●読書余論 2013-9-25 配信号 の 内容予告

▼『明治工業史 火兵篇』
 この本が編まれているS4の時点で、海軍の下瀬火薬がピクリン酸であることは秘密とされている。海軍の硬直した「なんでも秘密主義」。
▼『火兵学会誌』
 この雑誌は、国会図書館には、S9-5の第28巻1号から、S19-3の第37巻6号まで所蔵されている。そのうち興味深いものをピックアップ。
▼『造兵彙報』
 陸軍造兵廠で刊行していた雑誌。国会図書館には 大12-8の1巻1号から、S18-11の21巻11号まで、所蔵されていることになっている。興味深いものをピックアップ。
▼『偕行社記事 413号』M43-6
 南部麒次郎砲兵中佐が偕行社にやってきていて講話した機関銃の話。
▼『偕行社記事 415号』
▼『偕行社記事 臨時第10号』M38-4
 砲兵中尉の藤井文介のMG実戦指揮所感。保式はダメだという理由が並べてある。貴重。
▼『現代国民文学全集 1巻 獅子文六集』S32 角川 Pub.
 小説「海軍」は、S17-7-1~S17-12-23 に岩田豊雄の本名で朝日に連載された。
▼永松淺造『軍艦の知識』初版S16-6、再版S16-7
 アイオワ級の速度情報が日本海軍には入っていなかったことが分かる。低速戦艦だと思い込んでいたのだ。
▼ブランコ・ボグダノヴィッチ著『世界の名銃』原1986、訳1988ノーベル書房
 著者はユーゴ人。南部が外国の何をパクったのかの示唆多数。
▼『歩兵機関銃操典草案』M47
 これは国会図書館蔵。
▼長谷川公之『ピストル』S36 池田書店
 著者は警視庁の鑑識だった。終戦直後の日本は拳銃天国だった。
▼『陸軍戸山学校略史』S44 非売品・国会図書館蔵
▼『三機』
 第20歩兵聯隊 第3機関銃中隊 の回顧録。
 92式重機関銃の詳細を知ることができる。
▼野口昂『福山航空兵大尉』S14-9
 追悼出版。陸軍である。
▼榊山潤『航空部隊』S19-9
▼大澤吉五郎tr.『米國戰闘力の研究』S18-1
▼『参戦とアメリカ』S16-8
 都新聞社が主催した座談会。
▼中條是龍『江田島精神』S18-6
▼清閑寺健『江田島』S18-2〔?〕
 千葉県の百姓のせがれが江田島に入る、つくり話。
▼山本地榮『江田島第一報』S19-4、S19-8repr.
 一中でも棒倒しをやっていた。
▼関口好男『海兵団』S18-2
▼大島司朗『独逸自動車國道』S17-5
 トート博士いわく。局限空間で考えるな。ドライバーのスタートからエンドまでの「空間体験」を常に念頭せよ。これがアウトバーン設計の神髄也。
▼滝川文雄『海難 物語裁決書』S35-11
▼杉本巴水『海軍兵学校生活』M41-5
 ひょっとすると日本で最も古い難関校受験完全マニュアル。ここまでアドバイスが細かいと空恐ろしい。
▼林 冷子『歌集 江田し万』S12-5
 江田島教官の妻が詠んだ。戦前の短歌出版物は例外的に検閲が甘く、とんでもない軍事秘密が語られ、あるいは不都合な真実が糾弾されていることもあるのでわたし的には必読なのだが、これにはそういう部分は無かった。
▼「海の中尉」著『江田島生活』大5、武侠世界社Pub.
 奥付がない。もちろんペンネーム。
▼高木正行tr.『米國発明の超仕上法 及 超仕上盤』S19-8
 ホーニングなんてもんじゃない球軸承面のフィニッシュ。クライスラー社の底力。
▼真継不二夫『報道写真集 海軍兵学校』S18-7
▼『海軍兵学校現状』S6-11
 なんと、48期と59期の卒業生の平均身長と平均体重が載っている。
▼『偕行社特報』
 S11からS12まで出ている号のうち、面白いものをピックアップ。
 ◆  ◆  ◆
 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。(配信されるファイルはPDFスタイルです。)
 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。
 大きな図書館に毎日通えない人も、最低費用で、過去の軍事知識のマニアックな勘所に触れることが可能です。
 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。
 「読書余論」は、毎月25日に「武道通信」から最新号が配信されます。1号分の購読料は500円です。
 バックナンバーも1号分が500円で、1号分のみでも講読ができます。
 過去のコンテンツは、配信元の「武道通信」のウェブサイト
http://www.budotusin.net/yoron.html
 で、タイトルが確認できます。
 PDF形式ではない、電子書籍ソフト対応の「一括集成版」もできました。詳細は「武道通信」で。
 ウェブサイトでわからない詳細なお問い合わせは、(有)杉山穎男事務所
sugiyama@budotusin.net
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●読書余論 2013-8-25 配信号 の 内容予告

▼赤間安吉『戦線に立って』大13-12
 山形連隊の退役中尉が、下士官として日露戦争に出征して凱旋する迄を綴った貴重な地方出版物である。
 外地では、味方の死体は火葬にするが、敵の屍体は火葬にしないで並べて土に埋めておかねばならない。その具体的な手順など。こうした知識は、来たるシナ軍・韓国軍との実戦で大いに必要になるであろう。
▼防研史料『陸上機銃指揮官参考書』by横須賀海軍砲術学校射撃部、S20-6
▼海軍歴史保存会ed.『日本海軍史 第7巻』H8
▼防研史料『一九〇八年式『マキシーム』重機関銃 説明書』陸技本S12-8
▼防研史料『外国製銃器取扱の参考』陸軍兵器学校S16
▼防研史料『九六式基筒単装二十五粍高射機関砲取扱法(案)』第一陸軍技術研究所 S20-6
▼防研史料『九八式高射機関砲説明書』陸技本S14-2
▼防研史料『九八式高射機関砲 取扱ノ参考』陸軍航空統監部 S20-3
▼防研史料『「ホ二〇四」仮取扱法』小倉陸軍造兵廠研究所 S19-10-10
▼防研史料『米機撃墜 虎ノ巻 其ノ二』雪部隊本部 S18-9
 ビルマ戦線で英軍機を日本の歩兵部隊がライフルや軽機で撃墜した事例を集めている。そりゃ「米機」じゃねえだろ!
▼防研史料『自M42.1~S 大阪陸軍兵器補給廠歴史附録』
▼防研史料『大正12年度 陸軍造兵廠歴史』
▼防研史料『独伊派遣軍事視察団報告資料 技術 3/7冊』S16-7-21
 鉄薬莢の難しさ。特に自動火器用は簡単ではない。
▼『偕行社記事 No.660』S4-9
▼『偕行社記事 No.663』S4-12
▼『偕行社記事 No.?』S15-1
 「ノモンハン事件参加将校座談会記事」。
 ※『偕行社記事』は、S15以降、読み甲斐がなくなる。おもしろい話を載せるという方針が消えるのだ。
▼山本常雄『阿片と大砲』1985 PMC出版
 昭和通商の話。
▼『徳山市史 上・中・下』S31
 特に四境戦争から戊辰戦争まで兒玉源太郎はどこで何をしていたのか。
▼日本史籍協会ed.『吉川経幹[きっかわつねまさ]周旋記 五』S2、S45repr.
▼日本史籍協会ed.『吉川経幹周旋記 六』S46repr.
 同じころ、有坂は何をしていたのか。
▼広瀬彦太ed.『幕末以降 帝國軍艦写眞と史眞』(財)海軍有終会S10pub.
 外国製の自動火器を搭載していた軍艦について。
▼海軍有終会ed.『近世帝国海軍史要(増補)』M49repr. 初S13。
 明治海軍のガトリング砲について。
▼大東研究所ed.『世界補給戦』S18-11
 ガ島からの敗退を承けて出版された企画。誰がこの本を書かせて出版させたのか、興味は尽きない。
▼藤原辰史『カブラの冬』2011-1
 第一次大戦中の数十万人もの銃後の餓死にまつわるドイツ政府のいろいろな資料を紹介している労作。※ドイツに三年留学した渡辺銕蔵は、やはりドイツ政府発表の資料だけを論拠に〈ドイツの国内の食料は不足はしない〉と断言する本を第一次大戦中に書いてしまい、後悔し、〈ドイツは公式統計で嘘をつく国だ。ドイツのことをいちばんよく知っているのは敵国のイギリスだ。イギリスの分析と勘較しないとドイツのことは書けぬ〉と悟ったものだ。
▼防研史料『東京湾要塞歴史 第一号』東京湾要塞司令部 M27~44
 リボルビングカノンをけっこう設置してることが分かるんだが、『日本の大砲』にはリボルビングカノンはひとつも紹介されてないんだよね。
▼鈴木正節『幕末・維新の内戦』1977
 四境戦争について。
 ◆  ◆  ◆
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本山さん、あなたの待ち望んでいたネット選挙が、とうとう始まりましたね

 わたくし兵頭二十八は、福岡の本山貴春さんにはとてもお世話になった者です。
 本山さんは、ずっと以前から、インターネットこそ、汚いカネで左右できない議会制民主主義の本然の理想に沿った選挙の姿に近づき得るメディアであると考え、この可能性を既存メディアと左右朝野の既存権力が一緒になって排斥しようとしているのは日本国をよくするゆえんではなく、けしからん話であると、みずから逮捕訴追される危険を顧みずに、断乎としてインターネット選挙運動を推進して来られました。
 いわば、今回のネット選挙への道を開いた偉大な民主主義の闘士であり斯道のパイオニアです。
 (余談ですが月刊『BAN』の先月号に載っていた、福岡のヤクザが持っている手榴弾を見て驚いた。旧ソ連製のデザインなんですよ。入手先は大陸方面しかあり得ないですわね。ソ連製手榴弾はじつは基本設計がよくなくて、ピンを抜いたときに、右手の握力が弱ければ、バネの力がかかった安全レバーが滑るように真上へスッポ抜けてしまい、それから4秒で爆発します。みなさん、気をつけましょう。……というか、そういう土地柄だけに、民主主義の闘士も、他所とは気合いが違うわけでしょう。)
 この本山さんが今回、「ネットの力で当選した初めての候補者」にしたいという候補者がおられるといいます。
 32歳の岩本壮一郎さんです。(その資料は、http://youtu.be/MnM66K4czjwおよびhttp://iwamoto-soichiro.com/にあるそうです。わたくしPCの機種が高性能化したんですが、ウィルスソフトのチェックが入るせいなのか、動画の再生がやっぱり遅すぎまして、この老人には精神衛生上悪いので、ネットで動画は見ぬことにしております。どうも悪しからず。)
 いやもう何もいいません。本山さんの推薦なら間違いないんだ。わざわざこの函館までやって来なくたってね。参院の比例代表ってのは、「全国ドブ板選挙」はとうてい無理ですからな。飛行機や汽車の白紙切符の束は、選管からもらえるはずなんだけどね。カラダがひとつしかないんじゃ。こういうブログで拡散して知名度を上げるしか、手はないでしょうなぁ。
 みなさんは本を買うとき、出版社じゃなくて、著者の名前で選ぶでしょう。
 選挙も同じですよ。所属政党ではなく、個人の人物を見よ。
 その個人の人物は、その人物の友人が誰か、で、なんとなく分かるものじゃないですか。わたしの投票原理、というか応援原理は、それだけです。


●「読書余論」 2013年7月25日配信号 の 内容予告

▼George Markham 著『Japanese Infantry Weapons of World War Two』1976,London.
 国会図書館蔵で、昔は貴重な参考書だった。訳は無い筈。
 薬莢への油塗布は、日本の工場が、薬室などの精密加工ができないので、隙間の調節のために、自動火器では必要であったことなどを、最初に教えてくれた資料だ。
▼菊地重規『中国ビルマ戦線』1979-10
 著者は陸士35期で大正デモクラシー期に厳選された少数少尉だったので勉強をサボってセックスにあけくれ陸大に行かず。しかし大戦末期の中佐不足で参謀にされた。大佐でないのに大佐を自称するなど妄想小説に類しているが、ところどころ、当時の軍隊点景としてものすごく分かりやすい部分があり、そこを買う。
▼ジャック・ブロス著、田口&長野tr.『植物の魔術』八坂書房1994-8pub.、原1990
▼姉崎等・片山龍嶺『クマにあったらどうするか』2002-4
 毛の長い動物を深い穴などから引き上げる方法。細長い枝の先端に割れ目を入れ、楔を噛ませてY字状にする。それで、毛の中をねじると、からまって、全体をもちあげることができる。1本では落ちてしまうときは、2本使え。
▼J・H・ファーブル著、日高・林tr.『ファーブル植物記』1984-11、原1867
 セイロンやマダガスカルに生えているウツボカズラの中の水は、旅行者が飲用してもOK。
 人類の呼吸作用で、炭酸ガスが、1年に、1600億立方m、できる。それは、石炭を862億7000万kg、燃やした量に相当する。
▼『植物の故事ことわざ事典』アロー出版社 ?年刊
 竹光の「みつ」とは、兼光だとか国光だとかの刀匠の名前っぽくした、ジョークであった。
▼『偕行社記事 No.614』大14-9~『偕行社記事 No.626』大15-11
▼防研史料『自 明治42.1~至 昭和?年 大阪陸軍兵器補給廠歴史』
 ◆  ◆  ◆
 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。(配信されるファイルはPDFスタイルです。)
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MIL短報【2013-6-30作文】

※兵頭のPC端末を機種変更してから「ブログ人」へのログインができぬ状態が続いています。MIL短報は臨時にこちらへ掲載します。
一。
 Michael Welles Shapiro 記者による2013-6-29記事「Navy, shipyard sign $745M Enterprise inactivation contract」。
  1961-11-25に就役した原子力空母『エンタープライズ(CVN65)』は退役と決まって2012-12-1に原子炉を止めた。
 いよいよ解体(核物質完全除去)作業にかかる。その費用はおよそ $750 million だと。総額は上方変動する。「コスト+インセンティヴ」契約方式なので。オーバーした金額の負担は、海軍と造船所で折半することになる。
 請け負う造船所は、ニューポートニューズで海軍御用をつとめる Huntington Ingalls Industries 。げんざい、米空母を建造できる唯一の造船所なのだ。
 ビッグEは米軍の最初の核動力空母である。これ以前に解役された核空母は無い。したがって、空母用の廃炉作業も、これが最初のケースとなる。前例が無いのだ。
 作業は2018-9までかかる見込み。専従する労務者は常時1000人以上という体制。
 ただし原子炉の解体ができる場所はニューポートニューズではない。その段階になったら、ビッグEは曳航されて太平洋のワシントン州ブレマートンにある Puget Sound Naval Shipyard に運ばれる。その海軍工廠で8基の原子炉をバラす。
 原子炉を取り出すためには船殻をオープンカットしなければならない。取り出された原子炉部分は、艀に載せられて揚陸され、ワシントン州東部の沙漠へ運搬される。そこは連邦エネルギー省が管轄する、原子炉のゴミ捨て場である。そこに最終的に埋められる。
 エンタープライズは、ノーフォーク海軍基地にあったが、6-20に曳航されてニューポートニューズに着いた。
 エンタープライズに姉妹艦は無い。エンプラの次の級はニミッツ級である。
 キューバ危機にもエンプラは出動している。
 出力は20万馬力。
 米海軍の4隻の原子力空母だけが、「ジェット機の着艦40万回」を記録している。その1艦でもあった。
 2012-11まで作戦任務。12月に退役。
 2500人のクルーは、今は1300人に減らされている。
二。
 ストラテジーページの2013-6-29記事「The Unreported Revolution In Air Combat」。
  米軍戦闘機の過去10年のすごい進化は目立たないところ、ヘルメットマウント照準システムにある。
 めだたないのも道理。過去10年、米軍機と外国軍機との間に「空戦」というものが発生していないからである。しかし進化の凄さはすべてわかっている。
 というのは、米軍の戦闘機は、その空戦訓練中、いつ武器の発射を決断したか、いっさいを電子記録にとられているからだ。1970年代から、その記録が全部残されている。もちろん、部外秘だ。
 その統計をとって、分かったこと。とにかく「決心」のタイミングが早くなってきている。
 したがって、今、ヘルメットマウント照準システムをもっていない他国空軍とのドッグファイトになれば、米軍パイロットは、万に一つもおくれをとることはない。
 現在の究極のシステムは、JHMCS(Joint Helmet Mounted Cueing System)である。※「ジョイント」が付くと、それは空軍と海軍の共用であることを示す。
 これは昨年に導入された最新バージョンだが、パイロットの目玉の動きを器械が探知して、パイロットが何を攻撃したいのかを器械が判断してくれる。そのさい、パイロットの首やヘルメットがどの方角を向いていようが、関係ない。両目が焦点をあわせている対象物だけを、器械は察してくれる。そしてそのまま瞬時に空戦ミサイルのロックオンと発射が可能なのである。
 いぜんのJHMCSは重量配分のバランスが悪くて、パイロットの首がえらく疲れたが、その問題も、昨年バージョンでは改善された。
 この「JHMCS II」は、初代より安価になったが、それでも a million dollars します。
 ※エンジンや機体はおいそれとは設計も量産も成熟もさせ得ない。しかし、電子ハードウェアとソフトウェアは、日進月歩で進化させることができる。そしてその面での進歩は、エンジンや機体の性能、パイロットの空戦技倆をほとんどどうでもよくするだろう。これは「数十年経ってはじめて2代芽が育つ裸子植物の針葉樹はなぜ毎年繁殖する被子植物に進化スピードと多様性で負けるか」と同じ機序なのである。日本がもし有限の国防資源を、進化の光速な電子ハードウェアとソフトウェアに集中してつぎこんでいたなら、米軍よりも先に「JHMCS」やその他のガジェットを豊富に手にできたことは間違いない。軍事政策の総括リーダーシップというものがなく、軍事評論界にも視野狭窄のオタクしかいないために、今日の不振・凋落があるのだ。
 JHMCS はまた、バイザーに飛行上のクリティカルな情報をシースルー・モニターのように現示してくれるので、パイロットは計器チェックのために下を向く必要が激減する。これは、常時、四周を警戒していられることを意味する。
 ヘッドアップディスプレイと違い、横を向いていても可い。これは進歩だ。
 歴史をさかのぼると、最初にヘルメットマウンテドサイトを考えたのは、南アフリカのメーカーだった。それは1970年代であった。
 アンゴラを支援していたソ連軍機が、このサイトを実装した南アの戦闘機によってしばしば撃墜された。
 そこでソ連もこのヘルメット照準システムを独自に考えた。これは完成したが、秘密であった。
 ※この推定情報にもとづいて米空軍プッシュのもとに製作された映画が、クリント・イーストウッド主演の『ファイアー・フォックス』である。
 ソ連崩壊後、元東独のパイロットが、このソ連のシステムを使ってNATOのF-16を空戦試合で翻弄してみせた。これに米空軍が驚愕した。
 イスラエルのエルビット社は、ソ連の開発動向を、ユダヤ人移住者チャンネルによって掴んでいたので、はやくから DASH (Display and Sight Helmet) の必要性に目をつけ、開発資源を突っ込んできた。だから米軍と米企業は、エルビットと協定して JHMCS の実用化を加速させたのである。
 ただし初期のJHMCSは2kgもあり、これにGがかかると17kgと同じことなので、パイロットは疲労困憊した。それで6年前、米空軍は、パイロットの首の筋肉を鍛えるジム・マシーンを、空軍基地に多数設置したほどだ。
 こんかいの「II」が軽量化した意義は、だから大きいのである。


MIL短報【2013-6-29作文】

一。
 ストラテジーページの2013-6-28記事「The Navy Follows The Army」。
  米海軍は、32隻保有しているLCU(Landing Craft Utility、大発のさらに巨大なもの)のリプレイスを考え中。
 すでに船齢40年以上で、急速に動かなくなりつつある。
 LCUは平底で、浅い海岸を航行でき、砂浜に乗り上げて船首ランプドアを倒して、そこから車輛を吐き出すことができる。
 いま、用いられているのは『LCU1600』型で、排水量380トン。荷物は125トン積める。それでたとえば戦車2両+兵員400名を運べる。
 LCUは固有乗員13名で操縦される。
 最高速力は20km/時にすぎない。
 海上には、連続10日間、補給なしで居続けられる。
 更新する新型だが、名称は『SC(X)(R)』(Surface Connector Replacement)という。
 設計はまだ確定していない。いろいろ考えている。
 しかし軍事予算は厳しい環境なので、いまのLCUの無難な発展形となるだろう。
 じつは海軍とは別に陸軍も『LCU1600』をもっていた。それを陸軍は、34隻の『LCU 2000』で更新している。
 この新型は、排水量 1,087 ton、荷物は 350 tons(すなわちM1戦車×5両、もしくはコンテナ24個)載せられる。
 乗員13人は変わらないが、海上に27日間、無補給で居続けられる。
 クウェートや日本の米陸軍は、沖合いまでやってきた米海軍の輸送艦から重い荷物を受け取るのに、この『LCU2000』を「艀」として活用している。
 おそらく海軍も『LCU2000』で我慢しなくてはならないだろう。
 なお、陸軍の『LCU2000』はかれこれ20年くらいも使っているのでそろそろリファービッシュが必要だ。その工事のあと、さらに25年くらい、使われ続ける予定。
二。
 Oren Dorell 記者による2013-6-28記事「US Ospreys and air tankers put Iran in Israel’s reach」。
  米国はイスラエルにいろいろな高額な兵器を只でプレゼントし続けなければならない変な立場にある。
 オスプレイを進上することも既定路線だが、国民納税者にどう説明するのか、ずっと考えていた。
 このたび、良い理由がみつかった。
 イスラエルの特攻コマンドーをイランの地下核工場までオスプレイで運べるじゃないか!
 それには航続力が不足だが、空中給油機もついでにプレゼントすればいいじゃん!
 ちなみにオスプレイは8機、渡される(米国負担金額 $1 billion)。またついでに、イスラエルのF-15のレーダーを米国製のAESAに換装してやる工事費用 $500 million も米国納税者がまるまる負担する。※この記事はわれわれを安心させる。というのは、イスラエル国産のAESAなどぜんぜん頼りにならないことが如実に伝わるからだ。イスラエルがこれまでシナ人にどんな国産技術を売り渡したかしらないが、それは中共空軍機のレーダーを、ほとんど改善していないと推定できよう。
 イスラエルが破壊したいのは、イランの Fordow の山の地下にあるウラン濃縮プラントだ。
 岩盤が厚すぎて、米軍最大のバンカーバスターでも貫徹できない。
 そこでどうすべいかイスラエル軍内であれこれ相談中だが、オプションの一つが、特殊部隊が突っ込んで爆薬で破壊する、というもの。
 米国からオスプレイなどをイスラエルにプレゼントするという決定は、6-15にイスラエルの Moshe Yaalon 国防相が訪米したとき公表された。
 しかしこの他に、公表されていない相談がいろいろある。
 Yaalon 氏いわく。これならまちがいなく実行されかねんなとイラン人も信ずるような軍事オプションをイスラエルがもしも手にしていないならば、イラン政府が核武装政策を自発的にやめるわけがなかろう、と。
 イスラエルに渡されるタンカーは、 Boeing’s KC-135 “Stratotanker” である。オスプレイの作戦レンジは無給油なら 426-mile だが、空中給油機と組み合せることで、無限化する。
 また、戦闘機から発射して敵地上の防空レーダーを破壊する戦術ミサイルも、米国はイスラエルに供与する。
 2007にイスラエルがシリアの原発を空襲して爆破したとき、地上に1人の特殊部隊員が潜行していて、レーザーでターゲットをスポッティングして、爆弾を誘導していた。
 同じことがイランに対してもなされるはずだ。先にレーザー・スポッター要員を敵地に送り込まねばならない。それにV-22が活用される。※わけがない。それなら固定翼機からパラシュートで降下させた方が早い。というかイスラエルの工作員はすでにイラン内に散在していて、オートバイを使った核技師爆殺などもやっているほどなので、あらためて目立つ空から人を送り込む必要などない。リアリズムから関心を逸らすためのディスインフォメーションだ。
 最もありそうな使われ方は、コンバット・レスキューだ。イラン領内にもしもF-16が墜落したら、そのパイロットは何としてでも連れ戻さなければならない。
 ※コンバット・レスキューでは、搭載力はあまり問題にされず、スピードはあればあるほどよく、航続力は死活的に重要である。三自衛隊でオスプレイを最も必要とするのは、北京空爆ミッションを想定する空自の筈だね。搭載力重視の陸自ではなく。
 今、スーダンとエリトリアが、イランのための海軍基地をつくり、そこから戦術ミサイルをガザ地区へ送り込もうと画策している。このミサイルの輸送を途中でおさえるためにも、V-22は役立つ。
 アメリカは、イランにずっと近いUAEとサウジに最新型のF-16爆撃機を売り渡すことで、イランの核武装に対するアメリカなりの回答にしようとしている。
 ※イランがアゼルバイジャン領を併呑しようと工作員を浸透させているので、ロシアが同国政府に戦車などの兵器を援助してイランに対抗させようとしている。イランはどうする気だよ?
三。
 Dianna Cahn 記者による2013-6-28記事「Ashland sets sail from Virginia to Sasebo for ship swap」。
  後尾泛水ドックと、広いヘリ甲板を持つ、上陸作戦艦『Ashland』が佐世保にやってくる。そして、いままで佐世保に常駐していた『Tortuga』は修理のため米国に戻る。
 これは「船体スワップ」と呼ばれる交替の方法で、乗組員たちが、そっくり乗務艦をとりかえる。『トルトゥガ』のクルーはひきつづいて佐世保で『アシュランド』に勤務する。
 『Ashland』はドックで2年をかけて諸設備を近代化したばかり。同じ工事が、『トルトゥガ』にもこれからなされる。
 『アシュランド』は、東海岸のJoint Expeditionary Base Little Creek(ノーフォーク?)を出港し、パナマ運河を通り抜け、サンディエゴと真珠港に寄港して、日本にやってくる。
 この乗員たちは片道6週間かけてまた同じルートを、こんどは『トルトゥガ』で戻ることになる。
 『トルトゥガ』はかれこれ7年も日本に居た。
 『アシュランド』はしかし、4~5ヶ月しか配備されない予定だという。
 ※フィリピン国防相は、スビックだけでなくクラークも米軍のために再び基地化すると言明した。海兵隊もみずからの有用性を示すためには比島に集結しとかないとな。
四。
 ストラテジーページの2013-6-28記事「The Threatened Egyptian Dirty War」。
  エチオピアが工期6年でブルーナイルにダムをつくると下流のエジプトでは水位が下がって舟運にさしつかえるからゆるせん、戦争をしかけてぶっ壊すという話になっている。
 ところがエジプト軍は兵站力が弱い。長期戦ができない。そして、補給手段の頼りは、やはりナイルの舟運なのである。これは航空機によって簡単に阻止されてしまう。
  6-3報。ケニア軍は、偵察用の無人機を取得するであろう。これは米国と日本からの支援によって、実現する。このUAVは、また、警察活動にも使用する。小火器の密輸を取り締まる。
 北ケニアでは、南スーダンやエチオピアやソマリアから、牛泥棒団が越境してきて、牛を強奪して行く。
 UAVは野生動物保護にも役立てられる。


MIL短報【2013-6-28作文】

一。
 Manuel Mogato 記者による2013-6-27記事「Manila plans air, naval bases at Subic with access for U.S., officials say」。
  米海軍高官によると、フィリピン政府は、かつて米海軍の軍港があったスビック湾と、その付属の海軍用飛行基地のキュービポイントを、再建して米軍に提供することを決めた。
 これは南シナ海での対支作戦基地とするためである。
 ※ヘンダーソンの再建が先かと思っていたら、スビックの話が先に公的に浮上した。これはスノーデン逃亡幇助に対するオバマ政権からの対北京報復第一弾である。米国中枢は、いままでは「対支」をあからさまに言うことは憚ってきた。もはや憚らない。
 シナ人が不法占領中のスカボロ礁までは 124 nautical miles の距離に一大米軍基地が再建される。
 コストは 10-billion-peso (=$230 million) を見込む。
 スビック湾は、水深が深い。しかもジャングル高地で囲繞されている。位置はマニラ市から80km。米西戦争いらい米海軍は94年間、ここに居座っていた(日本軍に追い出された2年間を除く)。しかし冷戦後、もう脅威はなくなったと勘違いした比島国会が増長し、腹を立てた米海軍は1992に、巨大乾ドックをも含むすべての設備投資をぶっこわし尽くして撤収した。その後、同地区は経済特区に指定されていた。
 その後も米軍艦や米機は、メンテナンス等の理由でスビック&キュービに立ち寄ることはあった。
 基地用地と区分されているのは、広さ 30-hectare (74-acre) である。
 米国がタダでくれてやったハミルトン級のコーストガード船×2隻も、スビックが母港である。(2隻目の引き渡しは数週間後。)
 木曜日、米比両軍は、スカボロ礁近くで合同演習を開始する。
 そして来週、ブルネイでは、ケリー国務長官が参席する東南アジア+中共の年次会合が開かれる。
 ことし、すでにのべ72隻の米軍艦(潜水艦含む)がスビックに寄港している。2012には88回、2011には54回、2010には51回の米軍艦寄港があった。
 Cubi Point Naval Air Station は、FedEx Corp の民間カーゴ機が、米海軍航空隊撤収後、利用していたが、その後、利用を止めた。同基地は2009に「スビック湾国際空港」と改称された。
 米海軍は、この飛行場の一部をまた軍用に戻したらどうかとアキノ政権に提案中である。
 米陸軍特殊部隊は、2002以降、比陸軍の基地内に分散同居して、南部のアブサヤフらと戦っている。
 また、米海軍の哨戒機は、旧クラーク基地の一部分である、現在の比空軍基地内に、同居常駐している。
 これは米軍が排他的に専用の基地を保持するのではなくて、比軍の基地を米軍が「間借り」したり、アクセス権だけを持たせてもらうという利用形態であるため、比島の国民感情も悪くしない。これからどんどんこのスタイルでプレゼンスが拡大するだろう。
二。
 ARAM ROSTON 記者による2013-6-24記事「Will Congress Let USAF Abandon the Global Hawk?」
  南アジアでは、6月は、雨期(約半年)の始まりである。
 台風も来る。台風はハイパワーなので、天候の変化が速まり、予測がし難くなる。これは極東での対支〔記事では対北鮮と書いてあるが、これはお約束で、対支の符牒として軍事記事では使われる〕の偵察飛行に代価を強いる。
 グァム島に3機配備されている無人高高度偵察機グローバルホークだが、同機だけの、厳しい運用規則が特別に課せられている。まず、雷雲の上は絶対に飛んではならぬ。また、基地からの上昇と、基地への降下の途中で、雲に突入してもいけない。その場合、横に避けなければならない。
 これは面倒な規則である。これがため、少しでも悪天候が予期される日は、そもそもグロホを、飛ばせないのだ。
 昨年などは、ある1ヶ月まるまる、離陸ができない時節もあったほどだ。
 この成績実態が、ワシントンで、「脱グロホ」運動をプッシュしている。
 というか、これをわざと仕組んでいるのは、有人偵察機U-2をなくしたくない空軍の一派なのだ。
 U-2ならばこれしきの雲は関係なく、毎日でも偵察しますよ、とアピールしたいのだ。じっさい、そうアピールしている。
 そして、今18機、持たされているグローバルホークを、ぜんぶ、沙漠の廃品飛行機置き場に並べてしまいたい、というのが米空軍人の国益などどうでもよい私的な願望である。彼らは無人機そのものを忌み嫌っている。飛ぶ趣味をぶちこわす存在だからだ。
 1年半前から彼らはこの姿勢を露骨に示し、グローバルホークの追加調達を拒絶している。
 空軍内にも、グロホを買えよという勢力はある。メーカーのノースロップ・グラマン社との腐れ縁を持った連中だ。
 かたや、U-2の運用継続と追加調達を叫ぶ連中は、そのメーカーたるロッキード・マーチン社との腐れ縁を有しておること、いまさら申すまでもなかろう。
 U-2で高度7万フィートを北西に向けて飛び、そこから機首を右にすると、パイロットは、空がとつぜんに真っ暗になる直前、緑色の「燐光」のフラッシュを視認する。不思議な地球の現象である。
 これは7万フィートまで行かないと体験できない。U-2の場合、パイロットは、宇宙服を着て搭乗する(1955当時のU-2と違っていまでは与圧コクピットなのだが、それが破裂した場合パイロットの命がないので、ひきつづき、宇宙服が常装)。空軍パイロットは、こういう超常体験が面白いので、U-2を捨てたくないのだ。国防とか安全保障とは何の関係もない、個人の興味の話なのである。
 U-2は、2年前、ゲイツ長官により、終了プログラムが開始された。いまや空軍人は、それに全力で抵抗する気満々だ。
 グロホは連続32時間も飛行し続けられる。U-2にはとてもそれは無理である。
 グロホの偵察センサーに対する高性能化の要求は、とどまるところがない。そのため、次々と、ペイロードが大きくされ、エンジンが強化され、発電量も増やされた。そうやって型が新しくなるにつれ、単価は雪ダルマ式に膨張してきた。
 もともと単価 $35 million でできたのが、いまじゃ $220 million である。これは諸装備の不断の開発コストが按分されて上乗せされるため。
 2012-1に空軍は、グロホ計画を終了すると決めた。
 すると全米の15州に散在するグロホの下請け企業が議員を通じて大反対を始めた。
 2013 National Defense Authorization Act は議会を通過している。これにより空軍は、RQ-4 Block 30 Global Hawk をすくなくも2014年末まで運用し続けなければならない。
 1機のグロホも、沙漠の廃物飛行機置き場へ送ることは許されない。
 さらにこの6月、下院軍事委員会は、新しい defense authorization bill を可決した。これにより、グロホを廃品にしたくてたまらない空軍は、2016まで、グロホを運用し続けなくてはならなくなった。
 以下、U-2とグロホ・ブロック30の比較(U-2派の説)。
 U-2はエンジン推力が 17,000 pounds と強力で、高度 65,000 feet へタッタの30分で上昇ができる。
 かたやグロホは、推力が 7,500 pounds と弱いので、6万フィートに昇るのに4時間がかりである。
 グロホは32時間連続滞空できるが、U-2はマックス14時間、ふつうは10時間でパイロットの疲労限界になる。
 ただし、韓国上空は無人機に開放されていない。その空域は、有人機しか飛行することは許されていない。
 U-2の上昇限度は、公称で7万フィートだが、じつは、7万5000フィート近くまで行ける。
 グロホは6万フィートである。
 領空侵犯しないで100マイルも敵地を覗き見したかったら、1万フィートの高度差は、でかい。
 グロホはセンサーを3台(SARレーダーと、光学と、シギント)積む。U-2は2台(シギントを欠く)である。
 U-2は2000年型のホンダ・アコードのようなものだ。つまり、すでに代金はぜんぶ払ってしまっており、しかも、これからも走ってくれる。グロホは新型車であり、金食い虫である。
 運用コストについての両陣営の争い。グロホ・サイドはいう。グロホはパイロットの教育に必要なコストが断然に低い。また一回の滞空時間が長いということは、各部にストレスのかかる離陸と着陸の回数・頻度が小であることを意味する。これは機体の寿命を長くする。
 U-2とちがってグロホには、急にあらわれた雲を適宜に回避するセンサー&知能が無い。
 ただしノースロップグラマンは、雲をカメラで見て避ける装置を後付けできる、と主張している。 $7 million だという。


えっ、盥と洗濯板 知らないの? 川の水 只だから どんどん使って!【2013-6-27作文】

※兵頭のPC端末を機種変更してから「ブログ人」へのログインができぬ状態が続いています。MIL短報は臨時にこちらへ掲載します。
一。
 ストラテジーページの2013-6-26記事「The War Against Invisibility」。
  沿岸で使う限り、原子炉を搭載しない電池動力の潜水艦はきわめて探知し難い。
 米海軍は半世紀前から核動力の潜水艦しか所有していないが、ポスト冷戦の電池潜水艦対策はずっと研究してきた。
 2005~2007には、そのためにスウェーデンから潜水艦を借りて、米国にとっての「最悪シナリオ」を実演してもらい、米海軍のSSNなどがASWの腕試しをした。スウェーデンはたった5杯しか潜水艦を持っていないのだが、クルーごと、リースをしてくれた。乗員以外の民間技師も数十人ついてきてサンディエゴに寝泊りした。
 ゴットランド級のスウェーデン潜は長さ65m、1500トンと小型で、乗員は25名である。
 その前には、米海軍は、豪州の潜水艦を相手によく訓練していた。しかしゴットランド級はAIPである点が、最悪シナリオにふさわしかった。
 イランと北鮮にはAIP建造能力はない。したがって最悪シナリオとは、中共のAIP潜水艦が密かに米国近海に接近し、そこから米本土を核攻撃する可能性に関係する。
 米海軍の最新ASWには、音、磁気、熱だけでなく、匂い(海中の化学物質)を追跡するものまでがある。
 現在米海軍は、環境団体に圧迫されている。南加州沖が潜水艦の訓練場なのだが、低周波ソナーを使うとクジラが死ぬからやめろと環境団体は文句をつけている。それでは中共の潜水艦を中共沿岸で探知できなくなる。
 今日、39ヵ国が、400隻の diesel electric 潜をもっている。
 うちシナが50隻、イランが3隻(+ミジェット潜航艇×25)、北鮮が20隻(+ミジェット50隻)。
 3国の大型潜のうち半分は古すぎるし、うるさすぎる。
 3国のミニサブの半分も、同様だ。
二。
 ストラテジーページの2013-6-23記事「Tardy Terrier Finally Arrives」。
  車外からリモコンしてロボット工兵にもできる装甲工兵車を、英陸軍が受領開始。
 開発に14年間かけた。
 この装甲ブルドーザー「テリアー」は自重30トン。従来装備していた17トンの FV180 をリプレイスする。
 ※土工車輛はあるていど自重がないとふんばりが効かないので、押したり引いたりする作業で力を出せない。さりとて重くしすぎたり履帯を特殊な形状にしすぎると、こんどは自走機動に不便。痛し痒し。
 しかし多くの国では、用済みになった大量の戦車の一部を、装甲工作車に改造する。砲塔をとっぱらって、装甲キャビンに換え、ドーザーブレードなどを追加するのだ。
 ※戦車は足回りが走行本位なので、サスペンションが効きすぎて土工作業には不便。しかし原理上、じぶんと同じ重さのモノまでは、押したり引いたりできる。
 テリアーは、最近の先進国軍隊の工兵車輛が皆そうであるように、リモコンで無人作業をさせられる(陸自のは、できない)。車外には5個のビデオカメラがあり、全周視界を得られる。モデルによっては、デモリッション砲を装備し、障害物破壊用の爆薬を投射できる。固有武装は、機関銃のみである。
三。
 M.L. JOHNSON 記者による2013-6-26記事「Head of Vietnam-era draft lottery dies at 88」。
  ベトナム戦争中、米国は選抜徴兵制度を敷いたが、その選抜の公平性と透明性を確保する方法を考えた男、カーチス・タール氏が88歳で死去。
 ニクソン大統領が、彼を Selective Service System の長に任命したのは1970のこと。
 それに先立つ1969-12のロッタリー式ドラフトから、タールの提案方式は実行されたのである。
 ※ドラフトとは徴兵のこと。これで思い出すのは、むかし、読売巨人軍の役員が不透明な箱に手をつっこんで紙片を一枚つまみあげると、それが必ず、入団前から最も騒がれた選手を指名できる切符であったこと。あんなの少しも公平でも透明でもなかろう。
 米国でもこのロッタリーの導入前は、どの若者を徴兵し、どの若者をしないかは、地域のドラフト委員会が密室で恣意的に決めていた。それは不評だった。
 どの若者が、徴兵されるか(徴兵されれば必ずベトナム行きとも決まっていなかったが、高率で行くことになった)を決めるのに、タール氏の発明したロッタリー方式なら、「情実が関与している」とか「イカサマだ」といった不平は起こり得なかった。
 では、彼が発明した公平な方式とは?
 プレキシグラス製の透明な多角錐ドラムの中に、365枚の紙片が入っている。その紙片には、「1」から「365」までの番号が書いてある。
 このドラムの回転軸は、横に寝ている。ドラム全体をレバーで手動回転させると、穴から紙片が1つづつ、落ちて出る。
 これを365回、公開の会場にて、繰り返す。(やるのは12月。)
 この籤引きの結果、「1月1日」から「12月31日」まで、1日ごとに、まず、ランダムナンバーが割り振られた。
 さて、1年365日のすべての日について、ランダムに籤引きされたナンバー(とうぜんそれは「1」から「365」まである)がひとつづつ割り振られた結果、たとえば、「5月1日」には「100」というランダムナンバーが、籤によってたまたま割り振られたとしよう。
 これで、翌年の1年間に関しては、「5月1日」生まれの徴兵適齢者は、ランダム番号「1」~「99」に籤で割り振られた誕生日の若者全員よりも、後に、召集される順番がまわって来る――という方式なのである。
 すなわち、某年度に徴兵される新兵さんは、まず「1」に該当する誕生日の若者全員。それでも定数に足りなければ、こんどは「2」に該当する誕生日の若者全員。それでも定数に足りなければ、「3」……、と、どんどん召集して、これを定員充足するまで続ける。
 ゆえに、何番までの若者が入営するかは、年度によって、変動することになる。
 じつは、1970年にはもうベトナム戦争からの足抜き路線は決まっていた。だから徴兵員数も、さいしょから漸減トレンドだった。
 1970年には、「ナンバー1」~「ナンバー195」の該当誕生日の若者だけが召集された。
 そして1971年には、「ナンバー1」~「ナンバー125」の誕生日の若者だけが入営した。
 ついに1972年には、徴兵は必要がなくなった。もはや志願兵だけで、米軍は充員できるまでに、兵力が縮減されたのだ。
 タールは1973まで政府(国務省)にポストを与えられ、海外の軍事プログラムに関与した。それから、私企業や大学を渡り歩いた。
 1970~72に発送された召集令状にはタールの署名がしてあった。だからその時期に徴兵されたアメリカ人は、みんな、タールの名前を忘れていない。
 タールは1924に加州で生まれ、WWIIでは陸軍に入営して欧州戦線で闘った。除隊後、スタンフォード大を卒業し、ハーバードで経営学修士。それからスタンフォード大で論文博士。その論文は軍隊に焦点を当てていた。
 1963にはウィスコンシン州のローレンス大学の学長。
 その時期、同州知事に行政面での協力を求められ、そこから共和党に認知され、ペンタゴンに呼ばれた。そこで、選抜徴兵の長になった。
 ※米軍は駐韓米軍の費用の半分を韓国政府が持てと要求しているそうだ。同様の要求が日本に来ても不思議はないね。


MIL短報【2013-6-26作文】

一。
 Ellen Nakashima and Greg Miller 記者による2013-6-24記事「U.S. worried about security of files Snowden is thought to have」。
  スノーデンの支援に奮闘しているウィキリークスは、スノーデンは中共にもロシアにも秘密文書のコピーは手渡していないと強調した。
 そしてウィキリークスはスノーデンの文書にもアクセスしたいと希望している。
 ※亡命を決意した段階であらゆる情報をどこかにストアして海外に持ち出せるように準備したことは当然に想像されるよね。日本でNSAに協力していた「機関」はその構成員の名簿がぜ~んぶバラされることになりやすぜ。個人情報とともにね。こういうことがあるから日本の警察は内閣に秘密情報を見せたりしない。お利口です。秘密を共有する人物が一人増えるだけで、その秘密はもう壁新聞で張り出されたと同じだと覚悟しとくのが斯界の教養だ。
 すでに英紙『ガーディアン』のコラムニストの Glenn Greenwald は、スノーデン提供情報にもとづく記事を連載し始めている。次に何が飛び出すか、皆、戦戦兢兢だ。尚、米国ではWP紙が、英のガーディアンとこのテーマでの提携関係にある。
 しかしグリーンウォルドは請合う。スノーデンはすべてをバラして合衆国の諜報資産を壊滅させるようなマネはしませんよ。
 NSAのプリズムは、すべての人の電気通信の発信元と着信先、その通話時刻や通話時間や通話回数をモニターしている。内容は調べない。しかし、テロ関係者と頻繁に長時間連絡をとりあっているような通信者がソフトウェアで浮かび上がれば、こんどはその通信内容の精査にかかる。
 ※今日のメモリーの性能向上と値下がり趨勢により、全世界の通信内容を全部傍聴して記録し続けることは、NSAには不可能ではない。その記録を、あとから仔細に調査することができるはずである。
 米国政府の元情報関係職員だった人いわく。持ち出したデバイスはハードディスクでしょう。それがシナ人に一回渡されてコピーを取らせたとしたら、すべておしまいです。シナ人がそれを得たとすれば、今はロシア人も同じモノを得ていますな。
 スノーデンはラップトップを持っていたろう。その中にもHDがある。ウィキリークスのアサンジによると、そのラップトップは旅行の前に、親しいジャーナリストたちの機関に預けられたと。
 ※朝永三十郎は大正5年の『近世に於ける「我」の自覚史』でこう書いた。――今次戦争(WWI)ではどの国も、自己を弁護し他を責めるのにあたり、常に正義・人道の如き善の理想に訴えた。それを偽善と呼ぶか? 「偽善の行なはるゝといふことが頓て善の力を示すではないか。善に力のないところに偽善の必要はないではないか」。
二。
 Randal Yakey 記者による2013-6-25記事「Hawkeye III data transfer system helps Marines」。
  この記事は、米海軍の双発艦上早期警戒機ホークアイとは関係ない。
 民間の、滞空時間の長い安価な飛行機にも搭載できる、無線中継装置。その通信機の名前が「ホークアイIIIライト」なのだ。
 海兵隊の広域通信中継用に、商用衛星の周波数帯をふつう通りの感覚で、海兵隊が専用回線として、地球のどこでも使える。
 衛星を使わずに、安価に、飛行機が空中中継局となって、最前線の海兵隊部隊と、はるか後方の海兵隊司令部を、データリンクしてくれるのだ。
 これを使った通信訓練は5月からもう始められている。
 「ホークアイ3ライト」は単価 $400,000 のシステムだ。
 米軍は衛星通信にかなり依存しているが、軍専用の回線だけでなく、民間回線も借り上げている。しかし地球のどこかで大災害などが起きると、この回線は混雑して通信速度が落ちてしまう。
 「ホークアイ3ライト」ならこの問題が無い。
 「ホークアイ3ライト」は、民間衛星通信や民間放送衛星と同じ周波数帯も送信したり受信したりできるから便利である。
 装置の重さは200ポンド強。機内のどこでも、小さなスペースに押し込める。専従操作員は、たった2名で可い。
 ※ストラテジーページによると中共はアフリカ各地の専制政府に総額 $13 billion もの事実上の賄賂を渡して原油を掘らせて貰っているのだそうだ。ヤク中患者がクスリ買いたさに金額を忘れるのと同じ飢渇発狂症状。よほど困っちまってるのね。現地作業員はいっさい使わないでシナ人だけで掘り且つ運ぶというのがシナ流。同時に、商人もドッと入り込んで、その国のマーケットをチープなシナ製品で席捲してしまう。ネオ・コロニアリズムだと。
三。
 お知らせ。
  7月20日の「函館未来塾」のミニ講演は、同塾のメンバーのお知り合いの人しか呼べないイベントだそうです。
 という次第で今回は、一般の方々へのご案内をいたしません。
 申し訳アリマセン。


MIL短報【2013-6-24作文】

一。
 LYNN BERRY and SYLVIA HUI 記者による2013-6-23記事「WikiLeaks: Snowden going to Ecuador to seek asylum」。
  米国との犯罪人引き渡し協定があるにもかかわらず米国からの逮捕要求に香港当局は応じなかった。
 スノーデンは、日曜日の、GMTで13時に、モスクワに到着した。そこからスノーデンはキューバ経由でエクアドルに飛ぶという。
 エクアドルはそのロンドン大使館内にジュリアン・アサンジをかくまっている。
 ※香港からモスクワへ飛ぶアエロフロート機を途中で米軍は邀撃できない。香港からちょくせつにエクアドルを目指せる民航機は無いし、無理に飛んでも太平洋上で米軍にインターセプトされるのは必定。ちなみに、ガラパゴス諸島はエクアドル沖にあるエクアドル領土である。
 キューバには月曜に着く。
 モスクワからキト(エクアドル首都)への直航便は無い。
 モスクワにはエクアドルから外交官たちが着ていて、スノーデンにいろいろと法的助言を与えている。これをウィキリークスのスポークスマンが語った。
 米国務省はスノーデンのパスポートを無効にした。それは香港を発つ前であった。ただし、国家や航空会社は、パスポートの無い人物を大目に見て世話することはできる。
 米国と香港の間の犯罪人引き渡し協定は、政治犯を除外している。また香港自治政府は、外交と防衛については北京の指図に従わねばならない。
 ロシアの外相 Sergey Lavrov は、スノーデンが望むのならロシアに亡命しても可いと言った。露米間には、犯罪人引き渡し協定そのものが無い。
 キューバ政府は何も発表していない。
 『South China Morning Post』紙によると、スノーデンは、中共の携帯電話会社複数と、2箇所の大学のハブでNSAが盗聴していたと言っている。
 同紙は6-12にインタビューしたと。
 中共は人口 1.3 billion 人で、巨大携帯会社が複数ある。「China Mobile」社は世界最大の 735 million 人のユーザーを誇る。それに次ぐ「China Unicom」社の携帯ユーザーは 258 million 人である。それに次ぐ「China Telecom」社のユーザーは 172 million 人。※億人規模というところがスゴい。
 これらの携帯会社はすべてNSAにユーザーのデータを抜かれている。
 また、通信ハブのある二つの大学とは、北京にある「Tsinghua University」と、香港にある「Chinese University」だそうである。このハブを通過するデータをコピー保存する作業は、今年から始めたそうである。
。※いまやビッグデータを盗聴し分析するという時代なのですね。個人の会話などどうでもええんや。
 スノーデンによると、NSAは、シナの「ネットワークの背骨」に注目している。そこに盗聴の焦点を絞っている
 ※3月23日に荒地にタネを直播したノラボウ菜が1株、トウ立ちして開花し始めた。これをさらに放置し続けると来年はどうなるのか、観察を継続したい。
二。
 来月、「函館未来塾」(塾長は髙木幹雄さん)主催で、〈幕末の箱館戦争の現代への教訓〉についてミニ講演をすることになりそうです。いまの段階では、7月20日(土)の夕方6時からの予定。詳細は続報を待て!