新着の防衛白書(平成21年版『日本の防衛』)を読みて

 09年7月26日、遂にインドの国産核ミサイル原潜『アリハント』が進水した。これから2年間、ベンガル湾で試験してから就役する。6000~7000トン、95人乗組み、水中24ノット。同型艦が5隻造られる。90年代にロシアからレンタルしていた原潜で細部を学んだ。
 しかしインドが弾道弾を水中で発射するテストをしたという話が聞こえてこないので、すぐ対支の抑止力になるというわけじゃないだろう。
 それでもシナは焦っている。さきごろ、博物館級の「ゴルフ」1隻をスクラップにしないでまだ改装している写真が公開された。
 ロシアもかなり予算の無理をして、ICBMからSLBMへのシフトを図っているように見えるが、タイフーン級から陸上型の長射程固体燃料SSMを水中発射する試験は、立て続けに失敗中。SSBNは簡単なシステムじゃないのだ。
 インドは、シナやロシアと違い、大量破壊兵器を無責任に拡散させることがない。これが、アメリカの信頼を得ている。だから核武装もおおっぴらに認められているのだ。
 アメリカは、最新鋭海上哨戒機の「ポセイドン」を、インドに売ることにしている(白書はこの話を紹介している)。
 日本はインドよりも信用されていない。朝野に特亜loverが多すぎるのだ。昔は、東大がインドネシアに固体燃料の宇宙ロケットを売ろうとし(もちろん兵器に転用されるに決まっていた)、これが、米国によるミサイル不拡散レジーム策定のきっかけを成したほど。
 さて、日本の大スキャンダルになりそうなF-22問題をサラッと書き飛ばし、このインドのSSBN(建造計画は1年前から分かっていたはずだ)についてはまったくスルーしているのが、こんどの『防衛白書』の、目につく特徴だ。
 日本がシナのみならずインドにも劣った軍事的二流国となり、趨勢としてその国際政治上のパワーがずんずん沈降中であるという現状を正直に認めずして、どうして日本の防衛など語れるのだろうか。
 ここで普通の評論家なら「戦犯」をインサイダーに求める。だがオレは違います。今回は、戦犯として、大衆的人気を博した軽薄フィクションライターたちの業績をあげつらいたい。
 漫画家の松本零士さんや小澤さとるさんは、外国兵器礼賛はしなかった。健常な世代でした。意地でも国産兵器に活躍させるのが当然だと考える、日本がまだ大国であったころの大衆精神を持っていた世代です。
 健常ではなくなってしまったのは、『ファントム無頼』からです。(たしか松本先生のアシスタントだった人ですよね。象徴的だと思います。)
 その次に、かわぐちかいじ氏の、アメリカ製の原潜を海自の反乱分子が乗っ取って、アメリカ相手に暴れて溜飲を下げる、という変なマンガが評判になりました。
 次に来たのが、小説の『亡国のイージス』です。
 前後して、「トマホーク教」信仰も生じました。政治家が「トマホークを持て」云々と言うようになった。
 考えてみましょう。英国や、仏、露、支、独で、小説家やマンガ家が、よその国から買った最新兵器を、舞台装置・兼・準ヒーロー格にもして大活躍させるなんてこと、ありえますかい? 恥ずかしくてできないでしょう。
 長い時間をかけて、大衆の意識レベルから、かつて国際連盟の常任理事国、世界の7大国に列していた日本は、小国化したのです。
 大国の指導層がとうぜんに有し、大衆にも支持される「ダンディズム」がなくなってしまった。これをわたしは精神の非武装化と呼びます。それに、とうとう現実政治が追いついたまででしょう。
 諸悪の根源はマック偽憲法ですが、それを廃止できなかったのは日本の大衆です。
 防衛白書に書いてない、最新の世界情勢を、わたしが述べましょう。
 アメリカ合衆国は、〈シナと韓国と日本は同レベルの二流国だ〉と考えるようになりました。だから、この三国のうちひとつを特別扱いすることは、もうありません。この三国に「三すくみ」をさせ、できるだけ低レベルで地域均衡させて行くというのが、アメリカ合衆国の望みです。
 とうとう日本は、シナ人や韓国人と、同じ仲間だと見られるようにまでなったのです。落ちたもんですよね。でも、不愉快じゃないですよね。だって、国産機よりも「ラプター」を買え、と、マニアの人たちがずっと要求してきたでしょう?
 中共の軍事系ウェブサイトを見ても、「隠形」の「猛禽」のことばっかり、書いてます。そして、〈われわれシナ軍も、まったく同じものを造れる〉と宣伝しています。外形がそっくりのものです。心情は日本人と同じ先進国礼賛なのです。
 「三すくみ」は、半島が統一されていないからこそ実現可能なので、アメリカ軍は韓国軍の北進も容認しないでしょう。もし韓国が半島を統一すると、韓国の核武装が進展し、日本も核武装しないわけにはいかなくなり、地域の均衡の水準が一ステップ上がってしまいます。しかも三者とも、核技術を無責任にどこかの後進国に売ったり譲渡をしかねない。アメリカを狙う核テロリストが大増殖するのは、アメリカには一番困る。
 さて、09-7-24には、B-2ステルス爆撃機が2発格納できる3万ポンドの鋼鉄製地下貫徹爆弾(Massive Ordnance Penetrator)のテストの短報。充填炸薬量は5300ポンド、強化コンクリートも貫徹できるという。
 これはイランを脅かしているのか。それともイスラエルを宥めているのか。
 かんけいないけど、北朝鮮の炭鉱は地下1000m以上あるはずなんで、こっちをやっつけるためには「重い毒ガス」が必要になるだろうね。敵の地下組織壊滅のための重い毒ガスの使用は数十年も前にハインラインの小説で予見されているので、米軍のことだから、とうぜんに選択肢の一つだろう。毒ガスを放棄していない相手には、逆に毒ガスの脅しがリアリティを持ってしまうのだ。


2日も留守にするとメールの処理がたいへんな件等について

 会津若松市に行って来ました。かれこれ5年以上もごぶさたしていた眼科医の米山高仁先生に高いワインをごちそうになりました。さすがに函館のスーパーで入手できる1瓶390円の安物とは違いますね!
 会津地方の観光名所はたいがい既に見て知っておりますので、今回は、穴場ではないかと思い、「福島県立博物館」に出かけてみました。
 地図をみるとその近くに「山鹿素行生誕の地」もあるようです。それで、不思議に米内光政さんに顔が似ているタクシーの乗務員さんに頼んで寄り道をして貰った。
 現場は、街中の狭い1区画が、宅地化を免れて保存されていました。敷地の奥に、東郷平八郎が揮毫した大正15年4月建立の石碑が建っていました。(この山鹿素行についての兵頭の考察は、新紀元社の『あたらしい武士道』で尽きております。ご興味がある方はご一読ください。)
 なお、この区画は、直江兼次の住居跡でもあったそうなので、NHKの大河ドラマの放映開始を承けてか、説明の看板が、新たに追加されていました。(兵頭編訳PHP版『[新訳]名将言行録』にも、もちろん兼次は採録されていますので、物好きな人は、お確かめください。)
 県立博物館は、やはり穴場でした。風船爆弾の一部分の実物大展示(和紙製気球下半分)がありました。レプリカなのかと思って説明を読んだら、モノホンですわ。
 しかもこれ、陸軍が勿来町から放球した直径10mのレギュラーサイズの「ふ号」じゃない。海軍が潜水艦から放球するためにつくらせた直径2.5mの小型の気球。激レアです。
 これについては『呉羽化学五十年史』に記載があるようです。
 呉羽化学工業の錦工場(相模海軍工廠支配下の錦作業所とされていた)で、美濃紙にポリビニルアルコールを吹きつけた、と。
 陸軍のようにコンニャクじゃなかったのですね。たしかに、表面はテラテラに見えます。
 終戦時に工場内に廃棄されていたものを、いわき市の応召者が持ち帰っており、それが、博物館に資料提供されているということです。(なんでこんなものを自宅で保存していたのか、それが知りたいです。耐水性のシートとして役立てていたのでしょうか?)
 この博物館は、ストロボなしなら館内撮影もOKなのに、デジカメを持参しなかったのが無念でした(ちなみに兵頭は携帯を持ってません)。展示は8月21日までだそうです。マニアはデジカメを持って急げ!
 翌日は、都内の練馬のJSEEO事務局に初めて顔を出しました。な~んだ、東長崎の隣じゃないですか。あとで加藤健二郎さんにも挨拶をせねばと思いました。
 ここで第一回事務局会議を開きました。まあ、全部で3人ですけどね。
 会計報告も受け、実態を掌握しました。予想より悪くもなく、良くもないです。これから1年が勝負になるでしょう。
 ほんらいならHP上で議決事項の諸々の報告をしたかったところですけれども、HPが死んでいる状態ですので、やむを得ず、こっちで書くこととします。
 じつはHPはもう完成品ができていました。拝見しましたが、携帯での読み込みにも配慮されており、満足できるものでした。事務局では7月下旬に、それを今の死んでいる画面ととっかえるそうです。なぜ27日からでもすぐに新HPにしてしまわないのかは聞き忘れました。人手不足なのであろうと思います。わたしは、ことHPの運営に関してはノンビリしたやり方はまったく我慢できないので、助っ人を公募すれば良いと思うのですけれども、担がれ御輿の立場としましては、さいごは事務局の方針に合わせるしかありません。なにしろ事務局のお2人のこれまでの献身とご苦労は並大抵じゃありませんからね。都内で、無名の団体の「事務所」の名義で賃貸物件を借りたり金融機関の口座を開設するのがどれほど困難か、スモールビジネスに詳しい方ならば、よくご承知でしょう。(個人名で借りて事務所として使えば簡単でしょうけれども、あとで確実に反対勢力から攻撃材料にされるのがオチです。)
 一点だけ、「みなさまへのおしらせ」を事務局に於いて毎日書き加えるよう、わたしの方から要請しておきました。いつ見ても同じ画面なんて、支持者の皆様に対して印象が悪すぎますからね。まさに死んでいる状態です。一回UPしたらそのまんまほったらかしというPRのやり方で8月29日に300人ホールを有料客で埋められるようなら、誰もインターネット・ビジネスに苦労はせぬはずです。
 その8月29日ですが、若手気鋭の奥山真司さまに質疑応答の司会をお願いすることになったそうです。小生、残念ながらまだ面識はございませんが、2007-6-25配信の「読書余論」で、奥山先生が訳されたミアシャイマー氏著『大国政治の悲劇 米中は必ず衝突する!』を紹介していることに気づきました。こういう方となら、かなり面白い話ができるのではないか。
 そう思いましたので、小生の講演部分は時間を40分に短縮し、残りはすべて質疑応答に充てることと致しました。
 この8月29日の文京区講演までは、JSEEOはわたくし「兵頭二十八」の一枚看板です。
 しかしこの講演の後に、「設立発起人」といいますか、会社重役といいますか、当機構の役員のようになっていただく著名な方々数人に、結集をしていただく予定です。(その具体的な氏名を事前にオープンにすると絶対にこじれるので――これは故・江藤淳から教えられた人事の秘訣でもあります――どなたを候補にしているのかは伏せさせていただきます。ただし、賛同者になっていただいた方々のみには、お話しすることが可能です。)
 そしてその数人の「一座」で、秋以降、頻繁に全国イベント行脚をすることになるでしょう。目的は、サポーターと賛同者を一定数まで増やすことです。
 このサポーター&賛同者の人数が一定数以上になりませんと、事務局そのものを維持不可能です(家賃も月給もすでに発生しています)。
 わたしが一番やりたいと思っていますところの「インターネット・ラジオ放送局」は、サポーター300~500人、および賛同者30~50人が集ったところで、漸く開局できそうな見通しです。
 やはりこれから1ヶ年が、前進か撤退かの分かれ目となるでしょう。
 サポーター&賛同者とは別枠で、小口の寄付も集めます。いずれ事務局から「おしらせ」があるでしょう。この小口カンパの専用の口座の残高を、「ラジオ講師」のギャラの原資に致します。この部分は兵頭の公約だと思ってください。
 おしまいになりましたが、24日までにサポーターならびに賛同者の登録をしてくださった方々の名簿のコピーも事務局より受領しました。意外な方々のお名前をその中に拝見致しまして、わたくし、感動いたしました。この場を借り、あつく御礼を申し上げます。皆様のご厚意を無に致すことのなきよう、全力を傾けます。
 当面は、8月29日(土)の講演会のPRに努めて参る所存です。


またしても宣伝広報戦争の対支敗戦

 F-22取得失敗の責任を、政権転換のゴタゴタのおかげで誰も取らずに済みそうなことは、空幕と内局と財務省と総理大臣にとっての朗報でしょうね。FX選定は交代政権のネクスト防衛相に丸投げしてしまえばいいわけです。
 どうもネクスト防衛大臣は、飛行機などよりも「トマホーク教」の熱烈信者のようですが、それを売ってくれという対米要求は、シナからの議会工作で簡単に潰されるだろう、と、ここで予言しておきましょう。
 わが空自がF-22を取得できなかったのも、「シナはこんなに悪い国。日本はこんなにシナの敵」という対米宣伝を、空幕と内局と総理大臣がしてこなかったせいなのです。
 与党の中に北京シンパや平壌シンパがうじゃうじゃいるんだから、そりゃできませんわな。
 もともとオバマ氏とゲイツ氏は、F-22のライフサイクルコスト、ランニングコストの箆棒さに怒っているようですね。
 某英文サイトにUPIの Arnaud De Borchgrave 氏が、分かりやすい背景事情を説明してくれていました。
 イラクにもアフガニスタンにもパキスタンにも、F-22は1機も出動していない。つまり、対テロ戦の役に立っていない。アメリカ兵の命を救うために、現実に何の役にも立っておらず、他の必要な予算を食い潰しているわけです。
 そして、そんなアメリカ同胞の現地兵が求めているのは、もっとたくさんのMQ-9 リーパー(プレデター改の無人機)である、と。現在、アフガンとパキスタン上空には、リーパーが30機以上、飛んでいるようです。
 プレデター・シリーズも値上がりしていますが、F-22とは比較にならない。だからF-22をやめて無人機関連にもっと回そうという流れですよ。
 2009-7初旬にペンタゴンは認めました。187機あるF-22のうち、2008-10から2009-5のあいだに、そのタッタ55%しか、要求任務の遂行可能な状態ではなかった、と。
 しかもF-22は、飛行1時間あたりのメンテナンスコストがF-15の1.7倍近いという。
 いったい空幕はそんなもんを導入して、わが国の防衛予算の配分比率を、どうしたい気だったんでしょうね? MDを味方にした海自にとられ続けた「失地」を回復しようとしたのでしょうか。そうだとしても、彼らの夢は潰えました。
 おそらく、日本のMD投資はアメリカ本土をシナのICBMから守るために役立つが、日本のF-22調達は、今以上にシナを抑止することにはつながらない、とも、米国の指導層は判断したのでしょう。彼らには既にB-2もあれば、ミニットマンもトライデントもあります。シナがハードウェア面での敵だとは、本心では思っていない。空幕は、それでも巧みな宣伝によって米国指導者層を説得できるチャンスはあったと思いますが、その才能のある幕僚はいなかったようです。
 マック偽憲法を捨てられず、与党内にすらシナの工作員がいる、そんな日本人は、アメリカ軍の対等の同盟者になるどころか、いつF-22から得た秘密技術を国産武器に転用してその日本製武器をシナやら韓国やらどこやらに輸出し始めるかわかったもんじゃない――と見限られてるのでは、宣伝もやりにくいですよね。同情します。イージス艦内にシナ人を案内しようとしてアメリカ大使館から怒られた、という海自の前科もありますしね。
 日本が核武装すれば、こんどはその核技術情報を見境い無く、シナや韓国に与えかねない、と米国指導層は疑っているはずです。堂々と大アジア主義を標榜する者が、民主党だけではなくて、与党の中にもいるんですからね。
 失敗国家(=テロ国家)への核爆弾の拡散防止を至高命題としている現下の米国指導層が、政治思想的に信用できない日本への高度武器技術移転を禁止するのは、当然ですね。
 ゲイツ氏は米国内の技術振興政策としても、F-35を推しているようですね。それはF-22より10年先進的な技術の塊だと Borchgrave 氏は指摘しています。F-16の後継であることは、その際に、関係ないのです。
 また米空軍はUAVの運転者の大量育成を始めているそうです。F-22をやめて、もっと無人機を増やす。それも、ソフトウェアの進歩で、まもなく一人で複数のUAVをオペレートできるようにもなります。空中戦ができるようになるまでに、あと10年だという。もう、日本はトラック100周遅れちゃっているんじゃないですか?
 米国のミサイル防衛庁も、リーパーを大量採用しそうです。DSPやSBISでは雲の下のSSMの発射赤外線探知はできない。それができるのは数千mの中高度を長時間飛んでいられるプレデター級の無人機だというのが彼らの結論です。
 わが防衛省と自民党防衛族は、アジア・モンスーン地帯は、中東のような沙漠地帯とは異なり、曇っている日が多いのだ、という現実を、忘れていますね。(以前、この早期監視警報任務のためにグローバルホーク級が役立てられるのではないか、と書きましたが、間違っていました。グロホは雲上飛行機だから、DSPと同じデメリットがあるわけです。)
 インドは来年あたりから、国産(旧ソ連原潜の模倣)の核ミサイル発射型原潜を5隻揃えて、シナを核抑止するようですね。一番艦はすでに公試運転をしています。
 失敗国家のパキスタンがタリバンに核爆弾を渡さぬよう、米軍が派兵されるというときにも、インド軍の協力を求めることになるでしょう。アメリカから見て、これから頼りになる国は、はっきりしてきました。
 なお、22日午前から23日夕方まで、急ぎのご連絡のある方は、JSEEO事務局へお願いします。この間、函館を留守にしております。


韓国のロケット発射またまたまたまたまた延期

 ジェット・プロパルジョン研究所の Space Calendar というサイトを点検したら、いつの間にか、KSLV-1 のロンチが「7月30日」ではなく、「Sep ??」に変わっていた。1週間くらい前には7-30となっていたはずだが……。
 とにかく、これで北鮮がトランキライズされてしまった理由の一つが分かった。韓国がナロ島から半国産の宇宙ロケットを打ち上げないので、北鮮も黄海側発射場から7月中に「なんちゃって人工衛星」を発射しなくとも面子が保たれるわけだ。
 しかし9月初旬にはまた面子競争が始まる。(北鮮は韓国のロンチウィンドーの前に花火イベントをもってこようとする。)
 つまり日本の総選挙の直後から、「試合再開」というわけだ。
 日本の政体崩壊が確定して「対艦弾道弾」のメがなくなるまで、北鮮を黙らせておこうと、韓国にブースターを供給しているロシアが、うまくとりはからったのだろうか?


籏谷先生

 いつもお気遣いありがとうございます。
 現在函館市には冷雨が降っており、室内でも長袖を着ていないと寒いありさまで、もし今日あたり大雪山系に入山している人がいたら、かなりしんどいことになっているだろうと想像されます。
 内地は猛暑かと拝察しますが、皆様御自愛御専一に願い上げます。
 ご一門の方々にもくれぐれも宜しくお伝え下さいまし。


昔の名前でNF文庫

 光人社の「NF」って何だろうと思っていたら、「ノンフィクション」の略だったんですね。皆さんも覚えましょう。
 あの怪著『たんたんたたた――機関銃と近代日本』が、タイトルを変更せずに、内容をパワーアップさせて、文庫化されます。
 1998-1のハードカバー版(四谷ラウンド)では図版ゼロでしたが、こんどは光人社の編集部が写真をつけてくれました。
 おそらく7月下旬の給料日前後には全国の書店に出ることでしょう。
 ハードカバーの古本プレミアムで儲けようと思っていた人、残念でした。しかし古書には、著者のめずらしいカラー肖像や、英文の目次、Yasohachi hyodo というどこの誰だか分からない英文表記などもあるので、レア価値は残るでしょう。
 ハードカバーを出したときにお手紙を下さった群馬の長浜康隆さん、まだインターネットは繋いで無いですか?(わたしは「長年の兵頭ファンでありながらデジタルデバイドにハマっている人を2010年以前に救済するプロジェクトチーム」を編成しようかと、真剣に考えてます。)
 小倉造兵廠のインサイダーであった松川恒彦様、今もお元気であられることを祈っております。
 いや~、11年なんて、アッという間ですね。
 四谷ラウンドを畳まれる際に、わたしの著作の再刊について予め許諾を与えてくださった田中清行社長。あらためて御礼を申し上げ度い。この本は四谷ラウンドから出した記念すべき1冊目でした。しかし、岩国市長選のときになんで声を掛けてくれなかったのかな~。水臭い。わたしは「シナと戦う可能性がなくなった海兵隊など日本から即刻叩き出せ。一文もやるな」派ですよ。
 小松直之さん。あなたの『イッテイ』も文庫化されるかどうかは、このNF版『たんたんたたた』の売れ行きに懸かっています。あらゆる手段で宣伝してください。
 ついでですが鍛治町から引っ越されたT・マキコさま、イラストの仕事があるのでご連絡くださいますと幸いです。わたしのメルアドは在米の御令兄がご承知です。
 会津の米山先生。この新刊は小生が直接拝趨の上、献呈いたします。1週間お待ち下さい。
 八戸の佐々木さん。何かイベントないですか? 参加しますよ。もし函館においでになるなら、わたしがツアコンをやります。(すいません。見本の数が少ないので、今回の文庫も送れません。)
 札幌の M. T. さま。講演会へのご参加、有り難う存じました。じつは8月中に札幌に行く用事があるので、もし時間の繰り合わせが可能ならば、駅の周辺でご挨拶をしたいです。短時間で恐縮なんですが……。ご多用ということであれば、この件はどうぞ御放慮ください。


マック偽憲法と戦う気はあるのか

 たとい憲法不文でも「国防の義務」は「納税の義務」と同様に全国民にあるものだ、というのが近代憲法と古代いらいの民主主義政体のなりたちからの推定だが、1946マック偽憲法は、真っ向からこれを否定しているとしか読めない構成になっている。つまりそれは近代憲法ですらなく、偽民主主義の作文だ。
 戦後いったんこのような偽憲法が普及してしまった以上は、脱・戦後の改憲作業がなされる際に「国防の義務」が明文化される必要が、恥ずかしいことだが、あるだろう。またもちろんその必要を、改憲の前から全国民に理解させる言論運動が必要だ。
 改憲を党是としていたはずの自民党内に最近になって愈愈「国防の義務」を説く者が稀なのはじつに憤慨に堪えない。要するに民主主義について彼らも基本根底の理解はしていないのだろう。一から物事を考えることがないのだろう。
 「国防の義務」が憲法で確認されておれば、外患誘致や内乱などに関連する刑法を「国家叛逆罪」の概念でとらえなおすことが無理なくできる。しかし偽憲法下では、あらゆる反国益行為が、偽憲法そのものを根拠として、正当化され得る。とんでもないことになっているのだ。
 よって今のマック偽憲法を黙過したまま、外国人にみだりに日本国籍を与えたりすれば、その「新日本人」が国家破壊工作に専従することもいとも容易に可能。それは共同体としての日本社会の終焉を加速させるかもしれない。
 反対に、国民の「国防の義務」が憲法からして明白に示されていれば、新日本人だろうと旧日本人だろうと、売国活動が見逃されることはない。
 帰化を拒否する長期居留民は、国防の義務が無い以上、納税の義務を負いつつも、日本人と違った権利しか与えられないのは当然である。
 これに対して帰化を選んだ者は、日本人とまったく等しい義務を負い、売国活動は、生まれながらの日本人以上に社会から厳しくチェックされるのが自然である。
 これが近代国家だ。日本はマック偽憲法を奉戴する限りは、他から一目置かれるような近代国家ではない。
 公人が公的な約束を破って恥じず、日本社会の破壊を目的とする「工作員」が、国会や政党内や大手マスコミ内や教育界にこれほど堂々と棲息できているような国は、日本だけだ。
 1997年に設立された「新しい歴史教科書をつくる会」は、マック偽憲法の売国許容主義精神風土に対抗するNGO&NPOとして、画期的な成功をおさめた。
 その成功因のひとつは、シンクタンクを気取って文部省の役人の向こうを張り、総合文教政策を提言するなどというマネをせずに、マル歴学者集団に反発する、もうひとつの教科書執筆者グループとして名乗りを上げたことにあった。
 ほとんどの学者・言論人は「一人一家」を成す。それが多数人糾合されたのは、〈マル歴はいかがわしいし有害だ〉と理性ある個人を悟らしめる、1970年代からの複数の論筆家による前駆言説が浸透普及していたおかげだろう。
 シナ・朝鮮その他の反近代勢力発の間接侵略を拒止せんとするJSEEOの言論運動は、マル歴と違ってまだ誰もあきらかに敵の把握すらできていない脅威を、民主主義の初歩から併せて人々に得心させるところから始めねばならない。路は至って遠いのであり、焦っても仕方がない。この運動が日本の亡びに間に合わぬとしたら、それは国家の命が窮まったのでありしょうがない。
 JSEEOの事務局は、かつて「つくる会」に関わっていた人たちだ。インサイダーでもあったかれらいわく、「つくる会」の内紛は、そのHPの「掲示版」に一因があった、と。それでわがJSEEOのHPには、掲示板は設けないことになった。
 〈匿名を許さず、且つ、一日のうちに書き込める文字量を寄付金額に比例させたなら、それが寄付の額を増やすモチベーションともなり、良いのではないか〉とわたしは提案したのだが、かれらは掲示板そのものに絶対反対のようだ。過去によほど酷い経験をしているのだな、と想像するばかりである。
 ところで寄附金額の最低が一口1万円、しかも毎年、というのは、敷居が高すぎやしないだろうか? もっと小額の、たとえば1000円とかそれ未満の額の寄附を一回ポッキリでも広く気易く受け付けるようにしないと、生計形態が甚だ流動化している今日の日本において、怒れる意識的な零細自由業民に基盤を置く大衆ムーヴメントとはなり得ないのではないかと、わたしはおそれるのである。


JSEEOは「“国家叛逆罪”新法の制定」を当面の具体的目標に掲げる

 共同通信電によれば東シナ海の係争中のガス田に、また掟破りのシナ船が出て来たという。
 これは自民党案の「対艦弾道弾」にビビった北京が、7-4~7-10の北鮮を抑えたはいいが、そのままでは、あまりに格好が悪く、くやしいものだから、北鮮からの対米&対韓サイバー攻撃が一段落した頃合いを見計らって、独自の対日示威に出たものであろう。
 あいかわらず面子意識過剰なチンピラヤクザの一人相撲だが、狙いはいいところを衝いている。というのも件の係争油田をめぐっては、与党内に有力な「売国派」もいるからだ。自民党「防衛族」の分裂すら引き起こせるだろう。
 ここで、自民党内の「対艦弾道弾」推進派は、踏ん張ってみせて欲しい。――〈人件費を中心に予算が減らされているので、常に海自の艦艇が海保をバックアップできるとは限りません。しかし対艦弾道弾さえあれば、まんいち巡視船が撃沈されたばあいに、即座に仇を討つことができます〉というレトリックを広宣してはどうか。
 何も陸上から発射しなくても、1960年代初期に英国が持とうとした「スカイボルト」みたいに、航空機から発射してそのあとに弾道飛翔をさせるものだって考えられるだろう。
 彼らがここで踏ん張ってみせることにより、9月の自民党の下野後に「真正保守再編」がなされる際の、コア・メンバーも浮かび上がる。心ある有権者は、それをひとえに期待している。有権者は、うんざりしているぞ。
 海保と海自も、北京に跪拝する民主党政権下で予算をバッサリ削られたくなければ、いまこそ目に見える活躍に突き進むべきときだろう。
 ところでシナ発の脅威について「放送形式」みたいな見方をする日本人がオレ一人しかいないのだとしたら、いまさら「シンクタンク」など新しくつくってみたって日本をどうにもできんということはわかりそうなものだろう。わたしはJSEEOをシンクタンクにする気など毛頭ありません。
 日本には独占的に大量の情報を収集できる国の官衙がある。いかなる個人も役所以上の情報を持ち得ない。そして役所の良い人材は決して若いうちは民間には出てこない(米国式の「回転ドア」人事文化がないため)し、役人が民間人に肝腎な情報を開示することもない(米国式の秘密保全文化がないため)。。
 だから日本では「役所=シンクタンク」なのであり、米国式シンクタンクが成り立つ余地はないのだ。統計データを広範にあつめてマンパワーを投入して分析し、法案や予算案や利権スキームにまでまとめてみせる手際のよさは、役所の独壇場である。議員たちも、役所の持っている情報を、役人流の手際の良いサマリーとして嚥下したがる。秘密情報にアクセスできない在野人の、とりとめもなく聞こえる、一文にもならぬ最先端の想像なんか聴いているヒマはないんだよな、と、議員たちは思っているだろう。
 在野の個人には、官庁や大手マスコミのような集団マンパワーを必要としない分析と推測のみが可能である。そして、議員ではなく、意識的大衆に対して、わずかに感作をおよぼすことだけが、かろうじて可能である。しかしそれは、省益や予算や人事や議員の私欲やマック偽憲法やマルクスレーニン主義やPTAや米国の顔色などをすべて無視できるがゆえに、役所や大学発のリポート以上に公正であったり、真相を穿っている場合があるのだ。宮崎正弘氏のメルマガ、「週刊オブイェークト」氏のブログ、「中韓を知りすぎた男」氏のブログ……etc. いずれも(個人的に面識がなくて残念だが)、優れた識見の持ち主が、公開情報にアクセスして、皆おのれの信ずる誠実さを準縄にして、ユニークな分析と警報を、公益のためにインターネット上で発信しているのだ。日本では、こうしたウェブサイトが、望むことのできる最良のシンクタンクの役割を既に果たしている。
 こうした各フィールドのユニークな才人たちを無理矢理にひとまとめにくっつけてみたって、アウトプットの質はなんら向上はしないはずである。
 JSEEOの仕事とは、こうしたユニークな「個人」たちをもっと増殖させることでなくてはならぬと、わたしは思っている。これは俗にわかりやすく華やかな「ネットワーキング」ですらもないのだ。それ以前のもっと地道な後援活動なのだ。もちろん兵頭も一「裏方」になるのである。
 迂遠なようでも、その方向の先に、シナ発の間接侵略工作に対して、かんたんにはしてやられない知力と体力を、日本の国家共同体に扶植する道が、続いているに違いない。


シナにこんなに効くのは初めてか? 発見された仮想兵器「TAIKOH2010」

 09-7-4のサイバー・アタックは、韓国と米国だけを相手にして、日本を回避した。奇妙でしたが、だんだんに真相の見当がついてきました。北京が北鮮に、「いま日本人を刺激したらアカンど! 総選挙後まで待つのや」と必死の形相で指導してるさいちゅうなのだ。
 シナの新華網が、わざわざ北鮮の『労働新聞』7-7記事を紹介して、北鮮は日本を軍事的に威嚇していませんニダ、などという泣き言を紹介したという。オイ、その記事を無理矢理に書かせたのは、そもそも北京だろがよ。
 プロボクサーなら、敵のボディブローが利いても決して顔をしかめたりしないように訓練しています。こちらがダメージを受けたことが気取られれば、こちらと同様に疲れているはずの敵選手を、急に何倍も元気付けてしまいます。それは外交の上の不利になります。しかし今回のシナと北鮮は、うめき声を漏らした。
 アレが、面白いほどに効いているのでしょう。これほど効くのならば、日本は毎年年末に「大綱見直し」をやることと決め、年がら年じゅう、衆院解散総選挙の噂とともに、騒ぐべきではないでしょうか。また、今度の解散は、後に延ばせば延ばすほど、わが国民の安全を増してくれそうなことが、はっきりしたと思います。
 アレとは、「2010~2014大綱」に自民党(そのじつ内局と三菱重工。あまり調子づくなよというのでF-2潰しのChina-lover財務省が今回摘発させた?)が大射程の「対艦弾道弾」保有の案をダメモトで突っ込むと前宣伝したことに他なりません。マスゴミはこれをスルーしたけれども、北京は小便をチビった。「案」はタダです。もっと論議しましょう。
 不肖兵頭も手伝おうと思います。百尺弾道弾一歩を進め、「対渤海湾潜水艦用の陸上発射型長距離弾道ミサイル」を日本独自に開発することを、大真面目で検討しませんか。
 ……えっ? そんなの「非現実的」ですと?
 それは武器オタクが陥りやすい自閉症です。
 敵国を政治的に動かすことのできた兵器(案)が、一国にとって「最も良い兵器(案)」なのであり、それは〈コンバット・プルーヴンなリアルな性能〉や「フィージビリティ」「アフォーダビリティ」とは、あんまり関係がないことが多いのです。(たとえばイスラエルの巡航ミサイル搭載潜水艦ですね。まさに対イランの政治兵器でしょう。シルクワームでは撃攘できんというところが唯一の証明済みメリットです。)
 日本は、MDでは、あんなにカネをかけ、デモ実験まで繰り返して、それでも、少しもシナを凹ますことはできませんでした。ところがどうです。かたや「2010大綱への自民党希望案」は、案だけなのに、早くもシナに有効打を届かせているわけです。現実外交の上に効きまくりなんですから、これをもっともっと推進して行くのが、「安全・安価・有利」な政治です。
 軍事は政治の隷属要素にすぎません。マクナマラ氏はベトナムを経験してさらに老人になってからやっとそこに気づいた(それでフォッグ・オブ・ウォーなんていうクラウゼヴィッツ用語を使ってみせたのです。ある意味まじめ)。歴史に学ぶ若い日本の学徒は、もっと早く弁えましょう。それがJSEEOの願いです。
 もちろん、09-7-8の浜田防衛相による、〈与那国島に陸自配備検討〉発言や、これから始まる国会での「貨物検査特措法案」審議も、今後は効き目を加重させることでしょう。ただしこれらは6-22以前には効いていなかった。
 それから、同じ自民党案の中に混ぜられていた「10年以上先の和製DSP」案は、やはり、毛ほども効いとらんでしょう。日本本土から渤海湾まで見張れるOTH案の方が千倍効くと思っているので、わたしはこの提案をし続けようと思います。(誰か反論して盛り上げてくれないでしょうか?)
 効き目の兆候は最初に、6-22にあらわれました。
 拙宅にタダで届けられてくる『海上保安庁新聞』のH21-6-25日号によれば、北鮮は6-22の午後5時48分より前に、海保の海洋情報部に、電子メールで、次のような通報をしてきたそうです。いわく、北鮮は6-25から7-10までの毎日午前8時から午後8時までの間、元山北東の日本海、長さ約450km、幅最大110kmで軍事射撃訓練を実施する、と。
 いきなり弱気じゃないですか。
 ノドンを最初に宣伝した1993-5-29~30には、北鮮は500km+の海上にブイを浮かべ、そこにスカッドとノドンを落としてみせました。(多忙のためソースをたぐれないんですけど、なぜかこのときの飛翔距離を550kmと宣伝した連中がいるんですよ。わたしはそれが韓国ソースだと疑っています。彼らはノドンが北九州飛行基地妨害専用の兵器であることを認めるのが嫌なのか、さもなくば、北の政治宣伝の片棒をかつぎたいとの工作使命感から、800km以上の飛翔は未実証であるノドンの性能を誇張し、ついには、いつのまにかそれは1300kmもの射距離をもち、東京に届くことになってしまっています。これを疑いもせずに事実のように報道している日本の言論はホント危ういですよ。防衛省は脅威がデカいほど予算が取りやすいので偽情報を信じたふりをする姿勢には同情をするとしても、マスコミはいったい何考えてんだ?)
 今回は1993年より50km以上も短かくした。全弾が、予告海域内に落下したそうです。(しかるにまたしても500km飛んだというマスゴミ速報を散見しました。オマエら、いったい誰の味方をしたいんだよ?)
 〈命中率が上がった〉という奇妙な評論も耳にしました。短い距離に落とせば落とすほど撒布界がせばまってくるのは大砲の砲弾の物理法則に過ぎません。1993発射でも、スカッドとノドンは全弾が浮標の近くに落ちたのです。何も変わっていない。進歩などしていないのです。
 そしてヤケッパチのような7-4のサイバー・アタックでしたけれども、これも日本をまるまる避けた。シナの指導が「ビシリ」と効いています。それは、自民党の「大綱」論議が、北京を強く揺さぶったからでしょう。(財務相が潰す前のF-2やM-Vのようにね。)
 だったら、もっと「対艦弾道弾」を精力的、具体的に劇論しましょう。
 黄海は平均深度44mです。渤海湾内は21mです。
 しょせん張子の虎である空母を狙うなどという冴えないゴールではなくて、かつてどの国も発想したことすらないであろう、「対潜水艦用の通常弾頭の中距離弾道ミサイル」を研究&開発しましょう。シナ沿岸の浅海面なら、宇宙から落下するキネティックで充分にキルできる――ように思わせることが可能なのです。シナ潜は、このキネティック弾頭で日本が全滅させる。東アジアの平和に対して、なんという大きな風呂敷、もとい、貢献でしょうか。
 もちろん日本は真珠湾攻撃のような卑怯卑劣な攻撃はしません。シナ人の手先が1名かそこら、尖閣に上陸し、不法な領有企図を露わにするとかの見境いの無い侵略をわが国が受けたときに、正当な自衛の手段としてこれを必要なだけ発射し、世界の平和のために膺懲するのです――という議論が盛り上がるかもしれませんので成り行きが注目されます。
 そんな弾道弾ができるころには、自律ホーミング弾頭をクラスターにして、複数隻のボロ船を各1発で船底までキネティックで貫徹してやれる短縮射程の対舟艇バージョンもつくれるでしょう。これで沖縄もバッチリ防衛できます。(まあ、連中が沖縄に正面きって着上するなんてありえないんですけどね。しかし今論議しているのは、北京の外交を現実に動かしてしまえる政治的兵器なのですから、可能性に備えるということにしとけばOK。)
 それにしても、2009-7-6に wendell minnick 氏が寄稿した「U.S. Targets North Korea-Iran Industry Ties」という記事には驚かされました。
 ペルシャ湾のイラン沖15kmのキシュ島(イランの自由貿易特区)にある「香港電機」という謎の会社が、2007から北鮮兵器の輸出仲介をやっていた。米国財務省はその資産を6月末に凍結した、というのです。
 それでも7-4に対米のサイバー・アタックをやらかしてるんだから、この措置は北京にも北鮮にも効いてないわけですよ。ますます、対艦弾道弾、偉すぎ。
 香港とシンガポールに北鮮系のあやしいフロント企業がいっぱい、というのには驚きませんが、タイにまで北鮮企業がたくさんあって、東南アジアで広くウランを探しているというのは意外でした。マジなんだねぇ。
 北鮮大使館がない国でも、商取引は成り立つのだそうで、たとえば台北で、零下70℃が可能な冷凍庫が、大量破壊兵器開発の用途で調達された疑いがある。その台湾の会社「Royal Team」は米国から圧力を受け、社長はいま北京に住んでいる、と記事には書いてあります。
 台中にも怪しい企業があったり、シナの工作機械商社が対北鮮輸出に濃密関与しているそうです。渤海湾に密輸船がシャトリングしてるわけで、将来はそこで臨検することになるんでしょうか?
 北鮮はじつのところ北京のパペットにすぎない、台湾は日本の味方などではない、というかねてからのわたしの疑いは、この記事を読んで、ますます強まるばかりです。
 余談ですが、日本は北鮮からの麻薬密輸すら撲滅できないのに、どうしてポルノを水際で阻止できるのか、よく考えてみることです。
 もうひとつ感心した記事は『voice』8月号のウイグルの記事ですよ。まるで騒動を予見していたみたいだ。しかしシナ政府は、このパンチが効いたという顔は、さすがに見せていません。
 また大綱アイテムに話を戻しますと、エリント/シギント衛星はDSP以上に必要です。しかも、安く、早くできるものです。
 1972にソ連の暗号がNSAにブレークされてSALT交渉の妥協線がアメリカに筒抜けになったことあります。1973-3以降、アメリカは、フェレット(小型の電波収集衛星)でマイクロ電話や実験ミサイルのテレメートリーを傍受できるようになりましたが、そのことにソ連は1977まで気付くことなく、特に弾道弾のテレメートリーをとられまくりました。気付いてからは、信号を「無限特乱」化したり、記録テープを物理的に降下させるようにしたそうですが、これをできるだけ長く気づかせないようにディスインフォメーションを流していた工作のひとつが、先に触れた「超能力」ヨタ話だろうとわたしは思っています。
 わたしたちがボヤボヤしている間に、エージェントスミス(エージェントつくり職人)は霞が関の中枢まで浸透してきました。「大綱2010」が、政治主導による反撃の一転機になって欲しいものです。


都内での8月講演会のお知らせ

 突然ですが、このたび衆議院選挙に立候補する気なんてもちろんありません。
 詳しくはJSEEOのホームページ
 http://www.jseeo.com
  をご覧下さい。
 日時は、2009年8月29日(土曜日)、14時30分~16時30分です。
 場所は、「文京シビックホール」2階の「小ホール」です。
 演題は未定。まあ、いまさら大衆に何かを訴えるというよりは、活動主旨に内心で賛同してくださっている潜在同志の方々との結束を確認する契機となるんでしょう。わたしの当面の問題意識は、このブログにも書いてきましたし、月刊『正論』8月号でも説明をしました。
 有料です。参加費2000円がかかります。
 「日本安全保障倫理啓発機構」設立準備室へのお問い合わせは、Eメール inquiry@jseeo.com でどうぞ。
 このメルアドがサイバーアタックで不達となった場合には、FAX: 03-3557-1651 をお役立て下さい。
 ※ちなみに「サイバー・アタック」という輸入カタカナ新語を、月刊『諸君!』1997年6月号の兵頭記事以前に日本の雑誌で紹介した人はいるでしょうか? あれから12年、ようやくこの語は身近になってきましたね。