「指導者」を探し求める勿れ

 小選挙区制による総選挙を何度も何度も反復しないと、フツーの二大政党、つまり外交・安保の大国策はもはや論点でなく、ドメスティックの小国策が争点となる、そういうマトモな二大政党は、確立されることはあるまい──。
 これは、もう、小選挙区制の導入時点から、親切な新聞・雑誌が、こぞって解説してくれていたことでした。
 ところが人間は80年くらいしか生きられないくせに、10年くらい前のことも覚えていない。そのくせあと1年以内にも「改革」が実現しないと、今度は怒るわけです。こういう人が超人的独裁者を待望するのです。民本主義議会制政治は、半年や1年では作られません。そんなに簡単に政治風土が改まって、たまるものではない。
 小選挙区制は、政府と個人の間に伝統的中間組織が多数存在する日本には向かない、中選挙区制に戻すか、大選挙区制にして、少数意見が反映され易い国会にしろ──と、こういう意見なら筋は通ってますよ。もちろん、それは現状では反日マルキストを利すだけですから、兵頭は断乎反対しますけども。
 小選挙区制のメリットは、発達した自由主義経済の日本からマルキストを徐々に追放できることにあるのです。(だからアメリカがそれを望んだのかどうか、そこまではわたくしは知りません。)その効果は、着実に現れていませんか?
 ただし、反日マルキストの追放にしても、一夕に出来ることではない。
 民主党からはまだマルキストが追放されていません。小沢氏のような国連主義者も退陣していません。つまり、到底これは未だ、ロクな政党ではないのです。
 「確かな右翼」の新野党ができるまでには、あと数回の総選挙が、小選挙区制下で反復される必要があるでしょう。
 「確かな右翼」の新野党ができれば、自民党の政策にも正しくチェックが入れられます。それには民主党こそがぶっ壊されねばならないでしょう。
 ですから今のままの民主党の党首にこれから前原氏がなろうがなるまいが、当面、国民には何の関係もないことでしょうね。
 この前原氏が防衛通だというので、わたくしは氏が登場した過去の雑誌の座談にはできるだけ目を通してきたつもりですが、はっきりいってしょーもないレベルですぜ。
 アメリカからトマホークを買えば北鮮のミサイルはやっつけられる、という、そのレベルですぜ。これだけでももう二重三重に未熟でしょう。
 尤も、「軍事専門家」諸氏の中にも北朝鮮の化学弾頭ミサイルは脅威だと騒ぐ人がたくさんいたりするわけですよ。化学弾頭は正しい高度で正しい粒子サイズを放出できなかったら、せいぜい「松本サリン事件」級の騒ぎ、すなわち障子一枚で阻止できる程度のガスが町の1ブロックに漂うだけで終わりですよ。北鮮は過去に地対地ミサイルの弾頭を正しい高度で起爆させ、正しいサイズの粒子を放出する演習や実験を、一度でもやりましたか?
 歴史を知らない日本人は多いが、これだけ高学歴者が増えてもまだ科学の「相場値」を知らない日本人が多いのも、これからのアメリカやシナとの競争上、大いに困りものですね。化学弾頭ミサイルが、実験無しでも役に立つウェポン・システムなのか、そうでないのか、科学的な直感は働かないのでしょうか……。人間の知識体系だって、一夕には改まりません。
 旧軍が消滅してしまいましたために、戦後の日本には「支配者」はいなくなって、「コントローラー」だけが在るようになりました。その筆頭機関は大蔵省です。
 ただし大蔵官僚は時代の制約で「マル歴」以外の歴史教養が無いので、国レベルの大事業のインサイダーであることの快感、私人として財産を残すことの実利がすべてになっており、そこをアメリカ政府にうまく把握されてコントロールされてしまっています。これは、「日本人」を一身に代表する「天皇」への信仰心(=奉仕の使命感)が官僚から消えた結果で、巨視的には、これまたやはり旧軍があのようにして消えてしまったことに遠因が求められます。
 田中角栄も日本経済を混乱させましたけれども、福田赳夫も元大蔵事務次官のくせに赤字国債をさんざんに垂れ流しました。旧福田派はこれを大蔵省に対する債務だと思っているかもしれません。なにしろプライマリーバランスが悪いのは事実です。
 財務省の役人が米政権とつるむと、支配者たり得ていない日本政府は基本のところではその言いなりです。すなわち、大蔵省というミニ・コントローラーを通じて、米国指導者層(それは一枚岩ではないが)というビッグ・コントローラーが、日本の首相にあまりな勝手はさせない装置になっています。
 だから小泉氏個人にできることは限られています。そして今よりももっと政党が弱くなれば、財務省には何でもできます。
 だから、確かな右翼の政党が、野党として一つ必要です。しかしその政党人が「天皇教」を信じていませんことには、アメリカと張り合える歴史的国家観は持ち得ないので、日本はアメリカの州の一つになるでしょう。
 以上がよくわからない人は、拙著『あたらしい武士道』を買って読みましょう。チャンチャン♪