民度の山奥で……

 Agence France Presse の2017-9-10記事「YouTube Shuts Down North Korea Propaganda Account」。
   ウリミンゾクなんちゃら、というアカウントで北鮮の宣伝ビデオフッテージばかり投稿しているところがあったのだが、そのアカウントがユーチューブによって抹消された。土曜日までに。
 米政府の対北鮮貿易制裁に抵触するのが理由らしい。
 この投稿者は先月には、半世紀前の脱走米軍人ドレスノクの二人の息子を出演させている。北鮮で暮らしているのだ。
 7月には、いったん2014に脱北したもののじき舞い戻って京城は地獄だと宣伝しはじめた名物北鮮女をフューチャー。
 ユーチューブは2016-11にも、北鮮のテレビ放送内容をそのまま反映しているだけの投稿を削除している。
 次。
 Blaine Taylor 記者による2017-8-14記事「Douglas MacArthur: Atomic Bombs Will Win The Korean War?」 ※この原記事は再掲で、初出は2015-9-1である。
  1964年に出版された『ダグラス・マッカーサー』という評伝。その著者Bob Considineは1954年、マッカーサーの74歳の誕生日に直接インタビューしている。
 マックはそのとき、オレの思い通りに10日間戦争させてくれたら、停戦期間に発生したよりももっと少ない米兵の犠牲で朝鮮戦争に勝利していたんだ、と語った。
 まず30発から50発の原爆を、鮮満国境にかかわる航空基地や物資貯蔵所に落とす。
 落とすタイミングは深夜だ。飛行機も搭乗員も整備員も、地上で一掃してしまっただろう。
 敵航空戦力が一掃されたら、蒋介石のシナ人部隊50万人に米海兵隊2個師団を増強し、それで2つの上陸進攻軍を編組する。
 主力上陸軍(1個海兵師団が40万人の国府兵を率いる)はAntungに上陸してそこから鴨緑江沿いに東進する。
 助攻軍(1個海兵師団が10万人の国府兵を率いる)は同時に日本海側(Unggi or Najin)から〔豆満江河口に〕上陸して西進。
 2日のうちに鮮満国境中央で合流し、鮮満国境に火力の壁をつくる。
 その次に38度線から米陸軍(第8軍)が北上し、米支統合上陸軍を金床とし、第8軍をハンマーとして、北鮮内の中共軍を殲滅する。中共兵は1人たりとも鮮満国境を越えて満州にもどることはできない。
 上陸開始から10日以内に北鮮内の敵軍は飢餓に陥る。
 航空戦力が全滅し、前線への補給線も絶たれてしまった中共は、和を請うはずである。
 そのさいどうやって鮮満国境を浸透的に越えてくる追加補給を阻止するか。
 米支合同上陸軍が南下すると同時に、鮮満国境に「放射性コバルト」を撒布すればよいのだ。日本海から黄海までも帯状に。
 撒布は、馬車からも荷車からもトラックからも航空機からもできただろう。放射性コバルトは、少しも高価な物質ではない。それが私(マッカーサー)のプランであった。
 放射性コバルトの半減期は60年だから、最低60年間は満州から朝鮮への地上侵攻はできなくなる。
 ソ連に朝鮮で戦争などできるものか。航空輸送力が破壊されれば、あとは単線の鉄道でしか前線に補給ができない場所なのだ。それ以外だと船しかない。トルーマン+アチソン+マーシャル+ブラドリー+統合参謀本部の連中の懸念は、お笑い草だ。
 ソ連はシナのための戦争などしない。
 あの停戦がすべてをダメにした。あれで中共は息をふきかえしてしまった。満州には1万フィート級滑走路がいくつも造成されてしまった。トルーマンがワシを解任する前には満州には兵器工廠など1つしかなかったのに、すでに4箇所以上にそれは増殖しつつある。
 勝利は絶対確実であったワシの作戦計画を、孤立主義者であるトルーマン+アチソン+マーシャルらが拒絶した。そして統合参謀本部は常に政治家の鼻息を窺うだけの役人にすぎない。
 1952-12にマックからアイクに送ったメモがあり、それをみると、この本で紹介されているマックの原爆指向は本当だったようだ。
 ※マックの副官だったハフ大佐の回想録『マッカーサー将軍との15年間』には、マックが日本への原爆使用に反対だったように書かれているのだが、そもそもトルーマン政権はマッカーサーに原爆の存在すらも教えてはおらず、マックは広島投下の10日ぐらい前に政府の決定を一方的に聞かされただけ。意見を挟めるようなポジションではまるでなかった。
 ブラドリー率いる統合参謀本部はどうしてこのマック案には反対だったのだろう?
 軍隊の地上通過を防ぐことができるぐらいに強烈な放射性の塵が、米軍占領下の日本列島にまで偏西風に乗って飛来することが確実だったからだろう。
 ※その前に撒布担当の米兵が、たまったもんじゃなかろう。


韓国発の誇大妄想被害予想を検証する

 〈北朝鮮軍は核を使わずとも38度線越しに京城[ソウル]市を砲撃しただけで100万人の死傷者が出るから、米国には北に対する軍事オプションはあり得ない〉といった根拠不明な論評を聞く。
 典型的な、左傾韓国人と平壌政府の「政治的な合作」である。
 これに、退役後の年収に満足できていない元米軍高級将校らが加担して、米国向けの世論工作が成立する仕組みがある。
 極東に関するマティスの知識レベルではこの嘘は見抜けない。
 そこで、この場を使い、それがいかにデタラメな数値なのかをわたしが検証しておく。
 まず北朝鮮軍砲兵部隊の装備品で、DMZ(38度線の非武装地帯。幅5km)の北側に点在する硬化陣地(その場所はほぼ把握されている)から京城市(いちおう京城駅前が市心とみなされるが、市域は漢江[ハンガン]のはるか南までも拡がり、昼間の人口は900万人以上)を攻撃する任務が与えられているのは、「240mm自走多連装ロケット発射機」と「170mm自走砲」しかない。
 北朝鮮軍には「300mm自走多連装ロケット発射機」もあるのだけれども、数が少なく貴重で、京城よりも100kmほど南に位置する米空軍の烏山[オサン]基地の運用を妨害するという重要任務が与えられている。
 だからこれが京城[ソウル]に降ってくることはない。
 また口径240mm未満のロケット弾だと京城市心に届かず、性能も情けないほど不良だ(2010年11月23日に韓国の延坪島を狙って122mmロケット砲弾が288発発射されたが、島の陸地部に着弾したのは80発のみで、損害も軽微)。
 2014年3月4日に北朝鮮は海に向けて240mmロケット弾3発を発射し、それは55km飛翔した。既知の砲兵陣地で近いものは京城市心から北に45kmの位置にある。このロケット弾だけが「使い物になる」のである。
 ではこの240mmロケット弾は何発あるのか?
 トラックの荷台に発射機を載せた形状の発射車両には新旧の2タイプがあり、旧型は12連装、新型は22連装。
 新旧を合わせて総生産数は200台強ということであるが、ここではすべて新型だとし、かつまた、そのすべてが京城市攻撃用に集中されたと仮定する。
 すると4400発が斉射されるだろう。
 統計学的にはその数割がまともに飛翔せず、着弾したものの1割は不発となると信じられるが、全部がうまく着弾し、信管も正しく作動するとしよう。
 240mmロケット弾には炸薬が45kg充填されている。4400発で198トンの炸薬だ。
 第二次大戦中、京城と同程度に不燃都市であったロンドンに向けて、ドイツは1358基の「V-2号」弾道ミサイルを発射し、うち517発が着弾し、それによる死者は2754人だった。「V-2号」の弾頭炸薬はちょうど1トン。その1トンで5人強が死んだ計算だ。
 198トンならば1000人くらいが死ぬであろう。ふつう、死者1名に対しては負傷者も5人くらい出るので、別に5000人も負傷するだろう。むろん現実にはこれよりずっと少ない着弾・爆発しかないはずである。
 ロケット弾を発射機に再装填してまた射ってきたらどうなるかは、考えなくてよい。というのは、再装填には何十分もかかる。次の斉射が落下してくる前に、京城市民は最寄の地下避難所へ移動しているから、それ以上に死傷者が増えることはないのである。
 京城市の地下鉄には市民用のガスマスクまで用意されており、定期的に市民の防空訓練も反復演練されていることも周知だろう。日本の都市とは違うのだ。
 次に「170mm自走砲」の破壊力を試算する。
 もともと第二次大戦中に鹵獲したドイツの173mm砲(弾重68kg、射程30km弱)をソ連が北朝鮮へ贈与。それを参考に北朝鮮が自前で射程40kmの長距離砲をこしらえ、中共製戦車の車体に載せたという。1978年いらい、何門が製造されたのかは不明だ。
 現在DMZ沿いに配備されている数としての最多の推測値は「500門」である。
 じつは米陸軍も1950年代に、ソ連軍の後方燃料貯蔵所を破壊できる射程32km以上の「175mm自走砲」(弾重65kg、充填炸薬14kg)を開発して1980年まで524門生産した経験があるので、このクラスの長距離砲を完成するのがいかに難しいかは熟知している。
 米国製175mm砲の場合、流線形砲弾は銅帯の他にナイロン緊塞帯も巻くことで、発射ガスを逃がさぬようにしてある。そうして砲身内にかかる圧力は3150バール。
 もし、圧延鋼の砲弾の底部に僅かなヒビ割れがあれば、そこからこの高圧ガスが入り込んで砲身内で砲弾が自爆した(砲弾の底にもう一枚、厚さ1.5ミリの金属ディスクを溶接して解決)。
 弾薬工場で溶填した炸薬が冷えるときに底部にごく微小な剥離空間でもできてしまうと、発射衝撃でそこが圧縮され、信管と関係なく炸薬が自燃し、腔発事故が起きた(そこでX線で砲弾を全数チェックするようになった)。
 鍛造砲身にも僅かでも疵ができると、砲身破裂事故が起きた。砲身命数(寿命)は初期にはたったの300発だった。焼蝕による擦り減りが早いのだ(終末ロットでは寿命を700発以上に延ばしている)。
 北朝鮮製の170mm自走砲は、イラン軍装備の1門をイラク軍経由で米軍が手に入れて調査している。その詳細(特に砲弾の諸元)は未公表ながら、最大射程が40kmというから、米軍の175mm砲よりも腔圧は大なのだろう。
 RAP弾(小型ロケットを取り付けた砲弾)を使えば射程が60kmに延びるというけれども、その精度は必ず通常弾よりも悪くなってしまう。
 次弾の再装填には5分かかることも判明している。
 10分以上モタモタすると米軍からのお返しの誘導兵器が飛んで来る(DMZからロケット弾が飛んできた場合、米軍砲兵は4分後にはその射点に向けて返礼弾を集中できるように、訓練を積んでいる)ので、北朝鮮の自走砲はさっさと陣地を移動しなくてはならない。だから4発目のことは考えなくてよい。
 170mm砲弾の炸薬量も公開されていない。が、米軍の175mm砲弾の炸薬量14kgより少ないことは確実。そのうえRAP弾は通常弾よりも炸薬量を減らさねばならぬ。ここでは多目に12kg充填されているものと仮定する。
 500門で最初の10分に1500発。タマがすべて届いてしかも炸裂したとしても、トータルの炸薬量は1800kgだから「V-2号」の2発分に足りない(砲弾も必ず1割は不発になるが、ここでは無視しよう)。
 1973年の第四次中東戦争でイスラエル軍は米国製175mm自走砲を使い、シリアのダマスカス市を砲撃した。
 また「イランvsイラク戦争」終盤の1987年にイランは北朝鮮から170mm自走砲を輸入して、射程60kmのRAP弾を使ってクウェート(当時イラクに戦費を援助していた)の油田に対してイヤガラセ射撃を加えている。
 どちらも「砲撃で火の海になった」という報道はなかった。そんなものなのだ。
 北朝鮮軍の170mm自走砲はじっさいには200門未満、ひょっとすると数十門しか使える状態にはないとも疑える。この火砲による京城市民の死傷者数は、誰もが意外に思うほどに少ないであろう。


烏[カラス]の仮面

 ストラテジーペイジの2017-9-6記事。
  ISは覚醒剤戦士だった。
 イラクのモスル市奪回後、ISの死体の血液を検査して判明した。
 最終局面では数週間にわたり、ほぼ不眠不休で戦闘を継続。負傷しても止めなかった。怪しいと思ってた。
 ただし従来と違っているところあり。従来は経口の覚醒錠剤だった。
 今のISは、メタンフェタミンを静注しているのである。
 イスラム圏では多くの聖職者すらドラッグ・ユーザーであり、これは驚くにあたらない。
 昔から、特攻テロリストの死体を調べると、血中にドラッグの痕跡が確認されていた。ずっと前からのイスラム圏の伝統なのである。
 有名なのは11世紀イランのハサシーン/ハシシュ団。一箇所の砦に籠もっていたので、モンゴル軍により根絶させられた。今はオムニプレゼンスなので、ラリったテロリストたちを退治しにくい。
 イスラムテロリストはながらく、「キャプタゴン(Captagon)」という商標のフェンエチリン剤〔不詳〕を愛飲してきた。これはアンフェタミンと同じ覚醒効能のある合成薬だが、血圧がやたら高まるなどの副作用は少ないものである。
 先進国は1980年代までにこの薬を市販禁止しているのに、中東では今でもカプタゴンが普通に買えてしまう。
 ISは占領した製薬工場でフェンエチリンを製造した。必要な原料はトルコから密輸入していた。
 シリア内のゲリラ達にとって、キャプタゴンは、コーヒーや酒と同じ、ありふれた興奮性嗜好物なのである。
 ※モスル戦については『月刊宗教問題』の最新号にも総括しておいたよん。隔月なので、出た日にはもうタルアファが陥ちてた……。そういや『SAPIO』も隔月となるらしいが、それって店仕舞い準備だろう。
 次。
  DEREK HAWKINS 記者による2017-9-5記事「North Korea’s propagandist in pink once again serves up earth-shaking news」。
  すっかりアメリカでも有名人になったピンクチョゴリのアナウンサーは、リ・チュンヒーという。
 『アトランティック』誌は「ピョンヤン・パティ」と仇名を捧げている。
 かれこれ40年以上もニュースアンカーを勤めている李は74歳である。
 李は1943に平壌の南東辺で生まれ、平壌の演劇学校に進んだらしい。
 北鮮雑誌『月刊朝鮮』の2009記事によると、李は金日成から特に目をかけられ、権威ある声で話すように言われたのだという。
 どうやら朝鮮人の耳には、彼女の声質が一種の感動を与えるらしい。
 北鮮の国営テレビが1971にスタートすると同時に李はそのTV局に配属された。
 1980年代までに、レギュラー・アナウンサーに。
 国家行事、政府の声明、天気予報、なんでも語った。
 金日成と金正日が死んだニュースは、昼メロの如く涙ながらに読み上げた。
 さすがにそのときは黒衣装。ピンクでなく。
 レギュラーキャスターとしては2012に降板。
 しかし、政府が何か特別な声明を出すときには、臨時に引っ張り出されて来る。
 李には亭主も子も孫もあって、平壌市内で優雅に暮らしている。
 これまで、李の同僚アナウンサーや上司、多数がTV画面から消えていったのだが、李だけは残り続けた。どんなパージがあったのかは、謎。
 脱北者が2009にロイターに語った話。韓国に来て驚いたのは、ニュースキャスターが原稿を読むのにちょくちょく噛んだりつっかえたりしていること。北鮮TVのアナウンサーには絶対にこんなことは許されないのだ、と。
 2012の少し前、中共の国営メディアが李にインタビューしている。李は、これからは新世代のブロードキャスターたちを教育するのだと言っていた。
 しかしそれから5年経ったのに、依然として李の後継アンカーは顕われていない。おそらく半島で次の戦争が起きたときにも、北鮮の開戦声明は李が読み上げるのであろう。
 ※本日発売の『Voice』に面白い記事が載っているので、みんなで熟読しよう! 核ミサイルの話? 間に合うわけねえだろ!
 次。
 Joel Gehrke 記者による2017-9-6記事「Rep. Ted Yoho: North Korea threat means more F-35s to Japan」。
   日本はF-35をもっと買うことについて「レター・オブ・インテント」以上の要請をし、米国と合意した、と外交委員会のアジア太平洋小委員会の委員長テッド・ヨホ(フロリダ州選出、共和党下院議員)が『ワシントン・エグザミナー』紙に語っている。
 彼は、それが米日どっちの提案なのかは語らなかった。ホワイトハウスも国務省もこの件についてノーリプライ。
 ※記事は、これが政権の意を受けた国務省側による一方的フェイク宣伝にすぎないことを春秋の筆法で示唆している。
 現時点では、日本は42機のF-35を買う計画。うち38機は名古屋で組み立てられる。
 ※なーんかこのYohoという御仁は韓国の立場を擁護するのにかなり熱心な様子なので、トランプの矛先を逸らす目的で日本がF-35をもっと買うなどとフカしているのかもしれない。


のけものフレンズ

 コンピュータのシンギュラリティを最初に予言した(ついでに、長崎型原爆の爆縮起爆の方式も案出した)超天才のフォン・ノイマンは、ソ連が核開発のごく初期にあった頃に、〈なんでアメリカはとっととソ連を攻撃して滅ぼさないのか〉と知人に語った。
 秩序を凌駕する「特異点」が超えられてしまってから、何をやろうとしても、手遅れなのだ。
 地政学は、ユーラシアステップ地帯とアジア大陸の政体は近代西洋型自由主義と相性が悪い、と考える。地理が、政体の許容できる政治的「特異点」を決めている。ユーラシアでは、治安コストが高くつき、国防の失敗はとりかえしがつかない(英国が海から裏手に回りこんで劣勢を立て直してくれない)がゆえに、国内で許容できる無秩序(=思想的党派的自由)の敷居は低く設定される。だからロシア政府やシナ政府や朝鮮政府に、近代西洋型の外交アプローチを試みても最初から無駄で無効である。結果はしばしば有害だ。
 次。
 Rod Lyon 記者による2017-9-5記事「North Korea: Slouching Towards Bethlehem?」
  9-3実験は、地震波から見て、イールドが70キロトンから500キロトンではないか。
 しかしテラー=ウラム式水爆なのかどうかは、数週間くらいして放射線同位体が大気中に漏れ出したのを採集して分析できない限り、外国人には分からない。依然として、正体は不明なのだ。
 ※北鮮はこれが水爆だというなら坑道内の残渣ガスサンプルを米外交官に手渡すべきである。それをしても北鮮にとって何の不都合もないはずで、逆にそれができないというのならば、まだ「中性子ブースター強化原爆」のレベルなのであろう。強化原爆でも250ktくらいまでは行ける。坑道内で組み建てる「装置型」なんだから寸法も重さも無制限で可いのだ。誰も見ていないんだから分かりはしない。
 この時点でハッキリしたこと。北鮮の核実験は、1945年の米軍の核爆弾の出力は超えた。
 いままでは「ノミナル=20kt」原爆すら実現はできていない疑いが濃かったのだが。
 ※この時点で未だハッキリしてないこと。9-3実験は、ソ連や米国の最初の水爆のような「装置型」ではあっても、弾頭型ではない疑いは強い。テラー=ウラム型のコンパクト模型をわざわざ写真宣伝しているのが却って怪しいのである。そしてまた、その「水爆」の前の「原爆」を弾道弾RVに収まるサイズにしたという証明ができていない。これもやっぱり「装置型」かもしれないのだ。爆縮ボールの宣伝模型があるきりで、誰も実験の現場なんか見てはいないんだから。そのRVが2700km水平に飛んだあとで大気圏へ再突入すると熱衝撃に耐えられずに上空で自壊することだけが、疑いもなく証明されている。
 次。
  Ankit Panda and Vipin Narang 記者による2017-9-5記事「Welcome to the H-Bomb Club, North Korea」。
   インドとパキスタンは1998から20年経っても、テラー=ウラム型水爆を実現できない。それを北鮮が実現できたのか?
 フランスは原爆から水爆をつくるまでに8年以上を要した(1968達成)。
 ※中共は最初から水爆をつくるつもりでまず濃縮ウランの爆縮式起爆で原爆を完成した。そこからならテラー=ウラム型はすぐできる。しかし北鮮はプルトニウムの爆縮型からスタートしている。核先進国ならプルトニウムを主剤にしてプライマーとして、セカンダリーの核融合にもって行けるかもしれないが、北鮮にそんな芸当はできるわけがないと考えるのが「技術の相場値」であろう。パキスタンは有利な濃縮ウラン原料原爆からスタートしながら、いまだに水爆を造れていないのだ。


We need a sloven war. The only way to prevent ‘em. Forget about the exit. The lingering state will also be an ideally end for us.

 Sebastien Roblin 記者による2017-9-3記事「America’s Worst World War II Fighter Was the Star of the Russian Air Force」。
 なぜベルP-39エアラコブラはソ連の対独戦線でのみ大活躍ができたか?
 XP-39はインターセプターとして設計された。37ミリ自動砲を中心にして機体をまとめるという、逆転発想のデザイン。
 この自動砲のタマは30発のみ。
 機首には12.7×2、主翼には7.62ミリ×4も付けた。
 液冷V型12気筒のアリソンエンジンはコクピットの後ろに据えた。その排気管はキャノピーのすぐ後ろに突き出している。
 プロペラシャフトはパイロットの股の間を通っていた。
 量産D型には自動防漏燃料槽と、重さ200ポンドの防弾鈑も。
 しかるに1938年の試作機のスピード380マイル/時に陸軍は不満。空気抵抗を減らせと言ってきた。
 メーカーは、腹に突き出したターボチャージャーの空気取り入れ口を撤廃するしかなかった。
 過給器無しにした結果、高度1万5000フィート以上でこの戦闘機は活躍できぬことになった。
 独軍戦闘機は、高度2万5000フィートで空襲を仕掛ける米軍重爆を、さらに高い場所から待ち受けた。米軍の護衛戦闘機は上昇力がよくないとどうしようもなかったが、P-39はその点、最低だった。
 37ミリ砲弾は機首に蓄積されていたが、それを射耗してしまうと、リアエンジンの方に重心が移って、P-39は危険なスピンを起こし易くなった。
 米国が対独参戦する前、P-39のスピナー銃を20ミリに減口径した「P-400」が英国に供給されている。200機以上。
 しかし上昇性能の悪さは同じなのでRAFパイロットはこの機体を嫌った。
 1942夏に英本土に、米陸軍飛行隊がP-39とともにやってきた。英国人は「それは格納庫に入れておいて、われわれの『スピットファイアMk.5』を使うといい」と、親切に薦めてくれたという。
 北アフリカとイタリア侵攻作戦では、P-39には対地攻撃任務が割り振られた。
 ガダルカナルとニューギニアでは、P-39とP-40が中心になるしかなかった。
 それでも日本軍機とのキルレシオは1:1だった。
 インターセプターのため、とにかく作戦行動半径が短いので、苦労した。
 ビル・フィードラー中尉は、米国人のP-39乗りとして唯一のエースである。彼はニューギニアとソロモン諸島で日本機を5機落とした。うち3機の零戦は、立て続けである。が、本人は滑走路上の衝突事故で死んだ。
 アッツ島、キスカ島でも、日本機と闘ったのはP-39である。みんな、忘れているが。
 P-39に乗っていた1人のイタリア人エースと、1人の自由フランス軍人エースが、それぞれ事故死している。
 P-400を早く手放したかった英国は、そのうち212機を輸送船に詰め込み、北海経由でソ連へ援助した。ムルマンスク港に陸揚げしたのだ。
 ソ連は1941末の冬にそれを戦力化した。
 スターリンはP-400を絶賛し、もっとくれ、とFDRに手紙を書いている。これはお世辞ではない。ソ連はレンドリース法で供給された米国製M3中戦車については「家族七人分の棺桶」と悪口しているし、英国から贈られたスピットファイアは寒地では扱い難いシステムであった。
 ソ連のP-39部隊はボロネジ戦線の最初の2ヶ月間で独爆撃機(主にユンカース88)×18機、独戦闘機(主に109)×45機を撃墜し、みずからは8機を失っただけだった。
 東部戦線では独軍爆撃機は低空をやってきた。それで高空の苦手なP-39は大活躍できたのだ。
 また、陸上戦線のすぐうしろに航空基地があるので、航続距離の短さも補われた。
 ソ連戦闘機にはめったに搭載されていない無線機も付いているし、シート素材は良いし、パイロットはごきげんだった。コブルーシカ(小さいコブラ)という愛称もついた。
 P-39は5000機前後がソ連に贈与された。うち1000が損耗している。
 2500機はNY州バッファロー市からまずアラスカへ女子パイロット等によってフェリー飛行され、そこからベーリング海越しにシベリアにフェリー飛行。そこから転々と離着陸を重ねながら東部戦線まで辿り着いた。
 別な2000機は、イランに陸揚げされてソ連へ渡されている。
 ソ連軍が運用したP-39のうちQ型は、7.62ミリ×4の翼下銃を12.7×2に換装した。7.62ミリは、敵機の塗装を剥がす力しかない、と言われた。
 対地攻撃では翼銃そのものが嫌われた。前線のソ連軍はしばしばP-39の翼銃をぜんぶ下ろしてしまい、機首銃だけで精密に地上銃撃しようとした。
 ただし、ソ連のP-39は対戦車攻撃はしていない。というのは、37ミリ自動砲用の徹甲弾をソ連は入手できなかったからである。
 P-39に与えられた主任務はあくまでドイツの爆撃機殺しであり、ついで、シュトルモビクの護衛であった。
 ソ連のP-39乗りは、体当たり空戦をよくやった。エース級ですら、プロペラでメッサーの尾部を切り落として撃墜するということをやっている。
 第二次大戦のドイツ空軍が1945-5に撃墜した最後の連合軍機は、ボヘミア上空でMe262が撃墜したP-39だったという。
 そしてその翌日、ソ連のエアラコブラが、双発のフォッケ189をプラハ上空で撃墜。これが戦争中最後に撃墜されたドイツ軍機だったという。
 性能が全面的に改良されたキングコブラ(P-63)の開発についてはソ連からも助言のためのパイロットがベル社へ送り込まれている。
 米軍はP-51を選好してP-63を採用しなかったが、ソ連はキングコブラを1945-8の満州で使っている。米国が2400機も引き渡したからだ。
 朝鮮戦争中、ウラジオ近郊のP-63部隊を米空軍のP-80が掃射した事件があった。
 フランス軍はインドシナで1951年までP-63を使った。


日本ではWEBでなくTVが“bot”の役割を委ねられている。寡占構造のおかげでそれがあまりにも効果的だからだ。

 インドが潜水艦の競争入札をやるから日本企業も参加しないか――とよびかけているが、三菱も川重もこれにひっかかるほど愚かではないだろう。インドの罠について知りたくば、『日本の兵器が世界を救う』を読むとよい。
 日本はこんな引き合いは謝絶しつつも、しかし、すぐに「逆提案」をできなくてはならない。
 すなわち「潜水艦は売りませんが、《潜水艦建造プラント》ならば売りまっせ!」と。
 小型の機雷敷設専用潜水艦を「タタ」自動車みたいにインドで大量量産させて、それを東南アジア諸国へ売りまくらせる。
 さすれば中共は滅びてしまう。なぜかを知りたい人は『日本の武器で滅びる中華人民共和国』を読むとよい。
 中共が滅びれば北鮮は5分後に滅びる。(その逆はない。)
 北鮮を滅ぼす方法は「中共を先に滅ぼす」こと以外にないのだ。
 そしてそれは実に簡単なことなのである。
 それが実行できないのは、ただ、日本政府にビジョンとガッツがないからなのである。
 次。
 APの2017-9-2記事「Putin: Leader in Artificial Intelligence Will Rule World」。
   プーチンの発言。AI分野で先にブレークスルーを成し遂げた者が、誰であれ、次の世界を支配するだろう、と。
 学生を前にして語った。AIは巨大な機会であるとともに巨大な脅威だと。そして想像を絶している。
 プーチンまたいわく。将来の戦争は、ドローン同士の戦闘になる。一方のドローンがもう一方のドローンを片付けたら、そこで戦争は終わりだ。ドローンをやられて残った人間たちは、あとは降伏することしかできない。
 次。
 Bill Gertz 記者による2017-9-1記事「Russian Twitter Bots Troll NATO」。
  東欧圏において、ロシア語のツイッター投稿でNATOに言及しているもののうち七割は、ロボットによるAI自動文章作成であることが判明した。つまりロシア政府が反NATOの言論をどんどん捏造して盛り上げている。
 ツイッターで3つのつぶやきがあったら、そのうち2つは「ボット」だと思ってよいのだ。
 次。
 NAFEESA SYEED 記者による2017-9-2記事「Russia-linked bots hone online attack plans for 2018 US vote」。
   シャーロッツヴィルの白黒衝突騒ぎの直後、マケイン上院議員は、なんとかしなければならないと思い、ツイッター上で、トランプ大統領がもっと強くこれを非難するべきだと促した。
 すると、ロシア工作部のネットAIが発動した。ソーシャルメディアには、自動反応文章作成ロボットが常駐しているのだ。
 1時間以内に「国家の裏切り者マケイン」などの誹謗レッテルを貼る弾幕が、関連しそうなあらゆるブログを覆い尽くした。
 ロシアは次の中間選挙(2018)、その次の大統領選挙(2020)にネットAIで影響を及ぼすべく、着々とロボット工事を進捗させているところだろう。今はまだ手慣らしの段階だ。
 ボット・アカウントと、人間工作員のオペレートするアカウント、それらに影響された無知な庶民のアカウントが相乗プロパガンダ効果を発揮するのだ。今やロシアの対米戦争の主戦場は、ネットなのである。
 サイボーグ型のボットもある。つまり平時は全自動で反応しポスティング拡散に励んでいるのだが、ときおり人間のオペレーターが椅子に座って手作業工作もやっている、そのようなアカウントだ。
 一部の少数意見でしかないものが、あたかも米国における多数意見や大流行見解であるかのように演出しようとするのが、ネットAI工作の目的である。米国では、これで国政選挙が左右される状況。
 ※日本のネット界では国家叛逆工作は一切無駄なので、テレビ業界が大陸と半島から支援を受けて「国家叛逆ボット」の役割を果たすのか? 面白い。
 あきらかなフェイクでは誰も動かされないので、AIボットは事実を出発点として話を誘導する。
 ロシア工作部隊のボットは、マケインがネオナチと関係しているというルーモアを撒いた。ウクライナで面会した人物の過去に根拠があるので、そこから話を膨らませればよい。あとはAIが話を関連づけて拡散させている。
 ボットやサイボーグ・アカウントは、毎日220ツイート以上を量産し続けることができる。
 これまではツイッターが、ボットのドメイン(戦場)だった。しかし政治工作ボットはドメインをマルチ化しつつある。すなわちユーチューブ、インスタグラム、リンクトイン、などだ。
 スマホでフェイスブックを利用している庶民に対してAIが自動で宣伝工作会話を仕掛ける「チャット・ボット」も登場している。
 投稿者がボットなのかどうかを判定できる「ボット・ディテクション」ソフトもあるにはあるが、AIはラーニングによって着々とそれらを凌駕する技倆を身に纏って行く。
 巧妙なのは、人間しか しでかしそうにはない「ミミック」を、AIボットが模倣できるようになっていること。これをやられたら たいていの庶民はすっかり相手が人間であると思い込んでしまう。そして、相手の意見から強い影響を蒙るだろう。
 DARPAは5月に、米国ネット界におけるソーシャル・ボットの実態を解明してもらうため、メリーランド州ロックヴィルの私企業と150万ドルで3年契約を結んだ。
 ボットAIの研究者たちとしては、フェイスブックよりもツイッターの方が研究フィールドとして有り難い。というのは、アカウントの公開度が高く、見知らぬ個人の話にずんずんアクセスできる。
 次。
 ストラテジーペイジの2017-9-2記事。
 2017-7にイランは偵察衛星打ち上げロケット「Simorgh」を成功させたと発表したが、すぐに米国は、それは失敗だったと。
 そしてこのロケットはどう見ても北鮮の「ウンハ」である。
 「Simorgh」は全重87トンの二段式液燃。高度500kmのLEO軌道に350kgの衛星を投入できるとされる。しかし2016-2の第一回打ち上げ(三段式)は失敗。
 ウンハは2016-2に爆発ボルトの不具合によって失敗し、韓国が海中から一段目と二段目をほぼ無傷で回収した。分かったことは、北鮮は部品を欧州から幅広く取り寄せていた。中共を中継点にして密輸入しているのだ。
 ※先日、映画『ドクターストレンジラブ』をBSでやっていたので後半をついつい視てしまったが、そこであらためて再認識したこと。B-52のテンガロンハット機長の少佐は南部訛だがクルーには黒人が一人いたこと。あまり色が黒くない役者を選んでいるので発音でしか区別できぬ。ソ連のSAMは距離1マイルで爆発してB-52の各部に大被害。指令受領無線機には自爆装置があり、それが作動してしまって通信不能になった。この威力は核しかありえない。だったらそこで「ドゥームズデイマシーン」が作動するはずだろう? 脚本が破綻しているぞキューブリック。爆弾倉には「爆発ボルト」で扉を吹き飛ばすオプションもあるが、それも作動しなかった。燃料が漏れているので機長が目標を勝手に変更し、それでソ連戦闘機は迎撃ができなくなる(ペンタゴンは、こんなことはありえないと強調するわけである)。ソ連のICBM基地はなんとサイロ式でなく地上に聳立している状態のごく古いものである。にもかかわらず水爆は敢えて地表爆発とし、インパクト・フューズのディレイを4段階目に設定。水爆は2個で、そもそも第一目標のあと第二目標へ行く手筈だが、燃料は味方観測艦までギリギリしかなく、第二目標を攻撃はできないのだから、2発目はどうするつもりだったのか、それが謎(早く投下しないと燃料を浪費する)。鉱山を利用した地下空間には、半減期からして数十万人が100年籠もればよいとする。送り込む人の選別はコンピュータがする、とキッシンジャーもどきのセラーズが語る。ジョージ・C・スコットも名優だったんだと感心。


「読書余論」 2017年9月25日配信号 の 内容予告

▼土肥一夫・監修『海軍 第六巻 太平洋戦争2』S56-8
 タウイタウイには石油はあったが、陸上滑走路がない。だから空母が海に出て飛行訓練させるしかないのだが、5月に米潜が蝟集してきたため、それが不可能になった。
 陸軍の「まるゆ」艇は、味方〔海軍〕からの攻撃を受けたこともあった。
 戦争が立体化しているS19時点ではGF長官が軍艦に乗って「指揮官先頭」を実践しても一益もない。むしろ大本営陸軍部との緊密な連絡が求められた。
 爆撃を回避しやすくするためには、事前に、風に向かって艦首を向けておく。なぜかというと、思い切り転舵したときに外側の舷側に風があたってくれるので、その分、舵の効きがいっそうするどくなってくれるわけである。
 雷撃を回避する方法は、艦首か艦尾をそっちに向ける。それしかない。
 AF神話。日本海軍のD暗号は「2冊制」であった。したがって、もしD暗号を解読したのならば、「AF」ではなく、いきなり「ミッドウェー」と解読できたはずだ。それが「AF」とだけ分かったというのは、要するに、暗号書の現物を彼らは手に入れていたのだ。
 S17-1-20にポートダーウィンで撃沈された「伊124潜」よりももっと前から、彼らはそれを取得していたと考えられる(p.183)。
 ついにS20-5月15日には下関海峡は「閉鎖」された。
 横浜港と東京港も5月末までに閉鎖された。
 S15から3年間で作られた油槽船(タンカー)はわずか6万トン。これに最優先を与えたのはなんとS19で、この過誤は取り返せるようなものではなかった。
 ※これが、統制経済=共産主義経済は必ず失敗するという一つの証し。
 『翔鶴』の機関部兵曹長の証言。機関長が「機関科総員退去」を命ずる。配置を去って飛行甲板を目指して昇る途中で、30分をかけて、軽質油庫からドラム缶、石油缶を運び出し、それを海中に投げ込む。これが漂流筏になるのだ。付近の応急用丸太もすべて投げ込む。
 米軍のパターン。圧倒的な支援のもとに前進し、陣地を築く。夜間はいったんそこから退いて、ひとつ後ろの陣地へ。そして翌朝また前進する。そのようにして逐次に陣地を前へ前へ出して行く。
 1945-3にマリアナに配備されたB-29は385機。これが終戦時には986機に増えていた。
 B-29は1944にスマトラ島のパレンバンにも機雷を投下している。
 上海、南京(揚子江)、サイゴンやシンガポール港にも撒布した。
 1939-10-11にFDRをザックスという男が尋ねて、アインシュタインの署名のある手紙(8-2付)を読み上げた。1発で港全体を破壊できるウラン爆弾をドイツが先に造ってしまうかもしれないというもの。シラードとフェルミは基礎実験を済ませていて見込みがあること。
 FDRは一晩考え、翌朝ザックスに、「よしわかった」と返答した。
 ウラン委員会はすぐに立ち上げられたが、全科学者を総動員することが決まったのはさすがに真珠湾直後だった。
 マンハッタン計画は1942-8発足。
 フェルミは1942末に、早くも最初の核連鎖反応に成功した。
 なぜアインシュタインは「港全体を」と表現したのか。彼は、原爆は重すぎてとても飛行機では運べないと直感していたのだ。フネで運ぶしかないから、「港湾」だけがターゲットになるのだ。
 B-29から投下する爆弾にすると決められたのは、1943-9であった。
 日本の都市目標の選定作業は、グローブズ少将が担任。グローブズは京都を一番に推した。盆地で百万の人口があったから。それに次ぐのが小倉、広島、新潟だった。
 しかしスチムソン陸軍長官が、戦後のことを考えると京都はダメだと言って目標候補から外させた。そこで代りに、長崎がリストに加えられた。
 S20-4時点で海軍艦艇は重油に大豆油を混ぜていた(p.271)。
 B-29×1機が飛んでくると270戸強が焼失する。この調子だと9月末までに人口3万以上の都市は消滅すると試算された。
 S20-2までは高々度からの工場爆撃。
 3月から5月までは夜間焼夷弾による低空大都市爆撃。
 6月以降は、低空中都市爆撃。
 都市居住者の四分の一、850万人が疎開した。
 日本陸軍の軍人と軍属の戦死は183万人。
 海軍の軍人と軍属の戦死は57万人だった。
 陸海軍の廃疾者は合計10万人以上。
 空襲による銃後の死者は、原爆が32万人だったとすると、全国合計70万人。
 唯一、日本国内の水力発電所が、損害ゼロだった。
 終戦時に海外にいたのは、陸軍310万人、海軍45万人、一般邦人300万人。
 この一般邦人は日本本土に引き揚げなさい、という命令は、連合軍は出していない(p.285)。全員、自主的に戻ったのである。
 米国は、リバティ輸送船V型を100隻、LST輸送船Q型を85隻、日本政府に貸し出し、これで引き揚げが進捗した。
▼小松左京『虚無回廊 I & II』徳間書店1987-11pub. 初出は1986~1987
 知能は初めから生命を超えている存在なのだ。生命は知能にとって制約にすぎない。生命の制約をときはなしてやった知能。それが人工実存=AEの目的だ。
 電磁カタパルト=エムパルト。
 自己意識だけで、生存限界にしばられた「肉の器」がないのならば、それは実存とは呼べず、むしろ「人工霊魂」「人工精神」ではないのか。
 死すべき自己についての絶望的自覚をぬきにして実存はなりたちうるか。
 太陽系が誕生して50億年。地球がうまれて45億年。地球生命が発生してから35億年。
 その間、一度も、証明できるような形で、他の天体の宇宙生命や、知的存在に遭遇しなかった。
▼ジョン・G・ロバーツ著『三井――日本における経済と政治の三百年』S51-6 つづき
 対米戦争の結果、日本の国財の喪失は、500億ドル相当。これはGNPの10年分にあたり、関東大震災被害の5倍であった。
 米軍が投下した16万トンの通常爆弾のうち10万トンは対都市無差別爆撃にあてられた。残り6万トンが、軍事目標と産業施設に配分された。
 何人かの進駐軍将校は、債券や銀行預金の凍結で窮地におちいっている日本人から、有価証券、不動産、絵画などを脅し取った。特に日本語のできる弁護士は占領時代に成金になり、占領後も億万長者として日本で生活している。
 ◆  ◆  ◆
 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。
 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。
 大きな図書館に毎日通えない人も、最低費用で、過去の軍事知識のマニアックな勘所に触れることが可能です。
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松前大島と松前小島のELINT基地化を急げ!

 8-29弾道弾がもし松前半島の陸地の上を通過したのならば、北鮮の弾道ミサイル精度は極端に悪いことになる。射程だけでなく、方位精度すらも。
 狙った通過点は大間の上空だったはずだ。そのコースならば陸地の上は1回しか横切らない(下北半島の北端部)。
 すなわち、津軽半島の上も松前半島の上も襟裳岬の上も通過させることなく、ほとんど海上の上だけを飛ばしたと宣伝ができた。
 ……が、それには見事に失敗したのだ。
 「コリオリの力」をキャンセルするのに必要な「当て舵」量がわかってないんじゃないか?
 北鮮は、従来も、中距離ミサイルや長距離ミサイルの着弾予定海面に観測船を出していない。このことからも彼らが中距離以上の弾道弾の「精度」をどうでもよいと考えていることが分かる。
 「精度」を心配するよりも遥か以前の原始的な技術段階なのであろう。
 太平洋に向けて大間の上をパスさせようとする飛翔実験は今後もあるだろう。日本海の奥尻島沖か秋田沖に落とす試射もあるだろう。
 となると、わが国は、飛翔中の弾頭から地上に向けて発信されているテレメトリーを複数の地点から傍受し追跡することが望ましい。
 なぜなら、それとレーダー信号を合成することによって、もっと正確に到達高度や挙動を測定できるからだ。
 テレメトリーはふつうは無限特乱(ワンタイム乱数を加減したもの)になっているだろうからNSAのスパコンでもないと元の数値の解明はできないだろうが、RVを地表(海面)からどのくらいの高さで発火させようとしたのか等は、暗号を解かなくてもわかるものである。
 空中分解した場合には、そのタイミングや高度も判明する。テレメトリーが途絶するからだ。
 また、テレメトリーの発信点の移動する具合を発射直後から精密に追うことができれば、ブースト段階での加速力や、大気圏再突入後のRVにかかる空気抵抗などを推量できる。だから傍受は、多数の箇所からすればするほど得られる情報の価値が増える。
 傍受拠点は、漁業無線が錯綜する漁村の近くでは、ノイズィー過ぎて、よろしくはない。
 ではどこがいいか?
 無人島になっている「松前大島」と「松前小島」が理想的である。
 どちらも上陸設備だけはあり、漁船が風下の島影に避泊することはあり得るが、漁港機能はないので、電波環境はとても良いはずだ。
 ここにELINT基地を設ける。ついでに海自松前基地のSOSUSも松前大島まで延長したらよい(松前小島経由で)。
 松前大島と松前小島でテレメトリーを「ステレオ」傍受すれば、日本海のどこに着弾したかの絞込みも高精度化できるだろう。
 ところで飛行場からMRBMを発射することのメリットはもうひとつある。
 舗装道路上をTELに移動させる方式では、その1本の道路に敵の航空爆弾で大穴を開けられただけで、TELの運行計画がまったく狂ってしまう。射点に辿り着けなくなってしまうのだ。
 それにくらべると、飛行場は、滑走路やタキシングウェイの幅が何十mもある上、R/W外もまた平坦な地面なので、TELはどこを走ってもよい。つまり、TELが爆弾孔を迂回して、座標の測ってある射点へ到達しやすいのだ。
 北鮮の道路の舗装厚はおそらく資材不足のため甚だ薄いであろう。洪水や山崩れで使えなくなることもしばしばだろう。しかし航空基地ならば十分な厚さのコンクリートで舗装されている。


実際には大間町の上だけを横切ったのではないか?

 『朝鮮日報』によると発射点は平壌国際空港の滑走路だった。
 起点が分かれば、津軽海峡のどこを通過したのかは絞り込み易い。
 地球上の2点間の最短距離を教えてくれるネット上のソフトを使えばいい。PCなら簡単にアクセスして利用できる。(スマホだと画面が狭苦しすぎて使えないかも。)
 このソフトで表示してくれる最短距離コース=大圏コースの曲線は、そのまんま、弾道弾の飛翔コースと同じになる。
 できるだけ陸地にかからないように太平洋に抜けさせるためには、下北半島の大間町の少し南を通過させるのが、いちばん問題が少ないと判る。
 そのコースより少し北にすると松前町の陸地上空にかかってしまう。
 しかし、大間・佐井・風間浦の上を通すとすれば、北海道のどの陸地の上も通過しないで太平洋に抜けられる。そして襟裳岬から数十km南の洋上を通過する。
 万一、途中で墜落したり、ブースターまたはサスティナーまたはその一部が落下しても、最悪でも下北半島の大間岬の山中に当たるだけだ。
 最大射程を実験したければ、またこのコースで発射するだろう。
 ということは、航空自衛隊の襟裳分屯地と奥尻島には、もっとマシな警戒レーダーを据えなくちゃダメだろ。刷新工事を前倒しだ!
 海自の白神岬(松前)のSOSUS基地にも、テレメトリー傍受のアンテナを増設した方がいいだろう。
 津軽海峡はこれから北鮮ミサイル実験回廊となることがほぼ決まりだと思う。
 空港を弾道ミサイルの発射点にするという戦術は、北鮮にとってはすばらしく合理的である。
 まず北鮮国内は航空燃料が涸渇したので、いまや航空基地も飛行場も宝の持ち腐れ。他の目的に転用した方がよい。
 次に北鮮軍は飛行機を地下に収容する地下バンカーをこれまでにたくさん建設してきているから、その飛行機用の地下バンカーを使って弾道弾の事前隠匿や発射準備ができる。
 次に国際空港であれば支那やロシアやイランの飛行機も駐機しているから、米軍がプリエンプティヴ攻撃でTELを爆破しようとすれば、国際問題に発展する。米大統領がやるべしといっても、側近の腰抜け軍人と国務省役人が制止するから、手が出せないだろうと期待ができる。
 なお、平壌市の北24kmにある飛行場から襟裳岬突端までの距離を改めてソフトで測りなおしたら、1513.99kmでした。1514+1180=2694km。ご参考迄。


テキサス野生保護官は大忙しだろうね。野生鹿は? そして南部陸水名物の「鼻から脳を襲う寄生虫」は?

 ストラテジーペイジの2017-8-29記事。
 韓国はドイツから空対地ミサイルを追加購入する見返りとしてドイツに商品を買い取らせるオフセット交渉に成功したという。
 ドイツから輸入するのは90発の「Taurus」ステルス巡航ミサイル。
 韓国から何をドイツ向けに輸出するのかの品名が不明だが、非軍用の電気製品……要するに普通のスマホではないか〔※原文では非電気製品と読めるが、このサイトの記事は決して鵜呑みにしてはならず、編集過程をさらに一段推理する必要がある〕。
 「Taurus」はストライクイーグルから発射する。2013年に発注した130発の受領は2016年から始まっている。
 ドイツのメーカーが韓国空軍のF-15KのFCSを改造してやる。それによって運用が可能になる。
 「Taurus」はドイツとスウェーデンが共同開発した。全重1.4トン、レンジ500km。飛翔速度1100km/時。飛翔高度35m。
 弾頭重量481kg。6m厚のコンクリートを貫徹可能。1発の単価は120万ドル。
 標的の3m以内に当たるとされるが、それには条件がある。米国製の精密な軍用GPS受信機だ。ところが米国は欧州から韓国に輸出される戦術ミサイルにこの受信機を組み込むことをなかなか許さない。その秘密が韓国から支那スパイへ筒抜けになると恐れているためである。このため「Taurus」の受領は遅れた。
 ※記事ではハッキリしないのだが米国は結局その許可を出していない可能性が強い。つまりこの巡航ミサイル、「グレード落ち」状態で引き渡されている可能性がある。米国はミサイル早期警戒情報も韓国政府には伝えていないことが今回ハッキリした。
 ※こんど祥伝社から出す、日本の歴史を古代から現代まで地政学的に解説する本にも書いたのだが、戦後の日本がいちばん助けられているのは在日米軍ではなくて在韓米軍。どういうことかというと、韓国「進駐軍」としての在韓米軍が、韓国政府の対日戦争発動を防止してくれているのだ。だからわが政府は在韓米軍を後方から支援するための出費ぐらいはこっそりしてやってもバチは当たらないはず。