あらためて対支監視用の国産OTHレーダーの建設を提言する

 車力の地上出前式Xバンド・レーダーは、もともと米本土でのターミナル迎撃用の機器が転用されたようなものだから、弾道弾が北鮮で発射された直後の探知は苦手だろう。
 車力の前には佐渡島(そこは北鮮にヨリ近い上に適当な高地もあり、しかも西方に大都市がない)が、ポータブルXバンド・レーダー・チームの展開地の候補として上がっていたことから、斯く想像できる。(つまり、特に三沢基地にアラートを出すために好んで車力に置いているわけではない。)
 ※佐渡島が候補から外された理由を想像すると、レーダーとそのオペレーターズを出前するC-17輸送機が離着陸するときに、そうした大型機用の地上支援態勢が地元空港に備わっていないために、かなり不便であろうこと、および、既設の空自レーダーサイトの宿舎に余裕がなく、駐留米軍人とレイセオン社員の厚生が劣悪になるであろうことが問題として顧慮されたのではないか。
 それでも、飯岡と下甑のガメラが本格稼動する以前は、「対満鮮のPAVE PAWS/COBRA DANE」が無い――という大穴を埋める機能を、車力が一手に果たさざるを得なかった。
 しかし今回の4-6イベントに関しては、すでに飯岡と下甑島のガメラが稼動していた(下甑は3-31運開)し、複数の日米イージス艦(艦載Xバンド・レーダー)も日本海に出張して北鮮方面を集中的に見張っていたのだから、今回は、日本国家に対する「警報」機能を、車力が果たす必要は無かっただろうとわたしは想像する。
 車力は、今回は、ブースターの落下について日本近辺の米軍にアラートを出すこと、ブースターの落下点をダメ押し確認すること、デコイ/デブリ判別のデータを蓄増すること、そして、頭上を通過する物体の「カタチ」を仔細に測定することに、専念したのだろう。
 三菱電機が、国産測地衛星で、ながらくLバンドの合成開口レーダーと取り組んできたことの意義は大きい。まったくわたくしの想像だが、飯岡と下甑を連動させれば、それは合成開口レーダーとほぼ同じことになるのであろう。とすれば、Lバンドの不利な点とされた解像度にしても、XバンドのPAVE PAWSと互角になっているかもしれない。もちろん、探知距離はLバンドのCOBRA DANE並になるであろう。すなわち、ICBM級の高い弾道に対しては3200km~5500kmである。ちなみにPAVE PAWSも最大5500kmだと英文サイトには出ていた。
 さりながらXバンドは、雲や霧や雨で視程が縮む弱点があるらしいので、モンスーン域の日本周辺では、やはりLバンドを選択するのが正解なのだろう。アリューシャンの COBRA DANE がLバンドなのも、同海域に霧が多いからなのではないかと思う。
 2011年度までに佐渡島にも「J/FPS-5」(ガメラ量産型)が建てられるそうだ。そうなれば、飯岡のガメラ試験機は、電波照射の方向を太平洋の方向に限ることによって、反日工作員による住民訴訟を回避できるだろう。防衛省としては、できれば2011年度まで、飯岡のガメラの能力に、世間からの注目を集めたくはなかったことであろう。……サーセン!
 シナ工作員は、豪州のOTHレーダーに対しても、かつてのレーガン=サッチャー時代のグリーナムコモンのような反対運動を住民の間に焚きつけた。そのレーダーはあきらかにシナ軍の動静を遠くから見張るためのものに他ならぬからだ。
 現在、短波利用のOTHレーダーは、米国、ロシア、シナ、豪州にある。
 米国の両海岸に(SLBM警戒用として)数局あったOTHは、年間の電気代などの維持費がかかりすぎるので議会の意向によってソ連崩壊後にモスボール化され、現在、ニューイングランド(東海岸)の1局だけが活動を続けているが、その理由は、なんと、その位置から、カリブ海の麻薬密輸船舶や小型機を見張ることができるからだという。地図でみると、2400kmぐらい、離れている。
 かつてワインバーガー国防長官が防衛庁に硫黄島OTHを提案したときには、理想的最大探知距離として4000kmという数値が出ている。
 また、ナホトカのOTH局は、3000kmくらい捜索するだとか、グァム島の近くまで見張れると書いてある英文サイトがあるから、それが本当だとすれば、ロシアは4-6のトラジェクトリー(ぜんぶで3200km?)の終末に関しては、OTHで見届けたであろう。ニコライエフスクとコムソモルスクにもOTHがあるらしいから、北鮮は弾道を隠しようもなかった。(ロシアのOTHは毎秒10.5回のパルス状に聴こえるのでウッドペッカーと呼ばれる。)
 ただし、いろいろな英文サイトを見て回ったところでは、OTHの性能は安定したものではない。毎日確実に捜索ができるのは、やはり1000km以遠~2500kmぐらいの距離であるらしい。
 しかし控え目に国産技術で2000kmとしても、日本列島から渤海湾や満州まで見張るのには十分だ。マイクロ波レーダーと違い、OTHレーダーは、地表近くの動きが監視できる。ロケットのブースト直後とか、工作船の出港直後を探知できるのだ。もちろん航空機や巡航ミサイルの動きも探知できる。
 4-6イベントで日本国内は良いムードになっているから、防衛省は、北海道の荒野のどこかにOTHを新設したいと、いまこそ要求したがいい。OTHは日本の技術でも、迅速に確実にできる努力だろう。(OTHは距離1000kmより内側の捜索はできない。だから島根県あたりに置くと、却って北鮮海岸は見えなくなってしまう。)
 一部勢力が、DSP(早期警戒衛星)の打ち上げを提案すると聞いたが、もうね、「百年早い」と評するしかない。そんなソフトウェアは三菱電機にもないんだよ! できもしない技術に飛びついて予算をつけようとする議員たちに、誰かが国益のある処を教えてやらなくてはならない。誰もそれをする者が見当たらないので、ここに書くのである。
 DSPで中距離ミサイルのローンチの赤外線を探知しても、僅々数分の予知秒時が稼げるだけ。短~中距離ミサイルで狙われているわが国がDSPを保有しても、コストとベネフィットはまるで釣り合わぬというコモンセンスを、働かせて欲しい。
 それに比してOTHならば、低空飛行物体や、海上の艦艇の動向まで、日常普段から、居ながらにして捉えることができるのだ。シナ空母が渤海湾の奥まで遁入しようと、追い続けることができる。(静止しているものはOTHでは探知できないが、任務中の空母は洋上に停止することはありえない。)
 もちろん、OTHによって、1000km~4000km先の弾道弾の発射も、上昇開始直後に探知できる。DSPより1分くらい警報が遅くなるだけだろう。その代わりアメリカ経由でない分、伝達時間のロスは無いのだ。
 おまけにOTHは、気象観測までもできてしまう。海上の特定点における風向を知ることができるのだ。
 コストは十分にペイしてお釣りが来るのである。
 こんな良いことづくめの国産OTHの建設がこれまで日本では提案されてこなかったのは、それを造るとシナからの政治的な反発が来ると予期されたからだろう。しかしもうそんな環境は変わっているのだ。だいたいシナが1980年代からOTHを日本にまでも向けているのだから、やっとおあいこになるというべきなのだ。
 ※ここで、かつての加藤紘一長官時代の硫黄島OTH計画が消えた理由を愚考するに、火山活動のため地盤の変動が常にあることが精度を悪くするだろうこと、送信設備と受信設備をかなり離す必要があるのにその地積が島には無いこと、厖大な電力が必要だがそのためだけに大きな発電所を建てることが不可能だったこと、建設工事費と年間の維持費がハンパでなく、とうてい国会も大蔵省も納得させられないと予期したこと、があるのではないか。
 ガメラが配備される下甑、佐渡、大湊、沖縄(与座岳)では、これから工作員対策がたいへんだ。関係者のみなさんは、ぜひ、「老子の兵法」があることを、覚えておいて欲しい。
 政治先進国のシナとわたりあって行くには、『春秋左氏伝』と「老子の兵法」を押さえておく必要があるのだ。
 それについて最も手軽に学べるテキストは、これまた拙著『予言 日支宗教戦争』の中にあります。一読をお奨めします。