今週は神戸、来週は浜松。

 平成22年度の防衛関係費予算案のパンフレットが22-2-3付で郵送されて配達されていたのを、昨夜になって、一読しました。
 よくわからなかったのが、「宇宙関連施策の推進」の中に掲げられている「空中発射システム」です。何をどこからどこへ発射するんでしょうか?
 2月16日に防衛庁オピニオンリーダーの見学ツアーが浜松基地対象でありますので、そのさいにでも広報の人に「こりゃいったい何ですか」と質問してみようかと思います。
 かわいそうなのがやっぱり無人機。
 『我が国の防衛と予算  平成22年度予算の概要』というH22-1発行のカラー冊子の「平素からの警戒監視等の活動拡大」のページの中に、まず、潜水艦(建造)、P-1(取得)、SH-60K(取得)、E-767(取得ではなくレーダー強化)、E-2C(改善)によって「警戒監視能力」を強化する――と説明したパラグラフがあります。
 そしてその下に、「無人機による調査・研究」というパラグラフがあって、「滞空型無人機の導入や運用態勢構築の検討に資する海外調査の実施【新規】」と「中距離型無人偵察機の実証研究【新規】」の2項目が列記されており、その横に「実証研究に用いる無人機」の写真が1点添えられているのです。これは硫黄島に4機ある例のモノのようですが、塗装はスカイグレー。
 そしてなんと、この冊子をA4×8ページに要約した『我が国の防衛と予算(案) 平成22年度予算の概要【ポイント】』というホチキス止め資料の方では、無人機のムの字も無し。つまり予算的にはスルーしても誰も問題にはしないという小額にすぎぬわけですか。
 以下、私見ですけれども、カラー冊子にある「滞空型無人機」とはグローバルホークのことを念頭しているのか「プレデター/リーパー/アヴェンジャー」のことを念頭しているのか、どっちなのか、ハッキリして欲しい。
 いままでの流れだとグロホ級でしょうけども、とつぜん密室で方向転換を決めた――なんてことがないようにしてくださいね。もちろんわたしは防衛省がリーパー級の取得の遅いことを、予算の合理性の理由を挙げて攻撃しようと思っています。
 次。
 いそがしくてフォローしてないニュースですけど、2010-2-7付のロイターのMichelle McLaughlin記者による「At least 5 dead in Connecticut power plant blast」という記事。
 米東部のコネチカット州で、この夏に運開予定の大型ガス火力発電所で、試験中に天然ガスが漏れ出して爆発火災。1時間で鎮火したが、すくなくとも5人死亡。プラントの大部分はジーメンスが供給していた――。
 この事故は、重油火力発電所や石炭火力発電所や原発よりも、高揮発性の燃料をあつかうLNG火力発電所の方に、むしろ火災事故や爆発事故の可能性が潜在することを証明したという点で、興味深いでしょ。二酸化炭素のことばかり言う評論家はそこをどう思っているのだい?
 ちょうど『Voice』の3月号にも、東電が富津で運転しているコンバインドサイクル発電所のCM企画記事が出ていて、〈ガスタービンと蒸気タービンを一軸で組み合せたことにより、いかに効率的で需要反応力もよくなったか〉、だとか、〈東京湾の海底にLNGを配給するパイプラインがある〉とかの自慢がしてある。オレから見ると、テロリストに「ここを攻撃してください」と言ってるようなもんなんスけど……。大丈夫かよ?
 おしまいに人から聞いた話で、福岡の本山貴晴君が町議会かなにかに出るつもりですと? これは応援しますよ。
 わたしがずっと気にしていたことは、全国の新風の支部の中で常に最高の実績(得票)を叩き出してきた本山君が、ひたすら党に献身するだけで、ついには何の酬いもないという結果に、長期的になりはしないか……ということだったのです。若い人の献身を使い棄てるような組織にどんな未来がありますか。
 地方議会から攻めて行くというのは民本主義の王道じゃないですか。参院選だけ狙って落選必至の候補を形ばかり立ててNHK-TVで党名の全国宣伝だけして終わりというパターンは、もうやめにしましょう。
 間接侵略工作最前線の筑紫地方で、地方議会の中に「防塁」を築くことが期待されています。


自動車のボディ用鈑金がそのままコンデンサーになる

 ――というニュースをテクノバーンで読みました。
 炭素繊維やポリマー・resinでつくった複合素材のボディ構造材がそっくり電気コンデンサー(キャパシタ)になるから重量節約ができるというウマすぎる話。
 ロンドンのインペリアル・カレッジとボルボ社他の共同開発だというのですが……。
 お話かわりまして、なぜ米国で急にトヨタ叩きが始まったのかを想像してみました。これはあるいは同社の最高幹部が中共に対してなにか報道されざる便益供与(高度技術の移転かさもなくばシナ人労働者への異常なサポート等)を約束したのが遂に米国政府の認容の限度を越えてしまったからではないだろうか……、と。
 それと、今日、「みちのく」の貯金通帳を記帳したら、「シユウ)リツシヨウキヨウ」というところから、22-02-01に¥28,000-が振り込まれてるんですけど、オレ、いったい何の雑誌or新聞に書きましたっけ? ちょっとさいきん物覚えが悪化しているので、もしかして何かの間違いであったら経理の方があとで困るんじゃないかと思うので、お心当たりの方、ご連絡くださいませんでしょうか? (もちろん小生が何かの関連媒体に原稿を頼まれて寄稿したことを忘れているだけという場合も非常にあり得ます。その場合、失礼の段、重々おゆるしください。)
 あ、それから並木書房さま、たしかに印税を拝受しております。助かります。


2010-2-6JSEEO設立大会に於ける兵頭演説骨子

 みなさま、いろいろありがとうございました。
 冒頭演説そのものは、近日中に、実験インターネット・ラジオ放送局にて、ライブ音源が確認できるようにしようと思います。
 とりあえず以下、要点。
●間接侵略とは何か
 昭和29年6月制定の「自衛隊法」の「第3条」に「自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略 及び 間接侵略に対し わが国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当るものとする。」
 とあるが、その定義が無い。
 この時期、あきらかに日本国の周囲は、直接侵略もはばからぬ 危険な勢力だらけであった。
 そんな環境下での「間接侵略」としては、日本国内では具体的にはどんな様態が想定されていたのかは、「自衛隊法」以前の、法律の文脈を探ってみるとよい。
 朝鮮戦争が進行中であった昭和27年8月1日施行の「保安庁法」の「第61条」に、「内閣総理大臣は、非常事態に際して、治安の維持のため特に必要があると認める場合には、保安隊又は警備隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。」とあった。
 さらに「保安庁法」の「第70条」には、「……左の各号の一に該当すると認める相当の理由があるときは、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる。」としていて、その「2」には、「多衆集合して暴行若しくは脅迫をし、又は暴行若しくは脅迫をしようとする明白な危険があり、武器を使用する外、他にこれを鎮圧し、又は防止する適当な手段がない場合」と説明していた。
 自衛隊法の「間接侵略」のイメージとは、この「多衆集合」した「暴行」や「脅迫」が、非常事態と 連動したものだったのだろう。
 具体的には、中共軍が朝鮮半島を制圧してさらに北九州に上陸せんとする、そのタイミングにあわせて大阪や東京で反政府暴動が起きる――といった事態。
 スターリンは昭和28年3月に死ぬまで、沿海州と樺太の間の海底トンネルを囚人に掘らせていた。
 樺太から北海道へ侵攻しようという意欲を死ぬまで持っていた。
 昭和27年10月には米空軍の偵察機が歯舞上空で撃墜されている。
 国境のすぐ向こうまで、強い外国軍がやってきていると承知することで、国内の「第五列」も元気づくわけ。
 昭和25年8月10日公布・施行の「政令第260号」、すなわち「警察予備隊令」。時期は、朝鮮戦争が勃発してから 2カ月経っていない。
 その「第1条」には、目的として、「この政令は、わが国の平和と秩序を維持し、公共の福祉を保障するのに必要な限度内で、国家地方警察及び自治体警察の警察力を補うため 警察予備隊を設け、その組織等に関し規定することを目的とする。」と。
 「第3条」には、任務として、「警察予備隊は、治安維持のため 特別の必要がある場合において、内閣総理大臣の命を受け 行動するものとする。」と。
 ここで「治安維持のため特別の必要がある場合」と言っていた事態が、要するに保安庁法の「非常事態」であり、また自衛隊法の「間接侵略」なのであろうと考え得る。
 自衛隊が警察予備隊として発足した当時は、間接侵略対処こそが唯一最大の目的だったのだ。
 日本に対する直接侵略の危険が急減したと確認されたのが、昭和31年2月のフルシチョフによるスターリン批判。当分、ソ連と中共の合作戦争が、ありえなくなった。
 日本にとっての脅威は、戦略核兵器の脅しを背景にした政治工作や、間接侵略の方に、ますます重点が移った。
 朝鮮戦争のさなかに日本国内で華々しく活動を開始した反日工作勢力も、夢をあきらめられず、社会主義政党の中に紛れ込んで、機会をまった。
 「間接侵略」という表現を初めて採用した「自衛隊法」がつくられた昭和29年には、わが国の内部に、モスクワと北京がそそのかす暴力革命の危険が、確かに潜在していた。
 軍事的、外交的、経済的、もしくはなにかそのほかのきっかけで、日共に煽動され、ふたたび第3国人をコアな活動家として送り込まれた労働団体等が、反政府武装ゲリラと化し、国内社会を混乱におとしいれ、近隣共産軍に日本への干渉を呼び掛け、それがついに警察力では鎮定できなくなるという事態を、昭和29年の自衛隊法第3条は、想定していたのだと、解釈してよいだろう。
 戦後、わが国の労働運動をこのような反政府過激運動に転換させるよう誘導した張本人は、アメリカ合衆国。
 ダグラス・マッカーサーとそのスタッフは、占領下の日本人民が、昭和天皇のもとには二度と結束できないようにする必要を感じていた。
 そのために、昭和20年の終戦の直後から、米国内の日系の共産党員や、英語の話せる日本人マルキストが、重宝に活用された。
 米国は共和主義国。
 昔からの君主を否定する主義。
 その主義上の親近性あるがゆえに彼らは、君主のもとで固い結束を誇る日本人民を弱体化させて占領政策を容易にするためとあれば、ソ連の手先と分かっている共産主義者を駆使することに躊躇しなかった。
 もしGHQの戦後占領政策に、日本政府がまっこうから反対を唱えるようなことがあれば、米国は、いつでも、日本国内で共産主義者が指導する暴動を敢えて取り締まらせないことによって、天皇制を破壊してしまうことができた。
 天皇を人質にとったこの脅しに、戦後の日本政府は屈した。
 ならば昭和27年に日本が法的に独立したあとの日本政府の喫緊の課題は、ソ連・中共はもとよりのこと、米国が二度と日本国内の反日主義勢力を使嗾して日本国民の団結を破壊することなどできぬように、間接侵略に対する自衛力を構築することだった。
 しかし吉田茂以下、日本の政治エリートは、大きな強い軍隊を一国内で統制する方法を知らなかった。
 西洋政治史の根幹部分を、誰も学んでいなかったからだ。
 昭和20年の敗戦まで、東京帝国大学法学部で、教官たちが、外国の官吏官僚機構と、日本の官吏官僚機構を比較して研究したものを印刷したり発表することが、明治いらい、ずっと禁止。
 せっかく研究してもその発表が禁止されているようなものを真剣に研究しようとする教授は、いない。他の官立大学も同じ。
 かたや私立大学では、政府に就職しようと思う学生が少ないために、そのような研究講座の需要もなかった。
 この人文系の致命的な研究統制があったがゆえに、敗戦後も、日本のエリートの誰も、どうやったら文民政府が軍隊を統制できるのか、自信をもって答えられる者が、一人もいなかった。吉田茂も、アメリカ軍に日本国の憲兵になってもらうしかないのだと考えた。
 エリートの無知のため、旧陸軍省や参謀本部の政治的権力の復活をことのほか恐れねばならなかった大蔵省・外務省・旧内務省その他の文官勢力は、いつまでも不完全な国防体制こそが 戦後の日本にとって理想的なのである――と、心の中で判断した。
 日本を永久にアメリカ軍の庇護が必要な属国とし続けることによって、彼らは安心していられると思ったのだ。
 彼らは、最も必要であった警察官の定員を増員しなかった。
 そして、陸上自衛官の定員をその警察官の人数以下に抑制しようとした。
 なおかつ北京からの教唆に、渡りに舟ととびつき、防衛費をGNPの1%未満に抑制するなどとまで公約してしまい、さらにまたその分母のGNPを財務省官僚が勝手にGDPにすりかえるといった無定見を反復するばかり。その間、一度として、米軍からの燃料および弾薬補給の援助なしに国防が全うできるような体制を構築したことはない。
 戦後日本の歴代政府は、米国の胸先三寸で、いつでも直接侵略および間接侵略を受けてしまうという、米国の属国であり続ける道をすすんで志願している。
●古代からある間接侵略
 間接侵略は、近・現代の発明品ではない。
 わが国は、西暦500年代以前から、間接侵略工作にさらされてきた。
 6世紀の欽明天皇以前のわが国史には確実詳細な説明は不可能。
 しかし、三韓といわれた新羅、百済、高句麗のうち、最も対馬に近く最もシナ本土から遠かった新羅が、シナ本土勢力と結託してさまざまな対日工作を仕掛け、特に筑紫地方や山陰地方の土着勢力に大和朝廷への反抗をそそのかしていたと想像することは、古今東西の地政学の常識と矛盾しない。
この問題意識が共有されていたからこそ、『日本書紀』には 大掛かりな神功皇后の三韓征伐のエピソードが記載されることになったのだ。
 仁徳天皇治世の末頃、わが軍の新羅征伐に呼応するかのように上総で蝦夷が叛乱したと記録されているのも、同じ構図。
 さらに、継躰天皇治世に至って、百済政府が、「大伴のかなむら」を筆頭とする大和朝廷の権臣たちに贈賄することにより、任那領土の三分の一をまんまと割譲させることに成功したと記述されているのは、国史の上で間接侵略工作の危険性を警告せんとしたもの。
 続く西暦527年の筑紫の「磐井の乱」は、年号を確定できる最初の対日間接侵略。工作を仕掛けたのは、これまた、最も日本に近い外国であるところの新羅。
 天智天皇が東国の蝦夷の日本国民化を急がせたのも、新羅の間接侵略工作が、東国の反政府活動を刺激するおそれがあったからだ。
●戦前期のナチの間接侵略
 両大戦間期のドイツの対日間接侵略工作は、文字通り日本の明治体制を滅亡させた。
 昭和8年の1月から12月にかけ、ドイツではヒトラーのナチス党が、あれよあれよという間に国家の全権を掌握。
 やがてナチス党が東京のドイツ大使館に送り込んだ武官のオイゲン・オットー将軍は、徐々に在日ドイツ人の思想統制を完成し、昭和11年に「日独防共協定」が成立すると、それを根拠に、日本内務省に、ナチ党幹部のフランツ・ヒューバーを、情報官の名目で常駐させる。
 ドイツ大使館は、日本の新聞に、ナチスのイメージを悪くするような事実の報道が載るたびに、陸軍省や内務省にいちいち苦情を申し入れるようになった。
 すなわち、反ナチ宣伝は、容共だというわけ。それは日独協定違反ではないか、と。
 数年を経ずして、内務省は、ほとんどナチスのエージェントのようになり下がった。日本の新聞にナチス礼賛の記事ばかりを書かせる言論統制に、すすんで没頭するようになった。
 これは、ドイツ大使館からの苦情の申し入れだけが原因であるとは考えられない。
 想像を絶する巨額の賄賂が、外交工作資金として東京で撒かれていたのだと考えると、三国同盟締結までのマスコミ論調の不健全化も、あとから納得しやすい。
 内務官僚は、日本の文官の最高エリートであったくせに、賄賂や接待に籠絡されて、たわいもなくナチスに魂を売った。このように認定されたからこそ、第二次大戦後、GHQは、日本の内務省を解体した。
●冷戦後の世界の現況。シナ軍はハードウェアが脅威なのではない。
 シナ軍には、ハードウェアに重大な弱点がある。
 そのICBMは、ほとんど実戦的な訓練発射をしていない。要するに中共には、米国と正面から戦争する気など、さらさらない。
 絶対に戦えない相手である米国。その米国と軍事同盟を結んでいる日本国を弱体化させるためには、北京には間接侵略の手段あるのみ。
 このハッタリを見破れる軍事評論家が日本国内に少ないのは残念だ。
●マッカーサー偽憲法という敵
 「マック偽KEMPHO」を基本的に奉戴している結果、日本の政府や政治家や役所の幹部には、国家の安全保障に関してやって良いことと悪いことの区別がつかない。
 明治憲法では、国防は国民の義務だった。
 明治維新は、反近代的なシナ文明圏を抜け出して、西欧近代国家になろうとした革命。
 近代主義は個人の自由を増進するので、国民がこぞってその革命を支持し、幕府も藩もあっという間に崩壊し、かつての殿様とかつての武士とかつての町人の権利・義務は等しくなった。
 建前として近代国家とは、全国民がよろこんで合意している契約の表現空間なのだから、その空間の自由を全員で、あらゆる手段で、外敵の暴行から守ろうと奮闘するのは、あたりまえの話。
 しかるに「マック偽KEMPHO」には、日本人の義務に国防の義務があるとの明記がなく、それどころか却って、日本人民には対外的に無防備である義務があるかのような構成となっている。
 国民にもし「国防の義務」が無いのだとしたら、「売国」という言葉も日本人にだけは適用できぬ。
 外国人は善人であり、基本的に悪くないのだから、外国人の利益を図ってやることが、どんなに日本人の利益を損ねるとしても、それは「売国」とは呼ばれぬ。
 普通の近代国家であったならば、必ずや「売国」と呼ばれたであろう数々の醜い行為が、戦後のわが日本国に於いてのみ、堂々と、高位の公人によってなされているのは、戦後のわが国が「マック偽KEMPHO」によって支配された空間だから。
 「マック偽KEMPHO」は、インヘレントな自然権の延長である自衛隊の存在すら、はっきりと禁止している。
 これを「禁止していない」と強弁するのは、日本語の破壊でなくば曲解。
 そのような曲解を重ねて法治国家を運用している日本国政府は、外国政府から「じつは成文法典なんて尊重していない、一夜にしていかなる豹変をも為し得る、シナに近親で 融通無碍な、反近代的な人治国家だろう」と疑われ、信用されていない。
●武器輸出国が守るべき道徳とは?
 日本がいつまでも武器輸出を外交の手段とできない原因もここにある。
 「マック偽KEMPHO」下の空間では、独立した自由主義国家として、輸出して良い武器技術とはどんなものか、輸出してはまずい武器技術とは何か、あるいはまた、輸出してよい相手国はどこで、輸出してはいけない国はどこらへんなのか……等々の判断が、閣僚級政治家や事務次官にも、皆目つかぬ。
 ゆえに、放っておけば、小は機関銃から、大は弾道ミサイルにそっくり転用可能な宇宙ロケットの要素までを、西側民主主義国と価値観を共有しない、あるいは政情がどう混乱するか読めない、某国やら某々国から、いくらでも乞われるままに、格安輸出に応じ、物騒な商売に励みかねない――と疑われた。
 この疑いには、今日なお、根拠があると承認せざるを得ない。
●武器開発はベンチャーが担うがよい
 国家が属国であり、憲法が偽憲法であったなら、どうして政治家や官庁や大企業が、最善の国益の指針を示すことなどできようか。
 現状では、わが国では、武器開発や武器輸出の正しい方向付けも、国家の中枢指導部においては、誰も考えられないようになっている。
 ごく少数の役人が、それぞれの天下り先確保の意図で政策を発信しているだけ。
 大手の武器メーカーも、それにつきあい、働かざる高級社員のためにいかにして無駄なポストをつくり、無駄な仕事を確保するかに智恵をしぼっている。 ベンチャー企業が自発的に兵器を試作し、国家に売り込めるような、法的な枠組みを整備すべし。
●運動は無理をすべからず
 おしまいに、本機構の財政の見通しについてでございます。
 集ったお金以上の支出を続けて行けば、どんな任意団体も、立派に立ち行くはずがございません。
 JSEEOはそもそも、100名以上の賛同者を集められるだろう、との甘い見通しのもとで発足したのでございます。
 この見通しのもとに、練馬区・栄町にワンルームのオフィスを賃借し、事務局の電話とFAXとパーソナルコンピュータを置き、ホームページを開設し、2名の事務局員がかわるがわる詰め、この2名には月々の給与も支払われるという体制を昨年から採っております。
 もし100名以上の賛同者が得られなければ、この体制は累積赤字をこしらえるだけなのであります。
 「設立準備室・代表」という肩書きを目下、名乗らせてもらっておりますこのわたくしは、この火をみるよりも明らかな大赤字の累増を座視することはできません。
 そう思いまして昨月、設立準備室・事務局の池田洋一君に対し、この設立大会直後に栄町の事務所を畳んで事務局の住所を池田君の現住所に移すのが適当ではないか、と説得を試みました。
 が、当機構の設立準備資金を一人で捻出してくれた当人である池田君は、事務所の整理には反対の様子です。
 かえりみますに、賛同者がわずか十数名しか集らないことの第一の責任は、この代表の兵頭二十八の徳の無さに尽きるでありましょう。
 そこでわたくしは、熟慮の末、本日の懇親会終了時点をもちまして、「設立準備室代表」の肩書きを事務局に返上致し、爾今はJSEEOの一「サポーター」となり、間接侵略拒止の言論運動を、北海道から声援する決心をいたしました。
 また、桜林美佐先生と奥山真司先生には、赤字の団体の役員にご就任いただくわけには参りませんので、せっかくですが「発起人」をご辞退くださるようわたくしからお願いを申し上げましたところ、すでにご諒諾をかたじけのう致しております。
 という次第で、このJSEEOは、本日正式に事務局長に就任いたします池田洋一君が当面運営をとりしきる団体として、とりあえず発足できることとなったことを、ここに慎んで皆様にご報告申し上げます。
 本日までの会計収支の詳細は、近日中に、すべての「賛同者」ならびに「サポーター」の皆様宛て、事務局から郵送にてご報告させます。
 そして明日以降は、さまざまなご案内や広報の内容も、必要に応じて書き改められるでありましょう。併せてどうかご注目をいただければ幸いに存じます。
 ぜひとも、新体制の指導組織には、全国から、旧に倍する賛同者・サポーターを得られますような、魅力と包容力のある人物、堅実な企画力のあるスタッフを、お集めいただきたいのであります。
 そうした人選、ならびに新体制の今後の運営方につきましても、どうか皆様からの宜しきご指導を頂戴いたしまして、せっかくのこの「日本安全保障倫理啓発機構」の言論運動の火を、絶やさずに持ち伝えて参ることができましたなら、設立を呼び掛けた者といたしまして、まことに本懐にたえません。
 今日、日本国民が、近代的な「国防の倫理」をなかなか自覚しにくく、そのため、外国の間接侵略工作に関して重大なセキュリティ・ホールを有しておりますこと、この根は、けっして歴史的にも浅くはないのであります。
 この欠陥を是正しようというわたくしたちの運動は、短期決戦などではあり得ません。
 じみちな啓発活動を、長く永く継続する以外に、事態を改善する方法はどこにもないのであります。
 だとしますならば、JSEEOの事務局が財政的に無理を重ねることは絶対に禁物である。
 ありがたくも寄せられた皆様の浄財の範囲内で、運動を1年また1年と継続する方法を考えるのが、期待される任務である。事務局は左様心得てもらいたい。
 もちろん、具体的にどうして行くのかは、明日以降、組織を代表して領導する池田事務局長以下の合議により、智恵を出し合って決定されるべきことでありましょう。


いつのまにか「パキスタン戦争」が始まっていた……。

 アフガン東部のCIA基地で現地語の話せる対ゲリラのエキスパートと思われるCIA職員7人全員が「戦死」させられちまったという2009-12-30の自爆テロについては菅原出さんの日経BPのまとめがすばらしい。
 それに続いて、「やっぱりそうか」と思わされたのがCNN日本語版の2010-2-3報道:「米国の無人機攻撃、オバマ政権下で64回と激増 報告書」。
 あの基地ではUAVの管制もやっていたのだ! イラク&アフパック戦域のリーパー/プレデターを米国本土から操縦していますよ――なんてのは一種のディスインフメーションだった可能性がある。もちろんそれは可能であり実験もされているのだろうけど、パキスタン内のCIA作戦に関しては、違うのだ。
 想像するに、ビデオのストリーミングをやりとりするのに必要な衛星ブロードバンド回線が、もう足りなくなっちまってるのだと思う。これは「RMA」なる幻想について最初からオレが想像していたアキレス腱だ(沖縄の北鮮舟撃沈のとき海自のP-3Cが撮影した細密な画像データは、テープそのものを東京まで空輸した方が、数時間かけて電送するよりもけっきょく早かったことを思い出すとよい)。
 それでおそらくしょうがないのでグロホか何かを衛星代わりの空中データ中継機として飛ばしつつ、アフガン内の操縦室の隣部屋にCIAのエキスパート職員を置いて、諸々の有限の通信資源の節約を図っているのだと思う。そこでは爆殺の意思決定までもしていたのだろう。そうすれば「相談」や「指示」の無線電波を盗聴される惧れもないしね(イラクではUAV動画が敵にのぞきみされてしまっている。信号に暗号をかけているヒマがないのだ)。
 その拠点を自爆テロで狙われちまったんだろう。こんな危険があることはP.W.Singerも本の中で指摘していたっけな(ジンガーの懸念は、じっさいに操縦を担当するはずのUAVメーカーの民間契約社員の方がテロの前線に近く張り付いているので、いまやプロ将兵よりも命の危険が大じゃないかということ)。敵の勝ちだ。
 あまりにももののみごとに弱点を突かれたのでCIAも怒り狂ってリーパーによる報復猛爆撃中なんだろう。
 そしてワイヤード・コムのデンジャー・ルームに Noah Shachtman 記者が2010-2-3付けでアップデートしている「3 G.I.s Killed in Pakistan. Now Can We Start Treating This Like a Real War?」という記事の警告。
 パキスタン軍が敵ゲリラを掃討したはずの地域で米兵がIEDにかかって死んでいるという。
 CIAのUAVどころか、既に歩兵が入り込んでいたのだ。これは「軍事顧問」じゃないだろう。
 記事いわく。パキスタン国内での米兵の作戦はかつては秘密であり小規模だった。それが、米国民が知らぬ間にどんどん大きくなっている。
 兵頭いわく。これはベトナム戦争中にカンボジアやラオスへも米軍が乗り込んでいくようなものか。今後の興味は、シナがパキ(またはタリバン)を後方からどのくらい応援するか、だね。そうなれば第二のベトナム戦争だが、今回は米軍はインド軍を味方にすることができる。


アフガンの戦いはまさにトムとジェリー。

 APのERIC TALMADGE記者による2010-2-2記事「US troop surge focuses attention on roadside bombs」。
 タリバンはIEDのサイズをどんどん大きくしている。
 IEDの原価は、なんと、タッタの50ドル。
 2009には無慮7000発が発見された。2003には81発だったのに。
 2009にアフガンのIEDで米兵129人死亡。
 米兵の全死傷者の3/4はIEDだろう。
 アフガンでは建物の近くにも仕掛けられている。起爆は単純な simple pressure plates である。
 2010-2-2の警報。「Somalia, Pirates Use Hijacked Ro-Ro」という記事をみると……。
 『Asian Glory』という、青い船体塗装でブリッジは白色塗装の自動車運搬船が、海賊に乗っ取られ、海賊船となってインド洋をウロチョロしている可能性あり――だと。速度は14ノット。
 APの2010-2-1のSTEPHEN SINGER記者の記事「 Next in military technology: Unmanned Black Hawk?」
 シコルスキー社は、イラクとアフガンに対応すべく、無人でも飛行可能なブラックホークをつくると公言。
 コパイをなくして一人操縦できるようにすれば経費節約になる。さらに、決まりきった輸送任務ならば、無人運転にしてしまいたい。
 すなわち、2名、1名、0名を選択できるものにする。
 無人デモ機は2010に飛ばす。2015には販売したい。調達価格は、今のブラホが1500万ドルだが、こいつは1700万ドルになろう。しかし1人操縦や無人操縦で、用途廃止までのトータルのランニングコストを節約できるのだ。
 スティーヴン・ザロガの分析。航空産業はリセッションだが、UAVだけは景気が好い。世界のUAV市場は、今年は $2.9 billion だが、2019には $5.5 billion になりそうだぜ。
 次。
 『タイム』にKayla Webley 記者が2010-2-2に載せている記事「A Brief History Of Gays in the Military」。
 プラトンは『饗宴〔シュムポジオーン。これが今の「シンポジウム」の語源なのだ〕』に書いている。
 同性愛者で編成された部隊は、それより人数の大きい敵部隊よりも強い。
 同性愛こそが、戦場で、臆病者を勇者に変えてしまうのだ。
 しかし14世紀初め、テンプル騎士団は、その同性愛指向により、宗教的に迫害された。多くのメンバーが同性愛の咎で焚刑に処されている。
 ※ところで「三銃士」はどうして「四銃士」と言わないのか不思議に思ったことはありませんか? デュマの構想では、あくまで三銃士を主人公にして長い長い話を連作していく予定が、そのうちの一エピソードにゲスト的に登場させたダルタニャンがキャラ立ちし過ぎてしまい、とうとう初期構想と整合がつかなくなったとか。大作家にして然り。
 ナポレオンとの戦争中であった1816に、英国軍艦『Africaine』において、 同性愛の水兵たちが絞首刑にされたり鞭打ちに処された記録あり。
 ジョージ・ワシントンだって1778に一人の米兵を同性愛で軍法会議にかけた。
 明文の禁止は米軍に関しては1916に示達されている。しかしWWIIまでそれは適用はされず。WWIIでは1200万人が徴兵されたが、終戦までに4000人の男が、同性愛の咎で追放された。
 ベトナム戦争中、これを逆手にとって徴兵をのがれようとするケース多し。しかるに1968にミズーリ州の19歳の青年は、正真正銘のゲイで、それを申告書に記載したのに、徴兵され、あとで問題になっている。
 今日、カナダを含めた25カ国が軍隊内の同性愛者を容認。
 ※地球が温暖化するとしたら22世紀はカナダの時代になるね。土地はシナより広いし、耕地は無尽蔵だし、電力資源も他国に売るほどもあり余っている。シナ人が移住したがるのは合理的でしょう。
 2009にイスラエルの軍事雑誌の表紙に二人の兵隊が抱き合っている写真が使われた。同国軍には1993以降、いかなる同性愛禁止もないのだ。
 ロシアでは、戦争期間中だけ、同性愛者の従軍は容認される。


汁男爵

 JOHN REED記者の200-2-1付け記事「Singapore Airshow: Steady Growth in Asia UAV Market Expected」。
 アジアのUAV市場はこれから6年間、4.4%のレートで成長する。
 安いUAVが売れる。
 プレデター相当クラスのmedium-altitude-long-endurance UAVは、グロホ級超高級UAVの仕事を奪い、顧客も奪うだろう。
 各国ではUAV需要が切羽詰ってくるので、もう国産とかこだわっていられなくなるだろう。外国から〔プレデター級を〕買うしかないのだ。
 アジアでUAV開発の先頭を走っているのは、豪州、シンガポール、韓国の3国である。第二集団として続いているのは、日本、シナ、インドである。第三集団は、マレーシア、インドネシア、タイである――。
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 「Ares」に Bill Sweetman 氏が1-29に投稿して、ロシアの新鋭試作機を「ラプトルスキー」と紹介していた。みんなおもしろがっているということはよくわかった。
 しかしオレ的にはそれよりも印象深かったのが、Maxim Pyadushkin氏による2010-1-26付記事「Russian Military Plans MALE UAV Development」。
 ロシアでは Tupolev しか 本格的なUAVをつくれそうなメーカーがない。しかたなくロシア国防省はイスラエルからUAVを買って、運用法を研究中だという。
 ツポレフは1960年代からUAVをつくってきたそうだ。
 だとしたらそれはベトナムから回収した偵察機型ファイアビーのコピーだ。やっぱりあの三角翼巡航ミサイルみたいなのは、ファイアビー/同IIの後退翼を、三角翼形にしただけなのか。としたら硫黄島の4機と「兄弟」だろう。日本は無人機ではとうとうロシアに追いついたのか。これは「バンザイ!」だよね。
 日本の無人機は米国GPSの1m精度を利用するから自動着陸ができる。ロシアはグロノス利用だからそこまではできまい。しかし実戦でGPSジャマーが作動したら、日本の無人機はもう何もできなくなる。対するロシアの無人機はオペレーションを継続可能だ。
 冒頭の紹介記事で華僑系シンガポール人の評論家が概説的に的確に予言してるけど、日本もプレデター級UAVを結句輸入するしかなくなるだろう。それはF-4の後継機などよりも緊急の課題になるだろう。これまで日本の役人と評論家と航空マニアがみんなアサッテの方向を向いていたために、日本のメーカーはMALE-UAVをつくりそこなった。富士重工の回転翼機も、硫黄島の三角翼巡航ミサイルも、プレデターの代用機能を果たすことはできないのだ。回転翼機や高速機では、燃費が悪すぎ、必要な滞空時間(最近の米軍ではUAVの滞空を「オービット」と表現するようになった。24時間在空が常識化しつつあるからだ)を実現できないのだ。そしてイスラエルですら、プレデターの同格機は未だつくれないでいるのだ。
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 Graham Warwick記者の2010-1-29付記事「High Speed An Option For Long-Range Strike」。
 マッハ6の偵察機や巡航ミサイルができそうだ、と。
 また、それとは別に、まだ飛んでいないマッハ3のミサイルが、ハープーンを2014会計年度から更新開始するかもしれない
 DARPAでは別な対艦ミサイルも考えている。これはシナの対艦弾道弾のアウトレンジから交戦する。※どうもよくその「図」が見えて来ん。
 これは識別や誘導のためにGPS衛星などの外部情報にはほとんど頼らないようにする――という。
 次。
 英国の『サンデー・タイムズ』の2010-2-1のOnline版。Richard Lloyd Parry記者の「Feng Zhenghu, the Chinese dissident living in airport limbo, set to return home」という記事によると、成田空港のさまよえるチャイナマン馬正虎氏がやっと上海に戻れるみたいだね。
 オレは日本のON-LINE新聞は『東京新聞』しか見てないんだけど、馬正虎氏の記事は見出しで見た覚えが無い。他のメディアは、これをスルーしていたのだろうか?
 ひとつ言えることは、北京とわたりあう方法を学びたくば、とりあえずシナ人の反体制家を見習えってことだな。『予言 日支宗教戦争』も読んでくれ。
 次。
 NICHOLAS D. KRISTOF氏による2010-1-30のNYTのOp-Ed へのコラム寄稿「Orphaned, Raped and Ignored」というタイトル。
  WWII以降、コンゴではハイチの30倍の人命が奪われているのだが、誰もコンゴに注目しない。
  難民は hills west of Lake Kivu に集中している。
 そこに Hutu militia がやってきて女たちを襲う。連中は remnants of those who committed the Rwandan genocide である。
 ちなみに同国では、処女は山羊20頭分の結納に相当するが、……but if the girl has been raped, two goats.
 この記事に感じた素朴な疑問は、山賊が定期的に襲ってくるような地域で、どうして住民の「警戒・警報・自衛」網が発達しないのかってことだ。満州でもニューギニアでもアフガンでも、村は自衛システムを自然に構築する。なぜアフリカにはそれが生じない?
 最後にオマケ。2009にオバマ大統領は、米国の課題の当面の優先順位を、「エネルギー」>「医療保険」>「教育」だと列挙した。
 ゲイツもこれがわかっているから、空軍参謀長に、はじめて(正確にはルメイという例外を除き)戦闘機出身でない男を起用した。
 中東石油はどんどんなくなる。オイルのピークは2008に過ぎた。そして世界にはあと12年で、今の「シナ+インド」とそっくり同じだけの人口が加わる。
 「1リットル1万円時代」が来、「訓練飛行」は不可能になり、有人機の時代は終る。


◎「読書余論」 2010年2月25日配信号 の 内容予告

▼防研史料 内田大佐資料『潜水艦 航空 関係』
▼防研史料『伊号第十四潜水艦兵器簿』航海長主管 S19-10
▼防研史料 『潜水艦に依る輸送~』S19-7 つゞき
 ※この前半を摘録した手帳が見当たらないのでとりあえず後半だけ。
▼防研史料 『荒天ニ於ケル被害状況報告』S10-9-26時点 龍驤
▼防研史料 『昭和拾年度乙種戦闘飛行所見』龍驤 S10-9-7
▼防研史料 『本邦油槽船発達経過・概要』S17-5 海軍省軍需局
▼防研史料 『決戦輸送(虎の巻)』(第一版) S19-1 船舶管船部
▼小島直記『三井物産初代社長』1985中公文庫
 ここに明治期の武器輸出の話や、別荘学が出てくるのだ。
▼檜山幸夫『日清戦争――秘蔵写真が明かす真実』1997
 各戦役の開戦作法についてくわしい。各戦役の病死者数も。
▼石光真清『城下の人』S33
 神風連から日清戦争に至る目撃談/体験談は貴重。
▼A・N・ステパーノフ著『旅順口』袋一平&袋正tr.、上中下巻、1972~73刊。
 この小説がWWIIの真っ最中に出版されたのは、スターリンが対日戦を決意したことと関係があったのだろう。
 陸戦で使われた魚雷発射管についての、最も詳しい記述あり。
▼笠原保久『軍旗美談』M40-10-20pub. 東京・武林堂
 近代軍と軍旗の関係を知るにはナポレオン時代のエピソードまで遡らねばならない。山縣有朋はここに書いてあることと同じことを学んでいたのだ。
▼松 美佐雄『軍旗物語』M44-4-28pub.
 乃木のエピソードでは、河原林の名を変えてある。
▼陸軍省『軍旗略歴』M39
▼日本航空株式会社調査課『日本民間航空輸送小史』
 WWII中の南方航空路の結節点はサイゴンだったのかと分かる。
 最長路線は、横浜~淡水の2100km。おそらく2式大艇使用。
▼内藤初穂『海軍技術戦記』〔後半〕 1976
 ※2008-1-25配信の〔前半〕の続き。
▼小松和博『江戸城――その歴史と構造』S60
 とにかく図版が充実している。水路系まで調べてある。
▼『柳田國男全集 23』1990 ちくま文庫
 灯火用の油の歴史。
▼稲垣栄洋『身近な雑草のゆかいな生き方』2003
 走って逃げることのできぬ植物のサバイバル術。「戦略」を学ぶ者ならこの著者の本を1冊は読むべし。
▼北川 衛『謀略列島日本』S44-6
 海外工作機関は、なぜかカネに困っていて、副業に大いに精を出したものらしい。S34に殺されたスチュワーデスはじつは特務機関の密輸屋だった。
 ベトナム戦争時代に米国で徴兵された日本人学生たちの話。制度上、拒否は可能なのだが、永住権がほしいため、皆入営した。
▼亀山章・他ed.『最先端の緑化技術』1989
 甲子園球場のツタは、大13に、西日除けが目的。
▼慶大附属研究所『斯道文庫論集 第8輯』S45所収、阿部隆一「三略源流考」
▼『金沢文庫研究』通巻166号(1970-2)所収、阿部隆一「金沢文庫本『施氏七書講義』残巻について」
▼本郷健『戦争の哲学』1978、原書房
 クラウゼヴィッツ研究者は1回読まねばならない本。
▼東洋経済新報社ed.『軍政下の香港』S19
▼小川和久『戦艦ミズーリの長い影』S62
 田中角栄は、T-2/F-1をやめてF-5に代えさせようとした。※中共最高のエージェントの面目。
▼水谷國一『第八路軍及新編第四軍に関する資料』南満州鉄道株式会社調査部S14
▼日本輸出入銀行海外投資研究所『ソ連・東欧諸国の経済に関する論文集』
▼ドクトル・ルウィル『十九世紀のアジアに於ける英露の角逐』S19
▼日本貿易振興会海外経済情報センター『英国の対東欧政策』
▼長野敏一『英国経済空間の探究』
▼山梨勝之進『歴史と名将』S56
 生涯をかけた英海軍研究がこの1冊に凝集。死後、弟子が講義メモをまとめた。なぜ江田島にネルソンの毛髪が「ご神体」として祀られているのか、これを読まないと理解はできまい。
 ◆  ◆  ◆
 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。(配信されるファイルはPDFスタイルです。)
 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。
 1935年のポーランド軍には、演習終了時に少中尉を胴上げする風習があった――などという、どうでも可いような知識が、グングン身に着いてしまいます。
 大きな図書館に毎日通えない人も、最低費用で、過去の軍事知識のマニアックな勘所に触れることが可能です。
 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。
 「読書余論」は、毎月25日に「武道通信」から最新号が配信されます。1号分の購読料は200円です。
 バックナンバーも1号分が200円で、1号分のみでも講読ができます。
 2008年6月25日号以前のバックナンバーのコンテンツは、配信元の「武道通信」のウェブサイト
http://www.budotusin.net
 の「告知板」をスクロールすれば、確認ができます。
 ウェブサイトでわからない詳細なお問い合わせは、(有)杉山穎男事務所
sugiyama@budotusin.net
 へどうぞ。


まだまだたくさん生きていた全共闘の残党老人連。

 シンポジウムとは、またそのコーディネーターとは、いったいどうやるものかを一度見学しておくため、函館国際ホテルの原子力シンポジウムにでかけたっけ……事前に何も宣伝していない「大間原発」の説明会だったんかよ!
 「もう海岸に軽水炉というのは古いから、夕張にHTTR炉をつくったれよ。泊より電送距離も短くなるし」、とか高度な質問してやろうと思っていたが、とてもそんな雰囲気じゃありませんですた……。


沖縄問題もヤクザ問題。

 人間はカネのためなら人も殺せるのだから怖いものだ。そしてカネが嫌いな人間はおらず、殊に政治家は大好きである。一方に最高のホラー。そして他方に、命の次に大事なインタレスト。これで動かぬ地方の政治などどこにあろう。仕組みの上でこれを芟除しないかぎり、中央の政治までかならず腐敗するようになっているのである。
 米国もほんの60年くらい前まで、州や市のレベルでは相当に政治と利権の腐敗が見られた。しかし連邦レベルではWWI前後からそんなものはなかった(数少ない例外は「ティーポットドーム海軍リザーブ油田」醜聞)。
 秘密は何だったか? 米国東部の法曹エリートは、土建を政治利権にさせないコツを「連邦陸軍工兵隊」で学んだのである。治水事業が構造的に腐敗していたら、州を越えた大人災につながってしまうから、彼らはこれを軍隊に仕切らせたのだ。ウェストポイントはじまっていらいの優等生マッカーサーが陸軍工兵隊に任官したのも、そこではクリーンな土建政治実務というものが学べたからであったろう。
 日本では幕藩制時代から、臨時に大量に必要になる土木作業員の人集めと管理を、殿様が地場のヤクザの親分に頼まなくてはどうにもならなかった。米国は土木作業の機械化(スチーム動力化)を急速に進展させることで土木作業を近代会社化してしまったのだが、日本ではこのヤクザの親分と殿様とその部下の現場事業監督幹部のもちつもたれつの腐れ縁が、機械力の導入(すなわち省力化と工期短縮)に抵抗し、維新以降も、土木事業の近代化を妨げ続けたのである。
 WWII中、米軍は、シービーズ(海軍設営隊)が南の島のジャングルに上陸してわずか1週間以内に、爆装F-4Fが離着陸できる立派なストリップを施工し得た。日本軍がおなじ作業をするには数倍の人夫と数ヶ月の工期が必要だった。
 戦後、自衛隊の機械化された施設科部隊が各地の飛行場や学校グラウンドの建設に用いられた時期があったが、たちまち、地方の政治ボス(しばしば土建会社経営と地方政治の二足のワラジを履いていた)が、「民業妨害だ」と騒ぎ出し、中央の政治家をつきあげ、今ではこのような施設科の運用は見られなくなってしまった。
 米国ならば、地方の土建屋や政治家がいくら私益の顧慮から反対を唱えようと、陸軍工兵隊を投入すれば、パナマ運河のような大工事すら、できてしまうのである。しかし日本では、たかだか二千数百mの滑走路を新設することすら、地方のヤクザの反対に遭っただけで、不可能になるのだ。
 しばしば地方の親分と中央の与野党の政治家は、利権誘導の利害で共謀関係にあり、あたらしい滑走路が造られそうだとなれば、その利権誘導の工作資金撒きや、思惑買いの投資を、勝手に先行させてしまうものである。だから、いまさら「浮航体方式にする」などと大臣が発言しようものなら、数人の与野党の政治家や秘書が、交通事故に遭ったり、ホテルで不審死せずにはおかないだろう。
 愚生は一貫して沖縄に海兵隊など要らない理由を語ってきたので、ここでは、その主張はいささかも変えずに、八方まるくおさまる良い方法を、民主党のために提言しよう。
 米国が、米国の国防予算で、沖縄の海兵隊のための、長さ3000m×幅400mの「バージ」を、日本の造船メーカーに発注する。
 これは「浮かぶ滑走路」ではない。エンジンを有する「船舶」である。したがって不動産ではなく、動産である。ただし形態として、最上甲板はフラットであり、機能としてF-18が離発着でき、普天間飛行場の代用になる。
 日本政府と日本の造船メーカーは、これが台風などで損傷した場合には、即座に日本外務省の予算でメンテナンスすることを約束する。これはなかなか破れそうにない契約であろう。
 この巨大動力筏を、沖縄県の辺野古沖に「遊弋」させる。ただし速力は時速0.000001ノットである。
 ひょっとして沖縄県民のいやがらせが、この筏に加えられるかもしれない。海兵隊様が辺野古沖が厭になったら、このバージはグァム島へ勝手にタグボート&プッシャーボートにエスコートされ移動するだろう。「サヨナラ」だ。
 普天間の跡地整備事業で、地元土建業界は、酬われるだろう。なにしろ、かなり悪い土地だそうで、変な物質も置き土産としていろいろ埋まっているだろうから、さぞかし、長年にわたり、直し甲斐があることだろう。
 台湾政府が有事に即座に動員できる地上兵力は、優に陸上自衛隊よりも多いのである。それでシナからの特殊部隊の攻撃が自力排除できないというのなら、そんな国はとっくに独立を失っているだろう。
 シナは間接侵略によって台湾を事実上、併呑することができる。かたや米国政府は、「人民元は紙屑だ」と、本当のことをアナウンスするだけで、シナ財政を崩壊させてやることができる。
 2012年時点でも米海軍は正規空母を10隻も維持する予定である。沿岸戦闘艦(LCS)も続々と就役する。
 海兵隊の出番など、もうアフガン以外にどこにもありはしないのである。……あっ、沖縄の地方自治体が間接侵略にやられて中共のエージェント化したら、暴徒から嘉手納基地を防衛するために、残っている必要があるかもな!


皆様へのお詫びとお知らせ 並びに「一サポーター」宣言

 きのうJSEEO事務局から電子メールで、2月6日の設立大会の案内チラシの草案が送られてきて、そこにわたくし兵頭の肩書きが「理事長」となっていたので驚いた次第です。
 わたくしは事務局の池田洋一君に対し、この機構の代表を本年中に辞任するという意思を、1月12日の電子メールでお伝えしてあるのです。にもかかわらずこのような案内チラシを作って既製事実のように「理事長就任」を宣伝されては、甚だ困惑いたす他にない。辞めるつもりになっている人間を理事長なんかに立てて世間を欺いて良いわけがない。
 それで、わたくしの代表辞退および「一サポーター」宣言は、設立大会当日までその公表を待つつもりでおりましたけれども、急遽、この場で「設立準備室代表」としての説明責任を果たしておかねばと思い直しました。決断が万事遅くて、まことに恐縮であります。
 もちろん設立大会までは「設立準備室代表」として、当日の演壇でも、かたがた退任のご挨拶もさせていただければ幸いだと思っております。
 わたくしが当機構の正式発足後の「理事」または「理事長」就任をお断りしたい理由は、大きく二つあります。
 一つには、当初見込んだほどの「賛同者」の人数が集らず、このままでは事務局の赤字が累増して行き、いろいろな人に迷惑がかかる可能性があるとわたくしが判断していること。
 二つには、わたくしの目指すインターネット・ラジオ事業には池田君がまるで関心がなく、反対に、池田君が志向する「シンクタンク」的活動にはわたくしが懐疑的であることです。つまりは同床異夢であったと悟りました。
 わたくしは、機構の収支赤字が黒字に転換する見通しがない以上、甘い楽観を続けずに、即刻、組織や活動を縮小すべきであると思います。たとえば、事務所は整理すべきではないか。しかし、池田君は違うお考えのようです。これは非常に大事な問題だとわたくしは思っております。この大事な点で池田君の同意を得られなかったことは、わたくしの遺憾とするところであります。
 もし、浄財の喜捨が十二分にあつまりましたならば、二つめの問題なども、問題ではなかったかもしれません。してみますと、「賛同者」をごく僅かしかあつめられなかったわたくし兵頭二十八の徳の無さこそが、現今の根本の蹉跌因でありましょう。この点につきましてわたくしは、支援者の皆様、発起人の皆様および事務局、殊には事務所立ち上げの全費用の赤字分を個人で負担している池田君に、深くお詫びを申し上げます。そして真剣な反省から、わたくしは機構の監督者的な立場からは身を退くべきであるし、可及的すみやかに、別などなたかが機構の代表になるべきだとも確信をいたすのであります。それは、いろいろな経験を積み、見識も高い、池田君自身でもよいのではなかろうかと、個人的に思います。
 いずれにいたしましても、わたくしではないどなたかが、当機構を率いてくだされば、それが、あらたな「賛同者」を吸引することにつながるに違いありません。わたくしが代表などで居る限り、これ以上、賛同者も浄財もあつまらないでしょう。どうか、発起人の方々や顧問の先生方と事務局とで、十分にご相談をなさり、新たな機構の方向を定めてくださることを祈念します。もちろんわたくしも、設立大会後は、一サポーターとなりまして、北海道からJSEEOを声援して参る所存です。
 もし、「この人ならばJSEEO理事長にふさわしいのではないか」というお心当たりの候補などがおられましたなら、是非、JSEEO事務局までお知らせくださればと思います。まだ、電子メールアドレスもFAX番号も電話番号も住所も、生きております。
 皆様からの有り難い喜捨のおかげによりまして、これまでJSEEOとして数度の講演会を開催し、日本の国防問題について啓発する独自な言論運動を、ささやかなりとも展開することができました。これは手前味噌ながら、有意義であったと思っております。2月6日も、おもしろいシンポシウムをお聞かせできそうですので、どうぞこぞってご来場ください。末筆ながら現在の支持者の皆様にはあらためて御礼を申し上げます。そして、どうかこれからも引き続いてJSEEOを宜しくご支援くださいますよう、伏してお願いを申し上げます。