小樽に『加賀』が来るそうだが、行けそうにない。

 Jacqueline Detwiler 記者による2019-7-5記事「The Airplanes That Rescue Ebola Patients」。
   エボラの特徴的症状。妊婦が何でもないのにその胎児が先ず死ぬ。
 フェニックスエアー社は、小規模な民間航空輸送会社だが、特殊バイオコンテナ設備CBCSをもっていて、米国務省に頼まれれば、そのコンテナでエボラ患者だろうが何だろうが空輸することができる。
 ソチ五輪のとき、もしゲーム中に米国の要人が奇病を発症したようなときは、フェニックスエアーがビジネスジェット改造の患者輸送機を飛ばす契約を国務省と結んだ。
 会社はマークとデントのトンプソン兄弟によって1970年代に設立された。アトランタ市育ちの2人は、ベトナム戦争中、ヘリコプターを操縦していた。当初はスカイダイビングの学校だったのだが、いつしか、政府御用の特殊な機動空輸サービス会社に変貌を遂げていた。
 医療活動に従事していたエボラに罹患してしまった米国人を、始めてアトランタにあるCDC(疾病対策センター)まで空輸したときは、その現場はリベリアであった。ゾンビのいない町にゾンビを連れてくるに等しい作業だった。
 CDCがフェニックスエアーに、空気密封型患者空輸コンテナ(ABCS)の開発を依頼したのは、2007年であった。当時はSARSなどが各地で発生していた。
 樹脂製の二重のシャワーカーテンのような巨大密封バッグを、軽金属のパイプ枠で囲ってある。その寸法は飛行機の胴体内に持ち込めるサイズにおさまっている。
 このバッグの内部に置かれる資材は、ストレッチャーからバケツ式トイレまで、すべて、一回使用しただけで捨てる。
 患者の容態をモニターする治療者は、バッグの外側にいる。センサー類の操作も、外側からできるようになっている。
 飛行機内は、患者区画と他の区画との間が、滅菌ゾーンの小部屋になっている。その仕切りはとうぜん気密ハッチで、そこを経ないと誰も通行できない。
 機内は、操縦室>中間滅菌室>患者区画 の順に気圧が低くなるよう、与圧装置が調整されている。だから患者区画内の空気が外に漏洩することはない。 操縦室区画には、エンジンの力を利用して、最初に新鮮な外気が注入される。それが逐次に、機体の後方へ移動する。気圧差を設けてあるので、逆流はしない。
 患者を収容したバッグ内の空気も、機体尾部方向にある集塵機が常時、吸い取るようになっている。
 最終的には、CDCが設計したHEPAというフィルターを経て、その空気は機外へ放出される仕組みだ。
 ABCSのプロトタイプは2011年に完成した。ただちに陸軍のアバーディーン試験場でテスト。
 強い振動にさらしたり、摂氏マイナス29度の大気中ではどうなるかも試された。
 じっさいにフェニックスエアの航空機に搭載して、乗員が酸素マスクを装着して高度4万5000フィートに至り、キャビン内の空気を一気に放出――つまり窓割れ事故を再現――してから1万5000フィートに降下するというテストも行なった。
 だがテストに合格したときには、SARS蔓延は終息していた。
 エボラとSARSには感染力の違いがある。
 じつはエボラは比較的に弱いウィルスで、経空伝染はできない。接触感染のみなのだ。
 すなわち、エボラ患者の輸送のためには、ABCSはオーバースペックだということが分かった。SARS患者用には、それは適当だったのだが。
 2014年、フェニックスエアは政府御用をうけたまわり、リベリアからエボラに感染してしまった医師を空輸してきた。
 このニュースとルーモアが広がるとアトランタの住民は騒いだ。フェニックスエア社員が、子供の通う高校のスポーツ大会への参観を学校から拒否されたりしている。
 コーヒーチェーン店内で「あんたエボラの人だろ?」と言われて客が一斉に引き退いたという経験を、デント・トンプソン社長自身も、した。
 デントはフェニックスエアーの経営者としてさまざまな悩みも抱える。
 もし保険会社が、保険会社が示す条件の患者しか空輸して戻ってはいけないと言ってきたら?
 もしフランス政府の空輸依頼を受けた直後に、米国政府からも別な地域からの急患輸送を頼まれてしまったら、会社に1機しかない専用機材をどっちに回すべき?
 実績としてフェニックスエアは、約40名のエボラ患者を、西アフリカから、米国・欧州まで運んだ。
 北鮮で拷問されたオットー・ウォームビアを米本土まで空輸してきたのも、フェニックスエアー機であった。同社のメディカルスタッフが空中で付き添った。
 2014年からフェニックスエアー社は急拡大。今では、ロサンゼルス、サンディエゴ、ノーフォーク、シュトゥットガルト、ナイロビ、マルタ島にも機材を常駐させている。飛行機は、ビジネスジェット機「ガルフストリーム3」が主力だ。アフリカ奥地の滑走路にも降りられるので。
 マイクロソフトの有名人、ポール・アレンが出資してくれたので、新しいCBCSが開発できた。
 ABCSをゴム合羽だとするなら、CBCSは小型潜航艇のような構造である。
 コンテナの出入り口ドアは1平方インチあたり400ポンドの気圧差に耐えられる。
 いたれりつくせりである代わりに、CBCSは「ボーイング747/400」型の貨物専用機にしか収まらない。
 これが、24時間以内にアトランタの国際空港から飛び立てるようになっている。
 ABCSは1フライトで1人の患者しか運べなかった。CBCSは同時に4人まで運搬可能である。
 ※こうした民間空輸会社が日本にも必要であることを、過去の拙著で何度か書きました。その拠点飛行場としては下地島が適当です。


ダイソーの「珪藻土バスマット」に感心。コロコロをかけられるところが良い。……で、これ、潜水艦内でもイケるんじゃね?

 Sebastien Roblin 記者による2019-7-5記事「Stealth Suprise: Is Japan’s New Submarine a Game Changer?」。
         2019-6に三菱重工が、3000トンの次世代潜水艦『29SS』についてプレゼン。すぐにツイッターでもシェアされた。
 同型の設計は2025年から始め、就役は2031年を見込むという。
 1番艦は予算760億円と見積もり。
 現状の海自の潜水艦隊は、現役艦が22隻、試験専用が1隻、訓練用が2隻である。
 『そうりゅう』級(改)は今年川重で竣工した1隻を含めてあと4隻増えるだろう。
 『29SS』はセイルの丈を低くする。
 潜舵は、セイルにではなく、船体前方に取り付ける。
 機械室等の床は船殻に固定せず、浮かせた構造とすることで、震動が船外に漏れないようにする。
 推進はどうやら、プロペラを廃してポンプジェットにするらしい。
 1ソースいわく。13枚ブレードのポンプジェットは、7枚プロペラの『そうりゅう』級よりも、20デシベル静粛化するはずであると。
 これまで、ポンプジェットは、高速巡航可能な原潜向きであると考えられていた。バッテリー式潜水艦では、高速を出せばバッテリーはすぐになくなってしまう。
 つまり三菱は『29SS』で、バッテリー式ながらもある程度の高速巡航を狙いたいようなのである。
 『29SS』のサイドアレイ聴音器は、光ファイバー・ソナーであるという。これは音圧を感じ取るのではなく、光の干渉を利用して測音する。音だけでなく、電磁波の発信源も探知可能だという。
 曳航アレイ聴音器ももちろん有する。
 複数種のソナーが集めた情報は、AIが統合解析し、CICルームのディスプレイ上に、立体的動画として表示される。これによって、敵潜の動静その他が、可視化される。
 魚雷発射管はすくなくも6本。
 日本は「89式魚雷」の後継魚雷「G-RX 6」を2012年から開発している。有線誘導式。内燃機関は水素と酸素を燃焼してタービンを回す。敵艦のタイプに応じて爆発尖の起爆タイミングを変更できる。
 ※たしかAESA技術を実用頭部ソナーに応用してデコイも見破るとかいう話ではなかったか?
 新魚雷は2030年に実戦供用予定。
 ※有人艦に酸素魚雷なんて、被弾時にどうかと思うが、リチウム電池そのものが爆発物みたいなもんだし、もう毒を喰らわば皿までってか?
 VLSの有無に関する情報は一切ない。
 「潜水艦問題」というブログに一マニアが投稿したところでは、おそらく『29SS』は10日間連続で水中を巡航できる。もちろんシュノーケルなど出さずに。
 しかしリチウムバッテリーが切れたら、充電(ディーゼルエンジン回し)のためにシュノーケルを出すしかない。ここが問題だ。
 旧来のAIP方式だったならば、シュノーケルを出す前に数週間、潜りっぱなしが可能だったからだ。もちろん速度を微速に抑えての話だが。
 ※つまり海自は、後期そうりゅう型以降は、連続潜航日数よりも、水中速力を選好しているのか。理由は、全速力で通峡しようと図るシナ原潜の先回りをするため? シュノーケルを露頂しても相手がシナ軍なら見つかりはしないという自信の表われ? あるいは、連続十日以上も宮古海峡に沈底させられるような退屈な任務には乗員の成り手がないのでもうお断りしたいという話か。それなら納得だ。
 後期『そうりゅう』型は、リチウムイオンバッテリーにチャージするのに、ディーゼルエンジンを100分間、回せばよいという。
 おそらく『29SS』は、100分以上はかけないつもりだろう。
 なぜ日本は、リチウム電池とAIPを組合わすことを考えないのだろう?
 日本は、燃料電池AIPもいちおう研究したようだ。(前期型『そうりゅう』のAIPはスターリング機関であって、燃料電池AIPではない。)
 しかし防衛省は、燃料電池AIPの開発にはカネと時間がかかりすぎると判断して、これを断念した。
 『29SS』の主機は、川重の「12V25/31S」ディーゼルになるだろう。発電能力は今までの25%増しになるという。
 だが、シュノーケル深度で運転するこのディーゼルは、決して静かなものではない。スーパーチャージャー付きだし……。
 こんなものを10日ごとに海面で回していたら、必ず探知される。
 非核動力の潜水艦には、静かな内燃機関が必要なはずなのだ。
 次。
 Mandy Mayfield 記者による2019-7-2記事「JUST IN: Navy Chief Anticipates 3D-Printed Nuclear Weapons」。
     米海軍作戦部長ジョン・リチャードソン大将いわく。某国は、3Dプリンターで核兵器をこしらえるだろう、と。
 次。
 ストラテジーペイジの2019-7-6記事。
   5月9日にトライデントミサイルは連続172回目となる試射を成功させた。凄すぎる信頼性だ。
 ロシアのブラヴァは、陸上のトポルMよりちょっとだけ短い。だからレンジも8000kmに届かない。今のところブラヴァは、1基に1発の500キロトン弾頭とデコイ複数を載せている。
 その再突入体はEMPに対してシールドされているから、近傍で核爆発があっても、機能する。
 ※米国と北鮮とは、核地雷や170km弱ミサイルを認める合意が可能だろうという話は『空母を持って自衛隊は何をするのか』の第3章に書いてあるから、興味ある人は参照して欲しい。結局あそこで書いたとおりになる。イランについては、次の次の本あたりで書かずばなるまい……。その前に、和弓と矢の実験じゃ!
 次。
 Karen Hao記者によるMITニュース記事「A new way to use the AI behind deepfakes could improve cancer diagnosis」。
    AIすなわちディープラーニング技術は、MRI画像診断――特に癌の発見――にも使えるはずなのだが、ひとつ問題がある。すべての患者たちのプライバシーを守る必要があるために、厖大な数のリアル撮像データをAIに読み込ませてやることが、病院倫理的にそもそもできないのだ。
 そこで役に立つのがディープフェイク技術。ホンモノそっくりの癌の3Dイメージを人工的にこしらえてやって、それをたくさんAIに覚えさせればいい。
 次。
 Charlotte Jee 記者による2019-7-4記事「London police’s face recognition system gets it wrong 81% of the time」。
   ロンドン警察は2016年から日本のNEC製の「ネオフェイス」という顔認識技術を導入している。
 このたびエセックス大学に委嘱し、そのマシンの性能評価テストが実施されたところ、誤答率は81%であった。すなわちAIは42人が「マッチする」と回答したのに、じっさいには、そのうちの8人だけが当たっていたのである。


米軍がINFを極東に配備する場合、さいしょの基地は比島でほぼ決まりではないか。この流れだと。

 Liu Zhen 記者による2019-7-3記事「South China Sea missile tests aimed at boosting Beijing’s bargaining power, analysts say」。
    ペンタゴンのスポークスマンのデイヴ・イーストバーン中佐は、中共軍による弾道ミサイル発射はスプラトリーの砂盛島(複数)から為された、と。
 航海警報を出していたのはパラセル諸島内ウッディ島にある三沙市。先週、ひとつの海域をオフリミットに指定した。5日間の演習があるからと。そのときはミサイルとは一言もいわず。
 三沙市当局による当該海域通航禁止期間は当初、6-29朝から7-3夜まで、とされていたが、7-2にその規制は解除された。
 一解説者いわく。これは米国をあまり怒らせたくないので縮めたのだ。
 ※同じメディアの7月2日の報道によると、禁止海域は、 Macclesfield Bank と Spratly Bank の近くの海域であった由。マクレスフィールド暗礁は、中共が Zhongsha Islands と名付けているが、島ではない。またそこはフィリピン政府も領有を主張している。NBC報道では、すくなくも1発が海に向けて発射されたと。大阪で習近平とトランプが会談したのは6-29である。
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 MICHAEL WILNER 記者による2019-7-4記事「Fearing Iranian attacks, Trump aims to rally allies to escort ships in Strait of Hormuz」。
     トランプ政権は、「有志連合艦隊」によってホルムズ海峡の商船をエスコートする案を練っている。
 ホワイトハウスの1オフィシャルは語った。トランプは大いにやる気だ。米国はペルシャ湾石油を必要としていないというところがベースラインだ。
 ※つまり日本に作戦費用と艦隊を出させるということ。
 国防総省だけでなく、国務省が、すでにこの艦隊提供を《與国》に求めている。
 トランプは安倍晋三がタンカー爆破事件のあとイラン非難を強めなかったことにとても怒っている。トランプ大統領は、日本をしてデモンストラブルな新編有志連合艦隊への貢献をさせるよう、ポンペオ国務長官に命じた。
 米軍は1987年(イラン vs.イラク戦争中)に、クウェート国旗をかかげたタンカーを直接護衛した。しかしその後は、直接船団護衛には関与していない。
 ホルムズを通峡するタンカーの数は、1日にだいたい30隻である。
 すでに英国とフランスは、全面協力する用意があるようだ。
 しかし商船護衛というのは、どこからどこまでやりゃあいいのか、その際限がないところが悩ましい。
 そこで米政府は、「アカンパニーイング」方式の艦隊活動を考えている。直接護衛するのではなしに、艦隊としてあくまで独立に、ただし時間と場所は、商船と同時並行的に、ホルムズ海峡にて遊弋をするのだ。もし敵スウォームボートの襲来があれば、そこではじめて反応する。
 ※このような「対海賊」の商船エスコート任務に最適なのが「ドローン母艦」だろう。無数の小型固定翼偵察機を常続的に、エスコート対象の航路を中心とした広範囲に散開させ滞空させておくことができる。小型ボートからドローンが見えるだけでも、IRGC(イラン革命防衛隊)が行動を抑制することはすでに証明済みだ。わたしが何年も前から説いているように、海自のフラットデッキ艦は無人機母艦として役立てるのがいちばん合理的なのである。時代遅れな有人機母艦などに改装するのは、有限貴重な国防資源の無駄遣いだ。いつまでも武田勝頼と長坂長閑コンビみたいなことを言っていて、わが海軍を滅亡させたい気満々だよ。必要な艦型は「拡大しらね」型だが、それを三胴型にすればコスパはもっと良くなり、艦隊新編予算を捻出できる。LCSコンセプトの真逆で、岸にはぜったいに近づかないので、吃水はどんなに深くても可いのだ。
 次。
 Bill Gertz 記者による2019-7-4記事「Damaged Russian Sub Linked to Underwater Drone Program」。
      ロシア特殊工作原潜の14人の死亡原因は、煙を吸ったことによる。
 場所はバレンツ海のどこか。
 2019-4月にロシア政府は、1隻の巨大な研究用原潜『ベロゴロド』が進水したと発表した。
 2017-4のイズヴェスチャによれば、ベロゴロドは、AS-12とは別の「ロシャリク」を運搬する。それはAS-31 ロシャリク自動深海ステーションといい、2018年を予定すると。
 イズヴェスチャが取材した軍事アカデミーの男によれば、それは北極海の海底に設置される原子力モジュールで、UUVに充電してやることができるのだという。
 ※アイソトープ発電装置か?
 BBC報道によれば、今回の死者14名のうち7名は、海軍の大佐クラスだったという。他に2名の「ロシア英雄」の受勲者がいたという。
 プラウダの報道によれば、潜航艇内には生き残りもいて、彼らが消火に成功したのだという。
 またその潜水艦は北極海だけでなく、日本海でも水中インテリジェンス活動に従事していたという。
  ※海底ケーブル切断準備。
 2008の『ネルパ』艦内の死亡事故は、フレオン・ガスの漏出によるもので、原潜乗員20人が死んだ。
 2000-8の『クルスク』は艦内で2度の爆発があって、118人死亡。
 ロシャリクの1号艦は1980年代に開発され、90年代から配備されたという。ロシャリク型には25人が乗る。
 仕事現場までは、他の原潜によって「曳航」されて行くのだという。
 今回のロシャリクはNATOコード名が「NORSUB-5」である。
 ロシア政府は、事故原因は爆発ではない、としている。
 次。
 NATASHA BERTRAND and DANIEL LIPPMAN 記者による2019-7-2記事「Spies fear a consulting firm helped hobble U.S. intelligence」。
      ネット時代の人的スパイ網を現代化し効率化するため、米政府は、コンサル会社のマッキンゼーに依頼するようになった。
 マッキンゼーは1000万ドルばかりで請け負っているらしい。
 NSAはマッキンゼーを雇い、リストラクチュアリングを頼んだ。題して「NSA21」。2016のマイク・ロジャース長官がやらせた。
 今のNSAの長は、ポール・ナカソネ大将である。彼はロジャース改革をすこし元に戻そうとしている。行き過ぎていた、と。
 CIAは2015にマッキンゼーを雇った。やはり部内改革のため。
 ODNIもマッキンゼーを雇った。
 ※政府による雇員のセキュリティクリアランスの認定作業が大停滞しちまっている問題は解決されたのか? せっかくマッキンゼーに頼むのなら、そこだろう。


IHIの多目的水陸両用車(6×6)は久々に愉快な新アイテム。

 『朝雲』最近号にて承知しました。幕張で先月にMASTをやってたのか……。誰か写真を撮ってくれた人はいないですかね。
 6トン積めるというこの車体に、HIMARSや対艦ミサイルのランチャー部分を組み付ければ、陸自の「水軍化」は、半ば成就したようなものだろう。
 しかもこれ、そのまま民間バージョン(特に漁村の沿岸小作業用)作って市販できるやん。また平時から日本中の沿岸(ならびに大河川隣接)自治体にこの車両を持たせておいたなら、災害時に現地で「自助」ができてしまうわけじゃ。
 (たぶん余計な助言だろうが、車両固有のウインチだけは十分なものを付けておかないと、砂浜スタック続出で、みんな後悔すると思うぞ。)
 次。
 ロイターの2019-7-3記事「Pentagon says China missile test in South China Sea ‘disturbing’」。
    ペンタゴン職員いわく。週末に複数発の対艦弾道弾が発射された。
 中共国防部はスプラトリーとパラセルの間で水曜日まで演習をするので他国の船はそこに入るなと警告していた。
 次。
 MARTIN EGNASH 記者による2019-7-3記事「US Marines in Norway pair electronic warfare team with snipers to test new concept」。
     先月、ノルウェーにて実施されたヴァルハラ合同演習。そこで米海兵隊は、スナイパーと電子通信情報系隊員をペアで行動させてみた。
 EWST=野外電子戦支援チーム は海兵隊の新顔。
 彼らが狙撃チームに、見えない敵の所在を助言するのだ。
 海兵隊は2017からノルウェーにローテーション駐留。今回の仮装敵役はノルウェー軍に務めてもらった。
 ここでプロなら次の疑問を抱くだろう。
 ――アンテナなどを抱えた余計な隊員がスナイパーチーム(射手と観敵手)にえっちらおっちらつきまとってくれたりしたら、敵の眼にはこっちの動きが早々と露顕しちまうだろうがよ?
 それは杞憂であった。
 ノルウェー軍に、こっちの居場所を血眼で捜してもらったが、バレはしなかった。
 EWSTを新編して海兵隊の各大隊に編入しようという構想は、ネラー大将が2017年に掲げたもので、今、それが着々と実現しているところだ。
 2015年にシリアの反アサドゲリラを支援する要員を米軍が送り込むようになって、露軍の野外電子戦への努力集中が著しいことを米国は知った。その危機感が引き金になっている。
 露軍はウクライナではどんな電子戦をやったか? 衛星と地上の通信リンクに対する妨害。スマホ発信点のピンポイント標定&砲撃。特定地域の敵兵のスマホに対する、テキストメッセージによる「ピンポイント・プロパガンダ」。
 これをうけてウクライナ軍は、「電子的カモフラージュ」を徹底する必要に迫られた。
 EWSTは味方に何をしてやれるか? 敵による毒ガス攻撃の予兆の探知と警報。敵斥候隊の接近警報。
 次。
 Scott Stewart 記者による2019-7-3記事「Espionage and LinkedIn: How Not to Be Recruited As a Spy」。
        世界の情報機関は、オープンソースから情報を集める助けとして、既存の商業SNSを大々的に利用している。特にリンクトイン。特定の情報や技術に関与している人物を簡単に知ることができるのだ。
 リンクトインを手掛かりに、諸外国の諜報機関は、スパイ候補者の目星をつける。
 中共がそれをどのように利用しているのかについては、2019-6にフィンランド国際問題協会のMika Aaltola 氏が報告を公表している。
 中共がGEの社員に接触して企業秘密の技術を中共に売らせたスパイ事件でも、その社員を一本釣りできたのは LinkedIn のおかげだった。
 これがインターネット時代より前だと、敵の諜報機関は、まず、どの企業のどのチームが特定の興味深い技術開発をしているかをつきとめ、その中の一人の技師に、ターゲットを絞らねばならなかった。
 この技師ターゲットの絞り込みのために、その企業の内部の人員の配置に詳しい別な社員を、先行して一本釣りしてスパイに仕立てることもあった。
 そんな「したごしらえ」の段階で下手をやると、対象企業が「何か怪しい」と感づいてしまい、技術情報の盗み出し計画は失敗する。だから準備段階にものすごい時間と労力が必要であった。
 ところが今日では、リンクトインにアクセスすれば、どんな企業が、あるいはその企業の中の誰が、どんなプロジェクトにどのくらい関与しているか、数秒にして判明してしまうのである。
 リンクトインによって、ターゲット社員の候補者をとりあえず数名、選ぶ。
 次の段階は、その中の誰がいちばんスパイになってくれそうかの絞り込みだ。
 今度は、フェイスブックやインスタグラムで、候補者ひとりひとりのネタを漁ればよい。じきに、各人の関心事、欲望、趣味、家庭事情、困っていそうなことが分かってしまう。
 その会社を辞めさせられたばかりの人物も、リンクトインなら、すぐに探せる。その者たちには、新しい仕事・地位のオファーが、たぶん良い餌になろう。
 中共スパイ機関は、大学やシンクタンクを装って、最初の接触を図る。
 最初は、まったくさしさわりのないテーマで論文を書いてシナに来て発表してくれれば大金を払う、と申し越すのだ。その発表のための往復旅費も全部、支那側が持つ。
 シナ旅行中の姿は全部ビデオで撮られており、特にスパイ機関幹部との接触風景は、後で脅迫ネタに使える材料となる。
 ほとんどの西側企業内スパイは、このパターンで取り込まれている。
 この一本釣りを予防するためには、企業は、枢要プロジェクトに関与する社員に、SNSの利用を禁止するしかない。


パニックトイレ

 Amanda Macias and Courtney Kube 記者による2019-7-1記事「Chinese military conducts anti-ship ballistic missile tests in the hotly contested South China Sea」。
      2名の米高官いわく。中共はただいま、南シナ海にて、対艦弾道弾の一連のテストを実施中である。
 週末、すくなくとも1発のミサイルを海に向かって射ち込んだ。
 中共が設定しているテスト期間は、水曜日(7-3)までである。
 着弾海域の直近に米艦は所在していない。
 ※テストそのものもニュースだが、またタイミングも興味深い。トランプが対支制裁関税のノッチ・アップをいったん停止するということで下僚同士の話がついたため、日にちをG20後にずらしたのだろう。さもなくばG20のまっさいちゅうか、開幕日の早朝くらいに実施し、大統領に心理的な動揺を与えようと計った筈。
 中共は南シナ海で27箇所の岩礁等を支配し、軍事拠点にしている。
 2018-5にはフィリピン近くのスプラトリーの3拠点(Fiery Cross リーフ、Subi リーフ、Mischief リーフ)に対艦ミサイルおよび対空ミサイルを配備し、習近平は平然と公的な嘘をつく政治家であることを見せつけた。
 ※これまで支那製の「対艦弾道弾」なるものが海面に対して試射されたことは一度もなかった。ゆえにニュースなのである。
 次。
 NANCY MONTGOMERY 記者による2019-7-2記事「Are Navy submariners more likely to father daughters? New military study says no」。
    米海軍の潜水艦隊のコミュニティ内においては、「潜水艦乗りの父親の子供は女児ばかり」というルーモアが根強く存在していた。
 ※ちなみに米潜水艦は魚雷戦型も弾道弾発射型もすべて核動力。非核潜水艦は1隻もないのである。
 このたび『医学調査月報』は、科学的な統計を発表し、米海軍の潜水艦乗りの父親の子供の性別傾向に、他の軍艦乗りの父親の子供の性別傾向との間の、有意の差異は存在しないことをハッキリさせた。
 全世界の一般統計値。男児105人に対して、女児100人が生まれている。
 また一般に、地震の後だとか、人々に大きなストレスのかかる出来事の後には、男児が生まれる率は低下し、女児が生まれる率が増える。
 また、科学的な可能性として、各種農薬、あるいは強い放射線に暴露した男性の精子が減ることがあり、その場合は、男児が生まれる率は低下する。
 今回の最新の調査は、2001年から2015年までに、米海軍の原潜乗りの配偶者たる妻が出産した新生児7087人を対象にした。
 潜水艦乗りの男子は、大部分が白人かヒスパニック。配置は、機関兵曹、電機兵、電機兵曹、音測兵が多い。
 新生児の性比は、男児51.3%、女児48.8%で、全米住民の平均と言うべく、全米軍の統計とも近似す。
 ※コミュニティが本当に知りたいのは不妊率ではないか。しかしその調査は政治的な問題を生ずるので、迂回的に、性比が通常であることを示した。精子異常はありませんよという間接的なメッセージなのである。
 異論があった。2019-1に公刊された『軍事医学』によると、eメールで潜水艦乗り3315人にアンケートした回答をまとめたところ、男児よりも女児が多く生まれていた。
 性比は、男児95に対して女児100であったと。
 しかし統計値としてより信用できるのは今回の月報の方である。DoDの名簿を使い、潜水艦配乗・且つ・子持ちの全現役将兵を調べたので。
 次。
 VLADIMIR ISACHENKOV 記者による2019-7-2記事「Fire kills 14 Russian sailors amid submarine speculation」。
    ロシア製の深海特殊工作用原潜内で火災が発生し、14人が死亡。
 北極海に面するセヴェロモルスク港。
 全部で何人乗っていたのか、生存者がいるのかどうか、一切不明。
 艦名は、ロシアのオンラインメディアによれば『AS-12 ロシャリク』ではないかと。
 同艦は2010就役。ロシャリクとはロシアのマンガのキャラクターで、ちいさな球体をつなげたオモチャの馬だという。
 これは同艦の耐圧内殻が複数のチタニウムの球からできていることを暗示する。
 2012年から『ロシャリク』は、北極海の深度2500mの海底からサンプルを集め始めた。普通の潜水艦は安全深度としては600mがせいぜいだ。
 分析者は、こいつの真の任務は外国の海底ケーブルに盗聴器を仕掛けることだとしている。
 ※米海軍の『NR-1』に刺激されて開発されていることは間違いないだろ。
 『ロシャリク』は、自力で遠距離航海はできない。マザーシップたる原潜『オレンブルグ』の腹に吊るされて、仕事海域まで運ばれる。
 ロシア海軍には他にも、2つの級の深海作業艇がある。チタニウム球で、2人しか乗れない。作業可能深度は1000m。
 主たる用途は、沈没潜水艦の救難。連続120時間、潜っていられる。
 ロシア海軍の近年の事故としては2008年に、太平洋艦隊の原潜『ネルパ』が、公試運転中に自動消火システムが誤作動して、20人死んだことあり。
 2000年8月12日には『クルスク』がバレンツ海に沈み、118人全員が死亡した。
 次。
 Berenice Baker 記者による2019-7-1記事「Orca XLUUV: Boeing’s whale of an unmanned sub」。
   米海軍はボーイング社に、大型無人潜航艇(XLUUV)である『オルカ』級を5隻、2億7440万ドルで発注した。ライバルのロックマート案は敗退。2017から2社コンペ状態だった。
 ボーイングは、自社資金だけで研究を続けていた『エコー・ボイジャー』UUVからこれを発展させた。全長15.5m。
 排水量は45.4トン。ペイロードは56.6立方m、乾燥重量7.3トン可能。最長10.4mの長尺物も積める。バッテリーは18キロワット。
 次。
 Christopher Beam 記者による2019-6-26記事「Soon, satellites will be able to watch you everywhere all the time」。
        衛星はあなたの裏庭を監視している。
 2013年に、オレゴン州の男が、じぶんちの庭で大麻を栽培しているのが、グーグルアース衛星写真の経時的分析で疑われて、御用となった。
 こやつは数条の畝に植栽していた。
 ブラジルのアマパ州警察は、リアルタイム監視衛星を使って、自然林の違法伐採を監視している。2018年、木炭密造業者が、摘発された。
 中共がウイグル人を新疆の刑務所に収容しているのも衛星でバレバレである。中共政府は、「職業訓練学校だ」と言っているが、学校には多数の監視塔やカミソリ鉄条網は必要ない。
 2008年には、地表を撮像できる衛星は150機ぐらいだった。今は768機である。
 24時間いつでも地表の任意点の撮像イメージを販売することは、まだ業者には可能ではない。しかし、もうすぐ、そうなる。リアルタイムで、どこでも上空から覘けるようになる。
 個人が、特定の個人を、宇宙から尾行できることにも、なるのだ。たとえば浮気調査やストーキングやパパラッチが、衛星によって行なわれるようになる。
 現在、米連邦政府は、民間の撮像衛星の解像度は、25センチメートルまでしか許さないと規制をかけている。つまり、軍用スパイ衛星は、解像度が25センチメートル未満なのだ。
 2014年以前には規制値は50センチだった。しかしNOAAは、それを緩和させた。※気象衛星の運用に不都合だからではなく、民間企業から、それじゃ外国企業と競争できないと文句をつけられた。NOAAは単に国家偵察局の代理人窓口になっているだけだろう。便宜的に。
 投資家は、石油貯蔵タンクの「落し蓋」の沈み込み具合を知りたい。それで世界の景気が分かるから。昼間の衛星写真で「影」を計れば、深さは知られる。
 「プラネット・ラブズ」という衛星写真会社は、毎日、140機の衛星からの写真を集めている。
 かつてディジタルグローブといっていた会社。現在はマクサーというが、同社が1997に初の民間スパイ衛星を打ち上げた。そして今では、地球上のひとつの地点を、1日に15回、撮影しているという。
 ブラックスカイ・グローバル社は、大都市に関しては、特定点を、毎日70回、撮像しているという。この頻度だと、ある人のある車がどの時刻に道路のどこに在るか、パターンを簡単に把握できてしまう。
 2014年以降、宇宙からのライブ・ビデオ動画を提供する会社も登場している。現在だと、最長連続90分まで可能だという。グーグル社は一時、その会社を保有した。
 ※とうぜん、複数の周回衛星による交替張り込みであろう。
 アースナウという会社は、リアルタイムからのディレイ1分以内の、連続的なモニター画像を提供すると標榜している。
 目指す方向は、ハイレゾで、24時間、地球上の任意の地点のリアルタイム動画を提供できるようになること。
 ※無人偵察機の既往から類推すると、このハイレゾというところがいちばん難しい。需要は無限に増え、通信回線がすぐにパンクするので。
 さらに、可視光画像にとどまらず、赤外線から紫外線までのマルチスペクトラムの解析画像、夜間や曇天時の合成開口レーダー電波反射画像、さらには、特定点から輻射される一切の電磁波を、常続的にモニターしたいという客も現れるはずで、それに企業は応じてやらねばなるまい。
 衛星からは地表の対象物体の高さをミリメーター単位で計測もできる。
 得られた画像データを解析して売れる情報商品に仕上げるソフトウェアの開発競争も進行中。
 たとえばシンセンの夜の照明を解析することから、本当の支那GDP傾向が知られる。
 プロ泥棒は、ある家の家族が決まって全員、外出している時刻を、簡単に把握することもできるようになる。
 2012年、ハーバードの衛星監視グループが、スーダンと南スーダンの紛争地帯で「スーダン人民解放軍」が占領している地域に向けて戦車道が建設工事中であることを把握し、画像を公表してその先にある地域の住民に警報した。住民は逃げた。
 しかしスーダン人民解放軍もその公表イメージを見ていたので、先手を取って建設現場を急襲。スーダン政府が雇っていた支那人労務者が何人か殺され、残りは拉致されている。
 衛星写真が、比較的に安価なドローン写真よりも強みを発揮するのは、ドローンの進入禁止空域なのに衛星ならば撮影ができるという場所。
 次。
 記事「Chinese border guards are putting a surveillance app on tourists’ phones」。
    NYTおよびガーディアンによると、中共当局は新疆に入境する中央アジア諸国人に対し、国境ゲートにて、スマホの提出を命令し、そのスマホに、追跡用のアプリを強制追加している。
 テキストメッセージだろうが交話だろうが、すべて、当局のサーバーに自動的に送られて記録される。スマホ内に先にダウンロードされているアプリが何かも通報される。
   中共では、日本のバンド「Unholy Grace」も検閲にひっかかる。それは台湾と関係があるからだという。


なぜこの時節に屋外スポーツイベントがあるのか理解に苦しむぜ。(北海道にも雨期はあるのだ。)

 JOHN VANDIVER 記者による2019-7-1記事「NATO ally Turkey rebuffs US, poised to receive Russian weapons system」。
     エルドアンは、10日以内に最初のS-400が舶着すると、トルコのテレビに対して語った。
 その契約は2017-12に25億ドルでなされている。
 トランプは前のオバマ政権を非難した。ペトリを買いたいというトルコの要求を米政府がつっぱねたから、トルコはロシアからS-400を買ったまでなのである。
 だからトルコに対する制裁はしない。トランプは大阪でエルドアンに請合った。
 じっさいにはトルコは単なる輸入を求めたのではなく技術移転を求めたのである。それを2013年に米政府は拒否した。
 だからトランプ政権も対トルコへのペトリの単純輸出は許可しているのにエルドアンとしてはS-400路線を変えるつもりはない。S-400は技術移転コミなのだ。
 次。
 David B. Larter 記者による記事「US Navy eyes new launchers on destroyers for hypersonic weapons」。
      ハイパーソニック兵器=プロンプトストライク が完成したらそれはまず潜水艦に搭載される。その次は、水上艦だ。
 ハイパーソニックミサイル用に、VLSのセルを太くしておかなくてはならない。
 大型VLSには従来の小型ミサイルを複数(たとえば4本)詰め込むことも可能なので、下位互換性に問題はない。
 次のレイセオンの艦載フェイズドアレイレーダーは、窒化ガリウムを使うものになる。そのセルボックスは1辺2フィートの立方体。これが37個で1個のレーダーモジュールアセンブリを成すものと、24個で1個のRMAを成すものとあり。駆逐艦の大小によって変える。今計画している次世代フリゲートの場合、このRMAを9個貼り付ける。


ノルウェーの衝突フリゲートはけっきょくスクラップ化決定。

 David Hambling 記者による2019-6-27記事「The Century-Long Evolution of the U.S. Army Helmet」。
          人類最古のヘルメットは紀元前26世紀には遅くも存在した。しかし近代軍用ヘルメットの歴史は20世紀にまでしか遡らない。
 WWI中の1915年に榴霰弾対策としての鉄帽が初めて仏軍将兵に支給された。カーニバルの帽子のようなので兵隊たちは笑った。しかしこいつのおかげで頭部創傷は70%から22%に激減した。
 米陸軍はM1917ケリー鉄帽を制定。これは英軍のブロディー鉄帽のコピー品であった。
 マンガン鋼を圧延したもので、全重1.5ポンドだった。
 顎革紐は、締めると緩め難いので、鉄帽のつばが何かに激突すれば、この顎紐のおかげで首がえらい目に遭うのだった。
 ケリー鉄帽は0 .45インチ拳銃弾を止められると宣伝された。この宣伝は有害だった。独軍の9ミリ拳銃弾や、諸国軍のライフル弾なら、簡単に貫通するからだ。
 1942年に米軍はM1ヘルメットを制定した。サンダース軍曹の鉄帽だ。
 前縁のカーブにより、雨滴が顔面に落ちかからないようになっていた。
 ケリー鉄帽は側頭部と後頭部に大きな隙を空けていたが、M1鉄帽はそこを深くカバーする。
 ※WWI後半に野砲弾が榴霰弾から榴弾に変わったので。
 M1はFRP製ライナー帽と鋼製外殻との二重構造なので、防弾力は高まった。
 1945-2のフィリピンで日本軍のライフル弾を真正面から受けて助かった軍曹あり。
 ※開戦劈頭にはM1鉄帽ではなかった。昭和20年だと内地や中支から送り込まれた部隊があり、その使用弾薬が7.7ミリではなく6.5ミリ・アリサカだった可能性も考えられる。
 ライナーの内張りは力紐のネット構造になっており、それをユーザーが自分のいいようにアジャストできる。ライナー+鉄帽の全重は3ポンド弱。
 顎紐は、一挙動で緊急解除できた。
 外殻テッパチだけ外せば、水汲みバケツに使えた。
 フリーサイズ品だったのでWWIIのおわりまでに2200万個も製造された。さらにベトナム戦争までこのデザインで戦われた。兵士の重量負荷と防護力のバランスにおいて、まず、往時のベストだった。
 WWII独軍型のヘルメットも有名なものだが、こちらは複数種の鋼鈑を組み合わせて製造されており、しかも、兵隊の頭のサイズに対応する号数を複数用意していた。すなわち、大量生産のための配慮において、負けていた。
 他方で独型鉄帽は、ユーザーの視野が広かった。
 イスラエル陸軍がケヴラーヘルメットを採用すると、すべてのスチールヘルメットは旧時代のものになった。
 そこで米軍もケヴラー製のPASGT(通例、パスゲットと発音される)を1983に採用した。別名Kポット(ケヴ鉢)。うなじがカバーされ、旧独軍ヘルメットにも似ているのでフリッツ(独式)とも呼ばれる。
 交換容易な汗取りシートが使えるようにできていた。
 無ライナーながら防弾力は格段に向上。PASGTは、マグナム拳銃弾までを阻止できた。
 このヘルメットとボディアーマーで、1991湾岸戦争は戦われた。
 2002年に新型ヘルメットACHが導入された。
 ケヴラーだけでなく、Twaronという新防弾素材が使われている。
 衝撃吸収ライナーが組み合わされ、爆風ショックも緩和してくれる。偶然にも、IEDが猖獗を極める前にこれらは開発されたのだ。
 Kポットに比べて視野はさらに良好となり、加えてACHでは、聴覚も邪魔されないのである。
 砂漠で必須のゴーグルの装着とも相性がよい。
 前頭葉部にはクリップが設けられ、そこに暗視カメラのような機材をマウントできる。
 通信用ヘッドセットも楽に使えるように考えられている。
 2012年にアフガンで米兵が頭部をAK-47のタマで撃たれたが、ACHのおかげで助かった。とうとう、小銃弾をヘルメットで止められる時代が来たのだ。
 2011年からは、外見はACHとそれほど違わないECHが、新型ヘルメットとして支給され始めた。
 ECHはACHより分厚いのに、総重量は軽い。
 素材はまったくケヴラーを用いない。UHMWPE(ウルトラ高分量ポリエチレン)という新素材。
 普通のプラスチックの100倍も長い原子連鎖の分子からできている。
 2018年にアフガン東部で、車載機関銃によって距離20フィートから銃弾を当てられた米軍曹長が、このECHのおかげで助かっている。
 軽くて装着の心地がよいということがとても重要。さもないと兵隊はすぐにヘルメットを外そうとする。そのときに爆発に巻き込まれたら、結局ヘルメットの防護機能はゼロだったに等しいわけである。
 もっか、ECHは、IHPSによって更新されつつある。
 デザイン上の革新は、顎紐を取り付けるための「穴」が一つも空いていないこと。これが一つでもあると、新素材ヘルメットは弱くなるのだ。「無ボルト」と称している。
 車両の天蓋ハッチから首を出しているクルーが路側爆弾の爆風デブリに吹かれると顔面が削られる。この被害を緩和するため、IHPSは、顔面プロテクトを簡単に追加できる設計とした。すなわち大面積バイザーと、モトクロスバイク乗り用のように前へ突き出した下顎部プロテクション。
 さらにIHPSには、脳に伝わるIED衝撃波を半減させられる詰め物が入っている。
 暗視カメラなどを装着できるポイントは2箇所設けて、ユニバーサルに各種器材に対応。
 IHPSの次の世代のヘルメットは2020に登場する予定だ。その詳細は、分かっていない。
 次。
 Kyle Mizokami 記者による2019-6-24記事「World War II Bomb Explodes 75 Years Later, Creates Massive Crater in German Field」。
    フランクフルトの北の町の郊外の大麦畑でWWII中の不発弾が爆発。 6-23の早朝。目撃者なし。原因不明。
 できたクレーターは、幅33フィート、深さ14フィート。
 どうも爆弾は、M43または AN-M43 または AN-M64 の500ポンドGP爆弾らしい。信管設定によって、ビルの4階分くらいも土にめりこむ。爆発前に。
 M65だと長さ5フィート、径14インチ。TNT280ポンド充填。
 弾殻の厚さは0.3インチ。
 こうした不発弾はこれから200年は、爆発する可能性があるという。
  ※朝鮮戦争中に長時間タイマー付きの時限爆弾を搭載したB-29が離陸後に調子が悪くなって、急いで関東平野の大河に捨てた爆弾が、何十年もして河の中でハゼたことがある。これは長時限信管だったから納得ができるのだが、ドイツに落としたGP爆弾にはどんな信管がついていたんだ? そこがいちばん知りたい。


劣化ウランの粉末冶金3DプリントでCMFを創ったら最強じゃね?

 素人疑問一。
 戦国時代の「竹束」を、グラフェンもしくはカーボンファイバーのナノ構造でミニチュア再現したら、CMFと同じじゃないのか? つまり空隙が圧縮されることで徹甲弾の衝突エネルギーを吸収してしまうだろ? それを軽装甲車に使えないか?
 素人疑問二。
 CMF構造で航空機のタービンブレードをつくったらどうなる? 封入されている不活性ガス気泡の断熱力が高いから、もっと高温でエンジンを回せることになるはず。
 次。読者からの質問にお答えするコーナー。
 Q: 『ヤーボー丼』(1997)の中に北鮮拉致のことが書いてあるが、兵頭はいつ拉致のことを知ったのか? 当時の日本国内では、どのマスメディアでもそのテーマは書けなかった筈。
 えー、お答えを申し上げます。ちょっと探したのですが『ヤーボー丼』の中のどこにその話が出ているのか、自分で見つけられませんでした(笑)。
 若いときの文体を辿るのは苦痛ですね。老人ながら日々新たに進化し続けていますので……。
 しかし初出一覧が載ってますので、96年に雑誌(可能性としては『諸君!』か『SAPIO』)に書いたのだろうと思われます。
 当時、わたしは新聞は購読しておりませんでしたが、一般人がその名を知らないようなアングラ活字メディア(大都市のごく一部の老舗書店の雑誌コーナー中に埋もれるようにして毎月1部入荷……するのはマシな方で、郵便でしか取り寄せられないパンフレット形式のものも多し)をよく読んでいまして、そのマイナー活字の世界では、北鮮拉致疑惑の話は、噂と事実ととりまぜて、必ずしも秘密でもタブーでもありませんでした。
 ただ、社会党(今の民主党系の元祖集団であるタチの悪い反日赤匪どもでした)が強かった国会内で真正面から議論されることがないという異常事態がずーーーっと続いていたのです。そこに義憤を感じて、まず中堅雑誌に書いてやったのです。
 当時でも、まともな雑誌の編集部は、著者が肚を括って原稿に書いてきたことについては、それを無断で削除したり、「やめてくれ」と要請することは、ありませんでした。
 著者が名乗って書いている記事なんだから文責がその著者に半分以上あるのはあたりまえなんでね。文責だけ著者にぜんぶ押し付けて匿名のしょうもない編集者が勝手にその文章を改変しててめえの幼稚な表現を繰り出すなどといった某《いろんな》のような品下った編集部はまず存在しませんでした。そこはイイ時代だったんすよ。
 これは何を意味するかというと、当時若輩であった私以外の多くのプロライターは、拉致を知りつつ、メジャー活字媒体でそれを問うことを、遠慮していたわけですな。
 国会議員だって当然、知ってましたよ。あたりまえだよ、じぶんの選挙区の事件だったなら。地元じゃなくったって、警察・公安幹部から耳打ちされてたでしょ。
 知っているのに、国会がそれを追及しようとしない。国会議員が声を挙げないんだったら「無告の民」はどうすりゃいいんだよ? そんな無気力政体、そもそも許されるのかよ? あまりにも卑怯で不甲斐ない日本人にとにかく活字のパンチを浴びせたくてたまらなかったのが当時の私だったなぁと回顧されます。
 ついでだけど、《海保は工作船を引き上げろ》と活字で最初に主張できたのも俺だったよ。月刊誌に俺が書くまで、だれもそんな意見を活字で表明しなかった。オイ、日本には論筆家は何百人いたんだよ? なんともいかにも異常な言論空間があったわけだが、その空間内で生きている当の日本人たちには、自分たちの異常さが分からない。それは今だって同じです。
 高校の数学で「論理学」ってあるでしょう。では、「横田めぐみは2●●●年より前に死んでいる」という命題は真か偽か?
 もし2●●●+n年(ただしnは正の自然数)時点で、彼女が生きているのを見ました、とあかしだてられる証人がひとりでもいるのなら、そこには反証がひとつ挙がったのだから、偽だ。
 しかし、反証がひとつも無いとしたら?
 北鮮政府は、死んだと言い続けている。ただし、物証はひとつも添えていない。
 真であるとも偽であるとも、誰にも証明されることなくして放置されている状態なのだ。
 この状態で日本政府がするべきことは、北鮮に対する懲罰的制裁を限度無しにアップ・ノッチし続けることのはず。なぜそれをしない?
 同レベルの制裁をダラダラと続けても北鮮が「死んだ」物証を出しそうには見えない。すると、このまま時が経って近未来に確実に起こる事態は何か? 横田父、横田母、そしてめぐみさん本人の寿命が尽きることだ。真の消息を知る北鮮人たちの寿命も、皆、尽きる。
 さて、そうなった後で日本政府が北朝鮮に懲罰的制裁を課すことがもしできたとして、それで誰が浮かばれるんだ?
 いますぐ「報復」をやらなきゃダメでしょ? 横田父、横田母が生きている今のうちに北鮮体制に大打撃を与える報復をしてみせなくては。
 北鮮体制には、制裁ではなく、報復を受ける資格が、とっくに十分にある。
 《日本人を拉致すれば高くつく》という見せしめを、逐一、儒教圏人に思い知らせることは、日本政府が将来の日本国民を安全にする所以でもある。
 それが、まともな政府と国会の責任というものではないのか。
 次。
 ストラテジーペイジの2019-6-29記事。
    ニジェールに米空軍の基地が完成した。
 「エアベース201」と称する。
 工費は1億1000万ドルもかかった。
 起工が2016だった。予定では翌年に竣工するはずであった。
 しかしサハラ砂漠南端の厳しい気候が邪魔をした。
 民航空路とUAVの調節をつけるためにまだ作業時間が必要で、運開は2019からになる。
 ニジェールの首都ニアメイからは730km北東にある。
 ニジェール政府が航空基地開設許可を与えたのが2014だった。
 翌年、米軍は無人機運用を、首都空港の一隅から開始している。
 米軍がアフリカに持った最初の航空基地はジブチの「キャンプ・ルモニエ」。仏軍と共用。こんどの「201」も仏軍と共用する。
 ルモニエには米海軍もMQ-8とスキャンイーグルとP-3Cを置いている。
 米空軍は、リーパー×10、プレデター×4、U-28×6、ストライクイーグル×8機。


 fire fucker

 Murray Brewster 記者による2019-6-27記事「Chinese jets buzzed Canadian naval ships in East China Sea」。
   東シナ海の6-24午前。中共空軍のスホイ30×2が、フリゲート艦『HMCS レジナ』と補給艦『MV Asterix』の直近300mを、高度30mでバズり、威嚇した。
 この2隻は北鮮船の瀬取りを監視するために東シナ海にローテーション派遣されてパトロール中であった。
 その前には、カナダ海軍の艦載ヘリCH-148サイクロン×1機が、シナ漁船からレーザー光線を照射されるという事件もあり。場所は台湾海峡近く。
 『レジナ』は今月、台湾海峡を通過している。
 カナダ海軍は2018年10月にも『HMCS Calgary』を台湾海峡を通過させている。
 中共が、カナダ海軍の北鮮監視任務を妨害する行為に出るのは、毎度のことである。
 昨年はカナダ海軍の「CP-140」哨戒機が、やはり中共軍ジェット戦闘機複数によってバズられている。哨戒機は、タンカーや貨物船が北鮮の瀬取りに関与しないかどうか公海上で監視していたところであった。
 日本、豪州、ニュージーランドもこの活動に加わっている。3ヵ国ともに中共から同様のイヤガラセを受けている。
 次。
 ストラテジーペイジの2018-6-28記事。
    海賊統計。
 2011年から事件は減り続けている。
 理由は、商船が大型化したことだ。
 大型化したきっかけは、2008年~09年のリーマン大不況だった。
 景気の底の時点では、なんと全世界に9万隻あった航洋型商船の15%もが、積荷がなくて遊んでいた。
 海運会社は、商船をフル稼働させないと採算をとれない。そこで、古いフネや、効率の悪い小さいフネから、スクラップ化した。新型または大型で効率の良いフネだけが残されたのである。
 かくして、バルクカーゴキャリアも、コンテナキャリアも、タンカーも、みんな、大型で高効率の船に、陣容が改まった。
 もともと海運会社にとって大きなトラブルとは、船舶が洋上で故障したり、浸水沈没したり座礁したりすること。それに比較すると、じつは、海賊の害は小さなリスクであった。船会社が、故障や事故の率を減らすために、古い小さな貨物船を捨てたことで、海賊たちも、そうした船を追いかけにくくなり、あるいは、とりつきにくくなったのだ。
 2017年には全世界で98隻の航洋型商船が事故で沈んだ。しかし2018年には46隻に減っている。
 機械が新品でも、クルーが可燃性物資の扱いを熟知していないと、船火事で全損……ということはあり得る。
 大型商船は1日動かすだけで20万ドルが飛んでいく。だから船長は、スケジュール厳守のプレッシャーにさらされており、時に濃霧や荒天を冒しての航行も強行しがちである。
 天気を読み間違えれば、海象のために、貨物船は沈められる。
 というわけで、商船の事故総数は2018年において2698件。これは2017より1%すくないだけだ。
 海賊はモノとカネが目的なので船は沈めない。しかし天候予想を間違えば船が沈む。ゆえに商船会社は海賊の方は当面軽視している。


一見、軍用とは見えない低速小型艇の底から、誰にも見咎められることなく密かに機雷を放出してしまえる小改造を、イランは研究しているはずだ。

 Kathy Gilsinan 記者による2019-6-26記事「America’s Free-Rider Problem in the Strait of Hormuz」。
       ホルムズ海峡を世界の原油の移送量の2割が通過するといっても、そのほとんどはアジア向けであって、米国向けはほとんどない。
 1991年に米英仏ベルギーの4ヵ国艦隊は、イラクが仕掛けた機雷1000個弱を、2ヵ月近くかけて除去した。
 近未来のホルムズ海峡では、イラン軍が掃海作業を妨害するので、イラン軍を空爆して黙らせる作戦と併行でなくては、掃海などできまい。
 ※ホルムズ有事ではイラン軍は執拗に追加の機雷敷設(もちろんリムペットではない。沈底機雷・繋維機雷・浮流機雷だ)を試みると考えるべきだろう。1991のサダムフセインは米海兵隊の動きを止めるために防禦機雷を撒いたが、イランにとってはホルムズの封鎖が作戦のアルファでありオメガなのだから、連続不断に機雷敷設と対商船攻撃を続けるに違いない。その方法もいくらでもある。追加敷設が1回でもあれば掃海はまた一からやり直しで、永遠に仕上がらない。したがって、《非米の西側各国に対イランの空爆力があるかどうか》は問題なのではない。イラン軍がいつ全滅しイラン体制がいつ滅びるかが、問われる課題になる。イランが滅びないうちは機雷はいつのまにか追加され、地対艦ミサイルも不意に飛んで来るわけだから、「掃海やりました」とアナウンスがあっても、タンカーは出入りができるわけがない。つまり、いったんそこで本格機雷戦が始まったならば、そこに海自が出張しているかいないかとはほぼぜんぜん関係なく、日本はペルシャ湾産石油の過半を数ヶ月か数年は、得られない。紅海やオマーン湾南部のパイプライン端末から積み取れる石油・ガスだけがアクセス可能である。欧州市場向けのコンテナ船も、喜望峰周りで行くしかない。世界の石油市況が1年ほど高騰してくれれば、米国とロシアだけが幸せになる。厭でもアメリカはグレートになり、中共は爆沈する。日本では、分散独立系のエネルギー・サイクルを主軸とする《超省エネ社会》が実現しよう。そのキーワードは「蓄電池」と「DC家電」だ。
 次。
 Gina Harkins 記者による2019-6-26記事「Congress Wants the Navy to Prove it Can Fight Off Enemy Drone, Boat Swarms」。
      無線操縦の爆装特攻ボート。あるようでなかったものだが、昨年、サウジアラビアの2隻のタンカーが、紅海にて、フーシ(イランの手先ゲリラ)の操るリモコンボートの攻撃を受けている。サウジはその直後、一時的に、商船の運航をすべて止めるしかなかった。
 趨勢として、この《リモコン震洋》は、スウォーム化するであろうことが、間違いない。
 2016年にはホルムズ海峡で、IRGCの有人高速ボートが、米イージス駆逐艦『ニッツェ』に300ヤードまで近づいた。
 ブルガリア海軍は、昨年、黒海で、駆逐艦がどうやってスウォームボートに対処するかの演習をしている。
 次。
 David Hambling 記者による2019-6-27記事「The Pentagon has a laser that can identify people from a distance――by their heartbeat」。
        ヒトの心臓の動きとそれに連動した表皮の動きには個性がある。その様態・パターン・挙動を遠く離れた場所から測定できれば、指紋や彩虹のように、個人同定の手段たり得る。
 米特殊部隊軍は、ここに着目した。すでに彼らは、ドローンが空撮したIS幹部の「歩様」をビデオカメラで解析することで、爆殺前の最終確認(本人特定)に役立てている。
 それに加えて、「心拍様態」も利用できるかもしれない。
 「心様」は「歩様」よりも誤認率が低い。「歩様」や「顔認識」ではしばしば、他人との混同が起きる。「拍動遠隔認識」ではそのような混同はあり得なくなるという。
 赤外線レーザーで「心様」を遠くから観測する技術は、SOCOMの要請でペンタゴンが開発させた。
 今のところ、200m先から分かるところまで来たという。
 以前、シナ系教授が米大学内で類似の装置を開発したが、そっちはレーダーを使うもので、20mからしか測定できなかった。
 米国の病院では、患者の心拍を記録するのに、以前から、赤外線センサーが役立てられてきた。
 循環器の拍出にともなう血流のせいで、人の皮膚からの赤外線反射は変化する。その変化を検知するのだ。
 新兵器のJetsonは、拍動による表皮の「動き」を測定できる。
 さすがに対象者が冬物コートなどを着込んでいたら、その動きは外から検知できないが、夏物背広ぐらいならば、服の上からでも拍動が捉えられる。
 顔認識技術は対テロ作戦ではあまり便利じゃない。容疑者はどいつも鬚面だし、ドローンは高空に所在するので、そこから俯瞰するビデオカメラでは、敵のご尊顔を正面から拝むことが困難である。
 物体の振動を遠くから測る装置は、風力発電塔のチェック用に、前から存在する。Jetsonはそうした既存技術を利用している。
 このレーザーにはジンバル安定機構が組み入れられており、対象たる被疑者に、25セント硬貨大のレーザースポットを当て続ける。波長は赤外線なので、ヒトの肉眼ではその光は感覚できない。それで30秒間、継続観測すれば、「心様」の精確なデータが得られる。ただし今のところ、対象者が立ち止まっているか、座っているかでなければ、うまく測定はできない。
 ※何度も申すようだが私のアイホン7+は私の指紋を認識しやがらない。だから私はこの種の技術宣伝を決して信用しない。
 この技術を活用するためには、テロリスト潜在容疑者たちの「表皮拍動様」データを平時から大量に収集してライブラリ化をしておかなければならない。
 そのあとでならば、たとえば深夜に路肩に穴を掘っている怪しい集団のどいつが、潜在容疑者リストと重なるのか、高空のドローンから、見分けがつくのである。顔認識よりも正確に。
 医療への応用としては、入院患者の不整脈を、センサー類を患者の身体に接触させることなしに常続的に、監視できるようにもなるだろう。