リーパー×2機のステレオ探知でDSPへキュー出し……という計画。

 2010-1-4付、Amy Butler 氏の「Missile Agency Refines Concepts For UAS」という記事。
 米ミサイル防衛庁は、中高度無人機のリーパーに赤外線センサーを搭載し、敵国の弾道弾発射をDSPよりも早く探知する方針。
 2009-3-26のステラダガー演習。このとき海軍と空軍が、UAVのリーパーを1機づつ飛ばした。そのUAVが、陸上競技場のトラックのパターンで旋回を続け、355~432km離れたところから、短距離SSMの発射を、遠赤でも近赤でもない赤外線センサー(MTS-B medium-wave infrared sensor)によっていちはやく捕え、キュー出しし、軍艦がSM-2で迎撃できた。
 米国はこの早期警戒システムをどんどん実戦配備していくつもり。リーパーからDSP衛星や「Space-Based Infrared System High」衛星に対してキュー出しするのだ。
 ――以上が摘録です。
 みなさん、お手元の、『もはやSFではない無人機とロボット兵器』の81ページを見てください。そこに、なぜグローバルホーク級ではなくプレデター級の中高度UAVでなくば「対弾道弾の早期警戒」はできないのか、想像される理由を書いておきました。
 日本の防衛庁は、対弾道弾の赤外線探知用に「雲上偵察機」であるグローバルホーク級を単機で用いようとしました。これは結果として間違いでした。
 米国ミサイル防衛庁の計画では、今後は宇宙のDSPすら、「雲下偵察機」のIR警報システムからキューを受ける手順となるようです。
 わが防衛庁/省では、日本がとうぶんDSPなど持てそうにないので、雲上偵察の不利はわきまえつつ、グロホ級を考えてみたのでしょう。
 その発想は、当時としては、やむをえなかったと同情ができます。
 グローバルホーク級の無人機がもし、技本(もしくは無人機に活路を探す富士重工)の手で簡単に試作できるようなもので、しかももしも一発で成功してしまったなら……いずれ「エアボーンレーザー」のプラットフォームとして流用も可能で、それなりに意義は深かったでしょう。
 が、どっこい、高度2万mの薄すぎる大気中を悠々と飛べる飛行機を、日本の、今や国際基準では資本が弱小すぎる航空機メーカー群が、束になってかかっても、作り上げるのは無理だったのではないかな、と想像いたします。
 (日本のメーカーが高高度ISRで逆転ホームランを念願するなら、現実的方法は「飛行船」しかないでしょう。富士重工はそっちもやっているみたいですね。最終勝利を期待します。)
 米国がやるという「ステレオ探知」は、「スウォーム」(群知能)の発想につながるものです。(衛星でもステレオ運用をこれからは考えるらしい。)
 1機の搭載センサーが強力でなくとも、2機以上で連携運用することで、感度も精度も高い観測・偵知が可能になる、というのがスウォームの可能性でしょう。
 つまり軽量でも高性能を狙えるのです。軽量級ジェット・エンジンしか純国産できない日本にも、キャッチアップの目があるわけです。
 そこにどんな可能性があるのか?
 もっと知りたい人は、『「自衛隊」無人化計画』と、『もはやSFではない 無人機とロボット兵器』を読みましょう!


◎読書余論 2010-1-25配信 の内容予告

 みなさま、新年おめでとう存じます。
 今年も50円節約のため虚礼廃止しております。 あけまして すすめ一億 火の車 /二十八。
▼旧参謀本部ed.『日露戦争 上・下』徳間文庫1994
 数字がギッシリの好資料。
▼田中角榮『日本列島改造論』S47-6
 今こそ読み直す価値あり。菅直人氏らの世代はみんな影響を受けている。
▼大原美芳『江川担庵の砲術』S62
 幕末砲の「斤」表示と実測寸法の関係表が貴重。
▼佐藤晃『帝国海軍「失敗」の研究』2000
▼塚本嘉一『石の匠――石都《岡崎》鑿の音』H10
 碾き臼はいつ、廃れたのか。
▼後藤茂樹ed.『沖縄/日本の島 新編 日本の旅 15』S46
 「琉球という名は対明(対中国)貿易で明国がつけたもので、日本をジャパンとよぶように他称である」
▼渡邉行男『重光 葵』1996
▼静岡新聞社ed.『大空襲 郷土燃ゆ』S50
▼泉三郎『堂々たる日本人』H8
 日本は西欧には四十年遅れているだけだ、という錯覚の言い始めは、久米邦武だった。
▼小室直樹『世紀末・戦争の構造』1997
 福音書には、禁止は一言も述べられていない。戒律や規範とは無縁なのだ。
▼植木直一郎ed.『武士道全書 第八巻』S18-1
 特に「細川幽齋覺書」は必読だ。
▼伊野辺茂雄ed.『武士道全書 第九巻』S17-12
 「常山紀談」を収める。
▼佐伯有義ed.『武士道全書 第六巻』S17-11
 「葉隠」が抄録として入っている。
▼植木直一郎ed.『武士道全書 第五巻』S17-10
 大弐の「柳子新論」、子平の「学則」などを載せる。
▼山鹿素行『兵法神武 雄備集 武備之巻』
▼古関彰一『基地百里――開拓農民と百里基地闘争』1977
 M40に百里を開墾。
▼八木下禎治『歌集 基地立川』S50
▼鬼生田[おにうだ]貞雄『基地九十九里』S28-5
▼神奈川県渉外部基地対策課『神奈川の米軍基地』S63-3
▼助川史談会pub.『水戸藩の海防と山野辺義觀』S13-5
▼東京都総務局基地返還対策室『都内米軍基地資料』S49-9
▼『古代学研究』1994-12所収・熊海堂「中国古代瓦・煉瓦を焼く窯炉とその技術の朝鮮・日本への伝播」
▼(財)日本建築防災協会『建築防災』1999-5
 土蔵による防火の歴史。
▼立命館大学日本文学会『論究日本文學』1998-5所収、山本淳「『異本義経記』の川越氏――義経兵法の系譜(一)」
▼大阪市史編纂所ed.『大阪市史料第四輯』小山仁示「太平洋戦争下の防空資料――小松警部補の書類綴から」
 S19~20のナマ史料である。
▼米本悦三郎『芸術政治と軍学』大3-12
 ※米本悦三郎の一人雑誌「馬上大学」NeO SERRIES SPHINX’s No.2 無星神叢書第二編……とも書いてある。
▼小島彌三郎ed.『兵法秘術要義』S8-6
▼『偕行社記事』No.726(S10-3月号)所収・横田穣 砲兵少佐著「旅順攻撃に二十八珊知榴弾砲据付工事の思出」
 ◆  ◆  ◆
 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。(配信されるファイルはPDFスタイルです。)
 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。
 大きな図書館に毎日通えない人も、最低費用で、過去の軍事知識のマニアックな勘所に触れることが可能です。
 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。
 「読書余論」は、毎月25日に「武道通信」から最新号が配信されます。1号分の購読料は200円です。
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 2008年6月25日号以前のバックナンバーのコンテンツは、配信元の「武道通信」のウェブサイト
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 ウェブサイトでわからない詳細なお問い合わせは、(有)杉山穎男事務所
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「無人機研究システム」はファイアビーの真似か?

 12月15日に硫黄島で滑走路への自動着陸に成功したとかいう「無人機研究システム」は、母機から空中発射して空中から(衛星リンクを用いずに)見通し通信で管制する方法といい、1971年にC-130から発進させて地上標的にマヴェリックやホーボーを試験的に命中させてみた、対地攻撃型「ファイアビー」のコンセプトの模倣と思える。(ベトナムの実戦にはこの型は結局投入されず。ベトナム後には、すぐに巡航ミサイルの開発が始まっている。)
 後退翼がデルタ翼になっているが、重さもサイズも近似(やや小ぶり)。ということはパフォーマンスも「ファイアビー」の上には出ないのだろう。
 衛星を使えない日本としては、やっぱりこの管制方式しかないだろうね。
 この無人機をC-130ではなく、C-Xから運用したら何ができるようになるだろうか?
 ちなみに(パラシュート回収だった)ファイアビーが不可能だった「自動着陸」が日本でできたからといって自慢にはならない。これは精度1mの米国提供GPSが利用できる今日、そこらの中小国でもやろうと思えばできる話なのだ。
 米国は次世代GPSで、有事の際の他国のGPS利用を随意に制限できるようにするから、自前のナヴィケーション衛星を打ち上げていない日本として、そんなものを前提にシステムを組み上げてはいけないはずだ。
 ファイアビーのことは、来年の3月頃に出る次著で書いておきましょう。並木の新刊には、急いでいたのでファイアビーの話は書いていません。すいません。


年末・年始の書店で 並木書房の新刊を探そう!

 だいたい今日あたりで取継の営業が止まるんじゃないか? つまり週末から松の内にかけ、もう新刊は書店に入荷しなくなります。
 そこで何を探すべきか? 『もはやSFではない無人機とロボット兵器――エコ軍備の最前線』です!
 50cc.の「スーパーカブ」にロボット足を2本とりつけただけで、世界で最も省エネの無人輸送機械が出来上がるはずだ。
 前著の『「自衛隊」無人化計画』では、2足歩行ロボットなんかに開発資源を集中するのは愚で、「五感を備え、四肢は自在に機能するが、基本的には座ったまんま」のロボットを先に完成してしまったメーカーが、「有人→無人」遷移期の市場を支配できるんだという理屈を説いたが、今回の本でも、具体的な提案をてんこもりにしておいた。
 ヒトそっくりの2足歩行ロボットは、国際法で必ず禁止されるだろう。その理由も説明しておいた。そこに引き続き資金を注ぎ込み続ける会社は、株主を裏切ることになりはしないか?
 求めよ! 求める者は、救われるであろう。¥1,500円+税 であります。


次はコスモポリタン・プレスさんから本を出すぜ!

 ユーチューブに12-18講演の映像をUPした人がいるそうだが、やめてくれ。
 オレの講演が3日後にタダでフル視聴できるとなったら、誰が2000円も払って会場にやってくるんだ? あの切符代はJSEEO事務局の維持費の貴重な財源なんだ(オレは大阪講演のときからギャラは貰っていない。タダ働きだ)。事務局はいま火の車で、「職員」はバイトをしながら1日交替で事務所に詰めているんだ。
 それに最初の30分のオレの喋りだけならばともかく、後半の1時間は、会場で書いてもらった質問カードに片端から答えたものだぜ。どんな関心をもった野郎どもが兵頭講演に集っているのか、モロバレじゃないか。プライバシーってことを考えろよ。
 前回の大阪講演は、音声だけ、それもやはり、後半の質疑応答部分をカットして、JSEEOのHPで12-18の直前に公開をする予定だった。編集は、例の桃太郎侍さんに頼んでいる。そう、いつも会場の右端で三脚カメラを回しているあのお兄さんだ。オレはあの人にはいつも特別にお願いをして撮影と録音をしてもらっているんだ。
 オレはJSEEOのHPすら見ているヒマもないのだが、どうせまだ大阪講演の音声がUPされていないだろう。しょうがねえんだ。JSEEO事務局にはPCのことをいろいろ分かる奴が一人もいねえんだ。だったら誰か分かる奴にボランティアを頼めばいいじゃないかとオレはいつも言っているんだが、ケツの穴の小せえことを言って、余所者の手伝いを嫌っているんだ。それじゃ運動はダメなんだが、オレも担がれ御輿だからこれ以上の指導はできない。
 桃太郎侍さんはとっくに圧縮ファイルをポッドキャストもできるように完成納入してくれているのだが、そんなような事務局の遅い対応で、いまだにUPできていないのだとしたらオレはお詫びする。まあ、ユーチューブ投稿をしてくれた人も、そんな事務局の遅すぎる対処にイライラして、やってくれたんだろう。有り難うよ。礼を言うぜ。
 そこでオレもちょっと考えたんだが、これからは適切なタイミングで(つまり、その次の講演会よりも決して後にはならぬような、さりとて講演の価値を無にするほど早すぎもしないタイミングで)、桃太郎侍さんのHP上に、編集済みの音声ファイルをUPしてもらうこととしたい。そして事務局がiTuneだとかポッドキャストの配信についていろいろと学習をして(それは何百年後のことかオレは知らない)、JSEEOのHPに正規にその音声ファイルをUPしたら、いちいち、その時点で、桃太郎侍さんのHPの方は、UPを削除して行く。こういう段取りでやっていきたいと考えている。
 つまり、オレが最初から公約をしている「インターネット・ラジオ」事業は、当分、桃太郎侍さんの場所を借りて、試験的に展開することにするよ。遺憾ながら、すべてノー・ギャラでね。今の事務局の状態では、ラジオ・セクションの運営は半永久的に無理だろう。やっとふんぎりがついたよ。
 話を12-18講演に戻すが、あの冒頭30分の喋りの内容は、来年3月初め頃にコスモポリタン・プレスさんから出す予定の新刊と、被っている。だから新刊のインパクトを弱めないために、12-18講演の音声ファイルは、来年2月まで公開させないつもりだった。というわけで、ユーチューブのUPは営業妨害になるから、やめてもらおう。


独演会の式次第

 18日の文京シビック。今回は経費節約のため「司会」無しでやります。
 ですので、あらかじめ、式次第をお知らせしておこうと思います。
19:30  はじまりはじまり~
20:00  短い講演のおわり。「質問用紙」を回収して回答開始。
21:00  終了。
 こんな感じになります。途中休憩も無し。
 そのぶん、質疑応答の時間を、じゅうぶんに長くしてあります。
 ご近所お誘い合わせの上、ご来場ください。


見本刷り上り……だと!

 並木書房さんからの新刊『もはやSFではない無人機とロボット兵器――エコ軍備の最前線』の見本ができあがったそうです。※わたしの知る限り、今回のは並木書房さんの最速作業記録です。消費者ニーズが個人化した今日、押し売り「幕の内」形式の雑誌などが人々から顧みられなくなるのは当然のことで、今や、単一筆者のプロデュースによる濃厚な単行本書籍こそを、雑誌ペースで製作すべきではないでしょうか。その手本が示された、と自負しております。
 イラストレーターのみなさん方には、明日か明後日、届くだろうと思いますのでお待ち下さいね。ありがとうございました。
 それから井上公司先生、今回はお世話になりました! この場を借りて御礼申し上げます。
 京野一郎先生、恐縮しております。本日、空港から地元の土産を空送させていただきますので、ご笑納ください。
 ところで、わたしが見本を手にするのは、18日の文京シビックになりそうです。そう、みなさんと同時ですよ。
 とにかくインフルエンザには気をつけましょうね。ウチの子供もやられちまったよ。まあ、カトリック系幼稚園なのに「かさこじぞう」などという異教の偶像をクリスマス会の劇にするというブッ飛び企画を参観できなかったのは残念だったと言っておこうか……。
 というわけで18日にお目に掛りましょう。(閉幕するのが21時くらい? これは公園で立ち飲み決定ですかね……)


伊藤さま

 ありがとうございました。ちょうど、コンビニ安酒の月桂冠の「月」が切れてしまったところで、壺入りの高級焼酎が到来しました。今月はまた1冊仕上げねばならぬ単行本があり、酒なんか飲んでいてはいけないのですが、つい昼間から飲んでしまいました。……頑張ります。
 みなさん、お歳暮は要らないので、18日のJSEEO講演会にいらしてください。
 18日は忙しくてダメだが17日夜もしくは19日朝に商談がしたいという方、ホテルでお目にかかりますので、JSEEO事務局へご連絡ください。小生は、朝は4時からOKです。