UPIによればウクライナ企業から過去にロシアへ売ったツィクロン2/3の総数は223基。

 JONATHAN KAIMAN 記者による2017-8-15記事「I lived a dog’s life,’ says US soldier who deserted Army in 1965 for N. Korea」。
   ジェンキンズは今も佐渡に住んでいる。2004以来ずっと。
 1965-1の深夜に脱走するとき彼は元気付けに10本のビールを飲んだ。
 M-16は持ったまま。ただし弾は抜いといた。トリップワイヤーにひっかけないように膝を高く上げながら歩いた。数時間後、北鮮領へ。
 七十七歳のジェンキンズは今も生まれ故郷ノースカロライナの南部訛が強い。
 北鮮には食い物もなく、水道と電気は止まっていた。冬は寝室の壁が氷で覆われた。
 ジェンキンズはいま、佐渡島のマノパークで観光客相手に煎餅を売っている。リクエストされれば一緒に写真に写ってやる。
 朝鮮戦争後、6人の米兵が北鮮に逃亡している。その多くは米陸軍の中でも不幸だと思っており、厭な過去をひきずっていた。
 1965時点でジェンキンズは、38度線を深夜に米軍がパトロールすることは北鮮を刺激し、殺される可能性があると怯えていた。さらにベトナムへ派兵されたらもっと危険になるであろうと。それでパトロール中に脱走することにした。
 韓国内で逃亡して潜行しようとしてもすぐに見つかるに決まっていた。
 だから脱出先は北鮮しかなかったのだ。
 ロシア大使館に亡命を求めて駆け込むという方法もあり得た。西ドイツ駐留米軍の兵隊がときおりそれをやっていることは新聞で知っていた。その後で「捕虜交換」によって米本土に帰れるかもしれないと。
 夜明けに北鮮の哨所に近づき、歩哨に声をかけたら、相手はマンガのようにびっくり仰天していた。
 すぐに8~10人くらいの北鮮兵が集まって、ジェンキンズを哨所内に押し込めた。
 それから8年間、ジェンキンズは別な3人の逃亡米兵と同じ部屋で過ごした。19歳で脱走したジェリー・ウェイン・パリッシュ、19歳で脱走したラリー・アブシアー、21歳で脱走したジェイムズ・ドレスノク。
 彼らは金日成思想を暗記するように強いられ、うまく覚えられない場合は殴られた。
 次第に彼らは朝鮮語を覚えた。パリッシュとアブシアーはよく殴り合いの喧嘩をしていた。
 1966に4人は監視人から逃亡して平壌市内のロシア大使館へ駆け込んだ。大使館は4人を北鮮当局へ引き渡した。
 1972に北鮮政府は4人に市民権を与え、別々な住宅を与えた。1973に彼らは仕事に就かされた。
 宣伝映画の悪役専門外人俳優である。
 また、軍学校で英語も教えた。
 1980に そが・ひとみ(21)との同居が始まった。彼女はその2年前に佐渡島から北鮮へ拉致されていた。数週間後に結婚。
 娘が2人できた。みか(現在34)と、ブリンダ(現在32)。
 北鮮政府はこの家庭に特権を与えていた。数百万人が餓死した1990年代の飢餓時代にも、コメ、石鹸、衣料、煙草が毎月特配され、一般北鮮市民のように苦しまずに済んだ。
 しかし希望は無かった。煙草は吸うと苦痛を感ずる品質。コメには穀蔵虫が多量に混じっていた。
 あるとき、隣家のドレスノクの家まで連行され、そこでドレスノクからさんざんに打擲されるという罰を受けた。唇を前歯が貫通した。ドレスノクは楽しんでいた。
 あるときは、腕に彫っていたU.S.アーミーのタトゥーをみとがめられ、病院に連行され、麻酔無しで切除された。監視人はジェンキンズが泣き叫ぶのを見て笑っていた。
 ジェンキンズは、北鮮政府が彼の二人の娘をスパイとして訓練しているのではないかと疑った。
 また、北ベトナム政府は北鮮政府に米軍人捕虜数十人を贈与しているのではないかとも疑った。
 また確信した。北鮮の高官は、人民蜂起によって平壌政府が打倒された場合の逃亡先をすでにスイス内に準備し、そこは豪邸である、と。
 ある日、自宅近くの集合墓を複数の野犬が掘り返しているのが見えた。やがて一団の兵隊がやってきて、近所のすべての犬を殺した。
 北鮮についての悪口を言えば、死が待っていた。北鮮では、決して隣人たちを招いて飲酒してはならない。酒に酔い皆で語り合えば、とうぜんに北鮮の現状についての話が混じる。そして宴が果てた後、ひとりだけ帰らない客がいる。そいつが密告者なのだ。
 2002にすべてが一変した。金正日が13人の日本人拉致を認めたのだ。そしてそのうちそがさんを含む5人を解放するという。
 小泉純一郎はそれから2年をかけて、ジェンキンズと2人の娘も北鮮から出国させた。
 米陸軍は必要な手続きとしてジェンキンズを脱走の罪で軍法会議にかけ、25日間の重営倉に処した。
 アブシアは北鮮内で1983に心臓麻痺死。パリッシュは1998に腎臓病で死亡。ドレスノクは2016に死んだがジェンキンズはそのことを知らず、また興味も無いと言う。
 わたしは米本土に戻りたいのですが、妻が望みません。米国では私は職が無く、妻を養えない。だからここにいるしかないのです。とジェンキンズ。
 ※逃亡兵には軍人恩給は出ないし、退役兵およびその家族が特典的に受けられる有利な医療保険も適用されない。
 ジェンキンズのパスポートは2016に失効した。
 ジェンキンズは連日、CNNや韓国ニュースをテレビで何時間も視聴している。
 北鮮の政治を変えるには、北鮮政府の全部まるごとを消滅させるしかないのです。頭首が交代しても、決して、なにひとつ変わりはしません。
 ウォームビアー君の死亡事件。そもそも米国人が北鮮へ観光旅行するという行為が信じられません。正気じゃないですね。わざわざ監禁されに行くようなものです。
 北鮮では「治療」も強制です。わたしは5回手術を受けさせられました。虫垂を除去されました。その前には睾丸も1個、除去されています。わたしは小学校時分に股間を蹴られたことがあります。それによる問題はなかったのですが、彼らはその睾丸を放置してはいけないと主張した。
 日本に来て、すぐ病院で検査を受けた結果、この二つの処置がずさんであって、合併症でいつ死んでもおかしくなかったと判明しました。
 ジェンキンズは、二人の娘には、「もしパトカーが後ろから来て、停まりなさいと命じても、決してそれに従ってはならない。北朝鮮の工作員が日本の警察官に化けているのかもしれないから」と言い含めている。
 北鮮政府は私の死を望んでいるでしょうね、とジェンキンズ。


このまま秋・冬突入か……。今年の「夏」はどこへ行った?

 ストラテジーペイジの2017-8-15記事。
   ロシアが、NATO軍の「リンク16」のデジタル通信を妨害できる「イリューシン22PP」電子妨害機の存在を公表した。
 この機は、みずからは「AGM-88 ハーム」の的にはならない、とも主張している。
 「イリューシン22PPは、これまでシリアやウクライナにも投入されていない。
 ウクライナ企業幹部が、かつて北鮮にICBMエンジンを輸出したり、北鮮のためにそれを製造してやろうと計画したことはない、と声明。
 同国のユジマシュ社がRD-250エンジンを製造していた。それは1980年代のソ連重ICBM SS-18(R-36M)のエンジンであった。
 SS-18は199に設計され、1972に初試射。実戦展開は1975からである。
 ソ連のICBMとして最重で、全重210トン、弾頭重量8トンだった。
 長期貯蔵可能な液燃を用いた。
 SS-18には型が6つあり、最後の型は1990に実戦配備。
 冷戦後はリファービッシュの予算が無く、2016年時点で50基ほどが生きているだけである。2018には30基に減り、2020年にはゼロになるという。
 1991にソ連邦が分解し、ウクライナが独立すると、ユジマシュ工場は閉鎖されたが、その後、人工衛星打ち上げロケットのメーカーとして再建されて今に至る。
 2014以前はロシアが顧客だった。それ以後は、ロシア以外の顧客が重視されている。
 ユジマシュ経営陣による、米国内報道への反論。
 われわれは過去20年以上、RD-250を製造してない。
 RD-250を維持しているのはロシアである。
 RD-250の最新の製造方法を知っているのもロシア人たちである。
 SS-18の維持のためRD-250のスペアを多数保管しているのも、ロシアである。
 そしてロシアはウクライナ以上にしばしば、兵器技術を不法に海外移転している、と。
 冷戦後、ウクライナは中共にいろいろな兵器技術を売ったが、それらは合法である(ただしロシアはその主張には同意していない)。
 ウクライナ政府いわく、これはロシアが仕掛けている情報戦争である。露軍によるウクライナ侵略の事実から世界の関心を逸らすために偽情報を流布させているのだ。
 モラルとモラールの低下は全般にウクライナがロシアより酷い。しかしロシアの場合、宇宙ロケット産業界の堕落が、隠そうとしても隠せない。ICBMや宇宙ロケットの失敗が増えている。
 露軍はシリア内へのテロリスト流入を阻止するために、ヨルダン国境やイスラエル国境にMPを多数、投入し始めた。
 ロシア国内では15歳から64歳までの労働適齢人口が2010年からこのかた減り続けてたいへんなことになっている。これから2050年まで、毎年、50万人の労働適齢人口が消えて行くのだ。
 次。
 2017-8-10記事「Why Russia is foolish not to invite NATO observers to its war games」。
   9月にロシアは、冷戦終了いらい最大級となる演習ザーパドを欧州戦区で実施するが、合意に反してNATOからオブザーバーを招待しないので、欧米人は怒っている。
 四年ごとに実施されるザーパド演習。ザーパドとは「西」。
 2009のザーパドでは、最終段階で「ワルシャワに核攻撃」した。
 2013のザーパド演習は煙幕で、その準備に隠れてウクライナ侵略が準備され、半年後に「抜き打ち演習」が号令されて実行された。
 プーチンは2008のグルジア侵略のときも、「抜き打ち演習」を号令してから実行させている。
 NATOとロシアとの間のウィーン合意文書により、9000人以上を動員する演習は事前通告が必要。1万3000人以上を動員する演習は、敵陣営のオブザーバーを招く義務がある。こんどのザーパドは10万人動員だ。
 ロシアは常に自方の演習規模を小さいものだと偽ってNATOオブザーバーを拒否してきた。


おそらくトヨタはマツダと「水素ロータリー」で協働したいのだろう。

  Michael Elleman汽車による2017-8-14記事「The secret to North Korea’s ICBM success」。
   ムスダンがたてつづけに失敗したあと、中距離の火星12と長距離の火星14がたてつづけに成功。
 かつていかなるミサイル先進国もMRBMからICBMまでかくも一瞬にステップアップしたことはない。
 これを説明する答えはひとつ。北鮮は高性能液燃エンジンの完成品を外国から受領しているのである。
 写真を拡大すれば、火星12と火星14のエンジンがソ連の「RD-250」の改修品であることは明らかだ。
 入手先も、ロシアかウクライナ以外にありえない。
 入手の時期だが、2年前からだろう。
 まず2016-9に北鮮は液燃エンジンの地上噴射テストを行い、そこで80トンのスラストが得られたと発表した。
 次の同様の地上噴射テストが2017-3である。
 このテストの写真で、四つの小さいステアリングエンジン(ヴァーニアエンジンとも補助エンジンとも呼べる)が中心の大きなメインエンジンノズル1個をとりまいていることが知られた。
 2017-5-14に三代目が準備を視察したあと「火星12」実射。高度2000kmまで上がったことで、ポテンシャルの水平射程は3400km先のグァムに十分届くことを示唆した。このときは一段式の弾道弾であった。
 そこで次に二段式が試された。
 2ヵ月もしない2017-7-4に、「火星14」が実射された。高度2700kmに到達。
 さらに2回目の「火星14」が2017-7-28に実射された。高度3800kmに到達。
 最大到達高度の二倍+着水水平距離がポテンシャルだとすると、どちらもICBM基準の5500kmの水平射程があると示した。
 写真から推定するに「火星12」の全重は24トンから25トンだ。
 「火星12」の発射直後の加速度は、フッテージを観る限り、8.5m/S2から9.0m/S2だ。
 北鮮が映像加工していないという前提で試算すれば、「火星12」のエンジン推力は45トンから47トンだ。そのうち主エンジンが39トンから41トンを出し、四つのステアリングエンジンは6トンくらいを発生しているだろう。
 「火星14」の全重は33トンから34トンだろう。
 その発射直後の加速度は4m/S2ないし4.5m/S2だ。
 推力は46トンから48トンだろう。
 しかし北鮮が国内で液燃ロケットエンジンを開発したと思われる証拠は皆無だ。
 北鮮が過去にコピー製造をしてきたスカッドやノドンのエンジン技術と、推力40トン級の液燃エンジン技術とでは、次元が違うものなのである。
 2016-9と2017-3の地上エンジン噴射テストの画像を比べると、その液燃エンジンは同じものである。
 なぜ国産ではないと断言ができるか。その完成品の前段階である比較的出力が小さいエンジンのテストを実施したという過去の宣伝公表が一切皆無である。技術進歩の中間ステップが存在しないのだ。
 スカッド、ノドン、ムスダンは、いずれも、A.M.イサイェフというロシア企業がエンジンを開発・製造し、それを北鮮がコピーしたものである。
 スカッド、ノドンおよびR-27(そこからムスダンがつくられた)は、V.P.マケイェフという技師の名にちなむロシア企業体が設計し最初に製造した。
 火星12/14のエンジンが輸入品だとしたら、候補はひとつしかない。というのは、米・仏・支・日・印・イランの液燃ロケットエンジンは、貯蔵可能な液燃を使うタイプではないのだ。
 消去法によって、輸入元は旧ソ連以外にありえない。
 ※中共が対北鮮制裁に気乗り薄なのは、それをやると、間違いなくプーチンが北鮮を反支の有力同盟者に仕立ててしまうのが見えているからだろう。
 イサエフ社かマケイエフ社のどちらか、もしくは両方が、かつて、エンジンの対北鮮供給には関わっていた。
 ただし、このどちらのメーカーも、今日、火星12/14で使われた液燃エンジンを製造してはいない。
 ならば犯人はどいつなのか。V.P.グルシェンコ技師の名を冠して発足したロシア企業=今日「エネルゴマシュ」と名乗っているメーカーであるか、そうではないとしてもそことつきあいのある関連メーカーであろう。
 エネルゴマシュは、RD-217、RD-225、RD-250という、充填したままで長期貯蔵が可能な特殊液燃を使う大馬力ロケットエンジンを製造している。そこが北鮮に供給したのだ。
 このうちRD-217とRD-225の外見は、北鮮公表の画像とマッチしない。外見が一致しているのは、RD-250である。
 RD-250は、燃焼室が2個あり、1個のターボポンプからそこへ燃料UDMHが送り込まれる。酸化剤は「N2O4」=四酸化窒素である。1個の燃焼室は394キロニュートン=40トンの推力を発生。
 これが2基ならば70トンから80トンの推力となり、北鮮が2016-9に地上テストで達成したと自己宣伝している数値に近い。
 ところで、だんだんわかってきたことがある。北鮮は2個の燃焼室ではなく、1個の燃焼室で火星12/14を飛ばしている。
 2016-9の地上テストでは新しい設計の燃料ポンプが使われたと平壌は自家宣伝した。1個の燃焼室に改めるためだったとするならば、これは整合する話だ。
 そして、そんな思い切った改造ができてしまう技師は、北鮮人たちであるわけもないのだ。元々のメーカーで長年RD-250に携わってきた技師たちが、北鮮からの注文を受けて、改造設計してやったとしか考えられぬ。
 こうした註文に応じてしまえるような技師は、ロシアのエネルゴマシュ社と、ウクライナの「KB ユジノイエ」社には、たくさんいる。犯人は、この2社のうちのどちらかだ。火星12/14用のエンジンは、まずこのどちらかの会社で完成されてから、北鮮へ売り渡された。
 この2企業の技師が北鮮に招請されて現地でこしらえてやったのだということは考え難い。北鮮にはそんなハイテク設備の工場が存在せぬからだ。
 複数の西側の専門家が2016年に「KB ユジノイエ」を訪れたとき、同社のすぐ近くの大学構内に、同社製のRD-250の単燃焼室バージョンが堂々と展示されており、1人の地元ウクライナ人技師が「オレがこれを作ったんだぜ」と自慢したそうだ。
 未解明の疑問がある。燃焼室が2個ある古い型の方が、パワーが出るのだ。なぜ、わざわざ非力な1個燃焼室型エンジンを売り渡したのか?
 一つの仮説だが、最高技術は渡すなよという指針があって、一つグレードが低い品物を売り渡すことで我慢するしかなかったのであろう。
 この比較的に非力なエンジンでも、二段式とすれば、ICBMを米西海岸へ届かせることは十分可能である。
 RD-250エンジンは、ロシアのグルシコ社が設計し、ICBMのR-36(SS-9)のブースターに採用された。また、ウクライナの「KB ユジノイエ」社製の衛星打ち上げ用ロケット「ツィクロン2」のブースターとしても。
 ツィクロン2による最初の衛星軌道投入は1969年である。以来2006までに106回の打ち上げが成功している。
 ツィクロン2はウクライナ製だが、衛星打ち上げ事業はロシアの仕切りである。
 1991にソ連邦が分解しても、このユジノイエ社とロシア宇宙事業社の関係だけは継続。とにかく信頼性の高いブースターであった。
 しかし2006に、ロシア政府が、そろそろ純国産品に切り換えろということになり、ユジノイエ社は顧客を失った。
 そこでユジノイエ社は、ボーイング社やブラジル政府にも売り込み営業をしかけたが、みのらなかった。
 それどころか2015年以降は、ほとんど倒産の瀬戸際という状態に。
 これまでのRD-250の総製造数(ロシア国内とウクライナ国内)は不明だ。
 しかしおそらく、ユジノイエ社内には200個以上の在庫もしくはスペアパーツがあるのではないか。
 ロシアでツィクロン2を打ち上げていたエネルゴマシュ社の倉庫にも予備エンジンが保管されているはずだ。
 エネルゴマシュ社はロシア国内にたくさんの施設を抱えている。各所にスペアパーツがあるであろう。
 RD-250を用いる現役のミサイルも宇宙ロケットも今は無いのであるから、それら在庫スペアパーツの管理はルーズになっていておかしくない。
 不満を抱く従業員、給料の安い警備員たちは、それらの製品を盗み出し、闇ルートで売ることができただろう。
 高さ2m弱×直径1mの外寸にすぎないエンジンは、航空機でも、はたまた汽車によってでも、容易にロシア国内から北鮮まで密輸ができたはずだ。
 2012の事件。ウクライナ警察が、2人の北鮮人を、ユジノイエ製品を購入しようとした罪過で逮捕し訴追した。
 現在、ユジノイエ工場は、親ロシア派が占領する地区と非常に近い場所にある。誰がそこから不法に物資を持ち出すとしても、好都合な情勢だ。
 北鮮は、ICBMの量産配備のためには、数十個のRD-250エンジンを手に入れねばならないはずだ。そのくらいはもう行ったかもしれない。
 1990年代に北鮮が輸入していたスカッドやらノドンやらムスダンの技術は、ロシアのマケイエフ社やイサイエフ社に関連する。
 しかしその2社は、RD-250を扱うエネルゴマシュ社やユジノイエ社とはほぼ連絡がない。
 北鮮は90年代以降、R-27(ムスダン)を元に、なんとかICBM化しようとして、ついにそれに失敗したと悟った。
 2017-3の「火星12」の発射以前は、北鮮は、イサイエフ社の「4D10」という液燃エンジンを2本バンドルすることでICBMのブースターにできないものか、あがいていた。
 しかしうまくいかなかった。なぜならイサイェフのエンジンは、燃料タンク内で多段燃焼させるという複雑なクローズドサイクルコンセプトなのだ。
 もしRD-250が2015以前に手に入っていたなら、とっくに北鮮の技師たちはそっちに路線転換していたはずだ。エンジンが外側に剥きだしの、平易なオープンサイクルに。
 2016からムスダンの試射が始まっているが、点火直後に不具合を起こしているケースが多い(というか、うまく飛んだのは1回だけで、あとはぜんぶ失敗)。
 原因はR-27エンジンそのものだったのだろう。燃料タンク内にエンジンが埋め込まれる複雑な設計は、北鮮の技術ではとても模倣が不可能だったのだ。
 そこに北鮮の技師たちも気付いて、2016いらいムスダンのテストは行なわれなくなった。放棄されたのだ。
 2016-9に改造型RD-250の写真が現れたのは、時期的に、ムスダン計画の放棄決定と同時だろう。
 そして2016に、倒産寸前のユジノイエ社に北鮮はアプローチした。この闇取引にウクライナ政府が関与している必要はないし、ユジノイエ経営幹部も知らなかったかもしれない。労働者が闇で横流しできるものだ。
 ドニプロペトロフスクとパヴログラドに所在するユジノイエ工場から、エンジンが盗み出されたと疑える。
 次。
  Lily Rothman 記者による記事「Why Americans Stopped Building Fallout Shelters」。
   一般アメリカ市民が裏庭に核シェルターを掘らねばと思わされた時代は、とても短かった。
 それは1950年代から1962年までだった。
 アイクは、公共退避壕の増設はすぐには間に合いませんよという役所の結論/報告に悩んだ。
 ブラスト・シェルター(耐爆壕)と、フォールアウトシェルター(耐有害環境地下室)は、違うのである。後者なら、バックヤードに各戸主が作ってもよいはずだった。
 フォールアウトシェルターは、一家が2週間籠もれればいい。
 『TIME』誌の過去記事でもハッキリするが、DIYシェルターブームのピークは1961だった。
 これは政府が大金を支出して推進した。
 既存の公共地下空間をコミュニティシェルターにして公表し公示せよというもの。その中の貯蔵物資については国のカネで用意させる。
 DODは1961に、国民に対フォールアウトの心得のパンフレットを配布した。
 150ドル以下で建造できる各戸敷地内の簡易シェルターでも、放射線被曝を百分の一以下にできるとした上で、地域の公共地下シェルターこそが最も頼りになるものだと強調していた。
 パンフレットの大意。フォールアウトの放射能は、核攻撃直後から2日間までがいちばん強くて危険である。だからこの期間内にはシェルターから出るな。できるなら2週間はシェルター内にとどまるがよい。しかし、シェルター内にいても、地表のフォールアウトが少しづつシェルター内に侵入してそれを人体が吸収してしまうことはあり得る。そこをかれこれよく計算した上で、2日目以後、そこにとどまるか、それともむしろ地上を移動して別な場所へ避難をするか、各人が決心しなさい。地表を移動中にもし一定量以上の放射能を一定時以上浴びてしまえば死ぬ危険があることを忘れないように。
 ところが1962年のうちには、全米におけるこのシェルターブームは消えてしまった。
 ソ連の国防大臣も、そんなシェルターは無駄であるぞ、とさかんに宣伝している。1962前半に。
 限度は、特にトイレによるものであった。バケツ1個で家族全員が2週間の用を足す? それは可能だろうか?
 ※2017-6月以降、シナ軍は、北鮮国境沿いに、NBCフィルター付きの地下壕を多数、建設し始めているという。


今年の八月は涼しすぎるんですけど……本当に地球温暖化?

 ストラテジーペイジの2017-8-9記事。
  中共戦闘機が米軍エリント機を追い払いたかった理由がわかった。
 中共版の「対艦HARM」を沿岸で試験していたので、その情報をとられたくなかったのだ。
 中共版HARMは、前に見本にしたロシア製ハームの対レーダーシーカーよりも広帯域の2ギガ~18ギガヘルツを捜索し、敵レーダーの10m以内に着弾させたい。
 見本にしたロシア製HARMは空対艦ミサイルを改造したもので、重さ600kgで110km飛ぶ。
 豪州軍も輸入しているハームの最新版、AGM-88Eは、動いているレーダーにも当たる。つまり対艦ミサイルになる。だから中共はこれの同格品をつくって対空母用にしたい。※あと、対Xバンド・レーダー用にもね。
 よりいっそう対艦機能を完成したF型はAARGMと名付けられている。
 AARGMはイタリアと合同開発された。ドイツも買っている。
 旧型ハームも、部品をとりかえればAARGMになる。
 AARGMは全重361kgで、有効射程150km。
 命中直前に画像を母機へ送ってくる。だから正しい攻撃ができたかどうかわかる。
 1999のコソヴォでは、セルビア軍はレーダー使用を最短時間に絞り、SAMを発射したらすぐに陣地を畳んで転地した。
 当時のHARMは、敵が停波するとINS/GPS頼みになってしまった。
 だからセルビア軍SAM部隊は最後まで亡ぼされなかった。
 この教訓からHARMの改善が進められている。
 次。
 Sydney J. Freedberg Jr. 記者による2017-8-8記事「Kim Jong-un Has Much To Teach Pentagon About Speed: Gen. Hyten」。
   ハイテン空軍大将が北鮮を褒め称える。テストの失敗をおそれないから、高速&イノベイティブだと。
 試射させ、失敗し、試射させ、失敗し、…………そしてとうとう成功だ。このパターンはむしろ理想的だ。※いや~、ぜんぶタイプ違うんですけど。
 イランもそうだ。
 しかしロシアは試射をビビっている。官僚主義が失敗を恐れているせいで。
 成功は、われわれに何も教えてくれぬ。失敗だけが教訓をもたらしてくれるのだ――との名言は、ハイマン・リッコーヴァーだった。
 リッコーバーは、紙上プランをたったの5年で現実にした。「原潜」を。
 そのためには「原発」のサイズをたったの幅28フィートにコンパクト化。
 このリッコーバーの空軍人版といえるのが、ドイツ生まれのバーナード・シュリーヴァー将軍だった。彼はフィルム回収式写真偵察衛星を連続13回失敗させたあと、とうとう完成させた。また、ミニットマンICBMを、予算わずか170億ドル(今の価値にして)&5年で仕上げてしまった。
 それにくらべてミニットマンの後継とする予定のGBSDはどうだ。850億ドルの予算と20年の時間を使おうとしている。そのカネと時間はほとんど、試験実施準備のためなのだ。もう阿呆かと。
 現場が「試験での失敗」を恐れすぎている。だから試験と試験の間隔が18ヶ月にも間延びするのだ。北鮮は2週間おきに試験を反復できるというのに。
 ハイテンが空軍の調達責任者に就任して数年。政府による調達にかかわる規制法令文書は全部読んだ。DOD内部規定も。その結果、理解した。これらすべての規則にはバイパス条項が付言されている。もし過去の指導的高官たちにリスクを取る気さえあったならば、「これは必要なんだ」と言って事業を急進させることはできたのである。ところが過去の指導的高官たちにはそのガッツがなかったのだ。リッコーヴァーやシュライバーのような「やる気」が。
 ハイテンいわく。俺にも責任がある。「試験はうまくいったか?」と部下に電話をするのが常だからな。
 俺はこう声掛けすべきだったんだ。「有益なテストはできたかね?」とね。
 次。
  Vasilis Trigkas 記者による2017-8-9記事「China Has Its DARPA, But Does It Have the Right People?」。
   安倍晋三のアドバイザーが4年前に台北のCSISフォーラムで発言。日本にはDARPAがないからアメリカとの発明競争に負けたんだ、と。
 その後、日本はDARPA類似の機関を立ち上げた。
 ロシア版DARPAは2012に創設されている。
 チャイニーズDARPAは今年できた。直轄するのは習近平その人。
 ところで、中共の大学で世界一流と承認されているのは、精華大と、北京大だけ。※この記者は精華大を卒業したギリシャ系の米人。
 ハーバードのインド人教授が1月に精華で講演していわく。イノベーションは、基礎科学と応用科学の合成物で、それには高度の人材が供給されるようになっていなくてはいかん。それは、R&Dビジネスとは全く異なる課題なのである、と。
 ベル研やDARPAはなぜ成功しているか。両機関は「事業」に投資してるんじゃないのだ。高度に有能でしかもモチベーションを持った「人間」に投資するから成功しているのである。最高のタレントを集めるための両機関のリクルート戦略が、すこぶるラディカルなものなのだ。
 支那版DARPAが成功するか否かも、ひとえに人材集めにかかっている。
 たとえば世界各国のノーベル賞受賞者がシナの大学で働きたいと願うか? いくら大金を積んでも移籍して来てはくれはしないだろう。常時不在の名誉学長に名だけ貸してやろうか……というぐらいが関の山。
 習近平はしきりに愛国主義的科学を強調するのだが、超一流学者は「ネイション」から枷を嵌められることはない。※この記者自身、ギリシャで「一路一帯センター」の立ち上げに協力。


米日支は軍艦を1隻4年で建造している。英は6年。露は数千トン級ですら7~9年。ヤバイ。

 Jonathan Saul 記者による2017-8-7記事「Cyber threats prompt return of radio for ship navigation」。
  世界の貿易は9割が船でなされている。
 ところが航空機が多重のバックアップナビ手段をもつのにくらべて、いまの商船はGPSが妨害されたらお手上げだ。混雑海峡では事故必至である。
 そこで「イーロラン」という地上波を使うバックアップナビゲーションシステムが提唱されていて、いま、韓国がそれに乗って開発中。米英露も、この方向を考えている。
 GPS電波は、太陽嵐/太陽黒点活動によっても掻き乱されてしまう。
 昨年、北鮮による大規模GPS妨害があり、韓国漁船が一斉に帰港しなくてはならなくなった。
 2017-6にも黒海で、ロシアによるとみられるGPS妨害事件が発生。
 米コーストガードによると、港湾名は伏せられているが、同様事件が、2014に1つの港で数時間、そして2015には別の港であったという。
 2017-6には、「A.P. Moller-Maersk」社の船舶管理システムがサイバー攻撃を受けた。全世界の港湾業務に支障が生じた。
 韓国政府は「GPSの父」と呼ばれる米国人技師ブラッド・パーキンソンを招聘して「イーロラン」を開発してもらっている。
 パーキンソンいわく。
 イーロランは海上の二次元座標を比較的に粗い精度で知らせ得るにすぎないが、その電波はGPS衛星電波よりも強力であり、しかもGPSとはまったく波長帯が異なっているところが利点である。GPSに対する意図的ジャミングや偽信号送出は、イーロランを併用する船舶にとっては、決定的な妨害にはならない。
 静止衛星からのナビゲーション信号は、1万2500マイルも離れたところから届くものなので、微弱。妨害することは、いとも簡単である。
 しかしイーロラン信号の電界強度はGPS信号の130万倍も強い。それだけ妨害は受けにくい。
 今の船員たちは紙の海図は読めないし、GPSと自動航法ソフト頼みになっている。これが弱点。
 韓国の海洋漁業大臣によると、韓国版イーロランの地上局は2019年までに3箇所で試験電波を発するであろう。基地局はさらに増やす。
 しかし122m~137mのアンテナ塔を立てるため、基地局ひとつにつき12km×12kmぐらいの敷地が必要になる。
 ※原文には132200平方メーターとある。この面積値は一桁大きいように思う。それとも地面にカウンターポイズの放射配線が必要なのか?
 この用地買収にローカル住民が抵抗中である。たとえば西海岸の「ガンワ」島。
 7月、米連邦議会下院は、交通省がイーロランを創建するための予算法案を可決した。
 上院も賛成すれば、予算法となる。
 じつは前のオバマ政権も、その前のブッシュ(子)政権も、イーロランをやると公約していたが、ただのリップサービスだけに終わっていた。今回は、実現しそうなムードである。
 ロシアも似たようなシステムを検討中。「イーチャイカ」と呼ぶ。北極海にぜひ展開したい。しかし事業は頓挫中。政府にカネがないのだ。
 欧州勢は「おれたちのガリレオ・システムはGPSより妨害に強い」とイキがっている。
 ガリレオは偽信号に乗っ取られることはなさそうだが、電界の弱さはGPSと変わりなく、使用周波数帯もGPS類似である。
 多くの国が地上波ナビ建設に消極的なのは、全世界の海洋を同じ方式で覆うことが、とても数年以内には無理な話だから。
 欧州では英国だけが、イーロランの送信タワーを北部に1基、維持している。これは米英合弁の「タヴィガ」という私企業によるもの。
 もう1局を英本土内に建てれば、時刻サービスができるようになる。しかし英政府が関心を示さない。
 今の英国政府は、ポリシーとして、「巨大インフラの運用には政府はもうかかわるな」という方向。イーロランはモロにそれに該当するのだ。


名を自重に藉り、自安の計をなす。

  Jonah Bennett and Saagar Enjeti 記者による2017-8-3記事「EXCLUSIVE: ‘Everything The President Wants To Do, McMaster Opposes,’ Former NSC Officials Say」。
     元NSCメンバーの人によると、NSC内では激しい政治闘争が繰り広げられている。
 トランプはアフガンから足抜けしたい。マクマスターはもっと関与せよという。トランプはシリアからも足抜けしたい。マクマスターはもっと投入せよという。トランプはシナ問題にかかわりたい。マクマスターはそう思わない。トランプはイスラム問題にかかわりたい。マクマスターはそう思わない。トランプはイランとの核合意を破棄したい。マクマスターはそう思わない。
 マクマスターはペトレイアスの追従者でありCIAべったりだ。
 大統領選挙中からずっとトランプのために働いてきた幹部たちはマクマスターを追い出したい。しかしマクマスターの反撃の方が強力。
 マクマスターはトランプ政権をオバマ時代そのままの路線にどんどん引き込んでいる。
 NSCのロシア部門も、オバマ政権の残滓によってすっかり過去の反露路線に引き戻された。
 選挙本部の忠義派と、すでに追い出されたマイケル・フリンの同志たちは、隅っこにおいやられつつある。
 トランプは、アフリカの専門家、シリル・サーターを雇った。これはサーターの古巣であるCIAの勝利である。
 CIAはサーターのセキュリティクリアランスを昔のまま有効にし続けてやっている。
 かたやCIAは、ロビン・タウンリーのセキュリティクリアランスについてはそれを無効化した。これでタウンリーはトランプ政権のNSCメンバーたりえなくなった。
 タウンリーはフリンと近い人物。フリンと同じく、インテリジェンス業界(CIAなど)から嫌われ、町を追われたわけだ。
 マクマスターは大統領の情報補佐官のエズラ・コーエンワンティックもNSCから追放した。
 『アトランティック』誌によると、戦略計画担当のリッチ・ヒギンズは、〈グローバリストとイスラミストが共謀してトランプ路線を覆滅させようとしている〉というメモを7月にトランプに手渡した。だが〔マクマスターによって?〕馘にされた。
 過ぐる木曜日、中東担当のデレク・ハーヴェイもNSCから追放された。マティス国防長官が、追放を望んだ。マティスとマクマスターは同志関係である。
 ハーヴェイをNSCに入れたのはフリンであった。
 ハーヴェイは、ステフェン・バノンに近すぎると見られていた。
 ハーヴェイの部下副官だったジョエル・レイバーンとマイケル・ベルはNSCに残留。そしてハーヴェイのポストはマイケル・ベルが襲った。
 7月前半、NSCの高官だったタラ・ダールもNSCを去った。
 やはりフリンが引き連れてきたアダム・ロヴィンガーも、CIAが5-1にセキュリティクリアランスを発給しないという奥の手を使ってNSCから追放した。
 やはりフリンがつれてきたK・T・マクファーランドは、マクマスターがNSCを支配した4月に馘を申し渡されたが5月まで居残り、6月にホワイトハウスは、彼女のためシンガポール大使に栄転という格好をつけてやった。
 バノンはやはり4月にNSC内での権勢をもぎとられている。


儒教は「神への帰依」ではなく「家長への絶対服従」だから反近代空間しか造り得ないのである。家族内でも国家社会でも国際関係でも。

   Ben Watson 記者による記事「The US Army Just Ordered Soldiers to Stop Using Drones from China’s DJI」。
    8月2日、米陸軍は、中共メーカーDJI社製のドローンを隊員が遊び用にも使うべからずと示達した。
 使用は禁止する。スマホに入れているDJI社のアプリケーションはすべて削除せよ。記録メディアからバッテリーを外せ。
 理由は、DJI関連製品にはサイバー戦争上の脆弱性があるため。
 米軍将兵が個人の趣味としてDJI社製ドローンを買って部隊内で空撮して遊んでいることが問題視されている。
 DJIは世界の趣味用ドローン市場をここ何年も7割支配している。
 数ヶ月前、DJI社の「ファントム」UAVのユーザーが「ゲオフェンス」(ソフトウェア上での立ち入り禁止エリアの設定。DJI本社からアプリに逐次アップデートされてくるGPS座標セットで、その結界内へ進入しようとしてもコマンドが拒否される)を無効化する方法を発見した。
 他方、5月22日からDJI社は全世界のユーザーに「本社に個人情報を登録せよ。さもなくばスピードとリモコン距離と動画送信機能をアップデートソフトによって制限してしまうぞ」と脅し始めている。これに米陸軍当局は反応したらしい。
 DJI社はまた、6月に、イラクとシリアにゲオフェンスを設定した。
 ※CNNによると北鮮は野生の「チャイヴ」(多年草のネギ)を学生に集めさせ、それを野山に植えさせようとしている。集められなかった学生は罰金を納めねばならぬという。あの百貫デブは本当に有害なことしか思いつかん奴のようだ。『兵頭二十八の農業安保論』をよく読みなおせといいたい。寒冷地山野の豊饒化のためには、「勝手に増殖する」種類でなければ徒労なのだ。たとえばチョロギは朝鮮では有望だ。前年掘り取った周辺地に勝手に増殖する力を持っている。チャイブは最初の2年くらいは株が太くなるけれども、すぐに拡がりは止まってしまう。近種のラッキョウと違い、地下部を食べられないから腹も膨れない。投入した労働エネルギーと収穫吸収エネルギーがぜんぜん見合わない。「葉っぱハーブ」に過ぎず、地際から刈り取っても翌年また再生してくるというところだけが「徳」である。やや耐陰性も認められるが、さすがに2年以上放置したら高勢雑草に負ける。地上部だけ食用にするならルバーブがよい。かつて英国銃後はルバーブを戦時栽培野菜とした。寒冷地向きなのだ。しかもルバーブの染色体数は n=44 でイタドリと同じである。どちらもタデ科で、おそらくハイブリッドが可能だ。英国で侵略的外来種とされているオオイタドリが、食料危機の救世主になるかもしれない。


海賊「起業」の時代が到来したようだ。

 Claude Berube and Chris Rawley 記者による2017-8-2記事「Dueling NGOs on the Seas: ‘What Ships Are For’」。
    「難民の海」では、コーストガードなど政府機関だけでなく、NGOが問題に介入しつつあり。
 これから10年で、3000万人ものアフリカ人がヨーロッパにやってくるという。これは商売になる。
 第一期の「海上のNGO」は、地中海における水没者救助を目的としていた。
 MOASという団体は、捜索救難を標榜していた。
 それに対抗するように、とうとう、難民ボートの欧州岸達着を洋上にて阻止せんとするNGOが現れた。代表格が、「ディフェンド・ユアロップ」という団体。
 この団体は船を1隻チャーターしジブチ国旗を掲げていたが、今は船名を『C スター』と変え、便宜船籍をモンゴルに登録し直した。
 同団体はこの船をシチリア島に置き、そこから出動させて、難民を追い払いたいと思っている。
 しかしスエズ通航の際にも、またキプロス寄港の際にも、さまざまに妨害され、まだシチリアに到着していない。
 ちなみに、漁業資源保護のため、違法操業の取り締まりにもNGOが加わっている。シー・シェパードは複数の船艇で複数の漁場をパトロールしている。あるケースでは違法トロール船を1万海里追跡して当局の臨検に持ち込んだ。
 地中海では2014年以降、すくなくも15隻の改造ヨット、改造タグボート、改造救難船艇がNGOによって運用され、数百人の雇われクルーと無人機まで搭載して、捜索救難活動に従事中である。
 2010-5-31に、イスラエル当局は『ガザ自由艦隊』と名乗る1隻の船を強行臨検し、そのさい、船内で10人が射殺された。NGOは、その船は人道支援をしていたのだと主張しているが、イスラエル当局は、単にパレスチナゲリラのための武器の運び屋だとしている。
 2011-6には2隻目が出港前にイスラエル当局から阻止された。保険会社とインマルサットが、テロ幇助嫌疑で捜索された。
 NGOの寄付金集めに使われるオンラインプラットフォームの「ペイパル」は、「ディフェンド・ユアロップ」の口座を凍結した。ヘイト、暴力、人種的不寛容を呼び起こす活動をしている団体には、使わせないというポリシーがあるので。
 ホープナットヘイトという団体は、クラウドファンディングのプラットフォームであるパトレオンに対し、DEを支援しているカナダ人ジャーナリストの口座を閉鎖せよと圧力をかけた。HNHは、別の英国のコラムニストの記事を載せるな、と新聞社にも圧力をかけている。
 DEは船員をスリランカで徴募して空路でイタリアへ送り込もうとしたが阻止された。
 シチリア当局によれば、捜索救難を標榜しているNGOの一部は、密入国斡旋屋(ヒューマン・トラフィカーズ)からカネを貰っており、共謀関係にある。
 アフリカ人たちは洋上で悪徳NGOにひとりあたり1500ユーロを渡せば、NGOが救助名目でそのままイタリア海岸まで運んでくれるともいう。
 捜索救難NGOと結託などせずとも、地中海にこれほど多数の難民ボートがうようよしていれば、その中にまぎれて武器や人身を不法に売買する海賊稼業は容易となるはずである。
 「ディフェンド・ユアロップ」は、以前は「紅海洋上予備役教練団」と称していた。ソマリア海賊から商船が自衛するための軍事訓練を、インド洋全域(約36箇所)で施していた。
 ホープナットヘイトにいわせると、『C スター』には民間軍事会社の武装チームが乗り組んでいるはずだと。
 しかしこれは疑わしい。アフリカの角沖には監視カメラが無いので良い。地中海はテレビカメラだらけである。そんなところに傭兵が顔を出すか?
 それにプロ傭兵というものは最低レベルでも料金が箆棒である。1隻の船をようやく借りた段階のNGOには、雇う資金が無いだろう。
 DEは2017-7-29時点で2000人以上の個人から16万3000ドルの寄付を集め得たにすぎない。プロ難民NGOとは規模が違いすぎる。
 『C スター』級のサイズのフネになると、1日動かすだけで、3000ドルから1万ドルの、燃費+船員日当が生じるはずである。
 おそらく2週間運航するのがギリギリだろう。


横に寝かせて液燃注入できるのなら、その筒体構造は不必要に重く、射程もペイロードも不足する。見事なフェイク破綻。

 ストラテジーペイジの2017-8-1記事。
  6月試射の対艦ミサイルについて。
 ロシアは北鮮へはKh-35(SS-N-25)対艦ミサイルを売っていないと言っている。
 それが本当なら、アルジェリア、アゼルバイジャン、ビルマ、インド、イラン、ヴェネズエラ、ベトナムのうちどこかから北鮮が入手したことになろう。
 ベトナムは同ミサイルをライセンス生産している。
 イランは、同ミサイルを勝手にコピー生産している。
 イランが航空便でKh-35を1、2発、北鮮に渡したのだろう。
 それが北鮮の「Kumsong-3」になった。
 Kh-35は簡単に言うと1977に登場した米ハープーンを1983からコピーせんとして2003にやっと完成した軽量版である。重さ610kg。よってレンジも130kmしかなかった。ちなみにハープーンの最新版は224km飛翔する。
 2015にロシアはKh-35のレンジを260kmまで伸ばした。飛翔中にランチャー側と通信できるようになり、終末誘導を画像式にした。
 ロシアで陸上の車両からKh-35を発射できるようになったのは2006のこと。
 北鮮の六月の試射は「動的」を狙ったものではなかった。標的艦は静止していたうえにリフレクターまで付けていた。つまり北鮮はKh-35の2015版を射程の上でだけ真似したのみで、終末画像誘導機能もECCM機能も無いのであろう。終末まで旧式のレーダー誘導のままなのだ。西側一流海軍にとっては、これは脅威ではない。
 次。
  Grant Newsham 記者による2017-8-1記事「Japan’s security: bigger problems than a defense minister」。
   稲田が就任したとき、国防関係の経験がないことが批評された。しかし前任の小野寺だって、稲田より少しも防衛には詳しくもなかった。だが小野寺を専門知識が無いと言って批判したメディアはなかった。
 前任のある防衛大臣は、妻が有名であるというだけが取り得の男であった。
 前任の別の防衛大臣は政治家を志す前に陸上自衛隊の将校だったが、自衛隊を改革しようとした人々をパージすることに賛成していたありさま。
 前任のふたりの防衛大臣はヤクザ関係にどっぷりだった。
 稲田は日報問題で叩かれたが、いったいこの地球上で、南スーダンが危ない地域だと知らぬ奴が誰かいるとでも?
 日本では多くの政治家は防衛大臣の地位を、ただの待遇がよい閑職であって、次のより高位な顕官職への踏み台だとしか考えていない。
 外務省と財務省もながらく、防衛省は能力の低い役人が行くところだと看做してきた。
 日本のメディアはしばしば1960年代の極左仲間が番組を仕切っており、いかなる防衛大臣の欠点もすばやく見咎めるのが仕事である。彼らのパラノイア世界観に基づけば、1930年代の東条英機の軍国主義は常にすぐそこまで来ている。
 日本の陸・海・空三自衛隊は、いつまで経っても一体化しない別々の戦闘組織である。それが少ない予算を争っている。
 北鮮のICBMが日本の海岸近くに着弾したとき、安倍は、これはクリアで現存する危険だと声明した。じゃあおまえはそれについて何をするんだよ? ……と三代目は思ったはずだ。結局、日本の国防戦略とは、アメリカがすべての面倒を見て欲しいと希望することに過ぎない。
 日本の高官が米国の高官と会うと常に声明される。日米関係はかつてなく強化されたと。
 稲田がこんな状況をもたらしたわけじゃない。前任大臣と日本の政治家全員が集団的にやらかしてきたことなのだ。
 米側の「同盟マネジャー」たちも同罪だ。日本人のいびつでゆがんだ対米依存心情を築いてきたのはこやつらなのだ。
 稲田の後任者にも、何もできることは無いだろう。もしジェームズ・マティス氏が日本の防衛大臣に就任したって、なんにもできやしないことに変わりは無い。それだけははっきりしているのだ。
 日本の防衛を考える仕事は、防衛大臣ではなく、総理大臣と国会の責任である。
 しかしそれにもタイミングが必要で、おそらく北鮮のミサイルが東京のどまんなかに着弾をするか、中共軍が海自艦艇を撃沈して尖閣に上陸するまで、そのタイミングが来ることはないのだ。
 その日までは、重箱の隅をつついて後任防衛大臣のあら捜しをする日本のゴミTVの報道が延々と続く。
  ※記者は退役海兵隊将校。
 次。
Zachary Cohen と Ryan Browne 記者による2017-8-1記事「US detects ‘highly unusual’ North Korean submarine activity」。
   火星14の二度目の発射の数日後に潜水艦のコールドランチ試験をしていたようだ。
 7-30に新浦沖でやった。それは7月において三度目、今年において四度目だったと。
 黄海では『サンオ』級潜水艦が活動。
 『ロメオ』級×2隻も日本沖を遊弋。両艦ともに、連続1週間行動していた。北鮮沿岸から百数十kmも離れていたのが珍。


「読書余論」 2017年8月25日配信号 の 内容予告

▼ベイジル・ホール著、春名徹tr.『朝鮮・琉球航海記』イワブン1986、原1818於ロンドン
 朝鮮人は落ち着きと無関心がないまぜになった尊大な態度。好奇心を欠いている点でも、強い印象を与えた。われわれが何を質問しているのかを察したときに、彼らはしばしば嘲笑の上、それを無視した。
 彼らは、われわれが歩きつづけるなら、首を斬られてしまうぞ、ということを示すかのように、扇を自分たちののどに当て、時にはわれわれののどをさして、引いてみせるしぐさをした。
 錨を入れたまま、錨と結んだロープをキャプスタンで捲く操作だけでフリゲート艦を移動させるテクニックを「ワーピング」という。
 南太平洋やマレー群島では、威嚇をもってしても住民の盗みを阻止することはできなかったが、沖縄では、誰も盗まない。
 シナ人は何事によらず、まっとうな尊敬すべき手段よりは、策略や詐術をもてあそぶことに、より大きな満足を見出す。
 シナ人は、誰が命令を下したかではなく、誰がじっさいに発射したのかを問題にすると艦長は知っていたので、マクスウェルはみずから初弾を発射した。
 シナ人はわれわれの忍耐を恐怖にもとづくものととりちがえ、そのことによって新たな勇気をふるいおこす。だからこっちは中途半端に対応していてはならない。
 かつてドルリー提督は広東で戦争を自制した。するとシナ人は大勝利したと騒ぎ、それを祝う碑文を刻んだ塔を残した。
 シナでもフリントロック小銃は普及しなかった。良質な火打石が得られず、また、湿度も高いので。
▼ジョン・G・ロバーツ著、安藤良男・三井禮子 監訳『三井――日本における経済と政治の三百年』S51-6 原1973 ※途中まで。後半の続きは次号で。
 M9時点での輸出商品は、官営三池炭鉱の石炭と、余剰米。
 輸入品は、陸軍向けの毛布と軍服の毛織生地。
 欧州では、WWI後の早い時期に、何千人もが政治テロで殺されていた。1920と1921の2年間のドイツだけでも300人以上が殺された。
 1932に犬養総理が暗殺された。アメリカではそのすぐあと、FDR暗殺未遂事件が発生。身代わりに、シカゴ市長のアントン・セルマックが凶弾に斃れた。
 退役軍人からなる米国右翼団体は、スメドレー・バトラー大将にクーデター政権での「大統領」の地位をもちかけた。
 ◆  ◆  ◆
 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。
 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。
 大きな図書館に毎日通えない人も、最低費用で、過去の軍事知識のマニアックな勘所に触れることが可能です。
 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。
 「読書余論」は、毎月25日に「武道通信」から最新号が配信されます。1号分の購読料は500円です。
 バックナンバーも1号分が500円で、1号分のみでも講読ができます。
 過去のコンテンツは、配信元の「武道通信」のウェブサイト
http://www.budotusin.net/yoron.html
 で、タイトルが確認できます。
 電子書籍ソフト対応の「一括集成版」もできました。詳細は「武道通信」で。
 「読書余論」は、2018年6月25日配信号以降は無料化されます(購読者登録だけが必要)。これから数ヶ月分の購読料をまとめて振り込まれる方は特にご注意ください。詳細は「武道通信」で。
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