ウクライナがこういうプロットを一度でも成功させてやれば、以後はロシア官憲は国内のすべての油脂燃料輸送車両の中味チェックを試みるしかなくなり、それは露軍の活動に大きなブレーキをかけるだろう。
さらにその次の段階は、一見ごくふつうの陸送用コンテナの側面に小炸薬で内側から「窓」があき、そこから自爆式ドローンが横方向へ発進するという仕掛けだろう。この段階になれば、もはや「臨検」は物理的に不可能だ。対象荷物があり過ぎて。
複数の報道を整理すると、実行したクォッドコプターは、ウクライナ製。「First Contact」という新興メーカーで、2024年に「Osa」というFPV操縦式の製品を完成していた。風雨の中でも確実に機能するよう、基盤はむき出しにはせず、すべて躯体内に密封している。手投げにはできないので、死重になるのを承知で、脚がとりつけてあったという。ペイロードは3.3㎏という。
準備に1年6ヵ月+9日かかった(すなわち計画策定が2023年11月23日)と説明されているのは、おそらくこの「Osa」の作動信頼性を高めるのに、それだけの改良時間が必要だったのだろう。ロシアのネット内では今回の大損失は「日本海海戦」に譬えられているという。
知らずに雇われた運送会社のトラックドライバーは、携帯電話で指定された場所に停車。するとただちにドローンが、「荷物」の中から飛び立ち始めたという。
チェリャビンスクにて遠距離輸送を委託された荷物は「可搬式ハウス」。その屋根がまず自動的に脱落したという。
「4000ドル」というのは、秘密作戦の拠点のひとつとして借り上げていた、チェリャビンスクの倉庫レンタル料金だった。
ドローンのリモコン操縦は、携帯電話通信網を利用した、いわゆる「LTE」方式で、この方式は、海を挟んだ作戦や、日本近海での洋上戦闘には応用ができないことに注意。かんぜんに陸続きの宇露間だからこそ、シベリアの果てまでだろうと、LTEは可能なのだ。しかも自国の通信網だから、敵としては妨害もかけにくい。巧妙である。
もし「ツポレフ160 ブラックジャック」が全滅していたならどうなったか? プー之介は乱心が昂じて、ウクライナ上空での「EMP」核爆発を命じたかもしれない。
こんかい、アタック・ドローンはぜんぶで117機くらいが準備されたが、そのうち標的を破壊するところまで行けたのは三分の一だけだったという(そこから、戦果「40機」という数値が出てくる)。
トラック荷台から飛び立てなかった機数も相当あるようだ。
教訓は明らかで、1つの大型「陸上空母」からあまり欲張って多数のドローンを放とうと計画するのは、統計学的に、合理的ではないのだ。「母艦」そのものを徹底的に分散して行くのが、現実的な正解であり、これからの方向であろう。
それは、海上でのドローン作戦でも、まったく同じである。1艦1万トンの「無人機空母」よりも、多数艦の「無人機も発進させられます駆潜艇」の方が、敵に対して大きなプレッシャーを強要することが可能なのだ。
次。
星条旗新聞によれば、韓国駐留米軍から中東へ抽出転用される兵員は、たったの200人。
これは、国防総省が、名目的にトランプの意向を尊重したが、トランプの最終目標である、在韓米軍ゼロには協力する気がないことを、ハッキリと示したものだろう。