ISはイスラエルには興味は無い。

 イランはヒズボラやハマスをイスラエル周辺から抽出してシリアに送り込み、ISと戦闘させている。イランはアラブ人(セム族)を、宗派の違いなく支配操縦することに長けている。その逆は無い。だからアラブ人はイランを恐れる。ヒズボラとハマスは、どこかの政府軍などと違い、かなり真面目にISと戦闘していて、数千人が死んでいる。
 これはISには脅威だ。だからヒズボラでもハマスでもない「反イスラエル・ゲリラ」に口先秋波を送って、ヒズボラとハマスのこれ以上の増派を止めさせたいのだ。ISはイスラエルには関心は無い。イラン人とその手先の全シーア派の絶滅だけが、ISの関心事である。だからISは対欧米テロも仕掛けない。ISの主たる利害はイスラエルと一致するので、じつはISはイスラエルとは擬似同盟者なのである。
 「コスト・パー・キル」問題。
 中共の保有する軍艦および準軍艦の隻数は、「自衛隊の保有する対艦ミサイルの総数」よりも多い。このような事態をいまのいままで放置しておいて、これから対艦ミサイルを使って戦争しようなどと考えているのだとしたら、海自はキチガイである(旧陸軍ですら、ソ連と戦争するときの弾薬所要量はいちおう計算して、かろうじて足りる分をストックしていたものだ)。
 唯一の解答は機雷である。機雷は敵海軍の動き全体を止めてしまう。港湾への出入り、補給の授受、沿岸での移動も止めてしまう。そして、中共という悪の政体そのものも亡ぼせるのである。
 中共ぐらい機雷に弱い経済システムはない。海は東側にしかない。しかも、すべて浅瀬である。はるか沖まで延々と水深26m以内の浅瀬が続くということは、機雷は複雑な繋維式でなく、最も安価な沈底式で足りるということ。そして中共の掃海技術では、沈底機雷は発見することすら不可能なのだ。(フィリピンや日本は全周が海なのでそもそも機雷ではブロケードされ得ない。また主要港はすぐに26m以上ある深い海につながっているので機雷の種類も繋維式を使うしかない。それは日本の技術では発見も掃海も確実にできる。)
 フィリピン本土の陸上からてきとうに投射すれば、南シナ海を自走してシナの大陸棚に向かい、深さ26m以内の浅瀬に、ランダムに数発の沈底機雷を敷設できるロボット。
 これは日本の技術を使えば簡単にできる。それを「武器のODA」としてフィリピンに大量供与する。さすれば、フィリピンが全ASEANに代わって中共にトドメを刺してくれる。
 参考になるのは、「ウェイヴグライダー・Wave Glider」や「シーグライダー・SeaGlider」や「シーエクスプローラー・SeaExplorer」だ。
 形態は、魚雷に翼をつけたようなもの。
 原理は、暖かい海洋表面水と、冷たい深海水の「温度差」を利用する。熱で膨張しやすい物質をピストンに導入。そのピストンで空気室を圧縮すれば全体の比重が重くなり、沈む。
 沈むとき、翼があるので、真下へは沈まず、斜め下方へ前進する。
 水中で感熱物質は放熱して収縮する。ピストンは後退し、空気室の容積は広がり、比重が軽くなるので、マシンは浮上を開始する。
 浮くときも、翼があるので、真上へは行かず、斜め上方へ前進する。
 ひたすらこれを繰返す永久機関だ。浮上した時にはGPS機能付き無線電話で自己位置を確認する等ができる。進路はINSで維持する。
 スクリューが要らないので電源も電池も最小で済む。
 シーグライダーは700m、シーエクスプローラーは1000mも潜るようになっているけれども、南シナ海や東シナ海で使う場合は50mも潜らせる必要はないであろう。したがって1機は10万ドルしないで造れる。こんな安い武器援助があるか? それで中共の脅威が消えてくれるんだぞ。
 シーエクスプローラー等は、潜水艦の魚雷発射管から運用することを考えているのでサイズが窮屈である。しかし日本がこれから造って援助するシステムは、もっと自由に寸法を取って可い。


次の海兵隊の制服親玉は、ネラー。

 『こんなに弱い中国人民解放軍』が小生の単著としてはかつてない刷り部数になっておりまして、つくづく、日本の大衆は「シナ軍は強い。おそろしい」という嘘話にはもう厭き飽きしているのだなぁと感じています。ところでこうした啓蒙図書が売れるということはとてもいいことなのですが、日頃貧乏な著者の場合、出版社に対する立場は却って弱くなっちまいまして、いくつかの「要修正事項」を、気安く「直してくれ」とも言えなくなるのであります。そこでこのさいこの場を借りて修正しておこうと思います。
 13頁1行目。連隊とあるのは大隊です。これは原稿には大隊と書いておいたのに、活字になったのを見たら連隊に変わっているわけです。校正さんが「上富良野にあるのは連隊ですよ」と余計な入れ知恵をしたのを担当編集者さんが真に受けたんでしょうね。で、わたしに相談なく変えてしまった。これでもう著者としては察するわけです。ああこの編集者さんには直しの要求を出すとかはまるで無駄であると。ならばもうすべておまかせしてとにかく売ってもらえばいいじゃないと。
 これは『孫子』にいう「勢」であります。すっかりいいようにおまかせをすることによって「勢」をつくってもらえば、結果オーライになるだろうとわたしも判断しました。編集者さんも複数の企画を同時に進行させているので、超ご多忙でしょうからね。
 まあわたしの履歴とかはどうでもいいんですが、だんだんどうでもよくなくなってくるのが103ページ1行目。「迎撃用のICBM」って何ですか? これは「反撃用のICBM」と書いたのを、やはり勝手に直されちゃって、わけがわからなくなっているわけです。部数三千部くらいで終わるならこんなものしょうがないか、すきにしてくれ、で忘れるつもりでしたけれども、1万部を超えて部数が伸びるにつれ、さすがにここはひとこと指摘をしておかないわけにもいかなくなりました。
 この本はわたしとしては『大統領戦記』の合間にかなり急いで書き上げた、あまり練ってもいない本でして、他のメチャクチャ力を入れたタイトルとくらべまして、内容を誇ろうという気には著者としてはちっともならないのですが、それがいちばん売れてしまっているというのは、じつに考えさせられるものがあります。『極東日本の~』とか『北京が太平洋の~』とか『日本人が知らない~』の方がずっと力を入れたものでしたのに……。手抜きをした方が売文商売としては成功するのか? 悩んでおります。
 以下、おもしろニュースのご紹介。
 星条旗新聞のTravis J. Tritten記者による2015-7-1記事「Blog: F-16 beat F-35 Lightning II in air combat test」。
 「戦争は退屈だ」というブログ(medium.com/war-is-boring)によると、F-35はF-16に空戦テストで勝てなかった。これは1月に加州エドワーズ空軍基地で実施されたテストに参加したF-35乗りの直接の証言である。
 しかしこれには開発担当部局からの反論あり。いわく。このときのF-35には最新センサーがとりつけられておらず、またステルスコーティングもしてなかったのである。また、ヘルメット内のセンサーがパイロットの視線を検知して、視野内の特定の敵機に、彼我の位置関係や自機の姿勢と無関係にAAMを指向せしめ得るソフトウェアも搭載していなかった――と。
 ※この論争には興味が無いが、思いつきしことあり。これからは空戦中に、敵機の光学センサーを眩惑してやれる、自動追尾性の防禦レーザーが開発され、装備されるであろう。垂直尾翼の端、主翼の端から、それは四周の随意方向に対して1点指向的に照射される。ドッグファイトの対手たるF-35式のパイロットのヘルメット・バイザー内には、もはやレーザーの点滅しか画像が映らなくなるのだ。これなら視線によるロックオンどころではないはず。同じ「光指向兵器」は、原発や飛行場を防空するための「フラックタワー」にも装備されるべきだろう。有事にはGPS類はECMにより全部狂わされるので、敵の発射する長射程巡航ミサイルは、最終ガイダンスを光学センサーに頼るしかない。その光学センサーを、フラックタワーからの自動追尾レーザー+マルチスペクトラムの指向性ECMで眩惑させれば、強力な煙幕と同じで、INS頼みの長射程ミサイルは、大きく外れるしかないだろう。指向性エネルギー兵器は、何も対象物を燃やしたり破壊するだけが能ではない。センサーを眩惑させるだけでも、価値があるのだ。
 次。ストラテジーページの2015-7-1記事「The Hidden Flaw Of The Su-30」。
 スホイ27系を使っている大きな軍隊は、ロシア、シナ、インドだが、そのうちインドだけがスホイ30のトラブルにみまわれ続けてい理由は何か。
 たしかにインドの気候は蒸し暑く、また、国営企業の品質管理の悪さはある。だがそれだけではない。
 じつは、インド空軍は、「実戦のように訓練せよ」という西側軍のモットーに忠実なのだ。そのため、そのモットーを有しないロシア空軍や中共空軍よりも、平時に多数の墜落機が出てしまっているのである。
 裏を返すとと、ロシアとシナのパイロットは、実戦的な訓練をほとんどしていない。空中での移動距離も、スピードも、機動の激しさも、実戦とはほど遠いレベルで済ませているのだ。それではいけないということは理解しているのだが、改革せずに今日まで来ている。
 平時の訓練をいいかげんなものにして自己満足するのは東洋の特徴的な流儀なのか? 違う。日本軍は対米戦の前から西側基準で鍛えていたので、開戦1年目は米英軍機をパイロットのスキルで凌いでいた。
 西側戦闘機の稼働率は70%だがインドのスホイ30MKIは55%である。
 喪失機はほとんどがエンジンが原因である。ロシア人は、それはエンジンに使われているボールベアリングのせいだと主張している。
 インド空軍は、訓練がまじめなので事故率が高いのである。
 ※これは何を意味するか。いざ実戦になったとき、インドの平時の事故率よりも中共軍機の事故率はもっと高くなり、中共軍機の稼働率はこっちが何もしなくとも急速に0割に近付くということなのだ。それともうひとつ。実戦的な発射訓練をロクにやらせていない中共の長射程巡航ミサイルは、有事には、不発射、途中墜落、逸走、不発が続出するであろう。
 さらに余談。
 国会の「違憲」vs.「合憲」論争に興味のある人は、拙著の『「日本国憲法」廃棄論』の文庫版の巻末附録を読むと、いちばん わかり易いよ。
 違憲なのは、九条二項の後半部分の方なのである。憲法条文が違憲なのである。こういう直感が働かない老人や青年は、さいしょから憲法学には向いてないのである。江藤淳は「法律と格闘する人はカンがよくないとだめだ」と言っていた。
 内閣法制局は、吉田茂から密命を受けていた。「爾後アメリカの命令で、李承晩や蒋介石ごときのために日本兵を半島や大陸へ出すことが二度とありえなくなるように、憲法解釈で今から縛っておけ」と。だから古手の法制局の役人が「派兵=違憲」論の立場に立つのは、「裏吉田ドクトリン」の当然なのである。
 古い法制局 vs. 外務省北米局・条約局 のバトルが展開しているのが、今の国会である。
 安倍内閣がこれをブレークスルーしようと思ったら、「政体として民主的な正当性を有する韓国政府から、日本政府に公式文書をもってする公開的な事前の嘆願がなされた後、さらに国会でそれを審議し懸念の無いことを確認できた後でない限り、わが自衛隊部隊を朝鮮半島内陸部において韓国軍と協同作戦させることは絶対に控えなければならない」と閣議決定することだ。これで「裏吉田ドクトリン」の遺命は保たれるから、古い法制局も黙るであろう。


「読書余論」 2015年7月25日配信号 の 内容予告

▼防研史料 『砲兵学 講本 第二版 巻ノ二』
▼防研史料 歩兵学校ed.『三一式山砲取扱上ノ参考』
 この大砲は反動で後退しっぱなしではなく、バネの力で車輪が逆転して元の位置に自動復帰するロボット設計であったこと。
▼防研史料 『試製90式野砲概説』陸軍技術本部 S5-9
▼防研史料 『野戦砲兵射撃教範 改正草案理由書』教育総監部 M39-11-20
▼西浦進・談『昭和陸軍秘録――軍務局軍事課長の幻の証言』2014-8
 1967~68に木戸日記研究会が服部卓四郎大佐の同期の西浦進に聴き取りし、近代史資料研究会から1968末に刊行した『西浦進氏談話速記録』上下巻・非売品を、改題したもの。いくつかの「聞き間違え」的な字がそのままである。1970-11の西浦氏の死後、この資料が2014までわかりやすいタイトルで市販されなかったことは遺憾だ。この資料を先に読んでおいたならば誤解しなくて済んだはずのことどもが、すこぶる多い。これから旧軍のエリート軍人について研究したい若い人は、まっさきにこの1冊に目を通す価値がある。
 西浦にいわせると、池田純久などは10月事件の黒幕でもなんでもない、雑魚である。あくまで巨頭は鈴木貞一なのだ。
 企画院は、機密保持ができないところ。出向者ばかりで、それぞれ親元があるから。
 西浦いわく。青年将校はきれいではなかった。隊務をろくにやってない。普段から仲間としても尊敬されていなかったのが集まって、そこで志士気取り。そんなのが過半数だった。
 陸大へ行く人間は、隊務においても優秀。
 米人のグリッフィース准将は、戦後、西浦のところにまでインタビューに来た。『米国極東政策史』を書いている。ベトナムについても上院で証言している。ロンドン大学で孫子の研究をして本を書いたのと同一人物。
 ※前の新書版を若干改訂の上、あたらしくPHP文庫に入った兵頭編『新訳 孫子』は、本日書店搬入です!
 中共の暗号はロシア仕込みで、解けなかった。
 フランコは、反政府軍であるゆえ、みずから「革命軍」と名乗っていた。戦力の中軸は、外人部隊とモール人〔ムーア人〕。このモール兵の下士官は指に10個の指輪をはめている。もちろん略奪品。キリストの像以外は、なんでも持っていく。
 盧溝橋事件が「事変」に昇格したのは、杉山陸相が、政友会の白髪農相・島田俊雄から焚きつけられて、その熱弁に共感してしまったのである。
 田中新一は、当時、軍事課の入口のところで地図を前にして立ち、「点と線だけを持っておればいいのだ」と言っていた。しかし戦後になり、「日本軍は点と線しか持っておらんから支那事変は解決しなかったのだ」と言うようになった。
 対ソ戦に動員する予定の半数でしかない15個師団の動員でいきなり小銃が不足してしまった理由。シナ戦線では前線が錯綜し、後方兵站部隊や傷病兵までが小銃で自衛しないと危なかったため。対ソ戦では、砲兵など小銃は持たぬつもりでいた。その流儀が対支戦では通用しない。
 日独防共協定は、岩畔高級課員がひとりで進めて実現した。
 ナチスは情報統制ができる体制だった。ドイツ・スクールの日本の武官たちは、国防軍から情報をとらず、ナチス党からの情報だけに依存しており、そのため、現実離れした報告だけが東京へ送られた。欧州の他国駐在武官からの報告も、ベルリンの大使館でとりまとめてスクリーニングして握りつぶされていたので、その時点で終わっていた。※西浦と服部はフランス語スクール。田中新一はロシア語スクール。
 戦前は、本省費と軍事費が別である。軍事課だと、2~3人以外は、本省費が足りない。それでしかたがないから、技術本部付兼軍務局課員とか、兵器本廠付兼軍務局課員ということにして、軍事費から俸給を出すようにしていた。本人は、じっさいは技術本部になんか挨拶にも行かないし、覗くことすらなし(p.249)。
 三国同盟は、スターマーと松岡と大島(前大使で無職時代)が膳をつくり、陸軍大臣と陸軍省は、その据え膳を食わされた。武藤局長も食わされた。
 加藤軍神。あれは、隊長も部下も最優秀な奴を揃えて、かろうじて、脚の短い一式戦で、上陸直前までの掩護ができたという話。南部仏印の、そのまた沖のフコク島に飛行場をつくらねばエアカバーは届かなかった。
 飛行場は、夏から昼夜兼行で数ヶ月かけて建設した。飛行場設定隊長たちは、飛行場の中で露営をしてやりとげた。
 この一式戦は量産させようとしてもなかなか増えなかった。
 プロ軍人は、青年将校時代から、ものごとを計画的にやれと鞭撻され、先制主導が習い性になる。戦略でも戦術でも。だから、「そのうちどうかなる」という態度は問題外だったのだ。石油を取るために南方へ行かないとか、南部仏印に入らないという選択は、米国の経済制裁を受けている中では、もう省部幕僚の誰も考え得なかった。※しかしハイオク・ガソリン以外の油脂は輸入できていたはずで、インタビュアーがなぜそこを突っ込まないのか、もどかしい。
 西浦はなぜ関特演には反対したか。対ソ戦をやれば、対ソ戦のための油がガッツリ消耗するから。
 当時、陸軍は、半年分の油しか確保していなかった。
 ソ連と戦争して半年でカタがつくか? 絶対無理である。だからヒトラーに呼応してまずシベリアを叩くなどという選択はなかったのだ(p.335)。
 田中隆吉は空襲恐怖症で神経衰弱になったのである。S17の中頃。彼が防空の主担任局長だった。木村次官もこいつは神経衰弱だ感づいたが、「よし辞めろ」とはなかなかいえなかったところ、何かのときに向こうから「私は辞めさせてもらいます」と来たものだから、すぐに事務処理をして辞めさせて、入院させた(p.370)。
 広島の一報が来たとき、軍事課の部下で、いまは山一證券の支店長をやっている若い参謀が「あ、これは原爆だ」とすぐ言った。そのくらいには、わかっていた。終戦の頃には、常識化していた(p.382)。
 陸軍省は、参本に向かって「この作戦をやめろ」とはいえない。統帥権がないので。そこで「船はやれない」の一点張りで、ガ島作戦を中止にもちこもうと図った。
 戦陣訓にいちばん熱心だったのは阿南。阿南と岩畔でつくって、東條にラジオで放送させた。
▼土肥一夫、他ed.『海軍 第八巻 航空母艦 巡洋艦 水上機母艦』S59-9
 ※今回は空母と水上機母艦の章を摘録。巡洋艦は来月に。
 米空母は、格納庫の側面をできるだけすっとおしにした。これは爆弾の爆圧を逃がしてやり、飛行甲板が膨らまぬようにするためだった。と同時に、火災時に、格納庫内の燃えそうな物はどんどん舷側へ投棄できる。設計の最初から、そこまで考えてたのである。
 水上機母艦はなぜ廃れたか。波浪が高いときに、多数の水上機を短時間に揚収する方法がない。これでは艦隊決戦向きではない。
 水上機母艦の『神威』には、ドイツで考案された「ハイン・マット」=ハイン幕が一時期とりつけられていた。水上機を8ノットで航行中にデリックとスプールで揚収する。
▼経済雑誌社pub.『国史大系第十六巻 今昔物語』M34
 ※巻第16から。
 わらしべ長者は原話だと別に富豪にはなっていない。中流の上くらいで、そこそこ楽に暮らしたというだけ。
 ◆  ◆  ◆
 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。(配信されるファイルはPDFスタイルです。)
 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。
 大きな図書館に毎日通えない人も、最低費用で、過去の軍事知識のマニアックな勘所に触れることが可能です。
 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。
 「読書余論」は、毎月25日に「武道通信」から最新号が配信されます。1号分の購読料は500円です。
 バックナンバーも1号分が500円で、1号分のみでも講読ができます。
 過去のコンテンツは、配信元の「武道通信」のウェブサイト
http://www.budotusin.net/yoron.html
 で、タイトルが確認できます。
 PDF形式ではない、電子書籍ソフト対応の「一括集成版」もできました。詳細は「武道通信」で。
 ウェブサイトでわからない詳細なお問い合わせは、(有)杉山穎男事務所
sugiyama@budotusin.net
 へどうぞ。


雹[ひょう]の季節と、見込みがない「繋留気球レーダー」

 軍隊と新兵器について考える者は、国内外の地図だけではなくて、気候・海洋気象についても、そこそこ関心をもっていなければならない。というか、「常識の在り処」についての直感が「天象」についても少しは働くようでなければならない。
 たとえば、昔から存在したシステムなのに、現在、世界じゅうであまり普及していないように見えるものに気付いたとき、あなたは、そこには何か、尤もな理由があるのではないかと、疑ってみても損はない。
 アフガニスタンでは、タリバンが2001年からNATO軍の航空機に与えたよりも多大な損害を、雹が与えている。
 ヘリコプターやC-130(戦術輸送機)は、要注意だという。
 1機のC-130に、アルミ合金の外鈑に凹みができる威力の雹弾が2000発以上命中するのだ。エルロン(主翼後縁の舵)やアンテナは特にまずい。
 小型のVIP輸送機などは、雹に打たれるて全損になることすらある。
 直径25ミリ、重さ100グラム以上の雹弾は、飛行中の軍用ヘリを墜落させる。それでアフガン政府軍には死者も出ている。
 雹の終速は、時速200kmである。最大級の雹になると、1個の重さが1kgに近い。
 雹は落下しながら溶けていくが、高度5000mくらいではまだ冷え冷えなので、航空機へのダメージもでかい。
 もうわかっただろうが、位置固定で、上げっぱなしの「バルーン」なんて、雹や暴風や落雷や結氷や紫外線や塩や酸性雨や大気汚染物質にいためつけられ続けて、各部は地上のレーダー施設よりも早く劣化する。破壊事故を防ぐために、上げたり下ろしたり、点検したり部品交換したりを頻繁に繰り返すマン・アワーと維持コストは、たいへんなものになる。
 「阻塞気球」ならば問題は少ない。洋上で台風が荒れ狂っているときに巡航ミサイルも超低空では飛来しないだろうからだ。
 テムポラルに昇騰させるだけの、戦術偵察用気球とか、通信空中線用気球も、同様である。
 だが「防空レーダー」の一翼を担わせるとなったら、寸秒の空白もつくることは許されない。そのためには予備機が何台も必要であり、人員は各ステーションに24時間途切れなく貼り付けておかねばならぬ。予備機や繋留ワイヤーも、傷む前に、次々と更新していく必要がある。その備えのための初期コスト、メンテナンスのコストはいかほどべらぼうになるか。そうした「相場値」を直観的に頭の中に思い浮かべ得なくてはならない。
 2006にカルガリーで、離陸直後のB-727が雹に突っ込み、コクピットがヒビで前が見えなくなり、引き返したことがある。
 雷撃は、数年に一度、飛行機を落としている。すべての飛行機は年に1回くらいは雷撃されている。めったに落ちないようにはなっているのだが。
 バードストライクは、年に40人くらいを殺している。雹による死者は、それよりは僅かである。
 AH-1は、ローター頂点のピッチ調節ロッドに体重1kg以上の鳥が衝突すれば、わずかな曲がりから激しい共振が発生してローターがバラバラに吹っ飛び、乗員は助からない。2011年に海兵隊のAH-1Wが堕ちた実例あり。
 双発機は四発機よりもバードストライクに弱い。2009の「ハドソン川の奇蹟」事故では、両エンジンに鳥が飛び込み、どちらも停止してしまったのだ。
 今日では、スウォームのマイクロ・ドローンによって、バードストライクと同じ効果を狙うこともできる。だから警察と海保は、ドローンを墜落させるためのECM装置やGPS攪乱装置、「ビーム・ウェポン」に類する装備を充実させなければ、大災厄が起ころうとするのを指をくわえて見ている他になくなるであろう。


中共はグローバルホークに妨害電波を発射していた。P-8への警告と前後して。

 ストラテジーペイジの2015-6-27記事「Thailand: Generals Confusion」によると、クーデター政権を運営中のタイの高級軍人たちはすっかり中共に買収され、暗黒面に落ちつつある。
 たとえば、3隻の41型宋級(キロ級パクリ型)潜水艦を中共に注文したのが証拠。それはタイの海軍にはほとんど用の無いので、多額のキックバックを提示されて、不要の買い物にサインしたとしか思われない。
 ※今日では相手に用の無い兵器でも、賄賂を使えば簡単に買わせることができてしまう。世界中が腐り切っているためだ。昔ギリシャがロシアからホバークラフトを買ってどうしようもなくなったのも一例だ。これが「武器輸出」が解禁されたときに直面する、ひとつの深刻な問題なのだ。日本の商社員は有能だから、こっちの活動で有能さを証明してしまうかもしれない。そこをクリーンに保たせるにはどうしたらよいか? 詳しくは8月刊行の『兵頭二十八の防衛白書2015』に書いておこう。 あと、7月2日の書店には、PHP文庫版新刊の『新訳 孫子』が並ぶと思います。新書版を少し改訂しました。
 タイでは毎年数百人もがテロで殺されている。その正確な統計が無いくらいの無茶苦茶なリスキー・カントリーである。さすがに警察が、南部イスラム教圏の住民の総DNA登録を開始したが。
 満州まで出た脱北者は、シナ人の「蛇頭」組織に6000ドルを支払えば、タイまで連れていってもらえて、そこで在タイの韓国大使館に駆け込むことができる。中共とタイは陸上国境は接していないが、ミャンマーかラオス経由で浸透してくる。もしタイ官憲が発見しても、鼻薬を使えばフリーパス。
 ところがウイグル人の密出国の場合は、タイ警察は鼻薬を受け取らないという。国境で追い返してしまい、中共に通報して、中共警察が〔おそらくラオス内で〕拉致し、射殺するのだろう。
 2015-6-28の記事「China: The Fearsome Four Million」によると、ラマダン入りした新疆のウイグル人たちに地方行政庁が「レストランと食料品店を昼間も営業しろ」と命じたためにシナ人警官3人が殺されるテロ発生。
 あとから駆けつけた軍警が見物人のイスラム教徒住民に銃弾を浴びせかけ、6-22に数十人〔おそらくは粉飾数字で、数百人かもしれない〕が死んだ。
 またいわく。MERSは2012年にサウジアラビアで駱駝の病気として始まった。サウジでは人間の死亡率40%、そして韓国では人間の死亡率12%である。 スーダン、米国、フィリピン国内でもMERS患者は見つかっているが、その拡大を止められないのは韓国だけであると。
 ※グロホに妨害電波とは、もはや他人事ではない。民航と共用の三沢から運用するのは、どう考えても正気ではない。地方の過疎空港をUAV専用に借り上げるべきである。


P-1は対潜哨戒機としては大量整備されんことがほぼ決定

 ただいま『兵頭二十八の防衛白書2015』の執稿最終段階で、マンガ家さんのフラフラ状態と同じありさまで、英文ニュースの紹介なんぞやってる場合じゃないんだけど、この記事だけは取り上げないわけにいかない。
 Ian Duncan記者による2015-6-21記事「US military seeking ways to knock drones from the sky」。
 ピーター・シンガー先生が、面白い本を出すみたいだ。チャイナと米国が、ドローンで戦争するSF。彼はいま、ニュー・アメリカ・ファウンデーションに籍を置いているという。
 彼の調べによると、武装ドローンを使っている国は8ヵ国で、その中にはパキスタンもあると。
 米国のアマゾンでは410ドル出せば、ゴープロ級の動画を空撮できる4軸ヘリドローンを買える。
 ドローン〔だけでなく、ロー&スローの飛翔体すべて。たとえば動力付きパラフォイル〕を普通のレーダーだけでは警戒できない。鳥と区別がつかないからだ。そこで、レーダーと望遠カメラを精密に融合させる方法が研究されている。
 ヴァジニア州のドローンシールド社は、自宅を空から覗き見されたくない人や軍のために、「聴音機」を開発した。ドローン特有の飛行ノイズを、150ヤード先から探知できる。
 飛翔する昆虫を空中で捕える肉食昆虫がいるが、そのセンサーを研究すれば、回答が出てくる。
 加州の基地では毎年、「ブラックダート」演習あり。UAVに対するさまざまな武器を試す。直近の演習では、明瞭に、イランのUAVを想定していた。
 ミサイルよりもドローンの方が安いということが大問題。「コスト・パー・キル」という。
 レーザー砲なら「1発1ドル」なので精力的に研究中。
 「投網発射砲」は漫画ネタだが、まじめに考究されている。
 以下、他媒体の過去ネタより。『チャイナ・デイリー』が2014-11-4に載せた話では、中共は低空ドローンを撃墜できるレーザー砲を実験したと。射程1.2マイルで、5秒の照射で撃墜できると。標的機は高度500m以下、速度は180km/時。
 兵頭いわく。ドローン撃墜用に、無炸填で何度でも回収して再利用できるSAMやAAMが必要になるだろう。離島では回収困難かもしれないが……。直撃によって撃墜する。あるいは空中でネットを火工品で発散してからめとり、着水後はブイを出して揚収しやすくする。これで証拠品も確保する。
 ついでに『兵頭版白書』の内容を少し前宣伝しときましょう。
 2015-1-14のどこかの記事にこんな話が出ていました。先月、スコットランド北端沖にロシア潜が来たので、米英合同で空からハントした。米のP-3Cはシシリーから飛来した。ロシア潜が定期的にやってくる理由は、そこに英軍のSSBN基地があるから。このハントには、フランスとカナダの哨戒機も加わっていた。これは『エヴィエーションウィーク』の特報。英国は財政難から2010にASW努力を放棄してしまった。ニムロッドは、その年から更改が必要なオンボロ機である。
 ……それで、英国はP-1のメーカーの川重と共同開発したがっているという話が違うところから聞こえて来る。これは乗ったらいいでしょう。というのは、日本国内では、ASW機としてはP-1は10機かそこらで調達が打ち切られる可能性が出てきたからです。海自がテストして、ダメ出しした。P-1は、メーカーズ・トイだったのです。米国製のブラックボックスの最新対潜専用コンピュータを積み、米海軍の対潜センターと、米軍の作法に則って暗号で直結リンクが維持されないようなシステムでは、機体ばかりがいかほどに高性能だろうと、無価値なのです。それでわかりました。あれほど兵器の国内生産にこだわるインドがなぜ、P-8の完成品輸入を了承したのか。インド人には、ASWはネットワークシステムだってことが、よ~く、呑み込めるのでしょう。
 では英国人はP-8の、というか、米海軍の対潜ネットワークシステムの威力を知らないのか? 知っているにきまっていますが、彼らはもっと別な思惑があるに違いない。米海軍のASWセンターにはアクセスできない第三世界に対して、こいつは売れるぞ、と踏んでいるに違いない。それは、乗ったらいいでしょう。英国はブルネイの国防にコミットしています(グルカ兵駐留)。だから、中共のためになるようなマネはしない。任せて大丈夫です。彼らがおもしろい案を出してくれるのを期待します。対潜ヘリを全廃しちまって後悔しているスウェーデンはじめ、バルト沿岸国にも、売ってくれるかもしれん。


海兵隊の装備のスキャンダル構造

 2015-6-15付ワシントンポストのThomas Gibbons-Neff記者による記事「Why the Marines have failed to adopt a new sniper rifle in the past 14 years」。 面白いので摘録したい。
 アフガニスタンではマリンのスナイパーチームは8人で行動していた。こっちが先にタリバンを発見することもあれば、あっちが先のこともある。しかし彼らはいつも思い知った。どっちが先に発砲しても、敵の中機関銃の方がロングレンジで、こっちは撃ちすくめられてしまうと。
 そうなると、味方のCASを呼んでかたづけてもらうまで釘付けで、あとは何もできなくなるのだ。
 この情けない無様さの原因は、海兵隊の正式狙撃銃が「M40」といい、その口径が0.308インチで、基本的にベトナム戦争時代の非力な弾薬だからだ。それをず~っと使わされているためなのだ。〔ちなみに我が六四式小銃の薬莢の中身の装薬を3割ほど増量すれば、海兵隊の0.308弾と同じである。〕
 2003年のイラク侵攻のときも、マリンはM40A1という、この古めかしい狙撃銃の改良バージョンを携えていた。弾薬は、同じである。
 いまでもマリンはM40である。バージョンはM5からM6にアップグレードされようとしているが、しかし弾薬は同じだから、射程は同じ1000ヤードにとどまる。
 マリンのスナイパースクールは、ヴァジニア州クァンティコ基地にあり。その教官に聞いた。
 オレたちも、陸軍のような0.300ウィンチェスターマグナム実包(ウィンマグ)か、NATO諸国軍が狙撃手に使わせている0.338〔ラプアマグナム〕を発射する狙撃銃が欲しい。これらは射距離が大であるだけでなく、弾道がブレないので1000m以上でも容易に当たるのだ。
 米陸軍は2011年から、0.300ウィンマグを採用している。おかげで彼らは海兵隊の狙撃兵より300ヤードも余裕を得られるのだ。
 ペンタゴン用語では、狙撃銃のことはPSRという。プレシジョンスナイパーライフル。
 じつは、海兵隊の狙撃銃は、プレシジョンウェポンズセクションという、海兵隊の中にある「専門造兵廠」において生産されているのだ。修理もここで一手に引き受けている。その「工員」はほぼ全員、海兵隊の「武器係」である。
 もし海兵隊が他の狙撃銃を選択すると、PWS部門はリストラ対象になっちまう。だから、M40がアフガンでいくら不評でも、捨てられないのだ。
 陸軍は狙撃銃を民間メーカーから直接購入している。軍の造兵廠で製作したりしない。その方が、同じものを調達するのでも、予算が半分で済むのである。そして、もっと良い別な製品に乗り換えることもできる。
 すでにNATO同盟国はぜんぶ、狙撃銃を0.338口径ライフルに切り換えた。ひとり米海兵隊だけが、0.308を使っているのだ。
 ※いいえ。米海兵隊の忠実なコンバインド片割れ部隊である、わが陸上自衛隊をお忘れなく。
 風が吹いている環境下では、0.308と0.338の違いは圧倒的である。
 M40の射手は、微風下でも、風による弾道偏差を計算(因数分解)しなければならない。弾重の大である0.338なら、そんなことは気にしなくていいのだ。
 海兵隊は、いうならば、銃撃戦にナイフを持って飛び込もうとしている阿呆と同じである。海兵隊は、早く0.338に狙撃銃を切り替えるべし。
 ※この記事が米世論を動かせば、海兵隊はM40を捨てることになる。すると米海兵隊のコンバインドの片割れである陸上自衛隊も、M40ではいけなくなる。ところで、かつて陸自がM40の採用を決めたことで、海兵隊のPWS部門はどのくらいの利潤を得たのだろうか?


ISが 志願者用のオンラインのテロリスト基礎指南講座を改訂

 ストラテジーペイジの2015-6-13 記事「Counter-Terrorism: Useful Advice For Potential Holy Warriors」によると、ISが海外の新兵志願者向けのオンラインマニュアルを改訂した。
 たとえば、新人戦士は、どうやってモスレムになったことを隠してその国を無事に出国するか?
 ヒゲをはやすな。イスラム風の格好をするな。礼拝は常に独りの時にせよ。目立たぬように軍事訓練せよ。それにはペイントボールを発射するトイガンが役に立つ〔サバゲーを独りでやれということ?〕。決して軍服風の衣類を身につけるな。
 女は、黒いヘッドスカーフはいかん。カラフルなヘッドスカーフでごまかせ。
 ISでもアルカイダでもタリバンでも、組織の上の幹部になればなるほど、公共電子通信にはいっさいノータッチである。クーリエ(伝令使)に口上を暗記させて、部下との間を行き来させるのみだ。盗聴/傍受される可能性がある有線電話や無線の使用は、最初からしないのである。
 しかし組織の下っ端にまで、それは強制できない。それが悩みなのだ。
 ※基礎解説しておこう。 タリバンは、アフガンの支配にだけ関心のあるスンニ派の鎖国主義集団である。かつてはサウジがスポンサーでパキスタン北部においてイスラム復古主義ワッハービズムを仕込まれたが、それは今はどうでもよくなっていて、芥子畑ギャングとつるみ、ヘロインの密輸権益を独占するためにアフガン人同士で殺しあっている。反ユダヤ主義とも無縁である。しかしアルカイダ幹部をかくまったために、アメリカ人は、タリバンとアルカイダを同一視するようになった。今は米国指導部が誤解に気付いて「手打ち」の交渉中。 アルカイダは、アメリカ攻撃と西欧攻撃に行動のプライオリティを置く、スンニ派復古主義指向の国際テログループである。80年代にパキ北部でCIAがムジャヒディンを後援していたときのサウジ人義勇兵が中心。今のサウド家などはアメリカやCIAの同盟者であるから滅ぼさねばならないと思っている。シーア派攻撃にはあまり興味がない。それが不満な者が、袂を分ってISを立ち上げた。 ISは、異端=シーア派=イランを絶滅することだけを唯一の行動目的として意識している、スンニ派シリア人とスンニ派イラク人中心の非国家戦闘集団である。アメリカとかはどうでもよくて、とにかくイランの影響を、中東ならびにアフリカ北部から排除したい。そのためにシーア派は必ず皆殺しにするつもりである。またシーア派以外のグループでも、「異端」「異教徒」「無神論者」のレッテルを貼ることができる近郷近在のすべての弱者に対しては、いかなる略奪・殺害・性奴隷化行為もゆるす。それが魅力となって、海外から志願兵を集めている。
 次。Przemys&&22;aw Juraszekという〔ポーランド系の?〕署名が珍しく付いている、ストラテジーペイジの2015-6-14記事「Death By Cellphone」。
 2015-6にISの馬鹿者が自撮り(セルフィー)を公開し、それをもとに米軍が22時間後に航空機からJDAMを3発投下して敵司令部建物を吹っ飛ばした。おそらく、写真データの中にGPS座標データを混ぜ込んで記録するモードをOffにしていなかったため、投稿データから、位置情報がバレたものと想像されている。
 しかしこのような「携帯規律」の問題はすでに正規軍でも起こっているのだ。
 携帯電話にカメラ機能が附属するようにったのは西暦2000年からである。
 やがてG3でそれを電送しやすくなった。
 2010年までにはSNSに写真投稿するのはごくあたりまえのことになった。
 2007年にイラクのゲリラが、迫撃砲攻撃によって4機の米軍のアパッチ攻撃ヘリを破壊することに成功した。その砲撃は、馬鹿な米兵がGPSデータ情報込みのアパッチの写真をUpしたことが手掛かりとなったのであった。
 ISの新人訓練指南書は強調する。写真を撮影するときは、現在位置データが保存されない設定とせよ。ISメンバーの顔が映っている写真を許可なく投稿してはならない。SNSに自己プロフィールを載せるときに、絶対に他教徒への殺意などほのめかすな。
 最前線の兵隊が携帯カメラで味方の支援砲爆撃の景況の写真を撮り、それを電送することで、味方航空機や砲兵に、この目標をもういちど叩いてくれ、という要求を出す。これは今や、普通になっている。たとえば東ウクライナ戦線の両陣営において。※間接FACだね。
 以下、兵頭の見立て。
 ペンタゴンが疲れた。以前はオバマが中東派兵を渋り、ペンタが尻を叩くという関係だったが、逆転した。スーザン・ライスとマクドノーが、シナと戦争するのが厭なのか、かつてのゲイツ長官のメソポタミア&アフガン向け「サージ」路線に戻ってきた。これにペンタはうんざり、というより、おそれおののいている。ペンタの代案は、もはやひとつしかないだろう。宿敵イランとの裏同盟だ。ISはシーア派皆殺し主義集団なのに、イラク人のシーア派は伝統的に無能・無気力なので、現イラク政権(シーア派)ではとても、イラク人(マジョリティはシーア派)の未来はなくなる。ISによる大虐殺とスーパーイスラミック難民時代の到来を予防するためには、軍事的に中東で最も有能なイランの「クッズ」(イラン版スペツナズ)と組むしかない。そうするとサウジはそれにブチキれて、イスラエルと組んで芝居を打ち、先にイラン空爆を始めるかもしれない。しかし米国は、「イランに関与する」政策によって、イランの核がイスラエルやサウジにとって危険でなくなるようにできるんだよ、と、イスラエルやサウジを説得できるだろう。ペンタはこの代案をこっそり共和党に説くのではないか。
 もうひとつのオプションは、国連すらも注目しはじめた、南アフリカのニュー・タイルのPMC=私営軍隊会社のSTTEP社である。ナイジェリア政府はこの会社に400万ドルを支払って3ヵ月間作戦してもらい、ボコハラムをほとんど壊滅させたそうだ。しかし契約により彼らは3ヵ月で帰ってしまったので、またいずれボコハラムも国境地帯で復活するだろうが、とにかく全くあたらしい「国連傭兵」の可能性までが、アフリカにおいては見えてきたのである。アルシャバブもこの手で膺懲できるわけだよ。それにしても「3ヵ月したら、敵を絶滅していなくとも、遠征作戦をやめて引き揚げる」とは、なんと『孫子』の「拙速」を正しく理解した会社であろうか。アメリカ人はいつまでもこれが分らないから、泥沼にハマるともいえる。しかしアフガニスタンでは、アメリカ軍特殊部隊は、一般の村人の「好意」を完全に収攬したようだ。アレキサンダー大王いらい、こんなことができた外国人は、アフガンでは初めてだろう。だからアメリカ人は馬鹿にはできないのだが、アメリカ大統領府の「選挙屋」側近たちが、大局眼や史眼をもちあわせていないのだ。


本日の雑話

 数学系の英文ブログに2015-6-11、「Throwback Fact: German Tank Problem」という記事が出ていたので摘録しよう。
 第二次大戦中、米英軍は、ドイツの戦車供給力の把握に努めた。さいしょ、エスピオナージ情報をいろいろ総合したところ、月産1400両という、信じられない数値になってしまった。
 そこで、別なアングルからの精査にとりかかることにした。
 着目されたのは、鹵獲したドイツ戦車についているシリアルナンバーであった。それらはユニークなもので、一筋縄では意味不明だった。
 ともかく、シリアルナンバーのサンプルをできるだけ集めて、そこから、正確な量産ペースを読み取れぬものか、数学(統計学)者たちが諮問された。
 数学者たちは、サンプルを眺めて、この場合の不偏の最小分散推定値を方程式によって定義し、ついでその分散を統計学的に計算した。「月産225両でしょう」と彼らは報告した。
 戦後、調査隊がドイツの記録を押収して確かめたところ、実数は、月産256両であったと判ったそうだ。
 敵の戦車の供給量が読めたことで、米英軍は、それをあしらうためのマンパワーの計算を、確信をもって進めることができた。
 以下、兵頭いわく。
 シナ軍は強大だというシナ人の宣伝をそのまま日本国内で「利用」しようとする「軍事評論家」の態度は、日本国のためにはなっていない。
 それではヘタレなマスコミと官僚と財界と政治家が、戦わずして中共に屈することになるだけだからだ。
 シナ軍は弱いという事実ありのままを指摘し続け、幼稚な自我を抱える儒教圏人の面子を潰し続ける営為こそが、リアルに日本国のためになるであろう。
 なぜならシナ軍は、事実を指摘されるとムキになってそれを否定しようと思い、無理に無理を重ね始めるからである。
 たとえば、「地上のレーダーで管制され得ない空域まではシナ軍戦闘機は飛んで来られない」という事実の指摘に反応して、彼らは、むりやりレーダー管制域外までも飛ぶようになった。これは近年稀な、日本の市井の論筆家の手柄(平時における戦果)なのである。エース(5機撃墜)がすでに誕生していたとしてもおかしくない。
 まさにそれこそ、我が軍の思う壺だろう。なぜならシナ空軍は、飛べば飛ぶほど壊れていくエンジンしか持っていないのだから。
 もっともっと、日本の軍事評論家は、シナ軍に関する正確な指摘をメディア上で続けることによって、この種のシナ軍の愚行をけしかけ続けた方が、日本の安全は増すことになるのだ。
 シナ軍の兵力を、戦わずして半減させる方法を、我々は掴んでいるのである。その武器を「真実」という。
 嘘によって国益を得ようと思ってはならない。それではISや北鮮と同じである。


Sending U.S. air controllers is bad idea. The better way is …

Heavy but short-ranged rockets with laser-homing devices.
Iraqi trucks can carry 1 or 2 of the rockets on each as SP-heavy-mortars.
U.S. can equip Iraqi FAC squads with handy laser spotting devices like PEQ-1C SOFLAM.
No CAS, but heavy and precise DS would be manageable for them and may be good enough.
 ……だが心配は、そのシステムもISが鹵獲しちまったなら、どうなるんだ ってことだ。特攻自動車の代わりにGMLRSの単射・短射程版が飛んでくることになる。またJTACの技術情報がロシアに漏れる。それゆえに米軍は、このアイディアを実行しないのだと思われます。