米海軍はクォッドコプターの三次元コントロール・コンセプトは水中ロボットにも有望だと考えている。

 ストラテジーペイジの2017-7-23記事。
  2005に登場したエクスカリバーM982 は1発15万ドルもするベラボーな高額弾薬だった。今は7万ドルに下がったが、逐次の改善のための開発費がコストに載せられるので、これ以上は下がりそうにない。
 そこで、もっと安価に、ふつうの155ミリ砲弾を、誘導砲弾にコンバートさせる「後付けキット」が登場した。「M1156 飛翔物誘導キット(PGK)」という。
 2016年から量産がスタートし、米陸軍のみならず海外からの発注が増えている。
 なにしろエクスカリバーより85%も値段が安く〔※その絶対価格数値が記事中には出てこない〕、それでいて精度はエクスカリバーにちょっと劣る程度なのだ。
 M1156は、砲弾の中に組み込まれるのではなく、155ミリ砲弾の頭頂部に誘導フィンとGPSセンサーをねじ止めして取り付ける。そのため砲弾の重さは1.4kg増えてしまうが。
 GPSセンサーと誘導メカを小型化しようとする努力はこれまで何十年も続けられてきた。それがついに実用レベルに到達した。
 2009年の試作品では、砲弾の着弾誤差が50mあった。
 もしも狙った座標から150m以上逸れてしまうと予測された場合には、PGKはその砲弾を最終的に炸裂させない。それによってコラテラルダメージを防止する。
 その後、逐次に性能が改善された。2012年には誤差100フィート=32mに縮んだ。それから60フィート=19mになり、2015には10mになった。
 今ではPKGをとりつけた10発の砲弾のうち9発は10m内に落ちる〔?〕。
 PGKはどんどん単価が下がり続けている。
 155ミリ野砲を旧来の最大レンジの18kmで発射した場合、狙った座標から267m以内に落ちる。それがレンジに関係なく10m以内に落ちるということは陸戦の革命なのである。
 米陸軍はPKGを2013からアフガニスタンに持ち込んで評価を続けている。
 他のユーザーは、米海兵隊と豪州陸軍である。豪州はその前はエクスカリバーを用いていたが、PGKに切り換える。
 PKGを2発発射すれば、エクスカリバーと同じ仕事をしてくれる。コストは、それでもエクスカリバーの半分以下で済むのだ。
 エクスカリバーのメーカーは、センサーをGPSとレーザーの二本建てにして、レーザー誘導にした場合の着弾誤差を2m以内にしようと考えている。
 エクスカリバーにはスウェーデンの技術がいろいろ採用されている。砲弾の射程を延伸する工夫もそのひとつで、レーザー誘導で誤差2mでしかも射程40kmというスゴダマもいずれは実現するはず。
 120ミリ迫撃砲用の誘導砲弾は、2011年から米軍にはある。
 次。
 2冊の新刊。
 以前から頂戴していたものの時間がなくて読みきれていなかった。ようやく通読したのでその感想だ。
 まず小峯隆生氏著『蘇る翼 F2-B』。
 2011-3-11震災津波でやられた松島基地のF-2について、「なんで飛んで逃げられなかった?」という疑問にこの本が6年ぶりに答えてくれた。
 エンジンを始動する前に、3系統のコンピュータのビットチェックのプロセスを済ませなければならない。機体自体のセルフチェック。これに20分かかる。そのため、津波警報に接してからビットチェックを含めてF-2を飛ばすまでにも30分以上かかってしまう。機体とパイロットはなんとか逃げられるとして、問題は整備員。整備員全員が安全な高地まで避難するのには20分以上かかることが事前の訓練で分かっていた。F-2を全機飛ばしていたら、整備員が逃げ遅れて死んでしまうだろう。だから整備員の温存を優先し、ハードウェアの温存は二の次とした。
 この基地司令の判断はまったく正しいと思った。ハードウェアは所詮カネで買えるものだが、熟練整備員はカネじゃ買えねえ。
 大きな地震では、駐機中のヘリコプターのローターもゆさぶられてその先端が地面を叩いてしまうのだという話も生々しい。となると地震時にはドローンがいちばん使えるってことか?
 もう1冊は桜林美佐氏著『自衛官の心意気』。
 幹部自衛官は退官までに20回の引越しをせねばならず、そのコストは、支給される異動旅費手当を大幅に上回っているため、ボーナスがすべて引越し代で消えるという実感だと。これはダッフルバッグ1個で基地から基地へとさすらうことができた営内居住者のわたしには新鮮な話だった。家族持ちがこんな私弁を次から次とさせられていたのではさぞ大困りだろう。私有車を北海道から沖縄へ持って行かなくてはならない転勤者がいたとして、直航のフェリーなんてないから、陸上自走区間のガソリン代を含めるとそれだけでも10万円以上かかるはずだ。
 そこで思った。現役自衛官の引越しだけ専門にやる民間会社をOBが作ったらどうなんだ? しかもその会社の社員は全員、予備自衛官さ。つまり有事には器材も人員もそっくり自衛隊と合体するわけだよ。誰にも文句はねえだろう? その会社でついでにフェリーも2隻ぐらい持ったってバチは当たらねえ話だと思うよ。
 「ブラックウォーター」のクロネコ版だよ。引越し屋なのに、ヤケにガタイが良くて目配りが鋭いというね。
 もうひとつ。自衛官の転勤者が、僻地の駐屯地のすぐ外で中古車を売ったり買ったり、合理的に安全で格安に使いまわせるような全国ネットの民間会社を、やっぱりOBが創りなよ。私有車両に日本一周旅行させるんじゃなくてさ。その方がずっとエコだろう。在日米軍基地ではどこでも基地内で大っぴらにやっていることだから、みんなそこで仕組みを勉強したらいいんだよ。
 防衛省も、中途退職や定年退職する隊員たちに「起業」を教えるコースを駐屯地/基地ごとに用意しなよ。
 みんな、大きな保険会社の使い捨て社員として老年を終えたいのか? それとも、小規模なりといえども定年なんて無い民間会社の幹部になって、家族にも、仲間にも、後輩にも感謝されたいのか? 答えは出てるよな?
 次。
 大沼国定公園の水質をめぐる政治の話。
 国定公園である大沼は、七飯町と森町の行政区画に包摂されていて、函館市には管理責任がない。森町は北岸(北海道駒ケ岳の側)の一部で沼に接していて、残りの岸はぜんぶ七飯町。
 この沼の水は、鹿部町を横切る折戸川という1本の川から太平洋へ注ぐか、取水口トンネルから南方の峠下にある北電七飯町発電所の水力発電タービンへ導かれた後に、函館市を南流して津軽海峡に注ぐ河川系に合流する以外に、「出口」を持っていない。
 これに対して大沼に流入する水系は、とりわけ七飯町の広範囲の山林農地に降った雨水が直接に、またはいったん地下水となったあとに地表に現れて最終的に複数の流路にまとまったものである。
 ここから必然的に「大沼への家畜屎尿の流入を気にする人」と「家畜屎尿の処理には金はかけたくない地域農家」との摩擦が生まれる。
 大量の家畜屎尿はそのまま原野に捨てることが許されていない(微々たる分量を畑に肥料として撒くことが認められているだけ)ので、畜産農家は自前で屎尿処理設備を造らなければならない。しかし地元産の豚肉や牛肉の市場需要が増し、いま家畜の頭数を増やせば儲かるのだと思われたときに、限りのある資金の多くを、屎尿処理設備の拡充に使ってしまいたいと思う農家は居るまい。
 もし、自治体が税金で共同屎尿処理施設を作ってくれず、そのいっぽうで、めったに人など通りはしない山林原野の広大な私有地に結界して立ち入り禁止として、そこへひそかに屎尿を捨てている限りは誰にもチェックされないという環境があったとしたなら、小規模畜産農家はその誘惑に抗し切れるだろうか?
 この脱法的に投棄された屎尿が他の「合法的な垂れ流し」ともあいまって最終的に大沼の水質を悪くしつつあるのかどうかは、第三者機関に委託して沼の水質を複数ポイントで定期的に調べてもらうだけでも科学的に検討容易となるはずであるが、関係自治体(の議会)は、事態の究明をできるだけなおざりにあいまいにすることを選択しているかのようである。(ある年のデータが前年のデータとまったく同一だと報告されているとしたら、統計学者は果たしてそれがまじめな調査なのかどうかに懸念を抱くことだろう。)
 背景事情を想像することは難くはない。町に最多の税金を納めている地主集団の意向は、町に比較的小額の税金しか納めていない観光業者等のグループの意向よりも、尊重される。
 わたしは大沼で泳いだり釣りをすることもないので、その水質が富栄養化しようが、藻類が異常発生しようが、とりあえず関係はない。
 しかし昨今の全国の水害ニュースを見聞きするにつけ、最低限の注意喚起だけはしておくべきだろうと考える。
 近い将来にもし大沼で撹乱的な増水が起きたときに、その溢れた湖水は、衛生学的にクリーンであるとは保証されていない。殊に水遊びが好きな児童の保護者は、留意を要する。


ワレアオバ

  Sam LaGrone 記者による2017-7-19記事「Office of Naval Research Set to Upgrade the 200-Year-Old Signal Lamp for Modern Stealth Communication」。
 米海軍は200年間、探照灯型の信号灯で僚艦との間でトンツーを送受してきた。
 しかし時代は変わりつつある。今開発中の新システム。
 水兵は、発光信号器に有線接続されたタブレット上でテキストを組み立て、「送信」ボタンを押す。
 すると発光信号器が自動で明滅を開始し、光のモールス信号を僚艦や味方機めがけて投光してくれる。
 この探照灯型信号灯には受光用カメラもついている。
 向こうから送ってきた発光信号モールスを、こんどはそのカメラとソフトウェアで読み、自動的にテキスト化して、こっちの水兵のタブレットに文章として表示してくれるのだ。
 実験はすでに、ノーフォーク軍港沖の駆逐艦と巡洋艦の間で実施された。
 海兵隊も、このシステムを使って、こっそり敵岸に上陸した部隊から、沖合いの味方軍艦に対して光でテキスト送信ができないものか、研究中。
 発行器を、キセノン電球ではなく、ON/OFFきりかえ応答が高速なLEDの行列とすれば、時間当たりの送信情報量を倍増できる。とりあえず、1分間に1200字のモールス発光信号を送れるようにしたい。
 バイナリー信号を光で送受する方法も検討中。
 ※明滅を機械化してしまうのだったら、レーザーアレイかLEDアレイでバーコードやQコードを「投光」送信した方がずっと速いのではないか?
 光線を「近赤外線」にすることも検討中。
  ※むしろ「月光」とまったく同じ波長にすることで敵の「探知」センサーを撹乱できるのでは?
 投光信号機は手動でやるかぎり、モールスを毎分120字送るのがせいぜいである。


中共陸軍は削減。空軍人数は据え置き。増やすのは海軍と戦略支援軍とロケット軍。

 Troy Bickham 記者による2017-7-15記事「Should we still care about the War of 1812 ?」
   1812年の米英戦争で米側はくりかえしカナダ侵攻をこころみたが、ナポレオン戦争中であるにもかかわらず英側はそのすべてを撃退することが可能だった。
 ミシガン準州で、米地上部隊は「降伏」させられた。
 海上では、初期には単艦同士の交戦で米側が手柄を示すこともあったが、全期を通じて英海軍が米海岸をブロケイドし、好きなように上陸して都市を襲撃した。DCも焼かれている。
 1814の後半に英側から寛大な休戦条件が提案された。カナダには南侵可能な歴戦部隊もあり、大西洋の海上権は掌握。米側は事実上の財政破綻。ニューイングランドでは米国から分離独立しようという声も上がっていたほどなのに。
 ところが英本国ではリヴァプール内閣が不人気に陥っていた。ナポレオン戦争のために国民は延々と重税を負担し続けてきた。さすがにもう疲弊していた。
 イングランドの中部と北部にあった工業地域の有権者は、合衆国市場でモノが売れなくなってしまい、対米戦争の長期化には強く反対していた。
 ナポレオンが屈服してウィーン会議が始まると、もはや対米戦争など税金の浪費以外の何物でもないと英有権者は考えた。
 そこで、初期には和平案条項に含めていた、かなりの広さの北米国境地域のインディアンごとカナダへの割譲という条項は撤回され、対米和平が急がれた。
 自由選挙(ただし普選ではなくまた婦人と奴隷もまだ関係ない)で政府が選ばれている国家同士、そして経済的パートナーである国家の間では、戦争など起きはしないのだ――と主張されていたその当時の無根拠な仮説は、1812~14の英米戦争の事実によって、粉砕された。
 選挙によって登板し選挙によって失脚する政府は、必然的に自国の世論に敏感たらざるを得ない。まず世論が外国に対して怒り、自国政府に戦争を求めるのだ。
 当時のカナダは英殖民地だが、選挙で議員が決まる現地議会は存在した。その議会メンバーの中には、むしろ米側に立って英国と戦争しようと叫ぶ者すらいた。
 最初に英国から合衆国へ渡ってきてそこからカナダへ移住した親戚とか、最初に英国からカナダへ渡ってきてそこから合衆国へ移住した親戚などはごく普通にいた。米加国境地帯では緊密な経済関係が築かれていた。
 合衆国は1812開戦後でも、欧州戦線とカリブ海戦線の英軍諸部隊に対する、穀物兵糧の最大の供給産地だったのである。
 今オンタリオ州と呼ばれているカナダ中部の広大な地域は、じつは合衆国が独立した後に合衆国から流入した「新ロイヤリスト」たちによって建設されている。
 これがまた誤解を誘導した。北侵すれば住民が寝返る、と合衆国側では都合よく空想したのだ。
 米政府は開戦時に有権者に約束した戦争目的は達成できなかった。
 カナダ住民はこの戦争によって団結し「国民」化したというのが後世カナダの伝説。だが、実態は、かなりの住民が米側に立って戦闘した。
 マディソンは「第二の独立戦争勝利だ」と国内宣伝に努めた。
 この戦争は、アンドリュー・ジャクソンを戦争英雄にした。一部では「第二のワシントン」だと絶賛。
 このジャクソンが、合衆国にポピュリスト政治や、過去の抛擲を叫ぶスローガン選挙を持ち込む。つまりはトランプ氏の大先輩だ。
 次。
 Shawn Martin 記者による2017-7-15記事「The Birth of Laser Weapons」。
  米軍がレーザー研究に出資しはじめたのは1960年代であった。
 20世紀にはさまざまな化学レーザーが試された。
 酸素-沃素レーザーはパワーが出なかった。
 弗素レーザーとか水素レーザーは化学剤が揮発的に消散してしまう難点があり、かつまた艦艇に簡単に搭載できないくらいに嵩張った。
 ファイバー・レーザーが思い着かれてから、ようやく、開発は前進しているところ。
 『ポンセ』に搭載した30キロワット型レーザー砲は、まだ1マイル弱の射程しかない。
 こいつはイランのUAVや特攻ボートには有効だが、ミサイルのRVには無効。
 げんざい、ノースロップグラマン社が、ONRからカネをもらって150キロワットのレーザー砲を開発中である。
 次。
 まったくニュースじゃないのだが、北海道のJRをどうすりゃいいのか気になって、鉄道再建王であるエドワード・ハリマン氏について英文ネットで確認してみた。
 Edward Henry Harriman(1848-2-20NY生まれ。1909-9-9NYで病死)。
 ハリマンの父は、エピスコパル派教会幹部。つまりユダヤ系でも何でもない。
 先祖は1795に英国から移民してきた貿易商人である。
 少年時代に鉄工所で夏のアルバイトをしたことあり。
 14歳で学校をやめてしまい、ウォールストリートの使い走りボーイに。
 そこには叔父がいたので鍛えてもらい、22歳にしてニューヨーク証券取引所の正規メンバーとなった。
 1879年、31歳でマリー・アヴェレル(Mary Williamson Averell)と結婚した。
 このマリーの父ウィリアムが、NYの投資銀行家で、かつ、シャンプレーン湖鉄道会社の社長だった。そこでハリマンも鉄道に興味をもつ。
 彼は潰れかけていた別な鉄道路線を買い取り、それを再建して巨利を得た。これが彼の最初の大成功体験。
 ユニオンパシフィック鉄道の社長になったのは50歳を目前とした1897であった。
 1898に彼は絵に画いたような大企業の「独裁者」となり、死ぬまでそのようにふるまった。彼の命令が法律であり、それをすばやく実行することが「協働」なのだと称された。
 1901に南パシフィック鉄道の社長にもなったハリマンは、UPとSPを統合しようと図ったが、それは連邦に阻止された。
 それでも彼は次々と国内の鉄道会社を傘下におさめていった。
 既存の鉄道に利益を産ませるためのキモは、ストリームライン化と規格化。複線化への多額投資も惜しまない。
 死の時点で、「太平洋蒸気郵船会社」も所有していた。
 NYTの1905-6-28日号に、ハリマンが家族連れで日本へ出発すると報じられている。それによると予定ではセベラル月も帰らないつもりだった。
 ハリマンは2ヶ月間訪日した。そこで柔術に興味を覚えた。
 帰国にあたって、トミタ・ツネジロウ、マエダ・ミツオら6人の柔術家/剣術家を帯同する。
 1906-2-7にはその一座がコロムビア大学の体育館で演武を見せている。※英文ウィキには「1905」と誤記してあるので注意。NYTの1906-2-4に報じられている。
 1909に死ぬ前年の1908にもエリー湖鉄道を買収した。終生、鉄道ビジネスに打ち込んだのである。
 ビジネス成功の秘訣は、まったく休まずに鉄道の効率化と利潤を追求したことにあり、それ以外の何もない。
 1904にTR政権は彼を米国内の鉄道をひとりで独占しすぎているという咎で法廷に引き出し、分割させようとした。
 1907の新聞戯画。ハリマンは悪玉の独占王として描かれ、政府が羽交い絞めにして制圧している。
 ジョージ・ケナンは1917に『E・H・ハリマンの極東計画』という本を書いている。
 またジョージ・ケナンは1922にハリマンの2巻モノの浩瀚な伝記も書いている。
 毎年、鉄道の安全に寄与した人に贈られる「E・H・ハリマン賞」は1913に未亡人により創設された。
 鉄道王としてのハリマンを知りたい人はモーリー・クレイン著『The Life and Legend of E. H. Harriman』を読め。
 ハリマン本人はエピスコパル派教会墓地に葬られている。
 ハリマン夫婦の間の5人目の子供が、ウィリアム・アヴェレル・ハリマン(1891~1986)である。トルーマン政権下の商務長官。また、NY州知事、駐モスクワ大使、駐ロンドン大使。


コンタクトレンズに暗視機能を組み込む研究が進んでいるらしい。

 Guy Plopsky 記者による2017-7-12記事「Why Is Russia Aiming Missiles at China?」。
    2017-7前半、ロシアメディアは、もう1個の地上ミサイル旅団が最新の「9K720 イスカンダルM」(別名OTRK=作戦戦術ミサイルシステム)を受領したと報じた。
 この旅団は、第29軍内に2016-12に新編された第3ミサイル旅団で、シベリアでこの車載弾道弾を装備した4番目の部隊になった。
 同旅団は当初は「9K79-1 トチュカU」という弾道ミサイルを装備していたが、ロシア国防省はこのミサイルを2020までに退役させるつもりである。
 シベリア戦区で同ミサイルを装備する他の三旅団は、第107、第103、第20で、それぞれOTRKを2013年、2015年、2016年に受領した。
 東方戦区(シベリア)以外の、西方戦区、中央戦区、南部戦区では、イスカンダル装備旅団は2個づつ。いかに「対支」が重視されているか。
 ロシアの情報源によれば、イスカンダルMの「9M723」“準”弾道ミサイルシリーズは、射程が400kmから500kmある。※“準”というのは、自由落下(抛物線)ではない軌道で終末コースが水平に延びるからだともいう。
 他方、地上発射式巡航ミサイルである(そしてしばしば「イスカンダルK」だと間違って伝えられる)「9M728/R-500」も、射程は500km未満である。※このまぎらわしい呼称が“準”の憶測に輪をかけるわけである。
 イスカンダルMは、日本の北海道には届くが、青森の車力にある米軍のXバンドレーダー(AN/TPY-2)基地や、韓国のTHAAD基地までは届かない。
 もしイスカンダルMで三沢基地を攻撃したくば、国後島の南端にイスカンダルMを展開する必要がある。
 冷戦中は樺太南端のユジノサハリンスクにミサイル旅団が1個維持されていたものだ。が、現在、そのような対日攻撃専用のミサイル旅団はなくなっている。
 シベリアの第107ミサイル旅団と、第20ミサイル旅団の基地は、ユダヤ人自治区であるオブラストならびにプリモルスキークライに所在している。
 どちらも、中共との国境地帯である。
 そのうち第20旅団は、ロシアが北鮮と陸上で接する長さ17kmの国境線を射程に入れている。
 この配置から推理して、この2個旅団は、中共を核抑止するとともに、半島動乱に備えるものなのだろう。
 第103ミサイル部隊は、モンゴルと接するロシアのブリヤート共和国内にある。
 そして第3ミサイル旅団は、中共の内蒙古自治区と国境を接するザバイカルスカー・クライのゴルニー市(かつて「チタ46」と称されていた)に置かれている。
 露軍は2010と2014に「ヴォストーク(東)」大演習をシベリアで催行し、2014のときは10万人以上を動員した。モスクワが中共を潜在脅威だと看做していることは常識である。
 中共の「北部戦区」がもし越境北侵した場合、所在のイスカンダルMは、クラスター弾頭によってその装甲師団の前進を阻止するのだろう。
 イスカンダルMの命中精度は、ロシア側によってしばしば強調・宣伝されている。ヴォストーク2014演習で、ユダヤ自治区のオブラスト試射場でイスカンダルMが発射されたときはプーチンが立ち合い、且つ、ショイグ国防大臣が「200km先の2つの標的に命中した」とアナウンスをしている。
 2016-8の、同じ場所からの演習発射では、300km先の「アムール・オブラスト」市に置かれた標的をイスカンダルMが「直撃」した、とロシア国防省が広報した。※しかしその「標的」とはどんなものなのかは不詳。
 2010にロシアの軍事ドクトリンは定義した。核戦争や、非核の本格局地戦争を防ぐために、ロシア軍の核兵器は重要であり続ける、と。
 この局地戦争とは、対支を念頭しているというのが普通の解釈だ。
 2014でも同じ話が反復され、ロシア軍は中共との紛争になったら核兵器を積極的に使うつもりであることになんら変わりが無いことが強調されている。
 1987のINF条約で、米ソは、射程500km~5500kmの弾道ミサイルと、同じく射程500km~5500kmの地上発射型巡航ミサイルの、製造も保有も禁じられた。
 ロシア政府の複数の高官は、「イスカンダルMのR-500」という地上発射型巡航ミサイルがあって、その射程は、必要とあらば500km以上に延びる――と声明している。
 これが、NATOが「SSC-8」と呼んでいる、既存の、そしてINF条約違反をとっくに疑われている(つまり500km以上飛ぶ)地上発射式巡航ミサイルと、同じ系列のものなのか否か、不明である。
 次。
 ストラテジーペイジの2017-7-12記事。
   日本はF-35用にJSM(ジョイントストライクミサイル)をノルウェーに発注する。
 JSMは2017に米軍によるテストが終わったばかりの最新弾薬である。
 JSMはF-35のボムベイ内に収まる。しかも、そのミサイル本体もステルス形状になっている。
 全重500kg、空対地射程が250km。もともと、コングスベルグ社製の艦対艦ミサイル「NSM」というのがあり、それを改造した。
 地形追随の超低空飛行も可能な、ミニ巡航ミサイルである。
 陸上の動く標的にすら、命中させることができるという。画像情報はミサイルから発射母機にもリアルタイムで送信される。
 日本が北鮮の核ミサイルを除去するのに、これ以上頼りにできる兵器システムは、ないだろう。


室内で自分の手の指の骨を透視する方法。あと、栗入り大福ありがとうございました。

 今日わたしはじつにくだらないことを発見してしまった。
 てのひらを太陽にかざしてみても骨は透視できない。
 ところが、ひるまの屋内で、両手の指を微妙にずらして(奥のてのひらの指と指の間のスリットから漏れ来る光を手前の指で立体的に塞いでしまうように)重ね、半透明のガラス窓越しの間接日照に透かして見るようにすれば、自分より遠い側の手の指が、黒い輪郭をハッキリと顕すのである。
 なぜそうなるのかは説明できない。
 次。
 James Bamford 記者の〔古い?〕記事「The newest front in global espionage is one of the least habitable locales on Earth――the Arctic」。
   2014年夏、ノルウェーの学術調査チームがホバークラフトを使って北極点から200マイルの巨大浮氷上の観測拠点に物資を運び、研究者2名が拠点に残留した。
 2014-10にこの2人はびっくりした。2マイル先に照明が見えた。近寄ると、潜水艦だった。
 それはロシア海軍の『オレンブルグ』で、後日の写真判定により、小型の深海偵察工作用原潜だと判明。
 どうやら原潜の方が、この研究者たちに関心があったようで、すぐにその姿を消した。
 『オレンブルグ』は、ロモノソフ海稜から地質サンプルをドリルで採取していたようだ。同海嶺は、海底面から3900mもせりあがっている。稜線の総延長は1000マイル以上。
 米国の地理調査局によれば、北極海の海底には、世界の未発見の原油のうちの13%が眠っているだろう。すなわち900億バレル。また、未発見の天然ガスのうち3割も、やはり北極海底にあるであろう。
 北極海に隣接領土をもっているのは、ロシア、合衆国、カナダ、ノルウェー、デンマーク(グリーンランド)だけである。
 いま、北極海の氷は、他のどの地域よりも急速に融けて、船のアクセスが容易になっている。しかしマイナス45℃になる海域で、深海底をボーリングするのは楽じゃない。そこで、米国以外の4カ国は、このロモノソフ海稜の真上の流氷上に調査基地を置いて、北極海底油田の手がかりをまずここから得ようと努力中なのだ。
 世界庶民が中東ニュースばかり聞いていた間、5ヵ国は、北極監視用衛星を打ち上げ、北極監視用の無人機と有人偵察機を飛ばし、電波傍受用の北極基地を設営し、工作任務用の潜水艦を送り込んでいた。
 ※ふつうの極軌道の偵察衛星なら北極海の上は毎日必ず通過しているわけだ。しかし冬季は日照がおよばないので、それはレーダー偵察衛星である必要があるかもしれない。
 冷戦中はウィーンが各国のスパイどもの巣窟だった。今は各国のハイテク監視アセットが北極海に集中している。
 イヌイット族のことわざにいわく。氷が割れたときこそ、真の友人は誰だったのかが判る、と。
 1994から効力発生している国連海洋法では、大陸棚について、もし、その地質地形が陸地からまったくひとつづきのものだと証明できるのならば、沿岸国はEEZを350海里まで主張できるとしている。
 だから米国を除く四ヶ国は、北極海の大陸棚が自国の陸地とひとつづきのものだと証明できる科学調査データを国連に提出すべく、同地で熱心なボーリングを続けている。
 なぜ米国だけ、それをしないか。米国は国際海洋法条約には加わっていないからだ。レーガン政権が、海底の鉱物の開発に関する社会主義的な国際規制など受け入れられないという立場を表明した。
 その後、ビル・クリントンが条約に署名した。次のブッシュ(子)とオバマもそれを支持した。統合参謀本部、米海軍上層、さらには石油業界まで、批准を望んでいる。けれども、連邦議会上院の共和党員が、一貫して批准を阻んでいるのだ。
 既批准国は、200海里以遠の大陸棚も自国領土と一体だという地質証拠を揃えるまでに10年間の期限を、国連から与えられている。
 ロシアは早くも2001に国連に、北極海の海底の半分はロシアのものであると主張した。もちろん極点をも含む。
 そしてその6年後に、深度1万4000フィートの北極点に、チタニウム製のロシア国旗を突きたてた。
 これにカナダ外相が反論。今は15世紀かよ、と。
 するとロシア空軍は演習で巡航ミサイルを発射して北極点上空を通過させた。
 2006年にノルウェーが国連に提出した申請書。バレンツ海の「ループホール」、大西洋の「西ナンセン海盆」、ノルウェー海の「バナナホール」はノルウェー領土からひとつづきの大陸棚である、と。北極海にはクレームせず。
 ところがその後にノルウェーは考えを変えて、ロモノソフの調査に入った。国連が設定した10年の期限に間に合えば、追加申請は問題がないのだ。
 デンマークも、ロモノソフ稜はグリーンランドとひとつづきであると主張している。
 海洋法条約ができてから30年目の段階で、61のクレームがあるという。いずれも新しい洋上の境界線を求めるもの。
 うち、委員会が解決できているのは18だけ。
 北極点に最も近い通年常駐基地はエレスメア島で、カナダ領。極点から500マイル。
 ロシアが北極圏に展開している軍事基地間の通信は電波によるしかない。それを傍受している。もちろんミサイル実験のテレメトリーも。
 会話傍受基地はオタワの近くの「レイトリム」にある。NSAと直結。
 米国はグリーンランドにトゥール空軍基地を保持。
 衛星制御のための特殊施設。
 カナダの見積もりでは、UAVに空中給油する技術をロシアが手にしない限りは、露軍はUAVによっては北極圏のカナダの動きを見張ることはできない。
 他方、カナダは、「レーダーサット2」号の合成開口レーダーにより、雲があろうとなかろうと、露軍の動きは掴める。
 2014-11にロシア政府は発表。アラスカから420マイルの地点に無人機の基地を建設すると。
 ※2014年といえば「パーソン・オブ・インタレスト」のシーズン3の頃じゃないか。


直立させた後から液燃を注入する作業映像は、除去されたのだろう。勿論 同伴の「燃料タンク車」「ポンプ車」も。

 Scott Savitz 記者による2017-7-6記事「Rethink Mine Countermeasures」。
  アヴェンジャー級掃海艦は、木造とFRPの半々だった。この次の世代をどうするか。
 繋留具切断掃海と、曳航式感応誘爆掃海とがある。
 1973年に米海軍は、パリ和平合意にもとづいて、ハイフォン港を掃海することに……。LSTを改造した最終掃海確認艦『ワシュトノーカウンティ』が駆り出された。
 その艦内には泡状の消火液が満たされ、操艦は、詰め物にぎっしり囲まれた上甲板から行なわれた。日本でいわゆる「ブタ船」である。
 フォークランド島を1982に再占領した英海軍も、軍艦『アラクリティ』を使って、同様の「チェック・スウィープ」を実施している。
 これからは、こういった面倒なブタ船ではなくて、使い捨ての利く無人水上船USVによって掃海最終確認作業をさせることもできるはず。
 小型ロボット掃海艇のスウォーム案は悪くないが、それだけでは掃海は仕上がらない。
 じつは商船が触発機雷の海域を抜け出す一つの方法がある。超低速で進むのだ。触発機雷は一定以上のインパクトで衝突しないと起爆しないようになっているので。※もちろん、波やうねりの関係で、どうなるかは保証されない。
 普通の軍艦より小さいUSVは、低速で走れば、自艦が触発機雷で損害されることなく、掃海ができるかも。
 ボロボロに古くなった大型商船にリモコン装置をつけて海軍の「ブタ船」にしようという案もある。吃水と横幅が大きいほど、「体当たり機雷掃海」は効率的になるわけだ。となるとタンカー。
 現代の大型タンカーは1発の機雷では沈まないことが1980年代のペルシャ湾で多数の実例によって確認されている。※しかしそのまま予定通りの寄港地まで航海を続けるというわけにもいかなかったが。
 感応機雷掃海の難しいところは、進化している敵機雷の「水圧」センサーとそのアルゴリズムをどうごまかしてやれるのか。水圧源と音源が別位置ならば、それは掃海艇と掃海具だと判断されて、起爆はしないかもしれない。
 しかしUSVなら、曳航する掃海具ではなく、自艦から直接に音も水圧も磁場も発生してやれるので、アルゴリズムでは本物と区別はできないはず。
 マインハントとマインスウィープは違う。マインハントは、できるときにやりなさい。掃海は、命令によって、否でも応でもやらねばならぬ仕事だ。
 感応機雷の側で、掃海努力を無駄にしてやるためのビルトインシステムを、対掃海手段MCCMという。
 代表的なのは「シップ・カウンター」。最初の数回の刺激では起爆せず、数隻やりすごしてからドカンといく。
 「サイコロ信管」というのもある。通過船を感知したときにはルーレットが回り、そのルーレットの出た目によって実際に起爆させるか起爆させないかをいちいち決定する。その「当たり確率」はプリセット変更できる。低確率にしておけば、かなり長期にわたり海域を危険化できる。なまなかな回数の掃海では見逃されるしかない。
 巨大船も、超低速で動けば、水圧変化が微妙になり、感応機雷の水圧センサーでは、自然現象との区別ができなくなる。


さすがにTELからは離さないと車体が焼失しちまうだろうね。となると発射には手間がかかり、風には弱い。

 TARA COPP 記者による2017-7-5記事「Pentagon: Latest North Korean missile is ‘not one we’ve seen before’」。
  星条旗新聞が、海軍大佐のジェフ・デイヴィスに訊いてみた。
 民航機が飛ぶ空域(津軽海峡西方)に無通告で射ち込んだ。
 発射場所は、過去にミサイル発射で使われたことがない。
 デイヴィスいわく、このミサイルは5500km以上飛んでアラスカを攻撃できるだろう。
 発射は、駆逐艦『モムゼン』と、レーダー監視船(米軍傭船)『ハワード・O・ロレンゼン』が追跡していた。飛翔時間は37分だった。そして日本のEEZ内に落ちた。
 ※今回確認されたこと。北鮮は同国北西部からは940km未満しかない北京に対して大型SSMを射ち込むことが疑いもなくできるようになった。しかもモビルランチャーTELを使用して。ロフテドにしてみせたことによって、北鮮領内のどこから発射しようが北京市には確実に届かせる余裕があることも中共に理解させた(いちばん離れたところから射っても水平に1200kmで、それは今回の最高到達高度よりは間違いなく短い)。あとは、ミサイルに搭載可能な核弾頭が実在するのか否か。こればかりは大気圏内で航空機から投下して実爆させる以外に、米支に対して立証する方法はないのである。現状では、フェイク・ニュークしか北鮮には無いのだ。
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 NANCY MONTGOMERY 記者による2017-7-5記事「Soldier charged in Humvees’ free-fall」。
   2016-4にドイツでの演習中、米第173空挺旅団の軍曹がC-130から空中投下した3台のハムヴィーが、機体後部ランプから引き出されたあと、物料傘のハーネスがはずれてしまって地上で粉々となり全損した。この演習では150個口の物料が投下されている。
 その失敗の模様はビデオに納められており、ユーチューブで100万人以上が視聴した。
 1台22万ドルする国有財産を毀損したこの軍曹は、最悪の場合、軍法会議で最高量刑10年を喰らい、その期間の俸給と手当てを全額没収させられ、しかも不名誉除隊させられる。


ブーイングかとおもったらバブーイングだった

 Tobias Burgers & Scott N. Romaniuk 記者による2017-7-3記事「New US Drone Project Could Change Asian Warfare Forever」。
 米軍では無人機の最大カテゴリーを「グループ5」と呼んでいる。
 そしていま、米海兵隊は、強襲揚陸艦から垂直に発艦でき、短距離着艦できる「グループ5」の攻撃型無人機を模索している。
 V-22オスプレイとほとんど同じ能力とし、各種の攻撃や電子妨害にあたらせる。「MUX」と称する。
 記者は提案する。日本の『いずも』型に「MUX」を積み、無人機母艦にすれば、海自の対支作戦能力は倍増される。
 それによって、米軍の対支態勢もずいぶん楽になるだろう、と。
 ※昔の『飛龍』型以上の甲板滑走距離が取れるのに、なんでVTOLなどにこだわらねばならんのだ? 燃費が悪くて損だろう。日本は断然、固定翼艦上無人機にするべきである。電磁カタパルトと電磁網を使うなら、発艦は左右30度、仰角45度で一斉発射、回収は「いきなり格納甲板内へ穴からダイブ」する方式で次々にできるはずだ。これでミッドウェー海戦の二の舞にはならぬ。
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 ストラテジーペイジの2017-7-4記事。
  中共製の「翼竜2」(リーパーもどき)の攻撃機型は2017-2に初飛行した。GJ-1という。
 その何機かが2017-6月にチベットで飛行し、インド国境に近づいている。
 AR-2というレーザー誘導の自重14kgの小型空対地ミサイルを吊下する。射程8km。
 GJ-1のペイロードは600kgだが、うち2割はセンサー、通信機、デジグネーターにとられてしまう。
 中共軍は「翼竜2」の前駆モデルである「翼竜1」(プレデターもどき)を2005から開発スタートし2007に初飛行させ2008から部隊配備してきた。当初は偵察専用の無人機だったが、2011からはGPS誘導の米式SDBもどきの細身爆弾を2発、投下できるようにした。1発60kgである。
 この「翼竜1」が2012から輸出され始めた。まずウズベキスタンとUAEへ。
 「翼竜2」はRQ-9 リーパーのウィングスパン20.5mよりちょっと小さい。
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 KIM GAMEL AND YOO KYONG CHANG 記者による2017-7-3記事「N. Korea claims to have tested ICBM as US celebrates Independence Day」。
  韓国メディアのKCNAによると、北鮮のこのたびの弾道弾は『火星14』。
 39分間飛翔した。高度は1740マイル。水平距離580マイルに着水。
  ※この1740という数値は、北鮮発表の2800kmを陸マイルの1609mで割っただけ。敵国の宣伝の片棒担ぎかよ。おまけに水平射程にも陸マイル適用かい。それはともかく、なぜ北鮮は2800と宣伝しなければならなかったかというと、ロフテドの到達高度の2倍が水平最大射程になるんだという話が前回5-14テストの際に世界的に認知されたから。それで今回は2倍にして5600kmとなるように数字を盛ってるわけ。水平に5500km以上飛ぶならICBMと認定してもらえるので。
 パコムだけが、これはIRBMだと言っている。ICBMではなく。
 韓国軍によると、発射地は、北西部のバンギョン飛行場の近く。到達高度は1430マイルで、飛距離は580マイル強。
 ※1430に陸マイルの1609をかけると、2300kmとなる。2倍にしても5500kmには届かないが、900kmを足せば5500kmになる。こいつら支那人レベルの「初めに最終数値あり」の算数問題作製しか能がねえのか。文左衛門が北鮮がICBMを持ったことにしたいので、韓国軍もボスの意向を忖度し、こうやって文左衛門にギリギリの線で媚びてみせねばならんのだろう。
 日本の防衛省は、ロイターを引用した。すなわち高度1560マイルを大きく超過したと。 ※こういうときに国産レーダーで捉えた独自の数値を出さないところが、周辺国をして日本を軽視させる下地になっているのが、まだ日本政府にはわからんようだ(特防秘の米国情報しか得ていない三流国だと外国をして推定させてしまう)。ちなみに1560に1609をかけると2510km。2倍にしても5020kmにしかならないから、これが正確なら今回のミサイルはICBMかどうか微妙。パコムが正しい。
 弾道弾の飛距離を科学的に計算できる男、デヴィッド・ライト氏によれば、これらの報道数値から推定して、このミサイルは最大水平射程が4160マイル〔6693km〕になるだろうと。
 つまりハワイやアラスカには届くが、北米大陸48州にはどこにも届かない。
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  Elizabeth Shim 記者による2017-7-3記事「North Korea can make 10-20 nuclear warheads, think tank says」。
  SIPRIによると、北鮮が保有する核分裂物質は、原爆10個分から20個分になるだろうと。
 この数字は2017-1のデータに基づく。
 またSIPRIいわく。ミサイルに載せて北米大陸まで届かせられるような小型核弾頭はまだ開発できていない。
 2017-1時点で、5大国に加えてインド、パキスタン、イスラエル、北鮮もあわせた世界の核兵器総数は、1万4935だろう。2016前半の1万5395よりは減った。
 その総数のうち米露2国だけで9割を占めている。


来週売られる『Voice』8月号は面白いですぜ。

  Sam LaGrone 記者による2017-7-2記事「USS Stethem Conducts Freedom of Navigation Operation Past Triton Island in South China Sea」。
         米駆逐艦DDG-63『ステセム』は7-2に、パラセル諸島のトリトン島12海里内を航行してFONOP実施。
  ※トランプはヤル気ナシナシなのかと思っていたら、急に活況を呈してきた、みたいな。
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 Jon Gambrell記者による2017-7-2記事「What to Know About the Qatar Crisis」。
    カタールの面積は、コネチカット州ていど。
 しかし天然ガス埋蔵量は、ロシア、イランに次いで、世界第三である。
 220万人の人口のうちカタール国籍はわずか1割。あとは外国人労働者。
 ワッハーブ派で厳密なはずなのに、女がクルマを運転してもいいし、外国人が酒を飲んでもいい。だからサッカーワールドカップの2022も開催する。
 米軍はカタール内の空軍基地に1万人以上を駐留させている。
 6-5に、バーレーン、エジプト、サウジ、UAEは、カタールと断交するとともに、民航会社カタールエアウェイズ機の領空通過を禁止。カタール商船の寄港も禁止。サウジは陸上国境も完全に遮断した。
 カタールはイランとつながりが深い。というのも、沖合いの海底ガス田は、イランの所有分と接しているからである。
 断交4ヵ国はカタールにいくつかの要求をつきつけている。
 イランとの外交をもっと制限すること。衛星放送局のアルジャズィーラ等を閉鎖すること。ムスリム同胞団やレバノンのヒズボラなどのテロ組織と一切の縁を切ること。賠償金も支払うこと。
 その期限は10日間だとされ、もはや過ぎた。
 四ヵ国は追加の経済制裁を考えている。
 しかしカタールの投資は全世界的である。ロンドンのハロッズ百貨店、ドイツのフォルクスヴァーゲン、NYCエンパイアステートビルディングを所有する不動産会社などなどにカタール資本が入っているのだ。
 四ヵ国は、カタールの港からLNGを搬出することも阻止したがっている。
 カタールが可能な対抗措置は、UAEに通じている海底天然ガスパイプラインを遮断してしまうことだ。もしそうなれば、UAE国内では、水道(海水脱塩プラント)とエアコンが、停まってしまう。
 次。
 Darien Cavanaugh 記者による2015-4-27記事「JFK Had a Secret Nuclear Fallout Bunker in South Florida」。
   1960-12、その次の月から大統領に就任するケネディの意向で、海軍のシービーズ設営部隊が、フロリダのピーナット島のコーストガード基地の裏手に、地下弾薬庫を設けるべく、掘削工事を始めた。
 シービーズはそこを「作戦ホテル」と呼んだ。核戦争時のフォールアウトから大統領を守るシェルターのひとつだった。ケネディは毎冬、その近くのパームビーチで過ごすのが常だったのだ。
 シービーズはたったの2週間足らずで、地中にコルゲート鋼鈑の地下室を据えつけ、その上から、コンクリート、土、そして鉛によって厚さ25フィートの被覆をほどこした。
 米政府がこの「離れのホテル」の存在を公式に認めることは1974までなかった。
 ケネディがこの設備を使うことも遂になかった。そして1999年から観光客に内部は公開されている。
 おそらく大統領用シェルターとしては最小サイズに近い。
 シャイアンマウンテン、ウェザーマウンテン、グリーンブリアー、ホワイトハウスのイーステウィングとウェストウィングの地下部分等の本格的地下施設の宏壮さとは、比べ物にならない。
 それでも、発電機室、エアコン用微粒子フィルター、放射線検知センサー、除染用シャワーなどは完備。
 中央区画には、15人分の作り付けの寝棚、会議用テーブル、無線装備一式、そして地上のヘリパッドまで出られるエスケープハッチが。
 潜水艦がピーナットアイランドに横付けして、大統領を収容する手筈であった。
 軍用の缶詰糧食、缶詰飲用水、水のいらない手拭き、洗濯機用脱臭剤、料理用の固形燃料等も。
 最大で30人が1ヵ月、ここで暮らせるように、考えられていた。
 1961-4のピッグズ湾侵攻は大失敗。
 米ソ間はきょくたんに冷却化し、米国は中距離弾道ミサイルのジュピターをトルコとイタリアに配備してモスクワを照準した。
 ソ連は対抗してキューバに中距離核ミサイルを持ち込み、1962-10のキューバ危機に。
 続いて、「ミサイル・ギャップ」のパラノイア。
 すでに1960年にはワシントン市民の7割が「核戦争が切迫している」と感じていた。
 米国市民は1965年までに、総計20万箇所の「裏庭核シェルター」を掘って、米ソ戦争に備えたそうである。
 その多くは、コルゲートメタルの巨大径チューブや、巨大径の鉄筋コンクリート製土管(いわゆるヒューム管。回転させながらコンクリートを打つと水密になることをHume氏が発見)を埋設して上から覆土しただけの簡易防空壕だが、中には、ラスベガスの富豪ジェラルド・ヘンダーソンが造らせた1万5000平方フィートの超豪華版のようなものも。それは地下浴場と地下プールを備えていた。※核戦争の直後は、「水」がいちばん貴重だからね。
 次。
  David V. Gioe 記者による2017-7-2記事「The History of Fake News」。
     1941-10にUボートが米駆逐艦『キーニー』を撃沈し11人戦死。FDRは27日に、今にも対独参戦しかねぬ調子の怒りのラジオ演説をぶった。
 じっさいには『キーニー』が執拗にUボートに対して爆雷を投下し、Uボートはそれに反撃しただけであったが、それには触れず。
 FDRは、〈じぶんはヒトラーの秘密地図を持っており、そこにはヒトラーが南米と中米とパナマ運河を支配する計画であることが表されている〉〈その次のヒトラーの目標はあきらかに合衆国だ〉とまでラジオで語った。
 ゲッペルスはただちにFDR演説に反論した。このときはゲッペルスが正しかった。秘密の地図とやらは、NYCのロックフェラーセンタービル44階にオフィスを構えていた英国諜報機関の「安保調整局」が捏造したものだったのだ。
 英国には前科がある。WWIに合衆国をまきこむために、1917-2に「ツィンメルマン電報」を用意したのだ。じつは英国は米国の外交暗号を解読済みだった。その事実を秘匿するためにカバーストーリーもでっちあげた。
 内容は、〈もしも合衆国が対独宣戦したらメキシコはドイツ側に立って参戦してくれ。その代価として、もともとメキシコ領土であったニューメキシコ州、アリゾナ州、テキサス州を、ドイツからメキシコに返すよ〉という電報をドイツのツィンマーマン外相が打ち、その暗号が解読された――というもの。
 ウィルソン大統領は、すでに参戦不可避だと考えていたけれども、選挙公約を反転させるための正当化ネタが欲しかった。だから英国からこの「解読電文」なる捏造資料を手渡されるや、すぐに新聞へリークさせた。それは1917-3-1の朝刊大見出しになった。
 なんと2日後に、ツィンメルマン自身が、電報はホンモノだと請け合った。 2ヵ月後、米国は参戦した。
 1941のときは、「英国安保調整局」のステフェンソンと、米側OSS(47年にCIAとなる)のウィリアム・ドノヴァンが、同志関係にあった。
 偽地図をFDRのところへ持っていったのもドノヴァンである。ドノヴァンは、プロ軍人の高級将官たちや、FBIのフーバー長官以上に、FDRから気に入られる必要があった。
 ※これでイギリスがどうして2003年の米軍によるイラク占領作戦に付き合ったのか、理解できた。英国は、サダムが原爆など開発していないことを承知していた。しかしあそこでブッシュに騙されたふりをして参戦して苦労してやることによって、1917や1941の工作に関して米国マスコミが将来も英国を悪く言うであろうことの印象宣伝を将来にわたって相殺できるだろう、と計算したのだろう。
 ※もうひとつ。ウィルソンもFDRも馬鹿じゃないはずである。馬鹿には大統領選挙は勝てないのである。ボスこそがそれらを望んでいたのだ。下僚はそれを用意した。それだけ。


米陸軍の多用途運輸艇『LCU2007』号の沼津海浜達着(ビッグレスキュー2017)の写真と解説は、来週頃に。お楽しみに!

 ストラテジーペイジの2017-7-1記事。
  中共が『071』級LPD(ドック内蔵型強襲揚陸艦)の5隻目を6月に進水させた。就役は2018予定。
 1番艦は2007に就役。2番艦は2011就役。
 現在、6番艦も建造中だ。南シナ海で需要がある。
 全長210m、2万トン。飛行甲板にヘリ4機。艦尾にウェルドック。
 ウェルにはホバークラフト×4と小型LCU×2を収容できる。
 兵隊800人とAFV×20両も運搬できる。
 比較。
 米サンアントニオ級は2万5000トンでクルー396人。
 仏ミストラル級は21500トンでクルー180人。
 『071』はクルー120人である。建造コストは1艦3億ドルと信じられる。
 次。
 Jennifer Griffin, Lucas Tomlinson 記者による2017-6-29記事「Trump foreign policy: American military increasingly involved in Yemen civil war」。
  昨年10月、紅海にて、イエメンのフーチ(要するにイランの手先のシーア派ゲリラ)が、2発の対艦ミサイルを、米駆逐艦『メイソン』など2艦に向けて発射した。これに対して『メイソン』から艦対空ミサイル3発が放たれ、敵の2発を阻止したという。
 これは軍艦が、自艦に向かって飛来する敵ミサイルを阻止するために個艦防禦ミサイルを発射した最初のケースだと信じられる。
 ※おっと……? とっくに英海軍の1艦が短距離艦対空ミサイルで敵の対艦ミサイルを迎撃し、自艦防衛を成功させていたはず。
 数日後、米艦『ニッツェ』からトマホークミサイルが発射され、イエメンの沿岸レーダー3基を爆破した。
 ※国際油価を下げ続けることでイランを打倒しようとサウジは思っていたのに、それでは米国内のシェール投資が行き詰まるから米国が掣肘し、その政策が続けられなくなった。ロシア大よろこびだ。サウジはもうしょうがないからイエメンを砲爆撃し続ける。サウジにいわせれば、米国がさっさとイランを滅ぼさないから悪い。イスラエルの念願も、まったく同じである。しかし親イスラエルのトランプ政権がこの調子だということは、イランは核武装からはまだ相当に遠いところにあるという傍証だろう。だとしたら、今、北朝鮮を羨んでいる唯一の国家が、イランだろう。