滅私袋

 空自OBのT村H昭氏には、わたしは一面識もないのですけれども、自衛隊の三幕(なかんずく空幕と海幕)の経験者のあいだでは、もうこの御仁は山田洋行ともども、O・U・Tだと思われているのではないか。
 というのは、三幕経験者には、武器のプロ、技術のプロが揃ってますわ。それにひきかえ、山田洋行は、出自のゴルフ場についてはすべてを知っているようだが、武器に関しては何も知らない、技術系テキストの翻訳もできない、できない/やらない/わからない盡くしで仲介手数料だけは何億円もせしめてきたという、きわめつけのトンデモ商社らしいという噂が、さすがに北海道の田舎のこのわたしの耳にまで、入ってくるようになりました。
 つまり三幕の制服将校たちは、山田洋行なんていうクソ会社とは、絶縁したくてたまらなかったらしいのだが、それを無理筋で横車を押し通してきた勢力が、内局とT村氏など複数の議員だったのだ。
 いずれも裏は取れない噂の受け売りでしかありませんけども、とにかく山田洋行の良い噂は自衛隊周辺には皆無だ。輸入仲介業者らしい仕事はほとんど何もしないし、またできない会社であるらしいという話ばかりです。
 アメリカのメーカーと必要な調整をやってくれない。必要な書類をつくってくれない。パーツの一覧表も把握していない。
 それでカネをとっていたとしたら、そりゃ税金泥棒ですわね。
 とにかく会社の内部に、武器の技術の話ができる人材がいないんだっていうんだから、事実だったらもはや絶句するしかない。文字通り、ゴルフ専門の不動産屋が、最先端兵器の輸入をしていた――という、ミステリー/コメディになっちまう。
 それで悟ったわけです。ああ、日本国内の武器メーカーも、じつは山田洋行と内局には怒っていたのだなぁ……と。
 だって、こいつらのタッグのせいで、国産できたはずの武器のいくつかが、しょうもない輸入品で代置されてしまったケースが、いくつもあるんですよ。
 たとえば、ホバークラフト艇。強襲揚陸艦モドキの『おおすみ』級に格納して戦車を上陸させる、アレですよ。あれは、一時は国産(三井玉野)で決まっていたものだ。艦船マニアには周知の話ですけど。
 それが政治家と内局筋の圧力でひっくり返されて、飛行機だけでなくフネにも知識皆無の山田洋行が、なぜかLCACの輸入を仕切ることになりました。これも軍事メディアには既報のハナシ。
 しかし、運用側の海上自衛隊に言わせると、山田洋行は本当に何もしてくれなかったそうですね。ぜんぶ、ペーパーワークも技術的交渉も海幕がやったようなもんだ。それで手数料が数億円? ふざけんじゃねえ、という話になりますよ。
 それで海幕が、山田洋行の仕事ぶりではもうお話にもならないから、三井玉野に輸入代行をさせようという動きをみせたとたんに、T村議員がすっとんできて、山田洋行を変えるな、とゲンメイして行ったという。
 白昼に、国家叛逆が行なわれていたんですね。
 兵頭は、この話を最近まで知りませんでした。知ってたら、このブログでもっと早く注意を喚起したでしょう。
 わたしは貧乏人なので、いまだに『自衛隊装備年鑑』は2003-2004年版(平成15年7月刊、4200円+税、神保町の書泉グランデで購入)を見てるのですが、表紙をめくると、最初の見開き広告が、山田洋行ですよ。三菱重工より先に載っている。
 ハッキリ言わせてもらいましょう。
 業界関係者と部内の幹部は、みんな、山田がド腐れだってこと、とっくに知ってたんでしょ?
 三幕経験者の制服OBで、テレビや雑誌で評論めいたことをしゃべったり書いたりしている人たち、あの人たちも、みんな、山田洋行がこんな会社だっていう噂を、何年も前から、聞いたことがあったはずだ。
 そしてその人たちは、一人の例外もなく、今のいままで、その情報をオープンには、してこなかった。世間に警報すべきだとは思わなかった。不作為の作為で、国家叛逆を隠してきた。
 やめなよ、そういう人たちは。評論家の肩書きを名乗るのは。
 みんなも気付きなよ。MDは当たらないってことを。防衛の奥の院に詳しそうな経歴の論筆家の言うことなんて、隠し事だらけだってことが、ついにハッキリしたんですよ。彼らは、隠してはいけないことを隠してきた。要するに彼らには愛国心は無かった。皇室および国民と安危をともにしようという、武人らしい気概など全く無いのです。
 防衛省の、いや、日本政府の最大のスキャンダルは、国ぐるみでMD詐欺に乗ってることでしょう?