世界の家畜が出す温室効果ガスは車よりも多量。家畜を絶滅したらいんじゃね?

 標題に興味を持った人は、Charles Q. Choi氏が2009-11-19付で載せている「Mad Science?  Growing Meat Without Animals」というソース付きの記事を読め。ヒマがないので抄訳しない。
 次。ミリテクのStaff Writersが2009-11-19付で載せた「Simple Test Could Offer Cheap Solution To Detecting Landmines」。
 今でも毎年世界で1万5000人が地雷にひっかかっている。ソマリアやモザンビークにも地雷原がある。
 そこで英国エジンバラ大学の学生たちが、バクテリアを改造した。こいつは、地中に埋められた地雷から漏れ出した爆薬の成分によって増殖して緑色を現示する。
 つまりこの無色透明・人畜無害の安価なバクテリア溶液を地面にスプレーしておき、しばらく待てば、地表に点々と緑変した箇所があらわれるから、その下を掘れば、地雷が出てくるという寸法だ。
 兵頭いわく。’90年代後半以降、失職サヨクは立て続けに数十冊の地雷本を日本で刊行した。が、それが何か世界の役に立ったか? エジンバラ大の学生は、じっさいに人々の福祉に貢献しているよ。日本人は労力の注入所がおかしいぜよ。
 次。昨日の東京新聞ネット版の記事:「日本有事の米軍増強計画判明 嘉手納統合拒否の背景か」。
 旧ソ連軍が日本を本格武力侵略しようとしたら、米軍は嘉手納基地に戦闘機など80機を増派し、別に普天間飛行場には300機のヘリコプターを追加で送り込むつもりであったと。ヘリが多いのは、故障機を修理しているヒマがないので、余計に送るのだと。戦闘機の最低速度とヘリの最高速度が同じなので嘉手納に統合すると混雑すると。
 兵頭いわく。だから何だ?
 本格的武力侵攻があったら、ヘリは、那覇空港(自衛隊那覇基地)や、あちこちの畑を使えば良いだけ。
 あの狭い普天間に300機パックしてもBM攻撃を気にしなくて良いなら、そもそもグァムに後退して行く必要がないじゃん。支離滅裂な役人どもの反論だ。
 次。ルワンダあたりに旅行する人は毒ガスにご注意!
 2009-11-17の「Volatile gas could turn Rwandan lake into a freshwater time bomb」という記事によると、推進1600フィートの淡水湖であるキヴ湖が何かのきっかけで撹乱されると、底の方の水に溶けている2酸化炭素とメタンガスがシャンペンみたいに一挙に湧き出して、湖畔の人間を皆殺しにするおそれがある。同様現象は、1984にMonoun湖で、1986にNyos湖であった。ちなみにキヴ湖北岸には200万人の難民がいる。
 さて……
 23日のJSEEO大阪講演が近づいてきました。ご来場の皆様のいろいろな面白いご質問をお待ちしております。
 24日は中部国際空港から函館に戻る予定です。ヒマな人は、当日の昼飯前後に犬山城、もしくは空港構内で、お目にかかりましょう。


新しい話題と古い話題

 星条旗新聞のJon Rabiroff記者による2009-11-15付記事「Philippines takes aim at juicy bar trafficking」「Officials hope tougher immigration rules keep Filipinas from S. Korean prostitution」。
 韓国の米軍基地周辺に多数ある「ジューシー・バー」とは、日本のキャバクラで出てくる酒の代わりに、高額のジュースが出されるような店舗らしい。ホステスはすべてフィリピン人。こうした店舗は韓国政府からは免税扱いを受けているらしい。
 このようなあいまい飲み屋は韓国のキャンプ・ケイシィ周辺の「The Ville」地区だけでも70店もあるという。
 アムネスティ・インターナショナルがこれを問題にした。「Disposable Labour: Rights of Migrant Workers in South Korea」という98頁の報告書を2009-10-21に出したのだ。同報告によれば、女たちは、〈韓国の米軍基地城下町で歌手の仕事がある〉との誘い文句でフィリピンにてリクルートされ、韓国へ移送され、そこで奴隷状態にされる。到着すると女衒たちは仕事の真相を開示する。じつは米兵たちの酒間にはべる商売であり、いくつかの店舗では、春をひさぐのである、と。
 報道いわく。フィリピン大使館が移民規制を強化すれば、「ジューシー・バー」でのフィリピン婦人の労働は以降は許されなくなるはずだ。※要するにフィリピン政府がこうした出稼ぎ業態を黙認しているのじゃないかという婉曲な非難か。
 歌唱オーディションをパスして、韓国政府からエンターティナー・ヴィザを取得しないと、就労はできない。
 ホステスは、ジュースの売り上げが割当ノルマに達しないと、カラダを売って補いをつけねばならない。 Many come to South Korea thinking they will be performers, only to find out after they arrive that their primary job is to flirt with soldiers and other customers, and to prostitute themselves when they fail to meet juice-sale quotas.
 店内での売春の証拠はまだ押さえられていないが、キスとお触りがなされていることは、比大使館員の内偵で確認されている。
 女衒の闇チャネル経由で就労しているフィリピン婦人は、大使館の監視が届かないので、虐使に直面する。
 米軍は、女衒の婦女移送には「ゼロ・トレランス」で臨んでいるが、韓国の基地周辺では、なかなか対策できないでいる。
 米軍として取り得る措置は、人身売買の確認された店舗周辺を、兵隊たちの立ち入り禁止場所として指定することだけだ。すでに韓国内の約50店舗が、そのような指定をされた。これにあと20店舗が追加されるかもしれない。
 在韓の比大使館の出稼ぎ担当官いわく、2010年春までには比政府が米軍基地や湾近くのバーで女が接客業に雇われることを禁じてくれることを望む、と。
 比政府は、同国民が、イラク、アフガニスタン、レバノン、ヨルダン、ナイジェリアへ出稼ぎに行くことを、危険を理由に禁止している。新しいパスポートには、「イラクへは行かれません」とスタンプされてしまう。
 そういうところは逆に良い稼ぎになる。そこで彼らは、古いパスポートを使ったり、密出国手引き人の世話になる。これは空港職員などが涜職しているのだ。
 次。
 NYTの Op-Ed Columnist 欄。ROGER COHEN氏の2009-11-12付の記事「Of Fruit Flies and Drones」。
 2001年以降、イラクとアフガンですでに米兵は5000人死んだ。
 イラクに2003に乗り込んだときは、ごく僅かの無人機しかなかった。いま、米軍には7000機の無人機がある。※自衛隊は陸自の砲兵観測用無人ヘリが少々という現状かな? 空自は3機ぐらい?
 パックボットのような無人の車両は、2003にはゼロ台だったが、今は12000台もある。※陸自は限りなくゼロ台に近いですよね?
 しかしオバマ政権の9ヶ月半に、パキスタン領内での無人機によるミサイル攻撃がたくさん許可されている。その数はブッシュ(子)政権最後の3年と同じだ。
 すなわちオバマ政権下でのCIAは41回のミサイル攻撃をパキスタン上空のプレデター/リーパーから実施した(だいたい週に1回)。それによって500人くらいが既に爆殺されたのだ。※コーエンは「〔ヘルファイア〕ミサイル攻撃」としか書いてないが、それは不正確で、リーパーその他からのレーザー爆弾による戦果がかなりある筈。つまりレーザー・スポッティング専任プレデターとの共同戦果。
 死者の中には、ビンラディンの長男とか、バイチュラ・メシュドのようなターゲットも含まれていたが。
 “Wired for War”〔いま読んでいますが、メチャクチャ面白いです。しかしロボット史についての認識は浅いという印象。だいたいチェスロボットがナポレオンを負かしたことがあるとか、ネット検索した情報の中からガセを見破る力量がちょっと足りない人ではないか。アゾンも英軍ではなく米軍の爆弾ですよ〕を書いたP.W. Singerがこう言った。今年(2009)、米空軍は、戦闘機パイロットや爆撃機パイロットよりもたくさんの、無人機操縦者を育成する。ビル・ゲイツも、ロボット技術は今、ちょうど1980年におけるコンピュータと同じような段階にさしかかっているところだと認めていると。〔じつはシンガーは、もっとすごいことを言っている。ロボットは、原爆に次ぐ、現代軍事技術上の革命をもたらすに違いない、と。兵頭もまさしくそう思います。実戦に使えない核兵器は、いろいろな意味で、もう古くなりつつあるのです。詳しくは大阪講演で!〕
 コーエンいわく。議会はロボット戦争を監視せよ。そして基本ルールを敷け。
 次。ロサンゼルスタイムスの2009-11-13付のThomas H. Maugh II記者による記事「2 Japanese subs sunk after World War II found」。
 米軍はWWII終戦時に、日本海軍の5隻の潜水艦を鹵獲し、ソ連に技術が渡らぬように、オアフ沖で1946に沈めた。
 そのうち「イ-401」は、2005年のセントパトリックス・デイに、海底で発見された。しかし他の4隻は見つかっていなかった。
 このたび、2500フィートの深海で、「イ-14」と「イ-201」が見つかった。
 来週の火曜日にその水中映像を、米国のナショナルジオグラフィック・チャネルでTV放映するという。
 スミソニアンですでに復元展示されている晴嵐、これをイ-14は、浮上後、7分で発射できた。
 有泉龍之助司令は、終戦時、全潜水艦に、乗員を乗せたまま自沈しろと命じた。The commander of the squadron, Capt. Tatsunosuke Ariizumi, ordered all the planes and torpedoes to be launched and sunk, then ordered the subs to be scuttled with all hands aboard.
 兵頭いわく。これはありえそうにない話ではないか。有泉は終戦時は631空の司令だから、晴嵐の処分を命ずることはできたが、艦長に何かを命ずる権限はなかろ。
 イ-201は、米潜が8ノットしか出せなかったのに20ノットを出せた。また米潜が200フィートしか潜水できなかったのに、ダブル・ハルで300フィート潜れた。
 この記事を読んで兵頭おもえらく。
 潜水艦が浮力を失ってどこまでも沈んでいくと、あるところで隔壁が圧壊して大量の水が一挙に艦内に押し寄せる。すると、ディーゼル・エンジンの空気圧縮点火と同じ現象が起こって、艦内の物が一瞬にしてすべて燃え上がり、その直後に水で潰される。だから引揚げてみると、殉職者は全員、焦げている――という文献を、以前の〈読書余論〉でご紹介したかと思います。(この豆知識は、面白いので、ゴルゴ13の「北緯90度のハッティ」の中でも使わせてもらいました。)
 では、魚雷や砲弾はそのときどうなるのか?
 わたしは自衛隊入隊直前のプータローのとき、物好きにも「甲種火薬類取扱保安責任者」の資格をとってみたことがあります。一度も仕事で行使しなかったので、もはや錆び付いていますが、その折りに仕入れた知識でまだ覚えているのは、火薬類には「死圧」があるということ。つまり、ある程度の高圧下になれば、もう爆発しなくなる火薬/爆薬が多いのです。
 たぶんこの現象が、隔壁の頑丈な潜水艦の場合は起きるのではないかとも想像しています。
 しかしそうしますと、『大和』が水中に没したあと、弾火薬庫が大爆発を起こしたらしいといわれていることは、どう説明がつくのか。この発火も、頑丈な弾火薬庫の隔壁が圧壊し、水圧が一挙におしよせてきたことによる空気圧縮熱によって、まず装薬(発射薬)が自燃して、引き起こされたものではなかったでしょうか?
 水深の差によって、大爆発したりしなかったりするのかもしれません。もちろん、答えは謎であります。
 魚雷が火に弱いことは、米軽空母『プリンストン』のS19-10-24の被弾で証明されたことがあります。日本の艦爆が爆弾1発を当てたことから上甲板の航空機のガソリンが燃え、それが航空機用の魚雷2本を爆発させた。そこからだんだんと下層魚雷格納庫にまで火が回って、救援作業中の軽巡『バーミンガム』の200名をもろともに吹き飛ばすほどの爆発を起こしたといわれます。
 想像しますに、当時の米軍愛用のトルペックス炸薬の鈍感度が、足りなかったのかもしれません。
 昭和2年8月24日の月明のない深夜、日本海の三保関沖での帝国海軍の水雷戦の演習中に、高速(五十嵐邁氏著『三保関のかなたへ』によれば三戦速28ノット)を出していた駆逐艦『蕨』の船腹に、軽巡『神通』が前方45度から衝突し、『蕨』は中央を真っ二つに割られて、26秒の間に沈没しました。このとき『蕨』はボイラーが破裂して艦橋の背後からオレンジ色の火柱が立ち上ったそうですが、砲弾や魚雷や爆雷が誘爆したという記録はありません。艦首の下半分を欠損した『神通』側にも、火災や爆発のリポートはありません。
 しかし後にトロール網で海底から偶然引揚げられた五十嵐少佐と新田大尉の遺骸は、着衣ともにほとんど傷んでいなかったのに、掌だけが、高温で火傷した印として白くなっていたといいます(五十嵐氏前掲書 p.275)。してみると、手摺りのペンキは燃えたのでしょうか?
 この衝突の直後、こんどは軽巡『那珂』が80度の角度で駆逐艦『葦』の左舷後部に衝突しました。二重衝突事故です。相対速度は秒速30mだったかもしれないといいます(『蕨』艦長の遺児である五十嵐氏の調査によっても両艦の速度はハッキリしないようです)。『那珂』は艦首を大破し、『葦』は後部を失いましたが、やはり、弾薬の誘爆は報告されていません。
 WWII後半の日本の駆逐艦や巡洋艦は、米機の銃撃で魚雷の酸素に火がつくのを恐れ、魚雷を早めに投棄したという記録をよく目にします。しかし、三保関事件当時(皇紀2587年)、93式酸素魚雷はまだ水雷戦隊に普及していなかったことは、幸いだったでしょう。
 もちろん今日の海軍で、魚雷に酸素を使っているようなところはないでしょう。「週刊オブイェクト」さんが太鼓判を押されるように、軍艦の爆発事故などよりも、よほど商船の爆発を恐れるべきでしょう。
 わたしは、硝酸アンモニウムもしくは硝安系の肥料を満載した貨物船による沿岸都市破壊テロを、海上保安庁はもっと警戒すべきであると考えます。
 アフガンで肥料からつくったIEDが話題になるよりもはるか前、北鮮の鉄道駅で貨車の大爆発がありました。あれが、硝安系の肥料の威力です。
 鉱山の発破用にも、硝安系ダイナマイトや、硝安油剤爆薬(アンフォ爆薬)が多用されています。(ということはTNTと違って一酸化炭素のあとガスを発生しないわけだ。環境にフレンドリーなエコ爆薬ですわ。)
 連合赤軍が三菱重工ビル爆破に使用したカーバイド〔でしたよね?〕の荷動きも監視すべきでしょう。もちろん、とっくにそうしていると思いますが。
 インターネットで調べれば、世界の大爆発事故のトップ10の中に、肥料爆発で欧州の某町が半壊したとかいう事実がみつかるはずです。
 ちなみに、爆発事故の堂々第一位は、第一次大戦中に欧州戦線向けの弾薬運搬貨物船が爆発したカナダのハリファックス港の惨害です〔控えのデータが見つからないので委細は省略〕。このときはドイツの破壊工作員の仕業ではないかと徹底した捜査が行われましたが、どうやら、自爆事故だったと結論されています。
 パナマ運河の安全基準はどうなっているのか、外航船の船長さんに、聞いてみたいですね。あそこを米海軍の原潜や弾薬補給船が通航することもあるはずです。また、閘門の外側で船舶が順番待ちする溜まりには、かなりの密度で船舶、ときには軍艦が、まじっているはずです。
 おしまいに、テンプレ。
2009-11-23にJSEEOの大阪講演会があるよ。
場所は、大阪市中央区北浜東の「エル・おおさか 大会議室(6F)」。
時刻は、午後の2時半からだ。
参加費は¥2,000円。
詳細は ↓ JSEEOのHPを御覧下さい。
http://www.jseeo.com
 今回、愚生は日頃愛読しているブログ『中韓を知りすぎた男』の辻本貴一先生に面拝し度きものと思い、ご都合を打診していたのですけれども、先生は海外ご出張のため日程が合わないということが判明しましたのは残念であります。しかし来年2月の神戸講演前後には、また機会もあるでしょう。


パラライズ考

 英軍のSA80小銃は、小口径ピストル【a peashooter】同然でしかなく、芥子でラリったアフガン・ゲリラは倒せぬ――という記事は「British bullets too small to fell ‘high’ Taliban」というタイトルでASIAN DEFENCEが紹介していました。
 たしかに5.56mm口径はインチ換算で0.223ですから、直径だけみたら .22口径の安ピストル同然とも言えなくはないでしょうが、拳銃弾が大概亜音速であるのに比し、現代のライフル弾は超音速です。
 超音速の小さなタマが生体を貫通すると衝撃波が筋肉中を伝播しますので、広範囲に瞬時に非統制的な「生体電流」が発生して、健康な成人男子も、能の意識はハッキリとしているのにもかかわらず、四肢の筋肉を制御できなくなり、崩れるようにその場に倒れてしまう――。これが、ジョージ・オーウェルのスペインでの被弾体験談を読んだ小生が勝手に推定していますところの高速ライフル弾の対人作用メカニズムなんでしょう。
 そしておそらく「テーザー銃」(スタンガン)は、この非統制的な神経電流を直接筋肉中に流し込んでやることで、大男を麻痺させてしまうメカニズムなんでしょう。
 阿片系の麻薬は、筋肉が衝撃波を喰らっても、非統制的な生体電流を発生させないという効果があるのかもしれません。(では、覚醒剤でラリっている犯人が、警察官の警棒で手首を痛打されても刃物を落とさないのはなぜか? おそらく交感神経が優勢になるので、傷みを覚えないのでしょう。ライフルやテーザー銃で撃った場合はどうなのか、過去のデータを見たいですね。)
 『SUN』の記者は、イラクとアフガンで50人以上の英兵にこっそりインタビューをして、5.56ミリはダメだという結論を得たそうです。
 もちろん5.56mmのライフル弾が体幹の深いところの動脈を切断すれば、そのゲリラはいずれ死ぬでしょう。肺以外の主要臓器を貫通した場合もほぼ同様です。だが『SUN』紙は、最初に当てた1発で即座にパラライズしてくれないことを、英兵の生命にとっての大問題としているのです。
 『SUN』紙によると、英兵が Helmand でアフガンゲリラと撃ち合ったケースのおよそ半分は、射距離が300m~900mであったそうです。
 これは、べらぼうに長いですね。もし自衛隊が派遣されるとしたら、訓練をやり直す必要があります。当然、64式小銃を敢えて携行させるべきでしょう。
 また、タリバンの狙撃手は旧式AK47の7.62mmを使っている、と。
 これに対してSA80が非力だということは、すでに2003のイラクで判明していた、と『SUN』紙はいいます。
 兵頭いわく。こうなったら、〈当たると電気を発生する弾丸〉を製造すべきかもしれませんね。それはハーグ条約違反とはなりますまい。


「アフガン後」の米軍はおそろしく進化してしまうだろう

 Sandra I. Erwin 氏の2009-11付記事「Army’s Equipment Choices Shaped by Afghanistan War 」。
 アフガン用の新迷彩を考えている。特殊部隊用と一般部隊用。
 イラクでは、IEDの破片防禦のボディアーマーが必要だった。しかしアフガンでは破片対策は無用。〔なぜなら車両の下で爆発するし、材料は152ミリ砲弾ではなく硝安農薬だから。〕よってボディアーマーは軽くする。
 陸軍は、特殊部隊の調達に便乗して、 射程800mの MK48 assault 7.62mm machine gunsを買うことに決めた。
 〔つまり、M4カービンとミニミLMGの5.56mmコンビではダメだという結論が、アフガンで出つつある。なんてこった! どうするゴルゴ?〕
 新しい7.62ミリLMGは、重さがたったの 18.5 pounds しかない。
 これに対して陸軍現用の分隊軽機たる M240Bは、重さが 27.5 poundsだ。
 ふつうの歩兵旅団には159梃のミニミがある。
 これを 150 梃の MK48 に交換してしまう。高地・山岳の射撃では、こっちの方が有利なのだ。とりあえず現地の3個旅団で実施する。
 ミニミを軽量化する試みもある。名付けて M240L という。
 これは中央部分を鉄ではなくチタン合金にすることで、重さを 22.5 ポンドに減らす。さらに短小バレルとすれば 20.5 pounds にまで減らせる。それでも1800mまで正確に射撃可能だ。早くも今月末にはアフガンに最初の50梃が持ち込まれる予定。
 200人のタリバン兵にあやうく全滅させられそうになった、2008-6の Wanat 砦の大苦戦で、米陸軍はM4カービンに見切りをつけた。あそこで敵を撃退できたのは砲兵と航空支援のおかげであり、5.56mmは効かなかった。
 兵頭いわく。じつはちょっと前に英国大衆紙の『SUN』で、在アフガンの英兵の5.56mm小銃ではマリファナでラリってるアフガン兵をワンヒットキルできないという苦情が多いから英軍の小銃は増口径化すべきだ――という意見記事があったのですが、そんなのはガセだと思い、わたしはここで紹介しませんでした。しかし、あれは正しかったのか!
 米陸軍は、M4を、ヘビーバレルでフルオートありにするかどうかも検討中。
 兵頭いわく。いっそ、7.62mmのAR-10に先祖返りさせたら如何? さもなきゃM-14のストック復活とか? いや、まてよ……M14改というべき、わが「六四式小銃」こそ、アフガンの米兵たちにとっての救世主となるんじゃね??? すぐにドラム・マガジンを新設計して供給してやれ!
 ちなみに米陸軍は本国および世界中に全部で110万人おり、M4小銃は40万梃支給されている、という。
 兵頭いわく。支那事変で日本は大陸に100万人を送り込んだが、「点と線」しか確保できなかったことは覚えておこう。
 あと、チヌークとブラックホークのパイロット用には、新型の、重さたった 5 poundsの酸素吸入器を支給する。これは高度に応じて酸素供給量が自動調節されるスグレモノで3時間もつ。今までの酸素吸入器だと、高度1万フィート以上の飛行はできなかった。
 兵頭いわく。
 ロボットに勝手にMGを撃たせるSF映画(エイリアン2)の「セントリー」型のスタンドアロン無人兵器は、ROEを満たせないので、倫理上、配備できなかったわけです。
 しかし、銃側の歩兵が双眼鏡に組み込まれたレーザースポッターで敵兵をなんとなく照射してやり、ロボットがその反射源の赤外線イメージをロックして、あとは自動で交戦するという仕組みにすれば、砦の防戦には使えるではないか。もちろんアジマスは三脚の螺子で規制できるし……。その火器を.45ピストル弾のガトリング方式にすれば、跳弾被害やコラテラルの危険もたかがしれていようし、ストッピングパワーもあるだろう。
 あと、開発されると便利なのは、味方のすぐ近くに落としても、味方の方には絶対に破片が飛んでこない、超近接支援可能な迫撃砲弾。要するにクレイモアを砲弾形にするものだと思えばいい。制動フィン付きの砲弾の側面にレーザー反射を拾うセンサーをしつらえ、その反対面にはコード状の起爆薬。砲弾がどこに落ちようとも、最前線の兵隊がレーザーでスポッティングしている方向にだけ、扇状に破片が飛ぶ。もちろん空中爆発モードで、真下も安全。弾殻はもちろんスチールではなく、新素材。
 こんな迫撃砲弾なら、ビルの中層階にたてこもるゲリラに対しても使えるだろう。(いままでの迫撃砲は鉄筋ビル内の敵にはほぼ無効。しかもコラテラルありまくりだ。)また、あやしい貨物船の甲板員やブリッジを真横から爆風で制圧して、船体は沈めずに捕獲することも可能になるだろう。
 次。
 二つの記事が、米国のベンチャー界がいよいよDARPAと一緒になって「無人自動車用ソフトウェア」でまきかえし、日本の自動車産業を大逆転して敗滅させるかもしれぬ未来を告げているぞ。
 Kris Osborn氏の2009-11-8付「New robots do jobs with little human direction」と、Grace V. Jean氏の2009-11付「Robotic Humvees Resupply Troops Downrange」を見るべし。
 とうとう米陸軍は、今から18ヵ月以内に、有人トラックに自動でついてくる無人輸送トラックや、コンヴォイの先頭を無人で走るハンヴィーをアフガンに投入すると宣言した。
 米軍は、全自動で前線へ糧食、水、電池などを補給し、かつ、負傷者を後送してくれるロボット自動車をもとめていた。それに応ずるベンチャー企業がすでに複数ある。というのはそうした補給車がIEDの狙い目だからだ。
 某ベンチャーは、ハンビーにコンピュータと「視覚」を持たせて山道を自走させるというデモを海兵隊演習で実施した。
 これには単独で先頭を走るリーディング・タイプと、その先頭車両に自動的に追随するフォロウィング・タイプとが用意されている。
 コンヴォイの後尾車両に人間のオペレーターが乗り、無人車を先行させるというシステムも研究中。
 ハンビーに800ポンドの荷物を載せ、基地から8.5マイルの山道を自動で走り、また戻ってくるという実験もする。
 寝ている人間と木の枝を識別するセンサーも研究されている。
 クルマの屋根の上にセンサー・ボックス。その屋根裏にPCボックス。これでシステムをミニマム化したい。
 いまやロボット兵器にもコスト感覚が要求され出した。1台15万ドルの humvee を無人化するのに無制限にカネは払わない。
 これからは自動兵器もコストを問うていくからな――という。
 兵頭いわく。いよいよ日本の中小ベンチャーの出番じゃないですか?
 DARPAは、市街地でもトラックが自動で走れる、歩行者や信号を無視しないシステムに挑んでいる。たとえば、道路を渡ろうとしている歩行者を自動で予測するアルゴリズムを開発するというのだ。
 他には、飛行機の上から単眼鏡で特定の場所を覘きつつスイッチをいれると、そのGPS座標を当面の到達地として、無人車両が動き出す、というシステム。最適経路はその無人車両が勝手に考える。直視できる範囲の6マイル先まで、指定できるという。
 次。
 米軍はアフガンで業を煮やして化学兵器の採用に踏み切るだろうか?
 「Pentagon Wants Non-Lethal Weapons to Incapacitate Friendly Civilians」という記事を見ると、米軍は、化学兵器は非殺傷性であっても不可だとしている。しかし悪臭剤はアリなので、ひろく世界から募集するという。
 年末に硫化水素でも吸おうかと思っている全日本の中小企業のみなさん。日本政府を頼っていたらダメだ。アイディアや技術があるなら、米軍と直接商売しなさい。それには、シナではなく、米国に移転して活路をひらきなさい。


Unmanned Firepower!?

 はじめに訂正とお詫び。先回の抄訳で出血熱の症状の一つを「目の乾き」だと書いたのは「目の激痛」の誤りです! それから、出血熱の症状で外見的にわかるものは、出血であるということも書き漏らしていました。スイマセン。
 テキサスの陸軍基地フォート・フッドで起きた、2丁拳銃による多数殺傷事件については、あらゆる在米リポーターが喰いついているので、最良の記事はどれか、なんて読み比べてみる根気も起きない。とりあえず、APの記者Allen G. Breed と Jeff Carlton 両氏が2009-11-7付で載せている「Soldiers say carnage【大虐殺】 could have been worse」という記事から、教訓を汲んでみる。
 この記事の段階では死者13人。怪我人30人。※あの韓国人を抜いたわけだ。
 犯人は米国生まれのイスラム教徒で39歳の精神科の軍医少佐【Army psychiatrist Maj.】 Nidal Malik Hasan で、まさにアフガンへの派遣を前にしていたが、それまでにアフガン帰還兵からの恐ろしい話を治療室でさんざん聞かされていた。※ジェンキンズ逃亡兵と同じか。
 IEDというやつは、精神疾患も引き起こすらしい。たとえば、基地の事件現場近くに居た、ジャマイカ生まれの31歳の軍曹も、イラクで路傍爆弾の爆風を浴びていらい、持続性トラウマ脳障害と、トラウマ後ストレス精神疾患に悩まされ、いまだに通院中なのだと。
 ※それじゃベトナム戦争中にB-52の1000ポンド爆弾の絨毯爆撃の爆風を浴びた農村住民たちはどうなるのよ? 地下壕の中にいても衝撃波が伝わってきて着衣が瞬時にボロボロになって全部飛び散って丸裸になったという、〈リアル・ケンシロウ〉エフェクトが観察されたぐらいだったというのに……。
 ※ちなみに米国の軍隊関係記事では、インタビュイーの出身の州がどこかということが意味深い。アラバマ出身の軍曹と聞けば読者は無学だが不真面目ではない貧乏白人の南部訛りの語りを思い浮かべるし、ジャメイカ出身と聞けばレゲニーチャンの発音が脳内再生されてくるでしょう。だから記者は(容疑者ではない)証言者の出身地の紹介も、省略しません。Yes! アメリカではこのような形で出身地や所属階層に関しての「信用度」の偏見は追認されているのです。
 犯人の武器は、1丁がセミオートマチック(装弾数20発)、1丁がリボルバー。※この記事では銃の商品名は不明。
 300名の丸腰の兵隊が、一部屋にギュウ詰めされていたところを襲った。※故に、あの韓国人のときよりも、殺傷の仕事率が高くなったようだ。
 犯人を仕留めた〔射殺ではない〕のは、身長わずか5フィート強の女警官 Police Sgt. Kimberly Munley だ。※ヒラ巡査ではなく警部補。
 警官マンリーは高等射撃教官であり、この基地でテロなどの非常事態が起きたときの「 special reaction team 」の「civilian member」に登録されていた。だから3分で現場にかけつけた。
 2007-4のヴァージニア工科大での乱射事件のあと、彼女は「active shooter」特訓を受けていた。それで彼女は、応援を待つことなく、即座に犯人に向かって行った。
 女警官は犯人と撃ちあいになり、3発撃たれた。左脚に2発(どちらも盲貫)、右手首に1発。しかしハサンには4発を命中させて倒した。
 すべては10秒以内のできごとだった。
 ※これは女ダイハードの映画化決定かもしれませんね。新しいヒロイン像の誕生です。
 ※日本の警察エリートはアメリカ留学組ですから、この教訓はすぐに日本にも反映されるでしょう。持兇器現行犯に遭遇した警察官諸君は、その方針を先取りしてもよさそうですね。
 ※戦前の日本軍将校も、「機動中に敵と不期遭遇してしまったらば、躊躇せず、とにかく突撃しろ」と教えられていました。それがアンブッシュかどうかなど考えていないで、敵に精神的な重圧をかければ、活路がひらけるかもしれない、というわけです。ためらっていれば、敵が精神的アドバンテージをとってしまって、こっちが壊滅する。野生の熊にインプットされているプログラムも同じです。熊(成獣)は、至近距離で急に驚かされたときには、脊椎反射で必ず攻撃します。それが猟師なのか老人ハイカーなのかは選ぶところではない。即時反撃によってイニシアチブをとりかえしてサーバイヴできる確率が、熊の場合は、高いからでしょう。もし300人の丸腰の兵隊たちが、逃げないで逆に一斉に殺到したなら、13人死ぬ前に犯人を制圧できたのではないでしょうか。
 兵頭いわく。最良のファイアパワーは、敵の精神に働きかける。


米兵がダニに咬まれて死亡

 『ワシントンタイムズ』2009-11-6付、Sara A. Carter記者の記事「EXCLUSIVE: Rare virus poses new threat to troops」によると、南部アフガン辺境に駐屯していた米陸軍部隊で、エボラ出血熱類似の症状で22歳のアラバマ出身の軍曹が1人死亡した。
 血液サンプルをとるため米本国から医療チームが向かったが、詳細が判明するのは数週間後だ。
 軍曹はダニに足を咬まれていたという。
 出血熱は、黒海沿岸ではめずらしくない病気である。
 クリミアでは1944に報告され、コンゴでは1956に報告された。8年前には、パキスタンの首都クエッタ市で大流行した。
 出血熱は、とつぜん発熱し、筋肉が痛み、目が乾き、光が苦痛になる。
 ダニに咬まれてうつった場合、1~3日で発症する。最長で9日。死亡率は30%だ。
 アフガンには外国人によって豚インフルエンザも持ち込まれている。すでに6人以上のアフガン人が豚インフルで死んでいる。
 ペンタゴンはカタールに注射ワクチン150,000を送っている。現地ではその倍を要求していたのだが。
 医師いわく、とにかく手洗いを励行してくれ、ですと。
 兵頭いわく、ダニは手洗いでは防げまい。こうなったら、DDTを復活させるしかない?
 次。NYT電子版の「Swampland――A blog about politics」コーナー。
 Joe Klein記者が2009-11-6付で「Another Afghan Problem」という記事を書いている。
 アフガニスタン国民の識字率は、タッタの2割しかない。
 しかも、パシュトゥン語が必要な地域にダーリ語しか話せないアフガン兵が配置されたりしている。
 米兵がある村から去ったあと、アフガン軍やアフガン警察が何のフォローもしてくれないのなら、砂の城をつくってるようなもんだ、と。
 これに対する一読者のコメント。彼の息子はマリンで最近アフガンから帰ったばかりだ。
 アフガンに配備されたマリンは、とにかくなにもやらせてもらえない。ROEが厳格すぎて、ほとんど撃てないのだ。兵隊たちは、これにうんざりしているという。親父いわく。敵を皆殺しにしろ! それができないなら、息子たちを本国へ呼び戻せ。
 兵頭いわく。じつにごもっともです。
 次。
 JUNG SUNG-KI記者による2009-11-5付記事「U.S. To Remove N. Korean WMDs in Contingency」。
 韓国軍と米軍の共同作戦計画「OPLAN 5029」は、北鮮国内がもし大混乱したときには、韓国軍が北鮮に100以上あるNBC関連施設をすばやく占領することもオプションに入れている。
 兵頭いわく。米政府の最高のインタレストは、「9.11の核版を予防する」ことにある。すべての外交軍事政策が、このインタレストに基づき、決められている。よって北鮮が内乱状態に陥った場合に、韓国軍に上記の作戦をさせるのはむろんのこと、米軍自身も核関連施設の確保に動く。これは疑う余地なし。
 また兵頭いわく。かつては韓国軍が頼りなさすぎて、沖縄に海兵隊の「後詰め」が必要なように思われた。しかし今日では南北の力関係は完全に逆転し、上記のような韓国軍地上部隊の北進が普通に考えられるようになっているのだ。
 次。
 デジタルジャーナルにStephanie Dearing記者が載せている記事「Canada preparing to pull out of Afghanistan」。
 カナダの参謀総長が、アフガンのカナダ兵に対して撤退準備を命令した。
 カナダはアフガニスタンに3000人近くを派遣している。そして2001いらい、すでにアフガンで133人戦死している。


今朝の雑報集

 APのKimberly Hefling記者による2009-11-4付記事「Shinseki promises help for homeless veterans」。
 退役軍人庁のシンセキ大将が、5年以内に退役軍人のホームレスをゼロにすると演説。
 現在、全米で13万人の退役軍人がホームレスである。ただし6年前の19万5000人よりは減った。しかし米経済が悪化しているので、これから5年で15%増える懸念がある。
 ホームレス男のうち1/3、ホームレス成人男女のうち1/5は軍歴がある。
 全ホームレスのうち3%がイラクとアフガンからの帰還兵である。
 次。米海軍のエロ医師が告発された。
 Erik Slavin記者による星条旗新聞2009-11-6付「Navy doctor accused of assaulting patients in Japan, Kuwait」。
 厚木やクウェートで診察中にすくなくとも15件のおさわり行為をやらかしたとして海軍軍医少佐 Lt. Cmdr. Anthony Velasquez が訴追される。
 軍法会議にかけるかどうかは横須賀の Rear Adm. Richard Wren が、これから決める。
 被害者は二等水兵から中佐にわたる。軍人の妻や、民間契約者も。厚木では2件。
 膝痛、首痛などで受診したところ、へんなところを検査されたり、性的に興奮するようなマッサージをされたとかいう申立て。
 いちおう弁護側の主張。それでも何人かの告発者は、ヴェラスケス軍医から不快な目に遭ったあともなお、ヴェラスケスに会っているではないか。
 これにはむろん反論あり。
 ちなみに米軍の医療機関では、異性の医療者が検査を実施する際には、受診者は第三者の立会いを求める権利がある。それによって医師も濫訴から守られる。しかしこの立会人がほとんど無気力・無関心で役立たずなので、頼まない患者もいるのだ。
 次。アフガンへ行くと背骨を折るぜという記事。
 Gregg Zoroya記者が『USA Today』に2009-11-4に載せた「Spinal injuries up among troops――Sturdy vehicles vulnerable to Afghan roadside bombs」。
 アフガンでは火薬たっぷりのIEDで最新の14トンの耐爆車両MRAPでも数フィートも宙に飛ばされる。このため背骨を傷める米兵が過去5ヶ月で100人以上。ひどいのは背骨を折っている。すくなくも14人は麻痺や感覚喪失の後遺症が残った。
 イラクではこのような症例はゼロであった。
 MRAPは3500両アフガンにあり。
 10月に、軽量タイプの all-terrain MRAP がアフガンに到着し始めた。これは背骨防護のためにシートやハーネスを工夫している。
 兵頭いわく。以前に舞鶴で見学した海自の高速ミサイル艇が特殊なダンパー付きのシートとハーネスを装備していたが、アレみたいなもんか? 元海自の魚雷艇乗りOBに余市でインタビューしたこともあるけど、みんな背骨をやられるみたいだね。ケネディもそれで背骨を悪くしていたのではないか。
 関連して、MILTECH の記事。こっちでは細部が異なる。
 Christophe Schmidt記者の2009-11-4付「Pentagon Touts New, Lighter Vehicle For Afghanistan」。
 新型の耐地雷車は11-4時点で41両到着している。計画ではこれを2010までに5000両調達する。
 軍がウィスコンシン州の Oshkosh Corporation に発注したのが6月。
 そして最初の車両がアフガンに届いたのは9月だ。
 旧来の M-RAP は自重が18143 kgほどあった。新 M-ATV は 25,000 pounds で、しかも独立懸架方式。〔旧MRAPはリジッドサスで旋回半径もでかくてダメだった。〕
 新車両は単価が 1.4 million dollars である。ガナー含めて5人乗り。ハンドルの軽さはもうSUV感覚。
 新 M-ATVの燃費は、 リッターあたり1.7kmだ。燃料槽の容量は 40 gallons 以上。
 アフガンでは、IEDによって、米軍と西側同盟軍将兵が、1~9月だけでも236人殺されている。
 次。
 Michael Abrashoff 退役大佐が2002に書いた『即戦力の人心術』に、こんな記述がある。「〔USS Benfold=DDG-65が中東海域に出動していた湾岸戦争の〕当時、米軍は自分たちの人件費を、じつにさまざまな方法で使用していた。空軍は生活の質に重点を置き、人々は美しい住宅、巨大な基地、すぐれた医療を手に入れていた。陸軍と海軍は、それとはほとんど正反対の態度を取っていた」(吉越浩一郎氏訳、p.176)。
 この事情は、今でもあまり変わらないのだろう。それで嘉手納の米空軍グループとしては、海軍や海兵隊の連中が、じぶんたちの空軍予算とマンパワーで整備されている極上の福利厚生娯楽施設を共同利用することになる「基地統合案」には、とても我慢ができないのだろう。だがそれは日本とアジアの平和と安全には何の関係もない話だ。もちろん「軍事上の理由」でできないなどという米側の反論は日本人を舐めた嘘にすぎない。米支間に「日支韓間の最低レベル均衡構想」および「東京の核の傘は剥ぎ取るかわりにシナは核ミサイルを実質増強しない」という密約もある以上、海兵隊がシナ軍と将来戦闘する可能性などゼロであろう。海兵隊は、ただ日本の納税者から流れ込む多額のカネが惜しいだけなのだ。卑しいカネの亡者たちなのだ。米空軍も、手前たちの福利厚生環境の維持しか念頭に無い。日本のダラ公務員とおんなじじゃないか。
 「日支韓間の最低レベル均衡構想」の帰結として、空自のF-15は、「より劣った性能の飛行機で代置させる」という約束が、米支間ではできているだろう。だったら防衛省も無理をする必要はない。F-35を焦って求める必要など無い。旧式のF-16を米国からリースして使うだけでも充分だろう。ソ連と領空を接するノルウェー空軍は、F-16でずっとやってきた。
 そこで以下の記事も見よ。
 Gerard O’Dwyer記者による2009-11-3付「Proposed Base Relocation May Boost Norway’s JSF Costs」。
 ノルウェー空軍は、北部の主力基地を町から少し遠ざけたい。というのもF-35の離陸時の騒音はF-16と比較してものすごくデカいからだ。
 あらたに、3394mの滑走路を、一部埋め立てして海寄りに新設し、町からは遠ざける。
 一説に、F-35がアフターバーナーを使って緊急発進すると、F-16の4倍もうるさい。
 反論もある。オランダの研究機関が3月に調べたところでは、F-35 と F-16の離陸時騒音には、5デシベルの差しかない、と。
 F-35がアフターバーナーを使わずにミリタリーパワーだけで離陸するときのノイズは 110dB である。これに比してオランダ空軍のF-16は、ミリタリーパワーなら104~107デシベル。アフターバーナーを吹かすと 111~114デシベルだという。
 兵頭いわく。空自がどうしてもF-35を導入したいのなら、赤字の地方空港を活かすことも考えないといけなくなるだろうね。UAV研究用にも、ひとつかふたつ、確保しましょうよ。


コンデンサとディーゼルのハイブリッド! こいつは日本メーカー殺しかもなぁ。

 とうとう雪がチラついて来やがった今日の函館市内……。そしてまた william matthews記者のいつもながらのホットな記事「A Different Kind of Hybrid—Oshkosh Hopes Electric-Powered Truck Will Win Over U.S. Army」2009-11-2付。これはマジヤバそうだと震えたぜ……。
 米陸軍は「ハイブリッド・ハンヴィー」やら燃料電池トラックやら、ここのところ、いろいろ試したが、どうも電気式はモノにはならんわいと失望していたところ、オシュコシュ社が、ついに本命の技術を実現しちまった。
 4輪駆動車の「HEMTT-A3」がその試作品だ。これは各輪に付いた電気モーターのトルクだけで走る。
 ディーゼルエンジンは積んでいるのだが、それは常に電気モーターのための発電のためだけにまわす。したがって完全に定速・定負荷回転のみだから、燃費は理想的に最上ってわけだ。パワートレインも超単純で済む。
 プリウスみたいに、内燃機関のトルクだけで走るモードや、内燃機関のトルクと電気モーターのトルクを併用して走るモードはない。
 兵頭いわく、これはアメリカのディーゼル機関車の伝統だよね。やはり得意分野で勝負に出ようってわけだ。
 最大の特徴は、大きなバッテリーではなく、コンデンサ( soda-can サイズ の24個の ultracapacitors )にブレーキ回生電力を溜め込むようになっていること。
 ブレーキングのときと、下り坂のときに、電気モーターを発電機としてまわすことで、コンデンサに素早く効率的に蓄電ができる。そして急発進時や、大馬力が必要な瞬間に放電ができる。
 コンデンサは、何万回、蓄電&放電を繰り返そうとも、性能劣化はしない。バッテリーのような定期交換は必要ないのだ。ライフサイクルコストを下げられる。
 メーカーのオシュコシュではこれを 「ProPulse diesel-electric」と名付けている。
 「 HEMTT-A3」 はこのような構成にすることで、キャブの容積が増し、総重量もわずかだが、減る。
 この方式は、トラックの軸数が増えても複雑化しない。たとえば、4軸、つまり8輪のトラックにこれを適用することも簡単だ。その場合、 13トン・トラックを時速 65 milesで路上走行させられる。
 Strykers もハイブリッド化できよう。これは平時のみならず、戦時の使用法においても、お徳なのである。
 既存のトラックのエンジンとパワートレインを撤去して、このシステムを後付け搭載することは、容易である。
 60マイル/時走行のときの軍用トラックのディーゼル燃料は24%削減できる。
 停発進をくりかえすモードでは33%の節約になる。
 発電力は 100 kilowatts of “military-grade AC powerだ。これは普通の家庭なら、 several dozen homesに相当する。
 米軍の nontactical vehicles は 186,000 台もある。これがオシュコシュ方式にコンバートされたら……。
 兵頭いわく、アメリカの車両メーカーが逆転ホームランを狙ってきたちゅーわけだよ。
 なおわたしはこうした米四軍の省エネ・脱公害・脱海外エネルギーの取り組みもカバーした『エコ軍備』の本を次に並木書房から出す予定です。ご期待ください。
 11月の大阪講演も、この話をしましょう。やはり防衛省が世界の趨勢に対しすでに周回遅れを喫しているからです。
 それからSINGERの本を頂戴しました。増元さま、どうもありがとう。


「読書余論」2009-11-25日配信号 の 内容予告

▼ウィリアム・マンチェスター著、宮川毅tr.『ある大統領の死』上巻S42-4、下巻S42-6、原1967
 これを読むと、『ダラスの熱い日』などを信じてしまった若い時のじぶんを殴りたくなる。
▼日暮豊年『戦ふ水雷戦隊』S18-7
 著者は海兵34期でS12予備の海軍少将。
▼篠原・平野・共著『有線放送』S19-12
▼R・ニクソン『ノーモアベトナム』
▼古河三樹『見世物の歴史』
▼『世界週報』1986-8-12、8-19合併号
 レーガン政権はシナにどんな兵器を売ってゐるか。
▼鈴木敬信『暦と迷信』S10-5
▼服部彌二郎『空襲ニ依ル災害ノ治療法』S17-7
▼三好・本城・内藤・共著『戦時下傷者救急法』S18-8
▼東京都青少年団『空襲下の救護法』S18-11
▼鈴木産蔵『図解 空襲と救護』S19-5
 著者は陸軍軍医大尉。
▼市島謙吉ed.『続々 群書類従 第四 史伝部』所収「清正高麗陣覚書」M40-6
▼長岡外史『飛行機ト帝都復興』帝国飛行協会 大12-11
 長岡の先見の明。
▼堺市兵事会ed.『明治丗七八年戦役 堺市奉公録』M40-5、1000部印刷
 四師団も八聯隊も怯兵ではない。
▼フーゴー・ウィンクレル著、松本重彦tr.「西部アジヤ諸民族の興亡」『史論叢録 前』所収、大8-9
▼東亜同文会調査編纂部『支那関係 特種条約彙纂』大6-12
▼田辺平学『不燃都市』S20-8-15、3000部、河出書房
 著者は東工大の先生。爆弾関係の数値データてんこもり。
▼『太陽』臨増第17巻第9号(M40-6-15)
 加藤高明は、部下を算数の能力で計った。
▼北側忠彦『軍記物の系譜』1985
▼『運動大講座』
 六代目尾上菊五郎の「銃猟漫談」を聞け。
▼三橋秀三『新剣道の指導』S19-7
 「新」といっても戦時中の「新」ですからな……。
▼鉄道省『スキーとスケート』大13-11
▼大橋武夫『「戦争論」と戦史』
▼露木松雄『新興球技 ドツヂボール指導の実際』大15-9
 ほんとうは「デッド・ボール」なのに文部省が改名しちまった。
▼下田次郎『運動競技と国民性』大12-6
 英国では釣りもスポーツ。
▼ディヴィッド・カービイ『ワードブック』
▼田辺高雄「宗教音楽」『日本宗教大講座(6)』所収
 台湾原住民の歌に古事記の世界を見る。
▼海軍大学校研究部ed.『文権と武権』S12
▼釋 瓢斎『奥の太道』S15-1
 那須の乃木屋敷観を聞け。
▼ゲルハルト・リッター著、西村貞二tr.『権力思想史』S28
▼本居宣長「馭戎慨言」塚本哲三ed.、大7-1
 宣長は、どうすればシナに勝てるかまでも考えてた。
▼菊池幽芳『琉球と為朝』M41-5
▼金子弘『国家理性と経済政策』S37
▼松川二郎『名物をたづねて』大15-11
▼高木武『太平記と武士道』S15
▼柴田隆『もっとも分り易き 常山紀談の解釈』S7-4
▼木村幸治『マラソンは芸術です』1984
 中村コーチが羅南での凄い憲兵少尉であったこと。射撃のプロだった。
▼中村重治『体育運動の起源と発達』S4-12
▼『ルソー全集 第十一巻』1980所収「言語起源論」竹内成明tr.
▼豊田副武『最後の帝国海軍』S59repr.
▼早川崇『ジョセフ・チェンバレン――非凡な議会人の生涯と業績』S58
▼渡辺国雄『軍刀』S19
▼J.Carmody著『地下建築物のデザイン手法』1983
▼R・チェレーン『領土・民族・国家』S17
▼『鴎外全集・34』岩波
▼岩野正隆『予言第3次大戦』1976
▼松陰 吉田先生 著『左氏兵戦抄』M2、長門 松下邨塾蔵版
▼楠田實『20世紀の遺産』
▼谷壽夫『機密日露戦史』S41
▼I・I・ロストーノフ『ソ連から見た日露戦争』1980
▼横山達三『日本近世教育史』M37
▼井伏鱒二『さざなみ軍記・ジョン万次郎漂流記』新潮文庫
▼ワイルド著、田部重治tr.『獄中記』S25角川文庫
▼ヘンリー・モーゲンソー著、石川清tr.『土耳古に於ける独逸外交秘史』大8(原・大7)
▼Robert K. Merdon著、森東吾tr.『Social Theory and Social Structure』1961
▼ホレース・マン『19世紀のヨーロッパ教育』
▼オットー・ヒンツェ「18世紀におけるプロイセン軍事=官僚国家」『伝統社会と近代国家』所収
▼横山雄偉『世界戦争に現れたる日本陸軍首脳部の無能力』大8
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 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。(配信されるファイルはPDFスタイルです。)
 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。
 大きな図書館に毎日通えない人も、最低費用で、過去の軍事知識のマニアックな勘所に触れることが可能です。
 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。
 「読書余論」は、毎月25日に「武道通信」から最新号が配信されます。1号分の購読料は200円です。
 バックナンバーも1号分が200円で、1号分のみでも講読ができます。
 2008年6月25日号以前のバックナンバーのコンテンツは、配信元の「武道通信」のウェブサイト
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 ウェブサイトでわからない詳細なお問い合わせは、(有)杉山穎男事務所
sugiyama@budotusin.net
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いつになったら「燃えないペンキ」をつくるんだ?

 この週末は品川周辺に屯ろしていますので、御用の方は、都内ででもお目にかかりましょう。
 さて、以前に愛読していた、どなたかの、内航船のブログ(これは写真が素晴らしかった)で、〈韓国貨物船は絶対に針路を譲らない〉、とか書いてあったのを記憶します。そんなんで事故は起きぬのかと思っていたら、やっぱり起きましたかい。
 しかし、旧海軍の三保関事件の艦首切断のときだって、「炎上」はしていないはずだ(ただいま書籍を取り寄せて確認する前段階)。今回、ぜんたいなにゆえに火災が……?
 それに、旧海軍は、ミッドウェーの直後だか、かなり後だかの、負けがこんできた段階で、艦内の塗料をぜんぶ、掻き落としたんじゃなかったっけ? 燃えるものは塗料といえどもダメなのだという、大反省をしたのじゃなかったか? それともあれは米海軍だった?
 この反省の足りない海軍は、いまだに、艦内に木製備品をたくさんしつらえてある――とかの話もどこかで読んだ覚えがあります。
 また、フォークランド紛争のあと、燃えない水性塗料が研究されたとかいう報道も読んだような気がします。
 それが普及しない理由は、「高価だから」と聞いた。そんなの理由になるかよ? 戦争するんだぜ、軍艦は。
 安い不燃ペイントや、それを見苦しく見せずに仕上げる吹き付けロボットを工夫する時間は、いままでに十分にあった。それができていないのは、関係者が怠けていたのだ。
 次。アジアンディフェンスの2009-10-29付、ERIC SCHMITT氏の記事「U.S. Speeds Aid to Pakistan to Fight Taliban」。
  10機の Mi-17 兵員輸送ヘリ、攻撃ヘリのコブラ、暗視ゴーグル、ボディアーマー、ゲリラの携帯電話を探知盗聴する装置などが、米国からパキスタンにどしどし送られている。
 〔なぜ米国製の中古輸送ヘリじゃいけないのかよくわからないんだが、〕わざわざロシア製のミルを米軍がリースしてやる。6月にすでに4機が渡されているという。
 さらにUAVの画像情報をパキ軍に提供してやる。パキ軍のスペックダウン型のF-16のための少々マトモな爆撃照準装置も供給するらしい。
 8月いらい、パキの軍・警察の訓練のため150人の米人がパキ入りしている。ただしその米人は戦闘には加入しない。※オイオイ、ジョンソン政権時代のベトナム向け「軍事アドバイザー」の復活かよ!
 ただし米国は、無人のプレデターと、有人のアパッチヘリの、対パキ軍供与は、求められながら、拒んでいる。
 米のパキ支援は巨額だ。2001-9-11いらい、およそ $12 billion にもなっている。
 ペンタゴンは毎年 $1 billion も、パキ政府の兵力展開経費を補填してやっている。そのカネで10万のパキスタン政府軍兵士が、アフガン国境に展開されているのだ。
 2009だけでも、ペンタゴンは $500 million 以上を、パキに対する武器や対テロ訓練支援のために使った。
 そのうち $13 million 近くは、携帯電話の電波盗聴装置である。
 7月、ペンタゴンはパキスタンに、 200 個の暗視ゴーグル、100個の昼夜兼用スコープ、 600 個以上の無線機、 9,475 着のボディアーマーを補給した。
 パキ将校を米国に招いて対テロの学習をさせるプログラムも強化中、ですと。
 これに関連して面白い記事が、NYT電子版 の Op-Ed にロシア人の VICTOR SEBESTYEN氏が2009-10-28付で載せている記事「Transcripts of Defeat」です。ヒマがないため抄訳しませんけど、いま米軍はアフガンのソ連軍と同じことを反復しているんだぞ、という警告です。
 なるほど、ソ連軍は9年目でやっとこさ面目を保ちつつ撤収したが、それはソ連圏崩壊に直結してしまった。あと1年で米軍は旧ソ連軍に並んでしまうかもしれないのですなぁ。アメリカ帝国の崩壊がそれに続くのかどうかという瀬戸際なのかもしれませんぜ。
 ……で、それについての兵頭のまったく異なった提案は、月刊『正論』12月号(11/1が日曜ですので、たぶん10/31には出る)のクロスラインに載る予定ですから、本屋で立ち読みしてみてください。
 いまの米論壇は、アフガン問題を語るのに、60年代のベトナムの事例を持ち出すか、80年代のソ連のアフガン経験をもちだすかの、2種類のパターンしかありません。軍事と政治の両方に強い、錚々たる執筆陣が、おしなべてそのパターンです。
 〈おまえらアタマがカタくなってるんじゃないのか、そうじゃないだろう〉と、史論の見本を見せようというのが、兵頭の『正論』記事です。日本語でしか書けないのが残念です。