※このエッセイは、兵頭二十八が、勝手に思いついて書いています。
2018年5月に公刊した『空母を持って自衛隊は何をするのか』の第8章を私は《水害救援に強い「頼もしい自衛隊」にするには?》と題しまして、コモンレールなどの電子パーツを敢えて使わないようにすることで、米軍のソフトスキン車両は、水没しても動けるように考えられている、等と、ご紹介をしたものです。
このたびの千葉県の大雨水害では、冠水して機能がダウンしてしまった車名と、そのさいの水位等についての、貴重な「統計」が得られるだろうと思います。報道やSNS上の映像からも、メーカーと商品型式/型番が直截に伝わるでしょう。もし、遺棄車両群の中に1台も映っていない車種があったら、それが次の人気車となるかもしれません。
2018年時点で判っていたことを、脈絡なく羅列してみましょう。
ディーゼルのトラックでないならば、エンジン吸気経路をシュノーケル化しても無駄です。ディーゼルは排気圧が高いので、排気管が水没しても水は逆流してこない。
米軍のHEMTTやドイツのウニモグも、エアのインテイクだけをシュノーケル構造としており、排気管は低い位置で問題ない。
HMMWV(ハンビー)の軍用タイプは、水深5フィート(1.524m)の渡渉までを考えている。これは車体が重いから可能なので、軽量化重視の乗用車は、タイヤ直径を超えて水たまりが深くなる道路状況では浮力がついてしまってトラクションが効かなくなり、ついで隙間からの浸水が車内空間を危険にするだろう。
市販ハンマーは、30インチ(76.2センチ)までの渡渉しか推奨してなかった。電子系が水密ではないからだ。
逆に言うと、世界の軍用トラックは、配線に関しては最初から防水重視。コモンレールも不採用。
ディーゼルの長所は、点火に電気を使わなくてすむこと。だから水濡れに強い。しかしインジェクション式にしてしまえば、このせっかくの長所が消えてしまう。だから米軍向けHMMWVはインジェクションすら使ってなかった。
それでも、トランスファーケースなどパワートレインにも水は滲み込んでしまうものなので、渡渉後のメンテナンスは不可欠。軍隊は、その整備を自前でできる。
自衛隊の「73式大型トラック」は吸気口までの地上高が185センチメートルあるので、日本ではこれがいちばん頼りになる。
価格も2017年だと1100万円くらいだった。
●今後、民間車ユーザーを豪雨災害から守るために検討されるべきガジェット案
一、エンジン・ルームの一時的な「水密区画」化機能
車両を遺棄して乗員が避難する際、車内からの操作により、圧搾ガスを動力源とする《緊急「目張り」システム》を起動させる。これでエンジン・ルーム内が、24時間程度、防水の区画となってくれる。
二、円形のルーフ・ハッチ
もちろん緊急脱出用。救助隊が外側から外しやすい機構とする。
三、自宅駐車場に用意しておく「浮力キット」
網と、その外周に結縛された複数のチューブ状の浮き具からなる。車両を動かさなくとも咄嗟に準備できる。網を車体の真下に挿入し、浮き具を車体の前後左右へ張り出させ、圧搾ガスによって膨張させる。網にはアンカー・ロープを取り付け、水に浮いた車体がどこかへ漂流して行かないように繋止。チューブはそれ自体が緩衝材になり、周囲の建物や浮流物との接触から車体をプロテクトしてくれる。
高額な自動二輪車を浮かせたい場合は、上述のネット構造の代わりに、大きな耐水袋が使えるだろう。ふだんは雨覆いなのだが、洪水時には天地を逆にし、そこに浮力チューブを縛着するのだ。