仕事机の下に足踏み式充電器を置こう! Set small pedal cycle recharger beneath your working desk.

 座り仕事を長時間続けていると下半身の血行は悪くなるは筋力は衰えるはでロクなことがない。
 だが、もし、エアロバイクのものすごく小さな回転半径のものがあれば、仕事机の下に置ける。それで問題は一気に解決するはずだ。
 健康に良いというだけではない。この目立たない下半身運動は「貧乏ゆすり」の代用となるので、デスクワーク中に襲い来る睡魔と闘うことが容易になるだろう。
 仕事効率も学習効率も著増するはずである。
 それだけではない。この超小型エアロバイクに発電機を組み込めば、そこで生産された電力を、バッテリー式OA機器(または携帯電話)にケーブルでつなげて随時に充電してやることができる。
 大のオトナが貧乏ゆすりなどしていると、いかがなものかと周囲から白眼視されてしまうだろうけれども、「このようにしてOA機器を充電しております」と、立派な効能の説明が公的にできるならば、もはや職場の誰が文句を付け得ようか。
 日本の周辺国がわが国をミサイル攻撃した場合を想定し、とりあえず心配しておくのが合理的なのは「停電」の事態である。
 どこかへ走って避難するにしても、誰かを助けるにしても、足腰がウォームアップされていなかったらどうしようもない。
 この小さな発明品が、きっとあなたの危機を複合的に緩和してくれるであろう。


コンビニ弁当の平面形を真円とするか、さもなくば家庭電子レンジを廻皿式でなくてフェイズドアレイ化して欲しい。

 Ankit Panda 記者による2017-4-18記事「Is North Korea Working Toward a ‘Carrier-Killer’ Anti-Ship Ballistic Missile?」。
      4-15に試射失敗したのはKN-17だと米軍発表。液燃単段。
 1週間前には、それはKN-15=北極星2だと言っていたが。
 四月五日に発射されたKN-17〔米軍呼称〕は、高度189kmまで上昇したあと、下降中に、螺旋状の軌道を画いていたという。水平落達距離は60kmだったが。
 パレードに出てきたロシア製のKh-35は亜音速の対艦巡航ミサイルである。北鮮海軍の所管らしき塗装色。
 落下中に機動自在なRVのことをMaRVという。
 北極星2の試射のあと北鮮は宣伝放送で、迎撃を回避できると証明されたとか宣伝した。北極星2のRVには空力フィンはついていないのだが、一連の開発は、どうやらABM避けが目的なのだろう。
 ※螺旋式に落ちるだけの単純回避機動。しかしTHAADやペトリに対しては有効だろう。
 次のような見方も可能である。4-5の試射の3日後の4-8に米軍パシフィックコマンドが「カールヴィンソンがそっちに行くぞ」と発表した。北鮮としては、4-15に、その舳先前への警告射撃のつもりで「ナンチャッテASBM」のKN-17を発射した〔※数秒後に爆発した。その失敗原因も空力フィンか? 一説には、これは自爆信号ハッキングだともいう〕。ところで、それがもし狙ったところまで飛んで着水したとしても、『カールヴィンソン』艦隊は、半島へはちっとも近づいておらずに、むしろスンダ海峡へ遠ざかっていたのであった。北鮮にはOTHレーダーを筆頭とする海洋ISRアセットは皆無に近いという恥が晒されてしまった。
 ※なるほど北鮮としては米機動艦隊はさすがに黄海には入ってこないだろうという強い予断があり、日本海側から現れると踏んだのだな。しかし電力喰いのOTHの運用は北鮮には夢のまた夢であろうよ。
 次。
 ALEX HORTON 記者による2017-4-18記事「’Sand Castle,’ a film written by an Iraq veteran, is fiction shaded by war’s realities」。
   クリス・ロースナーはオハイオで2001夏に米陸軍に新兵入隊した。17歳だった。動機は、まずGIビル(復員兵大学進学補助金)の資格を得て、それから南カリフォルニア大学の映画プログラム(すでに受講はOKされていた)へ進学しようというものだった。
 ロースナーは第四歩兵師団の兵卒として2003-4のイラク作戦を実体験した。それを元に脚本を書き上げた。
 2017-4-21にそれがネットフリックスで配信される。ビデオ映画『サンド・キャッスル』だ。
 イラクとアフガニスタンの元従軍兵たちがこれまでいろいろなものを書いてきた。しかし、元従軍兵がそれについての映画を製作して大手からリリースするというのは、今回が初めてだろう。ロースナーは今、33歳。
 ロースナーは、ティクリトを占領していたときに、官品のラップトップで、オリバー・ストーンの『プラトゥーン』を初めて視た。
 これに刺激されたロースナーは、仲間の兵隊が語る言葉をメモに書きとめておくようにした。
 映画のロケ地はヨルダンである。
 近年の米国の体験的戦争映画は、特殊技能を有する経験豊富な特殊隊員が主人公というものばかり。それの逆を行った。
 こだわったのは「ヨゴレ」である。流行の戦場再現映画は、軍服、銃器、皮膚のヨゴレのすべてが嘘臭すぎていると彼は考える。その再現を特に真に迫らせた。
 ロースナーは退役軍人だけが資格を得られる「パット・ティルマン」財団の奨学金が得られた。おかげで南加州大学の映画製作修士課程を2011に修了し得た。


いったい戦後の「科学教育」には成果はあったのだろうか?

 Adam Weinstein 記者による2017-4-11記事「Why The Pentagon Is A Pentagon, And 6 Other Weird Facts About DoD’s HQ」。
 ペンタゴンにはエレベーターがなかった。そしてトイレは標準の二倍ある。どうしてか? 『スミソニアン・マガジン』が教えてくれている。
 1941年にFDRが、手狭になった陸軍省の引越しを考えた。職員は2万4000人いた。ついでにその新ビルには海軍省も入れることにした。
 陸軍省の建設局が三日でラフスケッチを仕上げた。あわただしく買収されたのが、ポトマック川のヴァジニア州岸のアーリントン墓地に近い、五角形の土地だった。
 戦時の物資大動員中であり、鉄材は極端に節約する必要があった。だから高さは5階までに自制された。建設請負業者は、ジョン・マクシャインである。
 しかしFDRが、その立地だと国立墓苑から連邦議事堂が見晴らせなくなることになってよろしくないと判断し、もっと東に建てるように命ずる。そこにもとから暮らしていた、南北戦争後の解放奴隷の子孫たちは、追い出された。
 かくして広い土地が手当てできたために、もはや建物を五角形にする必要はなくなったのである。しかし元のデザインは、低層建築であるため太い鉄骨などが不要で、当時貴重だった鉄資源を節約できる。しかも、連邦議事堂がどこからでもよく見える周辺の景観の障碍にもならないという点もプラスに評価され、そのままとされた。
 ペンタゴンビルは1943-1に竣工した。その外観が見苦しいという政府内委員会の声は斥けられた。
 資材節用の折から、職員用のエレベーターも割愛された。ただ、荷物用が13基だけ設けられた。
 上下階への移動には、職員たちは、コンクリートの斜路を歩いたのである。
 しかしさすがにこれでは不便だというので、ついに2011年には70基の人間用エレベーターが新設されている。
 陸軍省の中でこのビル建築を担当させられたのは、東部出身の典型的都会人で陸軍工兵隊の大佐であったレズリー・グローヴズだった。あまりにも心労が多かったため、彼は、欧州か太平洋かの戦場へ転勤させて欲しいと願っていたという。
 ところが彼はこの難事業を非常にうまくやり遂げたので、次に命じられた仕事は、もっとデカい超難事業となった。ニューメキシコでマンハッタン計画の総指揮を執るように、といわれたのだ。
 建設作業中のグローブズの右腕は、ロバート・フルマン大尉だった。グローヴズはフルマンに、仕事が終わるまでは帰宅をするな、と命じた。そこでフルマンは、ペンタゴン内の武器庫の隣、壁と壁との間に、窓の無い、ベッドとシャワーのある個室をつくり、そこに寝泊りした。竣工から何年もしてフルマンが久々に確かめたところ、それはまったく当時そのままに、残されていた。誰も、そこに「秘密部屋」があることに気付かなかったようだ。そこでフルマンは、秘密任務の公務出張のさいに、この小部屋を借用したという。
 ペンタゴンには標準の二倍の数のトイレがある。これは、建てたところが首都ワシントン地区ではなくてヴァジニア州領だったことが関係する。1940年代、同州では人種隔離法が生きていた。だから州法に従って、黒人専用のトイレが必要とされたのだ。
 FDRは1942-春に建設中のペンタゴンを視察してこの問題に気付き、6月に、連邦職員に人種差別することを禁ずる大統領令に署名した。ヴァジニア州知事は、ペンタゴン施設に関してそれを尊重することとした。
 ペンタゴンの中庭にはホットドッグ屋台があって、毎日、おびただしい職員が往復する。この異常な「動線」をソ連軍は冷戦期のスパイ衛星写真で確認していたはずだ。そこに秘密の地下施設への入り口でもあるのではないかと疑ったかもしれない。とうぜん、ICBMの照準もそこにはつけられている。職員たちはホットドッグ店を「カフェ・グラウンド・ゼロ」と綽名した。
 ※北朝鮮をめぐっては実に馬鹿々々しい言説が飛び交っており、戦前並に非科学的な思考パターンがいまだに多いことに辟易させられる。広島型原爆は、長崎型とちがって、実験しなくとも爆発は確実だと考えられ、最初の爆発がいきなり実戦投下だった。しかし、B-29による本番さながらに手順を確認する投下予行演習は事前に二十数回も反復されているのだ。これを指揮したのがグローヴズだ。併行して、超重量級HE爆弾をB-29に1発だけ積んで、昼間に日本の工場に精密に投弾させるというデータ取りのための実験も繰り返されている。「予行実験」や「手順訓練」をしているかどうかが、その装備の実在を推定する鍵なのだ。音速の数倍で落下するRVが地表から1000m未満の高度できちんと爆縮起爆するかどうか。「カラ撃ち」のテストを一回もしてみないで、どうしてそれを本番に使う気になれるのか。テストはテレメトリー装置を使うしかないから、周辺国はやったかやらないかを確実にモニターできるのである。もし予行テストなしに実弾頭を搭載して発射し、なけなしの「原爆」とやらが不発のまま敵国領土に落ちて回収されてしまったらどうするのか? 少しは常識を働かせろといいたい。「化学弾頭」についても同様である。それを使った弾道弾を撃ち込む演習を一度もしたことがないものをいきなり本番で使用させても、期待通りの戦果など生ずるものではない。「地下鉄サリン事件」は、地下鉄車両や駅構内の閉所空間だったから、揮発したガスが消散せずに滞留し、著効を示した。あれが開放空間だったら、死者はゼロだったろう。
 次。
 Natalie Johnson 記者による2017-4-16記事「Retired Pacific Fleet Intelligence Chief Calls for Tougher Military Policy on China」。
  ジェイムズ・ファネル海軍大佐(今は退役)のとても頼もしい議会証言。
 ファネルは退役前の最後の議会証言――2017-4-13の「米支委員会」にて――で、尖閣を中共が電撃戦で取りにくるのが最大脅威だと。
 2月に訪日したマティスは日米安保条約の第五項を挙げて、日本の領土を守るのが米国の公的な立場だと。
 ファネルは言う。米海軍が東シナ海で、中共ともめごとを起こすのを恐れているような方針をとっているのは、大有害であると。
 米海軍が紛争の可能性を予期するがゆえに行動をためらってしまうことが、習近平にとっての米国操縦の道具になっている。
 自由航行は米国のコア・インタレストである。これを北京からの脅しで自粛するようでは話にならない。
 米海軍も、米空軍も、米海兵隊も、日本当局とともに尖閣海域をパトロールすべきである。
 また、リムパックに中共海軍を招待するのもやめろと。
 ※クリントンはクリーンヒットにこだわったあまり、1994に攻撃を自粛した。核施設だけミサイル空襲して、平壌には最初は手をつけず、同時に「もし北鮮が京城や東京を攻撃したなら、米国は同盟条約に基づき、侵略国の首都を狙った報復攻撃を実行する」と警告宣言すれば、北鮮はもう手も足も出ない。NYCに届く核ICBMが無い段階で、京城や東京を北鮮から先に核攻撃すれば、米国は何の後顧の憂いも無く平壌を核で吹っ飛ばせるだけの話である。「だらだら戦争」の開始こそが中共に「北鮮始末」を強制する政治であることは、すでに論じた。
 次。
 ストラテジーペイジの2017-4-17記事。
   米海兵隊はAH-1ZとUH-1Yに「落下式増槽」を搭載することによって行動半径を25%伸ばしたい。
 標準的なドロップタンクだと、空のときは50kg。満タン292リッターの燃料の重さが237kgなので、プラス50kgで約300kg弱となる。
 次。
 本日のロシア仕込みのフェイクニュース「Russia to Develop Nuclear Round for T-14 Main Battle Tank」。
  ロシアはT-14の主砲を152ミリにして、核砲弾を発射できるようにするという。
 ※そのタマがクレムリンの方角に向かって飛び出したらどうすんの? 常識で考えろってな。


イスラエル型の「だらだら交戦」が、最速展開で金王朝を安全に交替させる

 「ちょっとばかり核武装した国がもし米国を核兵器で脅迫すれば、米国はその政体を転覆させる」――という現代国際政治史上の“前例”“教訓”が今、創られつつある。
 おそらく、西太平洋域での核の拡散を歓迎できないわれわれ日本人、および全世界のほとんどの人々にとって、良いニュースになることであろう。
 米国が、油断のない方法で北朝鮮に対する「だらだら攻撃」(後ほど詳述)をマネージできるなら、それは実現するだろう。
 しかしトランプ氏が「いま北朝鮮を崩壊させておくことの意義」を深く理解しているかどうかには疑問もある。彼は中東人の考え方はあるていど呑み込んでいるものの、儒教圏(中共および朝鮮半島)のことはサッパリわかっていない。
 そこからは、もうひとつの疑問も生じる。トランプ政権内には、金王朝を打倒するための巧妙な策を考えてきた者など1人もいやしないのではないか――?
 もしもその通りだとすれば、そもそも朝鮮半島への関心などゼロに近かったトランプ氏には、「攻撃命令」を出す前にその胸中に迷いが生じても当然であろう。
 かれこれ総合して、わたしは米軍はすぐには北朝鮮に攻撃は仕掛けない(仕掛けられない)だろうと疑っている。(この寄稿文を書き上げた4月14日時点での判断である。)
●きっかけがなければ「攻撃」はできない米国政体
 朝鮮戦争の休戦以降、歴代の米国政権は、北朝鮮をどうすることもできなかった。
 それには立派な理由があった。北朝鮮は、第三者を納得させられるような理由なしに米国人を狙って殺害する「国家後援テロ」を、実行していないからである。
 したがって米国から見た北朝鮮は、革命後のイランや核武装後のパキスタンよりも、米国側からの攻撃(コマンドー作戦やキラー・ドローン空爆をも含む)を仕掛け難い対象だったと言える。
 特殊な有人偵察機(SR-71など)を使った強行領空侵犯ぐらいが、せいぜいできることの限界であった。
 米国指導層はホメイニ革命後のイランを甚だしく憎む。その憎しみの強さは対北朝鮮の比ではない。それでも米国政府は、イランに思い切った軍事攻撃を仕掛けることはできない。
 なぜなら、米国側からの戦争開始を国際慣習法的に正当化できるような「きっかけ」をイランが一貫して与えてくれないからだ。
 1979年のテヘラン米国大使館占領事件は、いかにも米国の上下を憤慨させた大事件であった。けれども、人質とされた米国籍の大使館員たちはけっきょく1人も殺されずに解放された。だから、事件発生直後の即決リアクションとしてならばともかくも、事件発生から何十日も経過してしまった後では、超大国米国からのあらたまった戦争開始事由は、掲げ難くなった。(その有権者のフラストレーションは、宥和主義者ジミー・カーターを大統領選挙で大惨敗させてホワイトハウスから逐い出すことに焦点を結ぶ。)
 2003年に米国がイラクの全国土を占領する作戦を発起した時のブッシュ(子)大統領の決断の材料のひとつには、湾岸戦争で敗退したサダム・フセインが、その私的復讐としてブッシュ(父)大統領個人を暗殺させようとしたプロットの認定があったと推量される。
 米国指導層の要人を意図的に殺害しようとするような露骨な反米テロ政府に対しては、米国政府および連邦議会として、どんな容赦もする必要がなかった。
●「体制の安泰」に関する北朝鮮の勘違い
 それならば、リビアのカダフィ政権は、どうして2011年に転覆させられてしまったのか? 北朝鮮はこれについての根本的な勘違いをしているようである。
 カダフィ政権は――北朝鮮が核武装努力の表向きの論拠としているように――米ソ冷戦の末期に核武装を諦めてしまったが故に米国によって滅ぼされたわけではない。
 2011年の米国オバマ政権にとって、アラブ世界の非民主的体制は、すべて気に入らない存在だった。その気に入らない政権が国内動乱で崩壊しそうな兆しが見えたときに、その動乱の火焔にガソリンを注ぎかけてやる外交は、オバマ政権(の特にNSCに列していた若造ども)にとっては、「安全・安価・有利」で、しかも「快楽」そのものだったのである。
 同年にやはり権力の座からひきずりおろされているエジプトのムバラク政権を見よ。
 彼の場合も、米国民主党政権内の同じ連中の「快感原則」が優先されて、運勢は暗転してしまった。
 ホスニ・ムバラクは、イラクのサダム・フセインのように大量破壊兵器の研究を命じたりしていない。ぎゃくに、イスラム・テロ組織を弾圧することにかけては「有能」だった。
 されどもオバマ政権のNSC内に巣食った(軍隊経験も無いポスト・ベトナム戦争世代の)小僧どもにとっては、ムバラク政権は単に「非民主的」なので、その追放騒ぎを見ることは、この上もない愉悦だったのである。
 皮肉にも、今のエジプト政権(2013年に宗教原理主義のモスレム同胞団政権をクーデターで打倒した軍事政権)が続けている、「国内反政府集団」に対する取り締まり、たとえば裁判無しの大量無期限留置や闇処刑などは、ムバラク時代と「人権無視度」において特段のへだたりがない。
 しかし「IS」が世界を撹乱するようになって以後の米政権にとっては、今のエジプトはじゅうぶんに「許せる」政体に評価があらたまっている。彼らが自国内の「IS」や「アルカイダ」系の運動を弾圧することで、米国人を間接的に安全にしていると言えるためだ(シナイ半島でイスラエルを困らせている点については、これからの問題になるだろう)。
●リビアが核武装したとしたら、もっと早く潰された
 もし2011年のリビアが米国本土には届かない核爆弾を少数、保有していたとしよう。その場合、「反カダフィ」の内戦が米国主唱で焚き付けられたことは疑いがない。そして米軍も「NATOの黒子」役には自重してはおらずに、最初から堂々と介入をしてカダフィ体制をすみやかに終焉させ、核専門の米軍特殊部隊が、リビア国内のすべての核兵器・核物質・関連システム・製造設備・関連重要人物の身柄等を確保し、国外(公海上の空母またはイタリア内の米軍基地)へ移送したであろう。
 またもし2011年のリビアが、既に核爆弾は保有済みで、その上に、北米東部の大都市に届きそうな核ミサイルも間もなくして保有できそうだというクリティカルな段階にさしかかっていたとしよう。
 その場合、時のリビアの外交に何の落ち度もなくとも、米国政府は「開戦環境づくり」と併行して理由を設けて先制攻撃に踏み切り、やはり地上軍と特殊部隊も送り込んで、リビアの核能力を確実に「廓清」したであろう。カダフィが過去に西欧で実行してきた無差別テロの前科が、1986年の西ベルリンでディスコを爆破して米兵1人などを殺した一件も含めて、マスメディア上で強調されたはずである。
 これからイランが核武装しようとした場合には、核ミサイル保有の前の段階、すなわち、最初の投下式の核爆弾が実用化される前の時点で、米軍による攻撃は始まるだろう。さもないとイスラエルが待ちきれなくなって先にテヘランその他への核空爆を開始してしまうからだ。この場合も、イラン大使館人質事件が、米国内のマスメディアを通じて再宣伝されるはずだ。
 しからば昨今の北朝鮮は、米国にとり、パキスタンのような「まだ許しておける」存在なのか。それとも「核ミサイル保有5秒前の架空カダフィ政権」的な存在であるのか?
●オバマ時代の空母派遣と今回の類似
 2010年のオバマ政権は、北朝鮮を「まだ放置しておいてよい国」と判断している。
 回顧しよう。第1期オバマ政権の2年目にあたる2010年11月23日に、北朝鮮軍がとつじょ、韓国の延坪島を砲撃した。
 このときオバマ大統領は、朝鮮半島に米海軍の空母艦隊を向かわせる姿勢を演出したものの、何の攻撃も命じなかった。グァム島所在の戦略爆撃機の動きと同様、ただ西側のテレビのニュース・ショーに映像ネタを供給しただけだった。最初から、戦争する気など無かったのである。
 オバマ氏には、しかし、その「余裕」は許されたのだ。彼のもとには、北朝鮮があと2年(政権1期目のおわり)や6年(2期目のおわりの2013年)以内に「核弾頭付きICBM」など持つことは、とうていできやしないと、彼をして総合的に確信させるに足るだけの情報が集められていた。
 したがって、「核兵器で米国を脅せるようになった北朝鮮の処分」という難問は、次の誰かの政権に先送りしてもよかったのである。
●トランプは「歴史に残る汚名」を甘受できるか?
 だが、トランプ氏には、問題の先送りが難しい。いくらなんでも、あと8年もあれば、初歩的な北朝鮮製のICBMが1基か数基ぐらい、できたとしてもおかしくはない。
 その弾頭はたぶんは甚だ低出力(せいぜい数十キロトン)のできそこないの強化原爆で、上昇中にロケットが折れたり、大気圏再突入時に弾頭が燃え尽きたり、不発におわったり、狙った大都市から大きく外れる蓋然性だって高いだろう。
 メガトン級でないキロトン級のICBMが現代の大都市域を数十キロメートルも外れれば、与える毀害はあっけないほどに小さくなる(だから1950年代の米戦略空軍は、メガトン級の水爆を重さ2トン未満に軽量小型化できる技術的見通しが得られるまではICBMの配備など無意義であるとして当初、開発を閑却していた)。
 しかし、想定リスクとしては、ニューヨークの市心に「トランプ・タワー」を構える米国大統領が無視を決め込んでよい敷居を、それだけでも、もう越えてしまうのだ。
 もしマンハッタンの上空1000メートルかそれ以下の高度で1発でも原爆が爆発してしまえば、トランプ大統領は、自身の本拠地であるマンハッタンをむざむざ人の住めない街にさせてしまった筆頭の責任者として、米国史に汚名を永久に刻まれてしまうのである。
 放射能まみれの廃墟と化した「トランプ・タワー」は、臆病な金満指導者の弊害を未来の米国有権者が決して忘れぬための歴史モニュメントとして、保存されるだろう。
●トランプが対北鮮攻撃を厭でも決めなければならない時期は?
 北朝鮮は、出力がメガトン級ながら重さ2トン未満の水爆を、持ってはいない。そのような実験も当分できないだろう。先輩核武装国であるインドやパキスタンやイスラエルすら、そんな高機能な水爆はまったく手にできていないのだ。
 しかたがないので北朝鮮は、弾頭出力については大いに妥協をして、とにかくニューヨーク市に届かせることのできる、「とりあえず原爆弾頭付き」のICBMの完成を、急いでいるところであろう。
 わたしは個人的には、北朝鮮は広島・長崎級の実用原爆すらもまだ保有してはおらず、核分裂爆発実験は2006年10月9日に装置型を一度成功させたきりで、あとの「地下実験」はすべてフィズル(過早破裂による不完爆)におわっているか、硝酸アンモニウム肥料爆薬を地下坑道で発破したフェイク(偽装地震波発生)であろうと見ている。
 しかし本稿では敢えて、流布されている宣伝や憶測に付き合おう。
 北朝鮮が、出力数キロトンの原爆弾頭を、なんとか全重1トンに抑え、それを載せてかろうじてニューヨークまで届く多段式の弾道ミサイルの先端に、搭載できたものと仮定しよう。(これは仮定の上に仮定を重ねた、技術相場値の上でほとんど考え難い想定であることは尚も強調しておく。)
 実験試射であれ、実戦攻撃であれ、まず、その大型の弾道ミサイルを垂直に立てて発射しなければならない。
 ここで北朝鮮は、解決不可能な難問に直面してしまう。
●ICBMと中距離弾道弾では、移動展開の難度は段違い
 射程が1千数百キロメートル程度の2段式の弾道弾ならば、ふだんはミサイルの筒体を横に寝かせて、「TEL」と通称される「自走運搬発射台車両」の上に載せ、その「TEL」を山地の中の横穴トンネル内に隠しておいて、発射の直前にトンネルから「TEL」を出して路上を少し移動させ、座標が正確に測定されている適宜の発射点に停車させた後、すみやかに筒体を垂直に屹立させて、ロケットモーターに点火すればいい。
 ところが北朝鮮領内から北米大陸のニューヨーク市まで1万1000キロメートルも飛んでくれる2段~3段式のICBMとなると、北朝鮮のロケット技術では、どのようにしても「TEL」に載せられるような寸法にはまとめられっこないのだ。
 第1段目は、太いブースターロケットを複数本束ねたものにするしかないだろう。それは「TEL」の車幅を大きくはみ出してしまうので、平坦な道路を直進走行させただけでも車体がバランスを崩す危険がある。否、その前に、ミサイル全体を横に寝かせたときに、ギリギリ薄くされている筒体の外殻に無理な応力がかかって、自壊してしまう危険が生ずる。
 全長も20メートルぐらいではとても収まらず、非常に長くなってしまうため、ロシアや中共しか保有していない最大級の「TEL」であっても、安全な積載は無理だろう。
 ということは、北朝鮮は対米脅迫用のICBMを「TEL」で機動的に運用することは、最初から企て得ない。車両による「路上機動」は、諦めるしかない。
 さりとて、露天式の発射台に固定的に据えたりしたら、その準備段階から「対米核攻撃の兆候」を米国に認定されて、米軍の先制空爆で除去されてしまうことは必至である。
●トランプの「つぶやき」の真意は?
 トランプ氏は大統領に正式就任する直前の2017年1月3日に自身のツイッター上に「北朝鮮はさきごろ、米本土に到達できるひとつの核兵器の開発の最終段階だと声明した。そうはさせんよ(It won’t happen!)」と書き込んだことがあるのを思い出そう。
 軍事専門家の誰かがあの時点で早々とトランプ氏に「ICBMは中距離弾道弾とは違って巨大ですので、おいそれと移動などはさせられないものです。そんなものが露天発射台に据えられようとした時点でわが偵察衛星は探知ができますので、あなたが即座に空襲を命じてくださりさえすれば、発射準備が整う前に、絶対確実にわが軍からのミサイル空襲で爆破してやれますよ」とレクチャーをしたのだとわたしは思っている。
 すでに北朝鮮政府は〈米国を核攻撃する〉と何度も口先で脅している。いまさらそれは取り消せまい。
 そのあとで、たとい試射用であろうとも、ICBMなどを発射台に据えたなら、米国はそれを即座に先制空爆して発射台ごと破壊してよい事態が生じたと考える。米国有権者が完全に納得できる「開戦理由」である。ましてトランプ政権ならば、決行は確実だ。
 したがって北朝鮮は、露天発射方式ではない方式をなんとか工夫しないかぎり、米国を攻撃できるICBMを手にする日は、永遠にやって来ることはない。
 それならば「鉄道機動式」とすれば、どうか?
 ロシアのような広大な国ならばそれは合理的オプションたり得る。
 が、北朝鮮のような狭い国で、既存線路の保線すらまままらなくなっている経済失敗国家であると、既存のレールをミサイル移動用に利用するにしても、新規に専用線を建設するにしても、その作業を米国の偵察衛星から隠すことはできない。
 移動中を空爆されて、おしまいだろう。
●地下に「秘密の大基地」を造るしかない
 そうなると、残されている現実的な方法は、ICBMを最初から垂直に立てたままで、鉄道軌条の上をゆっくりと水平に移動させられるような、天井の非常に高い「横穴トンネル基地」を新たに整備して、山岳中の「垂直坑」からそのミサイルを奇襲的に発射するやり方以外にない。
 この大規模な大深度地下工事を米国国家偵察局(NRO)のマルチスペクトラム偵察衛星(地下構造物までも見分けることができる)から隠して進めることも、おそらくは難しいだろう。
 北朝鮮からニューヨーク市に届かせるのに必要な弾道弾の飛距離は、ロシアのICBM以上だ(ロシアのICBMサイロの方が北朝鮮よりも北米東部の大都市に近い)。
 ロシアよりも数等遅れた技術しかもっていない北朝鮮には、ICBMの全システムを、ロシアのICBMのように都合よくコンパクトにまとめることはできない。
 なかんずく、ICBMの全段を工場で組み立て終えて、燃料が入った状態で横に寝かせることは、北朝鮮には不可能なのである。
 高さ30メートルかそれ以上もある縦長楕円形の横穴トンネルと、軌条と縦坑と台車の組み合わせでICBMを地下空間から発射できるようになるまでに、北朝鮮の土工能力では、まず2年は必要だろう。
 しかし縦坑がひとつきりでは、最初から位置固定の硬化地下サイロと同じで、米軍が先制破壊して潰してしまうことはたやすい。
 垂直坑の生残性を高めるために、縦坑を複数化するとなれば、北朝鮮の工事能力では、4年かかるかもしれない。(硬化地下サイロを複数設ける場合も同じ。米ソのICBM用の強化コンクリート・サイロは、1基の工期が2年以上かかったとされている。)
●トランプ氏、早くも「2期目」は諦めた? 
 これはトランプ氏には朗報である。もしトランプ氏が「2期目」を諦めるつもりならば、2010年のオバマ氏と同じ判断も可能だ。すなわち「空母艦隊は派遣してみせるが、北朝鮮空爆は命令しない」。それで当面、米国は困らないのだから……。
 だがもしトランプ氏が2期目も狙うのならば、そして歴史に汚名を残したくなければ、今のうちに禍根は断っておかねばならない。8年間も傍観すれば、地下発射施設が複数整備されてしまうおそれがあると、誰でも考えられるだろう。その間には、イランやその他の危ない国も、核武装に近づくかもしれない。ぼやぼやしている暇は無いはずなのだ。
 では、具体的にはどんな方法があるだろうか。
 まずホワイトハウスの立場になって考えると、「空母からの空襲」は、できるだけ避けたいオプションである。なんとならば、海面のロケーションが悪すぎる。
 黄海から作戦するとすると、中共領の大連海軍工廠や旅順軍港の目と鼻の先に米海軍の機動艦隊が遊弋することになる。
 中共は、漁船団の「海上民兵」を含めたあらゆる手段でそれに対して各種の妨害を加えるにきまっているだろう。さもないと中共中央が中共軍から激しく詰め寄られてしまうからだ。
 ホワイトハウスは、攻撃が開始される前から中共との予期せぬトラブルに対応せねばならなくなる。そこから先の「詰め将棋の手」を考えるどころではなくなってしまうだろう。
 日本海側から作戦する場合も、同じだ。そこはウラジオストック軍港から指呼の間である。おちぶれたりとはいえどもロシア海軍が、黙って傍観するわけがあろうか。黒海やバルト海で最近繰り返しているNATO艦艇へのイヤガラセを何倍にも強化したような、空・海からの妨害行動に出てくるであろう。
 だからトランプ政権としては、対北朝鮮作戦に空母を使う気なんて最初から全くないだろうとわたしは考えている。
 対北鮮の有事において米空母艦隊に何か役目があるとすれば、それは真の攻撃軸から敵の目を逸らしておくための「囮(おとり)」、すなわち「陽動/陽攻」用としてだけだろう。
 しからば、派手な煙幕ではない主力の攻撃手段とは何なのか?
●巡航ミサイルは、ここでも重宝する
 中共やロシアからいっさい邪魔をされずに、北朝鮮の核施設とICBM発射台を奇襲的に破壊してしまえる手段としては、まず「潜水艦から発射する巡航ミサイル」に指を屈するのが穏当だ。
 ステルス爆撃機の「B-2」や、ステルス戦闘機「F-22」に空爆させるというオプションは、万が一にもその有人機が墜落したり、乗員が北朝鮮の捕虜になるというリスクが、政権1年目のトランプ氏としては、ほとんど受け入れ難いため、空母からの有人機による爆撃と同様に、選ばれることはないであろうとわたしは考える。
 ところで、既往の戦例にかんがみれば、巡航ミサイルでは、敵の要人を爆殺することはまずできない。
 だからこれまで、アフリカや中東では、「巡航ミサイルは決着性にとぼしい兵器だ」と思われてきた。問題をなにも解決しないで、ただ、米政権が自己宣伝して自己満足するだけの道具なのだ――と。
 じっさい直近のシリアでも、シリア政府軍の航空機とその掩体壕等は正確に59発のトマホークで破壊されたけれども、基地機能そのものはじきに復活した模様である。
 あきらかに、巡航ミサイルだけでは、戦争は決着してはくれない。
 しかし、トランプ政権がひとたび巡航ミサイルによる北鮮攻撃に踏み切れば、おそらく「金正恩体制は崩壊する」と、わたしは予言することができる。
 すなわち、こと、相手が北朝鮮である場合に関してのみ、米国の「巡航ミサイル主義」は、とても正しい。それがいずれ立証されるであろうと思う。
●米兵は1人も死なない「だらだら交戦」が可能
 その理由を説明しよう。
 対地攻撃用の非核弾頭の巡航ミサイル「トマホーク」は、北朝鮮の核関連施設とICBM射場施設を、ほぼ2日のうちにすべて機能停止させるであろう。(第一波の攻撃終了後、日の出後の偵察衛星写真によって破壊状況を判定して、念を入れて第二波攻撃を加える必要がある。よって1日では片付かぬ。)
 しかしそれがうまくいっても、北朝鮮軍が機能停止するわけではまったくない。
 その結果、どうなるか。
 米軍と北朝鮮軍は、緩慢な戦闘を再開することになる。(朝鮮戦争は法的にはまだ終わっていない休戦状態であるので、あくまで「開戦」ではなく「戦闘再開」だ。)
 といっても、血みどろなものではない。北朝鮮の砲弾は米軍基地には届かないし、米兵も1人も死なない。彼我の実力差をよく知る北朝鮮指導部は、韓国内の米軍基地を地対地ミサイルで攻撃することも自粛するはずである。首都平壌が空爆されない限りは……。
 北朝鮮の工作員みたいな者たちがあちこちで叫んでいるような、38度線沿いの北朝鮮軍砲兵部隊による大規模な京城市街砲撃は起きない。なぜなら、そんなマネをすれば、韓国空軍機による平壌爆撃に米国がGOサインを出すと、平壌は知っているからである。
 今日の空軍機が運搬できる爆弾の重量は1回につき数トン。それに対して、射程の長い大砲やロケット弾の充填炸薬は、数十キログラムでしかない。破壊力でも射程でも、比較にはならないのだ。
 念のため注記しておこう。「北朝鮮空軍」なるものはとっくに存在していない。燃料が無く、パイロットの訓練ができず、したがって空軍機による空襲をしたくてもできないので、北朝鮮はやむをえない選択として、大砲やロケット弾や地対地ミサイルにばかり頼っている次第だ。
 現代の軍隊が、燃料油が無いのに「南進」などできないことも、いまさら説明するまでもないだろうと思う。
 短距離弾道弾や、中距離弾道弾は、平壌政府が終戦交渉の切り札として、山の中の横穴トンネルに、最後まで温存しようとするだろう。もちろん、「核爆弾」もだ。
 ところで、シリアとは違って、北朝鮮内にはロシア兵などの余計な邪魔者は存在しない。だから米軍は、巡航ミサイルで「目標A」群を破壊したなら、翌日は「目標B」群、その翌日は「目標C」群……と、誰にも気兼ねをすることなく延々と、巡航ミサイルによる攻撃を継続することができる。
 北朝鮮国内には、政治犯を強制労働させながら衰弱死に追い込んでいる収容所がたくさんある。米軍が巡航ミサイルでそれら施設の看守棟をひとつひとつ破壊すれば、内外に対して、これが「人道戦争」であることを明快に宣伝できるだろう。
●「だらだら戦争」で中共が動き出す
 この、遠くの海からひたすら巡航ミサイルだけを撃ちかける「だらだら攻撃」が続く状態が、最大の打撃を与える対象は、じつは中共なのである。
 米朝が変則的ながらも常時の交戦状態となれば、黄海~渤海を利用して通航する商船、なかんずく天津港の物流機能は、戦時国際法の要請とぶつかり、大制約を受けざるを得ない。
 大連工廠の目の前にも常時、米海軍の北鮮沿岸ブロケイド艦隊(それは空母は含まないが海上自衛隊が封鎖活動を支援する可能性は高い)が蟠踞することになる。
 もちろんシナ漁民の誰もそこで漁労などできはしない。
 これは中共に対する米国からの「経済制裁」にも等しい大圧力だろう。
 トランプ氏は大統領選挙中から、中共の対米貿易政策を非難してきた。中共貿易がこのようにして打撃を蒙ることについて、トランプ氏は少しも同情しないどころか、それを愉快だと思える理由がある。
 米国と北朝鮮が交戦を再開することで、自動的に、中共から米国への輸出は半減する。東シナ海は「戦場の後方海域」となるので、世界の船員組合は「だらだら交戦」が終わるまで、同海域への乗務を拒否するはずである。トランプ氏の初志は、はらかずもこうして貫徹されるわけだ。
 こうなってはいよいよ中共も、金王朝の「転覆工作」を始動させるしかないだろう。
 それが、米国と北朝鮮との戦争を、意外にもスピーディに「決着」させることになるであろう。
 かくして、北朝鮮の核施設と核兵備に対して米軍が巡航ミサイルを発射することが、「金王朝終焉」への最短シナリオとなるのである。
●「だらだら交戦」術の大先輩は……?
 日本ではまったく報道されないので誰も知らないが、イスラエルは、周辺地のゲリラであるヒズボラおよびハマスと「365日いつも戦争」の状態にある。
 ヒズボラがイランから地対地ロケットなどを受領すれば、即座にイスラエル空軍機は越境空襲を仕掛け、それを爆砕しているのだ。多くはそれは、シリア領土内である。
 トランプ大統領の娘婿のジャレッド・クシュナー氏ならば、こうしたイスラエルの「政策」には、詳しいだろうと思われる。トランプ氏は、適当なアドバイザーをすでに抱えているわけである。
 空母艦隊は、作戦期間が半年を越えるような「だらだら攻撃」には向いていない。艦隊を数日間、特定海面で遊弋させておくだけでも、箆棒な経費が飛んでしまうものだからだ。
 対北朝鮮の「だらだら攻撃」の主役は、潜水艦と、駆逐艦などの水上艦艇から発射される巡航ミサイルである。
 残る最後の問題は、「いつ?」だけである。
●北京はすでに納得済み?
 わたしが『ニッカンペキスポ』とひそかに仇名している中共の英文政治宣伝サイト『Global Times』に4月11日、中共軍による北鮮核施設に対する空爆をチラつかせるテキストが掲載され、それは数時間後に忽然とウェブサイトから削除されたという。
 これは北京として、米軍が北朝鮮の核施設を空爆することについて半ば事前承認していることを強く示唆しているのだろう。
 北朝鮮が、次の核実験、もしくは次の長距離ミサイル発射を試みるときが、トランプ政権が決断するときであろう。
 ※注記。産経の『いろんな』に掲載された文章は、著者であるわたしの同意なく勝手に内容を変えられているものなので、削除を要求しています。


「意図」だけ較べると、損得度外視で東京に核を落としたい国は韓国だけ。北鮮も中共も損得ずくだからその選択は今ありません。

 Emanuele Scimia 記者による2017-4-9記事「Mixed signals for China, India from Russia’s S-400 in Syria」。
   シリア政府軍は、S-400を布陣展開済みだとされていた。
 ロシア製の地対空ミサイルのS-400は、最大射程が400kmで、その警戒レーダーは、飛来する敵ミサイルを最大600kmから探知できると吹かされてきた。
 しかしシリア政府軍はこのたび、沖合い数百kmの2隻のアーレイバーク級駆逐艦から発射された59発の低速巡航ミサイルに対して、ただの1発のSAM発射もできずに、シャイラット空軍基地はその全弾を喰らった。
 この陸地攻撃型トマークは射程1600kmである。
 米軍はEA-18Gグラウラーという強力な電子妨害専用機を有しているが、それでもS-400に対して万能ではないだろうと懸念をして、ホワイトハウスはトマホークを選択したのだ。
 つまり見方によってはS-400はその価値を大いに立証した。もしS-400がシリアに持ち込まれていなかったなら、米国は最初から有人機による空爆を加えたに違いないからだ。
 これは、S-400をロシアから買っている中共とインドの将軍たちにとっては、良いニュースだろう。
 ※日本のマスコミはもうじき戦争だ戦争だと盛り上がっているみたいですけど、正直、わたしはガッカリしています。というのは、B-1を飛ばしてみせたり、空母群を集中したりというデモンストレーションは、こと「対北鮮」に関しては、「アメリカはもう何もしないことに決めた」ということとまったく同義だからです。本気の場合には、1994年に実行されかかったように、西日本の飛行場に夜間にステルス機がこっそりと運び込まれるでしょう。今回ヒラリーがトランプを褒めたと伝えられました。それにも歴史的経緯があります。「ブラックホークダウン」事件のあと、時のクリントン大統領は、爾後はもう生身の米兵は紛争地へは送り込まず、対イスラムではひたすら海から巡航ミサイルだけを撃つだけ、対北鮮では実質何もしない(日本政府にBMDを次々と押し売りする傍ら、北鮮問題の解決責任は北京にあると口先で言い募るのみ)という「CMトリガーイッチ」路線に転換し、一部の人々はこれを臆病者の責任放棄政策だと非難しました。新聞見出しとTVフッテージは派手にできるが、トマホークで吹っ飛ばされるようなマヌケな敵要人は、いないのです(ビンラディンも軽症だった)。そのクリントンと同じ臆病路線をけっきょくトランプだって選んだわけです。ヒラリーは「お前さんもこれでわかったろ?」と言いたいのです。
 次。
 ストラテジーペイジの2017-4-11記事。
   3月21日、イランがロシアを非難している。それによると、ロシアはイスラエルに対して、シリアに布陣しているロシア製防空ミサイルのIFF(敵味方識別無線コード)をこっそり教えているという。
 なぜこれに気付いたか。シリア兵が、ロシア人には黙って、IFFコードを変更したところ、急にイスラエル機をよく探知できるようになったのだという。
 イスラエル空軍は22日までに断続的に4度の空襲を加えた。
  ※イランに支援されたアサド政府がイラン製のSSMをヒズボラに供給しているので、イスラエルは空爆でそれを片端から破壊しているのである。ちなみにイスラエルとロシアの間にもこうした空爆に関する通知&不干渉協定がある。
 3月25日、シリア政府はロシア外務省を経由してイスラエルに対し、対シリア空襲を続けるならば弾道ミサイル数百発をイスラエル領土に撃ち込むと文書で警告した。
  ※警告もなにも、ヒズボラはイランから手渡されたSSMをシリア領内からイスラエルへ発射する気満々なんですから。


断熱革命

 Hope Hodge Seck 記者による2017-4-5記事「These ‘Swimming Bullets’ Can Obliterate a Target Underwater」。
        ノルウェーのDSGテクノロジー社は米海軍に、12.7mm以下の火器から普通に発射できる水中弾「CAV-X」を売り込み中だ。
 CAVとはもちろんキャヴィテーションの略。
 タングステン弾芯を銅で被甲してあるが、形状と質量が絶妙に調節されており、水中突入時にちょうどよい泡が生じ、それに包まれることによって水の抵抗を最小限にしながら突き進む。
 陸上での有効射程2200mといわれる12.7mm弾の場合、水中をさらに60mも進んでくれる。これは、ヘリコプターから視認できる潜水艦をも攻撃できることを意味する。
 7.62ミリ弾なら22m。5.56ミリ弾なら14mだ。港湾警備艇の乗員たちには重宝だろう。
 次。
 ケミカル工業系の学会誌の『Chemistry & Chemical Industry』(日本語)の2017-2月号の、「シリコーン系のエアロゲル」の特集記事。
 これは1931年に米国で発見されている素材で、可視光線を歪み無く透過させる一方で、熱伝導率が空気よりも小さい(固体物質中では最も低い)。
 家庭の窓や壁や天井用としては理想的な断熱素材たり得る候補物質だ。
 遺憾ながら物理的な応力には弱くて、大きくすると自重でも壊れてしまうほどに脆い。その欠点がながらく克服されなかったのだが、そろそろ問題の解決に近づいているようだ。
 もしもそうした弱点がなくなり、やがて安価に大量生産されて、たとえば窓ガラス代わりに普及すれば、住宅の断熱性は格段に改善され、理想的な省エネ住宅ができる――などと特集記事では書かれているのだが、兵頭おもうに、どうして日本の科学者の発想はこんなに小いせェんだ?
 この素材が「農業革命」に結びつくということに、どうして誰もピンと来ないのだ!?
 この新素材でビニールトンネルを織り出せるようになれば、北海道の荒地でサツマイモが栽培できるではないか。
 それで日本のカロリーベースの食糧自給率は100%を達成してしまう。しかも、国全体では石油を大幅に節約しながらである。
 逆に南国の低地で高原野菜も栽培できる。(長野県のハウス農家には Bad News か……。)
 ビルの断熱材としてこれが普及すると、ビルのクーリングのために冬以上にたくさんの石油を燃やすという、これまでの都市部での悪循環を止めることができる。
 これは年中クーラーをガンガン効かせている天下のヒートアイランド国家サウジアラビアにとってはじつに朗報となるのだから、サウジの大金持ちたちに投資させることも考えたらいいぢゃねェか。
 商店街の「モール」や商業ビルのエントランス部分が、この素材の屋根材と壁材によって、冬は寒くなく、夏は暑くなく、光だけが充溢した空間となる。
 乗用車の断熱材に使えば、クーラーを回すエネルギーは節約される。日本にはますます石油は要らなくなる。
 夕方に風呂を一回沸かすと、それは深夜までも冷めなくなる。
 冬服と冬靴を、おそろしく薄手にできる。もちろんダイバーのドライスーツも。「人間トド化」計画……とでも呼ぼうか。
 もちろん話はそんなレベルでは終わらない。この素材で、災害避難村用の「テント」をこしらえればどうなるか? それがそのまま、普通の木造住宅と遜色のない断熱性を発揮してくれる。ということは、周年、そこに居住しても、寒暑をしのぐ上で、なんの不便も感じないで済むのだ。
 北海道の厳冬期の雪原中で、ロクな暖房設備もないのに、気楽にテント生活が送れるようになる。
 世界には、「ホームレス」はありえなくなるのだ。
 ……ようこそ、ビニールシート御殿へ……!
 夢のマイホームが幕舎では格好悪すぎるという方々には、薄いベニヤ板とこのシリコンアエロゲル膜のコンパウンドがオススメだろう。見た目は豪邸だがじつのところはガレージレベルの造作で(したがって地震で圧死するおそれ無し)、快適そのものの平屋が数百万円くらいのポケットマネーでドーンと建つのだと想像してみ。
 太陽黒点が急にゼロになっても、この素材があれば人類は氷河期を生き残れる。
 誇張抜きに、こういうのが「世界を救う技術」ではないのだろうか。
 ※中学時代に、「鑑識の結果が出ました!」「何だった?」「乾燥剤シリカゲルです」……という『大陽に吠えろ』コントをやっていたのを急に思い出しましたわい。


Micro-Phalanx が、できるはずだ。

 STARS AND STRIPES 紙の2017-4-4記事「Army’s third-arm gun mount aims to lessen burden of heavy weapons」。
   炭素繊維複合素材で重さ4ポンド未満の「機械の第三の腕」が防弾ヴェストから延びて兵士のM4カービンを支えてくれ、反動も吸収してくれる。兵士は本来の両腕で、もっと他の仕事ができる。
 そんな、人間とロボットアームの融合を、米陸軍がメリーランド州アバディーンで研究中。
 ※まさにわたしが『自衛隊無人化計画』(2009)で書いていることを、ようやく米陸軍が後追いリサーチし始めた模様。
 次。
  Franz-Stefan Gady 記者による2017-4-4記事「US Navy Buys 17 Advanced Sub-Killer Planes Armed With Flying Torpedoes」。
    潜水艦を攻撃するMk54魚雷に滑空翼をもたせて、P-8Aが高度9100mから投下し、GPS誘導によって狙ったところへ正確に着水させる。そんなシステムを2020年までにボーイング社は実現するつもり。
 ソノブイはもっと多数必要だし、ソノブイ信号を機上で解析するコンピューターの性能も増強する。
 P-8が低空に降りなくなれば、敵潜水艦はもうP-8からマークされていることを察知するすべがない。
 ちなみにP-3オライオンは、対潜魚雷を投下するためには高度100フィートまで降りる必要がある。
 ※水中の潜水艦から発射できる有線誘導の対空ミサイルをドイツが販売開始したので、対潜哨戒機側もうかうかしていられない。
 次。
 ストラテジーペイジの2017-4-4記事。
   過ぐる 3-1に「アトラス5」ロケットで軌道投入されたNROの衛星は「イントルーダー12」とよばれる海上監視衛星であった。もちろん秘密だが、観測マニアたちはすぐにつきとめるのである。
 ※習近平の訪米前にシナ海軍はまた北米近海で何かブラフをやらかすつもりかもしれない。それをバッチリ監視してやるというわけか。3月打ち上げならそろそろ調整も完了だろう。
 高度1000km~1100kmで合計2~3機を編隊周回させ、外国海軍の艦艇や航空機が洋上で発する電波をキャッチするELINT機能を発揮する。
 複数機から標定することで、電波の発信源座標も絞り込まれる。
 三機編隊の対艦艇用ELINT衛星の初代は「Parcae」といい、1976年に運用開始した。
 二代目が「イントルーダー」で1990運開。
 1996に「イントルーダー4」が投入された。
 2001の「イントルーダー5」は新機種だと見られた。というのは、三機ではなく二機編隊だった。標定性能が向上し、三機は必要なくなった。
 2007の「イントルーダー8」以降は、「アトラス5」が打ち上げ機に使われている。
 「イントルーダー12」は1機が3トン。「アトラス5」は低軌道なら29トンまで投入できるから、2機を同時に投入するのは容易である。
 ※6トンではペイロードが余り過ぎる。たぶん他の重量級の軍用衛星も詰め込んでいたのだろう。
 この「アトラス5」は、ロシア製のRD-180というブースターを使っているのが問題視されている。近い将来には純米国製の「スペースX」などにより代替されるであろう。
 「イントルーダー」と一緒に海洋監視しているのが、1978以降の「ラクロス」である。こちらはレーダーによって、洋上の敵艦隊の動きを見張る。
 ※ということは3-1に同時に放出されたのは、重量級且つ最新型の「ラクロス」なのか? ラクロス1機とイントルーダー2機による3機編隊か?


VX基礎知識

 Dan Kaszeta 記者による2017-2-27記事「VX Nerve Agent: Frequently Asked Questions」。
   神経剤には、G系統とV系統がある。
 前者には、タブン、ゾマン、サリンあり。
 後者には、VX、VGあり。
 すべての化学兵器をアルファベット2字であらわすことにしたのは、NATOである。
 たとえば マスタードガスはHDである。
 Vがヴェノムから来ているというのは都市伝説だろうと思われる。
 蒸気圧〔ヴェイパー・プレッシャー=蒸発のしやすさの目安〕値は、とても低い〔=ほとんど蒸発しない〕。そして沸点は高い。
 ほぼすべての「毒ガス」は普段は液状である。ナーヴ・ガスという言い方も間違いである。神経剤(~エージェント)と呼べ。
 VXは分子量が大きい。重い。なかなか揮発するようなものではないのである。
 揮発しないから、戦場では、持続性である。
 トキシンは生物毒について言う。VXはトキシンではない。
 VXの基本性情は、米軍野外マニュアル『3-11-9』に2005年から公開されている。
 VXは油状で、シロップのような液体である。これが凍ってしまうような場所は、おそらく冬の南極点だけであろう。
 沸点は非常に高く、その化学分子構造が破壊される温度以上である。すなわち、陸上で普通に加熱しても、決して気体状に変えることはできない。
 色も臭いもない。
 しかしごくわずかずつ蒸発はする。その気体は空気より9倍重たい。
 おそらく、床にVX剤をぶちまけた室内を人が歩いて通過しても、呼吸によって致死量のVX剤を吸い込むことにはならないだろう。そのくらい揮発しない。
 ※いっぽうサリンは揮発性なので、話がまるで違ってくるから、混同せぬこと。
 VX剤を液状のまま微粒子にして大気中にスプレーすることは可能である。そのようなエアロゾルとすることで、VXは初めて兵器になるのだ。
 引火性ではないので、砲弾や爆弾に仕込んでアエロゾル状に飛散させることが可能。腐蝕性ではないので、不純物が混じっていなければ、プラスチックやガラスや金属の容器に詰めたまま長期保存してもよい(米軍は1960年代に製造したものを今も保管していて、それはいつでも使用できる)。爆発性もない。
 いちど撒布されたVXは、除染しなければ、何ヶ月もその場に残り続ける。
 VXで人を殺すには、スプレーした微粒子を呼気として吸入させるか、皮膚や目に直接塗布するか、飲食物に混ぜて嚥下させる。
 液状のVXが皮膚に付いた場合、数分から数時間で作用があらわれる。
 その場合、瞳孔収縮は、早期の段階では起こらない。
 もしエアロゾルを吸入した場合、作用は数秒から数分で生ずる。
 VXを発見したのは、英国の化学メーカーICI社の科学者たちであった。
 アミトンという類似成分の新殺虫剤が、人にも危険であると、発売の直後に知られたのだ。
 英政府はこの化学剤について米国に通牒した。そして米国でVXは兵器化された。
 米軍は、マスタード糜爛剤の代りに、このVX神経剤が使えると考えた。どちらも戦場を長期間汚染して、特定エリアへの敵軍の進入をためらわせるのに役立つ。
 あるいは、敵軍のAFVが作戦前に集結している場所に撃ち込めば、敵の攻撃発起直前にその全車両を長時間、使用困難にしてやれる。
 米国での製造はインディアナ州ニューポート市にて、1962年から68年までなされた。純度の高いものを量産するのは大変だった。
 VXは高純度のものをつくるとなると難しい。低純度のものはイラクでもオウム真理教でも作れるのだが、それらは長期保管ができない。
 ソ連のVXは、米軍のVXとはほんのわずか、組成が異なる。
 サダムフセインのイラク軍は、1980年代、地対地ミサイルの弾頭にイラク国産のVXを充填してイランに向けて発射したことがある。
 オウム真理教は1994~95にVXで三回人を襲撃し、うち一名は死亡している。
 米軍の投下式VX爆弾は「ビッグアイ」という。
 米軍は「VX地雷」も有している。踏むと起爆してスプレーが飛び散る。
 精巧に設計されたVX兵器によるエアロゾル撒布の威力は、米軍が羊6000頭をいちどに殺した実験で示されている。
 しかし反化学兵器キャンペーンの影響を受けて、米軍はVX貯蔵ストックの大半を廃棄処理している。
 もしVXに身体を暴露してしまったら?
 まず気道を確保。クリーンな空気が吸えるようにしてやる。
 専門処置をすぐに受けられない場合は、とりあえず石鹸水で洗うことが推奨される。


トマホーク巡航ミサイルの飛翔速度は880km/時。1300km飛ばすにも1時間半、2200km飛ばすには2時間半がかり。

  Thomas E. Ricks 記者による2017-3-28記事「Book excerpt: Defense Secretary Mattis discusses his favorite books, and why」。
   マティスへのインタビュー記事。
 俺(マティス)だけじゃない。海兵隊の現役当時、俺が仕えたすべての上官は「読むべき本のリスト」を持ってたね。そして俺が、そんな本は重要じゃないと判断してそれを読まなかったりすると、上司たちは怒るのが常だったね。
 シャーマンやマルクス・アウレリウスについて、それから、ネルソン・マンデラの自伝『Long Walk to Freedom』……。興味あることはすべて読んできた。人間の本性というものを書籍から学ばせてもらった。おかげで、敵の行動が一瞬不可思議に見えても、それには悩まされないのである。
 一介の武辺、部隊指揮官として人生を終えられるのならばともかく、民主主義政権下のプロ軍人は、出世するにつれて、軍隊外の世界と交渉を持たねばならぬ。そのさい、戦場でのテクニックに詳しいという以上の、大人の世知が必要になるのだ。
 マンデラがバーミンガムの獄中でどんな手紙を書いたか、シャーマンが敵前でディレンマに直面したときにどうしたか、スキピオ・アフリカヌスはいかにして勝利することができたか〔シャーマンとスキピオについては、マティスはリデル・ハート著で読んでるらしい〕。
 これらを承知しておくことは、人間の政治的欲望について了知できるということ。それが非軍人の大物指導者たちの意向と軍事作戦との折り合いをつけさせねばならぬときに役に立つ。この教養が、世界を野蛮から遠ざける高度な「戦略」を生むのだ。
 古代戦でも現代戦でも変わりなく、戦場はえてして、人間が最も原始的・本能的な野蛮を発揮するステージとなる。いやしくも将校ならば、そこに十分に詳しくなくてはプロ軍人として頼りない。
 しかしそのレベルの専門知識だけで満足していてはならぬ。敵をメチャクチャにやっつける方法を国家指導部に提案するだけではダメなのだ。高級将官としては、それではあまりに未熟である。
 古代でも現代でも、偉人たちは、その野蛮な無秩序から「よりマシな平和」を再構築するのにいちばんよい戦略とは何なのか――を考えてきたのだ。
 書籍には、それが書いてあるのだ。
 戦術レベルで実戦とはどんな具合かを教えてくれる本としては、そうだな……。
 M.M.Kayle著『The Far Pavilions』。
 Guy Sajer著『The Forgotten Soldier』。本書からは、部隊指揮官は部下の兵卒たちから報復されることがあるんだぞという戒めを得られる。
 Nate Fick著『One Bullet Away』〔わが身をスレスレにかすめて飛び去った敵弾〕。
 Alistair Horne著『Savage War』。
 E.B.Sledge著『With the Old Breed』。
 師団幕僚以上の者は、グラント将軍の回想録『Memoirs』や、スリム著『Defeat into Victory』を読んでおけば、間違いは犯さない。
 コリン・グレイ著の『Fighting Talk』『The Future of Strategy』の2冊も良い。
 Williamson Murray著『Military Innovation in the Interwar Period』。
 Tony Zinni著『Before the First Shot Is Fired』。
 H.R. McMaster著『Dereliction of Duty』もオススメである。
 コリン・パウエル著『My American Journey』。
 マルクス・アウレリウス著『Meditaitons』。
 Steven Pressfield著『Gates of Fire』やマンデラ自叙伝からは、われわれが取り組まねばならぬミッションなんて先人の苦闘に比べたら大したことないと学べる。
 デュラン夫妻著『The Lessons of History』または、Ron Chernow著『アレグザンダー・ハミルトン』も同様。
 国防長官の重責について体験したくば、ゲイツ著『Duty』が必読だ。
 要するに、日の下に新しいことなどありはしないのだ。すべては先人がもう体験済みなのである。
 もしLucas Phillips著『The Greatest Raid of All』を読んでない海兵隊員がいたら、すぐに読むべし。WWII中にフランスのサンナゼールにあったドライドックを破壊した作戦の話だ。戦艦『ビスマルク』はそれ以降は出撃ができなくなった。メンテナンスできる軍港設備が消滅したので。
 これは、戦争の戦略と作戦と戦術コストのバランスをどう考えるべきかの好資料である。
 Andrew Gordon著『The Rules of the Game』は、トラファルガー海戦時のネルソン提督と、百年後のユトランド海戦時のジェリコー提督とを比較して、後者の通信についてのひごろの取り組みが不十分であったために英海軍の決定的勝利は逃されたと示唆し、サイバー時代の今日の通信部門への教訓を与える。
 国家レベルの話としては、タックマンの『愚者の行進』『8月の砲声』、ポール・ケネディの『大国の興亡』、キッシンジャーの『外交』『世界秩序』。
 初陣で倫理問題に直面するときがある。そんなときに役立つのは、Michael Walzer著『Just and Unjust Wars』や、Melham Wakin著『War, Morality, and the Military Profession』。
 1950年の朝鮮半島で大苦戦した第一海兵師団について、Gail Shisler女史が著した『For Country and Corps: The Life of General Oliver P. Smith』は、キミ自身が著作する場合のひとつの見本だと思う。
 蔵書が数千冊にもなると、転勤のたびに車で運搬するのにうんざりする。そこで処分を余儀なくされるのだが、わたしは地質学(geology)の本全部と、いくつかの軍事書、そして米国西部の歴史について書かれた多数の本は、手元に残している。


来週のいまごろはわたしもワゴンRのオーナーなのでR!

 従来、来函される方々には、空港か駅でレンタカーを借りていただいて、それにわたしが同乗して近郊観光を致すというパターンでしたが、爾後は、「マイカー」にて直接にご案内ができるのでR!
 なぜハスラーにしなかったか? 最先端のセンサー&安全装置が段違いなのでRた!
 わたしはもう18歳から四輪を運転していますので、いくら目が衰えても心眼と身体記憶でなんとかなると思ってた。しかしそれは間違いであると自覚しました。老人は今やハイテクの安全メカトロニクスに頼らねばならんのでR!
 いや、もっと単純にマニュアル車にしちまえば、まず誤発進とかあり得ないんですけど……。それだと女房がいざというときに転がせねぇ。
 本当は、ボケ防止のためにもMTはもっと肯定的に見直されるべきだと思っています。法令で「俊敏運転テスト」に落ちた老人は「MT強制」としてもいいんじゃね? そうなりゃ、少子化で左前の教習所はまた小金持ちの老人たちからカネを取れるようになるし、社会もハッピーでしょ?
 今年の夏は「車中泊」を研究しようかと思っています。たぶん一回で懲りるでしょうが……。
 田舎では、自動車は、身を助けるだけでなく、社会を救うことができるはずでR。
 これからメーカーに期待したいのは、「天井が頑丈なファミリーカー」。真上からの応力に強いクルマなんて、誰も考えてないでしょう。しかし近未来にはそれが需要されるようになる。予言します。
 後部スペースに搭載する超小型自転車も物色中。過去3台の経験から、わたしは折り畳み式自転車を、グレードにかかわらず肯定評価しませんので、アルミ製ママチャリ。
 そのクラスだと、丸石自転車の14kg台というのが、いちばん軽いのかな? 変速なしが、好みです。
 次。
 フォックスニュースの2017-4-1記事「Russia develops hypersonic 4,600 mph Zircon missile」。
   ロシアは「3M22 ジルコン」超音速巡航ミサイルを仕上げつつある。マッハ5で、250マイル飛ぶ。その距離をなんと3分15秒で翔破してしまう。
 全重5トン。まだ軍艦からの対艦試射はなされていない。その洋上テストは来年を予定していたが、まきあげて、この春にやっちまうという。
 いわゆるスクラムジェット。タービンのようなメカニカル部品が少ないラムジェットは、故障の心配が少なくてよい。
 しかし実用化は2020年ではないかと専門家。
 米国や中共も同じようなものをそれぞれ研究中。
 こんなミサイルが普通となれば、「空母」はいよいよ使い辛い道具になる。洋上をウロウロしている大型艦など、将来は生き残れなくなるだろう。
 インドが開発中の「ブラモス2」は、ジルコンと同じスクラムジェット技術を採用している。
 ※4月4日売りの『SAPIO』にもご注目ください。わたしがまた面白い記事を寄稿しました。「敵地攻撃」といえば「トマホーク」しか考えられないニワトリ・レベルの頭脳しかないオッサンたち(いや、オバサンもいるな。若干名)は、特に必読でR!