amazonで新刊『こんなに弱い中国人民解放軍』を注文しよう!

 講談社の「+α(プラスアルファ)新書」として、最新の兵頭二十八の中共撃滅戦略がリリースされます。店頭売りは3月ですけれども、アマゾンでは既に注文が可能になっているので、買い物の時間など心配せずに最も確実に、楽に早く手に入れたい方は、ぜひどうぞ。
 なお、超おもしろすぎる『歴代アメリカ大統領戦記』vol.1(独立戦争の前半まで)は、草思社から4月刊行予定なので、いましばらくお待ちください。
 『こんなに弱い中国人民解放軍』の内容は、タイトルのマンマです。
 日本版NSCの仕切りは外務省です。その外務省は米国国務省の御意向伝声管だというのが存在規定です。肉体エリートでもあった岡崎氏が欠けた日本外務省はどういうわけか腰抜け揃いで、しかも不勉強です。彼らは「シナ軍が弱い」ということが理解できない。そのために「受けて立つ」という戦争指導ができないんです。「受けて立つ」ことができなければ、シナ軍のクリーピング・アグレッションは成功します。頼むアメリカには「エア・シー・バトル」という役立たずなドクトリンしかないからです。
 じつは米海軍は、現代中共は「機雷戦」にもちこめば簡単に体制そのものが亡びるという分析を済ませています(そのデータ史料を提供したのはわが帝国海軍でした)。しかしそうなると米空軍は無用ということになってしまう。米国政治のなかで、米空軍のバックにいる超巨大な利権集団を海軍が敵にまわすことになってしまう。だから「対支戦争には米空軍だって活躍ができますよ」という説明文をわざわざ海軍が準備してやった。それがASBなんです。
 しかしASBでは「ウクライナの謎の軍服集団の蜂起」みたいなグレーゾーン・アグレッションには無力でしょ?
 海上挑発を「受けて立つ」ことで「機雷戦」にもちこんで、中共レジームを崩壊させることしか、シナ周辺国の国家主権を防衛する手段はありません。
 だからこれからは日本が「受けて立つ」戦略に、逆にアメリカを巻き込むようにしなければならない。しかし我がヘタレ外交官たちにそんなミッションができますか? 彼らには「やまとだましい」(旧慣行を度外視して新前例を創る敢為。シナ官僚の前例墨守主義と対比して謂う。特に外寇への緊急対処として)が、ありません。
 海上での敵の挑発を日本が受けて立つことにより、事態を「機雷戦」にもちこむことができ、中共は亡びます。ところがそれには法的な大きなワンステップが必要です。すなわち海上における「平時から戦時への切り替え」です。日本外務省にはこの指導はできません。怖いのと無知なのとで、できないのです。そんな腐儒官僚が日本版NSCを仕切っている以上、中共の「クリーピング・アグレッション」に日本は打つ手は無いでしょう。
 数日前に、『スターズアンドストライプス』紙のERIK SLAVIN記者が「The Asia-Pacific:where the US military follows its nation’s money」という記事をネットに載せています。
 ――米国の輸出品の四分の一はアジア向けであり、また、輸入品の37%は、アジアから来た。それは欧州その他から買っている量と等しい。中共が尖閣や南シナ海で余計なことを始めなければ、これからもずっと、米国はアジアを足掛かりに経済発展を続けることができる。2004年から2014年までの統計でも、アジアからの輸入の伸びよりも、アジアへの輸出の伸びの方が28%多かったのだから……と。
 米国務省の匂いがするこの記事は何を示唆しているかといいますと、とりあえず9月によびつける習近平に「これからイランと戦争して撃滅するから太平洋では騒ぎを起こすな」とでも命ずるんでしょうが、中共はガチガチの統制国家ではないですから、習近平がそれをかしこまって拝承して帰国しても、軍人たちがそれを守りませんよ。
 オバマ民主党政権が続く限り、アメリカ国務省は日本外務省が中共の海上挑発を「受けて立つ」(平時から戦時に切り替える)ことを許さないということでしょう。だったら領土主権も領海主権も「クリーピング・アグレッション」にやられ放題ですよね?
 米国経済がシナ市場を必要としているのと、日本の領土主権が「クリーピング・アグレッション」で蚕食されて行くのとは、独立の事象です。日本人にとっては、後者の方が重大。しかし日本版NSCはそれに対処できない。
 本書は、中共帝国から周辺国が独立主権を守るには「挑発を受けて立ち、機雷戦にもちこむ」ことしかなく、それによって中共は簡単に崩壊するし、アジアも安全化することをご説明します。
 機雷で中共を滅ぼせるのは、日本だけじゃありません。フィリピンにすら可能です。ですからこれからの日本の正しい武器輸出政策としては、機雷を撒くことのできる無人潜航艇や小型特殊潜航艇を日本から安価にフィリピンやインドネシアやマレーシアやタイやブルネイにどしどし輸出してやることです。
 また、通常の航空爆弾にとりつけるだけでそれを「沈底機雷」へコンバートすることのできる「複合センサー&信管」部品も、いまから大量に製造しストックし輸出(有事には無償供給)もすることです。
 日本が今日ではシナと違って機雷封鎖を恐れる必要など少しもない理由は、拙著『兵頭二十八の農業安保諭』でお確かめください。二度の世界大戦で、最も先進的な機雷戦システムであったドイツのUボートでも英国をブロケイドできなかった理由も詳述してあります。


オバマ政権は「イラン撃滅作戦」の準備としてまず原油高を維持して国内でシェールガス開発を進めさせ、2014年に機は熟したと判断したのか。残念だがこれから海自はペルシャ湾に召喚される。

 さいきんくだらないことを発見した。
 うちのトイレには小学校三年で習う漢字200字が方眼シートに配列されたものが貼ってあるのだが、この方眼をてきとうに斜めにたどると、ランダムに「漢詩」や「対聯」ができてしまうのだ。
 もちろん平仄無視だから詩でも対句でもない。だが、ひとつひとつの字がわれわれにとって少しも難読ではないために、ランダム文字列なのにすらすらと読めてしまって、自動的に味わいのある意味が取れてしまったり、情趣ある「イメージ」が生成・喚起されて行くというところが、まことに可笑しく、そして興味深いのである。
 1989年に米国でTV放映された「新刑事コロンボ」(トータルでシーズン8)の中にある「GRAND DECEPTIONS」というエピソード(全69作中の49番目)に、加州の軍事系シンクタンクがその一セクションにて「易」をおおまじめに研究しており、それによってシナ人のディシジョン・メイキングの癖を知ろうと努めている、という場面が出てくる。
 中共の発表する公式統計値は、すべて易者が筮竹を見てそれをもっともらしく解説する、卦である。彼らはごく自然に、数字を聯句のように飾ってしまう。それが誰彼に喚起させるイメージを、ものすごく気にするがゆえに。そもそも、そのような行政情報加工が、太古から彼らにはずっと当然なビヘイビアであったがゆえに。
 だからトマ・ピケティ先生も、シナ人の資産や担税のデータを得られる日が来るとだけは、期待せぬ方がよろしかろう。これからもそれは無い。
 易学のこじつけの馬鹿らしさ、恣意性、非科学性をよく知っているはずのわれわれが、それを世界に対して指摘できないで、三十年前の米国のシナリオライターの方が、よくわかっていた。


捕虜の焼き殺しは彼らにとって珍しい文化でもなかった

 バグダッドの米国大使館で2004~2006に人質捕虜事案対策に任じていた元米海軍シールズ隊員が、既に2004年のイラクにおいて、アルカイダが捕獲したイラク人の警察官複数をいちどにガソリンで焼き殺すビデオを見たことがあるし、連中は十年も前からそんなことはしょっちゅう実行している――と証言している(Howard Altman記者による20155-2-5記事「Brutal treatment of prisoners is traditional jihadi tactic, former SEAL says」)。
 その内容は、自分たちで掘らせた塹壕の前に、ガソリンをぶっかけた捕虜を一列にひざまづかせておき、まず一人をつきおとして点火。そのあとから次々に他の捕虜もつきおとす、というものだったと。
 ちなみに米軍航空隊ではクルーにSERE教育というのをしている。Survival, Evasion, Resistance and Escape=捕虜にならない。なったらいかにして脱走するか。
 ただしこれが通用するのは、米国や米軍と同じ文化を共有する敵の場合だけだ。
 ISによる捕虜処刑やそのビデオ公開は、「ISはその勢力拡大運動を維持しつづけている。ISは他のセクトよりも勢いがあるから、みんな、ISに加われ」というPRのためだけに実行されている。
 そこで、リアルの陸戦で敗退して旗色が悪くなったときが、処刑やビデオリリースのグッドタイミングである。
 たとえば、シリアのコバネ市からISIL軍が叩き出された直後のタイミングでISILは後藤を馘首するビデオをリリースした。
 またイラクのキルクーク市郊外では、クルド部隊が8つの橋をISILから奪回した。その時点でISILはアルカセスベー操縦士の焼き殺しビデオをリリースすることにした。
 焼き殺しはそのずっと前だったが、12月下旬のラッカ空爆のダメージが大きかったからこそ、操縦士の焼き殺しによって身内の気勢を維持する必要があったのである。
 なおISは、アルカセスベーのビデオの末尾で、他のヨルダン空軍パイロットたちの氏名と居場所のリストを表示して、こいつらを殺せば純金100ディナールを償金としてくれると言っている。
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 Slobodan Lekic記者による2015-2-4記事「Analysts: Pilot’s death may give Jordan’s monarch freer hand against Islamic State」によると……。 2005のアンマン爆破事件では、確実な死者は57名だという。
 ヨルダンは内戦が起きていない数少ない中東国家である。
 そして、シリアからは150万人、イラクからは45万人もの難民を受け入れている。米国は13億ドルの資金をヨルダンに援助している。
 米陸軍はヨルダン内にパトリオットSAMを展開。また米空軍のF-16×1個飛行中隊も進出している。
 ヨルダン空軍機は、ISに対する空襲を、2014年9月22日から開始した。
 ヨルダン人口のマジョリティは、パレスチナ人である。しかしヨルダン政府とイスラエル政府のあいだは、緊密である。
 アメリカとイスラエルに、中東諸国は対抗できない。そればかりか、その政府はむしろアメリカやイスラエルと結託しようとさえしている。これに絶望した若者がISに身を投ずるのである。
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 Vivian Salama and Bram Janssen記者による2015-2-4記事「Westerners join Kurds fighting Islamic State group in Iraq」。
 豪州は、法律により、自国籍人が豪州軍ではない軍隊といっしょに戦うことを禁じている。
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 これはNYTによるすっぱぬき第一報の後追い確認記事らしい。
 ROBERT BURNS記者による2015-2-4記事「US: Key Arab ally no longer flying airstrikes over Syria」。
 UAEはシリア空襲を中止した。12月から抜けていた。
 それなのに米政府は、UAEもずっと空襲を続けているような公報をしていた。
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 MATTHEW PENNINGTON and ERIC TUCKER記者による2015-2-4記事「FBI analysis suggests Philippines killed terror suspect」。
 マレーシア人の大物イスラムテロリストがフィリピン南部に入り込んでいたが、比島警察隊が2015-1-25に仕留めた。警察部隊も44人死んだ。
 フィリピンは政府が弱すぎるので、米国FBIが全面協力。また米国はそやつの首に償金をかけていた。
 こやつは、英語、アラビア語、マレーシア土語、比島土語をあやつることができ、しかも、爆弾作りの技師であった。教育は米国で受けている。
 インドネシアのテログループ「ジェマーイスラミヤ」のリーダーでもあった。
 2015-1-25の戦闘は比島政府として近来最大の激戦だった。比軍の人数が少なく、首魁の死体をまるごと持ち帰れない情況だったので、指だけ切断してもってきた。
 次。
 ストラテジーペイジの2015-2-4記事「Afghanistan: That Sense Of Great Loss」。
 東アフガニスタンと南アフガニスタンでは、ISILとタリバンの武力衝突がすでに発生している。
 アフガン人は、阿片とヘロインしか輸出換金できるものがない。
 200万人のアフガン人がすでにヤク中である。
 タリバンに規律と自制力があったうちは、警察や行政当局者への鼻薬も効くのだが、地域でムチャクチャなことをやるようになって住民に恨まれれば、賄賂を提示してもめこぼししてもらえなくなる。いま、その段階。
 さいしょは宗教運動だったタリバンも、いまやマフィアと同じである。住民は誰も支持してない。むしろ米軍機による空襲を待望念願している。
 米軍が撤収準備に入って空襲しなくなる→タリバンが自律をうしなってギャング化する→住民から浮く。このパターン。
 2011にはNATO空軍が連日364ソーティ実施してたが、いまはアフガン政府空軍による19ソーティのみ。
 アフガン軍は機関銃装備のMD-530を2015中にめぐんでもらう予定。
 固定翼機としては、20機のスーパーツカノ(A29 Super Tucano)も2015にめぐんでもらう。※この機体はイイ。現代のP-51だよね。いや、ブラジル製ということはドイツ人の設計だから現代のフォッケウルフなのか。練習機的性格の軽攻撃機。日本の武器援助も、ほんとうはこういう装備から始めるのが理想的なのだが、戦後の富士重工がこういう飛行機を考えてこなかったからタマが無い。日本の武器メーカーの経営陣は、アメリカの真似することしか考えられねえのか。
 アフガンでも過去10年に10万人が戦死/戦災死した。
 しかしアフガン人は年々豊かになっている。だから8割が米国を支持している。
 2001には百万人の児童(すべて男児)しか、小学校に通っていなかった。今は800万人であり、しかも4割は女児。
 電話は2001には1万台だったが、いまはセルフォンが170万台。
 問題は、パキ国境からイスラムテロリストが流入し、アフガン東部と南部に住み着くこと。最近は、ウズベキスタン人が増えている。
 カンダハルでは、IED用の爆弾部品を満載したトラックが摘発された。パキからアフガンに入ろうとした。
 インドのアフガン支援がものすごい。パキを挟撃するためだ。
 次。
 Lori Hinnant and Paul Schemm記者による2015-2-3記事「The cost of leaving Islamic State: Death or jail」。
 欧州と北アフリカには、ISを抜けて戻った連中が数千人も潜っている。
 過去半年で、国外に戻りたいと言ったメンバー120人以上がISじしんの手で処刑されている。
 逃げ戻った男のシリアでの目撃証言。
 ISは女もメンバーに加えているが、彼女らに強制される任務は、野営地で毎晩、違う男とSexすることである。
 APはこの証言の裏を取っている。複数の人物が同様の証言をしている。
 外国からIS参加した者のパスポートはすぐ取り上げられてしまう。これでもはや元の国には戻れぬ。プロパガンダビデオの中では、パスポートを燃やしている。
 次。
 ストラテジーペイジの2015-2-2記事「ISIL And The Future Of Islamic Terrorism」。
 ISILの絶頂期は2014年の晩春から夏であった。
 しかし彼らはバグダッドまでは南下できず。そして勢いは過去3ヵ月で退潮に向かった。
 とはいえ、シリアではラッカを、イラクではモスールを確保していることに変わりはない。
 住民略奪に遠慮会釈がないのは、外国人のメンバーである。
 歴史はそれじしんを繰返す。2007のアルカイダと、ISILの転帰は同じようである。
 アルカイダは、2003の米軍イラク占領時点では、アラブ世界で高い支持を得ていた。だがそれから4年にして、アラブ世界内でも支持率が失墜した。ところによっては9%以下の支持率となった。2007以降、アルカイダは暴力傾向を抑制したが、それは勢力拡大に結びつかず、却って、ISILの駘頭に道をひらいた。そしていま、ISILも人気をうしないつつある。
 2014-6にモスールを制圧したISILは、シーア派の兵隊と警察官を皆殺しにして、カリフェイトの樹立を宣言した。これが絶頂期。
 さいごのカリフェイトは、トルコ帝国だった。それは400年続いたが、1924に消滅した。
 イラクでは、2割がスンニで、6割はシーアである。
 シリアでは、75%がスンニで、15%がシーアである。
 つまり、マイノリティとマジョリティが 逆転しているのだ。
 シリア東部のスンニと、イラク西部のスンニは、民族的・宗教的に一体なのに、トルコと西欧のおかげで分断された。
 かれらは、「スンニスタン」をつくりたいのである。
 スンニのトルコと、シーアのイランが、このアラブ最北の地、すなわちシリア=イラクで、宗教的な角逐をずっと続けてきた。
 トルコは16世紀からそこを支配してきたのだが。
 中東に平和が来るとどうなるか。連中は、伝説物語の中の、イスラム防衛のための戦士たちをなつかしみ、何か事を起こしてやりたくなるのだ。
 だから、ISILが消滅したとしても、また中東では、おなじようなことが将来もずっと、永遠無限にくりかえされるのみ。


「読書余論」 2015年2月25日配信号 の 内容予告

▼Walter Lord著、実松譲tr.『逆転』原1967、邦訳S44フジ出版
▼ドナルド・S・Sanford著、小菅正夫tr.『ミッドウェイ』原1976
▼Ernest Hemingway著、大久保康雄tr.『武器よさらば』新潮文庫
 邦訳初版がS30-3-20。原題“A Farewell to Arms”, 1929
 WWI中のイタリアのゴリツィア市には「淫売宿」が2軒あった。1軒は兵隊用。1軒は将校用。
 イタリア軍憲兵は、攻撃命令にしりごみした擲弾兵の10人ごとに1人を銃殺した。
 両脚をやられた負傷兵が野戦病院にかつぎこまれてきたら、診断の直後に両足に×印を書く。
▼『海軍 第一巻 海軍黎明期』S56 つづき
 軍艦役は、士官室士官に相当。
 軍艦役並は、ガンルーム士官に相当。
 軍艦役並見習は、士官候補生。
 浅吃水の『回天』は、蜂の巣のように撃たれまくったのに、沈没することがなかった。『開陽』が舵を破壊された大嵐も檣2本折っただけで乗り切っているし、木造船として驚異的な抗堪力を示した。※この理由を現代のLCS設計家は深く考究するべきだろう。
 生麦事件の賠償を幕府が全面拒絶した場合は英国は日本に宣戦布告して列島をブロケイドする予定だった。その場合は、戦場外の香港にPrize Court(捕獲審検所)を設置して、中立国商船からのクレームに応対しなければならない。
▼(株)京都産業観光センター『京都タワー十年の歩み』S44-12
▼防研史料 『海軍航空本部軍需関係資料』S19年度
 九飛関係である。
▼防研史料 『飛行場設営関係史料 其の一』
▼渡辺淳一『静寂[しじま]の声――乃木希典夫妻の生涯・上』1988
▼防研史料 『野戦砲兵射撃教範』M36-2改正
 それ以前の教範とはガラリと変わる。
▼防研史料 『独国38型 二〇ミリ車載機関砲 構造 及 取扱 説明書』S18?
▼防研史料 『昭和十九年海軍航空補給参考書綴』
 発煙投弾改4。94式航法目標燈2型。零式航法目標燈1型。零式吊光照明弾1型。96式着水照明炬。灯火発煙筐。1式照明投弾。零式発光器。爆弾運搬浮舟……等々、『日本海軍の爆弾』では紹介できなかった火工品の名称や諸元が詳しい。
▼原田東風『各種商店主人店員苦心談』M38
 日露戦争でオモチャの傾向が変わった。軍艦、サーベル、ロシア兵が日本兵にいじめられているおもちゃ。
 何んでも、自分が子供になったやうな気で、珍しいもの\/と、始終工夫を凝らして居なければなりません。
 菓子は地方より圧倒的に東京が上である。
 古本屋はとにかく商品の数が、集客とリピートにつながる。それに尽きる。
 食いもの屋の双璧が、蕎麦屋と牛屋。
▼松本仙太郎『酒事秘密伝』M16
 防腐剤が無かった当時、変濁してしまった酒をどうやって再び澄まして売り物に仕立てるか。その秘術の数々。
▼箱石東馬『箱石醸造法質問録』M23
▼徳野嘉七『醸造肝要調法記』M19
▼中西亨『日本塔総覧』1978
▼塚田清市・編『乃木大将 事蹟』大5、小林又七pub.
▼『水交社記事 vol.253』S4-3-25
 1914年から1918年までの機雷戦。
▼合綴 部外秘『水交社記事 vol.280』S10-6-25
 1932の第一次「上海事件の我機銃に就て」by上海海軍特別陸戦隊・第3大隊第7中隊 機銃小隊長・海軍大尉 工藤兼男
▼『ピーボヂーマルチニー銃取扱法』M18-6 陸軍省
▼『海軍造兵廠報告 第2号』M25-11-21
 47ミリおよび57ミリ・ホッチキス速射砲用の山内閉鎖機 および 山内砲架 の説明。
 「山内自働砲」の写真2枚あり。貴重。
 ◆  ◆  ◆
 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。(配信されるファイルはPDFスタイルです。)
 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。
 大きな図書館に毎日通えない人も、最低費用で、過去の軍事知識のマニアックな勘所に触れることが可能です。
 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。
 「読書余論」は、毎月25日に「武道通信」から最新号が配信されます。1号分の購読料は500円です。
 バックナンバーも1号分が500円で、1号分のみでも講読ができます。
 過去のコンテンツは、配信元の「武道通信」のウェブサイト
http://www.budotusin.net/yoron.html
 で、タイトルが確認できます。
 PDF形式ではない、電子書籍ソフト対応の「一括集成版」もできました。詳細は「武道通信」で。
 ウェブサイトでわからない詳細なお問い合わせは、(有)杉山穎男事務所
sugiyama@budotusin.net
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インドが『蒼龍』級6隻の購入を希望。ASBの次のコンセプト名は「ジャムジーシー(JAM-GC)」=国際公海でのアクセスと活動自在の統合コンセプト だと。

 まず、いくつかのシリア関係ニュース。
 ストラテジーペイジの2015-1-28記事「The Air War So Far」によると…。
 米軍機のイラク&シリアに対する空襲は2014-8に始まったが、これまでに5000発もの誘導爆弾が投下され、3500目標を破壊した。
 その3500のうち300弱は軍用車両である。その車両のうち2割はAFVである。
 建物爆破は1000棟以上である。
 石油工業プラントは270箇所破壊された。
 民間車両700台撃破。うち半分近くは武装可能なピックアップトラック。
 また、ユーフラテスの川舟14隻も破壊。
 政治的な理由から、米軍以外は、イラクとシリアのどちらかを空襲しないことにしている。
 対イラク空襲を遂行しているのは、米、豪、白、英、加、丁、仏、蘭軍である。
 対シリア空襲を遂行しているのは、米軍、バーレーン軍、ヨルダン軍、サウジアラビア軍、UAE軍である。
 ※中共が戦争を始めた場合も、このような袋叩き体制が米国によって組織されるのだろう。
 ※NATOであるトルコがなぜ参加していないか。イスラエルに言わせると、トルコはイスラミック・テロリストの歴然たる味方なのである。トルコ人に言わせると、そもそも中東原油はぜんぶトルコ帝国のものなので、それをトルコから奪った米英仏のために血を流す義理はないのである。もしもトルコが反テロ主義なら、ISILの「擬似首都」がトルコ国境に近いラッカになることなどありえない。トルコ国境のすぐ内側に米軍が空軍基地を開設しただけで、ラッカなど維持はできない。しかしトルコ政府はそれをさせない。
 次。
 APの KARIN LAUB and ELAINE KURTENBACH 記者による2015-1-28記事「Jordan ready to swap prisoner for pilot held by Islamic State」。
 ヨルダンの輿論は、米軍に連れられる形での対シリア空爆のスタイルに、心底では反対である。
 ヨルダンはこれまで、宗教コネクションと、イラク内の部族長老たちを通じて、ISと間接交渉を進めてきた。
 捕虜パイロットの父は、ヨルダン政府が何もしようとしないから、オレはすでにトルコ政府に交渉を依頼している、と語った。
 多くの日本国民は、2名がそもそもシリアに行ったことについて批判的である。
 土曜日(24日)と火曜日(27日)にリリースされた後藤のビデオについて、APは、これらにイスラム国系メディアである「al-Furqan」のロゴが入っていない点が不審であると考える。
 APによるとパイロットは26歳である。
 コーリショングループがISを空襲し始めたのは、2014-8月である。
 もうひとり、ヨルダン内で収獄されているプリズナーがいる。
 その男、ズィアド・アルカルボリ(Ziad al-Karboli)は、イラクのアルカイダの一幹部の副官格であった(an aide to a former al-Qaida leader in Iraq)。1人のヨルダン市民を殺した罪で2008に死刑判決確定。
 次に潜水艦関係ニュース。
 ストラテジーペイジの2015-1-29記事「Some Poles Do Not Want To Bomb Moscow」によると、ポーランド軍はドイツ製の潜水艦を買うことをほぼ決めているが、ポーランドの政治家の中には、フランス製の潜水艦を、フランス製の巡航ミサイルとパッケージで買いたいと夢想している者がいるのだと。
 ポーランド軍は、稼動する潜水艦としてキロ級を1隻有する。他に、ノルウェーから只で貰ったおんぼろ潜水艦4隻があるが、これは動かない。
 今、武器市場で手に入る西側製の潜水艦は、スウェーデン製1種、ドイツ製2種、フランス製1種しかない。
 端と独は、バルト海での運用に通じている。
 ところが仏には良い武器がある。巡航ミサイルだ。空対地のストームシャドウを2011に水中用に改造したものである。射程1000km。
 フランスは巡航ミサイルについてはメーカーからの直販は許さない。国家が国家に供給する。
 陸上ではポーランドとモスクワの間には緩衝国のベラルーシがある。しかしバルト海からなら、直接にモスクワを狙える。
 1隻から18発の巡航ミサイルを発射してロシアの発電所を攻撃することもできる。
 ※わたしが過去複数の著述の中で警告した事態:「原発外郭に建つ燃料プール棟を精密兵器で攻撃することで、敵国内をフクシマ化できる」が、真剣に検討されているのである。これに備えるためには、すべての原発をフラックタワーで防禦する必要がある。それを「想定」し「対策提案」できないような日本の「原子力村」に、原発運営の資格などは無い。
 次。
 Zachary Keck 記者による2015-1-29記事「China’s Worst Nightmare? Japan May Sell India Six Stealth Submarines」。
 インドが蒼龍級を6隻欲しがっているというのだが、ライバル候補として仏製、独製、露製、西製もある。
 なにより、建造は、インドの造船所でしなくてはならない。
 最大限、話がトントン拍子に進んでも、船台に乗るのが8年後ぐらいだろう。
 インドの兵器購入に関与する官僚たちの超腐敗は有名である。そのためすべての予定は遅れに遅れ、揉めに揉めるのである。
 ※日本の武器輸出政策は、オフザシェルフでメンテフリーのものに比重を置くべきである。日本人は、腐敗文化を歴史的バックグラウンドとする外国人たちを訓練サービスしてやることにかけては、まったく適性がないのだから。日本人くらい「他者」を教育するのに不適な者は居ない。「他者」を知らないからである。後悔する前にこの警告に耳を藉せ。日本製の中古乗用車をロシア人は自力でメンテして乗り回している。アフリカで武装ゲリラが転がしている日本製ピックアップにも、日本人の点検整備サービスはついていないはずだ。それが理想のスタイルではないか。
 次。
 米下院軍事委員会の海軍力&戦力投射分科会のボス。ヴァジニア選出共和党員のJ. Randy Forbesが寄稿している2015-1-29記事「RIP Air-Sea Battle?」。
 エアシーバトルは、改名された。「グローバル・コモンズにおけるアクセスと活動自在の統合コンセプト」ジャムジーシー。
 クリーピング・アグレッションと、グレイゾーン・アグレッション(“creeping” or “gray-zone” aggression)。それらの典型が、クリミアにおける「国籍不明部隊」や、東シナ海におけるシナ公船による国際法蹂躙。
 米海軍と米空軍が主役であるエアシーバトルは、こうしたクリーピング/グレイゾーン・アグレッションに、まるで対処のできないコンセプトであった。
 用語がおもしろい。“the concept formerly known as Air Sea Battle”ですと。これは昔、「プリンス」改め「ズィ・アーティスト・フォーマリー・ノウン・アズ・プリンス」と呼ばせた芸能ゴシップを踏まえている。
 おしまいに、100球LEDの追加報告。
 やはり数日すると、夜の七時台で消えてしまうようになる。
 そこで提案だが、太陽電池のボルテージが下がってきたら自動的に、明滅のインターバルの「滅」時間を長くし、「明」時間も短くするようなソフトに変更するべきではないだろうか。さすれば、新聞配達の人がやってくる未明までも、点滅を維持できるはずだ。


シリアで捕えられたヨルダン軍戦闘機パイロットについて

 イスラム国に捕虜になっているヨルダン空軍のF-16AM機のパイロットの階級は中尉(First Lieutenant)である。名前は Mu’ath Safi Yousef al-Kaseasbeh という。
 2014-12-24は水曜日。その日の早朝に、このアルカセスベー中尉はシリアのラッカ市(ISが占拠中)上空で何らかの理由でベイルアウトした。
 ラッカ市の近郊にハムラ・ガナンという村があり、ベイルアウトの結果、その近くの湖に着水したらしい。IS戦闘員により、水面から引き上げられて、そのまま捕虜になった。
 パイロットのIDカードもISがツイッターに画像UPした。それによると27歳である。
 このパイロットは2014-6に結婚している。
 米軍とアラブ諸国によるシリア内のイスラム国目標に対する爆撃は、2014-9-23からスタートしている。
 シリア空爆に参加しているアラブ諸国空軍は、サウジアラビア、ヨルダン、バーレーン、UAEで、カタールは基地提供で協力している。
 しかしイスラエル筋によれば、その墜落以後、ヨルダン空軍は、空爆を止めた。ISILとネゴシエーションを続けている傍証である。
 ヨルダンは対ISの情報収集の結節点である。
 ヨルダン国王は、ISは武力だけでは退治できないと言っている。理性によって彼らのイデオロギーと対決する必要があるんだ、と。
 有志連合がISを空爆し始めてから最初の軍人捕虜が、この中尉であった。 ヨルダン政府は公式にはISのことを「デシュ」と呼んでいる。
 英国のハモンド外相は、この捕虜パイロットについての懸念をすぐに表明した。なにしろイスラム国はその時点で3人のアメリカ人と2人のイギリス人を斬首していたから。※ヨルダンは英国が庇護してきた関係が長い。ヨルダン国王も若い時に英軍に留学している。
 ヨルダン情報相は、F-16は地上砲火で撃墜されたと語った。
 しかし米米軍のセントラルコマンドの司令官ロイド・オースチン大将は、これは撃墜ではないと否定した。さりとて、ベイルアウトの真因は語らず。
 ロシア製のMANPADである「イグラ」やSA-7ストレラがイスラム国に保有されているのは確かである。イラク軍やシリア軍がストックしていたものが、鹵獲されているから。1991湾岸戦争では、1機のトーネイドがこの肩射ちミサイルで落とされてもいる。
 しかし、他のたくさんのF-16はSAMで狙われたという報告をぜんぜんしていない。F-16は高度6000m以上をキープするよう命令されているはずなので、MANPADが当たるはずがないのだ。だから、この機体は機械故障を起こしたのか、さもなくば、パイロットが愚かにも低空を飛んでみすみすAAの餌食になったのだ。中東では、まるで適性などない若者が、王族や金持ち家庭の出身であるというだけで戦闘機パイロットになっていたりすることは、よくある。
 F-16はシングル・エンジンで、しかも空戦時の敏捷性を追求した設計であるので、わざと「不安定」につくられている。もし電力が切れた状態だと、安定滑空などはできない。だからパイロットには、不具合→即・エジェクト 以外の選択は無いのである。
 2014-12に、この中尉をISが訊問する模様がビデオ公開された。米国は、ビデオ映像からその場所を特定したらしく、2015-1-1の夜11時30分に、ラッカに対して救出作戦を実行した。
 複数の固定翼機(機種不明)が低空から多数の照明弾を落とし、且つ、地上攻撃をする中、2機のヘリコプターが、市の東郊の屋敷に着陸しようとした。だが地上から小火器で猛烈に射たれたことで、2機とも着陸を断念した。
 その直後に、やはり2機のヘリコプターが、ラッカ市街の某所にやはり着陸しようとしたものの、こちらもまた同じように地上からの乱射を受けるや、着陸せずに飛び去った。
 中尉奪回作戦は、失敗したのである。
 じつは2014-6に、米軍特殊部隊は同じような失敗をしている。このときは、民間人のジェイムズ・フォーリーを救出しようとしたのだが。フォーリーは殺された。
 ちなみにヨルダン国王は、おんみずから、ブラックホークとコブラを操縦できるだけでなく、1993にはヨルダン軍特殊部隊の長になっている。※クーデターが起きたらいつでも自分の操縦で脱出できるわけだ。
 したがってヨルダンは、やろうと思えば隣国に対して自力で捕虜奪回作戦もできる。
 大問題は、捕虜の現在位置についての正確な情報が無い。
 次の問題は、ラッカまではブラックホークなら往復できても、コブラは脚が短くてそこまで作戦できない。ブラックホークでも、増槽が必要になる。
 ヨルダン軍のUH-60は空中給油機能がない。シリア砂漠でC-130に給油させるという方法はある。
 英『デイリー・メール』紙のネット版を見ると、12-24の墜落直後からいろいろなコメントが書き込まれている。「ISを攻撃するパイロットは自殺ピルを携行すべきだ」「オレがパイロットなら、ベイルアウトしないで機体ごとダイブする」だとかの「斬首されるよりむしろ自死を選べ」という意見が結構あるのに感心する。まあ、若い読者たちなのだろう。そしてここにも「A-10厨」が多数、沸いているのを確認できる。パイロットや潜入民間人は、衛星に自己位置を教えるビーコンを体内に埋め込むべきだ、という意見が、貴重だと思った。


昨日以前の注目記事ふたつ。

 BASSEM MROUE 記者の2015-1-26記事「Failed Iraqi bomber named in Islamic State hostage crisis」は、こんなことを教えてくれる。
 2005年にアンマンにある3つのホテルが爆破され、60人死亡した。これはヨルダン史上最悪のテロである。
 2005-11-9に、Ali al-Shamari がホテル1階の宴会場で自爆。新婚のその妻 Sajida Al-Rishawi も自爆装置のスイッチを入れたが、装置の不具合から炸裂せず、逃げ出す人々の波にまぎれて現場を離脱した。
 このイラク人夫婦の犯行は、アルカイダの首領だったアルザルカイの命令を実行したもので、アルザルカイは米軍の空爆により2006に死んでいる。
 この女はヨルダン警察にではなく、ヨルダン国営放送局に自首してきた。
 裁判では、トリガーを入れなかったと主張したが、爆弾専門家のフォレンシックで、単に「不発」だったのだと判明している。
 被告の女は一審で絞首刑判決。控訴審も一審判決を支持した。
 しかしこの判決、ヨルダン王ならば、破棄することもできるのである。
 アルリシャウィ死刑囚は、今、44歳である。
 この女は、所属部族の関係で、アルザルカウィに近かった。だから後藤とのトレードが成立すれば、落ち目のアルカイダよりも今やISIL(「イスラム国」をアラビア語で表わして短縮称化すると「デシュ」だそうだ)のほうがステイタスで勝っているのだと中外に誇示することができる。
 ※10年近くも死刑を執行しなかったということは、ヨルダン政府も将来の人質交換要員のタマとしてこの女を確保していたのではないかと思える。ISILは、じつに絶妙の条件を出して来た。スタート・ネゴシエーションの時点から、もう、阿吽の呼吸が通じている。
 ※しかし、この女と後藤を1対1でトレードすれば、ヨルダン人は何か損したような気になるだろう。「後藤プラス数名」で、釣り合うのだろう。しかしそうなるとこんどはISIL側が不満かもしれない。アラブ人同士の交渉は日数がかかるだろう。この先、何ヶ月もかかるだろう。
 ※日本政府はヨルダン政府に何か飴を与えなくてはならない。このさい、武器を提供したらどうか? さすれば、日本はテロと戦っているという公式の宣伝にもなるだろう。「武器輸出」解禁よりも、「武器援助の外交オプション化」が先行した方が、庶民を安心させ、且つ、ずっと健全に見える。将来、日本政府の「実録」年表をつくったときに、奇麗になるのである。
 次。
 ロイターの Jibran Ahmad and Mohammad Stanekzai 記者による2015-1-21記事「Disenchanted militants in South Asia eye Islamic State with envy」。
 アフガンでは、ISのことを「ダイシュ」と呼んでいる。
 タリバンの首領、モハマド・オマールがここ数年、〔リーパーで爆殺されるのを恐れて〕姿を表に出さないので、タリバンは不満である。むしろダイシュの方が元気があって宜しいじゃないかと、思われ始めてきた。
 現実に、タリバンの支配域は拡張しなくなった。それにくらべてISは、どんどん面積を拡げて彼らのシャリーア強制を実現している。
 オマルは生きているのかどうかもわからない。それに対して、アブバクルアルバグダディの露出はすごい。
 ※ところがISILには衰滅の兆しが早くもあらわれてきた。時間はISILの味方ではないようだ。
 以下、ついでに兵頭からのお願い。
 ドイツに現存しているフラックタワーの写真(個人として撮影し、オリジナル版権が伴っているものに限る)を持っている人、ご一報ください。『私版防衛白書2015』で、使いたいと思っています。使用料は、1枚あたり2500円から3000円くらいになります。
 もうひとつお願い。
 短辺が300ミリ、長辺が600ミリ(あるいは500mm、あるいは400mm、あるいは300mm)の四角形で、摂氏250度以上の熱を断熱してくれる、薄板状の素材を探しています。これは、拙宅のキッチンの木製ダストボックスの上に敷き、その上に加熱直後のフライパンなどを臨時に置いても、ダストボックス天板表面の白塗装が焼け焦げたりしないようにするためのものです。なお、セラミックス工場に特注することについてはわたしは全く興味がありませんので、何か出来合いの製品について、「ここで買える」という情報をお寄せくださいましたならば幸甚です。


Bergdahl のケースが適用される

 殺されても同情をあつめない一人は斬首され、殺されるとイスラム国の評判が悪くなると判断された一人は 囚人交換 の材料になったように見える。ISILの今回のネゴシエーションは上手い。
 オバマは、タリバンにとらえられているアメリカ兵をとりもどすために、グァンタナモからタリバン五人をパキ国境で解放して取引したことがある。2014-5-31のことだ。
 このアメリカ兵 Bowe Bergdahl はほぼ間違いなく脱走兵であり、2009-6にじぶんでタリバンにつかまり、仲間を危険にさらした裏切り者である。しかしそんな奴のためにオバマは「テロリスト」五人を釈放した。
 この前例があるから、アメリカ政府は、「テロリストとは捕虜交換の取引きをするな」とは日本政府に向かって言えないのである。(カネの支払いは、アメリカ政府は日本政府に対してゆるさない。これはさいしょから不動だった。)
 日本政府が、残る一人(斬首されていない一人の善意の日本人)のためにヨルダン政府やアメリカ政府に 向こうの要求する一人の女テロリストを釈放してやってくれ と頼むことを、アメリカ政府としては、止められない。
 ISILはそこを読んでいるのであり、じつに巧みである。声明文の英語も、英国で教育を受けた者が書いたのだろう。
 生き残っている方の人質は、Bergdahl が何年も生かされていたように、これからも生かされるだろうと思う。
 


昨日の注目すべき記事の摘訳

 ストラテジーペイジの2015-1-22記事「The Religion Of Peace Defines Peace Differently」。
 イスラム教徒たちがよく、イスラムは「平和の宗教」だという。嘘である。
 過去20年以上も、世界のテロ殺人の95%は、イスラミック・テロリストによって起こされている。
 複数の調査が示すところ、全世界のモスレム人口15億人のうち12%が、イスラミック・テロリズムを支持している。すなわち2億人近くだ。
 西側世界内で大きなイスラミックテロが起きたと報道されると、その都度、世界のイスラム教優勢国内では、人々がそれをおおっぴらに祝賀しているが、それも尤もなわけである。
 2001年9月11日のテロの直後、イスラム教が優勢である諸国の政府は、一様に明白な非難の声明を出した。が、当時、それらの国に滞在していた西側の人士は皆、目撃している。イスラム教徒の住民たちが、ニュースを聞いて慶んでいたことを。
 イスラミック・テロリズムが最も多く殺しているのは、じつは、同じモスレムである。
 西側世界に住み着いているモスレムは、イスラミック・テロに反対か? かれらの大多数は、依然としてテロに賛成だ。
 2014年に欧州諸国は、ISILを支持している住民の割合について調査を行なった。
 ドイツでは成人の2%がISILを支持していた。英国では7%であった。フランスでは15%であった。その多くはモスレムである。
 ちなみに、ドイツ人のイスラム教徒率は4.6%、英国人では5%、フランス人では7.5%である。
 非モスレムでISILを支持する者は、若者である。老人にはほとんどいない。
 2005年に英国で爆弾を使ったイスラミック・テロ事件が発生。直後に英国政府は輿論調査している。そのまとめ。英国内のモスレムのうち24%はテロリストの動機(イスラムを防衛する、等)にシンパシーを抱いている。英国内のモスレムの6%は、イスラミック・テロリストの暴力は正当化されると信じている。そして18%の英国人イスラム教徒は、英国に対して、ほとんどロイヤリティを感じていない。
 西側諸国内のイスラム寺院には、イスラム諸国でトレーニングを受けた聖職者が送り込まれてくる。そして礼拝集会で説教をするのだが、その話の内容が、非モスレムに対する敵意や暴力を後押しするものである。
 そうした敵意が全モスレムから求められることが当然なのだと、それら聖職者たちは考えている。
 モスレムの聖職者をトレーニングするほとんどすべての宗教学校では、そうしたヘイトと敵対を許容している。イスラミック・テロリズムをすぐにやめさせるに足る分別を、持ち合わせているにもかかわらず。
 《以下、略》