「万博パビリオン」にしたいのか、「ネットの上の文書庫」に徹するのか

 竹田宮様がGHQによって宮家を廃業させられたときに、旧陸軍や海軍から正式に贈呈された貴重なご蔵書の数々を、芝増上寺の私設仏教図書館「三康図書館」にご寄贈あそばされたのです。その中には国会図書館にもどこにもないような稀覯書もあります。それが廃棄されたり転売されたりせずに、今も綺麗な状態でずっと残っている。カードに書いて申し込めば、手にとって閲読することもできるのです。
 もし、この宮様の寄贈あてが「港区区立図書館」だったりしたら、おそらく、くだらない小説本やタレント本の新刊蔵書が増えるにともなって、サヨク司書によって地下書庫の戦前戦中の軍事系の文献などは片端から処分され、「竹田宮文庫」といえども、とうに滅失していたことでしょう。
 似たような機能を果たしてくれた図書館に、成田山新勝寺の私設「仏教図書館」があり、兵頭はそこにある戦前資料を探索するために隣接の富里市(同図書館まで歩いて40分)に引っ越し、1年ほど住んでいたことは、皆様ご承知の通りです。その次に函館に引っ越したのも、同地にも空襲で焼かれなかった、北海道で一番古い図書館があるからでした。
 成田仏教図書館の場合は、昭和20年に米軍が上陸してくると予想された九十九里に近かったこともあり、敗戦後も司書の人は国防意識をうしなわず、GHQにみつかるとヤバい資料はぜんぶ、天井裏に隠して守り抜いたのです。おかげでここにも貴重書がたくさん残りました。公立図書館だったら、すぐに散逸してフロの薪代わりにされていたことでしょう。
 こうした資料消滅問題に兵頭が気付いたきっかけは、雑誌の『戦車マガジン』でいろいろな別冊を作るときに、ドイツ軍やソ連軍の写真は海外のアーカイヴ(アルヒーフ)で無尽蔵に未発表のものが発掘されるのに、日本軍の写真となると、未発表のものがほとんどないという現状を認識した折です。ソ連は手強い論争相手ですけれども、古い資料は絶対に捨てません。つまりシナ・朝鮮人のように脳内捏造はしないので、資料の存在は押さえた上で、トボけたり言い掛かりをつけてきていたのです。欧露人は、自国にとってマズイような資料でも、ぜんぶとってある。基本的に、文書記録を捨てません(隠匿はする)。
 そうした記録は後の世代の者が勝手に捨ててはいけないものなのだ、という文化が、末端役人にまで浸透しているらしく見えるのです。ゴルバチョフ直後の混乱期、外国の軍事マニアがいろいろと訪れて「大戦中の珍しい写真がストックされているだろう。大金をはたくから、それをこっそり売ってくれ」といっても、ロシア人の貧乏司書たちは、売りませんでした。
 日本にはこの資料保存の精神がありません。自衛隊の古い国産武器(現物資料)なども跡形もなく廃棄してしまう。だから日本には「スミソニアン博物館」の同等施設がありえない。これは精神の貧困というより、戦後日本人のビョーキなのです。この日本人のビョーキを治せるかどうかは、三康図書館や成田山仏教図書館のような「外部記憶装置」の存続にかかっているだろうと、ずいぶん前に兵頭は確信しました。
 松本健一さんらを一方の当事者とした「ペリーの白旗」論争をご記憶でしょうか? あのとき、サヨクは「対米戦争中に公刊された和書に、ペリーの白旗の話などどこにも出てこないではないか。松本はデタラメだ」と言いました。兵頭は、某図書館で、昭和19年刊行の単行本の中に、ペリーの白旗への言及がある事実を見つけ、その事実について雑誌『発言者』に書きました。
 不毛な「ペリーの白旗」論争は、日本にいかに良い図書館が少ないかを物語るものです。「それについて書いた近代の資料があるのかないのか」──こんなことが、論争になっていてはいけません。日本の社会科学が遅れているのは、欧米先進国に甚だしく遅れたままの、この惨憺たる図書情報環境のせいでもあります。
 ここで懸念されますことは、「そうか、日本で××××図書館にしか所蔵されていない△△△△という本のnnnページにその記述があるんだな。だったら破り取ってやれ」と思うキチガイ左翼司書が、日本では現れないとも限らぬことでしょう。
 わたくしは666さんやゴトーさんその他の皆様のお力をお借りして、ネット上に、貴重資料保存のための「擬似アーカイヴ」を合法的に構築できないかどうか、智恵を絞ろうと思います。
 じつは対抗宣伝文献英訳の活動も、このネット上の図書館に相当します。北京コミンテルンの反日宣伝を撃砕する砲弾は、コンテンツである(英訳された)歴史文献テキストそのものです。HPという額縁、サーバーというハコモノはどうでもよいでしょう。三康図書館は豪奢なパビリオンの風情ではありませんが、中味の蔵書は貴重です。それが仏教団体の経営する図書館に所蔵されているからといって、保存されている稀少な近代資料の価値は影響を蒙りません。
 我々は、あの典型的な税金の無駄遣いに終わった「政府の対外広報」を代行しようというのではありません。HPから日本文化を発信したりPRするつもりなどないのです。ディズニーランドのゲートに誘われてくぐったら、内部は日支関係史ばかりの書棚だった……これのどこに、在米の一般ピープルへのアトラクションがあるでしょうか?
 良質の文献という砲弾は、いちどネット空間にリリースされれば、第三者がそれを引用コピペすることによって、それから永久に何度でも、嘘に対する破壊力を発揮してくれます。砲弾は日本人ボランティアによって、最初に適切な場所に誘導されるでしょう。
 HPを修飾する余分なカネと手間隙があったら、その資源は、すこしでも多くの文献を英訳することに充てるべきです。さもなくば、大勢の醵金者を納得させることはできますまい。
 ところで、学生さんで数千円を寄付してくれようという方がいらっしゃいましたが、本宮ひろ志マンガ的財閥の御曹司でない限り、それはやめてください。
 学生さんにありあまっている資産とは「おかね」ではなく「じかん×デスクワーク体力」のはずです。PCありのプータローさんも、そうですね。そのありあまっている資産を頂戴します。
 具体的には、過去に掲示板に名前のあがった、「これは英訳される価値があるぞ」、とされた書籍の数々。この英文サマリーを書いて、めいめい勝手に掲示板へ提出してください。つまり、英文の梗概[こうがい]、内容紹介文ですよ。あとで、そのうち使えるものを、正式HPの方にコピペさせてもらいます。
 サマリーは、詳しければ詳しいほど可です。もちろん、数行のものでも可です。長いものと短いものが両方あった方がいいのです。複数のサマリーが乱立してもいい。むしろその方が、利用する側で真否の判断をしやすくなりましょう。
 また、できればそのサマリーには、なぜこの本の内容は信用できるのか、そして、その本の内容によって北京コミンテルンの発信するどの捏造宣伝が論破されるのかという説明もあることが望ましいです。もちろん、そこまで書けない人は書かなくてもOKです。
 英文はナナメ読みができません。まず自分にとって精読する価値がある本なのか、ない本なのか、見当をつける手助けがどこかにあると、彼らとしてはありがたいのです。そのためのサービスです。
 学者や研究者しか読まないような欧米の本格的な雑誌の記事組みでも、タイトル、サブタイトル、リード(キャッチコピー兼)、サマリー、本文という誘導になっていることが多いです。気の利いた梗概は、読書階級にも常に歓迎されます。それを手掛かりに彼らが自主的に史料捜索を始めることもできます。
 なお、もちろん著者名やタイトル(ローマ字音標と、その意味訳も)、出版年、第何版か、など最低の書誌データも英文化して添えてくださいね。これは手掛かりの基本ですからね。
 また、稀覯[きこう]本の場合、国立国会図書館に所蔵されているのか、日本の大学図書館のどこかにはあるか、などの情報も意味があります。大学図書館は、内外の研究者に対して、特定ページのコピー郵送サービス(実費)をしているからです。
 ある程度、サマリーが集積されてきたら、こんどはそれを外国の歴史サイトの掲示板にコピペ投稿する仕事も、無名のボランティアの方々にお願いをしたいと思っております。
 仮りに全国の百人の学生さんが3000円づつ醵金してくだすっても、大したホワイトプロパガンダは打てないんです。しかし百人の学生さんがもし3時間づつ、デスクワークの労力を提供してくれるなら、偉大な事業がたちまち完成します。
 江湖有志の士の協力を期待します。