※このエッセイは、「water_dog」さまからの有償仕事依頼に応じて、兵頭二十八が書いています。
フィリップス・P・オブライエン記者による2026-8-26記事「ウクライナはロシアの石油インフラへの攻撃に注力すべきだ」には、とても良いことがいくつも書かれていますから、皆さんにも是非、一読をおススメいたします。
ただし、《ワイルドベリーズ倉庫の攻撃に宇軍はその特攻機資源を分散してしまわないで、もっとしつこくロシアの石油関係施設だけを集中的に破壊し続けるべし》という主張には、私は賛成をしません。宇軍は、トランプが石油関連を攻撃するなととにかくうるさいから、その代わりの次等の選択として、物流倉庫を狙っている一面があるからです。
《フェドロフが総選挙の実施を呼びかけたことは、彼がゼレンスキー政権下では復職できないことを自覚している証拠だ》――という記者氏の小括は、まことに適切だと思います。
ただし、そこにも「深層」が付随する筈です。
フェドロフ発言は、政治的には、本人による「自殺点」に等しかった。そんな愚挙の背中を押したのは、とりまきでしょう。古今東西、知恵の足りないとりまきたちが、勢いのある新進リーダーを誤らせがちです。まさにそれがゆえに、リーダーは、とりまきを抑制できる器量をもっていなくてはいけないんです。どうやらフェドロフさんにはそれはできなかった。つまりフェドロフ氏には、リーダー適性が欠けていたのです。
おそらく彼は「局長」級のプレイヤーとしては才芸十分で超有能なのだが、もっと巨大な集団をまとめねばならないリーダーとしては、徳に不足があって、それで、必要な資質のとりまきが、周囲にはいないのでしょう。
《ウクライナ人は、トランプからペトリオットSAMを貰おうなどという希望を一切捨てるべきだ》という記者さんの総括と助言は、まことに正しい。
ただし、それはトランプのせいじゃないと思いますよ。誰が合衆国大統領だろうと、そんなものハナから期待してもらっちゃ困るのです。どだい無理な話だからです。
非核弾頭の弾道弾の迎撃に、高額なABMを使い始めたら、ABMはすぐに尽きます。それは単価がとても高いので、外国は、名目的な数量を援助してやることができるだけです。米国はすでにそれをしているでしょう。それ以上を他国に望むのは、望むほうが初手から無理無体です。
この点についてゼレンスキーの主張は幼稚すぎるという見解を私は2022年から維持し続けています。この分野に関してはゼレンスキー氏は4年半で成長も学習もまったくしていないように見えます。それでも指導力は保たれているのです。こいつは恐れ入った話じゃないか。
ゼレンスキーはベトナム戦争中のホーチミンをこそ見倣う必要がありました。大急ぎで、あらゆる病院や消防署や重要機関を「地下化」し「分散」し「秘匿」すべきでした。ショッピングモールは、防爆シェルター構造に改築ができないのなら、営業はさせないという指導をするべきでした。高層集合アパートの住民たちには、みずからの労力供出で、地下避難トンネルの工事を進めるように号令するべきでした。
彼はこの方向では何の指導力も見せていない。(地下病院についてはさすがに民間で大進歩があったようです。→ジョン・スペンサーとドリュー・クレイグ記者による記事「死の地帯の下を掘り進む:ウクライナの地下戦争」参照。)
おそらく1960年代の北ベトナムとは異なる社会構造がウクライナにあるために、そのような政治指導はできないのかもしれません。ということは今後も彼は、「ABMをくれ」と十年一日、西側に向けてわめき続けるだけで、自国民防護のための現実的な計画を何も策定しようとはしないでしょう。
それだったら、わたしたちも、「今の調子であと三十年ばかり、続けてみてはどうか。ABM以外の援助は可能だから」と返答するしか、ないかもしれません。
むろんのこと、わが国も、これからAIデータ・センターを構築するのならば、それは過疎地の赤字鉄道の「側線」の形で分散的・疎開的に展開させて行くべきで、弾道弾の被弾1発で全焼してしまうようなスタイルの、巨大倉庫のようなビルにまとめるのは、大きな誤りです。
――《令和八年八月二十五日・記》――