◎読書余論 2008-10-25配信分 コンテンツ前広告

▼ヴォルテール著、中川信tr.『カラス事件』冨山房百科文庫22、S53
 ※不寛容な宗教は聖典に遡って疑うべし、という近代初期の合理主義精神と人道的義憤が混交している好見本。
▼ルソー著、今野一雄tr.『エミール』岩波文庫、上中下、原“EMILE OU DE L’EDUCATION”,1762
 ※子育てをまじめに考える現代人の必読資料といわれていながら、なにしろ長すぎますので、読み通せた人は少ないでしょう。5分で要点吸収できるよう、抜き書きしました。
 もしそれを金のためにやるとすれば、たちまちその職業にふさわしくない人間となってしまう職業が二つある。軍人と教師だ。
 12ないし15歳までは、天才は別として、2つの国語は学べぬ。
 「ある国の人間はもはやほかの国の人間にはなれない」。
 統治者または国家が祖国への奉仕をきみに要請しているなら、すべてを捨て、あたえられる地位に就き、市民の名誉あるつとめを果たせ。そのつとめがやっかいなら、それをまぬがれる正当・確実な方法は、つとめをできるだけ公正に果たして、そのつとめが長いあいだ君にまかされることにならないようにすることだ。
▼今岡十一郎『欧州文明に於ける洪牙利の位置』S19?
▼青野義雄、金性烈ed.『朝鮮ノ墓地及墓地規則ノ研究』大12
▼岩瀬治兵衛ed.『昭和大典記念 自治業界発達誌』S3-6
 ※昭和元年に壮丁検査したときの統計データ。学歴分布が判明する。日本兵が米兵の何倍も死んでいるのは、単純に頭が悪いからだったと理解できよう。
▼(社)ジャパン・ツーリスト・ビューローed.『旅程と費用概算』S5
 上野~青森は16時間強かかった。
▼マックス・ウェーバー著、深沢宏tr.『ヒンドゥー教と仏教』2002、原1921
▼三浦周行『明治維新と現代支那』S6-12
 S6-4に北平朝陽大学で講演し、ペリーの白旗二旒プレゼントの話をした。
▼土屋元作『内外交際心得』M32-11
 たしかに西洋人は貪欲だが、代りに、懶惰放逸、年中人の懐をアテにする若者はいない。
 この当時、米国では、平生の食事に絶対にアルコールは出てこない。晩すらも!
▼檜山鋭『頭脳明快 記憶力増進法』M45-4
▼河合榮治郎『自由主義の擁護』S21-10
 自然権とか、最大多数の最大幸福の名において追求されてきたものとは、個人の人格権の確立および自我実現である。
 英フェビアン社会主義こそ最良である。経済的な自由主義はダメだ。
 南阿戦争は、危険なリベラル・イムペリアリストが起こした。WWI指導者も同類。
 英ではここから自由党→労働党の雪崩が起きた。
 国のために死んでもいいと判断するのもしょせん個人。やはり人格の成長が結論するところ。
 「平等とは決して同視することと同じではない」
 自由主義が戦争に反対するのは、それが人格成長の目的に反するから。が、他国の支配の下では人格はのびないから、独立戦争はOKである。
 ゲーテいわく、自由と平等とを併せ与へんとするものは夢想家か山師かである、と。
▼防研史料 応用地雷設置の参考』S20-6
 ※日本版のブービートラップ集。
▼防研史料 『爆薬戦闘の参考』S20-3
 ※日本軍も本土決戦用に路側爆弾を研究している。貴重な陸軍用砲弾データを抜き書き。
▼東方籌『非常食糧の研究』S17-9
 難民小屋をどう維持するか。
 マタタビは人間も食べられる。
 藁は、根元地面から4~5寸の部分に、コメと同じ性分の澱粉を多分に含む。
▼牧野英一『非常時立法考』S18-4
 営団とは何か。重役を国家が選任する株式会社である。株主には配当をもらう権利だけがある。ただし肝心の配当率は制限されるのだ。
▼武藤当次郎『北支戦線陣中手記』S12-10
 シナ人は巧弁者である。
 か弱しと視れば、嬲り殺しにして楽しむ。
▼菊池寛『航空対談』S19、文藝春秋社pub.
 戦闘機は敵の前線の向こうへ深く入るものではないというのがWWIの判決だ。※日本陸軍航空隊がまったく仏式発想であることの貴重な証言。
▼原田慶吉『ローマ法の原理』S25
 国家の保障は武力及び法力である。
 キケロが軍事についていわく。我々の祖先は、勇気によっても遥かに強くなったが、それにもまして、訓練においても強くなった、と。
▼ヘンリー・サムナー・メイン著、安西文夫tr.『古代法』S23、原1861
▼吉野悟『ローマ法とその社会』1976
 自己の法を定めてこれを適用することのできない者は、それ故、他人の意見に従わざるを得ない。
 外人にだけ二重の市民権を与えたのは、ローマの支配者が決して道徳的でなかったけれども、確かに政治的であったことを示す。
 「財産を最も多く所有する貴族が、戦闘においても最も先んじて能く戦う者であり、それ故に平時の投票においても決定する者である」
 「パクタ・スント・セルヴァンダ」=契約はまもられなければならない。
▼長谷川春子『北支蒙疆戦線』S14-5
 山東の人間は他のシナ人と違い侠。津浦線は今でも襲撃され、奥地の村は、部落同士で襲い合う。日本軍が通ってもひっこんでいないで、見下すように見物している。
▼元機動砲兵第三聯隊第五中隊・野砲第三十三聯隊第一中隊『砲煙』1988
 討伐のため営門を出るときは、部隊に一ツ星(二等兵)が混ざっているとスパイの報告でナメられ、嵩にかかって攻められることになるため、2つ星(一等兵)に臨時に付け替える。
 アメーバ赤痢にビールが効くことがある。
▼「蛇と鳩」『丹羽文雄文学全集 第24巻』1975
 ※終戦直後、新興宗教で儲けようとした男の話。小説としてはつまらないが、取材した裏面の記述が面白い。
 築地の河岸をへだてて、もとの海軍病院がある。いまは占領軍が使っている。S21のこと、宴会から抜け出してその病院をながめていたら、米兵の患者が窓から空き瓶やコップを投げつけてきた。敗戦国人が宴会を開いているのが癇にさわったのだ。
 新興宗教の教祖には、マッサージ師や指圧療法士の出が多い。やってることは同じでも、宗教法人にすれば、脱税できるから。
 ヘロインなどの「麻薬を持ち込むのは、主に中国人らしいが、一種の中核自衛隊ができ上っているという」「卸までは、主に中国人」「港にはいってから、患者の手にはいるまでの時間が、短い。それほどこの組織は優秀だ。早く現金化することだ。たとえ少しでも持っていると、処罰されてしまうからね」
▼チャーリー・ベックウィズ、ドナルド・ノックス『対テロ特殊部隊を作った男』佐藤、草野tr. 原1983“DELTA FORCE”
 SASいわく、体は洗うな。髭を剃るな。虫刺されの可能性がそれだけ減るから。
 銃には負い紐をつけるな。肩から手に持ち直す間にやられてしまう。
 着衣で100m泳ぐには、犬掻きしかない。
▼ジェトロpub.『アフガニスタンの現況』S30
▼防研史料 『各種迫撃砲関係資料綴』
 97式iH(81.4ミリ)は、信管は100式2働(迫)である。
▼防研史料 『九七式曲射歩兵砲射表』
▼防研史料 『九七式曲射歩兵砲取扱法案』
▼防研史料 『九七式曲射歩兵砲取扱法』S16-7
▼防研史料『九七式曲射歩兵法 試製曲射大隊砲 説明書』S14-8
▼日本工業協会ed.『戦争と労働』S14-4
▼佐藤庄太『大統領マッキンレー』M34-10
 マッキンレーのハワイ併合はモンロー主義の変更であった。
 さらに、ニカラガ運河をつくって専有しようと図っていたところで殺される。
 次がテディ・ローズヴェルト。彼は大卒後、渡欧し、ハンニバルとナポレオンの戦跡ばかり廻って帰って来た。
▼川上徹『非常時、何を食べるか』1983
 S19の「決戦食生活工夫集」の紹介。
▼水野映男『ミサイルの話』S35
 著者は元海軍技術大尉。
 エリコン-56 および エリコンRSE(SAM)の話。
▼服部兵次郎『戦跡を顧みて 第一巻』S9-12
 旭川の混成第14旅団長による満州回顧。
 鮮農は一般に性格が満州人のように朗らかでない。
 不逞鮮人は学力がある。その排日の執拗さはシナ人以上。
 満州(西豊県)の回々教徒には日本贔屓がいる。
▼服部兵次郎『戦跡を顧みて 第二巻』S9-12
▼服部兵次郎『戦跡を顧みて 第三巻』S9-12
▼防研史料 呉海軍工廠砲熕部『艦砲射撃と砲術』S15-7
 ※水中弾の発見者は米海軍であり、1920から公知であることが窺われる。
◆ ◆ ◆
 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘録によって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。(配信されるファイルはPDFスタイルです。)
 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。
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15日の座談会、どうもお疲れ様でした。

 魚来亭の皆様、近江幸雄様、長川清悦様、片桐保昭様、川崎裕幸様、島根日日新聞の菊池幸介様、石原倫理様、函館新聞社の山崎純一様、その他札幌のスタッフの方等、どうもありがとうございました。思いがけず勉強になりました。
 来年1月の『日本主義』通巻vol.5号の仕上がりも楽しみです。


おしらせ

 季刊『日本主義』の凾館収録座談会の参加申し込みは締め切られました。
 ありがとうございました。


バンカラ・バンカーのブンカといふもの

 徳富蘇峰は明治18~20年に『新日本之青年』を書き、〈西洋人は青年からしてもう日本人にはありえない自活・自営の精神がある。しかし彼らの人生は決してカネ儲けだけで終始しているのじゃない。その脳内、たとえば宗教的・人道的な精神生活も、俺たちは学ばなきゃだめなんだよ〉、と強調していました。〔※国会図書館のOPAC検索のついでにその全文をPDF式に読むことができます。便利になったもんですね。古本で買えば9000円もするそうです。〕
 ところがさすがの博識の蘇峰大先生もツイ軽視してしまったと思われることがあります。それは、彼ら西洋青年の独立活計は、全面的に熱血青年流のスタイルで保たれているわけではない、という、当たり前の一面です。
 ちゃんと上司や商売相手のお髭のチリを払う作法というものが磨かれ、近代社会人として鍛錬されているのです。単独のビジネスでできることなど高が知れています。大きく稼ぐためには、たくさんの人を動かさなくてはならない。あるいは人に動いてもらわなくてはならない。そのために必要な、青年の熱血をとっくに通過した、温血的な大人の任侠道が出来ていました。
 このたびのノーベル賞授賞四連発は、ヨーロッパの金融財務指導部が、日本人の髭のチリを払った所作と考えて良いのではないでしょうか。
 これから「円」の支援が必要なので、ひとつヨロシク――と、彼ららしいクールな仁義を切っているのでしょう。
 また、〈どうです、これからはアメリカ抜き、『欧・日』で世界を仕切りませんか〉とも水を向けている。
 味なマネですよ。
 これを韓国指導部と比べてみると面白い。前回のIMF危機のとき、彼らは日本政府に大金を醵出させておいた上で何をしたか。思い出すのも馬鹿々々しいですね。大人の仁義が皆無なわけです。
 円も秋空並に高まりそうだし、江藤淳先生に今の有様を見せてやりたいです。


ケニー爺

謹告。
 『属国の防衛革命』の198頁で、三四三空を描いた東宝映画を「太平洋の嵐」と書きましたが、それは「太平洋の翼」の間違いだろうという指摘を頂戴いたしました。信頼している方からのご教示なので、確認してないですけどたぶん小生の間違いであります。
 どうも申し訳ないです。2版で訂正できるように頑張ります。


とうとう父さんとうさん通さん

 2001年刊の『田山花袋記念文学館研究紀要』の第14号を、おくればせながら館林市から取り寄せ、そこに収められていますところの工藤三壽男氏ご寄稿の「岡谷繁実と『時は過ぎゆく』」を一読。
 またしても繁実のイメージが変わりました。
 それにしても、ここに書かれているような情報が、なぜ事前にインターネットでヒットしなかったか――といぶかしんだのですが、OPACを見てみたら、工藤氏は1925年の御生まれ。無理もございません。
 なお、論文の「参考文献」に挙げられていた『館林双書 23巻』も必読だと確信しているところであります。しかし、1995年の「非売品」をどうやったら入手できるのだろうか……?
 さて、早速にも「10月中旬の『日本主義』函館座談会」に応募してくださった方々、どうもありがとうございます。
 なにしろ主催者側からスケジュールその他のディテールを知らされておらぬ段階ですので、今日の時点ではロクな確答もできません。恐縮です。(いまどきめずらしいことでしょうが、なんと、主催者側のEメール・アドレスが不明なのです。わたしはFAXで問い合わせをしております。)どうかいましばらくお待ち下さい。
 尚、遠隔にお住まいの方は基本的に無理であろうと愚考しております。きっと、旅費も出ませんから……。
 豆ちしき。
 バリバリ白ゆり(聖フランシスコ会?)のウチの山の神に訊いたら、麻生総理の洗礼名は、「清貧」を象徴するのだと謂うことだ。


裏嵐

 おしらせ。並木書房の『陸軍戸山流で検証する 日本刀真剣斬り』の二刷が出ることになりました。
 この機会に、単純な誤字、ヌケ字、冗字を主としまして、数箇所に微少な修整を施しました。
 ひとつ、大きな間違いがありまして、それは222頁10行目で、戸山学校の剣術科長がずっと「少佐」であったかのように書いてしまいましたけれども、これは「中佐」と書くべきところでしたから、ここに訂正を告知致しまして、既にお買い求めの皆様に深くお詫び申し上げます。
 以下、撃剣余談。
 ウチの3歳の子どもに、ダイソーで100円で買った「忍者刀」をもたせて、柔術の「一本取り」のおさらいをしようかと思ったっけか、裂帛の気合いとともに眼の色変えてふりまわすその太刀風に寸毫のつけいる隙もなく、こちらが一方的にズタズタに切り刻まれて、親父 the end ですた。ワハハハ……。
 余談PART 2
 『館林藩史話』という岡谷繁実の編纂した本を読んでいたら、おそろしい話が出ていました。屠腹の途中で、刀がよく切れないので、自分で研いで、また続きを切った、というのです。そんなすごい話を、なぜいままで他の文献では読んだ覚えがないのだろうか……?
 函館近郊にお住まいの方への呼びかけ。
 『日本主義』という熱い季刊誌がありまして、毎号、明治維新の特集をやっています。で、10月中旬にそのスタッフというかおそらく幹部の方が函館までわざわざいらして、小生と座談会をなさりたいと仰るのです。それは好いのですが、問題は、小生以外の出席者がみつからないんです。なにしろ左翼スタンスの染み着いた北海道で、維新史に造詣が深く、なおかつ「新風」さん好みの話ができる人っていうのは、もう、ないものねだりに近いですよね。でも、もしもいらしたら、ご連絡ください。(ちなみに、原稿料等はほとんど出ないだろうと強烈に予測されます。)


永久学生運動機関

 お詫び。
 『属国の防衛革命』の兵頭担当箇所に、いくつか誤字・錯字が発見されたので、この場を借りまして慎んで訂正を告知いたします。
○42頁 11行目
  装備大系 → 装備体系
○160頁 8行目
  バンチ力 → パンチ力
○196頁 17行目
  大井篤氏、福井静夫ら → 大井篤、福井静夫氏ら
   ……今後も、この種の小修正に努めて参る所存です。


ねこみみにみず (ニャミダのニャン)

 謹告。
 『[新訳]名将言行録』の158ページにミスプリがあります。7行目、「運んだ」の後に句点(。)が入ります。2刷では、ここで改行して貰うつもりです。
 ありえない単純誤植です。深くお詫びします。


さっそく訂正

 『[新訳]名将言行録』の160ページで、〈仙台城の普請を重臣が進言した〉旨の記述は、〈占領した会津黒川城の普請を重臣が進言した〉の誤りではないか、との指摘が読者さんからありました。
 いかにも明白な誤りのように思えますので、1刷をお買い求めの皆様には、この場をお借りしましてお詫びを申し上げ、卒爾乍ら謹んで告知させていただきます。また2刷では当該箇所の記述を訂正したいと存じます。
 訳者兵頭は、読者の皆様からの更なるご叱正をお待ち申し上げます。埼玉県の○○様、どうもありがとうございました。
追伸:田山花袋の『時は過ぎゆく』をおそまきながら読み、原著者繁実の生々しいイメージを得ることができました。さらに調べて、まえがきも充実させて行ければと念じております。