対米戦の開戦時、ルソン島には「B-17」重爆が35機あったが、日本軍はそのうちの17機を第2日目に地上で破壊した。

 ロイター報によると、6月1日のロシアの4ヵ所の航空基地で破壊されたと確認ができた敵重爆は、10機だけの由。
 それに比べると1941-12-7の真珠湾で破壊された航空機は総計248機に上る(ただしそのうちの「B-17」重爆の喪失機数がなぜか不明)とAIは教えてくれる。別資料によれば、クラークフィールドに最大で26機のB-17が所在していた可能性はあった。

 ともあれ最新戦訓は明らかだ。2025年6月1日のコンテナ・トレーラーから発進させたクォッドコプターの「攻撃隊」の規模が、小さすぎた。1コンテナから一斉に飛ばしてやれる機数をいかにして増やすかが、当面の課題として浮上したように思う。

 これから半年もしないで各国軍は、こぞってその課題にチャレンジする。ぼやぼやしてはいられない。その対策も、今から考えておかなかったら、不覚を取ってしまうだろう。

 まず、露側の「報復」から、予測しておこう。

 一、ウクライナの主要都市内で、民間トラックの荷台からマルチコプターを放散させ、「化学剤」入りの袋を無差別に投下し、すべてウクライナ側の自作自演(ファルス・フラッグ)であると宣伝する。

 二、軍事研究所にて性能強化した病原体を注入済みのネズミを、ウクライナの主要都市とバルト海沿岸諸国の交通結節点にて、民間の運送トラックから大量に放つ。

 三、収穫直前のウクライナの穀物畑に、強風時を狙ってドローンから焼夷剤を散布。ドローン母艦として民間トラックを用いることで、これまた「ファルス・フラッグ」を主張しやすい。(『ギズモード』が6-4記事で紹介している、穀物に有害な真菌株をミシガン大の中国人学生が北米に持ち込んだのではないかという空騒ぎも、参考にできる)。

 それに対して、ウクライナ軍およびNATO軍は、以下のような「進化」を促進する筈。

 一、短期間に多数のクォッドコプターを一斉に放出してしまえる、特製屋根付き・偽装コンテナの設計。そのさいの制約は、ドローン発進直前の「コンパス較正」「加速度センサ較正」「ラジオ・キャリブレーション」などの作業には、静止状態、且つ、電波送受を阻害されぬ環境が必要なことだ。そのためたとえば「鋼製コンテナの底部」からの発進は、相当に難しいだろう。ひとつの手として、数機をまとめて樹脂製パレットに載せ、そのパレットごと昇騰させられる「ゾンデ」を膨らませる方法があるだろう。ガスは水素ボンベから瞬時に送り込む。1000mくらいまで昇騰しながら、攻撃ドローンを1機ずつおもむろにパレットからリリースするようにすれば、地上で気付いた現地人も、もはや手は届かず、阻止しようがない。ゾンデとパレットを一斉に複数(せいぜい3~4セット)、昇騰させてしまうようにしても、特にトラブルは起きまい。上昇中に、しぜんに広い相互間隔が生ずるはずだ。

 二、気球で昇騰させてからクォッドコプターを水平飛行させてやる二段階発進術を洗練すれば、その応用として、水中の無人潜航艇から、次々に特攻ドローンを海面まで浮上させ、そのまま敵艦や敵軍港の襲撃に向かわせる攻撃技法も、現実的になるにちがいない。

 三、リチウム電池全体を「爆薬」の中央部にとりこむようにして、破壊威力の運搬重量に無駄をなくする改善。

 四、モスクワ市内某所の野外駐車場にて、深夜、普通乗用車のフロントのボンネットが自動で開き、その中の、エアフィルターに偽装した「パッケージ」が割れて、内部から1機の爆装クォッドコプターが発進して、FSBビルや戦争指導関連の建物に衝突する。これは1晩に1機で可い。これが連夜、続けば、モスクワには「戒厳令」を敷くしかなくなる。あらゆる活動の中枢が過度に首都に集中し、なおかつ公安系マンパワーの不足に陥っているロシアにとって、多重的な凋落の増速。

 次。
 2025-6-6記事。
 ブリヤンスクにて、宇軍は、露軍の地対地弾道弾、「イスカンデルМ」のラーンチャーを、先制的に破壊した。
 このSSМは、キーウに向けて発射されようとする直前であった。

 ※破壊手段としてドローンを使ったのであれば、大ニュースだ。ATACMSだったら、驚くに値しない。ただし6-1以降は、想像力は飛躍するだろう。もし、敵国内にあらかじめ潜入させて配置している民間車両へ、リモコンでコマンドを与え、そこからドローンを放出させ、敵のSSМの発射部隊を有効に破壊できるようになるとしたら? これはパッシヴな「ミサイル防衛」よりもはるかに安価に、日本の安全を強化するだろう。

 次。
 Bill Sweetman 記者による2025-6-4記事「The Big Question Over Fighter-Like Drones」。
 CCAとは、「collaborative combat aircraft」の略称で、その意味は、有人戦闘機の僚機のように行動してくれる無人戦闘機だ。もちろんAIで基本制御される。

 問題がある。それは簡単な技術ではないし、運用は面倒で、安価にもならないだろう。

 米空軍は早くもそこを察し、そんな夢のようなロボット戦闘機を開発する前に、使い捨ての空対空自爆特攻機のように使い捨てることのできる、より単純で安価なアイテムを模索し始めている。

 豪州空軍は、かれこれ6年間、ボーイング社と、CCAの研究を続けて来た。「MQ-28 ゴースト・バット」という。
 米空軍は、それに遅れて開発をスタートさせた。

 いま、米空軍のCCA候補として、ジェネラル・アトミクス社の「YFQ-42A」と、Anduril 社の「YFQ-44A」がある。どちらも地上テストの段階に達していて、この夏、初飛行するであろう。(この2機を呼ぶ開発コード名は「インクレメント1」=「増分1」である。敵にとっての変数の値を1、増やしてやるという含意か。)
 その仕事。空対空ミサイルを抱えて飛び、有人戦闘機のレーダーで捕捉した敵機に向けて、そのAAMを発射する。

 このコンセプトを支持する勢力は言う。CCAは、有人戦闘機よりも小型であるが、旧来のドローンよりも高速で、急激な機動ができるのだと。
 こいつがあれば、我が軍はいちどに多数のAAMを、敵機に近い多数の位置から、放ってやることができる。敵は対抗不能だと。

 5-8にウェブの講演にて、米空軍の戦力設計部長、Joe Kunkel 少佐は語った。空軍は 1000 機のCCAを買う。2026予算に十分に盛り込み、FYDP=将来年度国防計画 でもこれを重視させる、と。

 少佐とかかわりの深いミッチェル研究所は、昨年、西太平洋でのCCA戦争を想定した兵棋演習を実施した。その前提は2023年の演習である。
 「インクレメント1」は、前に聞いた話だと、過去に実在した最小サイズの有人ジェット戦闘機と同じくらいの大きさだという。

 具体的には、1955初飛行の英国「Folland Gnat(フォランド・ナット)」の寸法が念頭されている。空虚重量2.2トン、MTOW=4.1トン。ターボジェット単発。亜音速。英国では不採用。インドへ輸出され、パキ空軍のF-86をサイドワインダーで撃墜している。そこで気に入られ、90年代までライセンス生産された。

 「ロボ・ナット」と呼びたい。
 問題は、小さい飛行機は、航続距離が短い。少佐は、航続距離は死活的に重要だと認識している。

 米空軍は、ロボ・ナットをまず、加州のBeal空軍基地に大量配備するという。これは対支抑止としてはナンセンスだ。空中受油装置のついていない、航続距離500kmくらいのCCAは、敵国近くの最前線に展開させる必要があるからだ。

 最前線の航空基地は、防護されなくてはならない。その地上勤務者は退屈だ。なにしろ訓練飛行の必要はCCAには無いからだ。

 ミッチェル研究所は想像する。CCA用の滑走路は1200mもあれば十分だから、運用可能基地の数は倍増する。基地防護にあまりこだわる価値はないだろうと。

 米空軍の開発目標は、着陸して燃弾の再補給を受けられる限り、連続60時間、CCAが戦闘を続けてくれること。

 ※MTOW=1.2トンのレシプロ機を、大型トレーラーに収まるサイズの「電磁カタパルト」で射出できるという試算を、すでに国内メーカーが公表している(2025-5-21~23の幕張メッセ DESEI JAPAN 2025)。そのカタパルトを2本直列につなげたなら、CCAの4.1トンはなんとかなるだろう。つまり、わが国のメーカーが、これからの米空軍に是非とも必要な死活的な地上機材を、提供できることになる。これは日本政府が米国政府と交渉するときの、カードに使える。合理的な予算措置が取られることを、私は望む。