米田富彦さま

 暑中お見舞い申し上げます。
 柔術国家の創建を目指し、いよいよ精進して参る所存です。
松尾学さま
 ご登録辱う存じました。
 皆さまからの力強いご支援に、勇気付けられております。 
 時節柄、皆様どうぞ御自愛くださいまし。


高校を全廃すれば少子化は止まる

 人類の歴史が目指す「絶対善」があるとしたら、それは、個人の自由が増進することです。
 己れの自由のみならず、他者の自由まで尊重できるように進化したすぐれた国民は、無謀にセックスしませんし、無謀に結婚しませんし、無謀に子供をつくりません。
 なぜなら、無謀な紐帯は不幸の再生産機構でしかないと、彼は、見聞によって承知しているからです。
 女や子供の将来の幸福を願えばこそ、やさしい貧乏人の若い男は、慎重になっているのです。
 それは「自他の自由の増進」と同義である以上、道徳的にまったく正しく、世界の後進国人の無慚なありさまと見比べて、大いに誇るべきことのはずです。
 これをまず褒められないような没道徳的な政府や政党ならば、亡んでしまった方が人類の為でしょう。
 かりにもし、そのような貧乏人の男子が、3億円の宝くじに当たれば、彼は、まるで金持ち一家の生まれながらの坊ちゃんのように、他者に対して強気になることができ、濫りにセックスを求め、結婚を求め、子供をつくってもかまわんと思うようになるでしょう。それは、財産は己れの一家の将来の自由を約束すると一般に考えられているからです。金銭によって責任が取れる以上、彼の乱脈な私生活は、他者の自由を甚だしく侵害しないでしょう。
 今、2000万円あれば、1人の嬰児を出産させ成人させることができるといいます。しかし2000万円ポッキリでは、その子供が幸福になるかどうかまでは予断ができません。ではトータルの養育経費として、はたして親は、幾ら用意できる見込みが立てば、わが子を確実に幸せにできると思えるのか?
 これが、分からないのです。
 分からないからこそ、人々は、結婚の前から、より安定した、より高収入が必要だと計算し、結婚後も、〈3人も4人も子供を増やすべきではない〉と自制するのです。
 そうした判断の基準は、すべて、他者の自由を尊重する気持ちに出ているのです。これがじつに、一国の庶民の全般的な風潮なのです。
 なんという美徳を日本国民は、獲得したのでしょうか。全世界の諸国民の中で、道徳的に最も急激に進化を遂げつつあるのは、日本国民ではないでしょうか。
 諸政党の中にまずこの国民道徳を褒めるところが一つもないということは、いまや、すべての政党が例外なく庶民よりも道徳的に劣化したという、まぎれもない証拠です。既成政党はチンカスです。
 断言します。未来社会では、着る物、乗り物、住む家、すべてが「ロボット化」されるでしょう。
 介護も、医療も、単純労働も、農林漁業も、兵役も、ロボットがアシストすることで「人手不足」などは完全に解決されているでしょう。
 これを予見する政党も役所も一つもないのですから、いかさま日本は危機的状況に違いありません。道徳的にはこんなに高いところまで来たのに、国民の安全を守るために必要な人材が、みるかげもなく払底し去っているのです。
 危うい!
 他者の自由を何とも思わない外国人たちも、ロボットを買って軍隊を強化してくるでしょう。それまでに、日本に、ロボット化社会に適応できる有能な人材が育っていないと、日本国は、外国軍のロボットのために支配されてしまうかもしれないでしょう。
 高い道徳を獲得したわたしたち日本国民の未来社会の安全のためには、今の不自由な教育制度では、必要な人材など供給不能です。現今の学制は、現今の役所や政党と同様、袋小路に迷入しました。
 日本の大学に入学するための資格要項から、年齢に関するものなどは一切なくし、それによって「制度としての高校」を中抜きしてしまうことを、わたしはもう何年も前から提案しています。改めて、ここでまた提案しましょう。
 これは、各党が発表する、子育てバラマキ政策などよりも、格段に健全です。なにより、財源が無用です。
 秀でたポテンシャルある中学生は、ミドルティーンにして、大学において能力を全開させられ、ただちに先端的な生産や研究を推進することになります。もちろん、彼は20歳以前にして高給取りにもなるでしょう。
 親がわが子のために負担すべき養育経費は、従来より数百万円も少なくなる可能性があるのです。それは、国が若い夫婦に数百万円をプレゼントするのと同じことでしょう。
 江戸時代の藩校や私塾は、年齢が規定に達していない天才的少年の入校を拒んだりしませんでした。現在の学制は、むしろ江戸時代よりも不自由です。官僚的統制主義に由来するこの戦後学制の不自由さこそが、戦後のわが国を、政治的に三流の人材しか輩出せぬ国に変えてしまったのです。革めましょう。
 制度としての高校をなくしてしまうという〈学制の中抜き〉によって、中学校でも、大学でも、学問の場としての活気は倍増するでしょう。なぜなら、もはや不自由ではなくなるからです。
 今の20歳以下の日本人の人生が如何に不自由なのか、日本人自身が分かっていません。それを指摘できる政党も一つもないという情けなさ……。
 そして、それをブログでならこうして指摘ができるという、有り難さ……。


面子競争、おそるべし

 韓国政府が8-1に早業で、8-11午後5時台の宇宙ロケット打ち上げを決定しました。(中共の軍事新聞をネットで読んでいて気づきました。なんで東京新聞のウェブ版は韓国ネタの速報をせんのかな~)
 この国産衛星(といってもアメリカ製ベースです。ブースターはロシア製)の打ち上げは、7月下旬の発表では、「9月に延期」とされていたものです。
 7-31発売の雑誌『正論』9月号にも書いておきましたように、平壌はいま、北京から、「日本の総選挙が済んで民主党が大勝するまで、派手な活動はするなよ」と指導をされている最中です。韓国はそのチャンスに乗じようとしている。敵の手が縛られていると知り、ここぞとばかりに勢いづいているわけです。
 8-11というタイミングですと、かりに北鮮がどんなにやる気になったとしても、それに先んじて長距離ミサイルを準備して発射することは、もはや物理的に不可能でしょう。たぶん、これは韓国人が、北鮮に対する宣伝戦上の「奇襲完勝」を狙ったものです。
 09-8-3の『東亜日報』によれば、韓国は射程700kmの国産SSMの保有を認めろとアメリカに迫るつもりでもあるらしい。これは11日打ち上げの「二段目」を念頭した発言でしょう。
 700kmだと、半島南部から発射して名古屋までが射程内ですね(上海も打撃可能。東京と北京には届かず)。
 純国産ならばATACMSやトマホークのようにアメリカの「二重キー」もかけられません。
 アメリカは、なんとか韓国軍を宥めようと、中共新聞云うところのF-15「攻撃鷹」(撃は簡体字)を12機、半島に増派しました。
 しかしアメリカも中規模国家のプライドが分かってないですね。韓国は絶対にSSMを持ちますよ。イランも、完全民主化されたとしても、いや、民意が国策に反映されるようになればますます確固たる意志に基づいて、核武装を加速させ、対米攻撃手段であるICBMを持ちますよ。ある程度国民の教育レベルが上がれば、そうなるのは当然なのです(つまりカダフィ大佐などは前例たり得ない)。教育ある国民の態度に関しては戦後のヘタレな日本人だけが現代史の例外的存在なのだということに、アメリカ人は早く気づくべきですね。まあ、気づかぬまま、反米連合との不正規核戦争時代に突入するのでしょう……。やきもきしているイスラエルが、先に単独行動を起こしてしまうでしょう。
 これでいよいよ日本も弾道弾を持つしかないですね。
 ミサイル戦争が怖いというお金持ちの老人は、北海道東部に移住した方が良いでしょう。
 北の親分も死にそうだというし、韓国人は嵩にかかって元気です。
 北の反応を大いに注目したいと思います。


無人化したT-4にAESAと上昇補助ロケットつけて下地島に配備すれば?

 いままで「アメリカから巡航ミサイルを買えば良い」と言っていた人は、このたびのF-22スキャンダルを見てどう思うのか、是非、コメントを聞きたいものだ。
 〔シナや韓国が厭がるので/いろいろと信用ができないので〕日本には高性能の制空戦闘機を売れない――というアメリカが、日本に高性能の戦略ミサイルなんか売るわけが、ますますあるわけもなかろう。
 思うに米国は、スペインが宗主国であったラテンアメリカの経営のため、および、イベリア半島上空の通航権保持のために、マドリードの歓心をつなぎとめておく必要があるから、実質アメリカからの「持ち出し」の支援スキームで、イージス艦と巡航ミサイルとをセットで持たせているけれども、そこに厳重な「二重キー」を施錠していることは言うまでもないだろう。
 モスクワから最も遠いNATO加盟国の巡航ミサイルが「脅威だ」と騒ぐシナや朝鮮のような存在が西半球には皆無だ。ロシアには、それが対テロ用だとの説明がなされていて、ロシアも納得をしているのだろう(納得できなければ、彼らは長射程巡航ミサイルをラ米政権に売るなどして厭がらせをし返すことができる。ロシアはそれをしていない)。
 スペインと比べて日本は、米支紛争が起きたときの米軍機の日本領空通航を拒否する権能が最初から政府に無いという「属国」状態。米国に対してスペインのように有利な取り引きを迫るための材料を、一方的に手離してしまっているのだ。
 一般に、幕僚は司令官に対して即座に実施可能な複数の策案を提示し、司令官(自衛隊全体に対しては防衛大臣および内閣総理大臣)は、そのうちの一案を選ぶことを決心すればよいはずだ。
 ところが空幕と内局は、F-22に代わるセカンド・ベストの選択準備作業を実質何もしていなかった。おそらく「F-22でなければ日本の防空・防衛はできません」と主張したのだろう。選択肢のない選択を、防衛大臣と首相に迫ったのだろう。それは、あらかじめ失敗の責任を、ボスではなく下僚が取るという意思表示ではないか。
 もしも、確かにそのようであったのだとしたら、彼らの断定した理屈で行くならば、もはや近い将来の日本の防衛はなりたたなくなったはずなのであるから、国民に対してそれほど重大な責任を果たせなかった要路の下僚は潔く何人か飛び降り自殺でもすべきなのかもしれない。(もちろん、F-22などなくとも、日本の防空・防衛は、ほどほどに成り立ってしまうのである。シナ空軍など予想できる将来まで「京劇」レベルの虚仮脅しでしかなく、韓国航空産業は欧米メーカーの助け無しには軍用ヘリコプターすら国産ができない。日本側誇張のフィクションに、今回は、米国指導層が、つきあってくれなかった。)
 防衛大臣と内閣総理大臣には、さいしょに空幕と内局が「選択肢」を上げてこないことを咎めなかった時点で瑕疵がある。
 また今回、米国がF-22の提供を拒否したことに「怒り」を表明しないとしたら、瑕疵の上塗りをすることになるだろう。なぜなら、首相みずからF-22の提供を要請し、(またおそらく外務省をしてダニエル・イノウエ氏らに機密費を使った無理筋な工作までさせた上で)蹴られたのだ。
 外交上の演技としてもせめて「バカにするな」と怒ってみせないとしたら、日本は至高の国益である安全保障についての自己判断を、アメリカ政府の言うなりに変更する、もう誰の目から見てもアメリカの属国だという、知られてはまずい真実がますますよく知れ渡ってしまう。
 すなわちシナや韓国から見ると、日本国はアメリカから特に贔屓にされているわけではない、しかも意志薄弱な、間接侵略の良いカモでしかないと思われてしまうことになる。それこそは、日本国民のパブリック・インタレストを長期的に毀損する大失政だろう。
 F-22など無くとも日本国民の福利は少しも低下しなかったが、ここまで来て総理大臣がアメリカに対して怒って見せないことには、日本国民の福利は確実に低下してしまうこととなったのだ。
 怒りを表明する方法は簡単だ。意地でもF-35は買わない、と公言することだ。次期民主党政権なら、これは公言し易いだろう。日本における政権交代のメリットは、こういうところにしかないのだ。(いわば国民が司令官。複数の政党は、そのまま幕僚の上げてくる複数の策案である。)これをしないならば、民主党が選挙で勝っても大して良いことは起きないと予見できる。
 もちろん民主党は今からF-22スキャンダルを徹底追及すべきなのである。選挙戦中のその公開論議を通じて、民主党内のはたして誰が、まともな話のできる人士なのか、浮かび上がりもするだろう。
 いったい、他人頼みの三下チンピラが、古顔のヤクザの前にブランド物の高額なナイフをみせびらかしても、ヤクザの方はちっとも恐れ入るものではない。ヤクザがいつも見ているのは、相手の兇器などではなく、相手の表情の中にある意志力なのである。
 日本政府に、ヤクザとはとことん喧嘩をしてやろうという意志力(最悪事態を数年スパンで数手先まで読んで肚を括ろうとする脳内シミュレーションの蓄積)が無いことが、〈北鮮腐れ利権コネクション〉の与野党共謀温存という実態分析を経てワシントンから見透かされている以上、日本はもはや、韓国以上に信用されることも無くなっているのだ、と知るべし。


歯科医の二俣さんとの面白談論と遇懐

 直線距離的には歩いて10分かからぬであろう、美原5丁目27番にある「二俣歯科医院」を発見できたのは、全く偶然であった。
 この医院は、ふだんはわたしには通る用事の無い狭い道路に面しており、しかもそこに最短時間で向かおうとすれば、中間の住宅街を迷路のようにすり抜けないと、決して辿り着けぬロケーションだったのだ。
 数年前……。函館市内の高丘町から美原に転宅したあと、さいしょに歯医者にかからねばと考えた折のことであった。症状は、フィリング・イズ・アウト……つまり、詰め物の金属がポロリととれてしまったのだ。
 朝方人間であるわたしは、医療機関ならふつう午前の9時前からでも受付くらいは開始しているであろうと、つい首都圏の感覚で予断をして、9時前に家を出、まず目当てであった最寄りのX医院に、9時ちょうどに着いた。
 しかし、なぜかそこの玄関は閉まっているし、人が中に居る気配もない。曜日も時刻も間違ってはいないはずなのに、臨時休診とかの表示もない。
 わたしは門前で10分くらい待ってみたが、夏の好天でもあって馬鹿々々しくなり、すぐ近くのY歯科医院もしくはZ医院をたずねるべく、歩き出したのだ。さいわい、高丘町とちがって美原では、病院や医院ならば、歩き回ればナンボでもある感じだ。(そもそも小児科や薬局が多いことが、引越し先にここを選んだ理由であった。)
 ところが、探索順路がたまたま悪いのか、どうも9時半より前から待合室に入れるようになっている歯科医院には、とんと行き当たらぬ。それで、ついついわたしは、道端の色のくすんだ古看板に誘導されるままに、二俣歯科医院に辿り着いた。これが、幸運というより外にないのである。
 この二俣歯科医院が面している道路は、チセイ堂の2001年版市街地図帳によれば「赤川中央線」とあり、グーグルやヤフーのマップでは「富岡美原道」となっている(たぶん地元民の多くは、いずれの呼称も知るまいと疑われる)。美原三丁目のスーパーマーケット「アドマーニ」および「日本一金物」さん前の、信号のある四辻交差点を、赤川一丁目がある北東の方角、すなわち、新しめのラーメン屋さんを右手に見ながら通り過ぎる方向へ数分間歩いたところに、その医院は現われる。(ちなみにそのラーメン屋さんや、広壮な渡島支庁ビルが建っている街区は、美原の四丁目だ。富岡美原道は、美原五丁目と四丁目の境も成しているようだ。)
 この道路が不思議に、北海道にしては狭い車道。しかも微妙に、まっすぐになっていない。
 美原というのは基本的に「新開地」で、昔は畑か熊笹の原野しかなかった土地柄だとわたしは見ているが、このような道路はきっと、古くから存在する生活街路だったのに違いない。とすれば、そんなところには、古手の先生が開業している可能性があるではないか。
 〈弁護士は若いほどよく、医者は年寄りほどよい〉と、わたしは以前から聞いていて、わたし自身、それを承認する。
 医療行為は、決して〈サイエンス〉化することのないトライ&エラーの連続であり、気力・体力よりも、経験から来る慎重さが、いっそう患者のためになるのであろう。
 わたしの歯の詰め物が、何年かして外れてしまうのだって、歯科治療が決して〈枯れたサイエンス〉などではなく、千差万別な活物相手の〈アート〉であることを、示唆してくれているのだろう。
 さて、「二俣歯科医院」の表の標示をながむるに、診療日が月・水・金・土で、午前は九時半から診療が始まる、と書いてある。待合室に9時30分前に入れるのは(首都圏感覚ではあたりまえだと思うんだが)、有り難い。
 そして、その待合室内の貼り紙を見て判明したことは、ここの先生は、火曜と木曜は、函館市街から20kmくらいも東(つまり亀田半島の太平洋岸)にある田舎町の分院へ行っておられるらしい。
 わたしは想像力を膨らまし、「とすると、ここでは小説の『氷点』にでも出てきそうな、典型的な開拓地風の治療を体験できるのか」と考えた。
 この法外な空想が、まさか半分当たろうとは……!
 治療は、テキパキと、アッという間に済んでしまった。その日の昼飯前に工事完了、だ。(わたしは取れた詰め物を持参していた。)
 最も安価かつスピーディに、患者の悩みを解決してやろうという誠意が、その先生の堅確な腕の先から伝わってきた。
 そして、これはどういうポリシーであるのか、歯科技工士さんとか女子事務員さんが、院内には一人も見当たらない。なんと、一切を、先生がお一人でなさっている。
 最後の、受付での保険の点数計算までも、ご自分で記入しておられるのだ。
 首都圏のみなさん、想像できますかい?
 二俣先生は、無精髭が似合いそうな、そして小泉元総理のように頭髪ゆたかな60代の方であった。(後で知ったが、非常な読書家であった奥様を、亡くされていたのである。)
 その後、歯の不具合が発生する都度、わたしはこの二俣先生の速攻治療スタイルのお世話となり、毎回、十分な満足を覚えてきた。
 そしてつい数日前、短時間であったが、「政談」まで交わす機会に恵まれた。わたしはこれで、二俣先生のキャラクターの一端をいままで以上に了知し、ハッキリ言って、意気投合してしまったことを、ご報告せねばならない。
 ぜんたい、わたしの「ファン」であると呼称する人々の中にも、わたしの指向するところをからっきし理解していない人は、珍しくはないのだ。しかるに二俣先生ときたら、わたしの過去の著述など、ただのひとつも知らない人であるのにもかかわらず、考えていることが、驚くほど近い。
 たとえば、「テレビはもう駄目だが、ラジオにはこれから未来があるだろう」との判断も、そのひとつだ。
 二俣先生のご自身のご論拠はこうである。――老人は、視力の衰えに伴い、テレビから細かな視覚情報を得ることは苦しくなる。彼らが習慣的にテレビをつけているのは、むしろ音声を聴取せんが為だ。ラジオは、このような需要に応ずることができるはずだ――。
 さらに、アイテム数の多すぎる活字の新刊書籍の存在および梗概を市井人が労することなく把握するにも、インターネットのように目で画面を読む紹介ではなくて、耳で聞く紹介の方が便利なはずだ。寝ながらでも、車を運転しながらでも、あるいは書店で立ち読みをしながらでも、それを聞くことはできるから――と。
 なるほど……。わたしはこの話を承り、インターネット・ラジオの技術を駆使した「読書余論」の音声版のような収益事業も、将来は考えて良いのではないかと、ただちに直感したのである。
 保険制度についても二俣先生は卓見を持っておられる。それは、〈何年間も医者にかからなかった人には、政府が金一封を与えよ〉というのだ。
 これも大いに検討すべきことじゃないか。
 より具体的には、小額の現金をペイ・バック感覚で交付するのでも良いだろうし、60歳、70歳、80歳の節目に限定した「勲章」でも良かろう。受診ゼロというのではなく、同年代の平均的回数よりもずっと少なかった人について、何か、比例式に褒賞するという方式も、考えられるのではあるまいか。
 〈新商品のチョコレートは、必ず買ってきて自分で試食をする。それも、ウィスキーを飲みつつ〉と仰る先生は、ご自分の歳でいまさらインターネットを始める気にはどうもなれないのだと仰っていた。(ちなみにわたしは菓子パンを頬張りながら麦焼酎の水道水割りを飲むのがいちばん正しいと思っている。)
 世に聞かれる価値のあるお考えをお持ちであるプロフェッショナルな人々が、インターネット環境にアクセスせず、その高見を埋もれさせているのは、日本の為にはならないことだ。(たぶんグーグル社の全くあたらしいOSが、諸事敷居の高すぎるウィンドウズを世界から駆逐し去ったとき、この二俣先生のような方も家電感覚でインターネットとつながるのだろう、と期待をかけよう。)
 とりあえずわたしとしては今、このような宣伝的な書き込みを私的なブログ上に是非残しておかねばならぬと決心をさせられた次第である。
 二俣先生のような人士が、きっと全国に、もっともっとたくさん居られる。
 そうした人達のあたりまえの感覚を糾合できる簡単な方法は、未だ、発見されていない。


◎「読書余論」の09-8-25配信分の内容予告

▼ハンナ・ライチェ『大空に生きる』S57朝日ソノラマ文庫版、原 Hanna Reitsch、“FLIEGEN MEIN LEBEN”(独語版1951年、初英訳1954年、初邦訳1975年)
 特攻グライダー桜花は、ライチェの1944案の有人V-1に基づいているとしか思えない。それどころか、特攻作戦そのものが、ライチェ起源ではないか。どうして本書がもっと注目されなかったのか? ライチェの記憶がしっかりしているうちに、なぜ日本人が本書の事実の日付に関する詳細な確認をしておかなかったのか、じつに惜しまれる。タイムテーブル的におそらく大西瀧治郎は、2隻の遣独潜水艦から齎されたベルリンでの「SO(自己犠牲攻撃)」議論を聞き知っていた。本書は絶版である。だからこの「読書余論」で、エッセンスを知れ!
▼防研史料『航空関係諸報告綴』
 敗戦時の爆弾調査。
▼防研史料 海軍航本・総務部長『S14年度 部外航空関係』
 テヘラン親善飛行その他。
▼防研史料 『昭和十八年 海軍航空本部関係綴』by 海航本
▼防研史料 横須賀海軍航空隊ed.『蘇国極東方面航空関係事情』S11-8
 おそるべき徹底的な調査。やる気だったんだねえ、海軍も。
▼防研史料『海軍航空本部技術会議 第一分科会 報告書』
 和田機関少佐、和田操大佐など勢ぞろいで「零戦」と「一式陸攻」の要求を討議している超面白資料。
 大西瀧治郎大佐と、機関大佐の櫻井忠武(櫻井忠温の弟)との、陸攻燃料タンク防弾問答はここに出ている。どうみても一式陸攻は、S12時点では葉巻型としては考えられていなかった。ではいったい誰がいつ何を参考に、あの葉巻型への大転換を決めたんだ? そしてそのとき、どうして大西の主張したような防火措置が講じられなかったんだ? とにかくこれを読めば、大西がすぐれた人だったと分かりますよ。
▼防研史料『海軍航空本部技術会議第一分科会 報告書』S12-3-25開催
▼防研史料『参考諸表』航本総務部長
▼防研史料『空威研究會報告』S13-3
 Air Power もしくは Air Force を大西ら海軍航本が直訳して「空中兵力威力」とした。
▼『空威研究会報告』S13-3-25
 この時点で和田操は少将・航本技術部長。大西は大佐・航本教育部長。
▼『空威研究会報告 別冊第一巻』
 不思議なのは、対地爆撃の相手国としてソ連しか想定してないこと。海軍なのに……。
▼防研史料 『空威研究會報告 別冊第三巻』
▼防研史料 『技術提携(駐独海軍武官)関係』S15-4-30~15-12-18 海軍航本
 いかに日本海軍がヒトラーべったりだったか、余すところなく立証してくれる史料。
▼防研史料 大西瀧治郎『航空軍備ニ関スル研究』海航本S12-7
 角田求士のメモが親切だ。
▼防研史料 『S19~20年 航空軍備』S20-2-16 海航本総務部
 烈風を放棄したかわりに紫電改を艦上機にコンバートしようとし、高高度局戦は雷電改にやらせようだとか、もう最後のあがき。
▼防研史料 『航空関係 資料綴 補給』S17-9-21航本決裁
▼防研史料 『支那事変関係 航空軍備 資料』S11-9~14-3
 支那事変初期の渡洋爆撃の使用爆弾数などが載っている一級史料。
▼Marjorie Kinnan Rawlings著、大久保康雄tr.『仔鹿物語』角川文庫 上下巻S29、原1938
 これは子供の絵本にもなってる話だが、日本のアニメ絵の絵本だと、イミフもいいところだ。なんと原作は、《アメリカ南部の狩猟全書》だったのである! ハンターおよびアウトドアズマンなら、情報要素を吸収しておいて損はしません。ちなみに原著は『バンビ』の後に出ている。原著者が『ウスリー探検記』(映画デルス・ウザーラの元種)の影響を受けている可能性もある。
▼『甲斐叢書 九巻』第一書房S49
 今川軍が負けた理由。
▼末國正雄・秦郁彦監修『連合艦隊海空戦闘詳報』1996-2
 戦訓部分の情報要素をピックアップしよう。
▼太平洋戦争研究会『20ポイントで理解する 日中戦争がよくわかる本』2006-10、PHP文庫書き下ろし
 文庫サイズの中に、ソース付き情報てんこもり。著者は出自が左翼系と思われるのだが、卒なくPHPに合わせている。労作。初学者なら、買って損はない。
▼岩永省三『歴史発掘 7 金属器発掘』1997
▼林巳奈夫『漢代の文物』1996(原1976?)
 漢代の刀とは、包丁のこと。
▼千葉徳爾『日本人はなぜ切腹するのか』1994
 切腹は古代の南シナの風習だった。
▼『犯罪学雑誌』S52-12月号所収・稲村博「古典における自殺の比較研究」
▼ロバート・シャーウッド『ルーズヴェルトとホプキンズ』I、II、村上光彦tr.みすず書房S32、原1948
 スチムソンは、満州事変の日本に対して、はじめて集団的抵抗を提唱した。 スターリンは、装甲車がジープよりも役立たずだと判断していた。
▼『九州歴史資料館 研究論集 17』1992所収・橋口達也「弥生時代の戦い――武器の折損・研ぎ直し」
▼國學院大學ed.『古典の新研究 第三集』S32所収・鈴木敬三「木弓と伏竹[ふせだけ]の弓」
 直線状の弓は引き絞ると折れる。それゆえ長弓化。
▼『日本史研究 416』1997-4所収・近藤好和「武器からみた中世武士論」
▼廣瀬一實『銃床製作の控』H3
 文献皆無な国友の火縄銃の銃床づくりを再現した。
▼高橋【石眞】一ed.『高野長英全集 第五巻』S55
▼酒巻和男『捕虜第一號』新潮社S24-12(二刷)
 これは売れなかった名著である。敗北を自己分析しようと思ったとき、そこに言語よりも正確なリアリズムがあった。敗戦文学こそ、日本の自然主義の、決してピークには達しない、果てしなく続く稜線だと思える。
 関係者の名誉問題(発狂した元『飛龍』の機関中佐とか、階級詐称野郎を帰還船から海中へ放り込んで殺したらしいとか)がおそらくあるのと、戦後に兵学校卒の経歴と英会話力を買われて三河のT自動車会社に雇われた著者が存命のためか、本書は文庫版にもなっていない。だから古本も高い。図書館で読むか、この「読書余論」でエッセンスを吸い取るしかない。
 ◆  ◆  ◆
 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。(配信されるファイルはPDFスタイルです。)
 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。
 大きな図書館に毎日通えない人も、最低費用で、過去の軍事知識のマニアックな勘所に触れることが可能です。
 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。
 「読書余論」は、毎月25日に「武道通信」から最新号が配信されます。1号分の購読料は200円です。
 バックナンバーも1号分が200円で、1号分のみでも講読ができます。
 2008年6月25日号以前のバックナンバーのコンテンツは、配信元の「武道通信」のウェブサイト
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 ウェブサイトでわからない詳細なお問い合わせは、(有)杉山穎男事務所
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自民党が間接侵略に無力な証拠

 「マニフェスト」とは共産党の用語である。
 1848のマル&エンによる「共産党宣言」が、原版の独語で“Das Manifest der Kommunistischen Partei”と称した。(ウィキペディア参照)
 おそらく ’70年代以前の「赤い大学生」ならば、誰でも知っていた歴史であるはずだ。
 しかし今の自民党には、政治用語の選択に気をつけられる人士も、絶えてしまっているのかもしれない。
 ヒトラーがナチス党の旗地にわざと赤色を使って共産主義者を挑発したのは《戦略》であった。
 しかし自民党が民主党と同じ土俵にのぼって、「これがマニフェストでござい」などと一緒になっておめいているのは、どう見ても、マスコミと結託した敵の《戦略》にしてやられているだけである。
 彼らに任せておいたのでは「間接侵略対処」などできるわけがないと、あらためて確認できるばかりだ。
 「中韓を知りすぎた男」さんのブログにも指摘されているけれども、民主党が戦術としてマニフェストから削除している数々の反日立法の目論見に、今から猛然と噛み付いておかないで、下野後にどうするのだ。
 ここを鋭く糾弾して筋の通った見識を早々と強調しつつ選挙期間を戦い抜けば、下野後の明るい未来が掴めるのだ。自民党と民主党のなかから、まともな同志だけ飛び出して、「第二自民党」を創らないかぎり、あの村山談話は葬り去れない。くだらない「マニフェスト」など競作している場合ではないだろう。
 田村代議士のブログに、民主党がこだわっている法案について解説がされていた。その一つ、鳩山由紀夫氏が推進役となっている国会図書館法改正案――別名「戦争責任追及法案」――。
 国立国会図書館内に、先の大戦及びこれに先立つ一定時期の惨禍の実態を調査するための恒久平和調査局を新設。
 旧陸海軍の責任追及のために、恒久的に毎年2億5千万円の予算をつけ、そのために必要な国会図書館職員の定員を増やしてやるという。
 絵に画いたような売国法案だ。
 〈真理は我等を自由にする〉とギリシャ語で掲示されている国会図書館に、売国バイアスのかかった反日左翼職員を送り込んで、国民の税金を使って、過去の実態の隠蔽活動をさせようというのだ。狂っている。
 「読書余論」の最初からの読者なら、分かっているだろう。戦前から昭和30年代にかけての古い公刊資料は、シナ人や朝鮮人の実態を能く明かしてくれる。そうした古い資料に、日本じゅうの誰でもが、いつでも簡単にアクセスできるようになれば、それだけで、左翼反日勢力による歴史捏造は不可能になるのだ。
 まさに〈真理が我らを自由にする〉のである。ギリシャ人、我をあざむかず!
 だから国会図書館について自民党がやらねばならぬことは、げんざい明治期の蔵書について進められている、蔵書資料の画像デジタル化(見開きページ全体を撮影してファイル化し、利用者はそのデータにインターネットでアクセスして、随意のページをめくって閲読することができるようにする)の作業を加速せしめて、早急に、昭和20年までのオンライン・アクセス可能環境を完成してしまうことだったのだ。これには雑誌も含めるべきであることは言うまでもない。
 いまからでも遅くないから、自民党は「マニフェスト」にこの一項をつけ加えよ。
 他にも、民主党が「マニフェスト」から省いている反日法案と闘うカウンター事業案を、自民党はいちいち公表せよ。
 国民の目は節穴ではなく、この政策立案力(すなわち間接侵略対処能力)のある議員は誰と誰であるのか、正当に評価されるであろう。
 以下は、余談です。
 米国がインドに最新鋭の対潜哨戒機を売ることを早々と決めていたということの意味をずっと考えているんですが、これは米国政府がインド政府に、「インドのSSBNに対する、核戦争時の空中指揮機(ルッキンググラスの前駆版)を提供しますよ」というオファーを、内意しているのではないでしょうか。
 もちろん哨戒機「ポセイドン」のキャパシティでは、乗員20名のルッキンググラス(ボーイング707改造)にはなりませんけども、その縮小版になら、なるでしょう。
 〈当面、こいつで慣れておいてくれ。数年後には、もっと大きな特注品を売ってあげよう〉と、アメリカはインドにもちかけているのではないでしょうか?
 英仏政府は日本政府とは違って秘密管理がしっかりしているので、外に事情が洩れたりはしないでしょうが、たとえばフランスのSSBNの運用についても、じつは米国が、かなり助言をしているのではないかと思います。それが、「核クラブ」の実態でしょう。
 米国は、偶発核戦争の可能性をできるだけ減らす責任を負っており、印支の核バランスについても、面倒を見る気なのでしょう。シナを軍事大国にさせる気は、米国にはさらさらないでしょう。
 ところで、『月刊日本』8月号に、菅沼光弘さんの新著紹介があり、その中にこんなことが書かれています。
 〈米国はNATOとの間で、有事の際の核兵器の運用や手順について具体的な情報を共有している。しかし日本は運用について協議できない。また米側には日本の機密漏洩への懸念も強い。〉
 また、読売新聞の09-7-8記事も引用されています。いわく。――オバマ政権が、2009-12に「核戦力体制見直し(NPR)」をする。日本はそれまでに、有事の日米共同作戦計画に核兵器使用がどう組み込まれるか、運用について説明を受け、日本側の要望を伝える。NPRは非公開。協議内容も非公開――。
 わたしは『2011年 日中開戦!!!』というマンガで、シナとの間に核戦争になった場合、日本政府は海上に疎開することとしました。あの、全通甲板を有する空母モドキの護衛艦ですね。(原作当時はまだ『おおすみ』だけでしたけど。)ああいうところの中層甲板に戦争内閣を置く。
 そして小笠原近海を走り回って、対艦弾道弾(もちろんシナのは核弾頭付きです)から逃げ回ればよい、と。
 日本列島の飛行場事情から、「ルッキンググラス」は非実用的で、将来的には大型ジェット飛行艇がよかろうけれども、とりあえずは太平洋上のフネ利用だな、と判断したわけです。
 どうやら、現実がそれに追いついてきたように思っております。
 シナ軍は、「洋上日本政府」を脅すためにも、ますます対艦弾道弾(水爆弾頭付き)を整備しなくちゃなりますまい。それに対抗するため、日本も「対艦/対潜弾道弾」を持っておくのは、まあ、あたりまえの備えです。
 さらに余談。
 「この戦闘機はなぁ、アメリカ様から貰ったものなんだぞぉ! どうだ、羨ましかろうが!」「おまえのロシア製兵器より、こっちのアメリカ製兵器の方が上だぞ!」「こっちのうしろにはねえ、アメリカ様がついているんだい!」「ねぇアメリカ様、あいつをやっつけちゃってくださいましな!」
 ……こういうのを、「三下根性」、もしくは「妾根性」、もしくは「女中根性」と呼びまして、昔の日本人ならば、心中軽蔑したものです。(女中というのは、御殿女中のこと。「お女中」です。高級町人が、数千石の武家屋敷に頼み込んで、娘に1~2年くらいの行儀見習い奉公をさせる習慣があったのです。)
 昔の日本人なら、〈アメリカ様に北朝鮮をやっつけてもらおう。そのためには、旦那の機嫌をとるために、日本は、インド洋とアフガニスタンで、犬馬の労も取ろう〉なんて言わなかったでしょう。
 そうではなく、「総理、われわれはいつでも北鮮へ出撃し、日本人を奪回する準備ができております! ご命令を!」と、自衛隊はどうして言えないのか? また、政府も自民党も、どうして自衛隊に、そうさせようとしないのか?
 F-22をくれとアメリカに請求する前に、あるいはインド洋でどうするとか議論する前に、この国内的主張があって然るべきだろう。
 それが分からない自民党なら、下野してもらったって良いですよ。
 わたしがこれまで『武道通信』にかかわって来て、「学校では近代柔道ではなく歴史的柔術を教えろ。それも、最も危ない技からな」と主張したいと思っておりますのは、チビで非力な日本人は、江戸時代の柔術の殺伐とした技の数々を知ることによって、過去の歴史のリアリズムに目覚め、国際政治上の妾根性、三下根性からも脱することができると信ずるからです。現代の日本の若者は、素手でも人は殺せるんだという実感をもつチャンスがないから、みかけの格好良さそうな道具に頼ろうと考えるのではないでしょうか。根性なしはナイフを持っても尊敬されることはなく、専守防衛のヘタレ政府がF-22を持っても世界平和の役に立ちません。


新着の防衛白書(平成21年版『日本の防衛』)を読みて

 09年7月26日、遂にインドの国産核ミサイル原潜『アリハント』が進水した。これから2年間、ベンガル湾で試験してから就役する。6000~7000トン、95人乗組み、水中24ノット。同型艦が5隻造られる。90年代にロシアからレンタルしていた原潜で細部を学んだ。
 しかしインドが弾道弾を水中で発射するテストをしたという話が聞こえてこないので、すぐ対支の抑止力になるというわけじゃないだろう。
 それでもシナは焦っている。さきごろ、博物館級の「ゴルフ」1隻をスクラップにしないでまだ改装している写真が公開された。
 ロシアもかなり予算の無理をして、ICBMからSLBMへのシフトを図っているように見えるが、タイフーン級から陸上型の長射程固体燃料SSMを水中発射する試験は、立て続けに失敗中。SSBNは簡単なシステムじゃないのだ。
 インドは、シナやロシアと違い、大量破壊兵器を無責任に拡散させることがない。これが、アメリカの信頼を得ている。だから核武装もおおっぴらに認められているのだ。
 アメリカは、最新鋭海上哨戒機の「ポセイドン」を、インドに売ることにしている(白書はこの話を紹介している)。
 日本はインドよりも信用されていない。朝野に特亜loverが多すぎるのだ。昔は、東大がインドネシアに固体燃料の宇宙ロケットを売ろうとし(もちろん兵器に転用されるに決まっていた)、これが、米国によるミサイル不拡散レジーム策定のきっかけを成したほど。
 さて、日本の大スキャンダルになりそうなF-22問題をサラッと書き飛ばし、このインドのSSBN(建造計画は1年前から分かっていたはずだ)についてはまったくスルーしているのが、こんどの『防衛白書』の、目につく特徴だ。
 日本がシナのみならずインドにも劣った軍事的二流国となり、趨勢としてその国際政治上のパワーがずんずん沈降中であるという現状を正直に認めずして、どうして日本の防衛など語れるのだろうか。
 ここで普通の評論家なら「戦犯」をインサイダーに求める。だがオレは違います。今回は、戦犯として、大衆的人気を博した軽薄フィクションライターたちの業績をあげつらいたい。
 漫画家の松本零士さんや小澤さとるさんは、外国兵器礼賛はしなかった。健常な世代でした。意地でも国産兵器に活躍させるのが当然だと考える、日本がまだ大国であったころの大衆精神を持っていた世代です。
 健常ではなくなってしまったのは、『ファントム無頼』からです。(たしか松本先生のアシスタントだった人ですよね。象徴的だと思います。)
 その次に、かわぐちかいじ氏の、アメリカ製の原潜を海自の反乱分子が乗っ取って、アメリカ相手に暴れて溜飲を下げる、という変なマンガが評判になりました。
 次に来たのが、小説の『亡国のイージス』です。
 前後して、「トマホーク教」信仰も生じました。政治家が「トマホークを持て」云々と言うようになった。
 考えてみましょう。英国や、仏、露、支、独で、小説家やマンガ家が、よその国から買った最新兵器を、舞台装置・兼・準ヒーロー格にもして大活躍させるなんてこと、ありえますかい? 恥ずかしくてできないでしょう。
 長い時間をかけて、大衆の意識レベルから、かつて国際連盟の常任理事国、世界の7大国に列していた日本は、小国化したのです。
 大国の指導層がとうぜんに有し、大衆にも支持される「ダンディズム」がなくなってしまった。これをわたしは精神の非武装化と呼びます。それに、とうとう現実政治が追いついたまででしょう。
 諸悪の根源はマック偽憲法ですが、それを廃止できなかったのは日本の大衆です。
 防衛白書に書いてない、最新の世界情勢を、わたしが述べましょう。
 アメリカ合衆国は、〈シナと韓国と日本は同レベルの二流国だ〉と考えるようになりました。だから、この三国のうちひとつを特別扱いすることは、もうありません。この三国に「三すくみ」をさせ、できるだけ低レベルで地域均衡させて行くというのが、アメリカ合衆国の望みです。
 とうとう日本は、シナ人や韓国人と、同じ仲間だと見られるようにまでなったのです。落ちたもんですよね。でも、不愉快じゃないですよね。だって、国産機よりも「ラプター」を買え、と、マニアの人たちがずっと要求してきたでしょう?
 中共の軍事系ウェブサイトを見ても、「隠形」の「猛禽」のことばっかり、書いてます。そして、〈われわれシナ軍も、まったく同じものを造れる〉と宣伝しています。外形がそっくりのものです。心情は日本人と同じ先進国礼賛なのです。
 「三すくみ」は、半島が統一されていないからこそ実現可能なので、アメリカ軍は韓国軍の北進も容認しないでしょう。もし韓国が半島を統一すると、韓国の核武装が進展し、日本も核武装しないわけにはいかなくなり、地域の均衡の水準が一ステップ上がってしまいます。しかも三者とも、核技術を無責任にどこかの後進国に売ったり譲渡をしかねない。アメリカを狙う核テロリストが大増殖するのは、アメリカには一番困る。
 さて、09-7-24には、B-2ステルス爆撃機が2発格納できる3万ポンドの鋼鉄製地下貫徹爆弾(Massive Ordnance Penetrator)のテストの短報。充填炸薬量は5300ポンド、強化コンクリートも貫徹できるという。
 これはイランを脅かしているのか。それともイスラエルを宥めているのか。
 かんけいないけど、北朝鮮の炭鉱は地下1000m以上あるはずなんで、こっちをやっつけるためには「重い毒ガス」が必要になるだろうね。敵の地下組織壊滅のための重い毒ガスの使用は数十年も前にハインラインの小説で予見されているので、米軍のことだから、とうぜんに選択肢の一つだろう。毒ガスを放棄していない相手には、逆に毒ガスの脅しがリアリティを持ってしまうのだ。


2日も留守にするとメールの処理がたいへんな件等について

 会津若松市に行って来ました。かれこれ5年以上もごぶさたしていた眼科医の米山高仁先生に高いワインをごちそうになりました。さすがに函館のスーパーで入手できる1瓶390円の安物とは違いますね!
 会津地方の観光名所はたいがい既に見て知っておりますので、今回は、穴場ではないかと思い、「福島県立博物館」に出かけてみました。
 地図をみるとその近くに「山鹿素行生誕の地」もあるようです。それで、不思議に米内光政さんに顔が似ているタクシーの乗務員さんに頼んで寄り道をして貰った。
 現場は、街中の狭い1区画が、宅地化を免れて保存されていました。敷地の奥に、東郷平八郎が揮毫した大正15年4月建立の石碑が建っていました。(この山鹿素行についての兵頭の考察は、新紀元社の『あたらしい武士道』で尽きております。ご興味がある方はご一読ください。)
 なお、この区画は、直江兼次の住居跡でもあったそうなので、NHKの大河ドラマの放映開始を承けてか、説明の看板が、新たに追加されていました。(兵頭編訳PHP版『[新訳]名将言行録』にも、もちろん兼次は採録されていますので、物好きな人は、お確かめください。)
 県立博物館は、やはり穴場でした。風船爆弾の一部分の実物大展示(和紙製気球下半分)がありました。レプリカなのかと思って説明を読んだら、モノホンですわ。
 しかもこれ、陸軍が勿来町から放球した直径10mのレギュラーサイズの「ふ号」じゃない。海軍が潜水艦から放球するためにつくらせた直径2.5mの小型の気球。激レアです。
 これについては『呉羽化学五十年史』に記載があるようです。
 呉羽化学工業の錦工場(相模海軍工廠支配下の錦作業所とされていた)で、美濃紙にポリビニルアルコールを吹きつけた、と。
 陸軍のようにコンニャクじゃなかったのですね。たしかに、表面はテラテラに見えます。
 終戦時に工場内に廃棄されていたものを、いわき市の応召者が持ち帰っており、それが、博物館に資料提供されているということです。(なんでこんなものを自宅で保存していたのか、それが知りたいです。耐水性のシートとして役立てていたのでしょうか?)
 この博物館は、ストロボなしなら館内撮影もOKなのに、デジカメを持参しなかったのが無念でした(ちなみに兵頭は携帯を持ってません)。展示は8月21日までだそうです。マニアはデジカメを持って急げ!
 翌日は、都内の練馬のJSEEO事務局に初めて顔を出しました。な~んだ、東長崎の隣じゃないですか。あとで加藤健二郎さんにも挨拶をせねばと思いました。
 ここで第一回事務局会議を開きました。まあ、全部で3人ですけどね。
 会計報告も受け、実態を掌握しました。予想より悪くもなく、良くもないです。これから1年が勝負になるでしょう。
 ほんらいならHP上で議決事項の諸々の報告をしたかったところですけれども、HPが死んでいる状態ですので、やむを得ず、こっちで書くこととします。
 じつはHPはもう完成品ができていました。拝見しましたが、携帯での読み込みにも配慮されており、満足できるものでした。事務局では7月下旬に、それを今の死んでいる画面ととっかえるそうです。なぜ27日からでもすぐに新HPにしてしまわないのかは聞き忘れました。人手不足なのであろうと思います。わたしは、ことHPの運営に関してはノンビリしたやり方はまったく我慢できないので、助っ人を公募すれば良いと思うのですけれども、担がれ御輿の立場としましては、さいごは事務局の方針に合わせるしかありません。なにしろ事務局のお2人のこれまでの献身とご苦労は並大抵じゃありませんからね。都内で、無名の団体の「事務所」の名義で賃貸物件を借りたり金融機関の口座を開設するのがどれほど困難か、スモールビジネスに詳しい方ならば、よくご承知でしょう。(個人名で借りて事務所として使えば簡単でしょうけれども、あとで確実に反対勢力から攻撃材料にされるのがオチです。)
 一点だけ、「みなさまへのおしらせ」を事務局に於いて毎日書き加えるよう、わたしの方から要請しておきました。いつ見ても同じ画面なんて、支持者の皆様に対して印象が悪すぎますからね。まさに死んでいる状態です。一回UPしたらそのまんまほったらかしというPRのやり方で8月29日に300人ホールを有料客で埋められるようなら、誰もインターネット・ビジネスに苦労はせぬはずです。
 その8月29日ですが、若手気鋭の奥山真司さまに質疑応答の司会をお願いすることになったそうです。小生、残念ながらまだ面識はございませんが、2007-6-25配信の「読書余論」で、奥山先生が訳されたミアシャイマー氏著『大国政治の悲劇 米中は必ず衝突する!』を紹介していることに気づきました。こういう方となら、かなり面白い話ができるのではないか。
 そう思いましたので、小生の講演部分は時間を40分に短縮し、残りはすべて質疑応答に充てることと致しました。
 この8月29日の文京区講演までは、JSEEOはわたくし「兵頭二十八」の一枚看板です。
 しかしこの講演の後に、「設立発起人」といいますか、会社重役といいますか、当機構の役員のようになっていただく著名な方々数人に、結集をしていただく予定です。(その具体的な氏名を事前にオープンにすると絶対にこじれるので――これは故・江藤淳から教えられた人事の秘訣でもあります――どなたを候補にしているのかは伏せさせていただきます。ただし、賛同者になっていただいた方々のみには、お話しすることが可能です。)
 そしてその数人の「一座」で、秋以降、頻繁に全国イベント行脚をすることになるでしょう。目的は、サポーターと賛同者を一定数まで増やすことです。
 このサポーター&賛同者の人数が一定数以上になりませんと、事務局そのものを維持不可能です(家賃も月給もすでに発生しています)。
 わたしが一番やりたいと思っていますところの「インターネット・ラジオ放送局」は、サポーター300~500人、および賛同者30~50人が集ったところで、漸く開局できそうな見通しです。
 やはりこれから1ヶ年が、前進か撤退かの分かれ目となるでしょう。
 サポーター&賛同者とは別枠で、小口の寄付も集めます。いずれ事務局から「おしらせ」があるでしょう。この小口カンパの専用の口座の残高を、「ラジオ講師」のギャラの原資に致します。この部分は兵頭の公約だと思ってください。
 おしまいになりましたが、24日までにサポーターならびに賛同者の登録をしてくださった方々の名簿のコピーも事務局より受領しました。意外な方々のお名前をその中に拝見致しまして、わたくし、感動いたしました。この場を借り、あつく御礼を申し上げます。皆様のご厚意を無に致すことのなきよう、全力を傾けます。
 当面は、8月29日(土)の講演会のPRに努めて参る所存です。


またしても宣伝広報戦争の対支敗戦

 F-22取得失敗の責任を、政権転換のゴタゴタのおかげで誰も取らずに済みそうなことは、空幕と内局と財務省と総理大臣にとっての朗報でしょうね。FX選定は交代政権のネクスト防衛相に丸投げしてしまえばいいわけです。
 どうもネクスト防衛大臣は、飛行機などよりも「トマホーク教」の熱烈信者のようですが、それを売ってくれという対米要求は、シナからの議会工作で簡単に潰されるだろう、と、ここで予言しておきましょう。
 わが空自がF-22を取得できなかったのも、「シナはこんなに悪い国。日本はこんなにシナの敵」という対米宣伝を、空幕と内局と総理大臣がしてこなかったせいなのです。
 与党の中に北京シンパや平壌シンパがうじゃうじゃいるんだから、そりゃできませんわな。
 もともとオバマ氏とゲイツ氏は、F-22のライフサイクルコスト、ランニングコストの箆棒さに怒っているようですね。
 某英文サイトにUPIの Arnaud De Borchgrave 氏が、分かりやすい背景事情を説明してくれていました。
 イラクにもアフガニスタンにもパキスタンにも、F-22は1機も出動していない。つまり、対テロ戦の役に立っていない。アメリカ兵の命を救うために、現実に何の役にも立っておらず、他の必要な予算を食い潰しているわけです。
 そして、そんなアメリカ同胞の現地兵が求めているのは、もっとたくさんのMQ-9 リーパー(プレデター改の無人機)である、と。現在、アフガンとパキスタン上空には、リーパーが30機以上、飛んでいるようです。
 プレデター・シリーズも値上がりしていますが、F-22とは比較にならない。だからF-22をやめて無人機関連にもっと回そうという流れですよ。
 2009-7初旬にペンタゴンは認めました。187機あるF-22のうち、2008-10から2009-5のあいだに、そのタッタ55%しか、要求任務の遂行可能な状態ではなかった、と。
 しかもF-22は、飛行1時間あたりのメンテナンスコストがF-15の1.7倍近いという。
 いったい空幕はそんなもんを導入して、わが国の防衛予算の配分比率を、どうしたい気だったんでしょうね? MDを味方にした海自にとられ続けた「失地」を回復しようとしたのでしょうか。そうだとしても、彼らの夢は潰えました。
 おそらく、日本のMD投資はアメリカ本土をシナのICBMから守るために役立つが、日本のF-22調達は、今以上にシナを抑止することにはつながらない、とも、米国の指導層は判断したのでしょう。彼らには既にB-2もあれば、ミニットマンもトライデントもあります。シナがハードウェア面での敵だとは、本心では思っていない。空幕は、それでも巧みな宣伝によって米国指導者層を説得できるチャンスはあったと思いますが、その才能のある幕僚はいなかったようです。
 マック偽憲法を捨てられず、与党内にすらシナの工作員がいる、そんな日本人は、アメリカ軍の対等の同盟者になるどころか、いつF-22から得た秘密技術を国産武器に転用してその日本製武器をシナやら韓国やらどこやらに輸出し始めるかわかったもんじゃない――と見限られてるのでは、宣伝もやりにくいですよね。同情します。イージス艦内にシナ人を案内しようとしてアメリカ大使館から怒られた、という海自の前科もありますしね。
 日本が核武装すれば、こんどはその核技術情報を見境い無く、シナや韓国に与えかねない、と米国指導層は疑っているはずです。堂々と大アジア主義を標榜する者が、民主党だけではなくて、与党の中にもいるんですからね。
 失敗国家(=テロ国家)への核爆弾の拡散防止を至高命題としている現下の米国指導層が、政治思想的に信用できない日本への高度武器技術移転を禁止するのは、当然ですね。
 ゲイツ氏は米国内の技術振興政策としても、F-35を推しているようですね。それはF-22より10年先進的な技術の塊だと Borchgrave 氏は指摘しています。F-16の後継であることは、その際に、関係ないのです。
 また米空軍はUAVの運転者の大量育成を始めているそうです。F-22をやめて、もっと無人機を増やす。それも、ソフトウェアの進歩で、まもなく一人で複数のUAVをオペレートできるようにもなります。空中戦ができるようになるまでに、あと10年だという。もう、日本はトラック100周遅れちゃっているんじゃないですか?
 米国のミサイル防衛庁も、リーパーを大量採用しそうです。DSPやSBISでは雲の下のSSMの発射赤外線探知はできない。それができるのは数千mの中高度を長時間飛んでいられるプレデター級の無人機だというのが彼らの結論です。
 わが防衛省と自民党防衛族は、アジア・モンスーン地帯は、中東のような沙漠地帯とは異なり、曇っている日が多いのだ、という現実を、忘れていますね。(以前、この早期監視警報任務のためにグローバルホーク級が役立てられるのではないか、と書きましたが、間違っていました。グロホは雲上飛行機だから、DSPと同じデメリットがあるわけです。)
 インドは来年あたりから、国産(旧ソ連原潜の模倣)の核ミサイル発射型原潜を5隻揃えて、シナを核抑止するようですね。一番艦はすでに公試運転をしています。
 失敗国家のパキスタンがタリバンに核爆弾を渡さぬよう、米軍が派兵されるというときにも、インド軍の協力を求めることになるでしょう。アメリカから見て、これから頼りになる国は、はっきりしてきました。
 なお、22日午前から23日夕方まで、急ぎのご連絡のある方は、JSEEO事務局へお願いします。この間、函館を留守にしております。