権団体にいわせると、その条約に加盟していないことは、無差別兵器や無差別な戦術を免責しない。敵軍と住民を区別しない対人地雷を村落周辺に撒いたら、それは昔からある国際法の違反なのだ。
PFM-1Sを撒布する手段はいろいろあるが、宇軍は「ウラガン 9M27K3」という専用のロケット弾を使ったようである。1発飛ばすと、空中から312個のこの地雷を降らせる。
地雷の「無害化機構」はしばしば、機能してくれない。そうなると住民にとっての地雷の脅威は恒久的に残り続ける。
ウクライナは2005年に対人地雷禁止条約を批准し、それから在庫の対人地雷を数百万個、破壊処分したが、2021年時点でもまだ300万個以上、残っていたそうである。
※クリミア侵略を受けた2014年を以て作業を中断したのだろう。
※機雷にしても対戦車地雷にしても対人地雷にしても、戦後の処分がたいへん厄介で、これに悩まない関係者はいないはずだ。タイマー類を使った自動無害化機構は、どれほど設計者が宣伝しようと、綺麗に機能したためしがない。そろそろ発想を変えなくてはいけない。敷設して2年以内に、ウェットな環境であろうとドライな環境であろうと関係なしに、確実にケーシング部分が自然腐朽するような素材を工夫することが、たぶん、唯一の現実的に可能な無差別毀害抑制技法だ。製造出荷時にビニールで真空パックでもしておけば、敷設前には腐朽プロセスはスタートしない。砂漠であれば、虫に食われてしまうような外殻素材としておくのも一法だ。そして将来的には、ロケット弾や野砲の榴弾、迫撃砲弾にも、ケーシングの一部に自然腐朽する「小窓」をしつらえておくようにし、もし不発弾となった場合にも2年以内にその窓に穴があいて水が滲み込み、不意に爆発する危険を長期的に局限してしまえるような弾薬設計技法が確立されることを、併せて望みたい。
次。
Kamil Galeev 記者による2023-6-24記事「What is happening in Russia?」。
ウクライナの東部にいた、まとまった人数のワグネル部隊が、ロシア本土のロストフ市に入った。これは、ホンモノの「叛乱」であった。
ただしこの叛乱は失敗するであろう。理由は、ワグネルの人数が少ないからではなく、ロストフからモスクワまでが遠すぎるからだ。
今のロシアは、モスクワになにもかもが、極度に集中している体制。ゆえに、モスクワ市を制圧できるかどうかで、革命や叛乱の成否も決まる。他はどうでもいいこと。
ワグネルが、重装備を後に残して、身軽な数千人の歩兵だけをモスクワまで移動させることにして、歩兵をトラックに載せたとしても、モスクワまでは1000kmの道のりがある。これを実行しようとすれば幹線道路が渋滞し、そこを空爆されてしまう。
※じっさいには車両用の燃料がネックになったのかと想像される。ロシア正規軍が「カモフ52」を飛ばし、ワグネルの進軍路途上にあるボロネジ市の燃料タンクをみずから空爆して燃やしてしまった判断が、モスクワを救ったのだろう。ワグネルには、幹線にこだわらずに分進合撃する才覚があった。しかし、燃料の当てはなくなった。その先もまた、「カモフ52」が行く先々で、給油設備を先手を打って炎上させるだろうと想像できた。ワグネルがひとにぎりの先遣隊だけをモスクワ南縁に到達させても、そのあとから続々と本隊が追いつかなくては、モスクワの親衛軍は逃げ出しはしない。その後詰めの部隊を動かすに足る燃料はどこからも得られないだろうと、プリゴジンの幕僚には計算できたのだろう。教訓。ワグネルも、ロシア領内の移動には鉄道を使うノウハウを磨いておくべきだった。1列車で数千人を1000km運ぶのはわけもないんだから。そして西側が得た教訓。ロシアと戦争するときは、無人特攻機で燃料貯蔵タンク群をまず焼き払い、鉄道も使わせるな。
プリゴジンはサンクトペテルスブルグのギャングのボスとして、プーチンの出世とともにのしあがった。
しかし、プリゴジンはプーチンの手下ではなかった。ソ連時代、レニングラードで勢力があったロテンベルグ一家の三下であった。ロテンベルグ兄弟は、古美術の密輸商売で儲けていた。あきらかにKGBと裏でつるんでいた。そこでプーチンともつながるのだろう。
プリゴジンは、ロテンベルグ一家の重大犯罪の、真犯人(および黒幕の殿様プーチン)を司法に追及させぬための替え玉になることを命じられて、刑務所に7年間、入った。出所すると、彼は一家から、身代わり服役のじゅうぶんな報酬を得た。それでプリゴジンはレストランを開業することもできたのだ。
レニングラード裏社会の影のボス、プーチンは、1996にクレムリンに地歩を得る。2000年、彼が新ツアーリとなった。自動的に、小物ギャングにすぎなかったプリゴジンは愛顧を受け、廷臣となり、国家的な顔役になりおおせた。
ワグネルの兵隊は社会的に不適応な者たちが刑務所からリクルートされたりしているが、ワグネルの指揮官は、元は皆、有能なプロ軍人である。ただし抑制が効かずに悪事に手を染め、正規軍にはいられなくなってしまったようなハミダシ連中だ。脱線エリートと言ってもいい。そういうのをプーチンが恩赦して刑務所から出してやり、ワグネルが引き取った場合もある。
ワグネルは、カタギの組織内で暴力事件を起こしてしまうような脱線者に、人生のセカンド・チャンスを提供した。
ワグナーは傭兵部隊か? それを言うなら、ロシア軍が、傭兵軍そのものだ。
ウクライナの最前線の塹壕の中にこもっている露兵は、給料のためだけにそこに居る。これを傭兵と言わずになんと呼ぶのだ。
露兵は、政府のプロパガンダを信じていない。そんなものを信じて従軍している露兵なんて一人もいない。彼らは、給料が欲しくて従軍しているのである。悪い侵略をしていることは、皆、承知の上なのだ。
プーチンは、露兵が受け取れる俸給を、非常識なレベルにまで上げた。娑婆でカタギをしていたら、ぜったいに得られない金額。それでみんな、従っているのだ。
金銭報酬というインセンティヴにひかれて、軍事行動をしているうちに、その軍事行動を正当化したいと思うのは人情である。それでいつしか、末端の露兵も、この戦争は正義だと言うようになる。それだけだ。
このインセンティヴには、しかし、「カジノ」と同じ限界がある。ギャンブルにあるていど勝った客は、さっさとそのカネを持って、負傷しないうちに、家へ帰りたい。兵隊は、もし塹壕の中で爆死でもしたら、遺家族がカネを受取れるのかどうか、あやしくなると、疑っている。
入営したさいしょのうちは、月に19万ルーブルという俸給が、ものすごくうれしい。しかし前線で過ごす月日が重なるにつれて、その金額の魅力が逓減して行く。命あっての物種じゃないかと。※しかもキャッシュでは受け取れないと来ればね……。
戦争がすっかり終結するまで、誰も帰郷・除隊はできそうにない。それなのにプーチンは戦争を永続させる気なんだと気付いたなら、露兵たちのモラールがどうして、保たれようか?
究極の精神疲労が、露兵を苛むのだ。
いまやプーチンは、FSBではなく、FSOという大統領の身辺警固隊を頼りにしている。私設ボディガードが巨大化したような新組織だ。
FSOに相当する機関は、ソ連時代にはなかった。だから西側の「ロシア通」は、誰もFSOに着目できない。西側の専門家は、今のロシアのすべてをソ連時代のジャーゴンで解釈しようとする。それしか能がない。ソ連時代にはなかったモノを理解する想像力に欠けているのだ。
ロシアが内戦状態になったとき、プーチンが頼りにできるのは、いまや、FSBではなく、FSO部隊なんだということを、忘れるな。FSOに注目せよ!
次。
Boyko Nikolov 記者による2023-6-29記事「Russia’s UVZ halts all secondary output, begins tank mass production」。
ウラル戦車工場を運営する、国営ロステック社が、広報した。爾後、新品戦車の製作以外の余計な仕事をすべて止める、と。
どうやら、古い戦車の修理の仕事も拒絶する気らしい。
また、この発表が本当なら、ウラル戦車工場では今後、鉄道車両を製造しない。これは重大な決定だ。ロシア経済は鉄道によって維持されているのに、その備品や消耗車両の補充が半減する蓋然性がある。
※ニジニタギル工場でも鉄道車両は製造されているからゼロになるわけではないが、有限の西側製ベアリングをすべて戦車の新造に使う方針が定まったのだとしたら、早晩、ゼロになるだろう。つまりロシア国内での物流の循環が静止へ向かう。
ウラル戦車工場でこれまで開発・製造されていた砲兵関係の装備品は、「Tehmach」という弾薬製造企業の「第9工場」に、拠点を移すであろう。たとえばD-30A榴弾砲。また、125粍戦車砲も、今後はそっちで製造させるという。
自走砲の「Msta-S」の製造は、「Uraltransmash」工場が今後は引き受ける。ウラル戦車工場でこれまで製造していた低床市電客車と、ビルのエレベーター用の油圧機械と巻き上げ機械も、そこへラインを移す。
「2B11」「2C12」のような迫撃砲、海軍の無人の57ミリ砲塔である「バイカル」などは、今後は「Burevestnik中央研究所」で製造させる。
従来ウラル戦車工場で開発していた高張力鋼は、「中央物質研究所(CRIIM)」に開発拠点を集約する。
※軍需工場を「百貨店」式にしていては国家総力戦には不向きで、できるだけ1工場で1製品だけを量産させろ、というのは、WWII中のドイツでシュペーアが早々と到達していた結論だった。今でもロシア人は、ドイツから学ばなければならないのだ。ひょっとするとこの工場再編計画には、ドイツから工作機械を納品している会社の者らによるアドバイスが反映されているかもね。機械の据え付けと保守はドイツ人がやるしかないんだから。
次。
David Axe 記者による2023-6-29記事「The Russians Are Using Their Old T-54 Tanks As Pillboxes, Possibly With A Single Soldier Inside」。
露軍が戦地に持ち出している古いT-54/T-55/T-62は、砲塔内にクルーが1名しか居ない場合があるようだ。一人で装填し、一人で照準し、一人で発射している。
もはや、「省力型移動式野砲トーチカ」と化しているわけだ。
戦線が流動しているあいだはドライバーも別に1名必要だが、戦線が停滞しているうちは、ドライバーは仕事がない。固定砲台と同様だから、砲塔内に1人が居ればよい。
その状態で、もし、緊急に移動が必要になったならば、その砲撃要員が、こんどは操縦席に移ればいい。
完全な「ワンマン戦車」というわけだ。
今年に入って露軍は毎月、150両の戦車を破壊されている。毎月、英国陸軍の戦車隊が全滅を繰り返しているような規模である。
※雑報によると、元ワグネルの男がモルドバへ入国しようとしてモルドバの空港で入管に拒否され、怒って空港警備員の拳銃を奪って発砲。1人を殺して逮捕されたと。
※雑報によると、従来プリゴジンが運営し、米国内世論を分断させるために、米国人になりすました挑発ツイート投稿を大々的に続けてきたネット工作組織「Patriot」が、従業員を全員解雇するプロセスに入っているという。