■ここ数週間分のトピックスと偶懐。

 ※このエッセイは、「water_dog」さまからの有償仕事依頼に応じて、兵頭二十八が書いています。

●有人機、危うし!

 2026-7-2のニュースによりますと、ウクライナ軍が、クリミア半島にある露軍の「サキ空軍基地」の戦闘機バンカーを固定翼UAVで空襲し、Su-30やSu-30SM戦闘機が格納されている5箇所のバンカーの防爆扉に自爆機が命中したそうです。「FP-2」型無人機の弾頭重量は200kgあるという情報もありますので、爆発の衝撃波や、扉裏面のスポーリング剥離片によって、バンカー内の高額な戦闘機は損壊させられた可能性があります。

 どうやら、既存の空軍の資産にとって、ますます難儀な時代がやってきました。レンジが伸びる一方の敵の片道特攻無人機から間合いを取ろうとして、味方の有人機が作戦する航空基地を奥地へ移せば、それら戦闘機が最前線で在空できる時間が、覿面に短くなってしまいます。また、大型の輸送機やAWACS、空中給油機や重爆撃機は、そもそも機体を堅固に囲って守ってくれる、防爆仕様の整備格納庫を、おいそれと建造することができません。

 かたや、2026-6-22の報道によれば、宇軍はストームシャドウ巡航ミサイルを複数、空中から発射して、ヴォロネジにある半導体工場を空襲しました。工場から煙が上がっている写真が出回っています。虎の児のストームシャドウを固め射ちしているということは、よほど、そこは重要な製造ラインが稼働中であったのでしょう。おそらく火災対策も十分だろうと考えられたため、破壊力の小さな無人機ではいかんという高等判断がなされたのでしょう。石油関連施設との、そこは大きな違いです。

●ガソリン・エンジン搭載の片道特攻機を調子にのってバカスカ発射していたら、ガソリン補給が追っつかなくなったでござる。

 『ディフェンス・エクスプレス』の2026-6-27記事が有益です。
 ウクライナ空軍の発表によれば、露軍は5月に、あらゆる種類の長距離UAVを8150機飛ばして来ました。そのうち6割(4900機)は、シャヘド型の「ゲラン2」で、残りの多くは「ガルベラ」だった、とのこと。

 ここから試算ができます。「ゲラン2」の燃料タンク容量は、50kg爆弾搭載型で135リッター。90kg弾頭型で75リッター。その中間をとって、シャヘド型×1機につき105リッターのガソリンが積まれていたと仮定すれば、51万3000リッターのガソリンを、彼らはシャヘドのために使ったわけです。

 これに「ガルベラ」が加わります。「ガルベラ」は、「シャヘド/ゲラン」に先行して飛ばし、宇軍のインターセプターを自らに引き付けることによって、自爆機の突入を成功させようとする、囮機。その燃料タンク容量は10リッターです。したがいまして、彼らは5月の1ヵ月間に、ガルベラのために32000リッターのガソリンを使ったと考えられる。

 なお、6-1~6-26の期間、露軍は各種の長距離無人機を5216機、飛ばして来ました。やはり、その6割が「ゲラン2」。のこりをガルベラだとして5月と同様に試算すれば、彼らは6月には35万リッター以上のガソリンを使いました。

 大量に飛ばす「ディープ・ストライク・ドローン」が、ガソリン内燃機関搭載タイプであった場合、それを発射する基地まで、どうやって大量のガソリンを補給し続けるのかが、軍隊の一大課題となります。
 ここを考えましても、現今、宇軍が、集中してロシア側の石油精製施設、油脂貯蔵施設、油脂輸送手段を狙い撃ちにしている作戦は、幾重にも合理的と申せましょう。

 戦線の露側の後方では、興味深い現象が生じています。ガソリンの配送を、空から目立つタンクローリーで実施しようとすれば、宇軍の特攻UAVにすぐに襲われておしまいです。これを学習した露軍は、民間の乗用車を徴発し、上空からは市民の自動車にしか見えないようにして、その中に、ポリタンクに小分けしたガソリンを満載して、必要な部隊に配送するようになってきたというのです(ドミトロ・シュムリアンスキー記者による2026-6-30記事)。

 しかしこのような偽装は、「闇商売」を容易にもしてしまうでしょう。ロシア国内ではガソリンを、軍需と民需が奪い合っているところです。「闇価格で可いから少しこっちに分けてくれ」と現金を積まれて頼まれたら、配送屋の兵隊は、それを拒めるでしょうか? 誰も見ていないところで、真夜中に、数十リッターだったら?
 同じ現象は、台湾有事の際に、中共本土でも起きるはずです。油脂燃料くらい、軍関係者が闇で横流しして闇金を稼ぎやすい物資は、ありません。油脂タンクの半分を「水」で薄めて、何だかんだと言い逃れてしまう道があると発想する輩が、必ず湧いて出ます。労せずして大金を得られるという誘惑に、中国人は抵抗できるでしょうか。

●わが国の変電所にも「傘」をさしかける必要がありはせぬか?

 2026-6-29夜に宇軍は、クリミア北部の四ヵ所の変電所(マリアニフカ、オレクサンドリフカ、ヴィパスネ、ジャンコイ)を、ファイアポイント社製の片道攻撃UAVを用いて空襲しました。機種は「FP-1」の可能性が大です。
 「FP-1」は、ウイングスパン=6m、MTOW=215kg。ポテンシャルとして2600km先の標的を狙うこともできるそうで、このごろでは、こういう長距離自爆機を「ディープストライクドローン」などとも呼ぶようです。
 滞空7時間可能、巡航速度は140~180km/時、ペイロードは60~120kgだと報じられています。

 ロシアは、兵装として黒鉛フィラメントをバラ撒く仕様の「FP-1/2」を宇軍が使い始めた、と2026-4-7から主張していました。グラファイトの細長い繊維を無数に変電所の上からふりかけてやれば、短絡が起きる。NATOが1999にコソヴォ介入をしたとき、米軍がF-117ステルス機から良導体のグラファイト繊維を詰めたクラスター弾をセルビアの変電所に対して投弾し、国土の7割を停電させたのが、初期成功例です。
 2026-6-29にこの類の特殊兵装が使われのたかどうかは、未だ確認はされていません。

 今日、ロシアの鉄道網は105000kmあり、うち51%が電化区間。変電所攻撃は、貨物列車を完全に止めてやるための作戦だと考えられます。

 ところで2025-4、東海道新幹線の架線を蛇が短絡させたことから、6万人が足止めされています。その前の2022-6には、1匹の蛇が郡山市の変電所に侵入して9800戸の停電をひきおこしました。

 もしどこかの国が、「グラファイトの編み紐」を外皮とする《AIロボット青大将》を開発したなら、潜入工作員たちがいとも簡単に広域テロを実行できてしまう時代になっています。
 グラファイトの長い紐を、最も安価なクォッドコプターで空中曳航して、変電施設のすぐ上から落下させただけでも、同じ停電が起きるでしょう。

 そろそろ、変電所に物理的な「傘」をさしかける対策も、検討すべきかもしれません。爆弾やミサイルを防げなくとも、低速ドローンや、極めて軽量な「紐」くらいは、阻止ができる強度のメッシュ、もしくはグリルが、考えられてよいでしょう。
 ついでにその「傘」の表面に、ペロブスカイト製の太陽光発電膜を貼り付けたっていい筈だ。大規模な変電所は、結構な面積がありますからね。土地の有効活用ですよ。

●ロシア差配の「タンカー/貨物船」が、既に「無人機母艦」として大暗躍中。

 『スターズ・アンド・ストライプス』紙2026-7-2記事が、IISSのリポートの梗概を報じています。
 2024-8以降、累計数百機の各種小型無人機が、NATO加盟国およびアイルランドの空域を我が物顔に違法飛行しているというのです。多くは、ロシアが操るシャドウ・フリートの商船から、夜間に密かに発進している。
 それらの機体は、随時・随意に、民航旅客機の離発着を妨げることができます。
 さらに深刻なのは、オランダにあるフォルケル空軍基地のような、核兵器が展開されている戦略拠点の上空まで、ロシア製ドローンで「制圧」されてしまっているという実態です。米軍はこの基地に、投下型水爆「B-21」を蓄積しており、NATOがロシアに核報復する際には、同基地から飛び立つオランダ人パイロットが、米国製の戦闘攻撃機から「B-21」を投弾する手筈になっているのです。
 フォルケル基地の警備員はそれらドローンに向けて小火器を発射したそうですが、撃墜できなかったという。えらいことになっていたわけです。

 こうした悪質な「偽装商船」を抑圧する方法は、あるでしょうか?
 2026-6-30のブルース・ランドルフ・タイズ記者による記事によりますと、IRGC(イラン革命防衛隊)は、何もホルムズ海峡を通航する商船を撃沈する必要などない。小型高速ボートや無人自爆艇を使って、タンカーや貨物船の、舵やスクリューを小破させるだけで可いのです。
 それで、世界の保険機関、傭船者、金融機関、船主、運航会社、荷主らは、「戦争リスク」を計算できなくなり、計画的な商売の見通しをまったく失ってしまう。そうなれば、事実上、海峡が封鎖されたのと同じことなのです。

 西側諸国の沿岸で悪質な活動に関与する、工作活動が疑わしい商船に対しても、沿岸諸国のコーストガード機関が、舵やスクリューを「尋問」の前に即断で破壊できるように、これからはなって行くのではないかと思います。

●対無人機の、SAMほど高額ではない邀撃手段の開発が、遅れている

 敵があの手この手で送り込んで来る安価な小型ドローンを、その機体価格よりも低廉な手段によって、撃墜することができませんと、国家安全保障の基盤が崩されかねない。そんな時代になっていることに、日本政府は気付くべきです。

 民間の智慧を総動員して、この対策の開発を加速させなくては、もう間に合わないでしょう。

 かつて、ドイツのラインメタル社だけが、「対空戦車」(装軌車体+無人砲塔+エリコン製の中口径自動砲)から発射する「35ミリ径の近接信管付き砲弾」によって低速UAVを撃墜しようとする試みを成功させているように見えました。この35ミリ弾は、特殊タイプですと、1発の値段が、DJIのホビー用クォッドコプターよりも高くなる可能性があります。しかし「シャヘド/ゲラン」より安ければ、それはたとえば発電所の防備用に、頼りにできると考えられる。
 問題は、敵もさる物で、自爆機の飛行エンベロープが終始低空では迎撃され易いから、特攻機の中間コースをH=9000mくらいまでも高くして、突入直前にダイブするプリプログラムに、進化させつつあることです。このシーソー・ゲームは、延々と続くでしょう。

●「ラスト50m」の勝負になってきた

 クォッドコプター型の自爆機に対して、歩兵たちが「自衛」できるようにする手段の開発も、遅れています。世界中で新案が模索されていますが、うまくいっていません。

 ヴラディスラフ・ホメンコ記者による2026-6-23記事によれば、爆薬数kgを抱えている、比較的に強力なマルチコプター型UAVが襲来した場合、歩兵はそれを50m以遠で撃墜しないと、爆発毀害が及んで重傷を負う惧れがあるといいます。
 50m以遠ともなったら、散弾では駄目で、もう、軍用ライフル弾を使うしか、現実的な選択はありません。要するに自動小銃でスキート射撃を試みねばならず、それで空中の小さな目標(それも動的)にダイレクトヒットさせるには、照準システムにAIを組み込むか、「銃弾」をよほど特別なものにするしかないでしょう。
 こうしたアイテムの開発を加速するための、安全な、専用の研究開発施設が、わが国のどこかに、必要です。有志の民間人が、そこを使って自由に実弾試験ができるようにしないといけないでしょう。

 戦場には、もっと小型の自爆型クォッドコプターもやってきます。それらから歩兵が「自衛」するためには「ラスト10m」での阻止でも、有意義だと考えられる。

 この目的に特化した「マイクロ・サブマシンガン」を、開発してはどうでしょうか? 弾丸は、50m飛んだら空中分解して飛散するようにすれば、「流れ弾」による味方の危険も生じないでしょう。

 また、以前にも提案しましたが、小銃のフォーワードグリップに取り付けられる「ゴム式ネット発射装置」を開発するべきです。火薬は使わないアイテムです。民間企業が「有害鳥獣用」として試製すれば可いでしょう。

 さらに、AIをシステム設計にフル活用したならば、空中で自律的にコース修正ができる「ブーメラン」が、実現可能なのではないでしょうか? 手投げによって放り投げると、あとはブーメランが、近傍を飛行中のマルチコプターに衝突するように、じぶんでコースを微修正するのです。

 うつぶせ姿勢をとっている歩兵が、身動きせずに上空一円をくまなく見張れる、後頭部用のCCDカメラとモニター・ゴーグルも必要です。
 やはり、有害鳥獣を駆除するハンターたちの警戒デバイスとして市販が可能ですので、「デュアル・ユース」商品としてその開発投資は素早く確実に回収できることでしょう。

 今日、スマホのカメラに「動体追尾」機能をもたせるソフトウェアをAIに作らせるのは簡単らしい。だったら、その機能と「アイ・セイフ」なレーザー・パルス発生チップとを組み合わせれば、有害鳥獣を全自動で追い払ってくれる「セントリー・ロボット」や、プレデターが肩に取り付けると勝手に脅威に対して《発砲》してくれる例の武器の無害バージョンが、できるはずです。モノづくりが得意な筈の日本の民間工場から、そうした製品が出てこないのは、やはり国の規制がよくないからでしょう。

●EEZ内での調査行為に対して米国では……

 2026-6-15のマルテ・ハンパート記者による記事は、注目しておく価値があります。
 米共和党のマイク・リー上院議員と民主党のジーン・シャヒーン上院議員は、共同で「北極圏安全保障・外交法案」を提出しました。
 中共やロシアの船舶が、米国の排他的経済水域+米国大陸棚で調査活動を行うことを禁止する内容です。
 「科学調査だから無害航行だ」といった強弁を許していると、グレーゾーンの権利侵蝕を意図する中露のような連中に対しては、埒が開きませんのでね。
 実際にこのような法律が成立するのかどうかは、わからないとしか言いようがないですが、超党派で提出されたことで、米国内外に一定のインパクトを与えるでしょう。
 わが国のメジャーな報道機関は、このような米連邦議会の動きを大きく報道することにより、中共に対する抑止効果を生じさせることができるのに、それをしないのですから、情けない話です。

●「もがみ型」が大人気に

 おしまいに、とうとう来たか、というニュースです。
 2026-7-1のブルース・アレン・ラベリング記者による記事は、三菱重工の「もがみ」型の船殻に、米国西海岸の造船所で米国製のVLSや火器管制システムを取り付ければ、ベルトコンベヤー式に米海軍のフリゲート艦陣容を急速増強することができるじゃないか――という提案をしています。

 これまでは、米軍用の軍艦を外国の造船所に発注することは、米国の国内法によって御法度にされて来たのですが、もはやそんなことを言っていられない現実に、米国内の要路者は気付いています。この記事は、おそらくは観測気球で、米国内の利害関係者に電気ショックを与える意味があるのだと私は邪推しています。

 まあ、いくら世界最高度にMHIの建造ラインが合理化されているとはいえ、現状年産2杯の建造ペースを数倍に拡大するためには、「工員の確保」という分厚い壁が、立ちはだかるのではないでしょうか。それに米国内の造船界の「腐敗度」は、なかなか甘いもんじゃないだろうと想像をします。

  ――《令和八年七月四日・記》――