とーいソルジャーとちかいソルジャー

 拉致議連の筆頭者であり、人権擁護法案にも明確に反対している現衆議院議員の平沼氏が、プロ・コイズミに叛旗を翻したことを、わたくしたちはどう評価すべきでしょうか。
 これは「小さな好悪」と「大きな好悪」の選択になるしかありません。
 拉致議連で次席格となっている民主党の西村議員と平沼さんを、一部の政策思想だけあげつらって比較するのは良いことかどうか分かりませんが、事実として次のような点を指摘できます。
 西村さんは、国会での戦争謝罪決議などふざけるな、北朝鮮には制裁を加えろ、日本人は贋の歴史観を刷り込まれているぞ……等々と、マスコミに向かってだけ発言してはいません。なんと、地元の小選挙区で、まったく同じ内容を、団地の前にハンドマイクを持って立ち、一棟一棟、諄々と演説してるんです。
 平沼さんはどうでしょうか。地元で「人権擁護法案反対」などという話ばかりしていたら、平沼さんの今の議席は無いでしょう。ここに、歴然とした「志の高下」があるだろうと、兵頭は思わざるを得ない。
 ちなみに、拉致議連の事実上の立ち上げ人だって、本当は西村さんです。しかし西村さんは、政権政党の議員が筆頭者にならねば北鮮にも総連にも圧力をかれられぬと判断し、平沼さんを立てているのだと仄聞しております。
 わたくしは西村さんには明日にも小泉氏に代わって日本国の内閣総理大臣になってもらいたいものだと思っております。またもし平沼さんに意外な根性があって、速攻で自民党を捨て、拉致議連を中核とする「ニュー・ライト」を糾合した新党を作ってくれるなら、わたくしはプロ・コイズミの声援を止めるかもしれません。
 しかし、議会政治には別な The Name of The Games があるでしょう。有権者は、選挙に臨むときに「どのグループに多数派をとらせたいか」を、好悪の感情に優先しなければ、もう1年もしないうちから、悪い結果が、良い結果を上回るというアウトプットになってしまいます。ですから「今」ではなく、「次の総選挙までの多数の国会」を、中期的に予想せねばなりません。
 今回の選挙でプロ・コイズミが圧勝すれば、プロ・コイズミ自民党は、次の選挙では「集票マシーン」と絶縁することができるのです。集票マシーンとは、特定郵便局やら創価学会やらヤクザやら何やら、「票は集めてやるが、その見返りとして、こっちのどす黒い要求を容れて貰おうか」と迫る連中です。
 議会制民本主義の下では、こうした取り引きもしないと多数派は握れない。多数派を握れないと、悪いこともできないが、良いこともできやしません。
 「コイズミは、アレがダメだ、コレがダメだ」とのたまう有名評論家の諸君。諸君がその正論だけを掲げて今度公示の選挙に立候補したら、何十万票も獲得して、代議士に当選できる見込みがありますか? そんな芸当ができるのは、衆議院では西村さんぐらいなものでしょう。
 そして西村さんですら、党内で、そして国会内で、多数派は領導できないのです。これが議会政治の現実であります。
 だったら、「小さい好悪」を捨てて、大きな選択をすべきでしょう。
 まともな政治家で「人権擁護法案」が素晴らしいと思っている人はいません。しかし、今の日本の民度では、集票マシーンや派閥のボスに頼らなければ国会で権力を行使する、その足がかりすら得られないのですから、各方面と少しづつ、部分的な取り引きに応ずるしか、議席を維持する方法は無いわけです。
 そして、とりあえず、その日本の古い集票マシーンを一つづつ滅ぼしていく流れを作ろうというのが、今回の総選挙でのプロ・コイズミのテーマです。集票マシーンが亡びれば、まともな議員や派閥のボスは、どす黒い要求に「ヨイショ」する必要がなくなるでしょう。
 ところで、日本で一番朝鮮人を嫌っている組織は、警察ではないでしょうか。
 わたくしは、20代で自衛隊の新兵訓練キャンプに参りましたとき、全国から選ばれて来ているかなり優秀な陸曹助教たちが「なんだおまえは、チョーセンの兵隊か!」と、怒鳴って笑いをとりますのに接しまして、ポリティカル・コレクトネスに一切頓着の無い、脳内でなんのためらいもなくスポーンと飛び出してくるそんな言葉遣いに、驚き且つ感動を喫したものです。
 わたくしは旧軍関係の本も少し読んでおりますが、旧軍の新兵教育でドリル・サージが「チョーセン」を笑わせのボキャブラリーにしていたと推測させる記述を、今まで一つも見たことがありません。戦前の日本では「内鮮融和」がポリティカリー・コレクトだったからです。
 それで最近ふと思うのですが、あれは、戦後の警察予備隊から始まっている「伝統」だったのではないでしょうか。
 つまり、わたくしはインサイダーにはなったことがないのですけれども、日本の警察の文化が、戦後に自衛隊に流入したのではないか。
 だとすれば、「人権擁護法案」なるものの原案通りの成立に、水面下で最も抵抗するのは警察組織だと信じられるのです。しかし残念ながら警察の人たちは口が堅いので、この辺どうなっているのか、情報を貰うことはできません。
 わたくしは横浜に住んでいた時期に、神奈川県の同和関係の某機関紙にコラムを提供したこともあったんですが、そのとき聞いた話で、同和と朝鮮は、もうとっくにフュージョンしているのだそうです。
 また警察という組織は、警察出身の代議士立候補者の応援は絶対にしないのだそうです。この事情は平沢勝栄氏の自著に具体的に書いてありますが、残念なことです。
 このため、警察出身の議員が、逆にダークサイドの集票マシーンからの誘惑に抗し切れないことになったりするのでしょう。ジェダイの堕落……なげかわしいことです。
 プロ・コイズミが圧勝するということは、これらの集票マシーンと日本人は訣別できるということです。