米議会はポーランドにJASSM-ERを輸出することを承認した。

 Tyler Rogoway 記者による2024-4-6記事「No Major Damage Seen At Russian Air Base After Drone Attack」。
 数日前の、宇軍による、ロシア西部数箇所の航空基地に対する大々的なドローン攻撃の戦果は、どんなものだったのか?
 「Planet Labs」社の細密な民間衛星写真が手に入り、まったく戦果は無かったことが判明した。
 露軍が発表していた通り、UAVはほとんど途中で撃墜された模様である。

 4月4日撮影の写真と、4月6日撮影の写真を比べると、露軍機の数に変化が無い。
 攻撃がなされたことは確かだ。というのは、駐機場所とは違う地面にクレーターが2個、できていたりする。※マシンビジョン搭載のUAVではなかったことが強く推定される。

 次。
 Amaury Coutansais Pervinquiere 記者による2024-3-28記事「French troops in Odessa. Five scenarios of Macron in Ukraine are named」。
  仏紙『フィガロ』が、マクロンがその言葉通り、フランス兵をウクライナ国内に展開させる場合、場所はどこになるのかの予想を立てている。

 2-26のマクロン発言を承けてドイツのショルツ首相は、ぜったいにドイツ兵をウクライナに送るつもりはないと言明している。

 仏陸軍の参謀総長は、命令があればそれから30日のうちに、2万人の仏兵をウクライナへ派兵できると言っている。

 ウクライナ国内に軍需工場をつくってやるというオプションもある。もちろん露軍はそこをミサイル攻撃してくるはずだ。
 地雷処理とか、訓練だけでウクライナに関わるというオプションも、考えられる。

 有力オプションは、オデッサ市の防衛に関与すること。
 『ル・モンド』紙によるとマクロンはこのオプションに乗り気だという。

 オデッサの3箇所の港は、2019年の統計によれば、ウクライナの総輸出の64.8%、そして輸入の67%が通過。ここを安全にすることにより、世界の穀物価格が安定する。だからフランス政府として意義を説明しやすい。

 オデッサに派兵するとしたら、それは飛来するミサイルを迎撃できる、防空部隊が中心になるだろう。しかしパリ五輪でもこれら高射部隊は警備に必要だ。そこにジレンマがある。

 ベラルーシ国境沿いとか、ヘルソン州、ハルキウ前縁などに、仏軍部隊が防衛線をつくってやるというオプションも、あり得る。

 いちばんありそうにないのが、仏兵がウクライナ兵といっしょに塹壕に籠もって防戦するという、参戦の仕方だろう。

 ※雑報によると、オデーサにはすでに仏兵がいるという。ルーモアだが……。

 次。
 Boyko Nikolov 記者による2024-4-7記事「Zelensky ‘surrendered’ to Trump, Kyiv is ready for an arms loan」。
   トランプは、ウクライナは米国から只で武器を貰おうとするのではなく、分割払いで買えよ、との意見。『シュピーゲル』紙によれば、ゼレンスキーは、そうするしかないと思い始めた。

 乞食ゼレンスキーは「最低25基のペトリオット発射機(6個~8個高射大隊分)」が必要だとさいきんでは強調している。

 それを只で貰おうというのだからずうずうしい。だったらツケで買えば? —というのがトランプの考え。

 ※この場合、ゼレンスキーには奥の手がある。トランプ政権からのローンで天文学的な額の兵器を買い、もしそれが完済されなければロックマートの経営が傾くという水準まで注文しまくる。そうなった後でロシア軍がウクライナ領土を占領してしまったら、米国の債権は紙屑となるのである。


兵頭二十八 note

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自転車で勝てた戦争があった


「キャンピングカー・ホテル」業を自由化したらいいんじゃね?

 トレーラーのキャンピングカー内に、客を泊まらせて、ドライバーが、客から宿泊料を取る。
 深夜、客が寝ているあいだに、長距離を走行して、次の観光地、または客の地元の町まで、送り届けてやる。

 これで観光地の一過性のホテル不足も解消じゃ!

 建物と違い、車両は、速く量産してしまえる。
 したがって、《人手不足でホテルが建てられねえ》という、現今の日本経済の悩みは、すぐ緩和されよう。

 ビジネスマンの東京出張も気楽になるよ。当日のホテル予約ができるかどうかという心配は、皆無になるんだから。

 次。
 Oliver Parken 記者による2024-4-5記事「Japan’s Tsunami-Fleeing F-15s Took To The Road」。
    このほどの台湾地震の直後、航空自衛隊の那覇基地では、所在のF-15を遅滞なく高所の非軍用道路上へ移動させて、万一の津波襲来に備えたことがわかった。

 ※「X」の写真を見ると、トーイングカーで移動させたようだ。これならパイロットはいなくてもいいし、エンジンをかけなくてもいい。機首と機尾をギリギリくっつけてデンスパックしといても無問題だ。

 ※宮城の「F-2」の二の舞はしませんという手本を示してくれた。空自はあれから、ちゃんと考えていたんだ。ホッとしたぜ。

 ※ちなみに3月28日に嘉手納基地にF-22(第199戦闘機スコードロンと、第19戦闘機スコードロン所属)が季節増強のため飛来していた。嘉手納は那覇基地よりも標高が高いから、津波の心配は無かったのか?

 次。
 Boyko Nikolov 記者による2024-4-6記事「Starlink boosts Russia’s sea drone with P-15 warhead in play」。
     ルーマニアの沿岸警備隊が、水曜日にTuzla村の近くを巡回中、怪しいロボット艇を発見した。

 船外機×2で高速を出せるようにしたゴムボートの上に、無骨な物体がとりつけてあった。

 押収された無人ボートは、コンスタンツァ港から14kmのところにあるルーマニア海軍の「Capu-Midia」試験場へ運ばれた。

 然るにこのボート、4月5日に轟然爆発して四散したという。

 このボートに関するニュースは4月6日までまったく報じられなかった。

 ルーマニア国防省は、それは海洋版のドローンだった、とだけ発表した。

 これについてテレグラムのロシア語チャンネルのひとつが解説している。排水量3トンの古いレスキュー艇にスターリンクを搭載したものだという。

 おそろしいのは、搭載されていた爆発物。ソ連時代の第一世代の対艦ミサイルの「P-15」の弾頭をそのまま載せているという。

 「P-15」の弾頭には二種類ある。通常型は、重さが480kg。高性能炸薬が入っている。
 もう一種類は「P-15M」といって、テルミット弾頭。こっちだと513kgあるという。

 ※特攻無人ボートも、いつまでも宇軍の専売特許じゃない。すでにロシアは模倣しキャッチアップしようとしている。こいつが世界中に技術拡散するのは、時間の問題だ。


タタルスタン州のNizhnekamsk市にあるロシアで三番目の規模の石油精製プラント。「小型輸送機」サイズの無人特攻機が突っ込んで爆発した。ウクライナ領内から1200kmは飛行した模様。

 一説に、この改造特攻機のペイロードは660ポンドだという。数十km離れた工業団地では「シャヘド136」をライセンス製造しており、そこにも同じ特攻機が正確に突入した。4月2日のこと。

 次。
 Svetlana Shcherbak 記者による2024-4-5記事「Satellite Images Reveal Over 60 Aircraft at russian Airfields in Engels, Yeysk and Morozovsk Prior to UAV Attack」。
    4月4日の晩から5日の未明にかけての夜間に、ロシア西部の複数の航空基地が、ドローン攻撃を受けた。
 エンゲリス飛行場はウクライナ国境から700km離れているが、やられた。
 国境から300km離れたところのMorozovsk空港、150km離れたYeysk空港も、やられた。

 3機の「ツポレフ95MS」戦略重爆撃機を含む19機が損傷したという。
 Yeyskでは、2機の「スホイ25」が破損した。

 攻撃前の民間衛星写真で確かめると、この3箇所の航空基地には合計60機以上が駐機していた。

 エンゲルス空港の4-4朝の写真には、8機の戦略重爆が写っている。ツポレフ160が3機と、ツポレフ92が5機。他に、イリューシン76とツポレフ22が1機ずつ。

 Yeysk空軍基地には、L-39練習軽爆×10機、アントノフ26輸送機×5機、アントノフ74×1機、アントノフ12×1、スホイ27戦闘機×4、スホイ25×4、スホイ30×1機、カモフ27ヘリ×?機、ミル8×1機、ツポレフ134UBL練習機×2機がいたと判る。

 モロゾフスク飛行場には、4-4時点で、戦闘機が29機所在。多くは「スホイ34」である。これも「Planet Labs」の衛星写真で確認できた。

 ※宇軍は片道特攻UAVを50機以上、飛ばしたようだが、それらがただGPS座標指定をされていただけならば、19機も効率的に破壊することはできない。それらの特攻機には「マシンビジョン」が搭載されていて、駐機している敵軍用機の機種を見分け、高価値目標を自律的に選別し、直撃する仕様だったのであろう。とうぜん、「ツポレフ160」を優先破壊するアルゴリズムだったと考えられるのだが、おそらく露軍側では「ブラックジャック」についてのみは機内でクルーを寝泊りさせて、警報あり次第離陸させられるようにしていたのであろう。もしブラックジャックが破壊されれば基地司令官には刑務所行きが待っているので。

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 Joseph Trevithick 記者による2024-4-4記事「Four Stealthy AGM-158C Long-Range Anti-Ship Missiles Flew Together In “Historic” Test」。
    2機のF/A-18 スーパーホーネットから4発の「LRASM」を同時発射する訓練が実施され、すべてうまく行ったという。

 テストの場所と日時については非公開である。
 しかし対支の実戦をシミュレートしたことは疑いもない。

 げんざい、米海軍の保有機で、LRASMを発射できるのは、スパホだけ。「P-8A」からも発射できるように、改修工事がすすめられているところが、とうぶんは、それは仕上がらない。

 米空軍は、B-1BからLRASMを発射できる。F-35は、機内弾倉にこのサイズの巡航ミサイルは入らないので、無理に運用させようとするなら、機外吊下とするしかない。

 メーカーのロックマートと米海軍は、LRASMを軍艦の「マーク41」VLSからも発射できるんですよ、と議会にアピールしている(実験は既に成功)。

 LRASMには、いまのところ、2つの型がある。
 AGM-158Cは、「C-1」とか、「LRASM 1.1」とも称される。これが今、配備済みの型である。

 もうひとつの型は、開発中のもので、「C-3」とか「LRASM-ER(エクステンデト・レンジ)」と呼ばれる。

 どちらもステルス性の高い対艦巡航ミサイルである。

 そもそもLRASMは、空対地スタンドオフミサイルの「JASSM」を進化させたもので、機体のコア部分はJASSMと類似している。

 「C-1」の航続距離は、200浬から300浬のあいだである、としか公表されていない。すなわちそれはJASSMと同じだ。

 LRASMは、飛行中に、みずからESMによって敵艦の出すレーダー波をキャッチし、それらのレーダー波によって最も探知がされ難くなるような、最適のアプローチ針路を、じぶんで案出して突っ込む。

 敵空母が、最初は電波封止をしていたが、とちゅうから我慢できなくなってレーダーを稼動させたような場合、飛翔しながらそれを察して、すぐにそっちに目標を変えて突っ込む、という自律判断まで、できてしまう。

 敵艦が見通せる位置まで近づくと、赤外線イメージ照合が始まり、敵空母や敵駆逐艦の最も脆弱な箇所をピンポイントで直撃する。

 いま開発中の「C-3」は、レンジが伸びる。おそらく「AGM-158B JASSM-ER」と同じ、600浬くらいになるだろう。

 米海軍は、「C-3」を2026年のなかばから、F/A-18 スーパーホーネットに運用させるつもりである。これは米海軍が出しているFY2025予算要求から推定できる。

 2030年までに米海軍と米空軍は、1000発以上のLRASMを調達するつもりだ。

 ※今から予測できてしまうのだが、中共海軍は、空母や揚陸艦の舷側に巨大な白地の垂れ幕を下げて、そこに「赤十字」マークを映示させる技法を研究中だと思う。病院船を攻撃できないようにしているはずの、LRASMの画像イメージ照合のアルゴリズムを、逆手に取るわけだ。

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 Boyko Nikolov 記者による2024-4-3記事「Enigma unraveled: Australian E-7A Wedgetail ‘shot down’ Su-34」。
   豪州空軍は、その所有するAWACSである「E-7A」を、2023-10にドイツのラムスタイン基地に展開させていた。支援員100名とともに。それが4月2日に豪州に戻ってきた。

 どうやら、この「ウェッジテイル」の情報にもとづいて、クリミア方面でロシア空軍の「スホイ34」が3機、撃墜されたのではないかという。

 ウェッジテイルはウクライナ領空では作戦しなかったはずだ。しかし、ポーランド領空は使っただろう。黒海の公海上も飛んだだろう。そのくらい離れていても、西側のAWACS機には、露軍機の動静が見えてしまうのである。


兵頭二十八 note

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次の《自転車企画》のために 皆様のお知恵を拝借


自転車で勝てた戦争があった


カリフォルニア州議会に提出されている先端的な法案。従業員は、その日の課業時間が了ったなら、上司からの電話やメールには出なくても可いという明確な権利を州法で保証する。

 フォックスニュースによると、この労働には公務員も含まれるという。もちろん、救急隊員などは別だ。

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 Thomas Newdick 記者による2024-4-3記事「Multiple Taiwanese F-16s Damaged In Powerful Earthquake」。

    花蓮空軍基地に所在した台湾空軍の複数機のF-16がこのたびの地震で損傷した模様。ロイターに対して台湾空軍が正式に認めた。
 損害は軽微だという以外、詳報は無い。

 台湾空軍は2021-11から、アップグレードされたF-16Vを運用開始している。
 この機体はAESAレーダーを備え、空対艦ミサイル「ハープーン」その他を投射できる。

 台湾軍は本年中に、新品の70機の「F-16C/D」の受領も開始する。

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 Thomas Newdick 記者による2024-4-4記事「Harpoon Missile Malfunction On Danish Frigate Closes Part Of Baltic Strait」。
    ハープーンのブースターモーターが不意に点火してしまうトラブルに、デンマーク海軍のフリゲート艦隊が見舞われているらしい。

 暴発はブースターの固体モーターだけで、そのあとのターボジェットエンジンには点火しない。また弾頭は、このようなときに爆発することはない設計である。

 とりあえず、懸念されるフリゲートを碇泊させているドックから、水平最大7km×上空1000mの扇状空間内には他船や他機を近寄らせない措置が取られた。

 問題発生した艦は『Niels Juel』で、げんざいはバルト海のZealand島の軍港にて原因解明中。

 このクラスのフリゲートは、ふつう、ハープーンを8発搭載する。必要とあらば、他の兵装を削減することによって、ハープーンを16発まで増やすことも可能だ。

 紅海に派遣されている別なフリゲートの『Iver Huitfeldt』は、フーシからドローン攻撃を受けたときに、レーダーと防空ミサイル・システムがうまく作動しなかったという。
 この報告は昨日、デンマーク軍総司令官に届いた。
 報告によれば、30分ばかり、ESSM(艦対空ミサイル)を作動させることができず、そのため、連装の76㎜主砲をドローンに向けて射ちまくり、弾庫の半分を空にしたという。しかもその76㎜砲弾は、標的よりずっと手前で自爆したので、その破片は自艦に降り注いだという。

 それでも『Iver Huitfeldt』は、飛来したドローンのうち4機を撃墜。射ち漏らしたドローンは他船へ向かったという。
 そのあと、ESSMが機能復活したので、3発のミサイルを発射した。

 76㎜砲弾は50発から100発を射耗したという。

 ※このビデオは早く公開して欲しいよね。レイテ海戦みたいな絵柄になっていることだろう。

 次。
 Defense Express の2024-4-4記事「russians to Find Cheap Way to Equip FPV-Drones with Machine Vision for Just $150」。
    宇軍も露軍もFPV特攻機に「マシン・ビジョン」回路を搭載して、敵のEWを無効化する手に出てきた。現下の課題は、この回路をいかにチープに調達するかである。

 露軍がいま、自爆ドローンに搭載している「マシンビジョン」の回路基板は、単価が120~150ドルくらいだろう。8コアの、2.4ギガヘルツのプロセッサが1個。それに4GBのメモリーチップ。
 これは戦場で拾われた機体を調査してつきとめられた。

 マシンビジョンとは要するに画像イメージを自動でトラッキングする簡易AIである。

 また露軍の最新のFPV特攻機の弾頭起爆装置には「ウィスカー」と呼ばれる金属ワイヤーが使われている。とにかく1機を安く作ることを工夫している。「チープ化&大量投入」競争が、既に始まっているのだ。

 この自律誘導特攻機の価格破壊の趨勢は、まもなく、ホビー用のドローンよりも安い単価を実現するところまで、行き着くだろう。

 ※戦車の時代が過ぎ去っただけじゃない。対戦車ミサイルの時代も終わろうとしているのである。

 次。
 Defense Express の2024-4-4記事「How Ukrainian Forces Use M1 Abrams Tanks Near Avdiivka, Insights from Soldier and Analyst」。
    ポーランドの分析者によると、宇軍はしばしば「M1」戦車を単車で歩兵部隊に分属させ、火力支援車として役立てているそうだ。

 また「M1」戦車や「M2」ブラドリーを、他のAFVのグループに1両づつ分属させているケースも多いという。
 ※これは搭載されている卓絶した光学ISR機能を、味方の小部隊のために役立たせようという使い方だね。

 次。
 Defense Express の2024-4-4記事「CAESAR Howitzer Has Unexpected Advantage Over Korean K9, as Estonians Praise its Mobility」。
    エストニア軍から爆弾証言が飛び出した。同国軍がすでに調達している装軌式の「K9」の機動力は、装輪式の「カエサル」に劣るという。だから155ミリ自走砲としては、これからは「カエサル」を買うという。

 しかし、フランスのウェブサイト「Opex360」によれば、エストニアがカエサルを選択したのは、隣国のリトアニア軍と装備を共通化させることにメリットがあるからだという。

 また、時間ファクターも大きい。エストニア政府の見るところ、ロシアは間もなくバルト海で対NATO戦争を開始する。それに間に合わすためには、もはや性能本位で選んでいるひまなど無く、とにかく納期の早い既製品を早く調達してしまう必要があると。

 次。
 ストラテジーペイジ の2024-4-4記事。
   ロシアは『ラダ』級の潜水艦の建造を、ついにあきらめた。
 『キロ』級の建造だけを、続ける。


1馬曳きの36式2輪輜重車は50貫=188kgまでしか積めなかった。

 それに対して支那馬車は500kg前後も積載できた。馬鹿の開発、休むに似たり。

 次。
 5月に並木書房から発売される『自転車で勝てた戦争があった』の目次(抜粋)は以下の通りです。

 第1章 インパール作戦 「置き去り」にしたかどうかで決まった「餓死者数」
 ◎「チンディッツ」部隊とは?
 ◎患者を後ろへ退げられないとき、食糧も前へ行かない

 第2章 日露戦争は「自転車にとってのタイミング」が悪かった
 ◎第2次ボーア戦争よりも前の自転車は《高額なオモチャ》だった
 ◎ダニエル・テロンの自転車コマンドー戦術
 ◎「自動車」が「自転車」のライバルとして登場したタイミングの悪さ

 第3章 なぜ「マレー進攻作戦」だけが「銀輪」活用の成功例となってしまったのか?
 ◎日本の自転車工業と幕末人力車の縁
 ◎日清戦争と自転車
 ◎対米戦争後半の内地自転車事情

 第4章 「東部ニューギニア」と「ガダルカナル」の悪戦を、自転車は変えられたか?
 ◎補給点に物資が堆積していても、前線では飢えてしまう仕組み

 第5章 ベトナム人だけが大成功できた理由は?
 ◎「ブチル・ゴム」チューブと「インドシナの独立」は、関係がある?

 第6章 自転車は「エネルギーと食料の地政学」をこれからも左右する
 ◎鉄道と自転車には、相通ずるところがあり、それは中世の「駱駝」と比べられる
 ◎イタリア軍の先進的な考え方
 ◎手押しスクーターは、非常時の食料・肥料・薪炭の配分に大活躍する

 コラム「自転車歩兵部隊を乗馬歩兵部隊と比べた長所と短所は何か?」

 あとがきにかえて 少子高齢化社会に向き合いつつ、周辺国からの侵略に強靭に対処するには

 次。
 Defense Express の2024-4-3記事「The Ultimate Advantage of Ukrainian Long-Range Kamikaze Drones Revealed」。
    DSMACは「Digital Scene Matching Area Correlation」の略号で、1980年代にトマホーク巡航ミサイルのために開発された、地形照合航法システム。
 ただし90年代まではメモリーチップの容量が小さかったから、限られたキーポイントの地形・地物についてのみ、限られたマッピング情報を、発射前に仕込んでおけるだけだった。
 今日ではメモリー容量はいくらでも大きくできる。DSMACの地図ライブラリの中に、戦域の全詳細地図を仕込んでしまうこともできる。ミサイルやドローンは、それを頼りに自力で自己位置の把握が可能なのだ。これを利用することで、露軍のGPSスプーフィングの努力は意味をなさなくなる。カリニングラードのアンテナからは、バルト海全域の民航旅客機を危険に晒す妨害電波が発射され続けているが。

 巡航ミサイルの終末自律誘導は、今日では、「イメージ照合」を使うことが多い。「ストーム・シャドウ」はこれを使って、ドライドック内の敵潜水艦に正確に突入できたのである。
 メモリーチップの性能がよくなったから、標的とする敵艦のイメージをライブラリとして載せておける。それを、ミサイルのカメラからの映像と照合する。これも一種のAIだ。

 ロシア西部の精油所の蒸留塔の高いところを、ウクライナの長距離自爆ドローンが2機、たてつづけに直撃するビデオが地上から撮影されている。終末誘導をDSMACの簡易版に実行させることにより、安価なドローンが、大きな仕事をやってくれるようになったのだ。

 ※片道特攻の長距離ドローンが、良導体の「紐」を点々と撒布しながら、延々と敵国内の高圧送電線に沿って飛び、毎日、モスクワ周辺の数十ヶ所に停電を起させ続けることは、DSMAC以前の技術しか使えなかったとしても、雑作が無いはずである。これなら「大量破壊兵器だ」とか「無差別爆撃だ」とか第三者からくだらないクレームをつけられることもない。而して敵国に与えるダメージは深甚だ。開戦から2年も経っているのに、いまだにこの策を実行できないウクライナ人は、現代のネアンデルタール人と呼ばれても仕方あるまい。

 次。
 Militarnyi の2024-4-3記事「In March, Russia struck Ukraine with more than 600 drones, 3,000 KAB bombs, and 400 missiles」。
   3月の露空軍機は、誘導爆弾を3000発も使用した。

 3月31日には、ウクライナ空軍機が「R-27」空対空ミサイル×1発によって、露軍の「Kh-55SM」巡航ミサイルを撃墜した。場所はRivne郡。

 ただしこの巡航ミサイルは囮に使われたようだ。弾頭には「擬核弾頭」が載っており、着弾しても爆発せぬ仕様であった。

 次。
Jamie Dettmer 記者による2024-4-3記事「Ukraine is at great risk of its front lines collapsing」。
    イーロン・マスクが語っている。モスクワは全ウクライナを占領することはできないが、ドニエプロ川までは西進できる。さらに時間をかければ、オデッサまでは征服できると。

 土曜日に露軍は、開戦いらいひさびさに戦車を集中した大規模な攻勢を仕掛けたが、宇軍の第25旅団がその突撃を破摧した。前進してきた部隊の三分の一にあたる、12両の戦車と8両のIFVを破壊したという。

 ザルジニーの適切な表現。「ワン・チャンスの戦争」になっている、と。
 たとえば「ストームシャドウ」は一時的に大戦果を挙げたが、すぐに露軍はその必要な対策を理解して措置した。だから「ストームシャドウ」にはもう次の戦果は報じられては来ないという具合。

 ある将校いわく。F-16は2023夏に来ていれば大活躍したろうが、2024夏ではもう遅い。大したことはできまい。

 さいきん、クリミア半島北部のDzhankoyから、ロシアが「探りのミサイル」を放ち始めた。それらは爆発弾頭を装着していない。彼らは対F-16用に「S-400」を配置するための最適の間合いを観測中なのである。西側のAWACSにはどこまで見えているのかを探っている。

 ウクライナ軍の複数の将校いわく。宇軍は400万発の砲弾と、200万機の特攻ドローンを必要としている。

 馘になったザルジニーの後任の、シルスキー将軍が先週、国内メディアに対して語った。ザルジニーが2023-12に要求していたような、50万人の追加動員は、必要ないと。
 また新規の招集兵の多くも、3~4ヵ月の集中訓練のあと、最前線ではなく後方のデスクワークをしてもらうと。

 これらはすべて国内政治である。キエフの現政府が国内で不評なので、苦し紛れのごまかしを喋っている。

 火曜日のゼレンスキーの署名。これまで徴兵登録は27歳からとされていたが、それを25歳からに引き下げる。


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Marwa Rashad and Vladimir Soldatkin 記者による2024-4-2記事「Russia’s Sanctioned Arctic LNG2 suspends Gas Liquefaction, Sources Say」。
    ロシア最大手の液化天然ガス生産会社のNovatekは、「北極LNG2」事業を休止した。LNGタンカー不足と西側の制裁が効いているため。
 同事業は今年の第一4半期にスタートするはずだった。

 北極海で使われるLNGタンカーには「Arc7」の砕氷性能が求められる。すなわち厚さ2mの海氷を割って進めなくてはいけない。船体は二重とし、スクリューも特製となる。
 同社が必要とするそのタンカーのうち15隻はZvezda造船所でこしらえる。
 6隻はHanwaでこしらえる。
 3隻はSpvcomflot社が建造する……はずだったがこれはキャンセルされたという。
 3隻は三井OSK汽船が建造する。

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 Ritu Sharma 記者による2024-4-2記事「Chinook ‘Roars’ In Kashmir; US-Origin Chopper Performs Maiden Landing As IAF Activates 1st Highway Airstrip In J&K」。
     カシミール高原にインドが建設していた、ハイウェイ連接の非常時用滑走路が完成したので、まずCH-47チヌークを着陸させてみた。

 場所はAnantnag。
 カシミールの近くには空軍基地として、SrinagarとAvantipurがあるが、ここから発進した固定翼機が緊急着陸するのにも、ここを使うことができる。

 次。
 ストラテジーペイジの2024-4-3記事。
    HIMARSの現況確認。
 2024-3までに、ウクライナは米国からぜんぶで39両のHIMARSを貰っており、そのうち2両を修理のために国外へ送り返している。この2両は被弾損傷したものだ。またそれとは別に1両を、露軍によって完全破壊されている。よって現在、36両を運用中だ。

 宇軍はHIMARSからこれまで1万2000発の終末誘導ロケット弾を発射した。
 米国内ではこのロケット弾は年産1000発にすぎないが、過去の累積製造数が6万発以上あって、そのストックはまだ残っているという。

 ロシアは、多数のHIMARSを破壊したと宣伝しているが、1両だけを除き、すべて、デコイを破壊しただけ。

 HIMARSは多連装だが、実戦では、同じ場所からは2発までしか発射するべきではない。発射の寸前まで、建物内などに車両を隠しておき、広い場所に出たら手早く1~2発を発射し、即座に河岸を変える。これを励行しないと、露軍の偵察UAVにすぐに見つかるようになっている。

 次。
 Ellie Cook 記者による2024-4-3記事「Russia Lost Almost 1,000 Artillery Systems in March」。
  3月は激戦だった。露軍はその1ヵ月で、砲兵装備を976門、損耗したという。

 また、2022-2いらいのトータルの露軍の砲兵装備損失は、1万1142門だという。これは水曜日の発表で、その前日に破壊した30門を含めているという。

 これに対してロシア国防省は、宇軍の砲兵はこれまで2年間で8629門を喪失したと言っている。火曜日発表。



自転車で勝てた戦争があった


フランスは現在ルーマニア国内に1500名の仏軍部隊を駐留させているが、2025年までにこの部隊を4000人に増強する。

 その部隊は50両のルクレール戦車を装備するであろう。
 その120㎜砲は自動装填で、4km先の動いている標的にも当てられる。

 次。
 Scott Murdock 記者による2024-4-1記事「Meet the Infantry Squad Vehicle: the Unholy Union of Pickup Truck and UTV」。
   ISV=歩兵分隊用車両。これを米陸軍は導入しつつある。バギー型のオープントップの4×4。なぜトラックではいけないのかというと、トラックは「遅い」から。FOB(最前線)まで速く駆けつけることが重要だから。

 「GMディフェンス」社は、民間の「シヴォレー・コロラド ZR2」の車体の上半分をとっぱらって、バギー化した。90%のパーツは共通である。

 エンジンは2.8リッターの「Duramax」。これも流用。ちなみにGMCの「キャニオン」もこのエンジンを積んでいる。

 トランスミッションは「6L50」という6速オートマで、やはりGMC製の「コロラド」や「ユーコン XL デナリ」が使っているものを流用。

 屋根は無いがロールケージはある。そこに迷彩網を丸めて載せれば屋根代わりになる。
 座席は9人分もある。

 米陸軍ではまず、第82と第101空挺師団から、このISVを持たせる。ひきつづいて、他の部隊にも普及させる。

 ISVは、ロールケージ込みでもチヌークの荷室に入る。

 患者輸送用バージョンは、長さ5.5フィートの寝台と、4~5名分の座席。

 座席を2名に減らして荷台を最大化すれば、そこには3200ポンドの重火器や弾薬類を積載できる。しかも、上空からはあまり目立たないというところにISVの効能がある。

 ヘッドライトは赤外線に切り替えられる。それで夜道を疾走できる。

 ISVの横幅は82インチ。高さは84インチである。これでCH-53の荷室にも収まる。

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 Defense Express の2024-4-2記事「Poland Wants to Spot russian Cruise Missiles From Fire Lookout and Cellphone Towers, Get Notified via Mobile App」。
    ポーランドはだだっ広い森林国で、「高地」が無いために、「見張り」が難しい。
 そこで、原生林内には点々と、高さ35mの「火の見やぐら」を設けている。ここから人が見渡すと、半径10km~15kmの視程が得られるという。

 ポーランド政府は、この既存の「火の見櫓」を利用して、ロシアの巡航ミサイルを早期警戒するネットワークを構築しようとしている。

 すでに櫓の4割にはリモコンできるモニターカメラがとりつけられている。これは「野火」を発見するための設備。

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 ストラテジーペイジ の2024-4-2記事。
   ロシアのバルチック艦隊は今、潜水艦×1、駆逐艦×1、フリゲート×2、コルヴェット×22である。この他に揚陸艇、掃海艇、警備艇などの補助艦艇が数十隻。

 ロシアの7人乗りのトロール漁船『Kapitan Lobanov』は、バルト海での漁を了えてカリニングラードに帰港する途中、この狂犬艦隊からミサイルを2発、撃ち込まれてしまった。

 1名即死。2名行方不明。4名が救助された。
 漁船は全焼した。

 関係者にはロシア政府から緘口令。おかげで事件の発覚までに数日が経過した。

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 Thomas Newdick 記者による2024-4-2記事「Russia’s Shahed-136 Factory Attacked By Light Plane Converted Into A Drone」。
    露領のタタルスタンにあるTelabugaという町でイラン設計の「シャヘド136」を量産していたのだが、そこに無人爆装機が特攻してきた。
 この機体が低空飛行しているところを誰かが撮影してSNSに上げた。
 それをみると、只のUAVではない。有人のウルトラライトプレーンを無人機改造したものだと判った。

 ウクライナのメーカーが戦前から製造販売していた「A-22」ではないかという。
 ウルトラライト・プレーンは、部品をバラした梱包で出荷されて、購入したユーザーが組み立てる。これは特攻機に改造するのにもちょうどよいのだ。

 A-22に燃料を満タンにすると、パイロット1名を乗せて680マイル飛べる。

 ※ネットで調べると、メーカーはAeroprakt社。2人乗り。英壕市場での商品名は「Foxbat」。米国市場では「Valor」。キットは500パーツからなり、この梱包を受取った人は、1人で500時間作業すると、機体を組み立てられる。初飛行は1996年。販売は2000年からなされている。失速速度は52km/時と自動車並。エンジンはRotaxの「912UL」(80馬力=60kW)が標準だが、他のエンジンにもできる。ウイングスパン10.1m。空虚重量260kg。MTW=450kg。最大速力170km/時。巡航160km/時。航続距離1100km。離陸滑走路は90m必要。



自転車で勝てた戦争があった


日本兵は“餓死”する必要など無かった!

 並木書房のHPから、来月の新刊『自転車で勝てた戦争があった』の予約ができるようになりましたので、ご案内します。

 戦前の日本の自転車を語る場合、それは宮田製作所を語ることと重なります。

 戦前のわが国を代表する自転車メーカーの創業者であった宮田栄助(1840~1900)は、明治9年に茨城県から東京に出て来て、すぐ砲兵工廠で雇われました。もともと銃工であったのと、西南戦争とが、幸いしたようです。
 彼は明治14年に東京府下の京橋に自分の製銃工場を持ちます。猟銃の受注生産と、工廠からの請負仕事とがあったと『宮田製作所七十年史』(S34)は説明をします。
 おそらく陸軍は、小石川の東京砲兵工廠の製造能力だけでは「十三年式村田歩兵銃」を急速量産できなかったのでしょう。その製造を、工廠と分担して民間工場が手伝うサプライ・チェーンが、自然に成立したのだろうと私は思います。ピーク需要をそうやって調節したのです。

 明治14年の『朝野新聞』に、種子島銃工が失職したので、村田銃量産のために東京に呼んだら、皆、優秀であったと書いてあるそうです。宮田は、彼らの間で成功モデルになっていた可能性があります。

 明治20年時点で、工場経営者であった宮田栄助本人が、それと同時に、工廠にも籍を置いていました。おそらく「十八年式村田歩兵銃」の量産にフルに関わっていたのでしょう。明治23年以前には、そういうことができたのです。

 宮田は明治23年に自分の工場を都内の本所へ移し、そのさいに社名を「宮田製銃所」にしました。『七十年史』はその理由を書いていませんが、私の想像では、「二十二年式村田連発銃」の部品の受注を期待し、意気込みを反映しているのだと思います。
 ところが、俄かに風向きが変わります。23年か24年に、工廠からの発注が止まったのです。

 これは、明治憲法が23年から施行され、帝国議会が同年に始まったことと関係があると思います。

 これ以後、砲兵工廠の当年度予算は、前年に国会で決められるようになりました。
 そんな整った予算制度がなかった草創期ならば、たとえば村田経芳の一存で、工廠内で猟銃商売(いわゆる「猟銃の村田銃」。古い軍用制式ライフルの機関部を転用して国内最安値の単発猟銃――散弾銃/マスケット銃――を民間に普及させようとした。受注カスタム生産であった)を推進したり、即決で周辺の民間工場に随意契約の仕事を外注することは自在だったのでしょう。が、もはやそれはゆるされなくなった。だから村田も23年に少将昇進と同時に予備役になっているのでしょう。その直前には、それまでの労をねぎらわれる形で欧州を公費で漫遊し、日本を留守にしています。巨額の設備投資をしていたさなかの宮田は、ボスの不在にさぞや気を揉んだでしょうね。

 すっかり「お役所」らしくなった東京砲兵工廠は、もはや「二十二年式村田連発銃」の製造を宮田に外注してはくれなくなりました。突如として宮田は、安定した収入源であった軍銃の下請けに、見切りをつけねばならなくなったのです。それで明治24年に自転車製造に転じたというのが、真相ではなかったでしょうか? これは私が『宮田製作所七十年史』を深読みした推測です。

 余談を続けましょう。村田は、早くも明治十年代において、日本の「銃猟家」としても「猟銃設計者」としても五指に入る有名人でした。
 明治25年に農商務省が刊行した『狩猟図説』には、村田猟銃には不発が多いこと、バレルに螺旋が入っていないことが指摘されています。
 宮田栄助が軍銃部品の請負に見切りをつけたとき、村田自身は、安価な猟銃の全国普及に没頭するようになっていました。そうすることが、明治22年にスイスの国民皆兵制度を視たときからの、村田の信念でした。

 明治32年発行の『銃砲正價報告書』は、横浜の金丸謙次郎の銃砲店で取り扱っている商品のカタログです。たしか、国会図書館かどこかにあったのを私は見ました。そこに村田式猟銃の図が載っていて、「十三年式村田歩兵銃」の機関部を流用していることがわかります。売価は¥10円から、いろいろあったことも……。とにかく安いので、マタギにも村田猟銃がいちばん普及したわけです。

 村田経芳と南部麒次郎には、似通ったところがあります。
 軍の工廠にはコンスタントに仕事が流れるべきなのに、しばしば、何の受注残もなくなってしまう「端境期」といえる時節が生じます。終身雇用制ではなかった明治時代、腕の良い工員たちは、すぐに外に実入りの良い仕事を探して転職してしまう。村田は、生産設備を一時も遊休化させない配意として、工廠の工作機械を使った猟銃商売を始めました。南部は、いっそ自分で民間軍需企業を経営してやろうと考えました。
 私は、南部は「日本のクルップ」になりたかったのではないかと思います。しかし、これは証明することができません。
 また、村田流の臨機即決的なビジネスの多角化は、時代とともに予算の執行手続きがうるさくなる一方の砲兵工廠の事務方と、かならずや摩擦・衝突をきたしたはずだと思います。しかし、それを証拠だてる史料もありません。

 杉浦久也先生ほか、多くの方が、戦前の兵器製造史の解明に挑んでおられ、その成果はめざましい水準に達しております。にもかかわらず、依然として明治の銃砲開発にかんしての、匿された真相が多く残っている。5月発売の『自転車で勝てた戦争があった』の中では、そんな想像も、あれこれと致しております。
 乞う、ご期待!

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 ストラテジーペイジの2024-4-1記事。
   3月後半に露軍はミサイル攻撃のターゲットを、ウクライナ国内の電力インフラに集中した。ハルキウ方面には15発のミサイルが分配され、たったそれだけでブラックアウトの一歩手前においつめられている。地域が電力を喪失すれば、「上水」の配給機能も止まってしまう。なぜなら水道施設のポンプはほとんどが電動だからだ。だから発電所攻撃や変電所攻撃、ダム攻撃は、戦略爆撃として、とてもコスパが好いのだ。発電所を爆破してしまえば、浄水場を爆破する必要はないのである。

 ※米軍理論では開戦の第一撃で発電所と送電インフラはすべて破壊してしまう。イラクでやったように。それは敵国内の指揮系統と基地機能を麻痺させるのが狙い。ロシアは2022-2-24にそれをせず、爾後2年間、都市破壊や港湾破壊にかまけてミサイルを徒費し、いまさらに米軍理論の必要性と有効性に気付いた。

 送電線は、ミサイルによっては破壊されにくいという長所がある。そのかわりに、ゲリラ/コマンドーの挺進潜入爆破工作にはかんたんにやられる。

 大都市の労働者が通勤するのに欧州では電車/路面電車がよく使われていて、バス交通網はそんなに発達してはいない。鉄道の送電網は、鉄道会社が線路に沿って独自に維持しているのだが、この給電を切断してやることにより、軍需工業の動員もできなくしてやれる。バスや私有車では通勤鉄道の穴埋めはできないためだ。

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 メーカーの3月のプレスリリース「ANAVIA HT-100」。
 ペイロードが65kgある、シングルローターの無人ヘリコプター。尾部ローターが無い、特殊な方式。
 滞空250分可能。
 最大速力 120km/時。
 50kgのペイロードを抱えて100km飛べる。
 20kgのペイロードなら400km飛べる。

 最大離陸重量は120kg。空虚重量は55kg。
 燃料タンクには「Jet-A1」や「JP-8」が60リッター入る。
 最大高度は3000m。

 エンジンはなんとターボシャフトである。出力15キロワット。
 リモコンのデータリンクは最大で200km届く。


並木書房
自転車で勝てた戦争があった─サイクルアーミーと新軍事モビリティ


自転車で勝てた戦争があった


中国で表札代わりにQRコードをアパートの玄関ドア上に貼り付け始めた。

 雑報によると、このQRコードからは、誰でも隣人のソーシャル・クレジット(社会忠誠指数)を確認することができ、当局への密告競争が促され、相互監視による公安も確立する。

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 Svetlana Shcherbak 記者による2024-3-30記事「Was the ODAB-1500 Aviation Bomb Used by the Enemy for the First Time: What Is Its Main Danger?」。
   ODAB-1500 は、サーモバリックの航空機投下爆弾である。重さ1.5トン。UMPKキットをとりつけることで、滑空爆弾にもなる。その場合はリリース点から水平に50km以上離れた地点を空爆できる。

 すでにウクライナの最前線にこれが落下し始めた。滑空型が。Sumy郡の村落に。

 ODAB-1500は、SNS上には2024-1に初めて動画が投稿された。しかし当初、西側は、それは「ODAB-500」なのだと勘違いしていた。

 ※ODAB-500とODAB-1500 を比較すると、後者の爆弾デザインが量産本意に簡略化されているのが一目瞭然である。お椀形コーンは、空力度外視の円錐コーンに。円環状空力安定板は省略。

 ODAB-1500は、仕組みとしては古いタイプのサーモバリックである。すなわち爆発は二段式になっている。まず地面から10m離れた空中で少量の火薬を爆発させて液剤を飛散せしめ、ついで、それに点火するのだ。

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 Boyko Nikolov 記者による2024-3-29記事「Russia sends Zubilo to Ukraine: not an APC, not a tank, not a robot」。
   ロシアが、多用途の4×4ロボット戦闘車を完成した。
 Zubiloといい、連装の23ミリ機関砲で武装。車体の後半には、ドローン兵器を前送し、負傷兵を後送するための十分なスペースがある。
 外見はAPCのように見える。しかし、操縦席は無い。

 この新装備は4月中に前線に現れると露兵は期待している。

 エンジンは350馬力。舗装道路なら100km/時を出せる。
 車重16トン。ほとんどは装甲の重さだ。正面については30ミリ機関砲に耐弾することを考えているという。
 荷台には3トンの荷物を積める。
 パーツの多くはKAMAZトラックから借用している。

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 ストラテジーペイジの2024-3-31記事。
   宇軍内にはげんざい、6万人以上の女性兵士が現役。すべて志願兵。
 そのうち5000名が、前線で狙撃手のような戦闘職種に就いているという。

 そして2024年春時点で100人前後が戦死し、500人前後が負傷した。

 2022-2以前は、宇軍の総体が小さかったので、女子比率は15%だったが、今は男子動員がかかっているので、女子比率は10%未満に薄れている。

 ロシアがクリミアを切り取った2014年から女子志願兵は増えた。今次侵略により、いったん除隊していたその人たちが再志願したケースも多い。

 男子用の戦闘服・防弾ヴェスト・ブーツ・が、女子にフィットせぬという問題は、クラウドファンディングと民間協力により、解決されつつある。



有坂銃 新装版 (光人社NF文庫)

北海道開拓使には7連発の騎兵銃 「帯刀」も許された明治期の銃事情
特別編 光人社NF文庫「有坂銃」


豪華クルーズ船は、1日に軽油を250トン、燃やしている。それをレギュラーガソリンに換算すれば8万ガロン強になる。1人の自動車オーナーが一生かけても消費し切れない量。

 ちなみに貨物船が40日間の航海をすれば、消費する重油の代金は1億円だそうだ。

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 Defense Express の2024-3-30記事「russians Produce Portable Kozerog BRT Rocket Launchers to Use Unexploded Ordnance for BM-21 Grad」。
    122ミリの地対地ロケット弾である「BM-21 グラド」。ほんらいは車載のMLRS用。しかしこれをドンバスの親露軍が、ガレージで自作した簡易型のラーンチャーから、単発~3連発で発射できるようにしつつあり。

 そのロケット弾はどこから供給されて来るのか?
 なんと、推進薬に点火せず、発射しそこなった、不良品のロケット弾を、再利用しようというのだ。露軍が投棄した、そういう不良品が、大量にあるらしいのである。

 簡易発射機には「Kozerog BRT」という名前が付けられている。

 BM-21を1発だけ発射できる、ポータブルな発射機の正規品も存在する。「Grad-P」という。

 長さ1.95mの「9M122M」ロケット弾は、最大射程が10.8kmである。
 「9M122MD」というロケット弾だと、最大で15km飛ぶ。

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 Svetlana Shcherbak 記者による2024-3-30記事「russia Develops Computer for FPV Drones with Machine Vision and There Are Other Equally Threatening Things」。
   FPVドローンの終末誘導を自律で実行させるための「マシン・ビジョン」とよばれるソフトウェア。宇軍が実用化で先行しているが、ロシア国内でも、これを小さな基盤回路にまとめた製品を試作中。

 クリミア連邦大学内の「Fablab」というところで開発しているという。製品名は「Grape Pi 1」。

 基盤に載っているマイクロチップはすべて輸入品である。
 たとえば1ギガバイトのRAMボードは日本のElpida製だ。
 グラフィックプロセッサーは中共企業「Allwinner」製の「H616」を搭載。

 ※雑報によると、スウェーデンの「Gothenburg」市立図書館で椿事が発生。この前の土曜日は休館日(全聖人の日という公定祭日)だったのだが、館員が前日夜に施錠を忘れた。そのため休館と知らずに来館した市民が450人いた。もともと貸し出しシステムは機械化&自動化されていたので、利用者は勝手に電気をつけていつも通りに本を借りて行ったという。その数250冊以上。盗まれた物や破壊された物はひとつもなかった。


並木書房の新刊『自転車で勝てた戦争があった――サイクルアーミーと新軍事モビリティ』は5月の連休明けに書店販売となります。

 ネット予約は4月から可能になるそうです。ねだんは1800円台でしょう。

 表紙カバーの袖の売り文句は、こんな感じになると思います(じっさいとは違います)。

 ――先の大戦での戦没日本兵165万人のうち37%を占めているとすらいわれる《広義の餓死者》。だが、1950年代のベトナム兵たちが主用したような「押して歩く自転車」を、兵糧輸送と患者後送の手段として役立てる着想さえあったなら、その餓死者数はゼロにおさえられた可能性があると著者は説く。ではなぜ帝国陸軍のエリート参謀たちにはそれができなかったのか? これまで誰も答えてくれなかった「そもそも」の疑問を、本書はひとつひとつ解き明かす。古今の自転車技術を探り、《追試実験》によって確かめられた真実……。日本兵は“餓死”する必要はなかった!

 このチャレンジングな難しい企画にご協力を賜りました皆々様方に、あらためましてこの場で謹んで御礼を申し上げます。
 ありがとうございました!

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 Jamie Dettmer 記者による2024-3-27記事「As Russia attacks, Ukraine scrambles to dig enough trenches」。
   ウクライナ国会に属する野党の有力議員が『POLITICO』に疑問を語った。宇軍の防御陣地工事能力が低すぎるのではないか。土工作業が遅すぎる。われわれは去年の夏から政府に勧告しているのに、一向に要塞化が進捗していない。

 ウクライナ軍による「反転攻勢」とやらは、露軍が掘った三線の塹壕陣地の前に、あえなく阻止されてしまった。

 英国のシンクタンクRUSIは2023-5に、露軍の野戦築城がいかに優れているかを警告している。そのとおりになった。

 野党政治家の言うところによると、宇軍はやっと2024-2になって、現陣地の強化工事を開始したという。遅すぎるスタートである。この調子で5月の敵の攻勢に間に合うとは思えない。

 匿名の退役将校いわく。宇軍には、あらたに土工した塹壕陣地の前に配する地雷の数が足りない。またその拡張した塹壕を守備させるのに必要な兵隊の数も足りない。

 永久築城のためのコンクリートのための巨額の予算が2024-2につけられた。ところがキーウ防衛線を視察してみると、ぜんぜんその工事が進んでいない。汚職である。カネが何か別なところへ消えている。
 最近たてつづけに政権幹部が追放されていることとも、これは関係があるのだろう。

 露軍は1.5トンの滑空爆弾を多用するようになった。これはますますたくさん投入されるようになるだろう。砲弾よりも量産が早いからだ。となったら、今までの塹壕構造ではもうダメだ。本格的な地下陣地を建設しなくては、兵士が心理的にもちこたえられない。

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 ストラテジーペイジ の2024-3-29記事。
    イスラエル軍は、ハマスに対して最新のMLRSである「Lahav」を使い始めた。2020年から装備されているが、今までは使っていなかった。
 米国製のHEMIT 8×8トラックに、複数のサイズのロケット弾を混載する。小さいのは122㎜径。大きいのは370㎜径。

 ※長射程ロケット弾は近間を攻撃することができない。これがカノン砲との違い。その不利を補うためには、短距離ロケット弾も同じラーンチャーから随意に発射できるように設計しておけばよい。

 もともと、米国製の「M270 MLRS」を国産品で更新するのが、開発の動機であった。

 122ミリロケット弾は、炸薬20kgを充填してあり、最大35km飛ぶ。これを18発集束したポッドを「Romah」という。35km飛ぶならガザの隅から隅まで制圧できる。

 227㎜ロケット弾は「Ra’am Eitan」と名づけられ、これは6発が1セットのコンテナに入っている。レンジは40kmで、弾頭はクラスターである。

 もっと古いロケット弾には、径306㎜の「EXTRA」がある。これは1ポッドに4発納められている。弾頭には炸薬120kg充填。レンジ150km。

 径370㎜の「Nitz Dors」は1ポッドに2発入り。レンジ300kmで、充填炸薬は140kgだ。

 これらのポッドコンテナを随意に選択して「Lahav」から発射できるのである。
 「Lahav」にはポッドコンテナを2個、同時に載せて行ける。

 車両にはアウトリガーとクレーンが付属する。

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 Boyko Nikolov 記者による2024-3-29記事「Italy procures three Israeli unmanned subs, vetted in a NATO drill」。
    イスラエルのIAI社製の無人潜航艇「Blue Wave」をイタリア海軍が3基、調達する。

 この無人潜航機は2023-5-1に存在が公表されている。
 全長10.9m、直径1.12m、重量5.5トン。
 深度は300mまでOK。速力は3ノット未満だが、そのかわり、自律的に30日間、活動してくれる。
 高性能な衛星通信機能付き。

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 Ellie Cook 記者による2024-3-28記事「Russia-Ukraine War Analysts Reveal Plan to Defeat Putin」。
   米シンクタンク「戦争研究所」=ISW の最新のまとめ。水曜日公表。
 西側は対露のアドバンテージを持っているのだから、それを使え。

 工業を動員せよ。

 ウクライナ政府の予想では5月後半からまた露軍の攻勢が始まる。

 げんざいロシアは、国内の全生産力の三分の一を、対宇戦争に注ぎ込んでいる。

 ISWの指摘。クレムリンの主な努力は、米国人の世界認識を操作することに集中投入されつつあり。ロシアの国益を第一に考えるべきだと米国人をして思わせる。

 西側は、ウクライナ国内の兵器弾薬生産力の増強に手を貸さなくては、危うい。

 露軍の最大の弱点は黒海艦隊なので、まずその弱点を徹底して叩くべし。すでに黒海のロシア海軍力の三分の一は消失した。



自転車で勝てた戦争があった