函館市長候補は、路面電車の郊外路線の拡充を政策にかかげるとよい。

 自動車をもっていない貧乏老人が、雪の日に自転車では通勤できない場所まで通勤できることになるから、人手不足と失業のミスマッチを解消できるだろう。

 バスではだめだ。「安定感」「安心感」「信頼感」がなさすぎるから。
 路面電車を早朝から深夜まで動かしてやることが、交通弱者をとても安心させるだろう。

 バスと路面電車と、どっちが近い将来「無人運転」化しやすいか? そこも考えるべきじゃないか?

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 Frank Hofmann 記者による2023-4-2『ドイチェ・ヴェレ』の記事「Ukraine counteroffensive: When will the mud season end?」。
   元米空軍の気象予報士であった David Helms 氏は、ヴァジニア州に隠居しながらにして、ツイッターにウクライナ戦線の天気予報を日々、公表し、それによって、前線の宇軍の作戦判断を扶けている。
 たとえば、バフムト限定のピンポイント週間予報を、誰でも見ることができる。

 ヘルムズによれば、ウクライナで今年の泥濘期が終るのは、5月1日以降だという。それ以前では地中の水気が抜けない。
 概して、南部ほど、早く乾く。

 南ウクライナでは4月中旬から地表がドライになる。
 それから2週間遅れで、ドネツク地区も乾く。
 もっと北の、露軍が占領中のルハンスク州になると、5月中旬まで湿っている。

 ということは、露軍の戦車が東部国境でまだ動けないでいるときに、宇軍は南方で攻勢に出てメリトポリを奪還可能だ。

 ウクライナでは、毎年、春と秋に約1ヵ月ずつ、まったく路外は泥の海となって装軌車も通行ができぬ。現地語では「ラスプティツァ」と呼ぶ。
 泥濘の原因は、降水(雨と雪)、および解氷である。

 厚さ20センチの表土部分が水気を含むと、そこは泥田に変わる。その変化は急に起こる。とつぜん、表土の支持力がなくなってしまうのである。

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 James Bickerton 記者による2023-4-1記事「Ukrainian World Kickboxing Champion Killed in Battle」。
    四度、キックボクシングの世界チャンピオンになったウクライナ選手 Vitaliy Merinov は、2022-2-24の侵攻初日から宇軍に従軍。脚部に銃弾を受けて入院するも、恢復後に再び前線へ。そこでまた戦傷を負い、入院していたが、2023-3-31に遂に永眠した。

 遺族は妻と2歳の娘。

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 Ashish Dangwal 記者による2023-4-2記事「Ukraine War: Why Russian ‘Precision Strikes’ On Ukrainian Military Infra Are Failing To Hit The Bulls Eye」。
    ロシアはげんざい、160機の人工衛星を回していて、そのうち100機以上が軍用だ。

 だが、複数の衛星データをミックスして、ウクライナ戦争のために活用することが、ロシアにはどうも、できないらしい。これには地上支援局の不備が関係していると見られる。

 たとえば、もし偵察衛星をしっかり運用できているなら、見逃すはずがないウクライナ軍の「高価値目標」を、露軍は、見逃している。

 背景として、2014のクリミア侵略以降の西側からの経済制裁が効いているのである。
 GLONASSがあっても、それを「電子Map」と結合することができない。だから露軍の地図は紙ばかりである。

 最前線の、同じ場所を撮像した偵察衛星データを、露軍の指揮官は、2週間に1ぺんしか、更新してもらえない。これでどうやって作戦を立てる? もはやドローンにひたすら頼るしかないのである。

 そしてまた露軍の軍用偵察衛星の写真の解像力は、いまや、欧米の民間の衛星画像サービス会社からふつうに私人が買えるデータの細密度を下回っている。

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 Defense Express の2023-4-2記事「Swiss Components For Cars and Electric Bicycles Were Found in russian Orlan-10 UAVs and Missiles」。
   スイスのRSIニュースが報じた。数日前に宇軍が調べた「オルラン-10」の残骸から、スイス製のパーツが発見されていると。
 チューリッヒにある「U-blox」社製の電子部品。同社は自動車や電動自転車や医療機器用に電子部品を製造している。

 ロシアは、ダミーの「なんちゃってシナ企業」を名目的に登記して、そこがスイスからデュアルユースの部品を仕入れては、露領に持ち込んでいるようである。すなわち経済制裁回避術。

 部品の中にはたとえば、GPS受信チップがある。

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 Defense Express の2023-4-2記事「The International Monetary Fund Predicted How Long the War in Ukraine Would Last」。
    IMFは、ウクライナに対して4年間で156億ドルを融資することを金曜日に承認した。
 これも含めて世界はウクライナに1150億ドルの金融支援を実行中である。

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 AFPの2023-4-1記事「Kyiv orders 100 armoured vehicles from Poland」。
   ウクライナ政府は、フィンランドが設計し、ポーランド国内で製造されている「ロソマック」8×8装輪装甲車を100両、発注した。

 契約総額は非公表だが、費用は米欧のファンドで賄われる。

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 Defense Express の2023-4-2記事「Specially For Drones: Ukrainian Plant Starts Making New Air Bombs」。
   ウクライナのメーカー「Maiak OJSC」社は、マルチコプターから投下する専用の爆弾として最初から設計された2種類の爆弾の品番とスペックを公表した。

 「OBP-23.1」は、全重1kgで、破片の殺傷力は11m先まで及ぶ。
 「OBP-23.05」は、全重500グラムで、破片は半径4.5mまで有効。

 外見は相似形。空力安定板は、戦前の投下訓練用爆弾のような円環状(外寸は胴体の最大部と一致)。それを6葉の放射状フィンがスポークのように支えている。筒体は涙滴形だが、前端部分が平頭になっている。前寄りの側面に、引き抜き式の安全ピンのようなものがついている。そしてこれら全体の外皮が、一体成形の樹脂製であるように見える。

 同社は2021年から、TKG-1600およびKZ-4800という、対AFV用のHEAT爆弾を製造していた。したがって経験値は十分蓄積している。

 ※対人用の金属破片はおそらく樹脂製弾殻の内側にでも装置されているのだろう。しかし、国際条約により、レントゲン撮影し難い破片素材の対人爆弾は使用すべからず、ということになっているのであるから、このメーカーは、対人威力については宣伝をしないほうが悧巧なのではないか? それとも、外観がプラスチックっぽいのは、そうみせかけている塗装のせいで、じつは弾殻は全金属製(たとえばアルミ合金)か? だがそれなら空力フィンは死重となる。ペイロードにまったく余裕のないミニドローンからの投下爆弾としては、設計が合理的でなくなる。

 ※雑報によると、宇軍は米国から「マーク14 Mod 0」という対物破壊用手榴弾(Anti-Structual Munition)を供給されている。手榴弾型で、内部に380グラムの「PBXN-109」炸薬が充填されている。破片がほとんど生じず、「オーバー・プレッシャー」を最大化するものだという。投擲すると4.3秒で爆発。ようするに、遺棄AFVの内部に投げ込んで処理するための弾薬か?

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 ロイターの2023-4-3記事「Armsmaker Rheinmetall sets up maintenance hub in Romania for Ukraine weapons」。

 ラインメタル社は発表した。ルーマニアの「Satu Mare」に、同社のサービス・ハブを建設した。今月から稼動し、ウクライナ軍を支援する。

 同社製の兵器をそこで整備し、またスペアパーツ等をそこから補給する。
 ついでにチャレンジャー戦車の面倒もそこで見てやるという。

 なお、ラ社は2022-6に同様の後方支援拠点をリトアニア国内に開設している。こちらは、バルト海沿岸諸国に対して兵站サービスを担う。

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 Defense Express の2023-4-2記事「Ukrainian Counterattack Near Donetsk Shows the Lack of Tanks in the russian Army」。
    東部戦線の某所において、露軍は、過去24時間に30回の攻撃前進を図った。うち10回は夜襲である。そのすべてを、宇軍は砲兵によって撃攘した。注目している事実。この30回のうち、露軍部隊が戦車を伴ってきたのは、ただの1回であった。それは2両の戦車であった。

 結論。おそらく露軍にはもう戦車がない。

 ロシア軍はまた、固定翼のCASとして非常に古い「スホイ24」を、また回転翼のCASとしては、やはり古い「ミル28/8」を、繰り出してくるようになっている。航空機も、新型機を稼動させにくくなったと見られるのだ。

 ※どなたかご存知の方がいらしたら、教えて欲しい。明治39年頃の自転車の小さい部品で「ハンガー」(hanger ?)というのは何ですか? 当時は変速機があったわけがないので、ディレイラーハンガーのことじゃない。とすると、何?


すまないがどなたか『宮田製作所七十年史』の戦前部分のコピーをくださらぬか?

 古書の値段が1万5000円もするのでは、どうにもなりません。
 調べたい部分は、まず宮田(創業者)と村田経芳の関係。東京工廠内で村田から勧められて、猟銃の村田銃を製造するようになったのかどうか。つぎに、猟銃商売に見切りをつけて製品を自転車に切り替える判断をしたときに、どの狩猟規則が影響していたか。そして、S17のマレー進攻作戦で社員を軍属として南下部隊に随行させたという話の詳細。

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 Anton Starikov 記者による2023-3-30記事「’Field Wife’: Officers Make Life Hell For Women In Russia’s Military, A Female Medic Says」。
    露軍の従軍看護婦が、「戦地妻」になるように部隊将校たちから迫られている件について。

 この証言者はもともとメディックではなく通信隊の軍歴があった。2022-夏にベルゴロドの徴募事務所から勧誘され、民間の稼ぎでは食えぬときだったので、再入隊して従軍看護婦になった。

 さいしょの日にいきなり、第10機甲師団の師団長(大佐)がキミを気に入ったようだから、戦地妻になれ、と人々から言われた。メディックとは何の関係もなく、大佐の雑用係をしていればいい。

 ※師団長が大佐でいいのか。

 1ヵ月間、拒絶していると、こんどは最前線へ送られた。

 そこは野戦病院であった。宿舎があるのに彼女だけ舎営はゆるされず、道路際のテントで寝起きする。これは大佐の命令によるイヤガラセであった。懲罰勤務というわけだ。

 従軍看護婦は他に7人(23歳から38歳)いたが、全員、戦地妻になるように将校たちから迫られて困っていた。

 そこはなんでもアリだった。ある将校が、砲兵部隊所属の女性隊員を銃で撃ち、重傷を負わせる現場も目撃した。どのような痴話喧嘩が進展していたのか、伺う由は無い。
 この銃撃は、ウクライナ軍のしわざだということに表向きはされた。5回の手術がなされ、けっきょく被害者は、障害者手帳が一生必要な身体になった。

 露軍の将校が「戦地妻」を囲う風俗は、帝政時代からソ連時代までも、ず~っと一貫して続いているものだそうである。ロシアの伝統は今も不滅なのだ。

 この証言者は今、すべてのロシア女性に警告したい。露軍の中にキャリアを求めるな。ロシア軍内での女の地位は、娼婦だからである。

 またこれはチェチェン紛争時から報告されていることだが、露軍の前線指揮官は、酒に酔うと、男女の見境なく、部下を銃撃する騒ぎを起こす。このおかげで重傷を負う露兵は数え切れないのである。

 前進命令を敵前で拒否した兵隊たちは、指揮官によって、自分の墓穴を掘らされ、底へ寝かされる。上から他の兵隊が土をかぶせたところで、指揮官は地面に向け、自動小銃を乱射。ある者にはタマが当たり、ある者にはタマは当たらずに、ゾンビのように這い出てくる。これは証言者が野戦病院で治療してやった露兵から聞いた実話。

 負傷兵のうち、ロシア本土まで後送されるのは、真の重傷患者だけに限られる。それ以外は、露軍が占領中のドネツク地区内の施療所にずっと留められて、独歩できるようになったら、また前線へ復帰しなければならない。

 だから、自傷によって後送されようと図る兵隊は、命がけの決意が必要だ。手か足が1本、確実にもげたのでなければ、帰還は望めないからだ。

 そこでじっさいには、塹壕内でおのれの足を射つ。そのまま数週間放置すると、ブーツの中で足先が腐り、もはや切断手術するしかなくなる。これで本土に確実に帰還できるのだ。

 証言者いわく。最前線にはりつけられている露軍部隊は、今、小銃弾、手榴弾、移動のための車両が欠乏している。給料は何ヵ月も支払われておらず、糧食も欠配気味。寝場所は壕のなかだ。

 ドンバス戦線の兵隊たちが共通して不思議に感じていることがある。じぶんたちがウクライナの前線まで汽車で送られて来たときに、いっしょに、おびただしい数のAFVやソフトスキン車両も、無蓋貨車の上に載って来たのである。確かに、それを見ているのである。ところが、その車両兵器が、前線にはなぜか、まったくやってこない。前線には、ただ、人ばかりが送り込まれて、車両は、途中のどこかで消えてしまう。それで、みんな、噂し合っている。誰かがウクライナ人に売ってしまうのではあるまいかと。

 ※これは鋭い証言だ。露軍の太い兵站線は鉄道のみ。ひとたび鉄道線路を離れたなら、前線が広大なので、車両装備は急速に消散・損耗・自壊して行くしかないのだ。だからこそ宇軍は最初から、露軍後方の鉄道だけを執拗に砲爆撃し続けるべきであったのに、その手段(自前調達が可能な自爆UAV)の傾斜生産には努めずに、戦車をくれだとか戦闘機をくれだとか、呆れた了見違いな要求に固執し、むざむざと今の窮地を招いたのである。戦争のプロがいないのだ。米国南北戦争では、総司令官のリンカーンは国家総力戦がよくわかっていたのに、北軍のエリート高級将官たち全員その理解が浅くて、けっきょく適任のグラントを得るまでに4年も空費してしまった。果たしてウクライナ政府は、何年待てば、適宜の国防大臣を発掘できるだろうか?

 ※SNSに動画が上がっている。旧ソ連軍が1980年代に引退させたはずの、牽引式対戦車加農「T-12」が、かなりの数、どこかの倉庫から引っぱり出されて、ピカピカに塗装された上で、カバーもかけずに無蓋貨車で前線へ運ばれている。採用が1961年なので野砲ならばまだ役に立つにちがいないが、こいつは口径100㎜の滑腔砲だ。専用の対戦車砲弾しか使えない。その砲弾が倉庫に余っていて勿体無いので、それを発射させるために古い大砲を持ち出したのか。それともよほど「レオパルト2」がおそろしいのか。たぶん両方だろう。

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 Defense Express の2023-3-31記事「The Importance of Thermal Imagery Advantage in One Video」。
   宇軍の105mm野砲兵。観測に使っているのは市販のクォッドコプターだが、そのサーマル映像がすばらしい。夜間に徒歩で浸透しようとするロシア歩兵の動きが「丸見え」なのである。むしろ昼間よりもよく分かる。暗いバックグラウンドの中で皓々たる《輝点》として映るので。たった1名が藪の中に潜んでいても、難なく偵知できてしまう。

 10人弱の分隊が縦隊で移動していたら、それは105mm砲弾をすぐにお見舞いすべき価値のある目標だ。ただちにその座標へ砲弾が指向される。

 M119は、英国で設計されたL119榴弾砲を米国でライセンス製造しているもの。牽引式の105mm野砲である。

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 Boyko Nikolov 記者による2023-3-31記事「Ukraine is throwing 300 DJI-made Mavic 3T drones at the Russians」。
    ウクライナ軍のための市販ドローン調達に、「発明開発教育科学技術省」の副大臣が活躍している。
 このたび彼らは、いちどに300機の「Mavic 3T」クォッドコプターを輸入した。DJI製だ。

 だいじな性能は、夜間用のサーマルビデオ撮影ができるズームカメラが搭載されていること。それがあれば露軍の動静を正確に探知できる。正確に探知できれば、破壊し殺傷することができる。

 そもそも正確な探知ができなければ、こっちの砲撃はぜんぶ無駄撃ちになってしまう。そんなことをやっていてはダメだ。

 そして戦場の真実。こっちが工夫すれば、向こうもすぐに同じことをやって対抗しやがる。市販ドローンは、誰かの独占物ではないのだ。敵もまた、それを活用できる。

 というわけでここ数週間のあいだに、両軍が最前線で飛ばしている偵察ドローンの密度が、凄いことになっている。この趨勢は、止まらぬだろう。

 露軍は「オルラン-10」固定翼偵察ドローンの最新バージョンを送り出している。
 さらに新顔として「モスキト」というのが加わった。

 「ランセット-3」も早くも登場した。3月中旬に製造が始まったばかりの最新型で、その弾頭は西側戦車を意識して強化されているという。※ランセットの十字翼の技術はイスラエル渡りだろう。まさか今も開発協力しているということはなかろうね?

 ルハンスクでは宇軍の重量級のヘクサコプター(6軸)が、迫撃砲弾を投下しているという。

 攻撃型ドローンの普及拡大は戦場の何を変えたか? 前線では、誰も、休むことができなくなった。いつ、頭上から小型擲弾や、自爆機が降ってくるか、分からないからである。装甲車の中でも休憩できないし、掩蓋無しの塹壕の中でも休憩できない。

 車両も人員も、トンネル・シェルターのようなものをしじゅう探すようになった。そこだけが、安全である。

 ※日本としては「ミニ・バックホー」をおびただしく援助するのが正解か。それなら民間のシェルター掘りにも使えるし、ガレキ片付けにも使えるし、戦後の復興土木事業にも使えるし、もちろん軍隊のトンネル掘りにも使えて、誰からも非難は受けない。それを運搬するには「ミニ・トレーラー」を1:1で付属させてやるとよい。さすれば、あとは受領した側で、民間乗用車や農業トラクターを使って、それを牽引して移動させられるだろう。戦後もそのトレーラー(被牽引車台)は、商業用に大重宝するはずである。《形としてずっと残る援助品》になるだろう。

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 Jen Judson 記者による2023-3-21記事「Oshkosh to shutter JLTV line next year if protest fails」。
    米陸軍は、HMMWVの後継車種を、AMジェネラル社製に決めた。
 これを承けてオシュコシュ社は、JLTVの製造ラインを、2024末をもって、閉じることにする。

 海外からの注文は2023-11まで受けるという。オシュコシュは、モンテネグロ、ブラジル、スロベニア、リトアニアから既にJLTVを受注しており、また、ベルギーと北マケドニアからも発注があるかもしれない。
 それらはきっちりと納品してからラインを閉じる。

 AMジェネラル社が新JLTVの生産を開始するのは、2024-8である。

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 「mil.in.ua」の2023-3-31記事「Ukraine already uses JDAM」。
    ウクライナ空軍のスポークスマン発表。われわれはすでにJDAMキットを航空爆弾に装着し、それを投弾している、と。

 ただのJDAMではなく、JDAM-ERらしい。翼を展張して、最大72kmも滑空するものだ。
 ただし、それをとりつけた爆弾の種類や、投下機の種類は、まったく伏せられている。

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 「mil.in.ua」の2023-3-31記事「Pentagon: more than 11,000 soldiers of the Armed Forces of Ukraine are undergoing training in 26 countries」。
   いまこの時点で、1万1000人のウクライナ兵が、26ヵ国に分散して、軍事教練を受けている。
 また米軍だけでもすでに7000人のウクライナ兵を教練しおえている。


誰か「ドライジーネ」を無料で再現製作してくれる人はいませんかなあ。全木製で。

 Tanmay Kadam 記者による2023-3-25記事「LEAKED! Ukraine’s Counter-Offensive Strategy To Attack Russian Military Disclosed By US Media; Kyiv Furious」。
    米メディアの『ポリティコ』が、《ウクライナ軍は5月に対露の反転攻勢をかける》と3-15に報じたことについて、ゼレンスキー指導部は激怒している。これは対敵機密漏洩じゃないかと。

 ポリティコによるとソースは米政府の匿名高官だという。

 『ポリティコ』は、あり得べき攻勢の主軸についての予測までも載せている。いきなり南へ突出してヘルソン州を奪回し、そのままクリミア半島も奪回するか、もしくは、北東部から東へ突出してから南へ旋回して、ロシア本土とクリミアの陸上連絡を遮断するか。

 そのうち前者は、露軍がドニプロ河東岸に陣地帯を築城工事しているので非現実的だとポリティコは解説。宇軍には一斉に大軍を敵前渡河させる能力もないからと。

 ゼレンスキーの大統領室アドバイザーであるミハイロ・ポドリャクは、しかし、本人がイタリアの新聞『ラ・スタムパ』に3月、こんなことを語っている。われわれは急がない。2ヵ月以上をかけて部隊を再配置する。バフムトで露軍を消耗させている間に、われわれは別の場所に集中するであろう、と。

 露軍もATGMを持っている。宇軍がかるがるしく攻勢に出ればどうなるか?
 3-17に宇軍のAPC部隊がザポロシア方面でその学習をしている。オランダから供与された装軌式の「YPR-765」を6両、いちどにやられてしまった。偵察のため南部戦線に8kmまで近づいたところで。

 しかもそのうち2両は写真を見る限り無傷。宇兵たちはATGMに恐怖し、ドライバーまでが車両を放棄して徒歩でスタコラ逃げ散ったと思しい。土人の軍隊か?

 『ポリティコ』による貴重な内情報道。米軍高官は宇軍に文句をつけている。おまえらは砲弾を無駄撃ちし過ぎなんだよと。砲撃に規律がない。狙わずに発射していると。

 塹壕を掘り、ATGMで待ち構えている露軍に、こっちから渡河して攻勢をかけるためには、諸兵種を連携させた攻撃の訓練が不可欠である。NATOはドイツの演習場で宇兵600人に稽古をつけてきた。それは2月に仕上がっている。
 そこにはブラドリーとストライカーが大量に用意されているが、それらMICVはウクライナに送るためのものではない。第一期の600人が卒業したなら、すぐに次のウクライナ新兵を、同じ訓練に受け入れるのである。これを数回繰り返せば、攻勢作戦も可能になるだろう。それが5月だと推定されるのだ。

 次。
 Roman Goncharenko 記者による2023-3-25記事「Why is the US sending ‘downgraded’ weaponry to Ukraine?」。
    米国からウクライナに供与される兵器は、すべて、それが戦場に遺棄されて露軍に鹵獲された場合に困らないように、最先端のデジタル機能を除去してある。特に電子装備を解析されると、次の対露の実戦でいきなりECMを喰らってしまうから。

 たとえばM777榴弾砲には、NATO仕様ではナビゲーション端末とオンボード・コンピュータが付属しているのだが、それらは外した状態で提供するのである。

 ウクライナはそれらを補うために「GIS アルタ」という自主開発のソフトウェアを砲撃指揮に活用している。

 今日、西側軍隊では、砲撃座標等の指示はデータ通信によってなされる。かたや露軍砲兵はいまだに、ヴォイス無線でのやりとりだ。

 次。
 「mil.in.ua」の2023-3-27記事「Rymaruk: There are already more than 2,000 HMMWVs in the Armed Forces」。
    ウクライナ国防省の提携機関「カムバックアライブ基金」の代表、アンドレイ・リマルクが、宇軍に供与されているHMMWVの修理工場について、ユーチューブで語った。

 げんざい、宇軍には2000両のHMMWVがあるという。
 ちなみに、2022-2の開戦前から、宇軍は300両のHMMWVを米国から援助されていた。

 破壊された3両のHMMWVから、2両のHMMWVを再生する、といった仕事が続いている。地雷を踏んだ車体が多い。

 次。
 ストラテジーペイジの2023-3-27記事。
    今次戦争がNATO空軍に提供してくれた貴重な実例。

 開戦劈頭の狙いすました大量の対地ミサイル奇襲を、味方空軍は、事前の徹底的な機体の疎開(地方の臨時滑走路への分駐)によって、無傷でやりすごすことが可能である。

 これは、蓋をあけてみるまでは、なんとも判断ができかねる問題であった。
 ウクライナ空軍は、いくら事前に分散・疎開をこころみたとしても、やはり開戦奇襲のSSM/ASM攻撃を喰らえば、地上において全滅させられるのではないかという心配は、本番まで、払拭できなかった。

 なにしろ宇軍の航空基地には、BMDは無いも同然だった。露天駐機しているところに、いきなり高速の短距離弾道ミサイルが降って来たなら、なすすべはなかったのだ。

 スウェーデンは、2019年に「ムスコ」のひみつ地底海軍基地を、再開した。
 これはストックホルムの南にある山の下に築造されたトンネル状の軍港である。
 1950年から、19年かけて、岩盤をくりぬいた。もちろん核戦争対策だ。

 1500万トンの岩石が発破で除去された。

 スイスは第二次大戦の初期に、「メイリンゲン」に、ひみつ地下航空基地を建設している。

 滑走路の端の部分だけが露天になっているが、あとはトンネル内に延びている。
 1960年代にこの地下基地は拡充され、F-5やF-18を運用できるまでになっている。なお、着陸にはアレスター・ギアを展張する。※普天間にもある拘束装置である。

 次。
 Boyko Nikolov 記者による2023-3-27記事「40 Mirage 2000-9 fighter jets for Ukraine」。
    ウクライナは、40機以上の「ミラージュ2000-9」を受領する気になっているという。
 ソースは、仏ネットメディアの「Intelligence Online」=略して「IO」。

 新品ではない。UAE空軍で保有している機体が考えられているという。

 次。
 AFPの2023-3-25記事「U.S. Charges Russian Spy Who Tried To Infiltrate War Crime Court」。
   米司法省が1人のロシア人スパイを起訴する。これまで非公開にしていたが。
 この39歳の男の正体はGRU将校で、ブラジル人の偽名を騙り、ワシントン大学にもぐりこみ、そこから、ハーグの国際司法裁判所の職員になろうとしていた。

 次。
 The Maritime Executive の2023-3-26記事「U.S. Navy Deploys an LCS to Enforce Fishing Rules in Western Pacific」。
   米海軍は、1隻の最新型LCSにコーストガードを陪乗せしめ、それを南太平洋に送り込む。違法シナ漁船の密漁船団を粉砕するためだ。

 『インディペンデンス』級を送り出す。


1945年製の艦載高角機銃を銃塔ごとAPC上に無理やり載せた改造車を露軍が前線へ投入しつつある。

 Courtney Kube and Carol E. Lee 記者による2023-3-5記事「Two Ukrainian pilots are in the U.S. for training assessment on attack aircraft, including F-16s」。
   いま、ウクライナの空軍パイロット2名がアリゾナ州のツーソンに派遣されていて、彼らがF-16の操縦をマスターするのに何ヵ月かかるものなのかの実験台になっているという。

 この実験台の人数はこれからさらに増やされてデータを取られる。とりあえず追加で10人。

 実験は主にシミュレーターを活用し、実機は使わない。

 ※データ取りが目的なので、シミュレーターは「A-10」でも試すことであろう。その調子が意外によければ、まず「A-10」をくれてやろうという話になるかもしれない。殊に年寄りパイロットをわざわざF-16にコンバートさせても投資効率は悪く、諸資源の無駄となってしまうはずだ。A-10をあてがうのがちょうどいいかもしれない。

 通常、F-16を飛ばせるようになるまでに18ヵ月かかる。米政府に言わせると、ウクライナはあと18ヵ月も戦争したいのかよ、という話だ。

 しかし空軍の部内者の一部などがマスコミに、素質のあるパイロットなら半年とか9ヵ月でコンバート可能だと証言する。そうなると庶民ウケを狙う連邦議員どもが「早くF-16をくれてやれ」とか騒ぐから、米政府としては、とにかく実データを揃えて、科学的に政策を説明できるようにしたいわけ。

 将来、ウクライナ人のパイロットを特訓するとしても、それは30人くらいだろう。
 30人で戦争を終らせられるもんじゃない。

 下院軍事委員会のコリン・カールの言うところでは、ウクライナ空軍は最終的に50機から80機のF-16によって、今のスホイやミグを更新する必要があるだろう、と。

 しかしこれから新造するF-16を数十機も揃えるのには6年かかる。中古機を渡すなら2年でできる。
 そして米国が負担するその費用は110億ドルになるだろう。

 次。
 Mike Hanlon 記者による2009-3-2記事「Mortar Stowage Kit brings automation to the battlefield」。
   ※古い記事です。

 120ミリ重迫は、砲身と床板と2脚がコミで重さが300ポンドもあるけれども、これを最初から一体の形で、ミニトレーラーから地面に下ろしてくれるシステム。陣地を撤収するときにはまた、地面からトレーラーに掬い上げてくれる。操砲員は、アームを動かすボタンを押すだけ。アームは油圧と電力で動くので、人手がかからない。

 これを使うと、重迫の陣地進入や撤収が、たったの3分で済んでしまう。
 つまり、HMMWV+ミニトレーラーで、120迫撃砲が事実上、「自走砲化」するのである。班員の人数も減らせる、大発明だ。

 3分で撤収ができてしまうとなると、敵軍は、対迫レーダーを持っていたとしても、この重迫の座標に対して「撃ち返し」をすることは不可能である。

 BAEシステムズ社が、米陸軍から588個のM326を受注したのが、2007年9月のこと。総額は2050億ドルくらいではないかと見られる。本格量産は2009-6からスタートさせるという。

 ※写真を見ると、ミニトレーラーに弾薬も積まれている。だから万一、弾薬に被弾して殉爆しても、HMMWVは無事だ。

 次。
 Defense Express の2023-3-5記事「Ukrainian Warrriors Use the American M326 MSK Super-Trailer, Which Turns the Mortar Into a Self-Propelled Mortar」。
    120ミリ迫撃砲は、欧米製の最新のものでも150kgのシステム重量。旧ソ連製だと200kgを越える。

 2007年にBEA社が最初の受注をしたとき、この自動布置キットの値段は、1式が2万3600ドルであったという。安い。

 米陸軍の空挺部隊も愛用している。

 ※州兵が装備している写真がネットでヒットするので、州兵の現用兵器をウクライナに供与してやっているのかもしれない。さてそうなると気になるのは、かつてアフガンで大活躍していた、GPS誘導の120ミリ迫撃砲弾だ。まだ相当の数量が米軍の国内外の弾薬庫にストックされているはずだ。それをいよいよ放出するのではないか?

 次。
 2023-3-4記事「Sputnik V vaccine creator strangled to death in his Moscow apartment」。
   ロシア版の新コロワクチンである「スプートニクV」を開発したアンドレイ・ボティコフ(48)が、扼殺死体で発見された。モスクワ市内の自宅で木曜日に。

 1人の侵入者がベルトを使って殺したとの情況証拠/証言あり。
 警察は29歳の容疑者を拘束している。風俗商売に関して刑務所に10年いた前科者だという。

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 2023-3-3記事「Hurricane Airprox operator fined £3000」。
   イギリス人マーク・バギュリーは、2022-7にRAFが「ハリケーン」戦闘機の実物をデモフライトさせたイベントを撮影すべくドローンを近くに飛ばし、パイロットと観衆に重大な危険を生じさせたというので、このほど裁判所から、罰金3000ポンドを課されたうえ、禁錮6ヵ月、執行猶予1年を言い渡された。100時間の勤労奉仕も義務付けられており、来年5月までは、勝手に旅行することは許されない。

 ※こういう確信犯的な阿呆は、ウクライナ戦線で「ご奉公」させた方が宜しかろう。

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 Gary Mortimer 記者による2023-3-5記事「DJI stops selling Aeroscope」。
    DJI社がとつぜん、「Aeroscope」の販売を止めると決定した。これは、半径10km以内を飛んでいるDJI製マルチコプターの位置だけでなく、その操縦者の位置までも把握ができてしまう、有料のソフトウェアである。

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 Svetlana Shkolnikova 記者による2023-3-3記事「US to send bridge-launching vehicles for tank deployments to Ukraine in new $400M aid package」。
    米国から追加でウクライナに送られる装備の中に、「M60 AVLB」が含まれていることが分かった。

 装甲架橋車で、M60戦車のシャシの上に、尺取虫式に折りたたんだカンチレバー橋桁を背負わせたもの。油圧で展張できる。その上をいちばん重いMBTが走っても折れない。

 ※この公表はショルツ訪米の直後なので、こういう意味なのだろう。レオ2ばかりあったって、宇兵がそれを野砲的に運用するのではいつまでも戦争のラチがあかない。機甲戦力は機甲戦力としてフル活用させる。それには架橋戦車も必要なのでとりあえず米軍手持ちの古いAVLBを与える。これにより、レオ2だけでなく、重すぎて浮航ができないM2ブラドリーも、いたるところで露軍の背後へ回り込ませられるようになる。M1エイブラムズは来年の寄贈になるが、ブラドリーはすでに続々と搬入されているから、喫緊の支援車両であった。またこの車体とエンジンの整備にウクライナ兵が慣れてくれると、将来、台湾などに大量にある中古のM60戦車をウクライナへ増派できるようにもなるだろう。その穴は新造のM1を売りつけて埋めればいいのだ。なお、架橋戦車は川を越すだけが能ではない。露軍はクリミア半島の付け根に「マジノ線」もどきを工事中だが、その数線の対戦車壕を任意の数箇所で超壕させねばならぬ。まずはそれに使う気だろう。

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 Boyko Nikolov 記者による2023-3-5記事「Civilian truck is secretly transporting UK Spartan APCs to Ukraine」。
    英国は昨年の開戦いらい、ウクライナに「FV103 スパルタン」APCを送り続けているが、その輸送方法は謎であった。このたびビデオが公表された。

 どうやって搬入しているのか?
 民間の大型トレーラーが使われている。ロシアの衛星によって探知されないように、トレーラーは、フルアルミパネル。したがって中味が何なのかは、誰にも窺い知れないわけ。完全にカバーされた荷台に、スパルタンが2両、入ってしまうのである。

 スパルタンAPCは、自重が11トン。固定武装は7.62ミリ機関銃×1だけだ。

 ※衛星やドローンから見下ろされてもいいように最初から考えることが、これからは、あらゆる兵器を設計するときに、基本的に要求される着意だ。援助用の車両兵器は、できれば「鉄道/船舶用コンテナ」(20フィートコンテナ)の中にそっくり収納できる外寸にするのが理想的である。大きくするばかりが能じゃない。無人化時代、スウォーム化時代の今日では、むしろ小さくまとめておくのがとても有利。「武器援助外交」の自由度、オプション幅が、ぜんぜん違ってくるのだ。

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 2023-3-5記事「OTO Melara Mod 56 105-mm howitzer in service with the Ukrainian Armed Forces」。
    ウクライナ軍は、スペインの演習場で、イタリア製の「オットーメララ Mod 56」105mm野砲の操法を習い覚え、げんざい、ドンバス戦線で使用中である。
 スペイン軍が2022-11に6門、寄贈した。

 この野砲の砲身は、14口径長。
 最大射程は10km。

 大砲は、かんたんに12個のパーツに分解できる。つまりこいつは「山砲」だ。
 イタリア軍は、バラした「Mod 56」を騾馬に駄載して山地機動させるつもりで設計させた。

 防楯をとりつけないことにした場合、この野砲は、そっくりM113APCの内部に収納できる。M113は浮航ができるから、砲兵は、フェリーを頼まなくとも、簡単に渡河させられてしまうわけだ。

 「Mod 56」は、世界の30ヵ国の軍隊によって、採用されている。

 ※こういうのが、尖閣諸島や先島群島の防備用に、便利このうえない装備であろう。ところで、ラバに駄載できるということは、いちばん重い砲身部分でも重量が110kgくらいになるように設計しているはずだ。これは何を意味するかというと、インドシナ戦争中にベトミンやベトコンが駆使した「輸送用自転車」によっても、楽々と搬送できるということ。なにしろ1台で200kgくらいは平気で吊るしていたのだ。さすがに2人がかりで押すのだが、それでもラバの秣の心配をしなくてもいいメリットは絶大だったろう。そこでとつぜん話が変わるのだけれども、読者の中に「自転車の改造」が趣味の人はいないか? ベトナム戦争中の輸送用自転車をリアルに再現したものでひとつ実験をやってみたいので、ご連絡ください。その写真を小生の次著の中で使い、お名前を紹介するというのが、報酬になります。


最新の《note》 https://note.com/187326mg/  は、『The Camel and the Wheel』・ほか です。

 イスラム勢力の出発点はメッカです。そこには駱駝はあったのですが、車両(荷車や戦車)は一切、無かった。
 それなのに、イスラム軍は、先進文明大国であるペルシャ(イラン)を征服してしまった。同様にまた、アナトリア(トルコ)まで征服してしまいました。馬や馬車がゴマンとあった大国の軍隊を、ラクダだけで撃ち破っているのです。

 まさに謎です。敵国の内訌を利用したという説が有力ですが……。

 中世のイスラム教軍の強さを唯物的に究明したければ、アラビアの沙漠にまさしく特化順応していたヒトコブラクダの歴史を知らなくてはなりません。

 知れば知るほど、凄い動物です。反面、ヒトコブラクダが放牧状態で繁殖するには、常時「乾燥」した土地と、短期間の「雨期」とが必要で、そんな条件がないところでは、住民による利用も定着しませんでした。

 また人為繁殖のノウハウを握っていたのはベドウィン系の一部部族だけで、アラブの都市商人たちも、ラクダを繁殖させたりトレーニングする方法を知っていませんでした。彼らにとってラクダは、育てて増やすものではなく、買うものだったのです。

 20世紀のアラビア人たちは、ラクダはじぶんたちの後進性の象徴だと思っていました。それで、恥じるところがあり、誰ひとり、ラクダの歴史なんて研究をしていないのだそうです。そこで米国の東部名門大学の先生が乗り出した。

 膨大な手間隙をかけて、利用可能な資料をほぼ博捜して遂にまめられたのが、この本です。
 1975年に米国で出版された Richard W. Bulliet 氏の決定版的研究『ラクダと車両』(本邦未訳)。

 この書籍をPDFで貸し出している外国の図書館があること等について私に教えてくださった方、この場を借りまして御礼を申し上げます。どうもありがとうございました!

 軍隊と交通/運送手段の関係について、興味・関心がある方ならば、この1冊は必読だと思いました。
 その内容を、私訳によって摘録しました。


兵頭二十八 note

★《続・読書余論》Richard W. Bulliet著『The Camel and the Wheel』1975年刊


みなさま、ご喜捨をどうもありがとうございました!

 電車の吊り広告が出たかどうか知りませんが、『Voice』は発売日が6日ですよね?
 ひさびさに原稿を載せましたので来月はその稿料で少し息をつけそうです。

 2月も初旬を過ぎますれば、函館市内では、みるみる昼間が暖かく体感されるようになります。灯油代の嵩む冬場のピークの危機は乗り切ったかな……と思っております。これもひとえに皆様のおかげでございます。ご支援、ありがとうございました。

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 Megan Eckstein and Stephen Losey 記者による2023-2-5記事「Undisclosed number of Ospreys grounded until clutch-related part fixed」。
    総機数は公表されていないが、米三軍が保有する「V-22 オスプレイ」が臨時に飛行禁止。
 エンジンにつながったギアボックス内に挿入されている「管状の部品」の交換DATEが問題。それをあまり長く交換せずにいると、クラッチの結合を重くしてしまうおそれがあるという。

 海兵隊、海軍、そして空軍がもっているオスプレイは、ぜんぶで約400機だ。

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 SETH J. FRANTZMAN 記者による2023-2-5記事「F-22 performs first-ever air-to-air ‘kill’ – analysis」。
   米宇宙軍は、ウェブサイトで公表した。ヴァジニア州ラングレー空軍基地から発進した第1戦闘機大隊所属の1機のF-22が、AIM-9X サイドワインダーミサイル×1発で、中共のスパイバルーンを撃墜したと。

 撃墜した目標の高度は、6万フィートと6万5000フィートの間であった。
 ミサイル発射時のラプターの高度は、5万8000フィートであった。

 この撃墜をサポートした他の空軍機がある。
 マサチューセッツ州のバーンズ基地(州兵空軍基地)から、複数のF-15が。
 また、複数の空中給油機が、オレゴン州、モンタナ州、南北カロライナ州から離陸している。

 カナダ空軍は、バルーンの飛行経路の追尾に協力してくれた。
 米海軍は、駆逐艦の『オスカーオースチン』、巡洋艦『フィリピンシー』『カーターホール』、また揚陸艦1隻も支援のため展開させた。

 ニュースメディアの『ザ・ドライヴ』によると、地上の民間人が最初にこの気球を目視発見したのは、2月1日のモンタナ州ビリングズ市であった由。

 「フランク01」「フランク02」というふたつのコールサインが傍受されているので、F-22は、2機が飛んでいたとみられる。
 このフランクというのは、1918年にドイツの気球を18機撃墜して議会勲章を授与された、米陸軍航空隊中尉のフランク・ルーク・ジュニアにちなむそうだ。

 FAAは、付近の空港に命じて、民航機の離陸をしばらく停止させている。
 洋上の民間船舶に対してなんらかの警報を出したかどうかは、不明である。

 『ドライヴ』の記事によると、F-22はかつては「AIM-9L/M」を、搭載していた。「9X」ではなく。
 「9X」の「ブロックII」は、F-22から発射後にデータリンクによって標的に空中ロックオンさせることが可能。※だから理論上は真後ろの敵機も攻撃できる。

 こんかい発射した「9X」に通常の爆発弾頭をとりつけていたかどうかは、不明である。

 F-22は2005年に米空軍に実戦配備された。これまで敵機をじっさいに撃墜したことは一度もない。今回が、初手柄である。

 ※なぜF-22が撃墜役に選ばれたのかには、特に謎は無いだろう。「なんで領空侵犯を見逃していたんだ」という米世論と議会からの批判に、米空軍の威信をかけて応える必要があった。万が一にも撃墜に失敗するようなことがあってはならないのである。中共軍は米軍を嘲弄するため、さらに気球の高度を上げさせる可能性もあった。だから上昇力にいちばん余裕があるF-22を選んだまでだろう。もしもサイドワインダーが外れたら、次の手段を何段階にも、準備だけはしていたはずだ。また、こんかい、一切報道は無いが、気球のデバイスからどんな無線信号が送信されているのか、ほどほどの距離からモニターし続けた電子戦支援航空機が、必ず、在空していたはずである。

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 Victoria Bisset 記者による2023-2-4記事「In a world of drones and satellites, why use a spy balloon?」。
   ロンドン大学の東洋アフリカ研究所の所長(支那系)氏が解説する。
 米軍は中共の沿岸域で、恒常的に偵察機を飛ばしている。それと同じことが、シナ軍にはできないものだから、シナ軍は悔しい。世間に対して見栄が張れない。それで、俺たちだって米本土の軍事施設を偵察できているんだぜと、目立つ形で誇示したい。それが数年前からのバルーン飛ばし。実質の偵察能力は、伴っていなくてもいい。視覚的な宣伝になることが、すべて。

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 Sakshi Tiwari 記者による2023-2-5記事「1000 Rounds Fired, Why Canada Could Not Shoot Down This ‘Research Balloon’ Using Best Of Fighter Jets 25 Years Ago?」。
    今回の事件のような高々度用気球は、膜が分厚くタフで、しかも、内部のヘリウムの気圧と外気圧との差がないため、かりに機関砲で穴をあけても、中味のガスはごくゆっくりとしか漏出してくれない。ヘリウムは水素と違って、燃えあがりもしない。

 いまから25年ほど前、逸走した気象観測用の巨大気球を、戦闘機で撃墜しようとしたことがあった。
 そのさい、20mm機関砲の弾丸を1000発以上、貫通させたが、気球は浮かび続けたという。

 APの報道によると、それは1998年8月のカナダでのこと。オゾン層を観測するための気球が、カナダを大陸横断し、大西洋に出て英国領空に到達。さらにそれはアイスラン領空も通過し、ひきつづいて北上しようとした。

 気球がニューファウンドランド上空を過ぎたところで、カナダ空軍のCF-18が2機、これを機関砲で撃墜しようとした。しかし1000発以上を撃ち込んでも、ヘリウムの漏出は緩徐であった。

 その気球の大きさは25階建てのビルに匹敵するものだった。
 しかし、相手は対気速度がゼロ。こっちのCF-18は高速飛行でないと浮いていられない。だから照準と発砲のチャンスが一瞬しかない。それで、てこずった。

 AAMを使用すると、爆発破片のデブリが降り注ぐことになる。下界の住民たちがこころよく思うはずもない。それで、ミサイルの使用は控えるしかなかった。

 他のメディア記事によれば、この1998年の放浪気球には、英空軍機や米空軍機もくらいついたが、撃墜できなかったという。

 ※南米のコロムビア上空を通過中と伝えられた別の支那気球に関しては、続報に接せず。

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 TOC の2023-2-5記事「In the city of Yelabuga, Russia begins Shahed drones production」。
   『WSJ』の報道によると、「シャヘド136」の量産工場はイェラブガという寒村に建設される見通し。年産6000機になるかもしれない。
 1月前半にイラン人技師がやってきたという。

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 2023-2-4記事「Russian oil restrictions could be threat to environment in Gulf of Finland」。
   ロシアから輸出される原油を西側先進国は買わないことにした。制裁として。
 その結果、フィンランド湾にやってくる原油タンカーは、西側先進国が傭船したものではない、いかがわしい素性のタンカーが増えるはず。それらはきっと、バルト海の海洋汚染を増してくれるだろう。

 フィンランド湾には、毎週、60隻から80隻ものタンカーが出入りする。それ以外の貨物船は150隻/週というところ。

 国庫歳入の三分の一を原油の輸出代の上納金に頼ってきたロシア政府は、こんごますます、原油輸出に注力するはず。

 ロシア自身は、タンカー船団は保有していない。だから、外国船籍のタンカーを、ロシアの港まで呼び込むことになる。それに応ずる国々は西側先進国ではなく、その差し回すタンカーは、建造年の古いボロ油槽船船が多いだろう。ナビゲーション装備にも不足のあるそれらのタンカーが、流氷だらけの冬のバルト海で、どんな原油流出事故を起こすか、知れない。

 ギリシャの船会社のタンカーが、きっと傭船されるだろう。

 流氷域を航行するタンカーには、特別に分厚い船殻が要求されるのだが、薄い船殻のボロ船が冬にやって来られると、氷との衝突で船槽に穴が開いて原油が漏れ出しかねない。バルト海は浅いし、フィンランド湾は沼袋のような閉じた海水面だから、汚染は超深刻になる。

 フィンランドの専門家の先生いわく。ノルドストリームを爆破したプーチンには、隣国に対する厭がらせとしてタンカーを意図的に沈めて海浜を原油で汚染してしまうくらいは、朝飯前である。複数のタンカーを同時に沈めておいて、ぬけぬけと「偶然の事故だ」と主張するだろう。いまからバルト海沿岸諸国は、そんな環境破壊テロにも備えねばならないのだ。

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 2023-2-5記事「Britain Bans Migrants from Appealing Deportation」。
   英政府は、「国外追放された」と主張して英仏海峡を渡ってくる「ボート難民」の入国は認めない方針を打ち出す。英『タイムズ』紙の報道。

 2022年には、4万5756人もが、小船で英仏海峡を渡ってきやがった。

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 2023-2-4記事「Coating prevents synthetic fabrics from shedding harmful microplastics in the wash」。
   ナイロン、ポリエステル、アクリル繊維、レーヨンなどの化繊衣類を洗濯機に突っ込むと、洗浄槽との摩擦でマイクロプラスチックが剥離し、それが排水といっしょに最終的には海へ、さらには大気循環で全地球を、マイクロプラスチックが充満した環境に変えてしまう。

 このたびトロントの大学研究チームが、化繊をシリコンベースの有機ポリマーでコーティングすることによって、マイクロプラスチックの生成を防止する技術に目処をつけた。

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 AFPの2023-2-3記事「US, Philippines to restart joint patrols in South China Sea」。
   米国防省の発表。米比軍は、海上における合同パトロールを再開した。

 合同パトロールは、前政権のドゥテルテがとりやめていた。

 ※オースティンはフェルディナンド・マルコスに対して「熊プーは2027年に台湾侵攻すると命じた」という機密情報を伝達したのだろう。台湾作戦の前哨は比島になるから、今から大急ぎで米軍を比島内に再展開してもらった方がいいというコンセンサスに、比島指導層の内部が、達したのだろう。



VOICE2023年3月号


商用4WD車(左ハンドル)の右側ドアをそのまま81㎜迫撃砲の底板にする場合、この「簡易型自走中迫」システムはどこまで軽くできるか?

 いまウクライナ軍に必要なのは、配備まで半年もかかる重戦車ではなく、いますぐ急速に、続々と展開できて、訓練がほとんど必要なく、弾薬補給の心配も将来にわたってまったくありえない「移動火力」である。

 これなら量産と増強のテンポにおいてロシアの今の後方能力を圧倒できる。

 システムまるごとの進退、集中、分散が機敏であるので、ロシア側からみると「対抗不能」である。

 どこが敵の弱点か(いままさに火力を集中すべき方面か)は、最前線のウクライナ兵が判断すればよく、高級エリート幕僚の育成も必要がない。

 この簡易システムにより、最前線の敵軍の士気は全線で萎靡すると期待ができる。

 ではそれをいかにして実現しうるのか、以下に説明する。

 6人乗れる商用4WD車をカスタムベースにする。
 前列の右席は取り払い、そこに81㎜迫撃砲(砲身13~16kg、支持架13kg)を固縛する。

 右側ドアは取り払い、かわりにランプドア(あおり開閉板)をとりつける。
 迫撃砲の底板(12~13kg)は、走行移動中は、そのランプドアに固縛された状態だ。

 ランプドアの開閉は、ワイヤー+滑車+手回しクランク による。
 ランプドアのヒンジは、リジッドにはせず、簡便にとりはずせる構造とし、発射衝撃等によってランプドアがいくら歪もうとも開閉に特に不自由は起こらぬよう配意する。

 参考値。商用乗用車のドア1枚は、十数kg~25kgていどの重さがあるらしい。

 車両の後席には、砲員2~3人を乗せ、当座発射見込み分の迫撃砲弾(1発 4.1kg)を、複数発、積む。

 81㎜迫撃砲弾に充填されているTNTは700グラムである。ドローンから投下できるチャチな擲弾とは比較にならない致死威力を発揮する。

 一般的な対人用の81㎜の迫撃砲弾は、最小レンジは150m。最大は5600m。零下46度でも問題なし。

 もし、ACERMという特殊な高性能弾薬を使うと、レンジは20km、GPSまたはレーザー誘導で誤差1mで落ちるという。
 対戦車用の特殊な81㎜の自律誘導砲弾もある。

 5km台という距離は、最も簡便なクォッドコプターの往復進出可能距離(ラジオ通達距離)にほぼ一致する。偵察と、射弾の観測は、商用のクォッドコプターを役立てることができる。

 5km以内まで敵戦車が近寄ってくることは考え難い。というのは、その距離だとジャヴェリンやTOWが届くので。

 このシステムは、数週間にして数百、数ヵ月にして数千、2年あれば数万も増強してやることができる。露軍はもっかの後方兵站環境ではこれに対抗することはできず、全線で、圧倒されてしまう。

 西側製の重戦車×数百両で、1年後に、露軍を敗退させたとしよう。そのあとのウクライナはどうなる?
 専門の訓練を受けた膨大な人数の戦車兵を、戦後も、そっくり、維持し続けなくてはならなくなる。

 それは民間経済の復興に回せる人材を無駄に拘束することと同義である。

 私が提案する簡易火力システムならば、兵隊は戦後は全員、復員してしまって可い。
 車両は、迫撃砲を卸してしまえば、商用の運搬車として復興に使うことができる。

 迫撃砲は倉庫にしまっておいても邪魔にならない。

 この簡易火力システムは、台湾有事など、将来、別な地域で侵略事態が発生したときにも、各地に同じようにして応用することができる。

 読者の篤志の方にお願い。
 このコンセプトに基づいて実車サイズのモックアップを製作し、その動画を撮影してSNSにUpしてくれる人はいないだろうか? 世界の軍事バランスを日本のアイディアで変えよう!
 なお御礼として、道南の回転寿司くらいは、奢らせていただきます。


ドイツはすでに2022年夏から、約100名のウクライナ軍将兵に、レオパルト2の運用に必要な教育を開始していた。

 NTVDEという独ニュースTVチャンネルのすっぱ抜き。ウクライナ政府関係者も肯定した。
 この人数はどんどん増やされる予定だという。

 ※独政府は欧州諸国の最先頭に立ちたくない。しかし水面下では、やることはやっている。ウクライナ軍の自前の整備能力は今でも不十分なのに、高性能AFVをあまり急激にたくさん与えられても、単純に故障続出するのが目に見えている。これは仏国内でも同意見。しかし旧東欧やバルト海沿岸諸国は、気持ちとして、とても待ちきれるものではない。

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 2023-1-12記事「Hundreds of U.S. military vehicles arrive at Dutch port before moving to Poland & Lithuania」。
   ポーランドとリトアニアに今年後半、展開する予定の数百両の米軍車両が、まずオランダの港に陸揚げされた。

 ※おそらく米軍の見積もりとしては、半年くらい教育に時間をかけないと、ウクライナ国内で西側最先端の重AFVの整備ができるようにはならないだろうと思っているのだろう。しかし旧東欧やバルト海沿岸諸国は、とうていそんな悠長に構えていられる気分ではないのだ。

 ※雑報によると、ラトヴィアとリトアニアを結んでいたガスパイプラインが謎の工作部隊によって爆破された。

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 2023-1-13記事「The Ministry of Defense will acquire UAVs for 20 billion UAH in 2023」。
   ウクライナ国防省は、今年、2000万UAHを投じて各種のドローンを調達するつもりだ。
 ※UAH=1ウクライナフリブニャは3.48円。

 国内で製造している航空ドローンとしては、「Leleka-100」「А1-SM Furia」「Windhover」「PD-2」「ACS-3」などがある。
 Leleka-100 は2020年に完成。今、エクスカリバー砲弾を誘導するのに使っている。

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 謹告。私事ですが、地方での葬儀に参列するため、暫時、PC通信ができない環境に移動します。
 この間、緊急のご用がある方は、携帯電話にお願いします。


すべての戦争は「消耗戦」(war of attrition)になることで終局に動く。

 例外が、『孫子』の謂う「戦わずして人の兵を屈する」宣伝&心理戦政略と、そのカウンターである「伐謀」という上策。このふたつに失敗すれば、侵略に抗する側の独立防衛策としては、ぎゃくに長期戦化を狙うしかない。それは消耗戦以外の何物でもあり得ない。

 だから、弾薬が大事。それはハイテク正面装備よりも大事。ISRの次に大事(敵を知り、己を知らなくては、策を立てられない)。

 火薬や鉄道の発明は真の革命だった。だがそれも戦争を短期化することにはつながっていない。

 ハイテク兵器は戦争を短期化しない。『孫子』は兵器を論じていない。戦争が長期化するか短期化するかは、兵器技術の高低とは何の関係もないのである。ここを錯覚させたのが「RMA」というたわごとだ。

 1979の中共による対ベトナム戦争、1991デザートストーム、2001タリバン放逐作戦は、孫子の「拙速」を守ったから《一撃離脱》で短期化できた。ハイテク兵器のおかげで短期化できたわけではなくて、政府が出口戦略を開戦前に決めていたから短期化できたのである。そこを誤解させたという点で「RMA」という浅薄なキャッチコピーの罪は深い。今は死語だと信じたいが……。

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 Hritika Mitra 記者による2023-1-66記事「Russia shells Ukrainian city hours after announcing temporary ceasefire: Report」。
   AFPの速報によると金曜日、さっそくロシア軍はウクライナの都市を砲撃した。プー之介が「金曜日の午前9時から、土曜日の午後9時まで、停戦する」と嘘をついてから数時間後のこと。いまさら誰も驚かぬ話。

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 Sergio Miller 記者による2023-1-6記事「Russia’s withdrawal from Kherson」。
   ドニプロ河の左岸、ヘルソン州から、露軍は撤退した。この撤退作戦のスケジュール表をウクライナ軍は入手した。それを解析することで、いくつか貴重な所見が得られた。

 露軍全体の中で、「空挺部隊」(VDV)が、ものすごく最上部から信頼されていたのだ。親衛ナンバーのついた機甲部隊などよりも、断然に。

 これをわかりやすくたとえれば、VDVは、湾岸戦争のときの「サダム親衛隊」の地位だ。いまの露軍においては「VDV」(約1万人)が大黒柱なのである。

 ということは、もしこのVDVをあのサダム親衛隊のように撃砕殲滅してやることができさえしたら、91年のイラク軍がたちまち雲散霧消してしまったように、露軍も即座に全軍が崩壊した蓋然性が高い。
 そのチャンスはあった。しかし、宇軍は敢為を欠き、みすみすその長蛇を逸してしまった。

 ヘルソンから露軍が出て行ったのは、宇軍が「反転攻勢」したからではない。
 河の部分凍結が迫り、補給が切れて孤立する危険があったので、自主撤退したのである。

 まず宇軍は、HIMARSによって、ドニプロ河にかかっていた「アントノフスキー鉄道橋」および「アントノフスキー道路橋」(この2つは橋脚を共有していない)と、その70km上流部の「ノヴァカホウカ水力発電ダム」の上端を利用した道路&鉄道併設橋を、精密に打撃し損傷させ続けた。これはもちろん意義があった。

 「アントノフスキー道路橋」は7-20に最初のハイマーズ攻撃を承け、それから14週間にわたり、修理のたびにハイマーズ攻撃された。

 3つの橋は、おおよそ、8月第一週の週末以降は、露軍が軍用交通路として頼れなくなってしまった。
 だが、「アントノフスキー鉄道橋」には石油燃料のパイプラインが併設されていて、そのパイプラインは破壊されずに機能し続けている。

 HIMARS攻撃にもめげず、露軍は、重門橋(ポンツーンフェリー)を5箇所に架設して、右岸への支援を続けた。

 ※記事には浮橋ではなく重門橋と書いている。記憶がさだかでないが、戦車用の浮橋も1本ぐらい無かったか?

 11月に撤退するまで右岸で露兵4万2000人が戦い続けている。

 最終局面では、民間用の車両渡船や自航バージも徴発されて使われている。

 フェリーやバージは動くものだから、HIMARSでは当てられない。よって固定橋よりもしぶとく生き残り、活動を続けられる。

 ※この戦訓からすぐに出てくる結論。重門橋を1発で転覆させられるくらいの、FPV操縦式自爆ドローンが必要である。破壊力は、最低50kg投下爆弾級。

 撤退するまでのあいだ、右岸の露軍には「燃料不足」の兆候は皆無であった。果敢な逆襲行動も見られた。

 撤退を強いたのは、冬の結氷が迫っていたからだった。平年だと、連続して20日、真冬日が続けば、ドニプロ河は結氷する。
 氷は、岸から中央に向けて張り出して行く。こうなると、フェリーや門橋は接岸が不可能になるから、フェリー自体が無傷で存在していても、意味はなくなる。だから露軍はそうなる前に撤収した。

 言うなれば、露軍を右岸から追い払ってくれたのは「冬将軍」であった。HIMARSではなくて……。

 露軍上層では、虎の子のVDVを、ルハンスクの守備へ転用したいという判断もあっただろう。

 これに対して宇軍は果敢に圧迫攻勢をかけ得なかった。リスクを嫌い、遠くから見ていただけだ。
 ここは、リスクを取るべき局面だった。プロ軍隊ならば……。

 もし4万人がそこで捕虜になればプー之介の屋台骨も揺らいだはずだ。一気に戦争を終わらせられたかもしれないのである。

 このとき、宇軍には、VDVを中核とする4万人を殲滅する好機があったのに、宇軍はそれを逃した。

 ※衛星写真を見ていたすべての先進国軍隊の情報部は、「歯がゆい」と感じたのだろうね。「俺たちなら、ここで全力チャージだ」「突撃喇叭を吹けよ」と。敵の半渡に乗じ得る千載一遇の場面なんだから。それが伝わってくる記事だ。

 次。
 2023-1-5記事「Ukraine: Getting F-16s is more realistic than creating our own version of Iron Dome
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   ウクライナ空軍のスポークスマンいわく。ウクライナにイスラエル式のアイアンドームを構築するのは資源面で不可能。そんな夢物語よりも、F-16戦闘機を供給してくれさえすれば、現実的なミサイル防衛が可能になるのだ――と。

 なぜアイアンドームが非現実的かというと、国土面積がイスラエルとは大違いで、防衛すべき重要資産がその広い国内のあらゆる都市に散在しまくっているから。

 カネの上でも問題外。その上、そのシステムに貼り付けねばならないおびただしい人数の専門技能兵と将校たちをどこから集めてくるというのか。ロシアの大軍と熾烈な陸戦の攻防が続いているこんなときに。考えるだけムダな案である。

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 Defense Express の2023-1-6記事「For a While U.S. Has Been Delivering Weapons to Ukraine By Sea and Railway, and the Scale is Impressive」。
   米軍の輸送機関が対宇支援物資をどのくらい運んだかの一端が明かされている。

 船で積み出した車両などは、ギリシャのアレクサンドロウポリ港か、ルーマニアのコンスタンツァ港に揚陸して、そこから陸送に接続させているようだ。

 空輸は、開戦前はキーウに近いボリスピル空港を使い、開戦後は、ポーランドのRzwszow空港を使っている。平均して毎日3機、武器弾薬満載の輸送機が着陸している。

 「ラストマイル」の運搬にはトラックが用いられている。

 IDCC=国際寄贈者調整センター という臨時機関が立ち上がっており、そこが受け付けた武器弾薬がそこからどこへ行くかは一切秘密にされている。

 ※仕事早すぎ! もうブラドリーの援助第一陣が、民間のトレーラーに乗せられてウクライナ国内を走っているのが撮影された。

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 Defense Express の2023-1-6記事「40 Marder Vehicles by March: Germany Reveals to the Pace of Long-Awaited Deliveries, How Many More to Expect Afterward」。
   APの報道ではドイツはマルダーをとりあえず40両、ウクライナに送るという。

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 Defense Express の2023-1-6記事「Ukraine’s Buk SAM Will Receive RIM-7 Sea Sparrow Missiles, Which Solves the Missile Shortage Problem」。
   『ポリティコ』の特だね。米軍はすでに技術問題を解決した。旧ソ連のSAMシステムから、「シー・スパロー」を発射させることができる。ウクライナ軍保有の「Buk」の場合、そのシースパローのバージョンはまったく問わないという。

 シースパローは米本土に大量の在庫がある。だからこれは朗報である。

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 ストラテジーペイジの2023-1-6記事。
   ロシアは無計画にも、フィンランド国境付近での大軍拡方針を表明していて、それには同地に30個師団を新規に駐屯させる必要がある。建物も、これから造るという話だが、仮に建物ができても、人が集まるわけがない。ウクライナで喪失した2個旅団の穴埋めすら、ままならないのだから。

 ただしプー之介がやっていることには国内政治的な合理性もあって、レニングラード方面ではプー之介の「失政」は有権者からほとんど非難されないのである。政治地盤なのだ。レニングラード管区で徴兵された兵隊がウクライナで大量に戦死しても、他の地方ほどにはプーチン批判の声は上がらない。

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 Ashish Dangwal 記者による2023-1-6記事「US Nuclear Submarines For Australia Hits Rough Waters; Canberra Confident of AUKUS Deal Despite Leaked Letters」。
   豪州に原潜を売るという話に、上院議員のジャック・リード(民主)とジェイムズ・インホフェ(共和)の2名が、懸念を表明する連名書簡をバイデンに送っていたことが判明した。

 リードは上院の軍事委員長である。もうひとりのインホフェは引退が決まっている長老で、この委員会内の共和党メンバーの筆頭。

 要するに米国内の原潜造船所はパンク状態だから。
 余計な注文を入れることで、米海軍用の最新の原潜の調達スケジュールに悪影響が出てしまう。

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 2023-1-6記事「Army holds combat readiness drill in Chiayi featuring tactical drone」。
   台湾の国営兵器開発部門である「中山科学技術研究所」が開発した、シングルローターのヘリコプター型の近距離用物資輸送無人機が、初めて防衛演習で飛ばされた。

 演習は、嘉義空港を占領しようとする敵を、機械化歩兵旅団で拒止するという内容。

 この無人ヘリは「カプリコーン」と称し、自重25kg、戦闘行動半径30km、高度は1500mまで行ける。滞空60分。

 ボーフォート・スケール「6」の強風下でも飛行可能。もちろん夜間にもサーマルイメージで視野が確保される。

 ナビ用のセンサーは三重にしてあるので、ひとつが電子妨害を受けても切り抜けられる。

 台湾陸軍は米ドルにして2537万ドルの予算で100機を発注。そのうち28機は2022年中に納入された。2024年までに残りが届く。

 ※米海軍は正月早々、台湾海峡でFONOPを実施していて、士気旺盛だ。

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 Joseph Trevithick 記者による2023-1-5記事「Mexican Light Attack Plane Strafes Cartel Forces After Arrest Of El Chapo’s Son (Updated)」。

 メキシコの麻薬組織シナロア・カルテルの幹部を逮捕しようとするのにメキシコ軍はライトアタック機による機銃掃射が必要であり、それに対してカルテル側が、「.50」口径のセミオート狙撃銃「バレット」で対空射撃しているビデオがSNSにUpされている。こんなムチャクチャな国が合衆国と陸上国境を長々と接しているのである。

 ライトアタックの機種が、まだ判明していない。ビーチクラフトの「T-6C+ テキサンII」か、ピラトゥスの「PC-7」だろう。そこに固定武装としての機関銃が搭載されているのである。

 メキシコ海軍はテキサンにFN Herstal社の「HMP250」というガンポッドを1個吊るしている。これは12.7㎜のM3P機関銃である。
 またメキシコ空軍は、テキサンとPC-9とPC-7を運用する。このうちPC-7には、やはりFNのガンポッドを搭載できる。

 どちらの機種もふだんは練習機として使われていて、こういう捕り物があるときなどに、武装して対地直協に任ずることが可能。ただし従来だと、銃撃はヘリコプターからすることが多かった。


(管理人Uより)

 2022年度のユグドアへのご喜捨、送金額(若干の出金手数料が差し引かれるのです。ただしユグドアへのマージンというのは無いようです。不思議なサービスです)、メッセージ、Kindleの売上、送金額の報告書を兵頭先生へ送信完了。皆様、いつもありがとうございます。
※簡略化した報告メールは随時、報告書は毎月送信してもいます。兵頭先生もユグドアのアカウントは閲覧可能です。私だけが閲覧・操作できる状態はマズいので。


鐘撞き放題、ただし有料……というニッチ・ビジネスは、どうだろう?

 東北とか北海道は山の中に土地が余っているんだから、そういう山奥に「鐘撞き堂」を置いて、賽銭箱に現金を投入すれば、誰でも1年365日、1日24時間、いつでも何発でも鐘つきほうだいできる――というようにすればいいじゃないか。

 ストレス解消にもなり、インスタ映えもするだろう。アクセス歩道にはソーラー照明を設置するとよい。

 ……というわけでみんな、正月そうそうすまぬが、「カネをくれ!」。

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 Kris Osborn 記者による2022-12-24記事「What it is Like to Fly an F-35: Interviews with Three F-35 Pilots」。
   F-16からF-35に乗り換えたパイロットの感想。
 F-35の搭乗員は、パイロットというより、センサーの監督。

 豊富なセンサー情報を見渡して、次に打つべき手を決める。それが仕事。

 F-16はもちろん、F-22であっても、空対空の戦闘のさなかにこっちがAAMを放った後の面倒な心配事がたくさんある。それは本当に命中したか? 敵の方からもAAMやSAMが飛んできてはいないか? それを避けるためにじぶんは機動しなくちゃいけないんじゃないか? 首をひねって回りを見渡さねば! ……これらの心配事が、F-35の場合、まるで、無用なのである。

 すべて、見えている。肉眼では何も見えやしない距離なのだが、統合センサーの表示パネルが、必要なことぜんぶを明瞭にリアルタイムに教えてくれるのだ。だから、操縦者が肉眼で警戒をしたり、肉眼で外界を確かめる必要がない。こんなに仕事の楽な戦闘機も無い。

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 Peter Aitken 記者による2022-12-30記事「Kremlin showing cracks as Putin fires another general, British Intelligence says」。
   英国防省の情報分析によると、露軍のイェフゲニィ・ニキフォロフ中将が、露軍の西部軍集団の司令官に据えられようとしている。

 ニキフォロフはこれまで、露軍東部軍集団の参謀長であった。

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 Boyko Nikolov 記者による2022-12-31記事「Damages to 16 of 18 Caesar SPHs delivered to Ukraine ? Le Figaro」。
    フランスはウクライナに18両の「カエサル」装輪自走砲を供給したが、はやくもそのうち16両が損耗している。

 故障の理由は露軍のせいではない。砲身内部の耐久性が足らぬために実戦の激しい連射によって焼蝕が進行してしまったのだ。
 『ル・フィガロ』紙12月28日刊号がすっぱぬいた。

 仏軍はカエサルを2008から使っている。砲身は52口径長である。
 ロケットアシスト弾を使うと最大レンジは50km。

 ※ちなみに露軍の新鋭の牽引式152ミリである「2A36 ギアツィントB」榴弾砲はレンジ40km、それより古い「D-30」三脚牽引砲だと22kmである。

 ウクライナは、榴弾砲の修理は自国内で実施したい。いちいちポーランド領まで持ち出したり持ち帰ったりするのでは、その輸送の途中を露軍に攻撃されるおそれがあるので。
 そうでなくても国外整備は時間がかかりすぎるとウクライナ軍は感じている。

 ウクライナ国防相はとうぜん、フランスのルコノー国防大臣に前々から「ルクレール」主力戦車を供与してくれと頼んでいる。
 しかし仏側は、ウクライナ人に新鋭戦車の整備は無理、という理由で拒否している。

 カエサルは、ベースのトラックを6×6にしてもいいし、8×8にしてもいい。デンマーク軍はタトラの815のシャシ(8×8)に載せている(現有19両)。このデンマークが何門かをウクライナに無償提供することを、フランスは許可している。

 あまり報道されていないアイテムとしては、「HDP-2A2」という対戦車地雷を、フランスはウクライナに供与しているそうである。

 ※ウィキによるとこれは自己鍛造弾薬と電子フューズを組み合わせたスマート地雷で、仕掛けて10分後に活性化し、獲物が通りかからなかった場合は30日後に自動で無害化する。仏軍は2006年に40万発も注文した。他にはベルギー軍とノルウェー軍がユーザー。スイスは「対戦車地雷88」の名でライセンス製造している。炸薬3.3kg。地雷の厚さ104ミリ。水深1.5mの水底にも仕掛けられる。

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 2022-12-26記事「German power to the people, trains and stations of Ukraine」。
   ウクライナ国鉄「UZ」は、「ドイチェ・バーン(独鉄)」から、63基の「発電機」をプレゼントされた。
 この発電機、動いている列車の中でも、使うことができる。とつぜんの停電が発生したときに、それによって短時間、車内照明や暖房を継続できるというわけだ。

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 Emma Helfrich, Tyler Rogoway 記者による2022-12-30記事「U.S. Building Advanced Over-The-Horizon Radar On Palau」。
    フィリピンとグァムとニューギニアの中間にあるパラオ諸島。ここに米空軍が、新しいOTH(超水平線)レーダーを建設して、中共軍の動きを見張る。

 レンジが戦略視程ではないので、戦術移動式OTHレーダー、略してTACMORと称する。
 グァム島に近づく物は何でも遠くから分かってしまう。

 建設予算として1億1840万ドルがつけられた。
 完成は2026-6を期す。

 ※中共軍がグァム攻略に資源を集中する気配があるが、米軍はそこから一歩も引く気はない。アプラに碇泊するイージス艦の対弾道弾迎撃機能も強化するようである。

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 ストラテジーペイジの2022-12-30記事。
   スペースX社の新ビジネス構想。スターリンクのような無数(数万機)の小型衛星群に、地上センサーも搭載してやる。そして、そこから得られる全地球規模のリアルタイムの情報を、国家機関に切り売りする。米政府と、同盟国政府の。

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 2022-12-31記事「South Korean National Assembly delegation visited Taiwan: MOFA」。
   韓国の国会議員団が、訪台した。12-28から31日まで。
 台韓友好議員団というのがあるのである。

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 Lawrence Chung 記者による2022-12-31記事「Taiwan’s plan for 1-year compulsory military service includes teaching young conscripts to fire missiles」。
   2024年から、台湾の徴兵年限が4ヵ月から1年に延長されるのにともない、訓練内容を高度化する。すなわち、歩兵銃の操作だけでなく、スティンガーやジャヴェリンも扱えるようにする。

 ※1630年代、すなわち三十年戦争のさなか、スウェーデンのグスタフ2世は、じぶんの歩兵たちに、乗馬して機動できることと、砲兵の代役にもいつでもなれるよう、野砲の操砲までも教え込んでいた。歩兵をマルチタスク化した先駆者である。

 1987年以前の台湾の徴兵は、3年も服務する義務があったので、それにくらべたら緩いものだ。

 新制度にともなって俸給も増額される。今は6510台湾ドルしかもらえていないが、それを20320台湾ドル(660米ドル)以上にする。

 小火器訓練も、たんなる的射ち練習ではなく、彼我近接した市街戦の基本を教える。
 実弾も1年間に800発は撃たせる。

 ※わが陸自も、三曹以上になったら、ただの小銃班員であるとしても、対戦車誘導兵器、対空兵器、ドローン等のうち複数の操作の知識があるようにしておくことは、これからは当然だと思う。ウクライナ人は3ヵ月ですべて覚えたぞ。


(管理人Uより)

 あけましておめでとうございます。

 正月早々ユグドアのご喜捨の送金手続き完了。
 右や左の旦那様、皆様から兵頭二十八先生へのお年玉でございます。

 今年も兵頭二十八ファンサイト半公式をよろしくお願いします。