低温ゆえ腐葉土化してない地中堆積層の潜行的な延焼は、消火しようがない筈。

 Kyle Mizokami 記者による2018-7-26記事「Sweden Dropped a Laser-Guided Bomb on a Forest Fire」。
   スウェーデン空軍は2機のグリペンからGBU-49 レーザー誘導爆弾を投下することによって森林火災を消そようと試みた。クリスマスケーキの蝋燭を吹き消すのと同じ効果を期待した。
 スウェーデンの山火事は2週間燃え続けていて、アルヴダレン地区に近づいた。そこは陸上から消防隊の近づき難い僻地にあり、かつまた、古くからの射爆場である。不発弾を踏む恐れがあるから、もしアクセス容易であっても、消防士など投入させてよい場所ではない。
 グリペン戦闘機は、高度9800フィートから、1発の誘導爆弾を投下。着弾点から半径100ヤードの炎は、吹き消されるという。
 GBU-49は、500ポンド爆弾である。誘導は、レーザーにもGPSにも切換が随意。
 レーザーは煙に弱い。GPSは敵のジャミングに弱い。レーザーは移動目標を執拗に最後まで精密に追える。GPSは爆弾をリリースしたら母機はすぐ空域から離脱していい。それぞれ一長一短あるので。
 ※どう考えても戦闘機から高額な誘導爆弾を落とさねばならぬ必然性は無く、また、たかだか500ポンド×2発で山火事が消えたはずもない。ただの通常の射爆訓練を「消火」と称してみただけなのであろう。しかしそれを大真面目に報道させている当局は、いったい何を考えているのか。もともとスウェーデン人にも部分的にイカレたところがある。暑さでそれが発現するのか。
 1935年のこと。ジョージ・S・パットン将軍が、ハワイのマウナロア火山の溶岩噴出を止めようと、同火口を爆撃させたことがあったという。たぶん失敗しただろうが。
 次。
 ストラテジーペイジの2018-8-5記事。
  エストニア人はフィンランド人の同類で、言語も近親。エストニアは、スラブ人の国々の中に浮かぶ孤立圏なのである。
 20世紀初めに、フィンランドとエストニアは合邦したらよいのではないかと話し合われたこともあった。が、バルト海によって分断されている地勢のために、まとまらなかった。
 首都のタリンに総人口の半分が暮らす。
 タリンとヘルシンキの間の距離は87kmである。
 エストニア人はタリンの放棄はできない。だから同市を「バルト海のスターリングラード」として徹底抗戦するつもりだ。
 露軍の軍事雑誌には、そのようにして要塞化された敵国都市をいかにして征服したらいいかという研究文がすでに寄稿され出している。
 彼らも、未来戦は市街戦だという認識なのだ。


12式地対艦ミサイルのコンテナ1個を、手押し式の「台車」×2台に載せることはできるか? ……できる。

 先島群島で必要としている装備は、それだ。
 手押し台車は、完全人力のみでの陣地進入を可能にするものだが、もし山を越えて何kmも移動したいときには、小型ジープやオートバイでゆっくりとロープ牽引したっていいだろう。
 ミサイル本体1発が700kgということは、旧軍の1式機動47mm対戦車砲の800kgより軽い。今日ではノーパンクタイヤもベアリングも進歩した。四一式山砲580kgを分解して臂力でオーエンスタンレー山脈やアラカン山系を越えたことを想えば何でもない。
 12式ミサイルのコンテナ1個と手押し式台車、さらに発動発電機や通信機や必要人員とをぜんぶあわせても2トン弱というところだろう。もっといろいろ欲張っても3トンで収まる。
 すなわちチヌーク×数機が1往復するだけで、コンテナ4本と管制システム一式を離島へ急速に送り込める。
 それがもし隣接した島嶼間の移転であったならば、CH-47ではなくUH-60を飛ばしても可能なわけだ。
 台車にはエレクターがつかないから、発射するためには土工によって生地に「斜堤と壕」を適宜に築城せねばならない。これは兵隊を先行させて掘開させる。もちろんバラクーダを展張したその下でだ。そこに追及してきた手押し台車が陣地進入し、放列布置する。
 この「手押し式台車」を部隊において工夫してみるのに、経費は数万円で足りるはずだ。
 砲兵精神を発揮し、すぐにやるべし!
 次。
 Sydney J. Freedberg Jr. 記者による2018-8-2記事「Army, NASA Want Laser Micro-Satellites For 50 Times The Bandwidth」。
  米陸軍は、地上部隊と衛星との間の通信をレーザー化することで、ロシア軍や中共軍の執拗な通信妨害を確実に回避したい。
 これを、こんどはNASAと協働で、マイクロサットを使って実現する。
 げんざい、米陸軍の旅団司令部は、実戦想定の演習において、毎秒2メガビットの衛星リンクを頼りにしている。旅団は4000人からなる。
 かたや、市販のスマホは、毎秒70メガビットをやりとりできる。
 いかに衛星通信というものが苦しいかがわかるだろう。
 そこで、レーザーですよ。
 NASAは、光学通信およびセンサーのデモンストレーション「OCSD」を実施する。LEOをペアで周回させる「AeroCube-7B」および「AeroCube-7C」(どちらもきっかり5ポンドの軽さ)。そこから発射されたレーザービームを、地表において受光する。
 比較してみよう。かつてのペンタゴン主導のTサット計画。
 たった5機の通信衛星に260億ドルかけようというイカレたものだった。2010年の中止時点で15億ドルが消えていた。
 あらためて提案されているキューブサットは、レーザービームの向きを調節する可変反射鏡を搭載しない。
 そのかわりに、衛星そのものが体位を変える。精密な天測によって、「四十分の一」度の精度で、地表の一点に一面を正対させるのである。今までの最も精密な通信・放送衛星でも、この照準角度の精度は1度であった。1度では、地上部隊の可搬式アンテナとレーザー光によって通信を維持することは不可能であった。
 姿勢制御は、旧来のロケット燃料を燃やす方式ではない。そのかわりに、少量の水をスプレーし、その反動を利用する。
 この実験、宇宙から地上に対し、レーザーでば毎秒100メガビットを送信する。
 これは、同サイズのキューブサットが電波を用いた場合の50倍のビット量。電波通信では、せいぜい2メガビット/秒なのだ。
 NASAの専門家は言う。軌道高度を調節するシステムを改善すれば、このバンドワイドスは2.5ギガビット/秒かそれ以上までも向上するであろう、と。
 ちなみにT-SAT計画では、5機でトータル28.5ギガビット/秒を狙っていた。
 もっかのところ、キューブサットは、衛星同士での通信はしない予定。これはT-SATとの大きな違い。


まさかLRDR導入により、日本版の対支GBI/GMDでも考えているのか……。

 Tyler Rogoway 記者による2018-8-1記事「Navy’s Old Harpoon Anti-Ship Missile To Get New Tricks After Scoring Six For Six At RIMPAC」。
    SINKEX2018では2隻の廃艦がターゲットに供された。1隻は『ラシン』。もう1隻は『USS McKlusky』である。
 リムパック2018では総計6発のハープーンが発射された。そのうちの何本かが、上記2隻に向けられた。
 発射プラットフォームは、米海軍のP-8、豪州軍のP-8、シンガポールのフリゲート『RSS Tenacious』、そして米海軍のロサンゼルス級SSN『オリンピア』であった。
 洋上の『テナシアス』からは7-21に2本、発射されたようである。
 『オリンピア(SSN717)』からの7-27の水中発射は特に注目された。というのも米SSNは過去20年以上も、ハープーンを発射したことがなかったのだ。
 今日、ハープーンのユーザーは30ヵ国強。
 そして、40年選手であるハープーンの最新型は「ブロック2+」。特に、入り組んだ沿岸域で運用しやすくしてある。飛翔中に双方向通信が確保されるのだ。 ※しかし双方向通信は潜水艦向きじゃないよね。
 また、雨に強くなった。※いままでは弱かったってこと? 船がスコールに突っ込んだら、かわせたのか?
 これまでのハープーンの総生産数は8000本に近い。
 以下、米海軍ニュースのインタビュー記事にて太平洋艦隊の潜水艦隊司令のコードル中将が語ったこと。
 潜水艦からハープーンを発射する訓練ができる海域はカウアイ島沖。
 計画では空軍のLRASMの次にオリンピアがハープーンを放つ予定だったが、空軍側で不調が生じたために、オリンピアが先に発射することになった。
 また、Mk48魚雷は別の廃艦に対して発射される計画だったが、いろいろ変更があり、やはり同じ日に同じ標的に対して『オリンピア』から魚雷も射つことになった。
 魚雷はクロース・レンジで射つ手筈ゆえ、ハープーンより射点が縮まる。ゆえに、移動してから射った。
 魚雷の方には実用頭部が付いていた。『ラシン』のキールは折れ、2時間後に水没した。
 LRASMも1発発射されたという事実は、このインタビュー中にとつぜん、明かされた。
 米海軍としては、ふたたびハープーンをSSNに搭載するかどうか決めねばならぬ。 ※これまでは搭載してない?
 ハープーンの射程は今は80海里=148kmだが、ボーイング社はその射程を2倍に延ばすER型も開発中である。
 これは弾頭重量を現行の500ポンド〔226kg〕から300ポンド〔136kg〕に削減することで、燃料を増やして実現する。
 米陸軍は、地対艦ミサイルとして何を買うか、まだ決めていない。ハープーンのブロック2+ERは、買い物候補のひとつだ。
 ※逆に「12式」を日本から米陸軍に対して売り込めるかもしれないわけなのか。ハワイではそのデモをやってしまったのか。グレイ・イーグルとのリンクは完璧だったようだしな……。


真の友人あらわる。

  Dan Leaf 記者による2018-7-30記事「Japan’s risky Aegis Ashore radar choice」。
       日本が地ージス用にLRDR(Long Range Discrimination Radar)を選んだのは、リスキーな大博打だ。
 米国は海外でLRDRを使う気はない。あくまで従来のAN/SPY-6レーダーのの改善だけを続ける。ルーマニアやポーランドもこれだ。
 唯一、米本土外で、日本だけが、ABMシステムとしてのインテグレーションが取れるかどうか、その証明も実験もされていない開発中の新奇レーダーを採用しようというのだ。それでABMになるのか? 何を考えているのか?
 LRDRは、完成そのものが遅れるだろう。そのあとでBMDとのインテグレーションに入る。いったい何年かかるかわからない。2023年のシステム運開など、間に合うわけはない。
 これは何を意味するか。かなりの長期にわたり、日本は地ージスを対北鮮の「圧力」としては少しも役立たせ得ないことを意味するのだ。
 米海軍は30隻以上のイージス艦を持っている。そのレーダーも AMDR AN/SPY-6 になる。LRDR になんかならぬのである。つまり日本だけが米同盟国の共通システムからは外れてしまうことになる。
 SPY-6は、何十年もの実績があるSPY-1の発展型である。だから信頼できる。ところがLRDRには、先行するシステムも実績も何も無い。カタログスペックだけがあり、それが実用的なのかどうかは、誰も知らないのだ。
 BMDの新システムを実戦で使えるようにするには、無数の迎撃テストを繰り返すステップが不可欠である。それには天文学的なカネがかかる。そのカネは誰が負担するのか? もちろん、その実験だけで、時間が何年もかかってしまう。今そこにある脅威には、すこしも対処し得ないお荷物が、なぜ日本政府の選択なのか?
 ABMを実戦本番で失敗するということは致命的なのだ。だからどこの国でも、実力が証明済みの、長年頼られてきたシステムだけに頼る。日本は何を考えているのか?
 ロイター報によると日本政府がLRDRを選んだ理由は、ライフサイクルコストが最も安くなるからであるという。耳を疑う説明だ。
 これから完成させる武器システムのトータルコストをどうして日本政府は予言ができるのか? ABMの新システムなら、開発予算も調達予算も天文学的に膨れ上がるというのが、既往からの常識ではないか。まして買い手は日本しかないのだ。
 日本は考え直した方がいいだろう。
 LRDRは米本土防衛のために設計されているものなので、日本の地ージス用にはほとんどふさわしくないのである。
 記者は元空軍中将でパコムの副司令官だった。出身は戦闘機パイロット。
 ※日本国家にとって真の友人とはこういう米軍人のことだろう。降って湧いたこのLRDR構想は、ごく簡単にいうと、カナダに置かれているDEWL(遠隔早期警戒線)の日本版だと思う。非常にカネもかかるので、それを日本で負担してくれと外務省が要求されたんだろう。「北鮮は無力化するから地ージスそのものが無用。だったら巨大レーダーを置け」と言われたんだろう。またも「赤紙」だ。DEWLの刷新構想について知りたい者は、Vivienne Machi記者による2018-7-27記事「United States, Canada Studying Options to Replace Arctic Early Warning Radars」があるからそれを読め。俺は本日は暑くなる前に『すずかぜ』の見学に(一無名人として)行きたいゆえ、こんなもの抄訳している暇は無いのだわ。ともかく、米本土防衛のために、日本領土に最強レーダーを置かせろ、という話に変わっちまった。あくまで米国が、中共や北鮮発のICBM/SLBMを最前縁(日本列島)で見張りたいというだけなので、それならば経ヶ岬と車力のXバンドレーダーを置き換えたらいいだけの話のようにも思う。時間がないので良いアイディアを述べる。『こんごう』のような古目のイージス艦のCICと上構を切り取り、それを道南の狩場山のような僻地の国有林上に据えれば、北方の地ージスは一丁あがりだろう。西日本は呉のイージス艦でカバーができるからぜんぜん急がなくてもいい。これまた古いイージス艦を「バージ」に改修して、軍艦ではなく「浮体」です――ということにしちまえばいいだけ。それで海自のフネの定数にも影響が及ばない。とりあえずロシアが地ージスを厭がっているという朗報があるから、北方だけは絶対に進めるべきだ。


函館湾内にも冬に海面結氷する一角があると初めて承知した。某タンク前。

 Doug Livermore 記者による記事「Lessons of Covert Action in Tibet (1950-1972)」。
     1950年から72年にかけ、CIA、米国務省、国防総省は、隠密裡にチベットの抵抗運動を支援した。
 CIAはSADという工作チームを実際にチベットへ送り込んだ。レジスタンスを支援するため。
 SADは見込みのある闘士を選別し、こっそりとサイパン島やコロラド州のキャンプヘイルへ連れ出して、そこで、爆破、秘密通信技法などのゲリラ・スキルを付与した。
 また、ネパールとインド領内からもSADが後援するチベット人ゲリラを作戦させ、中共軍によるチベット人虐殺と、さらなる南アジア方面への侵略を牽制している。
 このCIAの作戦を1972に中止させたのはニクソンである。ニクソンは中共との関係を改善しようとした。
 このCIA作戦は、トータルでは収穫があった。
 特にコミュニズムのインド浸透を防いだことだ。
 中共軍の戦争資源を消耗させ、シナ人に力の限度を思い知らせ、占領域の拡張を許さなかった。
 CIAがチベットを泥沼化させてやったおかげで、他の諸国は中共からの侵略を免れたのだ。
 1959のCIAの試算では、中共軍はチベット戡定のために6万人の兵隊と、連日256トンの物資補給を吸引されつつある。
 1959のダライラマ一党のインド亡命は、CIAが手引きしてやった。
 毛沢東は1949から50にかけてソ連に長期滞留し、アジア解放のリーダーは俺だということを認めさせていた。
 CIAは、年にたったの170万ドルのコストで偉業を成し遂げたりと、自画自賛している。
 ダライラマは1972のニクソンによる支援打ち切りについて1998のインタビューでさまざま不平を述べている。
 ※もしダライラマ一派に戦闘精神があれば、朝鮮戦争中にトルーマンから有力な「反支解放軍」に仕立ててもらって、朝鮮戦争の第二戦線がチベット内にできあがり、武装独立もできたはずである。何年経っても戦闘精神がなく他力本願だから、米政府からは見切られた。自業自得の因果応報耳。
 1953にイランのモサデク政権を転覆させたのもSAD。1954のグァテマラ政変もSAD。
 次。
 Richard Sokolsky 記者による2018-7-31記事「A Road Map for Demilitarizing North Korea」。
       国務省の2016統計によれば、北鮮は2005年から2015年のあいだ、平均して、1年に37億ドルを軍事費として支出した。それはGDPの23%にも相当している。
 北鮮には180の武器工場がある。うち40は大砲の工場。10はAFV。10は海軍艦艇工廠。50は弾薬工場である。
 民需用である115の工場も、軍需品生産に貢献している。
 過去に北鮮は、2箇所の軍用飛行場を民用に転換させた。元山にあるカルマ飛行場とサムジヨン飛行場。同地の観光開発のためであった。


なぜ不燃のグラスウール等じゃなくて、可燃のウレタンをわざわざ詰めた?  計画段階からおかしいだろ。

  Ryan Heath and Andrew Gray 記者による2018-7-27記事「Beware Chinese Trojan horses in the Balkans, EU warns」。
   西バルカン諸国は、中共流の統制経済がお好みである。
 先週トランプは、モンテネグロ国民が第三次世界大戦の引き金になるかもしれないと言った。
 隣国のセルビアは2014からEU加盟交渉を開始していて、モンテネグロとともに2025にはEUメンバーになりそうだ。
 両国ともに、元ユーゴスラビア。
 しかしフランスのマクロンは、西バルカン諸国を現状のままEUに加盟させたくない。
 フランス政府は、組織犯罪や腐敗文化が根付いている後進国をEUに加えたくないのだ。
 来年の欧州議会選挙の前には特に。
 だから6月には、アルバニアとマケドニアをEUに入れるかどうかの議題を先送りした。
 コソヴォと、「ボスニア&ヘルツェゴヴィナ」をどうするかの話は、EU内では、最も先送りにされている。
 コソヴォはセルビアから分離していらい、セルビアとの紛争を続けている。かつまた、コソヴォ政府の財政が関税に依存しすぎている。その流儀のままでは、欧州単一市場にまぜてやるわけにいかない。
 次。
 Eric Berger 記者による2018-7-27記事「After 25 years, military told to move from “expendable” to “reusable” rockets」。
       1960年代と70年代を通じ、米軍は、その衛星の打ち上げを、ICBMから発展させた宇宙ロケットに依存した。ひとつはロックマートのアトラス系列。もうひとつはボーイングのデルタ系列である。
 70年代後半、空軍はNASAと協働でスペースシャトルを開発した。1982-6以降、それを使って軍用衛星が打ち上げられるようになったが、86年の大事故の結果、シャトル事業は終わった。
 空軍はアトラスとデルタの性能向上と価格削減を両メーカーに求め、その改善のために30億ドルを与えた。
 にもかかわらず90年代を通じ、アトラス系も、デルタ系も、ロシア製もしくは欧州製の宇宙ロケットに価格で競争ができなかった。
 割高だけれども発注してくれる、米政府の秘密衛星事業だけが、両ロケットの収益だった。
 そこでペンタゴンが斡旋に乗り出した。ロックマートとボーイングの宇宙ロケット部門をそれぞれ切り離した上で合併させ、ULA(United Launch Alliance)社を発足させたのだ。
 資本比率は両親会社で50:50。
 スペースX社を手掛けるイーロン・マスクは、これは独禁法違反であるとして2005に提訴した。
 ※日本のNHKビジネスは独禁法違反だとして訴えるやつがいないのは何故だ? 日本の法曹界が愚劣だからです。
 マスクは訴訟では敗れたが、スペースX社のリユーザブルな独自の宇宙ロケット「ファルコン1」の開発は進捗し、NASAとの契約も勝ち取り、国際宇宙ステーションに物料を補給するための「ファルコン9」を完成させた。
 このファルコン9をひっさげて、マスクはこんどは、ULA社と、米軍の衛星打ち上げ事業をめぐって競わんとす。
 4年前、マスクは、米軍=政府がULA社ばかりに随意契約・発注しているのは違法だと提訴した。
 この訴訟にスペースX社は勝利し、米空軍は、「ファルコン9」にも国家の秘密衛星を打ち上げる資格があると承認した。
 ファルコン9の1段目が発射後の自律安着回収に成功したのは2015-12のこと。
 ついで2017-3には、回収したロケットの再整備→再発射に初成功。
 今日までに14回、再使用ブースターを機能させてみせた。
 2018前半には、ファルコン重ロケットを試射。
 コアにはファルコン9がリユースされていた。
 ファルコン重ロケットは、げんざいの米軍衛星のあらゆる軌道投入に、対応できる。
 よって、宇宙戦国時代が始まる。
 次。ストラテジーペイジの2018-7-28記事。
   中共海軍の艦上戦闘機「殲15」は、2013から量産に移ったと宣伝されているのに、今日まで、わずか30機未満しか製造されていない。
 ※つまり新空母1隻の搭載定数にすらも達していない。予備機、練習機、整備員用の練習機材の必要を考えると、戦力としてゼロ。


管理人より  兵頭本新刊[日本転覆テロの怖すぎる手口]の表紙の写真が手に入りました。

管理人より
こんにちは。
本日は28日。兵頭ファンにとっての祭日ですよ。
待望の兵頭本新刊 PHP新書[日本転覆テロの怖すぎる手口](2018/8/16発刊予定)の写真が手に入りましたので[お知らせと更新情報]で共有しておきます。
http://osirase28.sorceress.raindrop.jp/?eid=96
私は今月大阪へ転勤になりました。8年ぶりくらいに関西に住んでおります。
皆様良い週末をお過ごし下さい。


けっきょくHIMARSはただのデモ試射だったようだ。

 朝雲新聞によれば、米陸軍のHIMARSは海に向けて放っただけという。北朝鮮かよ!
 次。
 Leo Shane III 記者による記事「Congress is giving the officer promotion system a massive overhaul」。
  このAI時代に米軍の人事機構改革がちっとも進まないのにシビレを切らした連邦議会が、斬新な制度を法令として押し付けることになった。
 メシの数ではなく、能力次第で高速昇進させる。
 「アップ・オア・アウト」=昇進せぬなら馘=の規則をなくする。
 民間人ながら軍がことのほか要求するスキルを持っている人材は、最高で「O-6」……すなわち大佐の初任階級でもって軍へ迎え入れる。
 今後の米軍人事では、「実役停年名簿」は無視する。将校が、ある階級になってまだわずか1年くらいしか経っておらずとも、有能であるならばドシドシ進級させてしまう。有能な人材の昇格を何年も待たせない。
 これらの準則は予算法とともに近々連邦下院で法令化されるので、四軍はこれを厭でも実施しなくてはならない。
 ただし四軍間には温度差がある。諸手を挙げて賛成しているのが海軍。内心で大反対なのが海兵隊。
 爾後は、余人を以て替え難いスキルを持つ将校は、昇進をしないで20年から40年も同じ階級・同じポストにとどまっていてくれても構わない。従来は、米軍将校は数年ごとに昇進をし続ける義務があり、昇進選考失敗=ただちに馘、だった。
 ※40年というのは少尉の場合である。万年少尉! 戦前だったら相当ヤバイ事故歴のある奴でも中尉にまではしてもらえたはずだ。三船敏郎の万年上等兵復員と同じくらいにインパクトがある話じゃろう。
 「アップ・オア・アウト」は原則維持させるが、その例外をもっと増やそうというのである。
 見習士官の全員が、末は海軍作戦部長(軍令部総長)か陸軍参謀総長を目指さなければならないなんて、おかしいのだ。
 前の国防長官、アシュトン・カーターはこう言っていた。ある日、フェイスブックのCEOであるザッカーバーグ氏を米軍に迎え入れたいと思ったとする。現行のシステムでは、軍は彼に初任で「O-2」、すなわち中尉の階級しか付与することができない。そんな馬鹿な話があるか。
 次。
 Sergey Sukhankin 記者による2018-7-26記事「Russia to Use Irregular Forces Against ‘Hybrid Threats’: The Case of Kaliningrad」。
        ロシア人のハイブリッド戦術とは、隣国政体を転覆させるのに、ロシアの正規軍を攻め込ますと同時に、隣国内に扶植しておいた味方の非正規兵力〔完全に違法〕を要所で蹶起させる。そったく同時の奇襲術。
 そしてインフラと通信手段をおさえることで他国領土を恒久占領する。
 あるロシア人による整理。
 非正規軍は、使える。
 ひとつには、住民の蜂起を鎮圧し無力化するのに使える。
 またひとつには、テログループとわたりあうのに使える。
 またひとつには、非常事態下での治安維持に使える。
 わが方のインフラ警備に使える。
 原発や工場等の産業系大事故の被害拡大抑制にもそれを投入できる。
 それを「新しいコサック」と呼んでもいい。
 ※ロシア流の自警団。
 次。
 ストラテジーペイジの2018-7-26記事。
   露軍は『イワン・グレン』級の揚陸艦を建造中。1番艦がようやく就役した。
 この『グレン』型は、4100トンで未だ現役の古い『ロプチャ』型LSTを更新するものである。
 1番艦は2012に進水した。
 ただ、2016年の公試運転で問題が見つかり、改修を続けていた。
 2番艦は2019就役予定。
 1番艦の調子がよければ計4艦が建造される計画であったが、もはや3番艦の目は無い。
 『グレン』型は、全長120m、排水量6500トン。戦車13両または歩兵戦闘車36両と、歩兵300人を運送できる。
 時速30kmで巡航すると6500kmの航続距離。
 洋上には30日間、無補給でとどまれる。
 1番艦のコストは2億ドル。これには改修費用も含まれる。


もしAI操縦システムが発達すれば、ドライバーが酩酊状態でスポーツカーを運転しても、人をはねなくて済むようになる?

 これは酒を提供するすべてのショップにとって大朗報ではないだろうか?
 次。
 Sandra Erwin 記者による2018-7-24記事「No GPS? No problem, there are increasingly more options」。
    ロックマートが近未来に軌道投入する第三世代のGPSは、精度がいままでの3倍、耐妨害能力は8倍だという。
 しかし現行のGPSの電界強度は、携帯電話の無線電波の1万分の1である。これに頼るのは危険すぎるのだ。
    ケン・ゲブリエルは、元DARPAの副局長だ。
 角度計測センサーの精度が非常に向上したので、弾道ミサイルの場合、天測航法によってGPSの代用とさせる道が開けてきた。星だけでなく、軌道が既知で登録されている無数のデブリをも、この「天測」の対象として使える。
 米海軍のSLBMは、今日ではGPS受信機を内蔵していない。もともと最初のポラリスには利用できるGPS環境も無かったし。
 その代わりにINSと天測を利用して、ミッドコースの位置極めをしているのだ。
 海軍が開発中の、すごい「位置決め」システム。これはGPS電波に頼らず、他者が発する無線通信電波だけを頼りに、つまり「方探」の精度を超向上させることによって、洋上会合や空中会合等を精確に案内する。空中給油のランデブーもこれによってGPS無しで可能になる。
 ※F-35のパッシヴ方探の技術が転用されているものと想像できる。
 1機の航空機を実戦の前線に配備するまでにかかるコストの75%は、機上に搭載する器材類のインテグレーションを取るための手間なのである。アンテナもアビオニクスも増設の必要がない新システムは、歓迎されるだろう。
 次。
 Bill Murphy Jr. 記者による2018-7-24記事「After 10 Years Studying Sleep, the U.S. Military Just Revealed Something Eye-Opening About Caffeine」。
   CDCにいわせると、人は8~9時間の睡眠が必要。なのに米兵は平均して5時間未満しか寝ていない。
 最適カフェイン投与を計算で決める方法の大発見については学会誌の『スリープ』で論文が初公表され、それをWSJ紙のJ・C・マギンティ記者がフォローしている。
 ここでは、研究の結論をもっと単純化しよう。
 いつものように昨晩もまた5時間しか寝ていないキミは、まず起きぬけに、あまり濃くないコーヒーをカップに2杯飲め。そしてその4時間後に、またカップに2杯、飲め。
 こうすることで、本日のひるまのキミのアタマは、「8時間寝た」と同じ状態に保てる。これ以外のコーヒーの摂り方では、覚醒作用と肉体の健康が両立しない。
 昨晩は5時間以上寝たが、今夜は徹宵作業しなければならない、というときは? その作業の開始直前に、やはり、薄めのコーヒーをカップで2杯、飲め。
 連日、5時間未満しか寝られない状態が幾日か続いており、今晩もまた徹夜だ――というときは? その場合は、深夜の零時、明け方4時、そして朝8時に、カップ2杯づつの薄めのコーヒーを飲め。
 肉体の健康上、とても重要なことは、血中のカフェインを400ミリグラムよりも増やしてしまわないことだ。
 薄めのコーヒー1杯は、100ミリグラムのカフェインと覚えておけ。
 米軍用ではなく、一般人向けのダウンロードアプリも、もうじきリリースされる予定だ。


フェイクニュース本舗はどこ?

 Kristin Houser 記者による2018-7-23記事「U.S. Military Declares Mandate on AI: “We Want to Be the Threat”」。
    米軍がAIを最大課題と見据えたのは2016-10のことだった。
 2018-6-27には、ペンタゴンが統合AIセンターJAICを開設する意向を公表。
 議会にはペンタゴンは、AI関係のプロジェクトが四軍内に600件あると報告している。センターの予算は、6年間で17億ドルを見込む。
 音頭をとっているのはデビュティ・セクデフのパトリック・シャナハン。
 このセンターを創ることにより、国家として巨額予算を投入すべきAI系事業の優先順位が浮かび上がる。
 他国と協働でAIを開発した方がよい場合、それを推進できる。
 次。
 Kyle Mizokami 記者による2018-7-24記事「The U.S. Army Is Learning to Take Out Warships Again」。
    リムパックのSINKEXで米陸軍がトラック上から1発だけ発射したノルウェー製「NSM」について。
 このミサイルは将来、海軍のLCSにも搭載されることになっている。
 また、F-35からも運用できる。
 今回のSINKEXでは、およそ55海里=101.8kmを飛んで廃艦『ラシン』に命中した。
 戦前、米陸軍は、主要な沿岸に海岸要塞砲を据えていた。サンフランシスコ湾、NY港(フォートハミルトンなど)、ボストン港、ハワイ、パナマ運河、そして比島。
 WWIIの直前には、そこに高射砲も加えられている。
 しかし米海軍による制海が不動になり、核時代にもなったことから、1950年に陸軍沿岸重砲兵は解隊された。
 NSM(Naval Strike Missile)は、陸上から発射しても100海里先の艦船を打撃できる。
 ※185.2km。宮古島からは届かないが石垣島からなら魚釣島まで届くわけだ。西表島からも届く。
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 Robert Hunter Ward 記者による2018-7-24記事「The Dawn of Anti-Personnel Directed-Energy Weapons」。
     国連総会は1972年に、焼夷兵器を戦闘員に対して用いることを禁ずる決議をしている。(国際赤十字委員会 ルール85)。
 ※もしそうなら、各国軍が装備している火炎放射器は、「野焼き」用装備だってか?
 1977年のジュネーヴ・コンヴェンションのアーティクル35は、不必要な傷や苦痛を与える兵器を禁じている。
 もし、エネルギー指向兵器からレーザーやマイクロ波を発射して敵兵を斃そうとするのなら、どちらかの見直しが必要だ。
 ※もしレーザーによる受傷が銃創よりも出血が少なく、しかも感染症を起こしにくいとエビデンスを以て証明されたらどうなる? 余計な苦痛はむしろ少ないと主張できる。
 専門家によれば、人が火傷するレーザー光のエネルギーは数メガワットだそうである。
 もし米軍が、国際法上合法のレーザー対人火器を装備したいなら、「即死」させる威力が求められる。敵兵をただ生焼きにするだけだと「不必要な苦痛を与える兵器」に該当してしまうからだ。
 米空軍は2017-11に、タンカーのKC-135が自衛するための武器としてレーザー銃を搭載できるか、試験したいと語った。
 2017-7には、レイセオン社が米陸軍のアパッチ・ヘリにレーザー銃を実装させ、それを空対空兵器として用いる試験を実施した。
 都市の大群集を盾に取ったゲリラを、上空から、レーザーの一閃で、コラテラルダメージを与えることなく、精密に次々と殺害することも、やがて可能になる。
  ※この記者は空軍の若手将校なので、航空機搭載型に関心の中心がある。
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 Beba Cibralic & Aaron Connelly 記者による2018-7-24記事「Russia’s Disinformation Game in Southeast Asia」。
    2017-12にロシアの戦略爆撃機T-95ベアー(複数)がインドネシアと合同演習。パプアのビアク空軍基地に飛来し、アラフラ海を横切った。ダーウィンの豪州空軍は非常に緊張。
 マレーシアの公式ニュース・エージェンシーである「ベルナマ」が2017-12に、クレムリンが運営させている通信社「スプートニク」と、相互にニュースを利用することについて合意した。
 当時のマレーシア政権は、『ウォールストリートジャーナル』の報道のせいで打撃を受けていた。「1MDB」というソヴレイン・ウェルス・ファンド絡みの腐敗を暴かれたからだ。
 マレーシア政府は、「フェイクニュース法」をつくって、そうした疑惑について議論することを禁じようとした。と同時に、西側のニュースは嘘ばかりだと宣伝し続けてきた「スプートニク」を賞揚したわけだ。
 スプートニクの姉妹機関で、テレビとデジタルを牛耳っているのが「RT」。どちらも〈俺たちはディスインフォメーションのエージェントじゃないよ〉と言っている。
 だが、彼らの社説、論説、分析、コメンタリーは、しつこく強調し続けている。いわく。西側は落ち目だ。西側は帝国主義だ。西側の資金には陰謀がある……。
 昨年、ロヒンギャ問題についてスプートニクはどんなコメンタリーを発信したか。いわく。ジョージ・ソロスがミャンマーの油田等を取得したいために同国を不安定化させているのだ、と。
 2017後半、メドベジェフ首相は比島のドゥテルテ大統領と、「国家情報の撒き散らし」に関して協定を結んだ。
 この協定にもとづき、フィリピンから通信系の役人たちがロシアに留学して、訓練を受けることになっている。
 政界ライバルが警告。これで比島にもロシア流の、偽ニュースによって愛国心をかきたてて国内を団結させる世論操作手法が導入されるだろうと。
 ロシア流の人民支配術では、情報空間を政府が完全に統制する必要などない。特定の権威メディアや、反政府勢力や、独立機関の信用を毀損してやるだけでいいのだ。
 豪州政府は、南アジア地域にまともな報道機関が育つよう、資金その他の援助を惜しまない。
 そしてこの事業では、日本との協働を模索するべきである。