イラン側も米国側も、実行し得るのに敢えて実行していないオプションがある。
我々はそこに注目する価値がある。なぜならそのオプションが、水面下で互いの政府を脅かし、互いにエスカレーションを自制させている可能性があるからだ。つまり、今日の国家間の闘争において、「じっさいに効く手」が、そこから浮かび上がる。
放射性同位体「沃素131」を武器に使わないことは、互いに抑止の敷居になっていると思われる。
イランは、NYCのトランプタワーや、フロリダ州の別邸を、この放射線で汚染しようと思えば、可能だろう。その場合、トランプ本人と分わかち難い、象徴的な不動産の評価額は、たちどころにゼロになり、トランプの生きている間に元の価値に戻ることもあるまい。
もちろん米側は同害報復できる。しかし、イランも、これについては同害報復ができるのだ。
IRGC(イラン革命防衛隊)の個人資産が放射線で汚染されても、イランは広いので、政府として、堪えられる。しかしトランプの個人資産が放射線で汚染されることには、トランプ個人は堪えられない。ここには弱点の非対称性がある。
この水面下の脅しが抑止力を発揮しているのならば、どうしてイラン政府が今後、核関連物質を手放すことなど、あり得ようか?
原爆を開発しなくても、「核のゴミ」がそのまま、大国相手の抑止兵器になるのである。すでに、世界中の国家指導者層が、そこに着目しているはずだ。