ガス分留タワーを、新素材の「紐」で守れ

 熊本地震が直撃したパルプ工場で、皆が頑丈だと考えていたRC製の煙突(全長80m)の中央部がポキリと折れてしまい、社員たちが日常的に業務していた有人棟の上にマスが落下して複数人が死傷する大事故となった。煙突は、激震を受け流せる「柔構造」ではなく、しかも長年の酸性高熱ガスの影響によってコンクリート内部の鉄筋腐蝕が進んでいた蓋然性がある。そして有人棟は、この煙突がもし万一倒れて来ても抗堪できるようなシェルター構造には設計されていなかった。これは全国の類似の工場にとっての他山の石だ。

 この惨事を承け、既に多くのメーカーやゼネコンや大学研究室では、さまざまな旧RC煙突耐震補強の方途を考え始めているところだろう。
 だが、このさい、私から別な提案がある。
 誰でも考えるようなありきたりな定評ある工法ではなくて、未来のインフラ防護につながるような新製品開発をしてもらいたいのだ。

 たとえば、メッシュ状の新素材樹脂繊維の編み紐で、あたかも消防出初式の梯子を立てておく長い鳶口のように、八方の地表から高塔を引っぱって、そのテンションによって転倒力に抵抗する「Guy Wires」(支線)。

 これなら、おそらくそのまま、石油蒸留プラントの「分留」塔を、敵の軽量級無人ドローンの直撃から守ってくれる防護ネットとして、転用ができるだろう。

●不法海上リグを爆破する方法の答えが出ました

 ディフェンス・エクスプレスの2026-8-8記事によれば、ウクライナ海軍が黒海の「シヴァシュ」掘削リグを破壊した。同海上リグは、露軍の哨所として用いられていた。

 動画を視ると、複数の無人爆装艇が外縁の脚部を攻撃し、前後して、複数のUAVが上構の居住棟に特攻自爆したようである。多数による同時集中攻撃だ。

 これとは別に、宇軍が夜間にロシアの貨物船を特攻ボートで攻撃している動画も出回っているのだが、ものの見事に、船尾のスクリュー軸の付け根をめがけて舳先を突っ込ませている。今日の貨物船は機関室もブリッヂも船尾の真上に集中している。爆装ボートで攻撃するならば、狙い所はそこに尽きるわけだ。

●国際油価を中国がコントロール中

 Andrew Topf記者による2026-7-22記事「LNG供給危機により、買い手は石炭と石油へと向かう」。
 アジアは、カタールやアラブ首長国連邦といった中東の主要生産国からの液化天然ガス(LNG)出荷量の約90%を輸入。一方、ヨーロッパはLNG輸入量の7~11%を同地域から輸入している。
 ICISの計算によると、2月28日に紛争が始まって以来、湾岸地域から出荷できたLNG貨物はわずか26隻にとどまり、通常の月間90~100隻と比べて大幅に減少。
 戦争が始まる前は、世界の石油と天然ガスの約20%がホルムズ海峡を通過していた。バブ・エル・マンデブ海峡は通常、世界の石油生産量の約7%を通過させているいる。
 2026年春、イランは、ラス・ラファンLNGプラントの4号機と6号機、そしてパールGTLプラントの2号機を、ミサイルと無人機で攻撃した。ラス・ラファンの所有者であるカタール・エナジーによれば、修理が済むまで、年に1280万トンあったLNG生産能力が3~5年間停止するだろう、とのこと。
 パールGTL第2を共同所有するカタール・エナジーとシェルは、その修理のために1年間の操業停止が必要だと見込んでいる。

 なお韓国の規制当局は、天然ガスからの転換を促進するため、石炭火力発電の上限規制を撤廃した。
 中国のLNG輸入量も前年比で8%減少しており、同国でもガスから石炭への転換が進んでいると。

 8月上旬、FOXビジネスのアマンダ・マシアス記者が手短に解説している。「今日あなたが車に給油しているガソリンの多くは、1週間半前に精製されたもので、さらにその2ヶ月前に生産されたものです。」

 マシアス記者は、ガソリンよりもむしろディーゼル燃料(軽油)の小売価格に注目しなさい、という。なぜなら、資材や商品を配送し、畑でトラクターを動かしているのは、軽油だからだ。それが物価に連動する。
 米国内で2025年1月には1ガロンあたり平均3.56ドルだったディーゼル燃料の価格は、イラン紛争勃発以来5.13ドルまで上昇しているという。

 ジェイコブ・チャイルドレス記者は、中国は消費する原油の約80%を輸入していたが、そのうち約4分の3はペルシャ湾を経由していたという。
 そしてホルムズ海峡が閉鎖されると、北京は原油輸入を44%以上削減し、2月の1日1140万バレルから5月には640万バレルにまで減らし、この事態に備えて蓄積してきた10億バレル近い戦略備蓄から不足分を補ったという。
 かたわら、中国の製油所はほぼ通常通りの稼働率を維持した。それでIEAは、中国が6月だけで4100万バレルを在庫から引き出したと推定する。

 中国は10年かけて10億バレルの備蓄を構築し、要衝周辺にパイプラインを敷設し、輸送車両を電化してきた。彼らは、リスクを早くから予見し、手を打っていた。
 今後、放出した備蓄の補充をどうするのかが、注目される。6月の中国の原油輸入量は2015年以来の最低水準に落ち込み、7月に日量約780万バレルまで回復したものの、戦争前の水準には遠く及ばない。

 ESGニュース編集チームによる2026-7-21記事「中国の再生可能エネルギー巨大基地は石炭に依存している、と報告書が指摘」。
 中国の超高圧直流送電網を通じて送電される電力のうち、風力発電と太陽光発電が供給するのは約20%に過ぎず、石炭火力発電が42%を占めている。

 2027-4-27記事「世界の石炭は誰が使っているのか?」
 中国は 年間47億8000万トン の石炭を消費しており、これは世界の総消費量の半分以上を占める。中国は世界最大の石炭生産国。そして、発電において依然として石炭に依存している。

 兵頭いわく、この記事の石炭消費ランキングにわが国が登場していないことは、じつに朗報です。世界は依然として認知の基本層が人種的なので、日本は、少数の愚かで宣伝下手・反撃下手なリーダーが、悪手をひとつ打っただけでも、それをきっかけに「世界の袋叩き」に合うリスクが今もあるからです。わが外務省が水面下の尽力でこれまでその事態をことごとく回避してきている陰徳を私は地下室で表彰してやりたい。

●ワイルドベリーズかんけい

 ウクライナ発の報道。2026年7月中旬以降、ウクライナ軍による攻撃はワイルドベリーズの物流拠点10カ所以上に及び、そのうち約7カ所で甚大な被害。この攻撃により、マーケットプレイスの倉庫容量のほぼ半分が停止し、販売者の損失は暫定的に20億ドル近くに達している。
 ワイルドベリーズの扱う電子機器の78%、衣料品と履物の29%、家具と家庭用品の31%は中国製。

●ディフェンス・エクスプレスの2026-8-3記事「ロシアがウクライナのFP-5フラミンゴ巡航ミサイルに新型エンジンを発見」

 絶対数が有限の「AI-25」ターボジェットエンジンを使いまわすだけでは「FP-5 フラミンゴ」巡航ミサイルを大量生産できない。そのネックをどうする気なのか。ようやくハッキリした。英国内で、同等以上の新型エンジンが量産されているようだ。

 フラミンゴは、1トンの弾頭を3000km先まで運ぶ。比較すると、トマホークの弾頭は450kg、射程は1600kmだ。

 もともと練習機用のAI-25TLエンジンは、推力が16.9kNで、自重が350kgである。

 フラミンゴの全体レイアウトは、エンジン背負い形。これは、異なる重さ・寸法のエンジンをもってきて取り付けるのに便利。最初から、その点を配慮した、飛行性能よりも量産志向の巡航ミサイルなのだ。

●3DプリンターでFPVドローンを量産する試み

 オレクシー・レフコフ記者による2026-8-8記事「米海兵隊、波高3.6mの海上を航行中の空母エセックス艦上で1000点以上の部品と12機のFPVドローンを3Dプリントし、環太平洋合同演習で飛行試験を実施」。
 アメリカの防衛系スタートアップ企業であるファイアストーム・ラボが売り込み中。
 今年初めにハワイで開催された環太平洋合同演習(RIMPAC)に向かうワスプ級強襲揚陸艦USSエセックス(LHD-2)に、同社の可搬型工場ユニットを持ち込んだ。
 そして外洋航行中に、12機のSquall FPVドローンを含む1,000点以上の部品をプリント出力した。最大波高3.6mだったが、プラットフォームが巨艦なので関係なし。※ついでに電力も潤沢だしね。

 艦上で製造したドローンは、対ドローン演習において仮想敵のFPVドローンとして使用された。飛行距離約32km、積載量2.5kg、滞空42分、速度約128km/hの、典型的なモノ。

 米国では、対戦車ミサイルや、肩射ち式の対空ミサイルの「固体燃料」も、3Dプリンターで出力しようという研究が進んでいる。

 ※しつこく何度でも繰り返しますが、爆薬成分と「機体構造」は一体化してしまうことだ。主翼+胴体=爆発物とすることにより、片道特攻UAVのレンジは最大化するでしょう。日本のメーカーは早くこれを手がけろ。危機に間に合わないぞ。

●学ぶのが遅すぎる人びと

 ヤシャ・ムンクとカティア・ホイヤーの2026-7-29対談記事「あらゆるものをワイマールと比較するのをやめるべき理由」。

 投票した直後に、投票の前とほぼ同じような政治状況――機能停滞や、同じような政党グループによる連立ごっこ――ばかりが繰り返されるように見えてしまう結果、有権者はうんざりする。これが大衆政治時代の根本の構造。

 こうならないように、適切に指導力を発揮できた政治リーダーは、改革者としての強権を握ることができるが、そのようなリーダーがいないと、果てしなく社会は悪化する。

 米国トランプ政権がムチャクチャなのはその通りだが、彼らはすくなくとも、大衆政治の根本について、間違いのない把握ができている。何をしなくてはいけないかがよくわかっている。前とは変わった、という実感を、ほぼ3日ごとに、有権者に与え続ける必要があるのだ。彼らはそれを実行している。

 ワイマール共和国にはそれができなかったから、有権者には見捨てられた。

 ※このエッセイは、「water_dog」さまからの有償仕事依頼に応じて、兵頭二十八が書いています。

  ――《令和八年八月十一日・記》――