※このエッセイは、「water_dog」さまからの有償仕事依頼に応じて、兵頭二十八が書いています。
●JRの不採算路線は、ことごとく「貸し工業団地(軌条AIユニット用)」にするべきである
JR北海道の「赤字8区間」(=いわゆる黄色線区)も、内外AI企業の《列車式データ工場》向けに、軌条と架線・通信インフラを賃貸するビジネスに転換するのが最善だろう――と、私は思っているのです。ビジネスモデルのひとつが「Bitzero」社。ただし、わが「JR北海道」のポテンシャルは、「Bitzero」社などの比ではないと信じられる。私たちの想像もし難い《レベち》な額の収益を、2年以内に稼ぎ出せるでしょう。
チャールズ・ケネディ記者による2026-6-15記事「AI戦争:マイクロソフト、グーグル、アマゾンが権力を巡って争う理由」が、こんなことを報じていました。
いわく。――米国のAI大手7社が雁首揃えて3月にホワイトハウスで大統領と覚書に署名。各社は、AIプロジェクトに必要な新規電力1メガワットごとによろこんで経費を支払うし、それらに不可欠な送電インフラ代も全額負担しますよ、という内容。そしてそんな中、「Bitzero」という企業が急に注目された。この会社、ノルウェー、フィンランド、ノースダコタ州の安価な電力を、自社所有の送電線インフラを通じてAI企業向けに切り売りできる立場を孜々として構築に努めて来た結果として、今、総給電余裕は1ギガワット以上もあるんだという。殊に北欧では水力発電のコストが低いゆえ、米国企業がそこへ進出してデータセンターを建てれば、1kwhあたり米国内の三分の一の電気代で済むかもしれぬという――。
この「Bitzero」社がいかに先見の明を有していたかは、マイケル・スコット記者による2026-6-25記事「7兆ドル規模のAIブームは勢いを失いつつある」によって承知できます。(そこには、ウィスコンシン州に同社が確保したインフラとやらが、どうも既存の核シェルターを利用するものらしく、300MWの発電も賄えるようになっていると解説されています。ちょっとばかり言い訳させて貰いましょう。『産経新聞』の2026-6-30掲載コラムは、6月上旬に早々と送稿し、6-25に載ると聞かされていたので、この記事情報を反映していないのです。)
状況を単純化しますなら、いくらAI大手が札束を積んでも、新しい発電所は10年しないと運開しないし、新しいデータセンターの立地探しもますます容易ではありません(住民が大反対する)。さらにまた北米の場合は、地元が「後出し」で禁止訴訟や禁止新法・行政命令をかけてくるリスクも限りなく高いと来ています(アラスカ/カナダの各種パイプラインも同様なので、日本企業はそんな建設投資誘致に絶対に乗ってはいけないでしょう)。
たとえば最近シアトル市は、ニューヨーク市に続き、新規のデータセンター建設を1年間、認めないこととしました。どうも、騒音だけでなく、電力や水道を住民から奪うことになると懸念されているようです(ジョン ・マリガン&ニック・マイナー記者による2026-7-6記事「次のAIリスクは技術ではなく、政治だ」)。
北米が、既に、こんな調子なのです。
有限の、発電ポテンシャルを、AIと《その他のすべての分野》とが、奪い合う時代がもう到来しているのです。
どうしても電力の「買い手」側が、足元を見られる。
殊に米国内には、すぐに欲しいだけ発電してくれて、ただちに送電してくれて、しかも住民が反対はしないなどという好条件の適地は、もうなくなりました。おかげで、立ち上げれば儲かるとわかっているデータセンターの新設に、ブレーキがかかっているのです。
電力と水は有限。
かたや、AI産業は当分、そこにカネを突っ込めば突っ込むほど、企業の儲けが無限に弾撥的に増えて行きそうな気配。
つまり、今、AI企業が安心できるような、電力インフラ貸出しビジネスをどこかで始めることができる者は、真の売り手スキームを手にできるはずです。場所がノルウェーだろうと北海道だろうと、AI企業側は、インフラの貸し手の「言い値」で電力を買うしかなく、それでも、儲かるのです。
JR北海道は、今、有料でのレンタルが可能な、電力網・冷却水・データセンターキャンパス等のインフラを、豊富に抱えているじゃありませんか。それが「赤字8区間」です。これを世界の名だたるAI産業相手に貸し出したら、青天井の稼ぎを目論むことは、夢じゃないですぜ。
●給電インフラをいかにして強化するか
この大きなチャンスを活かすには、今の発送電インフラも改善が必要でしょう。JRの場合、線路に沿って容量の太い送電ケーブルを追加敷設することに、大きな障害はないでしょう。スタートラインから、有利なのです。
自前の送電網が四通八達しているのなら、たとえば北海道の特定の地域の電力を喰ってしまうということもないので、地元との利害対立は生じません。
なおまた、北海道を筆頭に、全国の地方の山の中にはまだ、小規模な水力発電(溜池揚水式を含む)をさせる余地があります。これは、風力や太陽光発電とも結合させやすい。国土がほどほどにコンパクトであるおかげです。
従来、太陽光&風力発電の特質として、電力のピーク需要に対応させにくかったり、発電が連続的でない不利がありましたが、揚水ポンプ付きの溜池式水力発電と接合することで、電力網の安定度は格段に向上するはずです。
北海道内でやたら風力発電しても、その消費地が北海道内には無いじゃないか――といったこれまでのジレンマも、本稿が提案する「軌条AIユニット」ビジネス時代には、解消されるでしょう。
●僻地と中央をつなげる「戦略補給路の多重化」は、北海道の場合、沿岸航路と「100kg級マルチコプター」で担保できる
じつは私(兵頭)は昨年までは、オホーツクの沿海部と苫小牧港や函館港を結ぶ鉄道がなくなってしまうのは、将来の対露戦争を考えたときに面白くない――と考えていました。北辺で戦乱や大災害が起きたとき、「道路」の他に、「鉄道」「空路」「沿岸航路」などのオプションの輸送路が1つ以上あるのと無いのとでは、安心感がまるで違います。
しかし、セルゲイ・ウィッテ(日露戦争前の鉄道エキスパート)が書き残している話を読んだり、JR北海道の貨物線の保守のコストは資材的にも予算的にも人手の上でも甘いものではないことを見聞するうちに、私の考えは変わりました。赤字鉄道を今の調子で維持させようとしても、決してわが国の安全は強化されません。
他方、現実問題として、万一「AI産業」で敗北すれば、わが国の国際競争力は、それこそ、取るに足らぬものに落ちぶれ、外患を招く。円はますます安くなり、石油・ナフサはますます高くなり、その先にある社会は、国内の少子化と相俟って、甚だ暗いものになることでしょう。
「軌条AIユニット」集結地を有料で企業(なかんずく外資)に貸し出すビジネスは、副次的効果として、北海道の人口減趨勢も逆転させ、海外からの投資のおかげで円は高くなって、僻地のJR沿線には新しい村が無数に簇生し、しかも、赤字であったはずの線路は、臨時の低速コンテナ列車専用線として、一夜にして盤石の黒字化し、いつまでもそこに残ってくれる。それが、経営的にも十分合理的に可能になるのです。
どのくらいの収入が考えられるでしょうか? グーグル級のAI企業なら、1箇所の新しいデータセンターの建設のために110億ドルくらいポンと出します。
また、Bitzero 社がシンガポールの OneQode 社に対して、ノルウェーのデータセンターに15年間、110MWを供給するとしたその見返り額は、26億ドルだと報道されています。
比較しまして、JR北海道の2026年3月期の営業損(赤字)は、408億円=2億5000万ドルでした。もう、そろばんはいらないですよね?
●安心してください。線路はそっくり残りますよ。ほぼ永遠に・・・
「黄色線区」のあちこちを、「軌条AIユニット」集結地用として大手AI企業に貸し出すようになっても、それは「廃線」を意味しません。線路は、いささかも撤去されず、そのまま残るのです。それどころか、むしろ、集結地付近の「引き込み線」などの線路が、増設されることになるでしょう。新しい「駅」や「駅前」が誕生し、拡大する蓋然性すら見込まれます。
そもそも、コンテナ仕込みの「軌条AIユニット」を現地まで搬入し、あるいは故障ユニットを効率よく交換して整備するためには、既存の線路の上を、コンテナ貨車に低速で行き来してもらわなくては困るわけです。
その走行スピードはずいぶん低速です。ゆえに、線路はちっとも傷みません。保守点検の負担も著しく軽いでしょう。タイトなダイヤを守る、これまでの心労とも無縁です。
旅客用や、高速貨物用としては、その鉄道は「店じまい」。
ですが、「軌条AIユニット」ビジネスが堅調であるかぎりは、線路網が現場までつながっている必要は半永久にあるのです。また、AIデータセンターのための不可欠なインフラである、電力融通ケーブルと、大容量信号ケーブルは、線路網と一体で保守されなくてはならない。
線路は、営業し続けます。
●電力需要は「浮体式発電所」をJRの給電幹線に接続させることによっても満たされる
ジョセフ・トレヴィシック記者による2026-5-24記事「超大型空母USSジェラルド・R・フォードが陸上施設向けの浮体式原子力発電所として機能へ」は、あらためて精読する価値があるでしょう。
陸上の発電所の新設がAI需要の間に合いそうにないならば、用地の問題をパスできる浮体発電所を建造し、沖合からケーブルで給電すればよかろう――という構想の実用性を、米海軍が、核動力空母(加圧水型原子炉により恒常的に発電が可能)を使って実験しようとしているのです。
この記事によりますれば、過去には『レキシントン(CV-2)』が1929年12月から1930年1月にかけて、ワシントン州のタコマへ電力を供給した実績があるそうです。
同艦は「ターボ・イレクトリック」方式と申しまして、まず重油焚きの蒸気タービンによって発電し、それで電気モーターを駆動して、スクリュー軸を回転させていました(メカニカルな減速ギヤを工作したりメンテナンスする大手間が省略できるのが、大メリットだと考えられていました)。いわば、浮かぶ発電所そのものだった。
また1968年から1975年にかけ、WWII中の「リバティ」級の戦時標準型貨物船に10メガワットの原子炉を載せた『Sturgis』が、米国陸軍工兵隊によって運用管理されて、パナマ運河に必要な電力を供給していた、という逸話も、記事は教えてくれています。
1982年には、ハリケーン被害を受けたハワイに、ロサンゼルス級の攻撃型原潜『USSインディアナポリス』を、浮体電源として派遣することが検討されたそうです(実行はされず)。
わが国の場合、たとえばアンモニア火力発電プラントを、浮体の上に建造することが考えられるでしょう。
そうした浮体式のミニ・火力発電所を、北海道のどこかの海岸近くの鉄道線路に併設された電力融通ケーブルに接続すれば、道内の任意の場所に散在する「軌条AIユニット集結地」に、必要な電力を安定供給できるでしょう。
●ならば釧路からの水産物移送は、その先、どうなる?
「黄色線区」が、ふつうの旅客・貨物鉄道としては廃業だとなりますと、たとえば釧路漁港に水揚げされた水産物を、札幌や本州へ運ぶためには、爾後は全く、鉄道以外の手段を講ずるしかなくなります。
ここでわたしたちは、大きな見方をする必要があるでしょう。
「軌条AIユニット集結地」は、必ず、付近に人家や牧場の無い、騒音苦情と縁の遠い場所が選ばれます。太い電力線と通信線が、軌条に併設されますので、その立地は、どんな山間僻地に分散させても可いのです。
そのかわり、軌条AIユニットの保守作業員たちが寝起きする場所が、その近くには必要になる。新しい「村」が、あちこちにできるでしょう。
トンネル内をAIコンテナの集結地としたところでは、トンネルの出口を中心に、「トンネル城下町」ができるでしょう。
それらはとりもなおさず、あたらしい消費地です。
鉄道コンテナを使ったAIデータセンター向けにJR線路を貸し出す新しいビジネスが拡大すれば、北海道の人口は再び増え始め、これまで過疎地でしかなかったあちこちに、物資や商品の新しい買い手が現れる。その明るい未来に、漁港も「地産地消」を旨として対応すべきです。
●潮流や潮汐を利用する発電システムの開発は、諦めてはいけない
ここ数ヵ月間のホルムズ海峡事変を契機としまして、他の国だったらいざしらず、わが国は、なんとしてもエネルギーのアウタルキー(=一国家が必要なエネルギーを完全に自給自足できる、安心な状態)を追求しなくてはならず、それが如何に難題であろうとも、それを目指す努力を日本人が放棄することは、とてつもなく危ういんだ、というコンセンサスが、できあがったのではないでしょうか?
日本は群島国家です。その電力源として、間欠性・断続性が無い「潮流発電」は、ポテンシャルとして、理想的でしょう。
それが至難のチャレンジであることは、今まで潮汐発電や潮流発電を実用化した企業が世界に一つもないことから、素人にも想像はつきます。しかし、日本人はそれをあきらめてはいかん。
「潮流発電」をベース電源とし、溜池揚水を活用する新水力発電を予備マージンに充てることができれば、大概のAI電力需要にも、有利に応ずることができるでしょう。
北米ではまちがいなく石炭火発がリバイバルするでしょうが、日本国は、欧州の偽善屋どもからバッシングされないように、その動きは慎重にしなくてはなりません。
とりあえず、廃トンネルなどを利用した、地下の大きなスペース内に、豪州産の優秀炭を平時から戦略備蓄するようにして、それを、非常時の暖房用や煮炊き用に、寒冷地方の末端消費者たちに対して配給ができるような計画と準備が、あるとよいでしょう。
そのさい、密閉貯蔵庫内の防火の措置として、敢えて二酸化炭素ガスを石炭の隙間に充填するようにするのも、一法ではないかと愚考します。
――《令和八年七月七日・記》――