動物の「歯」を断ち切れる刀剣は昔は無かった。

 手元にメモがないので記憶で話すが、古代アッシリアの王様が使っていたカブトの素材は、イノシシかオオカミの「牙」だった。出土品があるようだ。
 多数の牙をびっしりと、金属か皮革のヘルメットの表面に、タイルみたいに隙間無く貼りつけてあった。
 防護対象が刀剣だけだったなら、この「牙」製ヘルメットは、無敵だったはずである。

 真剣で、肉屋から買ったブタの頭を斬ったりしたことのある人なら、これはぜったいに知っていることだが、日本刀でも、動物の「顎」は切断できない。歯に当たって、止まってしまうのだ。その部分の金属エッジは、もののみごとに欠けてしまう。人間の首をきりそこねて奧歯に当ててしまった場合も同様だということは、三島事件の検視リポートが裏づけている。

 だから、古代の「まがたま」というのは、オオカミかイノシシの「牙」なんですよ。もともとは。それを石で模造したのが始まりだと思う。

 特にオオカミの牙は、他の動物を怖がらせる効果があったらしい。人間には知覚ができない臭いのようなものが、乾燥した牙からも立ち上るのかどうか、そこが私には分からない。謎である。
 ただ、それをひとつでも首からかけていれば、バックカントリーで野獣避けになるという実用知識が、上代にはあったんだと考えたい。
 魔避け、ですね。

 さらにそれを首飾り状に連ねてたくさん身につければ、デコルテ部分は、刀剣から守られたかもしれない。

 たしか、アムンゼン隊の南極探検記で、犬ぞりの弱った犬を殺しては他の犬たちに食わせてやるのだが、犬たちは、あまり腹が減っていないときは、アゴの部分は敬遠して食べ残す。しかし、極端に疲れてくると、そのアゴの部分も平らげたという。ほとんど歯ですよ。消化できずに消化器官が傷むんじゃないか?

 拙著『武器が語る日本史』は、上記とは何のかんけいもない雑学満載で、ただいま好評発売中であります。

 次。
 MATTHEW M. BURKE 記者による2019-11-1記事「In military first, Army gives Marine Corps rocket system platoon a lift off Okinawa」。
    米陸軍所属の輸送艇LCU2022が、海兵隊のHIMARS(M142)を運搬する合同実験演習が、沖縄で成功した。

 海兵隊は、海軍との間では、すでにこうした舶載転送テストを済ませているし、最近ではデモンストレーションを8-14に実施した。

 今回、陸軍の小型揚陸船でも運搬できるのだと実証した。これは、沖縄や日本本土が中共からのミサイル攻撃を受けているさなかにも、日本列島の南西近海でHIMARSを自在に展開させられることを意味する。

 長射程で終末GPS誘導されるロケット弾を6連射できるHIMARSのランチャー車両は兵士3人で運用される。これに、1台の再装填補給車と、2両の予備弾運搬トレーラーが随伴。

 ※この記事についているLCU運搬デッキの俯瞰写真が興味深い。システムを構成するトラックの、排気管だけでなくて、吸気管までもが、キャビンの天井よりも高く直立していて、その先端はシュノーケル構造となっている。つまり、運転手が頭まで水没してしまうほどの水深に車体が浸かっても、エンジンは回し続けるつもりなのだ。当然、電装関係も防水だろう。米軍、さすがならずや。前に単行本でも書いているのだが、日本の自治体は、くだらない特製防災車両などを1億円以上もかけて調達するよりも、米軍仕様の大小のトラックをそのままたくさん輸入しといた方が、はるかに水害対処は自在になるはずだ。おそらく自衛隊の3トン半よりも、洪水には強い。千葉県民、聞いてるか?

 HIMARSはC-130でも空輸できるが、1両だけだ。
 陸軍のLCU(いわば現代の「大発」)なら、随伴車両ごと、余裕で搭載して運べる。しかも、海軍の強襲揚陸艦が近寄れないような浅い海岸に近寄って、そのまま岸にノシ上げられるのだ。

 『LCU2022』は、船名を『USAV ハーパーズフェリー』という。陸軍第10支援群が管理運用する。汀線にて前方のランプドアを倒して車両を搭載・卸下できる。

 ※次の課題は、強襲揚陸艦のフライトデッキ上からではなく、LCUのように側壁のある揚陸船艇のデッキ上からも直接に長射程ロケット弾を連射できるような方法をなんとか工夫することだろう。ひとつの方法はコールドランチ式に変えることだが、何年もかかってしまう。またひとつの方法は、最初は水平に発射するが、すぐにロケットが仰角を増して上昇するようにすること。Maxレンジは犠牲になるが、早く実現するだろう。そして緊急に可能な方法としては、積載デッキに薄く海水を張り、その海水をバッファーにする方法だ。陸自もすこしやる気を出して、MLRSと試験プールで、この方法がフィージブルかどうか試してみたらどうだい。

 次。
 ロイターの2019-10-31記事「U.S. envoy for Iran says Tehran spent $16 billion on ‘militias’ in Iraq, Syria: Al Arabiya」。
   イランはこれまでに160億ドルも、イラクやシリアのシーア派民兵のためにカネを使ったという。

 次。
 ストラテジーペイジの2019-11-1記事。
 米軍内の自殺事情。ちょっと忙しいので訳さない。参考にできるデータ。


明日あたり、新聞広告が出ますので、全国の書店の皆様、ご贔屓にお願いします。

 『武器が語る日本史』は好評発売中です。

 書いたあとの偶懐。
 日本では、平地を離れるとするなら、山に入るしかない。ところが山の扶養力は小さい。また、山の面積もそんなに広くない。

 欧州では、馬力を使うことで、次第に個人が村から独立した。
 日本では牛馬耕とは無関係に、村民互助構造を脱し得なかった。
 これが個人の独立自主心を圧迫し、有能な個人が悪い所属組織を庇おうとする堕落肯定根性を定着させた。

 長州は、条約による開港が、特権的な港湾税や通航税をとれなくなる未来に向かうのがいやだったので、欧米船を砲撃したくてたまらなかったのか。

 次。
 スウォーム補給母艦があり得るはずだ。

 1個口が80kg未満の荷物を100機以上のマルチコプターで陸岸まで揚陸できる高速艦。接岸する必要なし。ボートを卸す必要もなし。すべて有人ヘリか無人ヘリで済ます。

 合理的ですよ。

 次。
 Dan Goure 記者による2019-10-31記事「How Russia Conducts ‘Lawfare:’ The Case of Interpol」。
   いわゆる「ハイブリッド戦争」の一環としてロシアは、インターポル=国際刑事警察機構 を悪用中である。

 インターポールには、容疑者の逮捕権はない。しかし、テロ、麻薬密輸、サイバー犯罪、人間密輸送犯罪等を諸国家政府が取り締まる手助けをする。

 インターポルが発する「レッド・ノーティス」。これは、インターポル加盟194ヵ国が指名手配している人物について、他の加盟国にまず知らせる仕組みだ。

 「ディフュージョン」はもっと強い措置で、インターポル経由でそれを通知された国の官憲は、逃亡犯罪人引渡しを要求する国の代わりに、その人物を拘留する。

 ロシアはこの仕組みを濫用する。プーチンの政敵や、政府に批判的なジャーナリストたちを、「逃亡犯罪人である」として、インターポールからディフュージョンさせているのだ。
 中共とベネズエラも、同様の《法律戦争》を展開中だ。

 Bill Browder は国際的投資家で、人権を擁護する活動家であり、プーチンを批判している。そこでプーチンは彼をすでに7回、「レッド・ノーティス」させてきた。
 スペイン警察はそれに従って一時、Browder を拘禁したこともあった。

 またロシア外務省は、オレグ・スモレンコフの居場所をインターポルが探せ、と要求している。当該人物にはCIAに情報を洩らしたという嫌疑がかけられている。

 モスクワ政府は、プーチンにとって好ましくない人物が、インターポルから手配中である、との、フェイク・ニュースも捏造し、世界へ発信する。

 特にモルドヴァの民主主義政治家がこれをやられている。モルドヴァの政治機構をロシアの思うままに改変できないことが、ロシアには気に喰わないのだ。

 したがってプーチンに批判的なロシア人は、ロシアの言うなりに個人の身柄を拘束して引渡しかねないような諸国へは、けっして海外旅行をしない。 ※だから日本へも来てないよね。

 この問題に関して米国の連邦議会人はすでに立ち上がっており、インターポールを政争に利用することを米国内においては拒絶する法案を提案する予定である。

  ※ロシア、中共、韓国等、初めから国際法を守る気のないような政府と日本政府が何かを約束することは、それじたい、憲法違反行為になる。なぜって日本国憲法は、国際法遵守を主眼にしているのだからね。


予備隊がなぜ重要か。馬はしばらくすると疲れる。疲れたところに新手が突入してくれば、もう抗し得ない。だから総予備は騎兵でなくてはならないのだ。

 Antonio Regalado 記者による2019-10-30記事「The DNA database used to find the Golden State Killer is a national security leak waiting to happen」。
   クラウドソース型のDNA検索サービス「GEDMatch」というところがあって、先祖や親類を探したい米国人が使う。運営はボランティアである。

 しかしこのデータが中共やロシアのハッカーにごっそりと盗まれるのは時間の問題で、その後は、とてもまずいことになるだろう。

 リアル人物のわずかなDNAサンプルを取得するだけで、そいつがどこの誰兵衛なのか、敵国公安部には、正体が簡単に把握できてしまうようになるだろう。

 クレジットカードの番号ならば、変更ができる。ところがDNAは、変更などできない。他者にそれが把握されたら、一生、把握されっぱなしだ。

 ある業界人いわく、すでにデータが外国政府によって抜かれている痕跡があると。

 人々はじぶんのDNAテスト結果をクラウドサーバーにアップロードするのである。すると他者のDNAとの比較検索が可能になる。すでに(重複を含め)1300万人が登録済みという。

 米国の警察もこれを利用できる。たとえば2017に加州の殺人犯を絞り込むために、現場で採集されたDNAデータをアップロードし、それにマッチするDNAデータがないか、検索した。本人でなくとも、親戚の近似したDNAがひっかかれば、その親戚から犯人にたどりつけるかもしれぬわけ。

 それいらい、数十人の殺人犯と性犯罪者が「GEDmatch」の検索成果として逮捕に結びつけられている。

 あなた本人がDNA情報をアップロードせずとも、もし親戚の1人がそれをやらかせば、あなたは身体のプライバシーを守れないのである。たとえば、これから健康に生存できる見込みの余命、未来に発症するであろう病気などが、第三者によって推定されてしまうかもしれない。

 だいたい百万人のデータベースがあつまれば、全米のほとんどの住民は、その百万人のはとこかまたいとこ、ということになろう。

 DNAに数千箇所のマーカーをつける。これをSNPという。マーカーの重なり具合で、2人の人物の親疎のほどを読み取れる。もし、リアルの親子であれば、DNAの半分は、重なっている。

 DNAデータベースサイトのなかでも「23andMe」などは、ユーザーが勝手にデータをアップロードして照合に使うことは、できぬようになっている。

 使い勝手のよいDNA照合サイトは人気が出て登録者数も増えるが、同時に危険も増す。たとえば、誰かがあなたのDNAデータをコピーし、その一部だけを改変して、それをまた勝手に登録するかもしれない。

 あるお金持ちの親戚になりたくば、この手が使える。私は何十年も行方不明であった、あなたの甥なんですよ、と偽DNAを示して言えるわけだ。

 ※だめだこういう話を読んでいるとまた頭の中でミステリーのストーリーが走り出してしまうぅぅ。というわけで残りは端折る。

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 H I Sutton 記者による2019-10-29記事「First Navy Submarine Resupplied By Commercial Drone」。
    原潜が洋上で補給を受けるなんてことは従来あまり考えてこなかったが、小さなクォッドコプターを使えば、浮上中の危ないピリオドを最小限にして、小荷物ぐらいは受けることができる。この実験が、ヴァジニア型の『USS ハワイ(SSN 776)』を使って、なされた。場所はオアフ島の1海里沖。

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 Patrick Howell O’Neill 記者による2019-10-28記事「Russian hackers are targeting the 2020 Olympics」。
    9月中旬、ロシアGRUのハッカー部門が、すくなくも16箇所の、海外のスポーツ機関の反ドーピング部門に対して、サイバー攻撃を仕掛けた。

 東京五輪をムチャクチャにするのは、ロシアかもしれない。

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『太平記』巻第三十四に、いかさま一夜討ちして、「太刀の柄の微塵に砕くる程」、切り合わんずるに……という台詞が出てくる。日本刀のナカゴと柄の弱点は周知の現象であって、しかも、それを工学的に誰も改善できていなかった。
 古代東北の「蕨手刀」にはそんな問題がなかったのに、むしろそこから退化をしたままだったのだ。

 日本の内戦は、どれほど激しいように見えても、武器を進化させる高い進化圧を生まなかったと私は考える。

 詳しくは、いま発売中の新刊『武器が語る日本史』をごらんください。


近世の刀狩りの前に、古代の朝廷は「鉾狩り」に励んだ。

 新刊『武器が語る日本史』は好評発売中です。

 槍の話を別にしても、古代の圧倒的多数の細民(ほぼ農夫)は豪族の支配に従った。
 理由は、誰にとっても、それが省力的であったからだ。
 灌漑水路を含むインフラを各戸にて心配する必要はない。
 鉄器農具は支配者からシーズンごとに貸与された。
 支配者も、被支配者も、互いに面倒が省けたから、このシステムは持続した。

 かたや、細民が中央国家からじかに班田をあてがわれる仕組みでは、すべてが面倒になった。
 作柄の豊凶と無関係にキッチリと定額の租税を納めねばならない。インフラ整備の世話はじぶんで焼かなければならない。納税コストが自弁である。中央まで現物を運搬するなんてやってられるかと誰もが思う。
 面倒この上ないから、当然に反抗され、持続させにくい。

 もし中央が中央の労力で開墾した田畑を班田として与えたなら、互いに「省力的」だと考えられたかもしれない。
 しかるに古代の中央は細民の面倒を省いてくれなかった。
 反抗の潜在圧が強いところに、槍を野放しにさせることはぜったいにできなかったのだと想像したい。
 
 日本書紀によると皇極4年に中大兄は、みずから長き槍[ほこ]を執りて、殿のかたはらに隠れたり。
 鎌子は弓矢。
 ところが実行の段になると、中大兄はみずから「やあ」と叫んで剣[たち]を以て入鹿の頭肩[あたまかた]を傷[やぶ]り割[そこな]った……ことにされている。

 じっさいには剣はトドメの斬首に使われているだけだったのではないか?
 しかし暗殺が鉾によってなされたと公式史書に書くのは後世に悪影響があると当局者は考えたのではないか。

 また余談。
 アーサー王物語の中にこんなシーンが出てくる。弓手たちが騎士に向かって《引き返さないなら馬を射る。その先は歩いて行くことになるぞ》と脅すのだ。馬殺し用のヤジリがあった。武器の進化圧が高かったから、おそろしいカエシのあるヤジリも、いつまでも重用されていた。

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 Brendan Cole 記者による2019-10-28記事「Russia Unveils ‘Unique’ Weaponized Icebreaker as It Eyes Arctic Oil and Gas」。
    10-25に進水したロシアの新鋭武装砕氷艦『イワン・パパーニン』8500トン。厚さ1.5mの氷海を往けるだけでなく、艦対空ミサイルと、「カリブル」巡航ミサイルを発射できる。
 無補給で2ヵ月は動ける。
 就役は2022以降を予定。

 ロシア北方艦隊の司令部はバレンツ海のセヴェロモルスクにある。

 ※軍艦や公船に「固定武装=砲熕火器」がなくともよいのだ。漁業取締り船の中に、ジャヴェリンのような軽便な誘導ミサイルを置いてあったってかまわない。もちろん操作は、陸自から割愛された「海上保安官助手」がする。

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 Paul D. Shinkman 記者による2019-10-28記事「Trump, Pentagon Diverge on Need to Control Syrian Oil Fields」。
   トランプは、中東に米軍を配備する代価として、現地の石油が米国に与えられるべきだ、と、20年以上も前から言い続けていた。今回、またその話を出しただけ。

 次。
 ストラテジーペイジの2019-10-29記事。
    ベルギー軍の4×4のリンクス軽装甲多目的車両にヒビが発生して、使用中止とされる台数が増えてきた。

 いずれも装甲バージョンであって、非装甲のリンクス×120両は無問題だという。

 ベルギー軍がリンクスを調達開始したのは2007であった。メーカーはイタリアのイヴェコ。
 リンクスは自重7トン。
 米国のMRAPを参考に、V字断面にしてある。しかしサイズ的にはHMMWV相当。
 通常、5人乗り。

 かつて露軍もイタリアからリンクスを60両買おうとしたことがある。しかし2014にウクライナ侵略を始めたので、輸出が制裁対象となり、不可能になった。
 その前にはロシアはリンクスをライセンス生産したいと考えていた。2000両も。

 リンクスのエンジンは190馬力。ギアは6速。
 CH-47でスリング吊下できる。

 排気管には特別な素材を用いてあって、夜間に熱放出を敵のIRセンサーからみつけられにくいという。

 リンクスはこれまで総計4000両以上が売れている。

 米軍はHMMWVに増着装甲をとりつけたところ、自重過大となってサスペンションが傷み、シャシにクラックが生じた。やはり原因はそこだろう。


頼れるのはCH-47だと、またも証明されたわな。

 DAN LAMOTHE AND ELLEN NAKASHIMA 記者による2019-10-28記事「Tip from disaffected militant set in motion operation that killed ISIS leader al-Baghdadi」。
    2019-10-27の未明、イラク北部を8機の米軍ヘリが離陸し、数百マイルの敵地上空を飛翔してシリア北西部のアブバクルアルバグダディの要塞邸宅へ。この邸宅は数日間、米軍が24時間監視していた。

 ISに不満を抱いて離反したメンバーが、重要タレコミ人であった。彼はクルド軍に情報を提供するようになった。そしてついにバグダディの居所を通報。

 米軍による殺害作戦には「カイラ・ミュラー」という人名が付けられた。カイラは民間の支援団体員だったがISに誘拐されて繰り返しレイプされた上、殺されている。

 実施部隊にデルタフォースが含まれていたことは確実だが、それ以上の詳細は、いまのところ何も漏れていない。

 トランプ大統領はワシントンDCの某所にて、朝の5時頃に、この作戦の中継動画を視聴したという。

 トランプがホワイトハウスに戻ったのは午後4時。それまではゴルフ〔にかこつけた内密の打ち合わせ〕をしていた。
 ※『ワシントンポスト』は大統領が遊んでたような印象を与えようとしている。これではグーグル社がDoDの巨大サーバーを受注できなくても仕方がない。ベソスはポストを使って何がしたいんだ?

 ヘリ編隊の通過経路上でのトラブルを予防するため、米軍は、ある作戦が実行されることを、イラク政府、トルコ政府、ロシア政府のしかるべき相手にあらかじめ伝えていた。このような紛争回避連絡チャンネルは前から構築されている。

 部隊は要塞邸宅に到着すると、まず投降勧告した。※これは国際法上、必要。
 勧告に応じて、成人2名、子供11名が外に出てきたという。

 突入部隊は、ドアにはIEDがあると考えて、外壁を爆破して邸内に入った。
 バグダディはトンネルに逃げ込んで自爆ヴェストを炸裂させた。

 要塞邸内では敵ゲリラ5人が射殺されている。他に邸外でも何人か射殺した模様。
 バグダディは、米東部時間の午後7時15分に死亡確認された。

 突入班を指揮した部隊長が「ジャックポットだ」と報告してきたという。100%間違いなく殺った、と。

 DNA検証は、日曜日の朝に完了した。

 死骸の処理はイスラム流儀に則してなされた。基本的には、24時間以内に葬る。2011のビンラディンの場合は水葬であったが、今回はどうしたのか、それは不明である。
 ※水葬されたとの続報が出ている。

 すくなくも2人のバグダディの妻が死体になっていた。この女たちは自爆ヴェストを着装していたものの、じぶんで点火をせず、射殺されたようである。トランプは、この作戦を実行した部隊員がいかに大きな危険を冒したかを強調した。

 米軍側の負傷は、軍犬1匹と、軍人2名。2名の方は軽傷。

 エスパー長官によると、直接に敷地内に突入した人数は100名未満である。
 ヘリコプターとして複数のCH-47が使われたのは、確実。
 作戦開始早々、ヘリコプターに対して地域所在の者たちが先に発砲してきた。だから米軍は自衛のため射ち返した。

 殺害後、邸宅は瓦礫と化すまでに破壊された。※デルタが引き揚げたあとに空軍機が1トン爆弾でも叩き込んだのか。

 情報協力したシリアのクルド部隊の司令官は、5ヶ月前からバグダディの居場所を絞り込み始めたと。トランプいわく、作戦計画は2週間前にスタートしたと。

 次。
 新刊『武器が語る日本史』、おたのしみいただいているでしょうか。

 ところでクレシーの戦いで英軍弓兵はどうしてロクに照準しないで仰角45度で弓を乱射するなどという戦法を採用して有効であったのか?

 これも弓力52kgの和弓を実射してもらう実験でヒントがつかめた。

 つがえてひきしぼった状態が時間的に長びくほど、弓兵が甚だしく疲労してしまうのだ。疲労すると、命中もしない。

 だから、いさぎよく、精密照準などは捨てて、とにかくサイクルレートで弾幕を構成して勝負する方法が可能であったならば、そっちを採用した方が、合理的だったのだろう。


もう書店で手にとっていただけました? 新刊『武器が語る日本史』。

 本書で紹介しなかった雑学。
 古代アラブ軍はノック無しの矢を使った。撃ち返されない用心として。
 どうやって射るか。矢の尾端にはテーパーをつけておく。それをつがえる弓弦の中心には、リング状の部品を取り付ける。
 矢の尾端をリングに差して、ひきしぼれば、ノックなしでも射出できた。
 敵はその矢を拾ってもどうにもできない。

 おそらく、木材が貴重品である砂漠地帯で、こういう発想が生まれたのだと想像。

 次。
 Grant Turnbull 記者による 2019-10-24記事「Could F1 technology power laser weapons?」。
     レーザー兵器の大出力電力源として、フォーミュラ1用の、フライホイールを使ったエネルギー回生装置が応用できそうだという。英国から米海軍に提案されているところだ。

 2009年からF1マシンには、KERS(運動エネルギー・リカバリー・システム)が導入されている。

 F1マシン搭載のこの装置、6.6秒間、80bhpを発生させられる。ブレーキングのさいに発電機をまわしておき、次に加速するときにモーターからトルクを引き出す。

 2009年にF1チームの1人のメカニックが感電する事故があったが、これは当時は設計が未熟だったから。

 KERSはルマン24時間耐久レースにも採用されている。
 アウディのR18が、ウィリアムズ・ハイブリッド・パワー社の電気回生システムを搭載して、2012年のプロトタイプ部門で優勝した。
 これは〔キャパシタや電池ではなく〕フライホイールにエネルギーを溜めておく仕組み。

 ウィリアムズ・ハイブリッド・パワー社は、2014年に、英国のDSTL社が800万ポンドで買収した。
 このたびはそのDSTLと、自動車部品メーカーのGKN社とが、FESS(フライホイールエナジーストレージシステム)という企業体を名乗って米国に向けて提案しているのだ。

 フライホイールを使う仕組みは、そもそもウィリアムズのF1チームが開発したんだと。

 これが洗練されると、電磁砲=レールガンの電力源にもできるだろう。

 英国内では「ドラゴンファイア」という艦載のレーザー高角砲が開発中である。

 ※新鋭米空母の電磁カタパルトの電源は確かフライホイールではなかったか? その改修も受注したいのだろうか?

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 Emerging Technology 記者による2019-10-25記事「The secret to better beer could lie in cell signaling networks」。
     なぜ醸造酒のアルコール度数は20%が限界なのか? 発酵させる菌が、それ以上の濃度のエタノールの中では、死んでしまうから。

 ビールの酵母菌(イースト菌)は、何度も醸造に使いまわすのだが、そのうちに、ビールの品質が落ちて行く。その理由を説明する仮説として、菌が独自に進化して、エタノールに対する耐性を逐次に獲得すると、なぜだかわからないが、ビールの品質が落ちるのだろうと考えられていた。

 ところが2017年の実験だと、98世代を更新したビール酵母菌の子孫に、遺伝子の変化は認められなかった。

 ようやくわかってきたこと。遺伝子情報が同じであっても、ゲノムのシェイプが変わる=DNAのつめこまれ方が変わる。それにによって、遺伝子の機能が変わってしまうのだ。
 250世代の更新後に、ようやくそれがハッキリしてくるという。

 高濃度のエタノールの中で誕生し、その中で生存するイーストは、みずからの蛋白質を防衛するために、みずから変化し、その代償として、ビールを生産する生命力が、低下してしまうようなのだ。

 ※てことは流しそうめんみたいにしてビールを醸造させれば、アルコール度数75%の燃えるビールすら可能になるのか?


『武器が語る日本史』の何が新鮮なのか

 本書の取材に関しましてはじつに多くの方々からのご協力を賜りました。
 みなさま、どうも、ありがとうございました。

 以下、本書の特色の一部です。

 多くの戦国論者がおざなりにスルーしてきた山鹿素行のテキストから細かく有益情報を拾ったこと。

 多くの論者が原文を敬遠してきた――たしかにひどい説明力IQの悪さなのだが――
『甲陽軍鑑』から有益情報を拾ったこと。

 それによって、昔から秘密ではなかった「長篠合戦」のシンプルな事実を浮かび上がらせたこと。

 大部なため原文を読み通すだけでも大手間な『太平記』から、「楯」関係の情報をすべて抜き出して情報を整理したこと。 

 同様に『将門記』までさかのぼる著名な軍記物と説話文学にあたっていること。

 次。
 WYATT OLSON 記者による2019-10-24記事「Navy’s underground fuel tanks in Hawaii are impenetrable to attack ? and that’s the problem」。
    ハワイのレッドヒルの地下には米海軍の燃料貯蔵タンク群がある。
 火山性の地盤だが、WWII中に設けられた。2億5000万ガロンの水上艦用重油、潜水艦用軽油、航空機用ガソリンを貯蔵でき、近接したパールハーバーとヒッカム飛行場へ供給できた。

 この施設は1995年に、「米国の歴史的な土工ランドマーク」のひとつに選定されている。

 米海軍としてはこの施設の延命工事をしたいのだが、地下岩盤中に巨大空洞を掘って内側にスチールを張った構造なので、改修といっても重機のアクセスが難しい。

 例によって環境団体は施設の維持に反対している。ホノルルの上水に油脂が混じってしまうだろうという懸念を焚き付けている。

 しかしこの燃料施設は今日でも、ハワイ所在の海軍、空軍、州兵の燃料需要に応えているのだ。
 インド-太平洋域で米軍が作戦するときの、戦略的予備燃料ストックでもある。

 じっさい2014年にはジェット燃料2万7000ガロンが漏れ出した。地勢的に上水施設より高所にあるため、とうぜん汚染が心配された。

 小さな漏れは過去に何度もあった。だから水脈から油脂が検出されている。

 2015年の改修プランでは、タンクを二重張りにしてリークを防ごうとした。

 タンクから取り出すパイプ経路にあるノズルがリーク源になりやすいので、このノズルの数も削減する、と。

 オアフ島の地上に燃料タンクを置いておくと日本軍の攻撃でやられるから地下化しようという話は1930年代にスタートした。

 最初の計画。4基の、30万バレルタンクを、地下に埋める。1基は、長さ1100フィート、幅20フィート。これを横に長く、寝かせて埋めるというものだった。

 場所はレッドヒルに選定された。パールハーバーよりも高所なので、モーターポンプなしで、重力だけでパイプラインの送油圧が得られる。

 縦長のタンク20基を埋めればいい、というデザインは、民間技師のジェームズ・グローデンが考えた。
 こうすることにより、岩盤帯に横長トンネルを掘るよりも工期を短縮できた。切り端の数を増やせるので、人を集めて一斉に工事を進めさせることができる。しかもタンクとタンクの間隔も密集させられる。

 垂直坑をまず丘の嶺から掘り下げる。これが各タンクのセンター軸になる。最底部では、横にシャフトをつなげる。これで全タンクが連結され、給油が合理化される。

 空洞拡張工事の段階では、坑夫たちは、岩をどんどん下へ落とすだけ。いちばん低いところにコンヴェイヤーがあって、岩屑を外へ運び出してくれた。
 この合理的な工法によって、工期も工費も驚くほど節約できた。

 竣工したのは1942-9のこと。それまで3000人近くが24時間、3年間弱、働いた。
 労務者の死者は、17人だけで済んだ。

 完成した20基のタンクは、それぞれが、幅100フィート×高さ250フィートで、10基づつ2列に配置された。タンクの上端は、丘の嶺から100~175フィート、地中にあるのだ。

 ※2016年にわたしが『地政学は殺傷力のある武器である。』(徳間書店)の中でレッドヒルの逸話を紹介するまで、日本語の文献でこれについて教えてくれたものを知らない。米本国ではこの貯蔵施設の情報は1991年に秘密解除されていた。

 次。
 Tyler Rogoway 記者による2019-10-24記事「Coast Guard Cutters Once Carried Harpoon Anti-Ship Missiles And They Could Again」。
     米沿岸警備隊の新鋭の有力な警備船である『レジェンド』級は、57ミリ砲と、1基のファランクス、25ミリ単装ピントル式機関砲などを備える。

 今後、米コーストガード船は、『LCS』化していくだろう。そうするしかない趨勢だ。

 冷戦中、『ハミルトン』級の警備船に、ハープーン対艦ミサイルを搭載した。
 もっとさかのぼると、1960年代に設計された警備船は、駆潜艇にもなるように考えられていた。魚雷や対魚雷デコイを搭載可能だったのである。

 次。
 ストラテジーペイジの2019-10-25記事。
  米陸軍の空挺部隊は、フリーズドライされた血漿のキットを携行することになった。
 別梱包の無菌水に混ぜると、輸血液になる。


本日、最新刊『武器が語る日本史』が書店に搬入開始されます。

 2019-10-29記事「Reaction tests SABRE precooler at Mach 5 conditions」。
    マッハ5で巡航するエンジンは、空気吸入経路が摂氏1000度に耐えねばならない。このたび「リアクション・エンジンズ」(ロールズロイスとボーイングの合弁企業)が試製したエンジンがコロラドの実験場で、20分の1秒間だが、これを実現した。

 プリ・クーラーと呼ぶ特許の熱交換器が成否を分ける。これは数千個の薄い壁でできたチューブである。

  ※3月には450℃=マッハ3.3相当だったのが、一気に上げてきた。米英のこの底力に中共メーカーが対抗できるとは思えない。

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 Kristie Macrakis 記者による2019-10-24記事「The Spy in Moscow Station」。
   新刊紹介記事。       
 1985にCBSの番組でダン・ラザーが、モスクワの米国大使館が使っている数十のIBM社製タイプライター「セレクトリック」にソ連のKGBが盗聴器をしかけていたと報じた。

 大使館には偽の煙突があり、その中味はNSAのアンテナである。

 1978年にはソ連はモスクワの米国大使館を電波攻撃していた。大使館上層階に大使の執務室とCIAオフィスがあり、そこにマイクロ波が集中された。

 1977にCIAのスパイとしてソ連当局に逮捕されたロシア人は、CIAが開発した「L錠剤」で自決した。供述調書を書くためのペンに、その毒薬が隠されていた。

 1951年にモスクワの少女たちの一団が、木製の米国国璽(円盤状の印章)を大使にプレゼントしたが、その中には盗聴器が仕込まれていた。それがずっと大使の執務室に飾られていた。 ※国璽円盤には裏面にも意匠がレリーフされている。そうでなくとも、壊して調べるわけにもいかぬアイテムだからね。巧み。

 大使館では、調理人、メイド、運転手、電話交換手、旅行切符手配屋などは現地人を雇用せざるを得ない。もちろんKGBがその人材を派遣していた。

 大使館の備品にしかけられている盗聴器をすべて探し出すのにはX線が使われた。

 暗号機械の中には仕掛けられておらず、タイプライターの中に仕掛けられていた。

 げんざい、キューバや中共内の米国大使館が受けている電波攻撃は、昔のモスクワで米国大使館が受けたものと同質である。

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 Konstantin Kakaes 記者による2019-10-24記事「The limits of Chinese military power」。
   NYTによると現在、20万人のアメリカ兵が、米本土以外の場所に展開している。
 海外基地の数は800以上。

 これに対して中共軍は、ジブチ、タジキスタン、カンボジアに3つの海外基地を維持しているだけ。あとは、国連平和維持軍に加わって、コンゴ、レバノン、マリ、スダン、南スーダンに居るだけ。

 中共軍は、単に米空母を攻撃するというミッションでも、まったく成案が無い。ロレン・トンプソンが詳しい記事を書いている。

 2018年に米政府は、ロッキードマーチン社1社に対して、405億ドル支払った。その金額だけでも、ブラジルの国防予算307億ドルよりも巨額なのだ。中共が米国を軍事支出で凌ぐ日など、いつまでもやってくることはない。

 ちなみにロシアの軍事予算は610億ドル。

 ※司馬遼太郎が生前にはついにまとめられなかった、帝国陸軍の戦車の失敗の本質も、明日発売の最新刊で、てぎわよくまとめておきやしたぜ。


日本人が「浮き砲台」の作り方や運用法を知らなかったという不思議。

 『ネルソン傅』の摘録は当分Upできない。小説執筆中のため、それどころじゃない。

 ナポレオン戦争中もそれ以前も、欧州では「浮き砲台」がよく使われていた。
 デンマークのような小海軍国だけでなく、英国もテムズ川防衛のために浮き砲台を整備していたのだ。
 不思議でならないのは、なぜその知見が、オランダ商館経由で徳川幕府には伝授されていなかったのか――だ。

 ペリーショック直後の海防意見書は800通、幕府に提出されたというが、その中に浮き砲台について言及したものはあったのか? すくなくとも勝海舟は浮き砲台に言及してはいないだろ。全集を読んだことがあるが、死ぬまで回顧の形でも言及はしていないよ。当時の知識人が、誰も知らなかったのだ。

 この点は解明ができなかったので、最新刊『武器が語る日本史』の第8章では深入りをしなかった。その代わりにここで『ネルソン傅』摘録を参考に呈示しとこうかと思ったのだが、これまたぜんぜん間に合わない。貧乏ひまなしなもので、当分放置したい。

 今週末発売の新刊の176~181ページを読んで興味をもった人は、すまんがじぶんでしらべてくれ。

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 ストラテジーペイジの2019-10-23記事。
  ノルウェーの武器メーカー、年商15億ドルのコングスベルグ社による、野心的な小型軍艦事業構想。

 2000トン未満の船で勝負する。軍艦構造ではなく商船構造でいい。
 自動火器のリモコン砲塔。
 ヘリパッド。
 建造工期は2年弱。

 ※『あさぐも』#3376に堤提督が寄稿している《空自主導の空母構想》批判は痛快ですね。みんな、必読だぜ。


米国防総省は、総額7180億ドルのFY2020国防予算のうち、9億2700万ドルは、AIとマシンラーニングに突っ込む計画である。

 Sydney J. Freedberg Jr. 記者による2019-10-21記事「Artificial Intelligence Will Detect Hidden Targets In 2020 Wargame」。
      メイヴンをもういっかい解説しよう。フル精度の長尺動画を、AIでスクリーニングさせ続け、ニアリアルタイムで、テロリストやゲリラを発見してしまう、というものだ。

 だが2020欧州演習で米陸軍が試すのは、それとは違うバージョン。ゲリラではなく、カモフラージュされた露軍の戦車をAIに発見させる。

 航空機搭載のカメラだけがソースではないというところも大事なポイント。

 森を写した画像の中から戦車を区別してくれ、とAIに頼むと、AIがその画像の中のカモフラされた戦車をひとつひとつ、強調表示してくれるようにする。

 人間の写真解読者よりもはるかに高速に、見落としなく、AIがそれをやってくれる。


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 記事「Russian Nuclear Sub Misfires During Putin-Supervised Drills ? Reports」。
    ロシアの新聞が報じた。5隻あるデルタ3級のうちの1隻、『リャザン』SSBNが先週、「グロム2019」演習に参加していたのだが、予告によれば2基のSLBM(R-29)をバレンツ海に向けて発射する予定だったところ、じっさいに発射されたのは1基だけだった。もう1基は、発射に失敗したと思われる。

 射出できなかったSLBMを艦内に残したまま、潜水艦は母港へ戻った。

 続報によると、発射前の点検段階で不具合が分かり、発射を見合わせたのだという。

 ※報道は皆無だが、ロシアは中共にも軍事的な強圧をかけているのではないか。これと経済の失速が、中共の外交を微妙に変化させてきているように思う。つまり既往10年は金欠ロシア軍はあまり怖くなかったのだが、これからは余裕こいていられないと自覚した。それだけ、技術のキャッチアップが思うように進んでいないのだ。