「さつちゃん」

 Jacob Bogage 記者による2015-8-8記事「Beretta’s fight to arm the military」。
 米軍用のベレッタM9拳銃はメリーランド州のアッコキークという町で製造されている。
 しかし米軍は、このM9にかえて、新拳銃を選ぼうとしている。それは2017年からの採用となるので「XM17」と仮称される。※採用されれば「X」がとれて「M17」と呼ばれるわけか。
 過去40年間、アッコキークの街ではM9工場のおかげで100人以上が雇用されていた。しかし米軍の次期制式が別メーカーのものになると、民間市場での売買規制強化もあり、相当人数は解雇されるだろう。
 次期米軍制式拳銃の契約総額は、5億8000万ドル。これを、いままでは軍への納入では後れをとっていたグロック社やスターム・ルーガー社と競わねばならない。
 老舗のコルト社はこの夏、破産会社となった。同社が左前になるきっかけも、70年間軍に納入してきたM1911(コルト.45オート)拳銃が軍制式の座を1985にベレッタM9に奪われた時だった。
 1985年にM9を軍へ納入するようになる前、アッコキーク工場の従業員は50人だった。いまは160人いる。
 しかしイタリアにある親会社のベレッタ社は、メリーランド州の銃規制が厳しいというので、工場そのものをテネシー州のガラティン市へ移したがっている。
 ガラティン市はベレッタ本社に対し、移転してくれるならば市が造成した工業団地の土地を無償で提供し、10年以上にわたって400万ドルの税金も免除すると誘いかけている。
 ベレッタの提案銃が「XM17」競試に敗れれば、この移転はまちがいなく実行されるだろう。
 2006年に、「海軍の分析評価のためのセンター」という外郭機関が、過去にじっさいに戦地でM9を発砲したことがある米兵にアンケートをとった。その結果、58%の者はベレッタに満足していたが、他は不満であると知られた。
 不満点は、アクセサリーが取り付けられぬこと(米軍用語では「モジュラリティがない」と表現する)。有効射程が短いこと。気が利いてなくて扱いにくいこと。
 そして今年、「XM17」の要求仕様が打ち出された。アクセサリー用のレール等があること。標準照準器もM9より改善されていること。グリップはM9よりもスリムでコントロールしやすいこと。全重もM9より軽いこと。
 スミス&ウェッソン社は1852年から拳銃を製造している。サミュエル・コルトが拳銃を造り始めたのは1836年。ベレッタ社はイタリアで1526年に創業したとフカしている。シュトゥルム・ルーガー社はオーストリーで1949年に開業。グロック社もオーストリーで1963年開業だ。
 軍が採用したとなると、民間市場でもその拳銃はよく売れるようになる。メーカーとしては、この競試に負けるわけにはいかないのだ。
 民間での小火器販売は、総計すれば、1年で450万梃にもなっている。
 ベレッタ社は、「M9A3」という改良型をすでに市販している。金属表面は「デザート・タン」色に焼付け塗装してあり、アクセサリー用レールがあり、サイトは明るく、グリップは細い。しかし「XM17」は、それ以上の「モジュラー度」を要求しているのだという。
 ※陸自の特戦群用にも新拳銃が必要だという話を12日発売の『兵頭二十八の防衛白書2015』の中でしてますので、興味ある方はどうぞ。今回は、昨年の2014年版よりも124ページも厚くなってしもたわい。とても立ち読み不可能なボリュームですので、お気をつけください。お金のない人は、図書館に入れて貰おう!
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 Doug G. Ware 記者による2015-8-9記事「Dwindling exports add to China’s economic worries」。
 中共の税関当局の統計公表によると、2015-7月の中共の輸出額は1950億ドルであった。これは昨年7月より8%以上少ない。
 また、7月の中共の輸入額は1520億ドルで、やはり2014年より8%少ない。
 輸出超過額は430億ドルだが、これは昨年よりも約10%減っている。
 ※このUPI記事に補足をすれば、中共国内の卸売り金額は過去40ヶ月、連続して下落しっぱなしである。需要がないのである。それでシナ企業は過去21ヶ月、雇用も減らし続けている。中共はとっくにマイナス成長に入っている。シナ政府の宣伝そのままに7%近くもGDPが成長……などと報ずる日本メディアの経済記者たちは、数学的頭脳がないのか、中共の工作員なのか、どちらかだ。日本の経済人に誤った行動を起こさせて破綻へ誘導するその罪状は、重く深い。
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 無記名スタッフライターズによる2015-8-5 記事「Global Five Eyes Spy System ‘Bigger Than Ever’」。
 米英加アンザックの5ヵ国連合が1988に結成した「エシェロン」について最初に暴露したリポーターのダンカン・キャンベル氏が久々に語る。ソースは、『Sputnik News』。
 エシェロンは、海底の光ケーブルを途中で「盗み聴く」ことと、各国首都にある大使館に目立たぬように設けたパラボラアンテナ等で「衛星通信」を傍受することにより、ほとんどのデータを集めている。後者は「フォーンサット(外国衛星傍受)」と略称されている。
 インテルサットをエシェロンが盗聴対象にしていることは、スノーデン情報からも裏付けられた、とキャンベル氏は言う。5ヵ国の政府による盗聴規模は、1988年とは比べ物にならぬくらい拡大されているそうである。
 ※エドガー・アラン・ポーに興味のある人は、産経新聞社のWEBサイト《いろんな》に2015-8-6に掲載された拙稿「核攻撃から日本人を守る5つの方策」を読むとおもしろいでしょう。タイトルで検索すれば、出てきます。これは、マハンについて調べているうちに溜まってしまった副次的なトリビアを吐き出したものです。地政学の創始者はラッツェルやチェーレンではなくマハンであること、そのマハンが米国の最大の脅威だと考えたのは英国であったこと、すべては英国から米本土を守るための太平洋拡張策であったこと、そしてその危機感をもたらした時代の学説はダーウィンとスペンサーであり、『進化論』の核芯もむしろ〈有史前の地層から観察されるおびただしい古生物の絶滅は自然の法則=宇宙の法則であって、これからも生存闘争に敗れた種の絶滅は普通に繰返され、人間もふくめて現存生物のほとんどは、変化をしなければすべて亡びる〉とした部分であったこと等々、来年の著作で明らかにする予定です。


なぜマッパなのですか と尋ねられたなら「ギリシャ人。」とのみ答えよう。――by サラリマン全太郎。

 Fred Lambert 記者による2015-8-4記事「United Arab Emirates deploys ground forces to Yemen conflict」。
 UAE陸軍がイエメン最大の航空基地を最近奪回した作戦に戦車と装甲車で加わっていた。
 これは8-3に『NYT』がすっぱぬいた。UAE陸軍は、サウジ領内を陸上機動したのではなく、海上機動でアラビア半島の裏側にあたるイエメン領にまわりこみ、上陸後、即、戦闘加入した模様。
 イエメン南部にある、アル・アナド空軍基地は、フーシ・ゲリラに占拠されていたが、イエメン政府軍とアラブ連合軍が数日の交戦の末に奪回した。双方に死傷者多数が出ている。
 しかしイエメン政府は、UAE軍の果たした役割はアドバイザー的なものにすぎず、アデン港にもUAE軍は進駐していないと、NYT報道を打ち消すのに躍起。
 今年3月いらいの、アンチ・シーアの有志連合軍の顔ぶれは、バーレーン、クウェート、カタール、ヨルダン、モロッコ、スーダン、エジプトである。それが主軍であるサウジに協力している。
 この7月、サウジが空から掩護し、UAEがAFVをめぐんでやったハディ氏支持派軍が、アデン港を占領した。そこには8-3に、3000人規模のUAE軍部隊も上陸したと、NYTは報じているのだ。
 アル・アナド空軍基地は、そのアデン市から北へ30マイルである。
 イエメン南部の反シーアの指揮官いわく、UAE軍はもう3週間くらいも前から戦闘加入しているぜ、と。
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 Richard Tomkins 記者による2015-7-30記事「Saudi Arabia seeks ammunition for its land forces」。
 サウジは米国からFMSによって1100万発もの弾薬を調達したがっている。サウジは、これはイエメン戦線でサウジ陸軍が使用するものだと言っている。
 米国務省が承認すれば、その取引価額は5億ドルになる。
 FMS事業を取り仕切っているのは、DSCA(米国防衛安全協力機構)である。義務として連邦議会に通告する必要がある。今週初め、DSCAは、サウジがPAC-3ミサイルを600発、周辺器材含めて54億ドルばかり、購入したいと言ってきたことも報告している。
 このたびの陸軍用弾薬の内訳だが、40ミリ多目的炸裂弾薬M430A1を100万発、対戦車曳光105ミリ榴弾M456A1を6万発、155ミリ榴弾M107を6万発。
 さらに、7.62㎜実包M62(リンクベルト付きで4発に1発、曳光弾が混じっているもの)、12.7㎜機関銃弾、25ミリ機関砲弾M792、30ミリ機関砲弾M789、なども。
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 同じ記者による2015-8-4記事「Australian Defense Force getting new assault rifles」。
 オーストリーのメーカー「テイル」社が墺陸軍のために新型アサルトライフルF90を納品する。既存の「オーステイヤーF88」小銃を強化したバージョンだ。
 テイル社は1980年代にオーステイヤー社からライセンスを買ってそのF88を製造してきた。
 F90にはバレルの長短2種あり、長いライフルは20インチ、短いカービンは銃身長16吋である。
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 ストラテジーペイジの2015-8-5 記事「Chemical Warfare Returns To Iraq」。
 ISが発射した120ミリ迫撃砲弾で、塩素や、薫蒸農薬などが充填されていた痕跡のあるものが次々に発見されている。彼らは「化学砲弾」を手製しているのである。
 ただし、散発的に落下させる少数の砲弾や、地上で自爆させる車載爆弾に、いかほど猛毒の化学剤を混ぜても、その効果は知れたもので、ISは「化学戦」については無知であることを暴露しつつある。
 イラクでは2006から2008にかけ、反米ゲリラがトラック車載の自爆爆弾に、塩素ガスをよく混ぜていたものだった。それらはまったく効果がなく、無意味だったのだが、ISはその経験から学んでいない。
 WWIで最初に使用された塩素ガス攻撃は多大な殺傷効果を上げている。それは、いちどに168トンも風上から奇襲的に放出させて、すぐ近くの敵の塹壕線陣地を覆い尽くしたからだった。1915年の初めには、兵士は誰もまだガスマスクを持っていなかった。
 WWIでわかったことは、毒ガスは、殺害力よりも、敵軍の規律と士気を崩壊させ、負傷者救護の必要と混乱から、最前線での敵軍の戦闘機能を大幅に殺いでしまうところにこそ最大の効用があるのだ、ということだった。
 1980年代以降、サダムは、圧倒的なイラン陸軍の前進を止めるために、イラン軍の士気と規律を、毒ガスで破壊しようと念じたのである。
 スンニ系テロリスト同士の携帯電話チャットやインターネット・チャットはずいぶん前からモニターされている。2007年頃、彼らは、塩素ガスが自爆兵器として無力であることを認識し、マスタードガスや神経ガスの製造を考えた。だがそれが技術的に難しい上に、兵隊でない一般人をそうした高性能ガスで殺傷した場合のテロリスト・グループのメディア上のイメージがあまりに悪くなるだろうとの予想が勝ち、彼らは、マスタードガスや神経ガスの製造を諦めたのである(そのなりゆきが、モニターされている)。
 ※トルコ南部の空軍基地がいよいよあからさまに米軍機のIS攻撃のために提供されることになったが、じつはトルコはコバートではとっくに米国の無人機のために運用拠点を貸しているのである。2015年3月17日に、アサド派がシリア北東部のラタキア市上空でプレデター1機をSAMで墜とした。同機はアサド本人を見張っていたことは間違いない。そして、シリア北東部にプレデターやリーパーが到達するためには、その発進基地として、トルコ領内以外は考えにくかった。おそらくトルコは、米軍ではなくCIAにならば、基地は貸してもいいと踏んだ。というのはCIAには、秘密裡にやったことを「やってない」と、公的に言い張る権利があるからだ。米大統領の手兵として「暗殺作戦」を遂行し、それを米連邦議会に細々と報告する必要がないのである。しかし民主主義国の軍隊だと、やったことはすべて議会に報告する義務がある。それは、米軍に基地を貸す外国政府の側としてはとても迷惑な話なので、パキスタン政府も旧イエメン政府も、米軍の無人機ではなくCIAの無人機だけが「爆殺」作戦を実行して欲しいと願うわけなのだ。それにしても今回トルコはよく譲歩したな。


「ここは俺の駐車場です」

 Zachary Keck記者による2015-8-3記事「America Holds Massive Anti-Drone Drills」。
 七月二十六日から八月七日まで、米軍は「ブラックダート」演習を本土で実施中。
 ホンモノの無人機を実弾で迎撃する。四軍合同で毎年一回やっている演習だ。
 場所は加州のヴェンチュラカウンティ基地。主宰はJIAMDO(四軍合同防空機構)。
 ブラックダートは過去13回やってきたが、敵国が米軍の無人機対策を知ってしまうのは困るので非公開だった。しかし14回目の今回はマスコミに公開。
ことしは「グループ1」のドローン、すなわち重さ20ポンド未満で高度1200フィート以下のちっこいやつに特に焦点を当てている。いうまでもなく、年頭に酔っ払いの趣味男がホワイトハウスにそのタイプのドローンを墜落させたからだ。
 いろいろなメーカーが、自社考案の対ドローン新兵器をPRするチャンスにもなっている。
 次。同じ記者による2015-8-4記事「America Sends Advanced Submarine to Strategic Philippine Base」。
 ロサンゼルス級の最新鋭の魚雷戦型原潜SSN721『シカゴ』が比島のスビック湾に8-3に入港した。水中排水量7000トン。
 『シカゴ』は背中に多数の巡航ミサイル垂直発射チューブを設けた、このクラスで最初の艦である。(いままではSSBN改造の4隻しかなかった。こいつはSSNのバージョン。)
 乗員は170名である。
 SSNはSSBNと違って、約半年の任務中に何度か浮上して寄港もする。『シカゴ』は本拠地がグァム島のアプラ湾軍港なのだが、今年は既にシンガポールのチャンギ港に3月に寄港した。
 ※中共に対するプレゼンス誇示にもなっている。これがオハイオ級のSSBNだと、米本国の軍港を出航してから70日間、もぐりっぱなし。途中で寄港のため浮上するようなことはしないで、90日以内にもとの軍港まで戻ってくる。
 スビック湾から120マイル西にはスカボロー礁があり、シナ軍はそこに人工島を造成して軍事基地化する工事を進めている。
 次。ストラテジーペイジの2015-8-4記事「Special Operations: Not A Laser Saber But Close Enough」。
 米特殊部隊の七つ道具のひとつが、ポータブルな「TEC(熱溶融切断)トーチ」である。
 使い捨てのカートリッヂの中にテルミット剤が入っていて、「焼き切り」作業に使うことができる。
 2分あれば、厚さ18mmの鋼板に孔を開けられる。
 TECトーチの重さは450グラムでその半分は使い捨てカートリッヂの重さ。道具としての全長は33センチ、カートリッヂ径は径38.1ミリである。
 その改良型の「プレート・ペネトレーター」は、厚さ12.7ミリの鋼板に径8.9ミリの孔を2分で穿てる。酸化剤が内蔵されているから水中でも使用可。よってシールズも携行する。
 もっと強力な改良型も開発中。それは径50ミリの鋼棒を切断したり、厚さ32ミリの鋼板を穿孔できる。
 TECトーチの単価は約1000ドルである。キットにはカートリッヂ4本と保護手袋、取説DVDなども付属。


キャプテン・ダンク

 Matthew Schofield 記者による2015-8-3記事「How Germany dealt with its symbols of hate」。
 ドイツを占領した連合軍は、カギ十字の表示を1945-10に禁止した。西ドイツ政府は1949にその措置を国内法に追記した。
 今、ドイツで何のマークもない墓石があったら、それはナチ高官のものである。
 ヒトラーの焼死体がみつかった場所は、今、何の表示もない駐車場である。
 ベルリンのシュパンダウ軍事刑務所=シュペーアやヘスの住居があったところは、ネオナチの巡礼地とされないように、あとかたなくぶっこわされている。
 ご念の入ったことに、ドイツ政府はその煉瓦も粉々に砕いて北海へ捨てた。
 ベルリン・オリンピック・スタジアムは、レニ・リーフェンシュタールによって1936にナチの宣伝映画が撮影された有名な場所だが、そこは壊されていない。今もスポーツ競技場として使われ続けている。
 今でもドイツでは、ナチの標章を公の場で着装すれば、最大で禁錮3年の刑、プラス、選挙投票権の剥奪もあり得る。
 南軍軍旗(Confederate battle flag)は、クークラックスクランにより20世紀に復活させられた。
 南部のいくつかの州では堂々と州の議事堂前に掲揚されている。
 今日、カギ十字を採用しているのは、米国内の白人優越主義者だけではない。中東のイスラム過激主義者たちも「スワスティカ」を反イスラエルの合印として使っているのだ。
 ※ドイツ連邦軍の標識として戦後も一貫して戦車や航空機にマーキングされ続けている「鉄十字」マークは、過去の「十字軍」を連想させると思うのだが、そのマーキングのままイスラム圏にコーリションフォース等として派兵されて来たときに、現地人は反発せんのだろうか? これについて書かれている記事を見た覚えがない。ちなみに西独軍が戦前のドイツ軍と同じ鉄十字マークを使用し続けることについてモスクワは過去、一度も文句を言ったことはない。あたりまえだ。それはイデオロギーとは関係がない軍隊の識別標識だからだ。日本の軍艦旗や聯隊旗が政治や政党とは何の関係もないのと一般である。それに文句をつける連中は、ただ日本人と日本軍と朝日新聞を嫌いなだけだろう。
 過去、アフリカから何人の黒人奴隷が北米へ輸出されたのか。だいたい45万人だったらしい。その子孫がたちまち1000万人以上に増えたのである。
 以上に関連して、Danielle Fox 記者による2015-7-11記事「The evolution of the Confederate battle flag … and its meaning」。
 「旗学者」というのがいる。vexillologist と書く。
 南部連邦旗(Stars and Bars)が1861に正式制定されている。開戦時の南部連邦議会によって。
 ところがそのデザインは、それまでの合衆国の旗と、遠目に区別がつきにくかった。それでは戦場で困るのである。
 そこで南部議会の議員の William Porcher Miles が「サザーン・クロス」のデザインを提案した。青い大きな×印の中に白い星。ただし×印のフチは白縁となっている。それは南部議会によって承認はされなかった。しかし、いくつかの南軍の連隊が、自主的にそれを採用した。軍旗として。
 また南部議会は、その代わりに、北ヴァジニア軍(複数の連隊の集まりで、ロバート・E・リーが総司令官)の軍旗を、大きな白地の上に小さく載せたデザインを1863に制定した。これは清純旗(The Stainless Banner)と称される。
 ところが、これが「白旗」と区別がつきにくかった。戦場では白旗は、休戦協議を呼びかける合図、もしくは投降の意思表示である。だらりと垂れた状態では、模様部分は隠れてしまって白旗にしか見えない。こりゃマズイ。
 そこで、白地ではなくするように、赤い垂直帯を描き加えた。これが南北戦争末期の1865年に南部議会により公式に制定された。南部の国旗だ。
 では現在、南部人がよく掲げたがるマークは、以上のどれなのだろうか?
 じつは、正確には、以上のどれでもないのだ。
 「ネイヴィー・ジャック」と呼ばれた、旧南軍の軍艦旗が、いつの間にか旧南部全体の象徴になってしまっているのだ。ネイヴィージャックはサザーンクロスとよく似ているが、旗地が長方形であり、かつ、×印の白い縁取りがない。
 軍艦旗だったといっても、広範に使われたものではなかった。ごくマイナーな旗だったものが、なぜか、今日、南部ではメジャーなのだ。
 そのきっかけは、南北戦争後に、連邦政府に反対する白人たちが、この旗を持ち出したことにあったようだ。白人が働いて収めた連邦税で黒人や貧乏人を養うのはやめろ、というプロテストのために。
 この旗は「反政府」の伝統的な象徴なのであって、「反黒人」の意味ではない、と、使用者は主張する。
 「ネイヴィ・ジャック」は、南カロライナ州においては、1961年に大々的に普及したもののようである。1964の「公民権法」が制定される前の空気が、その背景であった。
 ベトナム戦争に賛成した人々の一部も「ネイヴィージャック」を振った。
 レイナード・スキナードのコンサートにも、この旗が持ち込まれる。
 次。
 ストラテジーペイジの2015-8-3記事「Armor: Israeli Secret Weapon Revealed」。
 7月にイスラエルは、1980年代の軍事秘密をバラした。メルカーバーの採用で旧式になったM48とM60を、ミサイル戦車に改造していたという。
 それらの105ミリ砲はダミーで、主兵装は砲塔後部バッスル部分に収納したスパイクATMだった。「ペレー」という名がその改造戦車には付けられていた。
 スパイクは初期には射程2500mだったが、2000年には4000mに延びていた。射ち放し式である。
 実戦運用では、ペレーは、通常の砲熕戦車とは別行動をとり、後方の高地に占位して戦場を俯瞰していたという。
 ※さて余談。宝島社さんから『零戦神話の虚像と真実』という今月の新刊を頂戴した。一気に読んじまったが、衝撃的なマニア本だった。空自のF-15教官から三菱に移ってF-2を初飛行させた超ベテランの渡邉吉之氏から清水政彦氏が引き出している数々の貴重証言に驚倒。〈AWACSとデータリンクの時代には、いつのまにか後ろを取られるというおそれがないので、過去、さんざん訓練してきた編隊空戦の必要はもうなくなった〉〈日本では新型軍用機はメーカーが技術的な研究の楽しみのためだけに造っており、用兵側はそれを押し頂くだけ〉……嗚呼、やはりP-1とか千葉大の原発監視ドローンなんかも、エンジニアズトイなんじゃね? 航法通信系含めて100%自主開発にこだわるのは、遊びたいからだよね? トドメは、4秒に1回、戦闘機が90度ターンをし続ければ、敵機の「ジャイロ」がいつまでも安定しないので、敵の機関砲弾は絶対に永久にこっちには当たらないという御託宣。そこで思いました。戦闘機搭載の機関砲の軸線を、ほんの数度の範囲でいいから、ロボット制御して可変にすべきではないかと。さすればこっちの機体軸をあまり揺さぶらなくとも見越し射撃できるようになり、したがってジャイロが一瞬早く安定するでしょ? ベクタードスラストよりこっちが捷径ではないのか。


バービー之助

 David Wichner 記者による2015-8-2記事「Raytheon looks to 3-D printing for missiles」。
 レイセオン・ミサイル・システムズ社は、ミサイルの部品の8割を3Dプリンターで製作できることをデモンストレートした。さすがにアムラーム全体は無理だそうである。
 同社はまた、誘導砲弾「エクスカリバー」の部品に3Dプリンター製のものを一部組み込んでみたが、正常に動作することを確認しているという。
 他方、GE社は、最新の超省エネ型ジェットエンジンLEAP(仏と共同開発中)の、複雑な形状の燃料ノズルを、すでに3Dプリンターで製造するようになっている。従来なら20個ものパーツを別々に造って組み上げる必要があったオブジェが、単体で出来るため、重量は25%減らせるうえに、耐久力は5倍になるという。
 いうまでもないが、この素材は樹脂ではなく金属だ。メタル・プリンターともいう。
 GEは本年中に、3Dプリンターで製造した航空機用のエンジン・バルブをFAAから認可してもらうつもりである。
 GEはターボファンエンジンのブレードも3Dプリンターでできないか、鋭意研究中だ。※つまり、これまで粉体鍛造してきた部品ならばぜんぶ、プリンター化できるのか! これはヤバイ。その機械を導入すれば、技術の遅れた中共の工場でも、「一体型タービンブレード」を鍛造して、エンジンを軽量化できてしまえることになろう。
 ロックマートのF-35工場では、3Dプリンターで製作した特殊工具が使われている。
 レイセオン傘下の無人機メーカー「Sensintel」も、偵察用UAVの複雑な内部機構の一部に3Dプリンター製品を活用している。
 粉体造形溶接という、これまでにない3Dプリンター応用の溶接工法がツーソン市にあるレイセオンMS社の研究所で試されている。金属の部材(bed)の上に金属粉を層状に吹きつけながら、同時にレーザーで溶着して行き、どんどん狙った形状の立体部材に成長させてしまう。
 このベッド(床材)とする金属板は、スチールかチタン合金が相場であったが、レイセオンMSでは目下、あるひとつの合金に着目しているという。それが何であるかは、企業秘密。
 このような金属3Dプリンティング技術の革新性は、これまでなら複数のパーツを製造してから組み立てるという二段階が必要だったのを、アッセンブルの工程を省いてしまえること(ただし仕上げ工程までは省けない。プリント打ちっ放しというわけにはいかない)。また、一体ゆえに強度があるから、軽量なものを初めから設計可能なことである。


制空聖人

 どうやら次に陸自(ひょっとして海自も?)が買うことになるUAVはこいつが本命じゃないかという最新関連情報だ。
 Richard Tomkins 記者による2015-7-31記事「Insitu building more small UAVs for Navy, Marines」。
 ボーイング社が株式を保有するUAV部門子会社である「インスィトゥ」社が、RQ-21A「ブラックジャック」を米海軍と海兵隊のために製造すると発表。
 初期徐行生産ロットの「4回目」として、6機を製造し、その代金として $78 million をメーカーは受領する。初期徐行生産の「1回目」は2013から始まっている。※それを陸自がテスト中なのだと思われる。しかし陸自は正確な型番や機種名を公表していないので日本の報道は混乱している。
 RQ-21Aは、全長8.9フィート。最高時速86マイル。上昇可能高度19500フィート。滞空24時間可能。
 電子光学センサー、遠でも近でもない中庸波長の赤外線センサー、レーザー測遠機、そして赤外線マーカーがコミである。
 他方、ノースロップグラマン社は、豪州のフェラ工学社(Ferra Engineering)にMQ-4Cトライトンのための部品を製造させるという契約を結んだ。
 トライトンは豪州軍が採用を決めている。
 トライトンは2013年に初飛行しており、高度6万フィートを24時間滞空できる。
 ブリスベーンに本社がある豪フェラ社が分担製造するのは機械部品と一部の構造材で、電子部品やエンジン系ではない。
 ※解説しよう。レイヴン級とプレデター級の中間サイズの無人機がメイドインUSAとして不存在であることは商機であるとしてベンチャー企業インスィトゥ社が「スキャンイーグル」を開発した。既存の海兵隊のRQ-7「シャドウ」は、回収のためには普通の滑走路(プラス、空母のようなアレスティング・ワイヤー)が必要で、不便すぎる。そこでインスィトゥ社は、トラック車載カタパルトから発射でき、ポール&ワイヤー方式でキャッチ可能な最大重量を狙った。その開発コンセプトは冴えていた。大手ボーイング社はそこに目をつけ、会社まるごと買収してしまったのである。スキャンイーグルにはRQ-21という型番が与えられ、海兵隊も買っている。
 その「スキャンイーグル改」を陸自がテスト中と伝えられているのだが、「インテグレーター」と「ブラックジャック」のどちらであるのか不明であった。日本の報道では「スキャンイーグル」と言っていたが、それはもう廃用に向かいつつある古い機体(サイズも形状もまるで別モノ)であって、常識的に、ありえない。もしも旧型の「RQ-21 スキャンイーグル」を掴まされるのだとしたら、またひとつ「防衛省の調達スキャンダル」が増えるだけである。
 今回のUPIの報道で、陸自が買いそうなのは「ブラックジャック」なのであろうと見当がついた。
 詳細は不明なのだが、RQ-21AのエンジンはHFE(heavy-fuel engine)だという。ちなみにこれを「重油」と訳しては致命的な間違いになり得るから気をつけよう。今日の米軍の航空機が話題である場合は、ヘヴィー・フュールとはまず灯油=ケロシンのことである。ガソリンではないという意味だ。RQ-21のエンジンが、灯油系のジェット燃料「JP-8」をピエゾで噴射して電気点火する特殊レシプロ・エンジンなのか、それともターボプロップなのかは、イマイチはっきりしない(速力から推してジェット推進ではないだろうが、艦載を考える場合、米海軍はプロペラ系を嫌う。取り扱う水兵が危なくてしょうがないので)。ともあれ、米四軍は「ガソリン」は徹底して追放しつつある。小型UAVなら電池だから無問題だが、大型UAVなら「JP-8」一択だ(艦載となるとより高額で安全なJP-5燃料も考えられる)。陸自がそれに合わせないわけにはいかない。海自も、ミッドウェー海戦の空母の丸焼けという二の舞をしたくなければ、艦載無人機にも「JP-4」(半分ガソリン)が使えるかも…などとは間違っても思わないことだ(このたびの『だいせつ』火災事故はいろいろ参考になるだろう)。米陸軍ではプロペラ・プッシャー式の「グレイ・イーグル」のエンジンを特殊ディーゼルにしてまで、「JP-8」にこだわる。ディーゼルは、灯油でも回るのだ。
 無人機は、程度の差異はあるが、基本的に、消耗の激しい装備だ。たとえば「インテグレーター」は、実戦運用では5機1組である。翼端フックでひっかけてポールに宙吊りになるなどという変則的なランディングを繰返していれば、機体の構造部材からしてじきにガタガタであろう(レイヴンだともっと凄い。強制墜落である。そのためモジュール式にしてある)。なのに陸自はそれを評価テスト用に2機しか調達しなかったらしいので、試験といっても遅々として進まないのではないかと懸念する。案の定、2014-11に1機がオシャカになり(それ自体はよくあること)、今は1機しかないはずだ。それでどうやって十分な調査ができるのだ?
 ※余談。『更級日記』には、足柄山は四、五日行程前からおそろしげに暗がりわたって見えた、とある。さすれば、東国では早くから樹林は伐採され尽くしていたのに、足柄山のあたりではいつまでも森林が残っていたのだと考えていいのだろうか?


「読書余論」 2015年8月25日配信号 の 内容予告

▼防研史料 『航空機雷要目 性能一覧表』
 沈底式もあれば、浮標浮遊式もあった。
▼防研史料 『爆弾関係』
 敗戦後にケミカル関係の爆弾の統計を米軍に提出したもの。
▼防研史料 『火工部(爆撃兵器関係)』
 支那事変から敗戦までの爆弾信管や発火装置の諸元、開発経緯一覧。
▼防研史料 『基地準備標準』 S18より以降?
▼『実戦ヨリ得タル射手心得』木更津海軍航空隊 S15-8
 空中戦後、パンクを点検し、もし片車輪だけパンクしているのを発見したなら、もう一つも拳銃で撃て。
▼防研史料 『七粍七焼夷弾薬包ノ保存取扱ニ関スル件 申進』S15-8
 焼夷弾には黄燐の自然発火という厄介なトラブルがつきまとった。その詳細。
▼防研史料 『海軍航空本部報(部内限)』S16-11-1~S16-12-29
▼防研史料 『海軍航空本部部報』S17-1-7~S17-12-29
▼防研史料 『海軍航空本部部報(部内限)』S17-1-7~S17-12-29
 S17-2-24、九九式3番3号爆弾を外戦部隊の戦闘機が搭載できるよう特急で改造せよ。「弾底発火装置用風車抑」を新製改造せよ。
 ※航本に事実上の最高幹部として迎えられた大西瀧治郎は、早くも「爆装零戦」を構想して、実施までさせていたことがわかる。これがMI作戦に間に合っていれば……。
▼防研史料 『野戦砲兵士官手簿』野戦砲兵射撃学校 M36-6-6印刷
 31式野山砲および欧州強国の野戦砲兵の比較表。
▼防研史料 『砲兵戦術講授録』野戦砲兵射撃学校 M43-3印刷
▼沼田 多稼蔵『日露陸戦新史』大13
 M37-7月下旬に、野山砲弾々体を独国「クルップ」会社 其の他に注文。12月より3月に至る間、45万発を受領する筈也。
 M38-2月27日から3月10日の奉天会戦で、野山砲弾28万発、三十年式歩兵銃の実包2000万発、村田連発銃の実包238万発が消費された。
▼長谷川正道『国民参考 兵器大観』S9
 ※キリトリだらけである。
 発射時に自爆しないように雷管と撃針を確実に離しておくのが「支筒」「支耳」である。
 「活機」は、撃針または雷管を持つピストンのようなもので、当たったときに動く部分。
 「加量筒」は、古い着発信管にある。弾頭にも弾底にも使う。
▼『水交社記事 vol.45 』(M27-3)
 水雷艇の速力を進歩させたのは、機砲と速射砲だった。
▼松永榮[さかえ]『大空の墓標 最後の彗星爆撃隊』1999-8
 急降下爆撃の現実が詳しくわかる好資料。
 実戦では、水平爆撃よりも急降下爆撃の方が被撃墜が多かった。
 彗星の上昇限度を10500mなどと書いているカタログスペックなど何の意味もない。ありていは、3000m以下でなくば使えぬ機体だった。
▼増戸興助『彗星特攻隊』1999-7
▼橋本・田辺、他著『証言・ミッドウェー海戦』1992
 月刊『丸』の記事をコンパイルしたもの。
▼金沢秀利『空母雷撃隊』S59-8
 昼間雷撃をやって生き残った者による、唯一の単行本回想記。S30の初稿を校訂した。
▼伊藤正徳・他監修『実録太平洋戦争 第二巻』S35-6
 牧島報道員の証言。芝山中尉が全扉を開けさせたので、『赤城』だけ2000名のうち1200名が助かったが、他の空母では、乗組員の半分が死んでいる。
▼手島丈夫『日米空母戦力の推移』H7
 1942、米国は、護衛空母×50隻の新造を、バンクーバーのカイザー造船所に一括発注。
 S19-12-18の台風で、米駆逐艦3隻が沈み、空母の艦上機186機が海中に転落。700人死亡。
 S20-6-5、荒天のため重巡『ピッツバーグ』の艦首切断。他に、米空母艦上機142機が全損し、6名死亡。※南シナ海もヤワな海じゃないということ。
▼山本智之『主戦か講和か――帝国陸軍の秘密終戦工作』2013-6
 酒井鎬次や服部卓四郎等についてよくわかる本。
 1943-9-16に戦争指導課が立てた終末方策。ソ連に譲歩する必要があるなら、満ソ国境を非武装化してもよく、さらには満州国を非武装にしてもよく、また、防共協定を廃棄してもよい、等とした。
 著者いわく。非武装化とは、実質的には満州をソ連に渡すことを考えていたのだ(p.94)。
 ※著者は「亜欧連絡ノ打通」が意味するところを、米国の対ソ物資援助のことだと解釈しているが、それはウラジオ経由でもとっくに実現していたので、そんなことではあるまい。米陸軍と陸軍航空隊が、堂々とウラジオや大連から上陸し、シベリア鉄道を使って東部戦線へ援軍となってかけつけることができる、という意味であろう。
 ※この本を読んでいるうちに呑みこめたこと。なぜソ連に仲介を頼むのが日本の国益になると省部エリートは考えたのか。それは、ソ連は英米とはナチュラルには敵だから、米英からは与えられない満州という大きな餌を日本がソ連に与えてやれば、ソ連は利己心・強欲から、米英の戦後経営方針に逆らって、日本をすこしは庇ってくれるのではないかと妄想した。
▼太田猛彦『森林飽和』2012-7
 江戸時代から戦後まで、かつては日本の山もほぼハゲ山であった。だから海に多量の砂が押し出され、それが飛砂や河口閉塞をもたらしていた。今は日本の歴史上、珍しい山林緑化時代なので、海の砂は逆に足らなくなり、汀線[ていせん]が後退している。
 古事記によれば、雄略天皇が460年頃に葛城山に行幸したとき、周囲の山にはすでに樹木はなかった。
 立ち木をことごとく利用してしまうから、中世の東国には広大な「牧」があちこちにあったのである。鬱蒼とした森は、すでに東国地方でも、かなり遠く離れた山地まで行かないと、見られなくなっていたのだ。
 ※この本により、日本の馬術や「巻き狩り」がどのような環境で発達したのか、初めて理解できた。「武蔵野」は、立ち木などほとんど稀な大草原だったのだろう。
 日本の森林破壊は1500年以降に急加速した。15世紀中葉から18世紀初頭までに日本の人口は3倍になった。江戸時代は山地荒廃の時代だった。
 ※幕末に「ゲリラ戦」は不可能だった。隠れられる森林など東北にも無かったのだ。
 ヒノキの伐採だけを禁止しても、犯人が、ヒノキによく似た他の樹種と間違えました、という言い訳ができるので、そのような言い逃れを許さぬように、サワラ、アスナロ、ネズコ、コウヤマキも一緒に禁止した。
▼土肥一夫、他ed.『海軍 第八巻 航空母艦 巡洋艦 水上機母艦』S59-9
 ※先月の続きで、今回は巡洋艦。
 「1号連携機雷」は『球磨』型以降の5500トン軽巡の艦尾から投下するようになっていた。水線下の艦首材が垂直より30度傾いていれば、この連携索を安全に乗り切ることができた(pp.170-1)。
▼佐藤優『ナチス・ドイツの崩壊を目撃した吉野文六』2014-8
 大島浩についてよくわかる本。
▼経済雑誌社pub.『国史大系第十六巻 今昔物語』M34 つゞき
 今回は巻第24まで摘録。
 平維衡と平致頼の私闘。射殺互いに数人。そこで詮議になった。「明法に勘へ」るところ、先に攻撃した方が悪い。「請け戦たる維衡が罪軽し」。※これは「自衛」「正当防衛」が「正戦」に近いとする価値観が示されている稀な文献ではないか。
 ◆  ◆  ◆
 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。(配信されるファイルはPDFスタイルです。)
 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。
 大きな図書館に毎日通えない人も、最低費用で、過去の軍事知識のマニアックな勘所に触れることが可能です。
 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。
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夏ダカラ……マッパ Go Go Go!

 Michael S. Darnell記者による2015-7-28記事「GPS-guided artillery shoot at Grafenwohr draws international interest」。
 ロシア軍がそろそろポーランドやバルト三国に侵攻して第三次欧州大戦が勃発しそうなので、米軍がドイツ軍に対し、十五榴の普通のタマをGPS誘導砲弾化する「M1156 Precision Guidance Kit fuse」についての説明を始めた。
 ※砲弾の信管の場合fuzeというスペルになると思っていたが、星条旗新聞がそこは間違わんだろう……。
 可動フィンともセットになっているもので、このGPS誘導キットを155ミリ砲弾にとりつけると、だいたい、直径50mの円内に落ちてくれる。
 この新型信管の特長は、もし何かの失敗により、精密誘導可能な範囲内にそもそも弾が落ちてくれなさそうになった場合には、信管は不活性を保ち、その結果、ゲリラの周辺の住民が誤爆の犠牲にはならぬということである。
 これはスペツナズが住民を盾に使うことを不可能にする。
 砲弾誘導キットは、単価が1万ドル。
 ちなみに、通常使われる、無誘導のマルチ・オプション信管だと、単価500ドル。
 しかし、新型信管は、砲兵が本格効力射する前の「試射」の手順を省いてくれるし、効力射の弾薬数も節約してくれるので、トータルで弾薬費の大節約になるのである。
 この信管、米軍はアフガンですでに2013から実験使用してきた。
 ※日本のメーカーは60ミリ迫撃砲用のレーザー誘導砲弾を開発すべきである。3000m~3490mで必中するので、いかなる長距離狙撃銃もアウトレンジできるだろう。モンロー効果を使い、側方へは破片がほとんど飛ばぬようにしておけば、群衆中のテロリストだけ頭上から爆殺するという離れ技も可能になるだろう。
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 Peter Jennings記者による2015-7-28 記事「Barack Obama’s Big South China Sea Mistake」。
 CSISのコンファレンスが7-22にDCで開かれた。そこで米国務省のダニエル・ラッセル(オバマ政権の東アジア政策のキーパーソン)が演説した内容が酷すぎ、フィリピン以下のアセアン諸国を唖然とさせた。
 ラッセルいわく。南シナ海における中共の暗礁埋め立て造成軍事基地化問題は、米支間のほんらいの因縁のあるイシューではない。それはシナと近隣国の間の問題である(not intrinsically a US-China issue. The issue is between China and its neighbors…)。
 要するに米国は中共のグレイゾーンアグレッションと海洋冒険主義に対して何の阻止強制策も考えてはいないと示唆した。工事中止の「呼びかけ」だけをする気だと。
 この調子では9月の習訪米のあとからまたシナ人による大規模な埋め立て工事が進むであろう。
 2016-11の大統領選挙までは、シナは南シナ海の要塞化に大いに精励するだろう。
 そしておそらくオバマの辞め際に、南シナ海での追加の「ADIZ宣言」が来るだろう。
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 2015-7-27に公開された、Ian Bremmerに対するインタビュー記事「Will Iran Become America’s New Saudi Arabia?」。
 ブレマー氏いわく。対イラン制裁解除により、来春までに、日量60万バレル近くが今よりも余計に国際市場に注入される。2016末までにはそれは100万バレルに達するだろう。つまり、国際油価は今後、長期的に下がる。
 国家歳入の半分を石油とガス輸出に依存するロシアはこれで弱められる。また、国家歳入のほとんどを石油とガス輸出に依存するベネズエラは、無視できる存在となる。いずれもアメリカの国益である。
 イランはカネをかせげるようになったら米国とは悶着を起こしたくないだろう。米国は、GCC諸国がイランと仲良くするように誘導する。
 ※こいつらイスラムのことがからきしわかってねえ。スンニ(IS)とシーア(イラン)はもう「相互絶滅戦争モード」に入っちまってるんだということが。
 イランは資金の余裕を、対ISのシーア民兵につぎこむだろう。それもアメリカの国益だ。
 ※この記事を読んだサウジ人は、アメリカに対して怒り心頭ではないか。アメリカはイランがメッカを占領することを許すのか? まあそれも、「イスラム潰し」の遠大な「十字軍」計略だとすれば、合理的なオプションになるが……。てかブレマーはイスラエルに雇われて、わざとサウジを怒らせてるんじゃね?
 ブレマーは『ブルームバーグ』のインタビューで、「イランはこれから十数年のうちに米国にとっての『あたらしいサウジアラビア』(自然な同盟者)となるだろう」と答えている。
 ブレマーいわく。ぎゃくに米国とサウジの関係は疎遠になるだろう。
 イスラエルは米国に反発したって何もできんよ。
 サウジはすでに中共と結託している。他方で米国の対イラン宥和が判明するや、サウジは国内のISシンパを400人逮捕してみせた。米国に遠慮しているのさ。
 次。
 James Hasik記者による2015-7-27 記事「A Trillion-Dollar Question: What if the F-35 Fighter Never Existed?」。
 F-35の開発には、これまで、米国人の税金が1000億ドル投入されてきた。もしF-35計画なんてものがないたとしたら米国は、代わりに、1300機もの「スーパーホーネット」を調達できたことになる。はたして、どちらが米国を強くしただろうか?
 ※コンビニで『マッドマックス2』のDVDを安く売ってたので久々にじっくりと視聴したら、なにもかもが細部までじつに格好よくつくられていることに涙が出てきた。これは暴力描写も含めて一切が「パンク芸術」の世界なのだ。その志しが『3』まで保てなかったことが残念すぎる。もちろん『4』など視る気はしねえ。


くるど、くるど、くるど、くるど。てーごわーいーぞー。

 VIVIAN SALAMA記者による2015-7-27 記事「How the Kurds play into the fight in Iraq and Syria」。
 米国とトルコは、トルコ国境の外縁部に、ISを排除したゾーンをつくろうとしている。場所はシリア北部。
 これにクルド人が反発しており、シリアやイラク内で騒動が拡張するかもしれない。
 ※トルコの本音願望は国外クルドの消滅である。だから排除ゾーンにはクルドもいれたくないのだろう。
 米軍のCAS(空対地直協)とうまく連携できているクルド地上軍が、ISを駆除しつつ、シリア北東部に進出してきた。これがトルコには気に食わない。そこに「クルドの国」が設定されてしまうのではないかというのがトルコの心配。
 シリア内のクルド戦闘集団は、トルコ内の反政府民族組織PKKと連携している。これをトルコ政府は無視できない。PKKはイラク北部にも拠点を持つようになった。
 だから7-24いらい、トルコ空軍は、シリアのIS拠点に対してだけでなく、イラク北部のPKK拠点も空爆した。
 ※ISがトルコ内にテロを仕掛けたことがトルコ人には許せない。トルコ人はアラブ人に対する数百年間の「主人」であった。アラブ人には時々そのことを思い出してもらわねば、示しがつかなくなるとトルコ人は思っている。だから、やるときは徹底的に叩きのめす。おかげでWWIから百年たっても、アラブはトルコに謝罪も賠償も求めない。
 7-27には、シリア内のクルド武装集団YPGが、トルコ軍から砲撃を受けたと声明した。トルコ政府は、先に向こうから越境射撃してきたので反撃しただけだと言っている。
 ※小銃に対して大砲で応ずる。これがトルコ流だ。
 クルド族は、トルコ、イラク、シリア、イラン、そして米国に拡散しており、独自言語を持つ。宗教はイスラム教のスンニ派が大宗だが、イラン内のクルドを中心にシーア派もすくなくない。
 ※米国内のクルドが密かにリクルートされてJTAC(爆撃誘導員)に仕立てられていたのか。これで察した。
 WWIの結果、オスマントルコ領からイラクが分割されるときにあたり、トルコもイランもイラク政府も、「クルド国家」の新設だけはすまじ、と合意した。
 ※クルドは、人種的にはアーリア人、すなわちイラン人と同じであり、アラブ人=セム族とは異質だ。しかし欧米の新聞記事では「白人に近い」という強調はしないのがならわしである。
 トルコ内には1500万人のクルド人が住む。これは7600万トルコ国民の五分の一を意味する。ほぼ全員、表向きはスンニ派回教徒。
 ※多すぎ、かつ、居住が全国土に分散しすぎているがゆえに、独立させようがない。旧帝国支配層としては、むしろ同宗派の国民として包摂して行きたい(異教徒だったらアルメニア人のように追放してしまうまで)。それが矜恃である。
 トルコ内のクルド民族運動PKKは、1984以来武闘を続けており、その抗争の過程で死者数万人がこれまで出ている。彼らの要求は初期には分離独立であったが、今は自治権拡大である。
 PKKについて、トルコ政府と欧米政府は、「テロリスト認定」を下している。PKKの本質は、マルクシストである。
 ※解説しよう。強力なトルコ帝国内にあってクルド人が独立を目指そうとすれば、イスラム教の包括支配力に対抗する包括的で有力な理論大系を身につける必要があった。いちばんてっとりばやかったのが、1920年以降隆盛したソ連流マルクシズムだった。隣国ロシアは伝統的にトルコの宿敵である。マルクシズムを採用すれば、彼らは無神論のロシア政府からの秘密支援を受けることもできたのである。もちろんソ連=ロシアはPKKを、「ソ連軍の第五列」として利用せんとする。じっさい、グルジア侵攻のさいにPKKはロシアの「スペツナズ」を案内して暗躍している(トルコ内のパイプラインを爆破)。表向きはスンニ派教徒のようだが、指向性としては「近代」(マルクシズムは近代の一バージョン)なので、一部のクルド部隊に平然と「女兵士」も登場する次第だ。スンニ復古主義のISがクルドを「異端」どころか「無神論者集団」とレッテル張りして一切その人権は認めない(殺すも犯すも自由とする)ゆえんがそこにある。ただし、今なお少なからぬクルド人は、上述の政治的なマヌーバーとほぼ無関係に、おそろしく反近代的な家父長制の下で暮らしているので、アウトサイダーであるわれわれは、決して幻想は抱いてはならない。
 トルコ政府は2012にPKKと手打ちをしたが、2013に隣のシリアでISがクルドを大虐殺していることについてトルコ政府が何もしないので、PKKは活動を再開した。
 トルコ政府は、イラク内のクルド部隊は「友軍」と看做せても、シリア内のクルドはPKKとツーカーだと見ている。
 ※これはシリア北部では貿易ルートが事実上トルコ国境しかないので、シリアとトルコのクルドが親戚関係なのが自然なのである。イラクのクルドには交易ルートがトルコ以外にもあるため、トルコ領内のクルドとの紐帯は細いのだ。
 イラクでもクルド族は国民総人口の2割を占めている。
 シリアには内戦前に2300万の人口があったが、うち1割がクルドであったという。
 居住域の中心は、トルコやイラクの国境に挟まれた北東部だ。
 次。
 Christian Davenport記者による2015-7-25 記事「Sometimes revered, sometimes reviled Humvee may be ending its military career」。
 長年米軍の標準四駆車であったハムヴィー(高機動車)が、あと数年で姿を消しそうである。DoDは民間競売会社にオンラインで廃用車の委託販売をさせている。最低入札価格は、7500ドル。
 いまや米軍は、ハムヴィーの次の標準四駆車を選ぶ過程にある。それはヘリで運べるギリギリの重さで、IEDにできるだけ耐えてくれて、しかも敏捷に荷物を運べることが要件。
 次世代のその新車両をJLTV(Joint Light Tactical Vehicle)という。三大巨大軍需メーカーが試作品を米軍に提出して、55000台のその受注を競っている。この夏に、そのメーカーは決まるだろう。
 回顧すれば、ハムヴィーの民間版があり、それはシュワルツェネッガーのおかげで、よく売れた。
 だがあまりに燃費が悪い(1ガロンで10マイル)というので環境団体が加州のディーラーを焼き討ちしたこともある。
 いま、生産ラインは閉鎖されており、最後の生産車は2010年型である。
 ハムヴィーは米軍での採用は80年代だったが、実戦投入は1991湾岸戦争からであった。
 いらいAMジェネラル社は30万台を生産し、60ヵ国に納車した。
 後継車には、MRAP並の耐IED力、ハムヴィー並の走破力と、旧来以上の荷物搭載余裕が求められている。
 名乗りをあげているメーカーは、AMジェネラルと、オシュコシュと、ロッキードマーティン。
 オシュコシュは正規版MRAPのメーカーだった。
 もちんハムヴィーが一夜にして米軍から消えるわけではなく、これから数年は残る。しかし大事に残してもどんどん修理コストがかさむので、納税者の利益にはならない。よって急速に消えるはず。
 「アイアンプラネット」という、米軍が正式に委托しているオンライン中古車オークションでは、毎週50台のサープラス・ハムヴィーが競売に出されている。
 農園主らがよく買っているという。
 あるメリーランドの大学生は、1台をわずか1万ドルで手に入れることができたという。
 ※『朝雲』によると技本が7月から「安保技術研究推進制度」――要するにDARPAの日本版――を始めたようだ。以下のコア技術を抱えている研究者は、ダメもとで応募してみるべきだと思う。
・対人地雷の毀害力を局限してしまえる靴底素材。
・核爆発や高性能炸薬が発する熱を効率的に遮蔽できる服地素材。
・決して燃えないタイヤ素材。
・土工重機の操縦席に縛り付けて人間オペレーターの代わりをさせる、手足と目はあっても自律歩行などしない、遠隔あやつり用ロボット。
・自動二輪車の左右にスタンド代わりの「ロボット側脚」を生やした、無人の輸送バイク。
・分隊軽機のMINIMIに取り付ければ、旧軍の92式重機関銃並の遠距離狙撃能力が実現する、有害反動ベクトルを完全にキャンセルできる「ロボット三脚」。
・普通科の小銃を架設すれば、高度300m以内の小型UAVに対する精密でムダ弾の無いAAMGとなる、ロボット対空架台ならびに軽量照準システム。
・中型UAV射出用の電磁カタパルトとその電力発生システム。
・不発弾内の炸薬が発射後/投下後数年にして自然に化学的に非活性化するメカニズム。もしくは数年にして弾殻の一部が腐朽して内部炸薬に環境中の水分が浸潤する構造新案。


日本は「押し付け・教化」による世界秩序を目指すのか、むしろ「絶交・絶縁」による世界平和を是とするのか。

 ストラテジーペイジの2015-7-22 記事「Special Operations: Sons Of Saddam」。
 ISの中に、「イスラムの盾」と名付けられた「親衛隊」がつくられている。これはISの指導者たちを内部抗争から護衛する選抜チームである。
 旧イラクのサダム親衛隊やイランの革命防衛隊のようなもので、人数は4000人ほどらしい。外人兵も混じっている。特にスキルの高いチェチェン人が。
 次。
 2年以上も前の記事だが、「武装ドローン」の諸問題を早々と論じてあるものなので、このさい摘録しておきたい。
 Jason Koebler記者による2013-5-21記事「The Next Gun Debate? Armed Drones Could Be Protected By the Second Amendment」。
 玩具というにはちょっと大きめのクォッドコプターに自動小銃を取り付け、窓を模したスペースから民家に侵入して居住者家族を殺傷しまくることは可能であると、このたびデモンストレーションがなされた。
 YouTubeに投稿したのは Kyle Myers 氏で、タイトルは「Prototype Quadrotor with Machine Gun」である。※この動画を検索すれば、下記の関連動画も芋蔓式に出てくる。
 しかし連邦議会では2012-4から、このような可能性は心配されていたのだ。
 2013年のこの時点では、玩具級の小さなサイズのドローンでは、火器の発射反動だけで墜落してしまうという技術的制約があった。
 しかしテキサス州モンゴメリー郡のカウンティ・シェリフは、群衆に向けてゴム弾を発射する低反動ショットガンをドローンに搭載してみた。
 また、0.45インチ口径の自動拳銃をオーソドックスなヘリ型形状のドローンの機首に固定して発射する映像もすでにUpされている。※わたしが知る限り、ホビー用RPVベースのホームメイド空中射撃兵器実験としては、これが最も早い公開動画である。当然、クォッドコプターほどには機敏に操縦はできない。
 6軸の無人マルチコプターにペイントボール銃を搭載したものをUpした男は、これがFAA規則に触れると考え、自らの顔と声を隠している。
 2013時点でFAAは、航空機から何かをリリースすることを規制する条項を検討中である。
 民航機に武器を搭載することを、それによって禁じたい。
 そこで次の論議が予想される。だれかがじぶんの農場や家屋を防衛するためにアームド・ドローンを飛ばしたらどうなる? それは合衆国憲法修正第2条の権利ではないのか?
 ピーター・シンガーは『21世紀の防衛イニシアチブ』という2010年に出した本の中でそれを指摘していた。
 シンガーいわく。もしあなたの私有有人機を武装させることが許されないのだとしたら、あなたのドローンも武装させることは許されない。
 連邦最高裁の見解では、修正第二条の人民武装権の保証はミリシャに限定されない。ミリシャではない個人が自宅の中で自衛の目的で武装することはゆるされる。それは目的が伝統的に合法的だからだ。ただ、範囲が慣習的な運用を逸脱すれば、その限りではない。
 ロボット兵器は、バズーカ砲や戦車や大砲が慣行的な個人自衛手段でないのと同様に、修正第二条では擁護されない。
 しかしRPVが全国的に普及してしまえば、話は変わるだろう。
 多数の全国のアマチュア実験家が、Nerf(ぶつかっても安全な素材の弾丸)を発射するトイガンや、水鉄砲を装置して、RPV実験をしているはずだ。※連射打ち上げ花火を取り付けて人を追いかけ回すユーチューブ動画もあった筈。
 ある人いわく。議会が早めに禁止してしまえば、武装ドローンの悪夢が現実になることはない。
 小型ドローンに拳銃をとりつけて私有地内で遊んでも、それはFAA規制にはひっかかるまい。
 しかし重大懸念。装填済みの銃をとりつけたドローンがどこかに墜落したらどうする?
 有人の小型機やヘリから民間人が猟銃を発射することは、一部の州では合法である。2011年にテキサス州は、ヘリからハンターが野生のイノシシを駆除することを合法化している。
 また、コヨーテについて、以前から空からのハントを認めている州もあるのだ。
 犯人が離れた場所から無人の武装ヘリを飛ばし、高いところから地上の大群衆に発砲させ、タマが尽きたところでこんどは海へ向かって逸走させて海底に証拠を隠滅してしまったら、警察の捜査は難航するだろう。
 ※マルチコプターと火器(または爆薬)の組み合せは、高層ビルの上部階のセキュリティー前提をガラリと変えてしまう。ローター径が大きな有人ヘリでは窓に近寄れないけれども、マルチコプターなら墜落のおそれを心配しないで窓から1m以内までも接近できてしまうのだ。違法オイルリグから武装賊徒を駆逐するのにも、やがて用いられるであろう。