グテングテンのテングの仕業じゃ〜(ついでにアフリカの陰謀も)

 早朝の一仕事を終えてテレビを点けたら、どこも暑苦しい選挙の解説を延々くりかえしていてうんざり致しましたので、パンをかじりながら、小学生いらい久しぶりに『トムとジェリー』を視てしまいますた。ここで大発見!
 わたくしはこのカートゥーンは当時はとてもつまらないものだと思っていました。裏番組に日本のアニメがあったら、絶対にそっちを視たでしょう。
 すなわち、日本アニメ式ならば、猫が超苦戦の末に鼠を獲って大団円のカタルシスで終わるストーリーが期待されるところなのです。
 が、トムとジェリーの間には、どうやら深刻な葛藤は無い。したがって、ドラマにも終わりが来ない。それとまた、頭を固いもので思い切り叩かれてもどちらも怪我一つしないという西洋伝統の野蛮なスラップスティックが兎に角気になりまして、「遊びの芸」の部分にはまだ着目ができなかったわけです。
 しかし今では、これはドタバタのお約束コメディの世界なのだと最初から分かって余裕で眺められる。すると、日本のアニメには薬にしたくとも無い芸の細かさ、観察眼の深さ、日本のアニメ作家陣には期待すべくもない「教養」までが見えてきて、案外良質な、何段階ものチェックを経て作られていた番組であったことに、いまさら気付かされました。これは子供に見せるべき番組ではなく、仕事で疲れた大人が深夜にビデオで楽しむソフトではないでしょうか。やはり、子供には理解ができなかったのです。
 目の前に堂々と展開されていることが、「意味」として理解できないことはよくあるでしょう。わたくしが大学院生のときに国政選挙があったんです。平成元年の参院選か、平成2年の衆院総選挙のどちらだったかは忘れちまいましたが、翌日の研究室で江藤淳先生が来客との懇談中、「こんどの有権者は、変化を恐れた。だから現状の変化に抵抗する勢力として社会党に入れた」というような意味のことを仰った。それを立ち聞きしておりまして、わたくしは「嗚呼、評論家とは偉いものだ」と痛嘆したのです。
 まさにそれはわたくしが漠然と感じておりました世間の空気でした。しかし、それをうまく、ぴったりな日本語には変換はできなかった。江藤先生は、あっさりとその変換ができてしまうのです。「膝を打つ」という表現がありますが、これを聞いた瞬間、ほんとうに膝を打ちたくなりました。
 その直後の諸雑誌を調べればどなたでも確認ができることですが、こんなシンプルな「国民の気分の分析」を明快に言語で残されたのは、けっきょく江藤氏だけでした。あまりに適確すぎ、却って今の人にはどこが凄いのかピンと来ないのではないかと思います。
 あれから十数年経つのですが、このわたくしが、選挙に関して文を綴るようになるなどとは当時は想像もできませんでした。「おまえが江藤淳のようなコメントができるわけがないのだから選挙の話などヤメレ」という内なる声に「いや、それでも、抱いてくれるか不敏なこの子に赤いべべなど買うてもやらねば……」と浪曲子守唄を歌いながら書かせていただいております。
 小選挙区制とは、単一の争点について、たった二人の候補の間で烏鷺(黒白)の争いをしてくれという制度です。小選挙区にふさわしい単一争点がなければ、政党や候補者は、それを創り出さなければなりません。
 今回、北朝鮮制裁やスパイ防止法や国立戦没者霊園などを、自民党も民主党も争点にしませんでした。小泉総裁にとって、それでは勝てないというよりも、それでは投票率が上がらないからだったでしょう。投票率が上がらなければ、創価や特郵や労働組合やその他の集票マシーンが生き残ってしまう。そこで小泉氏は、投票率を上げるためのいろいろな演出をして奏功しました。逆に民主党は、投票率が上がらない方が好都合と判断していたでしょう。しかし投票率を下げさせる演出というのは、相手が小泉氏のような巧者の場合は、難しいものですね。
 いままで、一票の価値は無価値だったと思います。創価のような擬似コミュニティに所属していない個人にとって、一票の使い途などはなかったのです。それが、今回は違うと有権者に認められた。その演出をしたのは小泉氏です。
 民主党は小選挙区による二大政党制という国政システムにまったく対応できていないことを、戦いを始める前から証明していたのではないでしょうか。こんご万一小沢氏が党首になっても、この欠陥は少しも直りますまい。有志の方々には、早く党を分解してしまうことを希望します。そして「北朝鮮に制裁するか、シナと戦争するか」等を争点に掲げられる真正の「確かな右翼」政党がスピンアウトすることを期待いたします。
 北海道では民主党が強かったですね。江藤先生のコメントを、わたくしは思い出しております。中央からの補助金が「所与」の地域ですから、誰も現状は変えたくないのでしょう。
 自民が勝てば官僚の天下だという評論家もいましたが、官僚が恐れるのは、圧勝した総理だけでしょう。
 それにしても、9月のある時点で所によっては選挙運動が燃え上がり過ぎ、暑さで頭をやられた奴がとんでもないことをしでかすだろうと兵頭は気を回していました。それで月刊『正論』に「日本刀による襲撃」の話を書いて各候補者の事務所に警報をしておいたのですが、大外れですた。
 うまく台風が投票日を避けてくれたのは、天佑神助でしょう。
 西村先生、ご当選おめでとうございます。
 シナ・朝鮮の方々には、どうもお生憎様です。いまごろ祖国は、戦々恐々としていることでしょう。工作員のみなさんも、ご苦労様でした。
…つ【おしぼり】