「読書余論」 2016年8月25日配信号 の 内容予告

▼防研史料 『爆撃兵器関係』
▼中田万之助『徳川氏刑法』M21-3
 反逆、謀殺主尊属、放火強盗でも、その所犯より12月を経過して発覚したるときは、其罪を免ず。
 評定所の目安箱に 受理糺問なし難い事件を3回投じた者は、放江戸。
 武家 卒以下 庶民等より法外の暴言を以て辱かしめられ 止むを得ずして之を殺傷したるときは其罪を論ぜず。
 白痴其他 智覚精神を喪失したる者 火を放ちて家屋建造物を焼毀したる者は流刑に処す。
▼『日本風俗史講座 第五巻』雄山閣S4-7
  所収・有坂【金召】蔵「武器武装」
▼陸軍省編纂『明治卅七八年戦役 陸軍政史』M44、1983復刻。
▼『戦場のならず者――セルビア軍に立ち向かったフランス人雇われ兵』1994-10
▼中央乃木会『御神徳を仰ぐ』S49-1
▼北越製紙(株)『北越製紙70年史』S52-6
 S18~19のヴァルカナイズトドファイバーは、海軍省指定燃料ドラム缶用に充てられた。
▼東陶(株)『東陶機器七十年史』S63-5
 海軍から、「マル呂」ロケット用の耐酸電界槽なども受注。
▼本州製紙(株)『本州製紙社史』S41-2
 S18に陸軍航空本部から、紙製ドラム缶の製作を命ぜらる。仕上がりは竹細工。
▼伊奈製陶(株)『伊奈製陶株式会社30年史』S31-12
 S19-9に、ロケット「まる呂」の耐酸炻器を造れと言われた。
▼高等捕獲審検所 残務調理員『明治三十七八年戦役捕獲審検誌』M39-6
▼クリーガー&オン著『ミサイル防衛――大いなる幻想』2002-11
▼大分バス(株)『五十年のあゆみ』S62
▼高桑純夫ed.『自我と実存』1948
 サルトルのマルクシズム攻撃は次のようなもの。
 思想やイデオロギーは社会の上部構造だという。ならばどうしてそのイデオロギーが逆に下部構造たる社会を変革し得るのか?
▼鮎川信夫『自我と思想』1982
 ヴァレリー、ジッドは、マジノ線が突破されるとは思ってもいなかった。知識人と言ってもその程度か。
 レジスタンスもぜんぜん評価できない。ナチズムはレジスタンスで倒されたんじゃないことは明らか。
 「日本浪漫派」はドイツかぶれにすぎない。鮎川ら大正9年生まれの世代だと外国映画はぜんぶ観ていたが、橋川らの大11世代以降はドイツ映画以外、鑑賞を禁止されたのである。だから大9人には大11人の思想偏向が透視できる。
 「第一、人類が全滅するという考えはおかしいですよ。全滅する何倍かの原爆があると言ってますがね、数学的にはそうかもしれないけど、絶滅はしないんじゃないか」(pp.217-8)。
▼『岩波講座 文学 第五巻』S29
 伊藤整いわく。日本は「現世を逃亡するだけで十分生命感を味ふやうな不合理な社会を長いこと持つていた」。「個我伸展の思想が真面目に考へられたのは文壇のみ」。
▼相田二郎『小田原合戦』S51
▼花見朔巳『鎌倉時代史論』S6
 乗馬には「鞍締まり」の身体ができていないといけない。股関節で内側へ締める力が、昔の乗り手は、強かった。
▼笈田敏野『北條時宗公』S17-1
 元軍が二度目には宗像の石垣海岸に着上できなかったのは、日本の弓の威力による。
▼『今昔物語』M34-10pub. 国史大系第16巻/経済雑誌社
 ※これにて本書のメモは完結。鎌倉時代には大盗賊と乞食がほぼ同義であったことが覗われる。
 ◆  ◆  ◆
 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。
 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。
 大きな図書館に毎日通えない人も、最低費用で、過去の軍事知識のマニアックな勘所に触れることが可能です。
 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。
 「読書余論」は、毎月25日に「武道通信」から最新号が配信されます。1号分の購読料は500円です。
 バックナンバーも1号分が500円で、1号分のみでも講読ができます。
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熊情報

 本日、昼の十二時五分、国道228号線を江差から松前に向かって軽自動車で走行していたところ、矢立橋の手前数百mの地点で、道路を山側から海側へ横断しようとするヒグマに遭遇。
 ヒグマは我が自動車の接近に気づくと笹薮の中にUターンして山の方へ消えた。
 いや~、驚きました。クマは道路を横断するときに左右を目で確かめないで、まっすぐ「のそーっ」と出てくるんですよ。最初は巨大な黒犬かと思いましたが、茶色の熊でした。一秒くらい目が合った。「おろっ?」という顔をしてました。
 あまり巨大であるという印象を受けなかったので、若い熊だったのかもしれません。


七度捜ねて人を疑え

 ストラテジーペイジの2016-7-29記事。
  中央からの「貢税」要求額が加重されていることに耐えかね、北鮮の国営の漁業会社が、平壌には黙って、中共の漁業会社に対して北鮮領海とEEZ内の漁業権を3000万ドルで売った模様である。シノギがきつすぎるので。所属した数千人の地元貧乏漁民の生計などもはやどうでもいい。
 中共は同漁区に堂々と近代的なトロール漁船を操業させている。北鮮警備艇はこれまでのようにそれに対して発砲していない。
 満鮮国境此岸の「両江道」では、蛇がやたらに増えたと報告されている。原因は、畑に撒く殺虫剤が尽きたかららしい。昆虫や小動物が増え、それを餌にする蛇も増した。有毒蛇も混じっている。※この奇妙なニュースは、殺鼠剤の名目で有機燐系の神経ガスを使用する下地工作かもしれないので、要注意と思う。
 今年の国際数学オリンピックで北鮮チームは6位だったが、その筆頭秀才が香港から韓国へ亡命した。
 2016年の北鮮GDPはマイナス1%強となる見通し。
 上半期の対支輸出が前年同期より14.6%少なかった。下半期はもっと減るだろうと予測されるので。
 THAAD用のXバンドレーダーは2017年に配備されると韓国が発表。
 この1個高射大隊(8発セルのコンテナを背負った6両の発射トラックおよびXバンド・レーダーおよび指揮通信車)を運営するのに毎年350万ドルかかる。※そのカネは米国の負担である。さいしょは韓国に買わせようとしたが、諦めた。日本に対しては、システムそのものを売る気満々である。
 2016-7-20午後に複数人の非武装の北鮮兵が、制服のまま図們江を越えて脱走したと北鮮から中共へ通知された。
 次。
 Jose A. DelReal記者による2016-7-30記事「Trump calls retired Marine officer who spoke for Clinton a ‘failed general’」。
  ※ホセという名の記者に反トランプ記事を書かせるとは、WP紙も流石である。
 ドナルド・トランプが、退役海兵隊大将のジョン・アレンを、〔対ISの〕作戦失敗将軍だと29日に非難。一面識もないのにアレンがヒラリー陣営の味方をしてトランプを攻撃するのに反撃した。
 アレンはアフガニスタンの連合軍司令官を勤め、反ISの国際組織への大統領特使を1年やり、オバマ大統領によって次の在欧米軍司令官にされようとしたが、妻の看病のために2014退役した。
 アレン大将は28日の民主党大会で演説し、トランプの個人名は出さなかったが、「水責め拷問を支持する共和党大統領候補者」を攻撃した。
 いわく。――ヒラリーが米四軍最高司令官となれば、わが米国の国際関係が、ただの商取引関係に堕するようなことにはならない。我が軍は決して拷問の手先とはならないし、違法な殺害活動に関与することもないのである――。


テザリングUAVは、歩兵の谷渡し、中州からのキャンパー救出に、機動的に使える。丸木橋は要らなくなる。

 MARK MAZZETTI 記者による2016-7-28記事「Donald Trump and Hillary Clinton to Get Intelligence Briefings」。
  2大政党の大統領候補に対する米連邦情報部局からの事前ブリーフィング(レクチャー)が、いよいよ来週に迫った。
 世界各地の紛争、在外米軍の作戦進捗状況、外国軍隊の最新動静(敵性/友好を問わず)などが、大統領本選の4ヶ月前に両候補に「ご進講」される。
 ヒラリーもトランプも、互いに国家秘密情報管理者の資格は無いと攻撃し合ってきた。このブリーフィング(もちろんすべて国家機密)の内容がもしどちらかの陣営から世間に漏れれば、それは選挙を左右するだろう。
 トランプは27日に記者会見で、ロシア人たちがヒラリーのコンピュータサーバーにすでにハッキングしていることを望むと語り、ロシア人たちはその内容をぜんぶ世界にバラせばいいと放言した。これは過去の米政権の情報部局の元高官たちをひとしなみに怒らせた。ある元高官いわく、トランプのこの発言は「国家叛逆罪」に抵触している、と。
 ※じっさいにプーチンはそれを実行した。民主党指名大会の前日に、ハッキングで得た2万通の民主党のeメールをウィキリークスにUpしたのだ。ヒラリーは2008に「プーチンには魂など無い(人ではない)」と発言したことがあって、それ以来、プーチンはヒラリーを憎み続けている。
 トランプの口撃。なんでヒラリーに国家機密のブリーフィングなんかするんだ? ぜんぶ世間にバレてしまうのに?
 クラッパー情報長官によれば、ブリーフィングの三大トピックスは、サイバーアタック、IS、そしてロシアとなるであろう。
 このブリーフィングはクラッパーの部下複数人により行なわれる。クラッパーは同席しない。また、他の誰も同席しない。
 どこまで機密を伝えるかは現大統領の許可次第である。
 そしていうまでもなく、11月の本選挙で勝った次期大統領には、ただちに、もっと詳細にわたるブリーフィングがなされる。
 黒人上院議員のハリー・レイド(ネヴァダ州、民主党)は、トランプは危険人物なので、いかなる真実のブリーフィングもすべきではない。すべて嘘ネタだけを教えるべきだ、と公言している。
 トランプは昨年11月にアイオワで語った。オレは米軍の将軍たちよりもISのことをよく知っている。ISを撃退する方法をオレは知っている。オレを信じろ。
 次。
 Brian Fung and Andrea Peterson 記者による2016-7-29記事「America is hacking other countries with stealthy submarines」。
   米海軍の潜水艦プログラム部長のマイケル・ジャバレイ少将いわく。おれたちは潜水艦によってサイバー攻撃もできるんだぜ。
 最前線近い海中でケーブルに工作して、あらゆる混乱を起こしてやることができる。
 1970年代からソ連の軍港から延びる海底ケーブルを盗聴していたことはもう知られている。
 今日では、単に盗聴するだけでなく、信号を操作してやることができる。
 米海軍のSSNのうち『アナポリス』とその姉妹艦がデジタル通信盗聴やコンピュータ・ネットに対する工作スペシャリストだったことは2013にスノーデン・リークでバレている。
 海底ケーブルだけではない。一部のSSNは、セイルの上からアンテナを海面へ出して敵性艦隊の通信を傍受するし、さらに今日では、敵性軍艦のアンテナにハッキング信号を送り込んでやることもできるのだ。
 そしてこれからは、有人潜水艦が敵性海域に近づくことなく、遠くから無人潜航ロボットを操ることで、そうしたミッションを実行させるようになるだろう。
 ※近所のマツダの営業の人から面白い話を聞かせてもらった。ロータリー・エンジンは水素と相性がよいので、水素エンジンとして復活するそうである。普及はとうぶん先だろうが……。それよりも驚いたのは、日本は原油をタンカーで輸入してナフサ、ガソリン、灯油、軽油、重油等を分溜しているのだが、軽油の国内消費量がぜんぜん少ないために、軽油だけはまた日本から石油製品タンカーで外国まで運んで行って転売しているのだそうである。なんという罰あたりな無駄! 政府もこれではいかんと気付き、スカイアクティヴディーゼルの新車販売には重量税も取得税もかけないことにしているそうだ(ハイブリッド車と同等の優遇政策)。さらに驚愕のデータ。デミオの4WDのディーゼル(エンジン自体はCX-3と同じ)車の燃料タンクは、容量がほとんど軽自動車サイズでしかないにもかかわらず、函館から満タンで出発すると北見まで途中給油の必要がなく、さらにそこから根室を廻って函館に再び戻ってくるまで、二度目の給油は必要がなかったという。したがって北海道ナナメ横断往復旅にかかった軽油代は7000円強、かつまた、1人で2日間運転し続けても疲労はしなかったそうだ。正直、これはたしかめたくなりました。あと、そのシャシを使って1.5リッター・ディーゼルのライトな「ハイルーフ」車を作ってくれんかな~。


ドローンの次の方向が見えてきた。ラジコンではなく「Uコン」が再登場する!

 Bill Carey記者による2016-7-25記事「U.S. Army Evaluates One of a New Breed of Tethered Drones」。
 米陸軍は、マサチューセッツ州にあるメーカー「サイファイワークス社」の商品である6軸のヘリ型ドローン「PARC」を評価試験中だ。
 同社が特許をもつマイクロフィラメント・テザーによって、地上から給電されるので、滞空時間の制限はない。また信号送受もケーブルだから、電波帯域占有の問題などを気にすることなく、光ファイバーを通じて大容量の信号を最高速で地上まで送信できる。電波妨害も混信も全くない。
 ※GPS失探による逸走の危険もなくなるわけだ。悪天候が襲来したら降ろせばいい。まちがいなくこのシステムは「沿岸監視用」に、もっと大型化できる。その場合は、「オートジャイロの凧」との組み合わせ方式も模索できるだろう。
 また7月には、ヴァジニア州にて開催の「東海岸ウォリアー見本市」に、フロリダ州の「ドローン・アビエーション社」が、同軸ローター形状のテザー給電式無人ヘリ「ボルト」を出展。こいつは800フィートまで上昇でき、消費電力1キロワットまでのISR機器をぶらさげられるという。
 ※複数の巡視船がテザー式大型UAVを揚げていれば、「阻塞気球」と同じ効果があるから、敵国の航空機はBUZによるイヤガラセもできなくなる。常にシナ人の先手を取る着想が必要だ。
 5月のフロリダでの「特殊部隊用工業カンファレンス」には、「アエロヴァイロメント社」が「テザー・アイ」を出品。クォッドコプター形状で、150フィートまで上昇でき、24時間とぎれなくハイレゾの監視動画を地上まで送信し続ける。
 いまや「監視用高塔」が、テザー式UAVによって実現する時代が到来したのだ。
 ※ますますJLENSのような失敗必至のコンセプトには用がなくなったわけ。経団連はトラック三周くらい後ろを走っている無能者集団か?


米軍IED対策斑は、これからは市販UAVの爆装改造品が最大脅威に成長すると予測して、対策を研究中。

 KEITH RIDLER記者による2016-7-25記事「1st US system to keep drones away from wildfires kicks off」。
   趣味の撮影用ドローンを、山火事現場から遠ざけるように警告するスマホのアプリを、米連邦当局・内務省が試す。パイロットプロジェクトとして7-25から。
 山火事現場にかけつけた消防の有人ヘリや有人固定翼機と、趣味の撮影ドローンが衝突した場合、大惨事になる。そのため衝突しなくても、邪魔なドローンが空域内で目視されただけでも、空中消火作業/救助作業は中止され、有人機は飛行場に引き返すことを余儀なくされる。これでは住民の生命・財産を守ることができない。
 特に南加州では深刻な問題と化している。
 そこで、山火事発生の都度、一時的な規制空域を設定する。
 内務省は、玩具ドローン最王手のDJI社とも共同して、アプリを開発した。
 臨時設定された飛行制限空域に近づかないようにリアルタイムで操縦手のスマホへ内務省の警告が届くようにする。
 ※このところ、ロシアのことがまるで分かってないくせに専門家のように語ってしまう「コメント屋」があまりにも多いことに驚愕する。これじゃ誰もトランプを嗤えんわ。
 ※朗報。おそらくあと数ヶ月で、段ボールに1箱以上あった「防研史料のメモ帳」の「読書余論」テキスト化(タイプ打ち)作業が完了する。10年強、かかったが、成し遂げた。そのあとは、戦後に活字化されている資料のメモ整理が中心となって行くだろう。量的にはさらに多い(押入の六分の一空間を占有)ものの、希少価値的には「オレがやらなければ誰にも知られずに埋もれる」といった情報ではないので、ずいぶん気が楽になります。武道通信様はじめ、これまでこの事業を支援してくださった皆様方に改めて御礼を申し上げます。


「もし大統領がダーティハリーだったら」が実際に試される

 Jamela Alindogan記者によるアルジャズィーラ記事「Inside Abu Sayyaf: Blood, drugs and conspiracies」。
  アブサヤフの頸切り人は自分の顔さえ隠していない。
 スル諸島は東南アジアの誘拐首都になっている。
 スル諸島の住民の七割は貧困。
 水道もなく学校もない。道路は未舗装。
 食料も自給できない。サンボアンガ市や、マレーシアのサバ州から輸入している。地味は肥えているのだが、農業が成立しない。
 農園を開墾しても、すぐアブサヤフに強奪されてしまうのだ。
 この地域は過去40年、暴力ゆえに中央政府から放置されてきた。他方で人口だけは増えている。
 フィリピンで「スル」といえば「テロ」と同義語である。
 人質の頸切りビデオがユーチューブにUpされたときだけ、この地域は世界の関心を引く。
 組織としてのアブ・サヤフは15年くらい前にバシラン島(ミンダナオ島の南隣)で生まれた。名称は、剣を取る者、という意味である。
 創始者はアブバカール・アブドゥラジャク・ジャンジャラニ。イスラム自治国を築こうとしたが、すでに比軍によって殺されている。
 ※これについてこれまででいちばんわかりやすかった解説は「ヒストリーチャンネル」のアブサヤフ壊滅作戦だ。百の記事よりもよく分かった。たぶんネイヴィシールズ/SOCOM/CIAはあのドキュメンタリーよりは深く作戦に関与しており、また、公表されていない「発信器」が別に仕掛けられていただろうとはと思うが……。
 しかし共同創始者のラドュラン・サヒロンはまだ生きている。
 この男はかつて、「モロ族自由戦線」という分離主義グループに属していたが、MNLFが比島政府と手打ちをしたのでそこから飛び出した。
 アブサヤフはスタート時点ではイデオロギーを標榜したが、すぐに組織存続の必要から、カネだけが目的のギャング団になった。
 今日では誘拐ビジネスだけでなく、麻薬や武器の密輸にも関与している。
 アブサヤフは緩い広域組織で、統制の利くヒエラルキー構造にはなっていない。スル諸島にいくつもの「小ボス」に率いられたグループが蟠踞する。
 アブサヤフは金銭を得るとすべて武器の購入に当てる。スル諸島では、豪邸を建てようなどと誰も思わない。
 頸切り動画はスマホを使ってアップロードされている。
 アブサヤフの若いメンバーは15歳くらい。一度も学校には行っていない。両親は武装闘争にまきこまれて死んでいることが多い。
 スル諸島ではこうした少年のことをアナク・イトゥ=「戦争孤児」と呼ぶ。
 地元の警察官や政治家がアブサヤフのメンバーの血縁であるということはよくある。血縁は、協力する。ゆえにラドュラン・サヒロンも捕まらない。
 孤立した貧乏農家はアブサヤフに脅迫されてその土地を売らされ、その金を奪われる。
 アブサヤフは血縁主義で、族内近親婚が多い。戦死したメンバーの寡婦は近親婚によって救済される。
 アブサヤフは遠隔地の情報屋とも通信している。だから、パラワン島、ダバオ湾(ミンダナオ島南東部)、マレーシアのサバ州(ボルネオ北端)も観光地としては安全ではない。そこで情報屋に目をつけられた観光客は、夜中にバシラン島などスル諸島から船でやってきたアブサヤフに拉致されてしまうのである。
 ※ドゥアルテがかつて市長であったダバオ市は、ドゥアルテが「射殺警察隊」を巡邏させて容疑者を裁判なしで即路上射殺する方針を堅持した結果、1000人の犯罪者が撃ち殺され、いらいダバオ市は安全になり、犯罪組織と結託した政治家らの腐敗も一掃されたとされる。しかしこの記事によれば、まだ油断はならないようだ。
 フィリピン軍によると、アブサヤフの若いメンバーは、比島軍との交戦の前日に覚醒剤を与えられている。それは一般に「シャブ」または「クリスタルメス」と呼ばれているメタンフェタミン・ハイドロクロライドである。
 バシラン島でアブサヤフと交戦したことのあるフィリピン陸軍大佐の証言。14歳のアブサヤフメンバーが銃撃戦で負傷して捕虜になった。少年は戦闘前に覚醒剤を投与されたと言っていた。たしかにそれが利いている間は野獣のようであった。
 ドゥアルテ新大統領がもしスル諸島の廓清をしたいのであれば、現地の政治家たち全員をまず隔離する必要があるだろう。
 現地警察も腐敗しているので、警察力はスル諸島の外側から投入しなくてはならない。
 ドゥアルテから新たに任命された軍の長官、リカルド・ヴィサヤいわく。スルでは知事、副知事から村長までが、すべて誘拐ビジネスの一味徒党なのである、と。
 大統領は、スル全域に戒厳令を敷こうと考えている。軍はそれを支持している。
 1970年代にマルコス大統領はスル諸島に戒厳令を敷き、手荒く住民を鎮圧したものである。


リムパックで安全のため燃料を減らしたハープーンをLCSから射程37kmで発射したら標的命中前に墜落したでござる。

 Andrew P Collins記者の記事「U.S. Military Will Test Toyota Land Cruiser, Hilux And Ford Ranger As War Vehicles」。
   オハイオ州コロンバスのバッテル社は、トヨタのランドクルーザー76型/79型をベースに改造した軍用車両556台~396台をSOCOM=米軍特殊作戦コマンドのために納品する契約を結んだ。
 バッテル社はさらに、トヨタのハイラックスやフォードのレンジャー(どちらもピックアップトラック)のSOCOM用カスタムの準備もしているという。
 もしSOCOMが気に入れば、彼らは5年間で1億7000万ドルを、このような民間SUV改造の「潜入行動車」に投ずるつもりだ。とにかく敵性地区内を、米軍だとは見破られずに目立たず素早く行動したいのだ。だから車体の耐地雷性はあきらめているが、タイヤの小火器耐弾は求める。
 ※『白書2016』にも書いたのだが、ロシアと中共は、ICBMを乗せて機動させる列車の発射車両を「保冷貨車」そっくりに擬装するという手の込んだことをやっている。この発想はむしろSAMや地対艦ミサイルのランチャー車両にこそ求められるはずだ。今日のSAMはセル式コンテナから垂直に発射できる。高層ビル街に埋没した小公園や「中庭」にすら陣地進入して可い。しかしわざとらしい擬装網がないと、上空ISRからはその車両が何なのかは丸分かりだ。これらのランチャー車両は、民間の運送会社の「パネル荷台トラック」等に最初からシルエットを酷似させておく着眼が必要である。平時はその上に軍用車両らしい網をかけておくことで軍用車のIDとするが、作戦展開時には逆にその網をとりはずし、民間車に紛れるような外見で陣地に匿れ潜む――という運用だ。近未来には「3Dプリンター」により、たとえばボロボロの民間の材木輸送トラックのように見せかけてくれる「特注隠れ蓑」なども、現地で織り出せるようになるだろう。個人用擬装網も、現地で3Dプリンターで理想的にフィットするものが特製されるようになる。
 次。
 Franz-Stefan Gady記者による2016-7-22記事「Japan to Receive 4 New V-22 Osprey Aircraft」。
   7-19に米海軍はベル・ボーイング社に、日本向けの4機のV-22オスプレイを製造しなさいと発注。代金は5億4500万ドル。
 これは、総額で30億ドルになる日本向けオスプレイ輸出の一部である。
 日本は何機かのオスプレイを海上自衛隊のヘリ空母『いずも』(19500トン)に搭載するつもりである。


タイでは住民10万人あたり年間4件弱の殺人があり、ほとんど米国並に危ないという事実は日本では認知されていない。

 Abigail Leonard記者による2016-7-19『ワシントンポスト』記事。
 昨年米国では1万3000人が銃で死んだ。
 同じ年、日本では、警察発表では、1人が銃で死んだ。※本当か? 警察官の拳銃自殺だけでも相当あるのでは?
 日本の小学校では、地震避難訓練はあっても、ロックダウン(持銃器闖入者の警報に応じて学校要所を即閉鎖しその中へ児童を隠すこと)の訓練はない。
 昨年、4000人の米国市民が米国籍を捨てた。これはレコードであった。主な理由は、海外で所有している財産への課税が強化されたことに対する反応らしい。
 日本法務省によると、2015年末時点で日本国内に居住する米国籍の「非軍人」の人数は、50万人に近いという。2005年末だと40万人弱だったらしい。
 多くの米国人が、比較的に簡単なヴィザの延長手続きを取り、日本に長期滞在している。それによって日本における投票権は与えられはしないが、保険や年金の福祉は享受できる。
 健康保険が使えること、自治体の子育て補助金制度があること、そして銃犯罪がないことを考えて、育児は米本国ではなく日本でしようと決める世帯(配偶者が日本人)が増加している。
 たまに米国に戻ると、空港の警察官からしてもうピリピリしているのが分かる。おそろしい。「安全な郊外」など、もう米国内のどこにもないという感じ。
 日本の警察の発表。2015年において、銃器が発射された犯罪は、8件報告されている。なお日本の総人口は1億2700万人である。
 ※今日では発射そのものが犯罪になっているので、警察官の拳銃自殺もそれに加算しないとおかしいんじゃない?
 銃器の遍在率だが、日本は市民100人あたりにつき0.6梃。米国では市民100人について101梃の銃器が存在する。
 元海軍将校にして、沿岸警備隊ではライフルと拳銃の特級射手であった、東京アメリカンクラブの会長(56)氏いわく。この国ではアメリカ人も銃器は簡単に買えないのですが、それについて「合衆国憲法修正第2項の権利が無い」などと不平を唱える友人はおりませんな。
 次。
 Dave Majumdar記者による2016-7-19記事「Welcome to Russian Bombers 101」。
  ロシアが「PAK-DA」とかいう妄想未来爆撃機を発表したが、この破産国家はこれから予想可能な将来にわたってず~っとツポレフ95MS「ベアー」を主力爆撃機として頼るしかないのである。
 マッハ2を出せるツポレフ160「ブラックジャック」は16機残存しているが、使えるのは11機だろう。
 あとはベアーが63機。そのうち動くのは55機だろう。これが主力。
 ロシア専門研究者マイケル・コフマンは見抜いている。できもしないしありもしない計画をぶちあげることで国民の士気を高めようとするのはロシア政府の常套。嘘宣伝にはほとんどカネがかからないのがいい。
 ※まったく同じことが北鮮の無意味な数字の短波放送の16年ぶりの再開について言える。カネをかけずに南鮮をギョッとさせられた。それだけ。
 未来爆撃機のためのエンジンの開発計画すら、皆無。できるわけない。
 ブラックジャック用エンジンであるクズネツォフNK32(アフターバーナー付き)の改善をしているのだけれども、それは未来爆撃機用というよりも、やっぱりブラックジャック用。
 ベアーは使える。ベアーからKh-101巡航ミサイルを実際に発射できることを、ロシアはシリアで見せ付けたばかりだ。
 スホイ34「フルバック」は、スホイ27「フランカー」の改善版である。そしてスホイ24「フェンサー」をリプレイスするものとみなされている。
 研究者いわく。スホイ34戦闘機は、中型爆撃機並の性能をもっている。
 じっさいシリアでスホイ34は活躍している。ツポレフ22M3「バックファイア」の代役にすらなると信じられる。
 スホイ34の欠点は、バックファイアが吊下できる巨大な空対艦ミサイル、ラドゥガKh-22(AS-4キッチン)を吊下できないだろうこと。対艦ミッションとしてはこれは残念なこと。
 しかしおそらく、P-800「オニクス」超音速対艦ミサイルは、スホイ34でも運用できるだろう。
 コフマン〔名前から想像するとユダヤ系でロシアから西側に出てきた人じゃないかな?〕氏いわく、インドのスホイ30MKIが運用する「ブラモス」空対艦超音速長射程ミサイルは、P-800もどきだが、じゃっかん、P-800より性能が低いはずだと。
 ※誘導系の心臓部まではインド人に教えないはずなんだよね。だから艦対空ミサイル「バラク8」の実用化もインド空母はイスラエル海軍のコルヴェットにもう何年も遅れている。インドの資金で開発したイスラエルとしても、その心臓部をそっくりインドに渡せるわけがない。すぐにインド国内のロシア人経由で漏洩して、ヒズボラ=イランが「バラク8」を回避可能な地対艦ミサイルを工夫してしまうだろうから。
 スホイ34にP-800オニクスを搭載する場合、それはたった1発である。しかし有力な対艦システムになるだろう。
 すべてはロシア政府の経済立て直しができるか否かにかかっている。財源なしではどうにもならぬ。
 次。
 Vasudevan Sridharan記者による2016-7-19記事「India moving 100 tanks near China border」。
  インドが従来戦車を展開していなかった北東部ヒマラヤ山地にT-72×100両を推進して中共軍と対峙させることになった。厳冬期用のディーゼル燃料と、潤滑油用の特殊な添加剤を入手したので、標高4300mの東部ラダク高地にも置いておけるようになった。
 同地は冬には華氏マイナス45度まで下がる。
 さすがに夜間は、終夜、エンジンをかけておく必要がある。
 1962年の中共とインドの国境戦争では、インド軍は同地に戦車を空中から物料投下したものの、稀薄な大気のためにエンジンのパワーが出ず、大敗した。
 ※ロシアはイスラムテログループにサイバー戦のやり方を教えてロシアの敵を代理攻撃させるようになった。どんどん冷戦時代のソ連スタイルに戻っている。


ポケモンGOの三次元情報融合技術は、巨大工事現場の諸管理を劇的に合理化するので、次の米空母建造で試みられる由。

 2016-7-18記事「How About a Coast Guard Sink-Ex?」。
  米海軍の年次演習に「Sink-Ex」という廃船の実弾撃沈テストがあるのだが、今回、コーストガード船の将来の固定武装についてについてもデータを得たいんだと。
 つまりLCSで採用されているボフォースの57ミリ無人砲塔はコーストガード船の武装としても適当か、という。
 港、水路、沿岸のセキュリティを総称してPWCSという。コーストガードのミッションである。
 PWCSをコーストガードがキッチリと実践するためには、相手船がいかに巨大でも、その行き脚を強制的に砲撃によって止められなくてはならない。
 今回、空荷で9000トン、満載で1万8500トン、長さは176mの軍用貨物船が2隻、実射撃沈される。1960年代後半にはまだ強力な商船向きの舶用ディーゼルがなかった。そういう時代の古船。
 いま、米コーストガードの武器選択には、12.7ミリ、25ミリ、57ミリ、76ミリがある。
 もし57ミリでも76ミリの仕事ができるのだと実験で判明すれば、今後、コーストガード船は57ミリ自動砲を積む。できないと判明すれば、76ミリ自動砲がこれからも残されるだけでなく、他の非砲熕兵装の追加も考えねばならない。
 退役船に対する実弾射撃テストでは、いちど弾薬を撃ち込んだターゲットシップ内にはもう人間は立ち入らない。危ないので。そのかわりにカメラとセンサーを残置して、リアルタイムのデータを取るようにしている。
 圧力センサーがボイラーやタービンや液圧操舵系にとりつけられ、被弾破孔によって減圧が生じたかどうかをモニターする。その減圧が認められぬ限り、試験砲弾は不審船の行き脚を止める力が足りないということである。
 わたし(原記者)の個人的な信念だが、コーストガード船は、不審船からは4000ヤード以上、離れているべきである(旧ソ連製の両用火砲や、対戦車ミサイルを隠して装備しているおそれがあるので)。しかし25ミリ機関砲は、3000ヤードまで接近しないと敵船制圧に有効ではない。
 砲側の即応弾薬数は、25ミリなら150発、57ミリなら100発、76ミリなら80発というところだろう。それ以内の弾薬消費で、大型船の行き脚を止められるか?
 われわれコーストガードは、127ミリ砲や、「グリフィン」のような軽量汎用ミサイル、はたまた、「軽量の魚雷」を装備することも、検討すべきかもしれない。実験する価値はある。
 というのは、敵船が巨大であった場合、機関や舵を破壊して停船させるためには、水線下に被弾させる必要があるのだが、それは中口径砲の射撃によっては無理なので、魚雷等の他の手段によるしかないはずだから。
 ※なぜその前に「91式徹甲弾」……否、無炸填の平頭ソリッド弾を試してみないのか? ちなみに英国とアイスランドの間の「鱈戦争」では、40ミリ・ボフォースの炸薬を抜いた特注弾で船体射撃が加えられた実例あり。
 次。
 Eric Schlosser記者による2016-7-17記事「The H-Bombs in Turkey」。
  トルコのインシルリク飛行場にはB-61水爆が約50発貯蔵されている。それはNATO用ストックの25%以上にあたるという。
 イールドは可変式で、0.3キロトンから70キロトンまで変えられる。
 そもそもインシルリク基地は、米陸軍の工兵隊がWWII前後に設定してやったものだ。
 トルコが1952にNATOに加盟すると、この基地は途方も無く重要になった。
 そこから1時間飛行すれば、もうソ連領空なのだ。だから、爆撃機も、空中タンカーも、U-2も、そこに並べられた。※核爆撃機が敵領空へ突入する直前のタイミングで空中タンカーから満タンにしてもらう。だからロッド式で急速給油できる空中タンカーをカーティス・ルメイが開発させた。米海軍はむしろ着艦直前の空中給油が死活問題なので、授油機の選択幅が広がるプローブ・アンド・ドローグ式にこだわり続ける。こちらは急速満タンは不可能だが、戦闘機同士でのバディ給油や、輸送機吊下ポッドから回転翼機に対する給油は、この方法しかない。そもそも日本の戦闘機は空自の洋上制空第一主義からして、後者の方式にするべきだったはずだよね。
 1960年代なかば、米国は7000発以上の各種戦術核兵器を西欧に置いた。ギリシャにも置いた。
 これら核兵器は米軍が現地で管理していたが、対ソ有事の際には、NATO同盟諸国に使わせるためにすぐに手渡されることになっていた。
 しかし1960年にその実態を調査した米連邦上院の訪欧議員団はショックを受けた。事実上、平時から、それら核爆弾/戦術核ミサイルが、西ドイツ軍、イタリア軍を含む、非米軍によって、取り扱われていたからだ。アラートに応ずる使用訓練を繰り返していたから、それは当然のなりゆきであった。
 上院議員団の秘密報告書は、これら核爆弾の警備者は、現地国政府に忠誠であって、米国には忠誠でないのが自然だ、と警告した。
  ※核爆弾の「コア」「ブースター・ガス」等は、さらに別な場所に保管されているはずだ。それは米兵が直接警備しているはずなので、この記事は杞憂を煽るもののように思われる。
 1962のキューバ危機でマクナマラ国防長官が焦ったのは、トルコが対ソ戦にやる気満々となってしまって、勝手に国内貯蔵分の核兵器を先制使用せぬかということだった。そこでマクナマラは現地の米軍管理部隊に、トルコから持ち出し要求があったら徹底サボタージュせよと電報した。
 核爆弾の中にはPALスイッチがついている。パーミッシヴ・アクション・リンクといい、コード番号を入力しないと動作しない。
 しかし高度な技術があればこれは迂回できる。
 だから1974にトルコとギリシャが戦争しそうになったとき、米国はギリシャからは全部の核兵器を引き揚げ、トルコの核爆弾については「アーミング・ワイヤー」を切断して、使えないようにした。
 ブッシュ父大統領とブッシュ子大統領は、欧州からどんどん核兵器を撤収させてくれた功労者である。いまや欧州NATOには、180発のB-61があるだけ。他の戦術核兵器は、1発もない。
 ※この流れに反対し、核トマホークを米SSN内に常置してくれと懇請したのが日本の外務省(と日本の軽佻浮薄保守論人)だった。空自基地内にB-61が無いのならばそんなものは「核の傘」ではないという常識を、彼らは承認したがらない。防衛省は、B-61の運用を将来可能にするためには、どうしてもF-35を買うしかなかった。F-35は、勝手な出撃ができないように、ミッションコンピュータをペンタゴンからいつでも遠隔操作し得るので、米国としてはとても安心できるのだ。B-61貯蔵地としては三沢基地周辺しかないだろう。
 欧州におけるB-61の貯蔵場所は、現在は、インシルリク、ドイツの基地、オランダの基地、ベルギーの基地、そしてイタリアである。
 これを置くことによって、ドイツやイタリアやオランダやベルギーが、独自核武装する気をなくすることができるのである。
 B-61の貯蔵場所は、すべて、現地軍によって警備されている。※さもなくば「核の傘」ではないから。
 もちろん貯蔵場所は地下である。
 2010年、反核活動家が、ベルギーのクレイン・ブロゲル空軍基地に侵入し、B-61貯蔵場所〔の地上部分?〕に到達し、反核ステッカーを貼って、その模様をユーチューブにUpした。この動画は、かけつけたベルギー兵の小銃に弾倉が付いていない実態も示した。
 インシルリクはシリア国境から70kmしか離れていない。2015-10から米軍はこの基地から対ISの航空作戦を展開中である。※クーデター騒ぎいらい停電が連続3日以上続いているという。自家発電機で対応中。
 クーデター騒ぎの数ヶ月前、インシルリク基地の米軍家族はペンタゴンの指図で全員退去していた。いま、基地には米軍人2000が所在する。
 次。
 Ece Toksabay and Paul Taylor記者による2016-7-16記事「Turkey’s bungled putsch: a strangely 20th century coup」。
  トルコ陸軍の将軍たちは今回のプッチを時間をかけて準備していた。ただし手法は70年代の古臭いものだった。
 1973年のチリや、1980年のトルコならうまくいったろう。だが今は2016年なのだ。
 金曜夜、エルドアンがアンカラを出て週末保養地へ向かった隙に蹶起。
 空港を制圧。ポスポラス海峡大橋を封鎖。戦車を国会議事堂とアンカラへ送り出し、幹線道路の結節点をおさえた。
 昔だったら国営放送局を占拠して、市民の外出禁止令を布告すれば、クーデターは成功だった。
 ところが彼らは与党AK党の要人を逮捕できず、民放テレビ局の電波送出を止める方法がわからず、携帯電話サービスも止めさせず、SNSシャットダウンの措置も講じられなかった。首謀層は、メディアのことに通じていない、えらく気の利かない軍人たちだった。
 エルドアン大統領は、スマホの「フェイスタイム」というアプリを利用し、民法テレビ局の「CNNトルコ」から声明を発することができた。これで8000万国民にエルドアンのメッセージが届いた。
 エルドアンが宿泊した南西部のリゾート地マルマリスのホテル。ここではエルドアン派の警察部隊と叛乱軍の交戦があった。※パラミリタリーを強くして優遇しておく。これがクーデターを防ぐ要諦である。学びたい人は戦後のインド軍と警察軍について調べるとよい。最良の教材だ。
 叛乱第一報から20分以内に、首相のイルディリムは、軍の最高幹部は叛乱を支持していない事実を、ツイッターで拡散させた。
 顧みれば1517にマルチン・ルターは新メディアたる印刷媒体を使ってローマカトリックに反抗した。アヤトラ・ホメイニはパリからカセットテープをイランに運ばせて、イラン国内で彼の肉声によるアジ演説を流布させ、1979の革命に繋げた。メディアと連繋した者が、革命に勝利する。