着弾点等について雑感

 ランチサイト周辺に部品が落下、散乱しているのが確認されるというぐらいの酷い打ち上げで、機体が400kmも飛んだり、40秒間の燃焼が維持されたりするわけねーだろ……とか書き込もうと思っていたら、今朝の毎日新聞のウェブ版で、じつは3発目は打ち上げ直後からバラバラ状態らしいと報じられてしまいました。
 いやぁすいませんね。わたしゃホットブラッデドな皆様と違い、朝鮮半島方面にはこのところほとんど興味がないもんで……。だって数年前に終わった国でしょ、北鮮って。だからこの話題に関してもパブリックに何かを警告しなければならんという評論家的義務感を覚えなかったわけです。
 で、他の仕事の休憩の合間に、おくればせながら、着弾点について考えてみますた。
 最初に「稚内」を基準にして落下点を速報したのはですね、これは弾道ミサイル警報の流儀としたら間違ってないんじゃないですか。今どきの日本の段階ではGJなんですよ。
 つまり、どっちのAZIMUTHに飛んでるかってことがまず最初に知れたんで、とりあえずその延長線上の都市に警報しようとしたわけでしょ。じっさいには警報を当該市民に伝えるシステムなんてなかったんですけどね。村の「ゆうせん」のスピーカーで放送されたって、シェルターなんてないですからね。稚内には。ハハハハ……。
 それで余談ですけどオレが子供のころは長野市郊外で電話と有線の二つの送受機があるウチは珍しくなかった。遷移期だったんですな。電電公社独占への。
 で、有線の方はダイヤルが無い代わりにその部分が丸いスピーカーなんですよ。そこから女のオペレーターの声で「じゅうばんさん、じゅうばんさん」って呼び出しがきて、その番号がてめえの家のものだったら受話器を取るって仕組みです(出ないと間歇的に十回くらい呼ばれ、オペレーターが送話者に「出ません」と伝える)。ジリリリン…なんて鳴らぬわけ。その上、夜になるとそのスピーカーから勝手にクラシック音楽とか流れた。昔の家は暗いからこのAMクォリティのサウンドが気味悪くてしょーがないんだよね。子供心に。
 まあ弾道弾にもいろいろありましてですね、スカッドは弾頭が分離しないで抛物落下してきますけど、もうちょっと進んだやつなら、弾頭だけ逆噴射モーターで「ボールが急に来たんで」状態で、中間抛物コースをはずして俯角を強めて落とすものもあり得るけです。だから飛距離とか落下点なんて最後まで予断できない。とりあえずアジマスを広報するのがまず大事ってことです。だから「稚内」と言ったのはGJなんですよ。
 本番以外の短距離ミサイルを、日本列島ではなくロシアに寄せて落としたのは、日本沿岸の商船航路に落としたら、瞬時にアメリカから爆撃されるおそれがあったからです。金正日はプーチンよりもブッシュのアメリカ軍を恐れたってことです。
 つまり最初の2発をわざと日本から遠いところに落としてみせることで、次の3発目はちょっと長く飛びますけど、三沢攻撃やハワイ攻撃の本番の意図はないですよ、実験ですよ、とアメリカ軍に知らせた次第です。3発の発射のインターバル時間をじゅうぶんにとっているのも、たてつづけだと「奇襲開戦」と疑われて米空軍にボコられかねない。そのリスクを避けたまでです。
 6発のうち2発がどうしてスカッドの改良型と知れたか。これは初期ステージの加速度の違いがレーダーで分かるからでしょう。あと赤外線の熱量の差。ただし北鮮の場合は射程を延ばすためにペイロードを軽くするので、射程が長いやつはただの「イヤガラセ兵器」です。
 北鮮に原爆はないってことを理解できない人がこんなにいる国だから、北鮮にはまだBC兵器はないといってもこれも聞く耳もたないだろうが、インドのボパール工場事故とか、アフリカのなんとか湖の深夜ガス放散災害とか、ああいうのはガスの量が桁違い(後者に関してはモノが違って二酸化炭素じゃないかともいう)なわけですよ。
 地下鉄サリン事件は理想的な密閉空間だったから自然蒸発でも死者が出た(それでも何人死んだか、思い出してみてください。1000人でしたか? 100人でしたか?)。開放空間で地面からビニール袋入りのサリンが蒸発したって1人も死なないというのが統計的真です。だから兵器としての神経剤は気体じゃなくて液状ミストを「雨滴」させるわけ。「毒ガス」と言わずに「化学剤」と称するようになった所以です。その液体撒布の技術は北鮮みたいな終わった国には持てないハイテクなんですよ。単に空中爆発させたってミクロン・オーダーの粒はうまく形成・噴霧されぬわけです。
 それと北鮮レベルの国で生物剤を開発したら必ず実験場から漏れるっての。絶対に収容所で人体実験もやるし(首領サマ用の抗体も集めておかなくちゃね)。そんな情報は無いでしょう。
 ですので話は飛びますがフセイン時代のイラクが毒ガスで本当にクルド人を何万人も殺せたのか、殺せたとしたらその方法(輸送機から撒いたのか?)には個人的にものすごく興味があるわけです。だって対イラン戦争のときも戦場で遠慮なくさんざん糜爛ガスなどを使ったようだが、そちらは第一次大戦とほぼ同じで、致死力は低かったわけです(負傷兵は多く出る)。それがクルド人のときだけどうして効きまくりなのか? 謎でしょ?
 あれが南京大屠殺みたいな捏造じゃなくて本当の話だったらフセイン裁判の目玉の証拠資料になるでしょうよ。
 いやマジな話、青酸ガスがそんなに開放空間でのメガキルに向いているなら、とっくに北鮮は青酸ガスを軍隊のメインの武器にしてますって。青酸ならローテクで量産できるし保存も簡単なんだから。でも、そういう情報はないでしょ?
 さて、話を戻して問題の3発目、ロング・レンジの本番実験。これはディレクションが分からなかった。ほんとうは前回と同じ三沢上空でしょう。北鮮から三沢の上を飛ばせばその先はアラスカじゃなくてハワイ沖なんですよ。前回も狙った先はハワイ方向だった。地球儀にゴムひもをあててみれば誰でもわかるんですけども、米国のタカ派が世論工作のためにアラスカ沖だと強調しました。ハワイよりアラスカの方が首都D.C.に近いというイメージが沸きますからね。
 米軍はハワイ→グァム→沖縄と出てきて北京を叩くので、ハワイを「イヤガラセ」できるミサイルが完成すれば、北鮮は北京の「優等生パシリ」として褒めて貰えて、質の悪い重油をまた少し恵んでもらえるのです。
 しかしアジマスを計測すらできないうちに3発目は空中で四散した。400kmも飛んだのなら方位くらいは判明しているはずです。それすら分からない、最初からまったくの失敗だった。
 ですから機体は北鮮近海に散乱しているので、いまごろNR-1や無人ヴィークルが大活躍ですよ。
 あと、固体火薬の話ね。工作員必死杉なのは分かるが、笑わせないでくれってんですよ。これって衛星を軌道に投入するときのキックモーター、アポジモーターの話が素人解説者によって一段目の話になっちゃってるんでしょ?
 あのですね、北鮮のミサイルは基本的に移動式。機体を横に寝かせてトラックや列車で運ぶわけです。ふだんは山奥の横穴式トンネルに隠してね(これだと非核の巡航ミサイルごときによっては絶対に破壊されない)。そして発射する直前にトレーラーで走り出して、どこか適当な場所で垂直に立てる。
 ロング・レンジで固体燃料といったら、花火とは違いますよ。逆に液体式よりハイテクになるんです。成型した何トンもの火薬の表面積が一部でも崩れたら、もう計算どおりに飛ばなくなるんですから。ロケットを横にしたり縦にしたりガタゴト揺らしたりしてたら、この表面積が機体内部で崩れかねない。固めた火薬の中に少しヒビが入っただけでも燃焼は狂ってしまうんです。どうするんですか? 検査方法もないでしょう、あの国には。
 固体燃料ロケットは打ち上げ時の加速も急で、機体が受けるエンジン震動もそれに比例して激しい。だから上昇中に成型が崩れちゃうおそれもあるんですよ。北鮮みたいな終わったローテク国家には最初から開発できる技術ではありません。
 米国のICBMみたいに垂直のサイロの中にずっと立てたまんま、まったく動かさないってんなら固体燃料でも何とかいけるかもしれない(これも経年劣化でヒビが入る場合があるので、超ハイテク)。しかし北鮮が固定サイロのミサイルを配備したら有事に米国から先制核攻撃されておしまいでしょう。横穴トンネル+車両機動発射だから何とかサバイブできるわけです。
 まあ、とにかく北鮮は軍事的にはもう終わった国だということが再確認されましたのが、今回のみじめな実験なんですよ。今後はシナの走狗としてテロで生きていくしかないでしょう。
 そんなことより朗報ですよ。古墳ギャルのコフィー。見させて貰いましたよ。
 ようやく日本でも、ビーバスアンドザバットヘッドとザ・シンプソンズの中間的なテイストの大人が笑える会話の入ったアニメが作られるようになったのか!
 (ちなみに兵頭はこのサイトでは固有名詞を無造作に誤記するのでご注意ください。)
 最初に朝日新聞だかテレ朝がツバつけたみたいだけど、おらほうはそういうとこにはこだわりなくこいつを支持しますよ。もう少しシリーズを続けたら、必ずもっといい味になりますよ。
 なにしろ既製の子供向けアニメの会話のレベルがつまらなすぎる。世の中を舐めた馬鹿を量産する教材だ。あれじゃ。
 みんなアメリカのアニメが思想がないとかケチつけてますけどね、馬鹿野郎ってんですよ。脚本家が世の中を見てる目は段違いに向こうの方が深いですよ。この前、上京したとき朝っぱらにウィニーザプーを見て感心しましたよ。(ピグレットって男の子キャラだったのね。原語でも。)作り手の生活観がシリアスであるが故に、ぜんぜんほのぼのしますよ。
 おなじことは、NHK教育でやっている、セサミストリートの日本版みたいな「モドキ」と、本家のセサミストリート(いまどこかで放映してるんですか?)の差でもあるんですよ。スタッフの到達している頭の中の「演技」の質に大差がある。
 しかしまだ新しい人材には可能性を期待できるのだと思わせてくれたオモシロ作品です。