鐘撞き放題、ただし有料……というニッチ・ビジネスは、どうだろう?

 東北とか北海道は山の中に土地が余っているんだから、そういう山奥に「鐘撞き堂」を置いて、賽銭箱に現金を投入すれば、誰でも1年365日、1日24時間、いつでも何発でも鐘つきほうだいできる――というようにすればいいじゃないか。

 ストレス解消にもなり、インスタ映えもするだろう。アクセス歩道にはソーラー照明を設置するとよい。

 ……というわけでみんな、正月そうそうすまぬが、「カネをくれ!」。

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 Kris Osborn 記者による2022-12-24記事「What it is Like to Fly an F-35: Interviews with Three F-35 Pilots」。
   F-16からF-35に乗り換えたパイロットの感想。
 F-35の搭乗員は、パイロットというより、センサーの監督。

 豊富なセンサー情報を見渡して、次に打つべき手を決める。それが仕事。

 F-16はもちろん、F-22であっても、空対空の戦闘のさなかにこっちがAAMを放った後の面倒な心配事がたくさんある。それは本当に命中したか? 敵の方からもAAMやSAMが飛んできてはいないか? それを避けるためにじぶんは機動しなくちゃいけないんじゃないか? 首をひねって回りを見渡さねば! ……これらの心配事が、F-35の場合、まるで、無用なのである。

 すべて、見えている。肉眼では何も見えやしない距離なのだが、統合センサーの表示パネルが、必要なことぜんぶを明瞭にリアルタイムに教えてくれるのだ。だから、操縦者が肉眼で警戒をしたり、肉眼で外界を確かめる必要がない。こんなに仕事の楽な戦闘機も無い。

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 Peter Aitken 記者による2022-12-30記事「Kremlin showing cracks as Putin fires another general, British Intelligence says」。
   英国防省の情報分析によると、露軍のイェフゲニィ・ニキフォロフ中将が、露軍の西部軍集団の司令官に据えられようとしている。

 ニキフォロフはこれまで、露軍東部軍集団の参謀長であった。

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 Boyko Nikolov 記者による2022-12-31記事「Damages to 16 of 18 Caesar SPHs delivered to Ukraine ? Le Figaro」。
    フランスはウクライナに18両の「カエサル」装輪自走砲を供給したが、はやくもそのうち16両が損耗している。

 故障の理由は露軍のせいではない。砲身内部の耐久性が足らぬために実戦の激しい連射によって焼蝕が進行してしまったのだ。
 『ル・フィガロ』紙12月28日刊号がすっぱぬいた。

 仏軍はカエサルを2008から使っている。砲身は52口径長である。
 ロケットアシスト弾を使うと最大レンジは50km。

 ※ちなみに露軍の新鋭の牽引式152ミリである「2A36 ギアツィントB」榴弾砲はレンジ40km、それより古い「D-30」三脚牽引砲だと22kmである。

 ウクライナは、榴弾砲の修理は自国内で実施したい。いちいちポーランド領まで持ち出したり持ち帰ったりするのでは、その輸送の途中を露軍に攻撃されるおそれがあるので。
 そうでなくても国外整備は時間がかかりすぎるとウクライナ軍は感じている。

 ウクライナ国防相はとうぜん、フランスのルコノー国防大臣に前々から「ルクレール」主力戦車を供与してくれと頼んでいる。
 しかし仏側は、ウクライナ人に新鋭戦車の整備は無理、という理由で拒否している。

 カエサルは、ベースのトラックを6×6にしてもいいし、8×8にしてもいい。デンマーク軍はタトラの815のシャシ(8×8)に載せている(現有19両)。このデンマークが何門かをウクライナに無償提供することを、フランスは許可している。

 あまり報道されていないアイテムとしては、「HDP-2A2」という対戦車地雷を、フランスはウクライナに供与しているそうである。

 ※ウィキによるとこれは自己鍛造弾薬と電子フューズを組み合わせたスマート地雷で、仕掛けて10分後に活性化し、獲物が通りかからなかった場合は30日後に自動で無害化する。仏軍は2006年に40万発も注文した。他にはベルギー軍とノルウェー軍がユーザー。スイスは「対戦車地雷88」の名でライセンス製造している。炸薬3.3kg。地雷の厚さ104ミリ。水深1.5mの水底にも仕掛けられる。

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 2022-12-26記事「German power to the people, trains and stations of Ukraine」。
   ウクライナ国鉄「UZ」は、「ドイチェ・バーン(独鉄)」から、63基の「発電機」をプレゼントされた。
 この発電機、動いている列車の中でも、使うことができる。とつぜんの停電が発生したときに、それによって短時間、車内照明や暖房を継続できるというわけだ。

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 Emma Helfrich, Tyler Rogoway 記者による2022-12-30記事「U.S. Building Advanced Over-The-Horizon Radar On Palau」。
    フィリピンとグァムとニューギニアの中間にあるパラオ諸島。ここに米空軍が、新しいOTH(超水平線)レーダーを建設して、中共軍の動きを見張る。

 レンジが戦略視程ではないので、戦術移動式OTHレーダー、略してTACMORと称する。
 グァム島に近づく物は何でも遠くから分かってしまう。

 建設予算として1億1840万ドルがつけられた。
 完成は2026-6を期す。

 ※中共軍がグァム攻略に資源を集中する気配があるが、米軍はそこから一歩も引く気はない。アプラに碇泊するイージス艦の対弾道弾迎撃機能も強化するようである。

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 ストラテジーペイジの2022-12-30記事。
   スペースX社の新ビジネス構想。スターリンクのような無数(数万機)の小型衛星群に、地上センサーも搭載してやる。そして、そこから得られる全地球規模のリアルタイムの情報を、国家機関に切り売りする。米政府と、同盟国政府の。

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 2022-12-31記事「South Korean National Assembly delegation visited Taiwan: MOFA」。
   韓国の国会議員団が、訪台した。12-28から31日まで。
 台韓友好議員団というのがあるのである。

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 Lawrence Chung 記者による2022-12-31記事「Taiwan’s plan for 1-year compulsory military service includes teaching young conscripts to fire missiles」。
   2024年から、台湾の徴兵年限が4ヵ月から1年に延長されるのにともない、訓練内容を高度化する。すなわち、歩兵銃の操作だけでなく、スティンガーやジャヴェリンも扱えるようにする。

 ※1630年代、すなわち三十年戦争のさなか、スウェーデンのグスタフ2世は、じぶんの歩兵たちに、乗馬して機動できることと、砲兵の代役にもいつでもなれるよう、野砲の操砲までも教え込んでいた。歩兵をマルチタスク化した先駆者である。

 1987年以前の台湾の徴兵は、3年も服務する義務があったので、それにくらべたら緩いものだ。

 新制度にともなって俸給も増額される。今は6510台湾ドルしかもらえていないが、それを20320台湾ドル(660米ドル)以上にする。

 小火器訓練も、たんなる的射ち練習ではなく、彼我近接した市街戦の基本を教える。
 実弾も1年間に800発は撃たせる。

 ※わが陸自も、三曹以上になったら、ただの小銃班員であるとしても、対戦車誘導兵器、対空兵器、ドローン等のうち複数の操作の知識があるようにしておくことは、これからは当然だと思う。ウクライナ人は3ヵ月ですべて覚えたぞ。


(管理人Uより)

 あけましておめでとうございます。

 正月早々ユグドアのご喜捨の送金手続き完了。
 右や左の旦那様、皆様から兵頭二十八先生へのお年玉でございます。

 今年も兵頭二十八ファンサイト半公式をよろしくお願いします。


どなたか『朝鮮鉄道四十年略史』のPDFをめぐんでくだされ。1940年版という。

 Joseph Trevithick 記者による2022-12-21記事「The F-35B Can Eject Its Pilot Automatically」。
    12-15にフォートワースで垂直着陸に失敗してベイルアウトに至ったF-35B。じつは、B型には、全自動で射出される座席がついているので、あれはパイロットが判断して脱出したわけではないのである。

 射出座席は、マーチン・ベイカーの「US16E」だ。

 ちなみにハリアーの射出座席は自動ではなかった。それでなんの問題もなかった。だから英BEA社のテスパイ氏は、F-35Bになぜそんなものが必要なのかと2020時点で疑問を呈したものだ。今、英海軍はB型のユーザーである。

 とうぜん、理由がある。
 ハリアーとF-35Bでは、下向きジェットの固有安定度が異なるのである。
 ハリアーの下向きスラストは、機体中央部にあるひとつのエンジンから、機体重心点を均等にとり囲んだ4個のノズルに分配されて噴き出すようになっており、したがって、もしエンジンが咳き込んだ場合、そのすべてのノズルが同じように咳き込む。そのさい、重心を中心とした垂直軸は、崩れない。

 ところがF-35Bは違う。主エンジンは機体後部にあり、ベクタードスラストで尾端から真下向きにジェット噴流を出せるが、それは機体重心からは外れている。それを補償すべく、動力伝達シャフトによってVTOL時だけ、胴体前方にあるリフト専用ファンを回すのだ。

 そこに万一、ホバリング中、主エンジンの推力だけが急低下するようなトラブルが生じたら、リフト用ファンの推力のために機体は不慮のバック転に入ってしまうだろう。
 またもし、リフト用ファンの推力だけが突如うしなわれれば、機体は不慮の前転に入ってしまうだろう。

 それゆえ、AIが危険を判断してパイロットの決心よりも早く、座席をエジェクトさせるようにしないと、射出方向が地面へ向いてしまって、救命が間に合わないのだ。シャフトが折れた場合、この前転は2秒で起きるという。

 前転と後転とでは、前転が危いと考えられている。というのは、主エンジンのタービン回転には大きな慣性があるから、それがとつぜん推力ゼロになるようなことはまずないだろう。しかしリフト用のファンは軽いから、慣性も小さく、すぐに止まってしまう。結論として、ホバリング中の不慮前転のリスクが、F-35B型では大きい。

 ソ連の「ヤク38」「ヤク141」にも、同じ理由から、自動射出座席システムが備わっていた。ただし、ヤクのVTOL方式は、リフトファンではなくて、専用の小型のリフトエンジンを、主エンジンとは別に積むスタイルであった。

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 『The Maritime Executive』の2022-12-22記事「MSC Containership Held Offshore After Belgium Receives Bomb Threat」。
   コンテナ船『MSC ロレナ』6万トン(4870TEU)は、12月23日にアントワープ港に入る直前に、爆弾を仕掛けたという脅迫電話があったので、沖待ちさせられている。
 ベルギー政府は、この船をアンカレジまで戻してチェックさせたい。
 この船はアフリカ諸港をまわって、アントワープにやってきた。

 脅迫電話はベルギー連邦警察にかかってきた。アントワープ港に接岸した直後に爆発すると言ったそうだ。

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 Brendan Cole 記者による2022-12-22記事「Russia’s Only Aircraft Carrier Catches Fire」。
    ムルマンスクでここ何年も修理を続けている唯一のロシア空母『アドミラル・クズネツォフ』艦内でまた火災が発生した。

 ※サットン氏によると黒海の軍港にまた露艦が集まってきているので、近々、何かやらかす気ではないかという。

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 ストラテジーペイジの2022-12-22記事。
    フィンランドのパトリアAMVは2004から同国軍に採用されている。その2013年の改良型が「AMV XP」である。
 これによって陸自の360両の「96式」を更新して行く。

 ※モスクワ市内のフィンランド大使館の、通りに面した庭に、覆面の男たちがスレッジハンマーを投げ込む嫌ガラセ事件が12-20に発生。もちろんロシアの警察はこれを取り締まっていない。

 ※雑報によると、コラ半島からGPS攪乱電波が輻射され続けており、11月以来、民航のフィンマークは大迷惑を蒙っている。

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 Elisabeth Gosselin-Malo 記者による2022-11-21記事「Serbia may become biggest operator of military drones in Balkans」。
   コソヴォで緊張が高まっている中、セルビアの大統領は、軍の施設の近くを飛ぶUAVはぜんぶ撃墜しろと命令した。
 そしてイラン人の示唆によると、セルビアはイラン製のUAVを買い付けようとしている。

 バルカン半島の中で、2019年以降、セルビアは最大の軍事予算支出国である。
 同国はすでに2020-6に、中共から「CH-92A」無人機を複数買っている。戦闘行動半径250km。

 ユーロサトリ2022に、セルビアは「ガヴラン」という国産のロイタリングミュニションを出展した。最大離陸重量50kg、ペイロード15kg、最高速力120km/時を30分間発揮可能、航続距離100kmという。、

 マルチコプター型で、トラックやトレーラーからスウォーム運用できる。
 自爆ではなく、弾薬を投下するバージョンは「ヴラバク」という。40ミリ擲弾を6発、吊下できる。

 このほかセルビアは、イスラエルから「オービター1」を買っている。また、国産品の「シラク 750C」というドローンもある。

 イラン軍少将のラヒム・サハァヴィは、セルビアはイランから無人機を買っている22国のうちの1国になるだろうと発言した。これは、トルコから「TB2」を買おうという話がなくなることを意味する。

 ※雑報によると11月16日のオリヨールの原油タンク空爆は、TB2のしわざであったという。特攻自爆ではなく、UAVから爆弾を投下して直撃させるIRビデオが、SNSに出ている。

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 Jaroslaw Adamowski 記者による2022-12-22記事「Romania spends $410 million on Israeli-British Watchkeeper drones」。
    ルーマニアの国営軍需企業「ロムテクニカ」は、同国国防省の代理人として、契約した。相手はイスラエルのエルビット社。「ウォッチキーパーX」というドローンを最大7機、買う。

 税抜きで4億1000万米ドルの取引になるだろう。
 3機目からは、一部のパーツを国産化する。

 ウォッチキーパーは、「ヘルメス450」の派生型だ。そのメーカーの株式の49%は、「タレスUK」が持っている。

 次。
 Steve Holland 記者による2022-12-23記事「Exclusive: US says Russia’s Wagner Group bought North Korean weapons for Ukraine war」。
   火曜日、ホワイトハウスの国家安全保障委員会のスポークスマン、カービィが発表。
 ワグネルグループは世界中から弾薬を調達して露軍に届ける特務機関の役割を果たしつつあり。
 すでに北鮮がワグネルに初回バッチの弾薬を売り渡したことを米政府は把握していると。そして先月、北鮮製の地対地ロケット弾と地対地ミサイルが、ワグネル部隊が使用する分としてロシア領内に搬入されていると。

 ワグネル部隊の兵力は5万人。うち4万は、刑務所から集めた囚人兵。

 ※ゼレンスキーを米連邦議会に招くと同時にペトリオット1基の供与を確定した演出はさすがである。これについてモスクワがもし脅迫めいた言辞を弄するなら、それは米議会に向けた脅迫になる。米国の「宣戦布告権」は米議会にあって、大統領にはないのだ。また一連の演出は、トランプとプーチンは国内外の民主主義の敵なのだというイメージを明確化することにも成功した。


駱駝の本はなんとかなりました(九拝)。あとはベトナムの自転車の本を宜しくお願いします!

 Jeff Schogol 記者による2022-12-9記事「Who is Paul Whelan, the Marine veteran left behind in Russia in the Griner-Bout prisoner swap?」
   元海兵隊員の犯罪者ポール・ウェランはひきつづいてロシアの監獄の鉄格子の中だ。
 ウェランはモスクワにて、自動車部品メーカーのセキュリティ担当部長として働いていたが、2018年にスパイ容疑で逮捕された。2年後、裁判所で16年の強制労働刑を言い渡されている。

 家族も、あまり彼の救出活動には熱心ではない。

 ウェランは1994から2008まで、海兵隊の予備役であった。2004-2~2004-8、そして2006-2~2006-12の二度、イラクに出征もしている。

 しかしウェランは素行が悪く、2008-1-14に、曹長から二等兵に降等された上で除隊させられせられた。
 軍法会議によると、こやつは窃盗、職務放棄、公文書偽造、他人の社会保険証番号の悪用、小切手詐欺、などを在職中に繰り返していた。

 NYT報道によれば、当初ロシアは、もし米政府がウェランを釈放してくれと頼むなら、そのかわりにヴァディム・クラシコフを釈放せよと要求した。クラシコフは殺人罪でドイツの刑務所に無期服役中の男。ベルリンにてチェチェン分離主義者を暗殺したのだ。

 またロシアは、このクラシコフの釈放を条件に、グリナー(バスケ選手)+ウェランを交換釈放する、とももちかけていた。しかし11月になり、提案を改めた。こんどは、グリナーとひきかえにボウト(武器密輸商)を交換釈放せよと。

 というわけで、このたびはホワイトハウスが「グリナーかウェランか」の選択をしたわけではないのである。
 ※米国内のキチガイ右翼は、ウェランを愛国者のようにもちあげてバイデンを叩いている。たしかにグリナーは反米スタンスのしょうもない人物だろうが、ウェランとは比較にならん。

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 Adam Taylor and Claire Parker 記者による2022-12-9記事「Who is Viktor Bout, Russian arms dealer swapped for Brittney Griner?」。
    ヴィクトル・ボウト〔ニコラス・ケイジ主演の映画のモデルとされる〕は55歳。元、露軍の通訳。ソ連崩壊後に国際航空運送業に進出。

 ボウトは2008にタイで逮捕された。ひっかけ捜査だった。
 コロムビアの革命軍に武器を供給した嫌疑について有罪とされ、そこで米国人の命を危なくしたというので、裁判で有罪を宣告され、イリノイ州の刑務所に刑期25年でブチ込まれていた。

 クレムリンは長年、ボウトの釈放を働きかけてきた。

 ※モスクワのショッピングモールを爆破したのはルカシェンコかもしれんぞ。外相をFSBに暗殺されたままで泣き寝入りはできぬから。やられたらやり返す。是大原則也。

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 ロイターの2022-12-10記事。
   カンサス州で、径36インチの原油パイプライン(油田から精油所へ向けて送り出している)から環境中への大漏出が始まってしまい、えらい騒ぎになっている。

 パイプラインを保有し運営している会社は「TCエナジー」社。

 パイプラインは全長が4324kmもある。2010年の運開いらい、漏出事故はこれで三度目だという。前回の事故では、漏れを止めるのに2週間を要した。

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 Boyko Nikolov 記者による2022-12-10記事「US allies pay $1B for new F-35’s computer ? twice as planned」。
   『ブルームバーグ』が12-9に報じた。F-35を買った諸国は、総額で10億ドル、追加でロックマートに支払わねばならぬ。というのは7億1200万ドルで開発できるはずだった新コンピュータ機能にどんどん追加費用が発生し、最終的に、それプラス、6億8000万ドル必要になったから。

 ※まさかこのおかげで空自がカニバリズム整備をしているわけ? でも最初から読めてたよね、こうなって行くであろうことは……。

 ソフトウェアを刷新したF-35の納品開始は2023-7と設定されていたが、それが大幅に遅れることも避けられないそうだ。

 すでにF-35を買っている諸国は、ソフトウェアのアップグレード費用の請求書を見て、これから、目玉が飛び出すはずである。

 ひとあし早く、豪州ジャーナリストが、F-35を買ったのは大きな誤りだったと政府を糾弾している。

 ※この流れの中から、日英伊共同開発のFXが正当化されるわけか。ネットテック企業大手による世界支配にひとびとが目を奪われていたあいだに、じつは、「ロックマート」という、米政府にも米議会にもまったく制御できなくなっている「スーパー越後屋」(おぬしもワルよのう)が成長していたと考えられる。外国政府の顧客にハードウェアを買わせたあとで、無制限にソフトウェアのアップデート費用を毟る合法スキームを、彼らは完成してしまった。

 次。
 Joseph Trevithick 記者による2022-12-9記事「Russian Su-35s Could Soon Be Delivered To Iran, Pilots Trained Last Spring」。
   イランがロシアから「スホイ35」を来年の春に調達するのは確実だ。イラン人パイロットの飛行訓練を、来年春からロシア国内で開始するという。

 ※そのチップはどこから入手するんだよ? また真空管に戻すか?

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 Defense Express の2022-12-10記事「India Purchased French Carrier-Based Rafale M Fighters Instead of russia’s MiG-29K」。
  インド政府は26機買うことを決めた。フランスのダッソー社製「ラファールM」艦上戦闘機を。

 「マルチロール母艦搭載戦闘機」、略して「MRCBF」を、インド海軍は探し求めていた。候補としては、F/A-18 スーパーホーネットと「ミグ29K」も挙がっていた。

 ラファールMは、ミグ29Kより小型である。

 ※イタリアやトルコはもう無人機空母の建造に動き出している。インドはパキ相手に有人機+空母で買った勝利体験があるから、この古い路線からのがれられない。日本も同じだね。

 次。
 Rojoef Manuel 記者による2022-12-9記事「Japan to Replace Armored Personnel Carriers With Patria’s Modular Vehicles」。
   AMVとは、「装甲モジュラー車両」の略号である。

 フィンランド企業のパトリア社が日本国内の工場で製造する。
 AMVの系列を採用するのは、日本が9ヵ国目である。

 パトリア社は、2018年から、日本の次期装輪APCに関して、日本と協働してきた。日本国内に支社を置いて。

 日本側にパトリア社の技術を移す、ライセンス交渉がこれから始まる。

 ※雑報によるとモロッコが初めて対ウクライナ武器支援に乗り出す。数十両の古いT-72を放出する見込み。

 ※ある考古学者がこんなことを書いている(ラクダの本の冒頭に引用されていた)。古代中東で製造されて遠くシナまで波及した、2頭曳き~4頭曳きのチャリオット。土地がよほど平滑でしかも無植生でもなければ、こうした多頭曳きの「戦車」は使いづらいものだ。むしろ1頭曳きを工夫した方が現実の役に立ったはずである。しかし古代人は敢てそうはしなかった。なぜか? かれらはまず、リアルのチャリオットに先立って、「神の勇姿」として、多頭曳き戦車のイメージを確立してしまっていたのだ。地上の王たちは、是が非でもその神の姿に似せて行かないと、どうにも権威が伴わぬように思われたわけである。……いやこの話、現代にもあるでしょう。MBTとか有人艦上戦闘機とか、こだわる必要がどこにあるんですかい?


どなたか Richard W. Bulliet 著『The camel and the wheel』(1975)の古本をめぐんでくださらないだろうか? その後のペーパーバック版でも可。

 あと、Jean Fitzpatrick 著『The Bicycle in Wartime』(1998)の古本もおねげえしますだ。ただしこっちは必須ではねえ。ベトナム戦争中の自転車兵站に関しては、英文サイトの公開記事だけでもかなり真相に迫れますで……。念を入れて確認をしたいだけなんで……。

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 Tanmay Kadam 記者による2022-12-9記事「US Equips Ukraine With ‘Fake’ Missile Defense Systems To Confuse Russian Fighter Pilots & Suppress Air Raids」。
    米国がウクライナに一風変わった電子戦装備を供与している。SAMの偽レーダー波を輻射する装置だ。トラックで牽引する。

 ロシア空軍機は、ウクライナ軍がS-300やBuk-M1をもっているうちは、高度4500m以上は飛べない。しかし低空を飛び続けるということは、こんどはMANPADSの餌食に、いつなるかしれぬということである。

 その中高度~高々度用のSAMをウクライナ軍が発射するペースが落ちている。残弾が少なくなってきたからだ。これは放置するとマズイ。

 宇軍はS-300のラーンチャーをすでに36基、爆砕されてしまった。これはオリックスによる確認カウントだから、実数はもっと多いはずだ。

 7月に観測されたところでは、宇軍は週に3基または4基のS-300ラーンチャーをやられている。

 ウクライナはS-300を国内生産しておらず、いまはストックをひたすら食い潰している状況。
 誰かに補給してもらわねばならない。

 「S-300」がそこにあるかのように見せかけられる、フェイクの対空レーダー(脅威エミッター)を米国がウクライナに供給しているという特だねは、『エビエーションウィーク』が12-4に報じた。

 ノースロップグラマン社は「ジョイント脅威エミッター」なる製品を作って、空軍に納めている。
 指揮所装置はトレーラーに載っているので、それをトラックで牽引して移動展開させる。

 この1つの指揮所装置から、12個のエミッター装置を統制できる。
 1個のエミッター装置は、同時に6種類の既知のレーダー製品に擬態することも可能という。

 「脅威エミッター」がうまく機能していると、飛んできたロシア空軍のパイロットには、地上に有力なウクライナ軍のSAM基地群が健在であるとしか思えなくなる。そんな空域に敢て接近はしがたくなるのである。

 次。
 Defense Express の2022-12-9記事「Tu-22M3 Vanished From russian Airfields After the Explosion on Dyagilevo Air Base (Photo)」。
    ディヤギレヴォ空港に10機いたはずの「ツポレフ22M3 バックファイアー」が、基地を逃げ出したことが民間衛星写真で確認できる。先日12-7の無人機特攻におそれをなしたのだ。

 尾翼とテールを損傷した1機も消えた。あの状態で飛んだのである。すげえ。

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 David Brennan 記者による2022-12-8記事「It’s Time For NATO To Give Ukraine Tanks, Long-Range Missiles: Estonia FM」。
 エストニアの外相が呼びかけている。NATOは西側製のMBTと長距離ミサイルをウクライナに供与して、はやく勝利させなくてはダメだと。

 ※雑報によると、宇軍はイタリアから120ミリ重迫を貰って、それをもう前線で使っている。ロケットアシスト弾だと13kmも飛ぶという。

 ※「スカイ・ワイパー」というドローン・ジャマー。兵隊が一人で操作できる電子機材。露軍の「Mavic 3」をじっさいに地表に着地させてしまう動画がSNSに出ている。

 ※スロヴァキアは無人地雷処理車両を2両、ウクライナに寄贈した。なんと5000mも離れた場所からリモコンできる。

 ※ドイツはこんどは「RC-155」という最新鋭の装輪式十五榴を18両、寄贈するという。これは8×8の「ボクサー」装甲車の車体に、PzH2000のターレットをのっけたもの。走りながら射撃ができるとフカしている。

 次。
 Defense Express の2022-12-9記事「russians Use MiG-31 Aircraft With R-37 Missiles Against Ukraine’s Aircraft, But Ukrainian Pilots Know How to Evade the Threat (Video)」。
   ウクライナは「ミグ29」の英雄パイロットのインタビュービデオを公表した。5機の「シャヘド136」を10-12に撃墜したものの、そのさい破片がコクピットを直撃してしまい、自機もやられてしまった。

 この少佐いわく、露軍の「ミグ31BM」が、しばしば長射程のAAMを放ってくるが、回避するのは簡単だという。

 ※モーターはすでに切れていて、上空から惰性で落下してくるだけなので、こっちが大きく機動すると、もはや追随しては来られない。余談だがカモフ52を撃墜したS-300の命中動画も、斜め上から降って来た感じだね。

 ロシアの宣伝では、「R-37M」という超射程AAMは、NATOのAWACSと空中給油機を攻撃するために開発され、射距離が400kmもあるというのだが、この少佐いわく、それはプロパガンダにすぎない、と。

 次。
 ストラテジーペイジの2022-12-9記事。
  11月2日に伝えられたこと。中共からナイジェリアに輸出した「VT4」という戦車に、ユーザーの戦車兵たちがクレームを付けている。別名「MBT3000」。

 戦闘中、125粍砲弾を装填して発射するまでに30分もかかった――そうだ。

 訓練もなければ、整備もしない。それがナイジェリア軍だが、「VT4」は基本、T-72の派生バージョンなので、ウクライナの実情を見て戦車兵たちが不安を覚えるのはあたりまえだろう。

 ちなみに「VT1」は別名「MBT2000」。中共では90式戦車とも称するが中共軍では採用していない。
 中共軍が使っているのは、重さ54トンの「99式戦車」である。T-72の国産型で2001年からある。

 2011年に、4トン重い改良型が採用された。それら99式はぜんぶで1200両ほど現役。

 T-72と同格の中共戦車はぜんぶで2500両あるはず。そしてT-54/55同格の古い戦車は3500両ほどあるはず。

 ※露軍はウクライナで2-24いらい、すでに900両のT-72系を破壊された他、550両が戦場に遺棄されて宇軍に奪われている。

 ※いまベトナムでささやかな兵器展示即売会をやっているそうだ。とうぜん、米国はベトナムに152ミリ砲弾や155ミリ砲弾を安く製造させて大量に買い付けるオプションを模索しているはず。何の報道もないがゆえに、目が離せないぜ。このビジネスが拡大すれば、ベトナム経済は「技能研修生」など送り出す必要はなくなる。

 次。
 Valerie Insinna 記者による2022-12-8記事「Congress protects F-22s from retirement, oks sending some A-10s to the boneyard」。
   FY2023にて21機の「A-10」をボーンヤード送りにすることを、連邦議会が初めて承認した。
 まずインディアナ州兵空軍(フォートウェイン)のスコードロンが、A-10からF-16に切り替えられる。

 他方で、上下両院は、空軍が33機の最も古いF-22(ブロック20)をモスボールしたがっているのを禁ずる。

 空軍の言い分では、この古いF-22は戦闘に投入できるコンディションではすでになく、今後8年間で18億ドルもの無駄な整備費が税金から支出されることになりますぜ。

 次。
 Jedrzej Graf 記者による2022-12-9記事「Korea or Nothing. The Only and Last Chance to Boost the Polish Industry [COMMENTARY]」。
   もともとポーランドは「レオパルト2PL」を国内生産する計画だった。それは2021年には生産開始されているはずだったが、遅れに遅れ、いまの見込みでは2027年にならないと生産開始できない。
 これではヨッパライの平凡爺さんが支配する気違い隣国からのヤケクソ攻撃の切迫に対応ができない。

 そこで物事の決定が早い韓国製の導入を決めた。需要と供給がマッチした。

 次。

 Boyko Nikolov 記者による2022-12-9記事「Japan begins production of Patria AMVXP 8×8, replacing Type-96」。
    小松のAFV事業撤退により、「96式装輪装甲車」の後継8×8IFVは、フィンランドのパトリアAMVXPに決まった。これはパトリア社が公式発表した。

 パトリアAMVは2004からフィンランド軍が使っている。フィン軍によってアフガニスタンに持ち込まれていた他、サウジ軍が買ったものが対イエメン作戦でも使われている。すなわちコンバットプルーフが完全に済んでいる。折紙付きだから安心できる。

 陸自はパトリアに次のような注文をしたという。105mm砲や120ミリ重迫を搭載しようと思えばできること。また、パワートレインは日本で勝手に選択するから。

 基本、AMVには、3種類のディーゼルエンジンが用意されている。「DI 12 スカニア」か「DC 12 スカニア」か「DC 13 スカニア」。弱いやつは480馬力。強いやつは600馬力だ。

 AMVXPは路上では時速100km出せる。10km/時で浮航もできる。満タン燃料にて600kmから1000km走れる。

 完成品輸入ではなく、ライセンス生産になるようだ。

 ※バルセロナにあるニッサンの巨大工場で、8×8IFVの「ドラゴン」を生産してスペイン軍が調達するという報道が2021-12にあったのだが、続報は聞かぬ。


どなたか『ウイッテ伯回想記』をめぐんで下さらぬか?

 それとは別件ですが、《ユグドア》や《note》で兵頭を直接支援するオンラインの方法がむずかしいとお思いの方々へ。
 そのような場合は、兵頭の過去の単行本(古書ではなく新品)を、アマゾンなどの通販でお買い求めになり、それを、どこか離島もしくは僻地の公共図書館(または学校図書館)の「収書課」宛てに、めいめい郵送してご寄贈ください。
 それによって日本国の軍事系言論の環境が国土の隅々から改善されます。また、小生も、次の新刊企画を出版社に提案し易くなるのであります(新品の売れ行きデータが取次店に記録され、ロングセラーと認識されるからです)。

 次。
 ストラテジーペイジの2022-11-13記事。
   トルコの兵器メーカーが、新しいロイタリングミュニション「アルパグト」を完成。スペックが凄い!
 弾頭重量が11kgで全重が45kg。

 ※これはもう「うろつき型の155ミリ榴弾」だと言ってさしつかえない。さいしょからそのように意図しているだろう。

 ただし、陸上や艦上からは発射できない。
 「アルパグト」は、「TB2」のような中型無人機からリリースされる、空中発射型のロイタリングミュニションなのである。高空から発射することにより、レンジが60kmに達する。そして発射母機は、敵のSAMの脅威圏外にとどまれる。

 まずトルコ軍が使ってみて問題点を改善する。それから、陸上発射型などのバージョンを計画するであろう。
 メーカーは自慢する。中共の無人機とちがって、うちらの新兵器には他国から盗んだ技術は使用されていないのである、と。
 とは申せ、トルコは過去にイスラエルから「ハロプ」を輸入しているのだが……。

 ※今次ウクライナ戦争で得られた多数のビデオフッテージにより、現代であっても敵の主力戦車を撃破するには十五榴の至近爆発で十分であったことが確認できた。10kgの高性能炸薬を充填できるなら、直撃の必要はなく、したがってHEATにする必要もない。すなわち対戦車を狙うロイタリングミュニションでも、10~11kgの炸薬が充填してあればよく、それ以上の巨大弾頭を運搬させようとするのは無駄だ。発射時に強い加速度もかからないのだから、その弾殻は薄い軽合金でいい。それで浮かせた重量で航続距離を延ばす。この考え方を設計の出発点にして、いろいろなレンジのロイタリングミュニションを、極力安価に製造するのが悧巧というものである。イスラエルは「ハロプ」が高額すぎたという反省から、トラック荷台のカタパルトから打ち出せるその廉価版の「スカイストライカー」を2018にリリースしている。その弾頭炸薬は5kgと10kgを選べるようにしている。ただしイスラエルは、ロイタリングミュニションが破壊目標を発見できなかったときには、呼び戻してパラシュートで回収&再利用するという流儀にこだわっている。そんなのはコスト高でダメだ。イランの「シャヘド136」の割り切りが正しいのだ。GPS座標だけを入力し、動かない目標に対して低速で片道特攻させる。これならカメラも通信機も必要ない。最安値で大量生産できる。途中の数箇所のウェイポイントでのみGPSを参照するようにし、最後のコースはINSだけで自律飛行させることとすれば、もはやスプーフィングも受けない。多数機を次々と投入すればロシアの鉄道は止まる。敵の戦車部隊も夜中に停止して休憩することができなくなる。ウクライナに必要なのは、「シャヘド136」の軽量弾頭型(12kg未満に軽減する)であろう。

 次。
 AFPの2022-11-12記事「X-37B orbital test vehicle concludes sixth mission」。
   米宇宙軍の「無人スペースシャトル」である「X-37B」が地上に帰還した。900日以上も地球を周回していた。

 次。
 Minnie Chan 記者による2022-11-11記事「High hopes of China’s H-20 stealth bomber launch as PLA top brass vow weapon system upgrades」。
   米空軍は次期ステルス戦略爆撃機として「B-21 レイダー」をもうじき飛ばすところまで漕ぎ付けているが、これに対抗した《中共版B-2》といえるのが「轟20」だ。

 中共軍は、「轟20」はもうじき飛ぶ、と言っている。

 ※ほんらいならば、中共党大会、もしくはG20サミットでバイデンと熊プーが面談するタイミングに合わせて「轟20」を初飛行させ、世界に向けてパンパカパーンと宣伝を打ち、米国世論を威嚇して虚勢を張らなければいけなかったところである。中共軍はそれに失敗し、熊プーの希望に添えなかった。おそらく「X-37B」は、「轟20」が試験飛行する兆候があるかどうかを、ずっと監視していたのだろう。それはまずありえないと見極めたので、このタイミングでケネディ基地に回収した。

 次。
 Guy Faulconbridge 記者による2022-11-14記事「Sledgehammer execution of Russian mercenary who defected to Ukraine shown in video」。
   ワグネルを脱走して反露に寝返った55歳の男。10-11にキエフでワグネルに拉致され、大ハンマーで頭を叩きつぶされて処刑されるありさまがSNSの「テレグラム」のチャンネルである「Grey Zone」に投稿されていた。

 この男についてワグネル総帥のプリゴジンは日曜日、「反逆者だ」と語った。

 プリゴジンはまた、私有ジェット機に乗って第三国へ逃亡した金持ち階級のロシア人たちについても「同じく反逆者だ」と警告している。

 次。
 Defense Express の2022-11-13記事「Russians Are Afraid That the Crimean Bridge May Be Struck by a Brander ? the Ministry of Transport And Infrastructure of Turkey」。
   ケルチ橋の下をくぐって黒海からアゾフ海へ入ろうとする貨物船を、11-12からロシアが急に規制するようになった。二度目の爆破工作があると警戒しているらしい。

 10-8に爆破されたケルチ橋の損壊は思ったより酷く、修繕は2023-9までかかるだろうという。

 次。
 The Maritime Executive の2022-11-10記事「EUNAVFOR Seizes Dozens of Armored Trucks Bound for Libya」。
   オランダ船籍の5000トン積みの貨物船が装甲トラックなどを満載してリビアへ向かっていたのだが、EUはその船を拿捕し、積荷を押収した。今年に入って二度目。

 上甲板に15台の装甲トラック(UAEがフォード・トラックを改造したもの)を載せ、まっぴるまにシートカバーもかけず、AISも切らずに航行していた。隠す気がなかったようだ。しかしリビアの交戦団体に武器を輸出することは国連が禁止しているのである。

 いちおうオランダ政府には、臨検していいかと事前に打診。そして公海上で拿捕。同船はマルセイユ港まで連行されつつある。

 UAEは、リビアのハリファ・ハフター軍閥側を後援している。

 この拿捕によって船長が逮捕されることはなく、また船会社が罰金を払うこともない。

 ことしの7月にはイタリア海軍のフリゲートが、1隻の自動車運搬船を拿捕した。これもリビアへ軍用車を届けようとする途中であった。

 ※福岡と釜山の間に就航させる最新鋭の三胴型の高速フェリーについての報道がやはり『Maritime Executive』に出ている。新コロのために完成が2年も遅れていたという。よくわからないのが、それが日本でも韓国でもなく、豪州の造船所製だということ。日本や韓国には三胴船を造るノウハウが無いってことかい?


最新の★《続・読書余論》は、ベルクソンの『物質と記憶』です。

 ザッカーバーグがもし大学生時代にこの本を読んでいたら、「メタバース」などというものに未来の無いことは理解できたはずです。

 この原著の仏語版は1896年に刊行され、それは1911年までに英訳されています。つまり古典です。

 ザッカーバーグ氏に続きたくない人は、《note》 https://note.com/187326mg/  を、ごらんください。

 次。
 Mun Dong Hui 記者による2022-10-21記事「N. Korea finalizes selection of workers to join reconstruction efforts in Russian-occupied parts of Ukraine」。
   北鮮は、11月前半にも、建設労務者をウクライナの露軍占領区へ送り込む。その労務者の選別作業は終わったという。

 労務者の募集は7月に開始されていた。人数は800人から1000人だという。

 派遣される労務者は、30人から60人の小集団として、ドンバスへ輸送される。

 派遣労務者は、北辺の町である羅先にあつめられて、そこから鉄道もしくは高麗航空により、ウラジオストックまで運ばれるという案のほかに、北京経由でモスクワまたはサンクトペテルスブルグまで空輸する案が検討されているという。

 ※ロシアとしては、こいつは鉄道でウクライナまで輸送できるかどうかを試したほうがいいだろう。そのルートで次には弾薬や火砲も「密送」できるからね。

 中共は、トランジットだけなら制裁違反にならないだろうと考えているという。

 かきあつめられた労務者は皆、平壌の郊外の出身という。

 次。
 Boyko Nikolov 記者による2022-10-22記事「China’s 4th-gen main battle tank may only have a two man crew」。
  CCTVが宣伝ビデオを流した。中共は次の「第四世代」戦車で乗員を2人に減らしてしまうと。

 中共現用の第一線級戦車は、「99式A」と「96式」である。

 96式はT-80相当。99式は米独戦車と同格だと威張っていた。
 99式は2011時点に部隊配備された。650両生産され、今は550両あり。
 96式は2500両あり。

 ※5年に一度の政治イベントにあわせてCCTVもヨイショ・フッテージを放映する必要があった。儒教圏では何でも宣伝第一だ。胡錦涛のじいさんが、髪を黒く染めることもゆるされず、ヨイヨイの態で議場から退席させられるところを、前後を編集カットした上で、延々と放映させていた。最初から「熊プーには誰もさからえないんだぞ」という、誰向けなのかよくわからない「謎演出」。というか日本人にはホントどうでもいい。ロシアが嘘に嘘を重ねつつ惨めに亡びて行くように、中共も、演出に演出を重ねつつ勝手に滅びてくれ。

 次。
 ストラテジーペイジの2022-10-22記事。
   T-62の大砲は115ミリながらスムーズボアなのであまり磨耗が気にならない。
 車内の弾薬は40発。
 当たらなくていいなら、4km先を狙って撃てる。
 路外の最高時速は40km/時。路上でも50km/時。
 車内燃料タンクのみで路上を走った場合は650km動ける。

 すでにウクライナでは200両以上の露軍の「T-62」が、うしなわれたという。

 次。
 John Hardie 記者による2022-10-20記事「China, Russia Deepen Partnership on Satellite Navigation」。
   中共とロシアは9月27日に調印した。北斗とグロナスの地上局を互いに自国領内に受け入れる、と。

 北斗の地上局×3箇所。これがロシア領内に設けられる。
 グロナスの地上局×3箇所。これが中共領内に設けられる。

 中共としては、農業をロボット化させる電波環境と、ロボット自動車運転の電波環境を、GPS抜きで整備する必要を痛感しているところなのだ。

 次。
 Emma Helfrich, Tyler Rogoway 記者による2022-10-21記事「Joint Taiwan-U.S. Weapons Production Considered As China’s Invasion Window Tapers」。
   『ニッケイ・アジア』が伝えたところによと、台湾の国産の対艦ミサイルである「雄風2」と「雄風3」の開発には米国企業が技術提供していて、そうした協力は合法なのだという。

 ※「雄風1」はイスラエルのガブリエル対艦ミサイルのコピーだった。「雄風2」はハープーンのコピー。「雄風3」はラムジェットなので何のコピーでもない。強いて言えば外見がスタンダードミサイルに似ているくらい?

 次。
 Howard Altman 記者による2022-10-21記事「Ukraine Has Received Over A Million Artillery Rounds From The U.S.」。
   米国はウクライナにすでに100万発以上の野砲弾を補給したことが分かった。DoDの公式発表。

 その内訳。
 普通の155粍榴弾が90万3000発。
 M982エクスカリバーが3000発。
 対戦車地雷散布弾RAAMSが7000発。(十五榴1発の中に地雷9個入り。)
 105mm榴弾が18万発。

 この弾薬の重さを合計すれば5万トン以上になるという。

 「HF1」と呼ばれる通常榴弾は、弾丸の重さが103ポンドで、その充填炸薬は23.8ポンド(10.79kg)。炸薬はTNTもしくは「IMX-101」(被弾しても誘爆を起こさぬ最新の鈍感爆薬。威力はTNTと互角)。メーカーはジェネラルダイナミクス社。

 ※米軍としては、古いTNT充填弾をすべて外国軍に援助してしまって、自軍を「IMX-101」充填弾だけで在庫一新してしまえたなら、悪くないだろうね。

 次。
 The Maritime Executive の2022-10-21記事「Tanker Avoids Two “Drone-Driven Explosions” at Port in Yemen」。
   金曜日の午後、30万トン積み巨大タンカー『Nissos Kea』が、無人爆装ボート×2の特攻をかろうじてかわした。イエメン沖で。

 「アシュ・シール」港内の積み込みブイに繋留して原油を呑み込んでいる作業中を襲われたようだ。
 タンカーは遠くからロボット艇の接近を探知し、すばやく反応して港外へ逃れた。

 タンカーはそのままアデン湾へ向かった。

 無人爆装艇がどうなったのかは不明。爆発は観測されていないという。
 下手人はフーシで、ボートはイラン製だろう。

 タンカーの所有はマーシャル諸島。今年3月就役の最新設備船である。スクラバーというタンク内洗浄装置がエコ化されている。

 次。
 『ワイヤード』の2022-10-22記事「Ukraine Could Never Afford to Bet on Starlink」。
   ヒラリー・クリントンはかつて、《ツイッター中毒の人物に権力の座を与えてはいけない》と警告した。イーロン・マスクがそれを実証しつつある。

 ウクライナ軍も米軍も、みずから政治家を気取る株式投資家に支配されている私企業に軍の基礎インフラを依拠するような馬鹿な真似はしないことが吉。

 次。
 Stephen Clark 記者による2022-10-18記事「Russia launches three satellite deployment missions in one week」。
   1週間のうちにたてつづけに、ソユーズ、プロトン、アンガラの3つのロケットが打ち上げられた。航法支援衛星、通信衛星、偵察衛星が軌道投入された。

 まず「ソユーズ2.1b」が10-10にプレセツクから打ち上げられ、1機のグロナスを軌道投入。
 軌道傾斜角は64.8度、高度は19100kmである。

 グロナス衛星も世代進化がある。このたび投入されたのは、「K」シリーズの5機目である。
 重量935kg。前の世代の「M」シリーズより軽い。それでありながら寿命は長いのだ(Mは7年、Kは10年という)。

 この打ち上げにより、グロナスはぜんぶで26機となり、うち22機が機能を発揮する。4機はメンテナンスモードという。
 じつはこのシステム、生きている衛星が24機なければ、サービスは不完全。地上の任意の地点から、常に3機の信号が受信できなくてはならないので。

 プロトン・ロケットは10-12にバイコヌール基地から発射された。「アンゴサット2」という、アンゴラ政府のための通信衛星を放出。
 プロトンは、衛星打ち上げ請負いビジネスの価格競争で「スペースX」に負けた上、国際経済制裁も喰らってしまい、前途は暗澹としている。

 この衛星の打ち上げスケジュールが画定されたのは、今次戦争の開戦より前である。
 だから、通信システムは「エアバス」社製。

 いまから3ヵ月くらいすると、この通信衛星は仕事を開始できる。アンゴラにとっての唯一の生きている通信衛星となるだろう。軌道は静止軌道。設計寿命は15年だ。

 ロシアはアンゴラの海岸に、地上管制局も建設してやり、そこで衛星管制の要員訓練もしてやっている。

 小型の「アンガラ」ロケットは10-15にプレセツクから発射された。
 この1段目のエンジンは3分半、燃焼する。
 明瞭に軍用の偵察衛星を放った。高度は337kmという低軌道。

 次。
 Daily Sabah の2022-10-19記事「Turkiye test-fires domestic ballistic missile over Black Sea」。
   トルコのロケトサン社が開発した短距離弾道ミサイル「Tayfun」が黒海に向けて試射された。
 561km飛翔してシノプ港沖に着水した。

 この以前には「Bora」という短距離SSMをトルコは国産していたが、射程が2倍になった。
 ラーンチャー車体は共有である可能性がある。


★《続・読書余論》アンリ・ベルクソン著、岡部聡夫tr.『物質と記憶』1995年刊


ウクライナの戦訓 台湾有事なら全滅するしかない中国人民解放軍


ノルウェー警察は土曜日に怪しいロシア人のドローン操縦者を飛行場近くで逮捕。今週2人目。

 9月には送電線の近くで怪しい偵察をしていたロシア人をノルウェー警察が逮捕している。

 次。
 2022-10-15記事「Russian Air Defences Break Range Record in Combat: First Kill For the Famed 400km Range 40N6 Missile?」。
   ベルゴロドに展開していた露軍の「S-300V4」が、低空襲来したウクライナ軍の「スホイ27」と「スホイ24」を、レンジ217kmで撃墜した。これは露軍が実戦で成功した長距離撃墜の新記録。それまでの最長記録は、3月にキエフ上空のウクライナ軍戦闘機を150km離れたベラルーシ国境内から撃墜したものであった。

 ウクライナ空軍機は、超低空で敵地に迫り、無誘導のロケット弾複数を、ポップアップしざまに仰角45度くらいで「腰だめ」発射し、すぐにUターンして再び超低空で基地に戻るという対地砲撃を反復していた。ロケット弾は最大レンジで飛翔してくれるが、どこに落ちるかは分からない。

 ※同じ最短直線コースばかり飛ぶから、交信傍受とストップウォッチを組み合わせて、未来位置の見当をつけられてしまったわけだな。不規則なS字飛行で毎回、異方向からアプローチするように気をつけないとね。

 S-300V4は、超地平線での巡航ミサイル迎撃を特に考えてあるもので、S-400より値段が張る。
 発射車両も、装輪ではなく装軌である。

 ※ベルゴロド射場で露人を殺しまくったタジク人は、モスクワで強制徴兵されたのだという噂もある。そうだとすれば動機は自然に聞こえる。

 次。
 Arjun Kharpal 記者による2022-10-13記事「Globally critical chip firm tells U.S. staff to stop servicing China customers after Biden export curbs」。
   オランダのASML社は、最先端集積回路を製造するのに不可欠なシステムを世界じゅうのチップ工場に提供している。

 ASML社は、米国の労務者に対して、爾後、中共のチップ工場のための仕事は止めるように命じた。これは米政府の最新の輸出規制措置に合わせるためである。

 この「米国の労務者」のなかには、米国籍(市民権)を有する被雇用者と、米国政府発給のグリーンカードを保有している非米国籍の被雇用者が含まれる。

 中共メーカーに対して何か製品を輸出することも禁止。サポートをすることも禁止される。

 ASMLは、極短紫外線による焼き付けマシンを、世界中にほぼ独占的に供給している。他社にはマネのできない技術なのである。台湾のTSMCも、このASMLの装置がないと、最先端チップは製造できない。

 バイデン政権の新方針では、今後は、米国人&米国内被雇用者が中共企業のチップ開発を支援するにはいちいち米政府からの許可を必須要件とす。

 日経が金曜に報じたところでは、TSMCは、あと1年だけは、中共内の工場に米国製の機械を搬入してもよいという特別許可を米政府から与えられた。

 『朝鮮日報』によれば、同様の猶予期間は、韓国のサムスンとSKハイニクス社に対しても、与えられた。

 次。
 Ana Swanson and Edward Wong 記者による2022-10-13記事「With New Crackdown, Biden Wages Global Campaign on Chinese Technology」。
   このたびのチップ製造技術移転禁止措置は、中共がステルス技術やハイパーソニック兵器を迅速に開発できないようにする目的がある。また、米国が使っている暗号を中共のスパコンで解読し難くしてやる効果も期待される。

 米政府が今回の規制措置を打ち出す前には、オランダ、日本、韓国、イスラエル、英国の政府とも相談を重ねている。

 理想的にはこれらの与国合同で新方針をブチ上げたいところだったが、さすがに支那市場を失いたくない与国が多くて話はまとまらず、米国単独での実行となった。
 米国以外の諸国は、中共から「報復」され易いため、前面に出るわけにもいかないのである。〔しかし実質、同調する。〕

 今後、米国企業や米国技師は、中共国内にあるチップ工場のソフトウェアをアップデートしてやることもできない。

 与国のメーカーは製品としてのチップを中共に売るのは当面、かまわない。

 これから「自動運転」や遺伝子改造をするときに「AI」やスパコンの性能がモノを言う。中共製のAIが米国製に追いつけないようにしないとまずい。そのために中共が最先端のチップを国産できないように、機微な技術を禁輸するのだ。

 とにかくTSMCが今年すごいチップを完成したので、米政府はもうこれ以上、ぼやぼやしていられないと焦ったようだ。

 日本の企業では「東京エレクトロン」が、多数の中共のチップ工場を顧客として抱えている。その売り上げは減るであろう。

 次。
 Defense Express の2022-10-16記事「Iran to Supply russia With the Fateh-110 and the Zolfaghar Ballistic Missiles (Specifications Included)」。
   『ワシントンポスト』報によると、イランは9月18日に、ロシアに対して短距離型の地対地弾道ミサイルも売ることを決めた。

 すなわち「Fateh-110」と「Zolfaghar」の2種類を、売り渡す。
 それぞれ、レンジは、300km(最新モデル)と700kmである。

 ロシアは開戦前に900発保有していたイスカンデル地対地弾道弾の残りが124発に減ってしまったので、その穴埋めが必要なのである。

 「Zolfaghar」は筒体が非金属の複合素材でできていて軽い。だから射程が長い。「Fateh」は筒体が軽金属なので重い。どちらもGPS信号を参照して終末誘導されるので、命中精度は高いはずだ。

 次。
 Inder Singh Bisht 記者による2022-10-14記事「General Atomics Unveils Long-Range Projectile for 155mm Howitzers」。
  ジェネラル・アトミクスの電磁システム部門は、150km飛翔する155ミリ砲弾を設計し終えたと発表した。
 砲弾にラムジェットが組み込まれている。

 これを発射するための58口径長の加農砲は、米陸軍が開発中である。こっちはまだ完成していない。(普通は39口径長。)

 砲口を出た直後、スピンが毎秒20回転に抑制されるという。(通常は200回転/秒。)

 上反角付きの展張翼と、揚力発生形状の弾体も、射程延伸に空力的に貢献する。

 ※雑報によるとフランスとスウェーデンは、155ミリ弾殻内から2個の弾子が分離して、空中から地上のAFVを自己鍛造弾によって破壊する「BONUS」砲弾をウクライナに供給する。

 次。
 ストラテジーペイジの2022-10-16記事。
   8月にロシアはイランに2000機以上の「シャヘド131」と「シャヘド136」を発注した。あきらかに、ロシア国内でそれらをライセンス生産するという契約も結ばれた。

 ロシア軍人たちは「シャヘド136」の方を好んでいる。全重200kgある。
 「シャヘド131」は135kgで、やや軽い。

 「シャヘド136」は連続5時間、飛び続ける。飛距離は180kmに達するだろう。弾頭重量は、15kg~25kgだと思われる。コストは1機、5万ドルする。そのうちガソリンエンジンの部分だけで3万ドルする。

 シャヘドはトラックの荷台からつるべ撃ち式に射出される。小さなロケットを吹かして空中に舞い上がらせ、上空でエンジンを始動させる。

 巡航姿勢になると同時に、アシスト・ロケットは投棄される。
 GPS航法回路は、射出前にONにされる。

 「シャヘド136」のエンジン音はとてもうるさい。それが低空を飛んでくるので、水平距離にして数キロメートル先から、音が聞こえてしまうという。12.7ミリの機関銃か、20mm以上の機関砲が、「シャヘド」を撃墜するのに向いている。

 次。
 Sean Spoonts 記者による2022-10-17記事「Sanctions Have Russia Building Frankenstein Tanks」。
  チタにあるアタマノフカ戦車工場では、国家の量産要請に応じるため、車体とモデルが異なる砲塔をツギハギで載せてしまうという荒技を採用するようだ。手に入る限りの、ありあわせの戦車ストック・パーツをむりやりに結合させて、1両の兵器に仕立ててしまう。

 ※私見だが、3人乗りをあきらめて4人乗りにすると決めてしまえば、どんな組み合わせも可能になるだろう。鳥籠下の弾庫はとうぜん、全廃。装薬は基本的にすべて砲塔の外側に「吊るし柿」のように露天繋止しておけばいい。そこにRPGを被弾すると派手に燃え上がって、敵の目にはあたかも撃破したように見えるが、どっこい、車内は無傷で、全員、車体底の脱出口から、安全に逃げ出す時間を稼ぐことができる。煙幕を展張するようなものだから、ERAよりもよほど気が利いているはず。従来、自動装填装置が、「次弾」用の装薬を砲尾近くで保持して待機していたために、そこがまっさきにHEATの衝撃で発火したようだ。装薬の発火さえ、車内でゆるさないようにすれば、すくなくともBMPよりはマシな防護力となるだろう。

 次。
 Maya Yang 記者による2022-10-16記事「Alaska cancels snow crab season over population decline」。
   アラスカの漁業者たちは、ベーリング海での今期のタラバガニ漁は、自粛禁漁と決めた。
 昨年の水揚げ量が、過去40年間で最少であった。
 乱獲と海水温上昇が関係しているか。

 ブリストル湾では、秋のタラバガニ漁を自粛した。それに続いて、冬のズワイガニ漁も自粛となる。

 スケトウダラ、ズワイガニ、オヒョウが、どんどん北の海へ逃げている。海水温の上昇を嫌っているのだ。

 タラバガニは2年連続の禁漁となった。雌の成体数が激減していて、資源涸渇の趨勢が明らかなので。要するに濫獲なのである。

 次。
 Robyn Dixon 記者による2022-10-14記事「Russia’s airstrikes, intended to show force, reveal another weakness」。
   露軍は金曜日に対地ミサイルを84発、火曜日には28発の巡航ミサイルを発射した。これにより36人以上の住民が死亡。

 ※WWII中の「V-2号」が、1発ごとに平均5~6人のロンドン住民を殺したと見積もられているのにくらべて、おどろくほど民間人殺害の効率が低い。かりに112発(=84+28)で40人が死んだとしよう。1発あたりでは0.357人殺された計算になる。いまや、1人の敵国民を殺したくば、高額な対地ミサイルを2.8発、発射する必要があるわけだ。最新刊の拙著でも書いたが、現代の不燃化した都市は、非核のミサイルを無尽蔵に吸収してしまえる。現状、軍資金に余裕ある中共ですら、台湾向けの対地ミサイルは2000発未満しか揃えることができていない。その2000発を撃てたとしても期待できる殺害人数は714人?

 専門家氏いわく。ロシアはウクライナ全土の電力インフラと水道インフラを破壊しようと試みたが、いまだにそれも実現できていない。

 これまでのあいだに精密誘導兵器類を都市のアパートや村落などに対してさんざん無駄撃ちしてしまったので、これからあらためて変電所などをピンポイントで狙おうとしても、それに必要なPGM兵器が涸渇してしまっているのだ。

 空中発射式の巡航ミサイルの被撃墜率が高いのも注目されている。火曜日の空襲はほとんどが、航空機から発射する巡航ミサイルだったが、それはイスカンデルに比較して低速なので、途中で墜としてやりやすかった。

 専門家氏いわく。露軍はこれまで、ウクライナ軍の後方兵站線の破壊妨害もできていない。すなわち、橋梁、鉄道、鉄道分岐点を、破壊することができていない。そのぎゃくにウクライナ側がHIMARSを使ってどしどしそれができている。
 これは何を意味するかというと、仮に露軍に今の何倍ものPGM弾薬があったとしても、やっぱり彼らは失敗したであろう。

 キングズカレジロンドンの教授氏いわく。プーチンには軍事的に合理的な目標選別ができないのだ。あたかも社会病質者が幼児的な癇癪を起こして攻撃命令を出している。都市をミサイル攻撃すれば彼の気は済むだろうが、PGMを無駄に捨てるも同然となり、ロシアは戦争に勝ちようもなくなる。

 ※非核のミサイルによる都市攻撃がなぜ軍事的には非合理的であるのに、政治的には「それ一択」のなりゆきとならざるを得ないかについては、拙著最新刊『ウクライナの戦訓』に書いておいたので、読んでみて欲しい。中共の台湾攻撃も、必ず同じパターンとなるだろう。それが「政治」なのだ。

 西部の都市、リヴィウの変電所×6箇所にミサイルが着弾したのは、あきらかに、ウクライナから西欧へ給電されている電力を止めようとした《高等戦略》である。これから冬にかけて電力が得られないようにしてやり、西欧人の心理を動揺させようというわけだ。

 民間アパートが密集する街区を攻撃してはいけないことは戦時国際法の基本。しかしロシアは過去数十年、二度のチェチェン戦争、シリア介入、そしてウクライナでもその他でも、徹底して意識的にこの戦争犯罪を反復してきたし、今もしているのである。

 ※そろそろ書店に『台湾有事なら全滅するしかない中国人民解放軍』が並んでいるでしょう。高くて買えないという人は、図書館に購入リクエストを出そう! お金持ちの人は、余計に買って学校の図書館に寄贈してください。



ウクライナの戦訓 台湾有事なら全滅するしかない中国人民解放軍


ポルトガルは二重反転ローターの「カモフ32A11BC」ヘリを6機、ウクライナ軍に寄贈する。

 ウクライナ海軍は同型である「Ka-27」のユーザーである。

 次。
 Emma Helfrich 記者による2022-10-13記事「Ukraine To Receive HAWK, Aspide Surface-To-Air Missiles From Spain」。
   スペインはウクライナに「ホーク」SAMシステムを贈る。フランスは「クロタール」を贈る。

 スペインは「アスピーデ」地対空ミサイルも供与する。19人のウクライナ将兵がその操法を習得した。

 「アスピーデ」はイタリアが1970年代に実用化し、スペイン空軍が運用している。飛翔体はほぼ「スパロー」と考えていい。モデルは新旧4通りあるのだが、そのどれが供与されるのかは不明。

 最新型だとしたら、セミアクティヴレーダーホーミングによる誘導で、水平レンジ25km、弾頭重量35kgというところ。

 ホークはとうぜんながら「インプルーヴド」された「I-HAWK」にリファービッシュ済み。
 なお本家の米陸軍は2002年でホークの運用を終了している。
 最短射程は1マイル未満。最大水平レンジは22マイル。

 「クロタールNG」の最大レンジは7マイル。弾頭は28ポンドの「フォーカスト・ブラスト」型になっており、破片が集中する方向を最適にできる。

 ※ホークのレーダーが連続波であるのに対してクロタールはパルスドップラー。したがって露軍機としては一種類のECMでは対応ができない。

 ※露軍は「オルラン-10」をすでにウクライナで100機ちかくも喪失した模様だ。サンクトペテルスブルグに同無人機を製造している「STC」(特殊技術センター)がある。数日前、メドヴェージェフが工場訪問したところを御用プレスに写真撮影させていた。意図として、まだたくさんあるんだぞと示威したかったのであろうが、倉庫には機体ばかりでエンジンが見当たらない。じつは「首なし飛燕」と同じ状況ではないか? いや待て、今日では集積回路のボードが無い「身欠きニシン」状態だということも大いにあり得る。おそらく在外公館のロシア人に市中流通の中華製エンジンや中古チップを必死でかきあつめさせて、なんとか「五式戦」に仕立てる算段中か。

 次。
 Alex Marquardt 記者による2022-10-13記事「Exclusive: Musk’s SpaceX says it can no longer pay for critical satellite services in Ukraine, asks Pentagon to pick up the tab」。
    イーロン・マスクの金曜日のツイッター投稿によれば、スターリンク社はウクライナのために累積で8000万ドルを負担しており、この年末までには、1億ドルを突破するであろうという。

 しかしマスク氏いわく、このような寄付行為は続けられない。ペンタゴンが毎月、数千万ドルを払ってくれないなら、サービスは止める、と。

 CNNが入手した文書によれば、マスクがペンタゴンにこれを要求したのは先月である。
 スペースX社はこれ以上はウクライナに端末を無料寄贈できない、と。

 7月にウクライナ軍はマスクに対して、さらに8000基の端末をくれと求めていた。

 スターリンク端末は2万台、ウクライナに届けられている。その85%については、米政府、英政府、ポーランド政府が資金を出している。

 ウクライナ軍によれば、同軍はこの端末を4000台、支給されているが、毎月、500台は、戦闘で破壊されているという。

 ※世界の国防軍はまた貴重な教訓を学んだ。いくら便利だからといって一種類の通信インフラに依存したら、かならず泣きをみるぞ。

 次。
 GlobalData による2022-10-14記事「HIMARS and Switchblades are part of Lithuania’s military build-up」。
  リトアニアはこれらの弾薬の他にオシュコシュ製のJLTVも買う。

 ハイマーズはすでにラトヴィアやポーランドも買い付けている。それに続いた。

 次。
 The Maritime Executive の2022-10-11記事「Disney Negotiating to Buy Genting’s Largest Cruise Ship Global Dream」。
    香港の資本がドイツの造船所で建造させていた、20万8000グロストンの超巨大客船『グローバル・ドリーム』。75%工事がおわったところで、新コロ恐慌となり、会社は破綻状態に。建造はストップしていた(姉妹船は未成度がまさっていたので、はやばやとスクラップにされている)。

 このたびディズニー社が『GD』号を買い取り、カリブのクルーズに投入する可能性があるという。

 この巨大船、竣工すれば、客9500人が乗り込める。同乗するサービススタッフは2000名以上だ。

 船の中には、船上型として世界最大のジェットコースターが設置される。
 また、巨大なカジノも備わるという。もともと、アジア人顧客を当て込んでいた。

 船体の重さで比較すれば世界一なのはロイヤルカリビアンインターナショナル社が保有する『オアシス』級なのだが、『グローバルドリーム』は乗客人数で世界一になるという。

 ※喉元過ぎれば熱さを忘れる。パンデミックは二度と起きないとでも思っているのか?

 次。
 Jakub Palowski 記者による2022-10-14記事「Poland Concludes a Deal on Hundreds of Korean Multiple Rocket Launchers」。
   ポーランド国防省は、韓国から「K239 チュンムー」多連装ロケット弾を300システム購入することを決めた。いずれ量産はポーランド国内でなされる。

 次。
 Emma Helfrich 記者による2022-10-12記事「Double The Range Rockets For HIMARS One Step Closer To Production」。
  10月6日に、HIMARSから発射するロケットのレンジを倍増させた「ER GMLRS」ロケット弾の試射がおこなわれた。
 今回は短射程の59kmを飛ばして、成功したという。最終的には150kmになる予定。

 ※ポーランドのような立場に置かれた国にとり、こうしたすばらしい性能の未来兵器が輸入可能になるまで何年も気長に待っている余裕などない。今すぐに現物を大量に必要としているのである。それに応えられる西側の軍需企業が、げんじつ問題として、韓国にしかない。じつは韓国にとってこそ、今次ウクライナ戦争は「特需」景気の恵みの雨のはずなのだが、なぜか、その報道がぜんぜん無い。ありふれた砲弾や手榴弾を増産しただけでも、造ったそばから飛ぶように売れるはずなのだが……。あるいは世間的にはひっそりと、弾薬類を満載した貨物船が韓国からバルト海へすでに続々と向かっているのかもしれぬ。



ウクライナの戦訓 台湾有事なら全滅するしかない中国人民解放軍

(管理人Uより)

 本日、発売。兵頭本『ウクライナの戦訓 台湾有事なら全滅するしかない中国人民解放軍』。kindle版も同時発売なので嬉しい。


新刊『(ウクライナの戦訓)台湾有事なら全滅するしかない中国人民解放軍』の見本が届きました。

 ……ということは来週後半には書店店頭に並びます。待てない人はアマゾンに発注しよう!

 (メインタイトルの前に入っている小さなサブタイトルのようなもののことを「ツノ」と呼ぶことを、わたしゃこの歳になって初めて知りましただよ。人間、一生勉強だね。)

 次。
 Howard Altman & Tyler Rogoway 記者による2022-10-7記事「Ukrainian Kamikaze Drone Attacks Bomber Base Deep In Russia」。
   大ニュース。バックファイアを2機、飛行場で撃破した。無人機特攻によって。

 攻撃されたのは「Shaykovka」空軍基地。露領のカルーガ州にある。ウクライナ国境の140マイル(350km)北。モスクワの170マイル南である。

 この基地には、第52重爆撃機飛行聯隊が駐留し、機種は「Tu-22M」である。

 ※バックファイアが実戦で破壊されたのはもちろんこれが初めてだろう。これまでさんざん、大型対艦ミサイルを使ってウクライナの民間人を殺してきた酬いがやってきた。なにしろ聖域のベラルーシ上空から発射するという卑劣な流儀であった。

 ※特攻に使われた機種は不明である。

 ※バイラクターは関係していない。ロシアがカミカゼを撃墜したと嘘宣伝したくてアルメニアのフッテージを流しているために誤った情報が飛び交っている。トルコ人も調子に乗ってそれに合わせている。

 次。
 Defense Express の2022-10-7記事「Ukrainian SOF Shows Combat Use of a Switchblade 300 Drone in Offensive」。
   ウクライナ兵が最前線で扱う「スイッチブレード300」の発射から命中までの一連のシークェンスを実写で紹介したビデオが、初めてSNSに投稿された。
 標的は露兵の野営天幕である。

 ウクライナ兵が「スイッチブレード300」を受領したのは今年の4月から5月のあいだである。

 かたや、対戦車攻撃能力が期待されている、より大型の「スイッチブレード600」は、依然として未着らしい。

 次。
 Defense Express の2022-10-7記事「The Kremlin’s Nuclear Stick: What Are the Possible Targets russia Might Find in Ukraine to Use Tactical Nuclear Weapon。
  昔はソ連軍は、203ミリや240ミリの巨砲で戦術核砲弾を発射するつもりだった。今は廃止されている。

 弾道弾「イスカンデルM」用の核弾頭は70発あるという。また巡航ミサイルの「イスカンデルK」用の核弾頭は20発だそうだ。

 もし10キロトンの核弾頭が爆発した場合、爆心から1.5~2km内は壊滅。爆心から8kmまでは、なんらかの破壊を受ける。
 放射性の降下灰は、爆発から15分後にはもう降り始める。

 カリブルは、2600kmまでの目標に使用され得る。
 しかしペトレイアス元CIA長官によると、NATOは黒海やカスピ海のすべての露艦艇の所在を把握しているというので、奇襲にならないだろう。

 Kh-22は、1メガトン弾頭を600km運べる。古いものだが。
 キンジャルは、高空から超音速でリリースすれば3000km届くだろう。

 次。
 Elisabeth Gosselin-Malo 記者による2022-10-6記事「Pakistan, Ukraine, And The Race For Third-Party Ammunition」。
    旧ソ連系の大砲から発射する弾薬は、ウクライナ軍もまたこれを必要とする。特に122ミリ加農である「D-30」が。
 そこでパキスタンに渡りをつけることにした。

 世話しているのは英国。RAF所属のC-17輸送機が、ルーマニアの「Cluj」国際空港もしくはキプロスのアクロティリ空軍基地を経由して、パキスタンの「Nur Khan」空軍基地まで物品受領に飛んだのだ。12往復したという。

 15日間の輸送活動で、合計5万発の各種ソ連規格の砲弾が、パキスタンの工場からウクライナ軍へ補給された。

 パキスタンにはPOFという国立の軍工廠があって、そこで122ミリ砲弾が量産されているのである。この工場は1951年に英国王立工廠が建ててやった。64口径長の105mm戦車砲から発射するタングステン徹甲弾の製造技術も、英国からこのPOFに移植している。

 122粍カノンは最大射程が9.5マイル、初速690m/秒。

 1996年にパキスタン軍は、ウクライナのハルキウ機械工廠製の「T-80UD」を320両、注文したことがあった。

 ウクライナの前線部隊は、中共設計の56式自動小銃や、「HM-19」82ミリ迫撃砲をイランが生産したモデルも、なぜか使っている。謎のルートで取り寄せられているのか?

 ウクライナ軍がイラン製の砲弾も使っていることは2022-9にオリックスが発見した。「OF-462」という122粍砲弾で、やはり「D-30」用。砲弾の製造年は2022だから、工場から出てきたばかりの新品だ。

 可能性。イランがイエメンに貨物船で密輸しようとした武器弾薬を西側海軍が洋上で拿捕した、その積荷が、ウクライナへ譲与されているのではないか?

 ※雑報によると中共製の60ミリ迫撃砲弾が、アルバニアからウクライナへ譲渡されているらしいという。なお露軍には60mm迫撃砲がそもそも無いのだそうだ。あるデータでは、西側の60ミリ迫撃砲弾は弾重が1.25kgで、炸薬は205グラムという。参考までに、西側の81ミリ迫撃砲弾は、重いタイプで、4.82kg。

 ※雑報によると、インドが修理のためにロシア本国へ一時的に運び込んでいた「T-90」戦車を、ロシアは勝手にウクライナ戦線へ送り出しているという。本当か? これをやったらおしまいだろう。

 次。
 Defense Express の2022-10-7記事「Became Known How Ukrainian Troops Shoot Down Iranian Drones」。
   「シャヘド136」の迎撃に成功したウクライナの高射指揮官によると、このドローンは数マイル先から音が聞こえ、しかも低速なので、比較的に迎撃は簡単だという。

 「SA-8」地対空ミサイルが非常に効果的で、「ゲパルト」も貢献しているという。



ウクライナの戦訓 台湾有事なら全滅するしかない中国人民解放軍


皆様、ありがとうございました。

 管理人さんが目当ての書籍を調達してプレゼントしてくれることになりました。
 他のみなさまのおこころざしのほども、深く感謝いたすのみであります。
 ありがてぇ……ありがてぇ……。

 次。
 Kevin Knodell 記者による2022-10-2記事「Marines make 6,100-mile trans-Pacific flight in Ospreys」。
   ハワイに原隊のある、海兵隊の第268チルトローター・スコードロン。このたび豪州ダーウィンにローテ駐留していたオスプレイ×2機が、6100海里を洋上飛行してハワイまで戻った。

 クインズランド州アムバーレイ空軍基地を離陸したのが9-13。2機のMV-22と、空中給油機のKC-130Jが1機で。

 途中、フィジー、米領サモア、キリバチ共和国に立ち寄り、9-18にカネオエ湾の海兵隊基地に帰還。

 キリバチには中共が外交攻勢をかけていて、2019には台湾と断交した。それでアメリカが手配して今年1月には日本がキリバチに新しく大使館を開設すると発表。7月にはカマラ・ハリスも新大使館の開設と新投資を約束した。

 海兵隊のオスプレイは今年の「バリカタン22」演習で、ハワイから比島まで5000海里を飛べることも見せ付けている。

 ※10月の徳間書店さんからの新刊のタイトルが分かりました。『台湾有事なら全滅するしかない中国人民解放軍』で、アマゾンでは予約可能です。台湾が《Z侵略》されたとき、ウクライナの戦訓はどう活かせるか――を徹底的に論じてあります。乞う御期待。

 次。
 ストラテジーペイジの2022-10-2記事。
   民間会社の衛星画像を解析していたチームは発見した。ロシア本国のあらゆる場所から地対空ミサイル「S300」の発射車両がかきあつめられており、それらをウクライナ国境へ集中させていると。地対地ミサイルがわりに用いようというのである。

 ロシアではとっくのむかしに「S400」という新型SAMができあがっているわけだが、2014のクリミア侵略の結果、西側から制裁をくらったために、ロシア軍にはカネがなくなり、「S300」(NATOコードは「SA-10」)は、ほとんどが更新されずにいまだに現役だ。

 「S300」のアップグレードもなされていない。というのは、「S400」のレンジは「S300」の2倍あり、かつまた、射撃統制ソフトが新式だから、「S400」の1個発射大隊は、「S300」の発射大隊×2個分に相当する。そんな古い「S300」を、いまさらアップグレードする予算などつけていられない。

 それで地対地ミサイルに転用されることになった。
 今日までにすでに500発以上の「S300」が対地攻撃に使われた。しかしさらにまだ7000発くらいは、残っているはずだという。

 露軍が「S300」を地対地ミサイルに転用するテストをしているらしいことは、2022-7月にベラルーシの発表で西側にバレた。
 そもそも「S300」は開発の当初から、対地攻撃にも使えるように考えてあった。そのモードにする場合は、ミサイルの落下直前自爆回路を遮断する。しかし誘導は、発射車両のレーダーを使うしかなかったから、いくらポテンシャルの水平レンジが150kmあるといっても、それを精密に落とすことはできなかった。そこでロシアはことし緊急に、GPS誘導回路を組み込んだのだろうと推定されている。

 なお弾頭重量は100~200kgもあるので、着弾するとハイマース以上の大クレーターができる。先日、民間車列を狙った1発の写真はその傍証である。

 ちなみに台湾軍がもっている「ナイキ・ハーキュリーズ」SAMにも、SSMモードがある。もともと1960年代からそういう設計なのだ。

 ※雑報によると、ロシアの退役中将で国会議員のグルレフが糾弾。ザバイカル軍区にて、帳簿上はあるはずの150万着の冬用戦闘服が、どこにも見当たらない、という。

 次。
 Defense Express の2022-10-2記事「The russian Army to Receive New T-80BVMs, No Further T-72B3 Upgrade Expected」。
    ウラルヴァゴンザヴォド〔このヴァゴンとはワゴンと語源が同じ。つまり車両の意味〕工場は、近代化改修した「T-80BVM」を、まとまった台数〔おそらくは10両未満で、たぶん7両くらい〕、露軍に納品したと広報した。乗員保護を強化したという。

 「T-80BVM」には、「ソスナ-U」という先端的な射撃統制コンピュータがとりつけられる。これはフランスのタレス社の集積回路を使ったものである。ところでこの「ソスナ-U」は、従来、「T-72B3」にもとりつけられていた。西側から制裁を受ける前は、ウラル戦車工場は毎年、最多で50両の「T-80BVM」と、最多で170両の「T-72B3」を、露軍に納品できた。つまり「ソスナ-U」のついた戦車を露軍は毎年200~250両も受領ができたのである。

 ところがフランスのこうした長年の悪徳がついに世界にバレてしまい、2022-2-24以降は特殊軍用チップをロシアに売り渡せなくされてしまったことから、ウラル戦車工場では、「T-72B3」の近代化工事をあきらめるしかなくなった。乏しい在庫のチップをすべて「T-80BVM」に使うことに決めた模様である。

 かつてドイツは1944-12以降、パンターとティーガーI/IIの新造を絞って、3突と4突の増産に生産資源を集約する路を選ぶしかなかった。同じことが、2022のロシアに今、起きているのである。

 ※雑報によるとフランスは、デンマーク陸軍へ納品するはずだった「カエサル」SP×12両を、ウクライナに贈る。

 次。
 Boyko Nikolov 記者による2022-10-2記事「Suspicious drones spy the Ukrainian military training in Germany」。
   10月1日、ドイツ国防省は警報。同国内の「ヴィルトフレッケン」陸軍訓練基地の周辺に、謎のドローンが多数、執拗に飛来していると。

 そこではウクライナ兵が「ディンゴ」APCの操縦訓練を受けている。それをロシアのスパイが覗きたがっているらしい。

 スパイは乗用車を兵舎の近くに駐車し、そこからドローンを飛ばしている。

 ※雑報によると、露軍の捕虜になって先日、捕虜交換されたウクライナ兵たちの証言がすさまじい。なんとメシの時間として毎回「30秒」しか与えられなかったという。しかもわざと、カチコチのパンが出てくる。だから歯を折る者が続出したという。まったく食事を与えないのでは国際法違反だから、30秒に制限して目一杯の嫌がらせを創意工夫しているわけだ。自衛隊は「捕虜にされたときの訓練」を、とうぜんながらやっているだろうね? 新メニューとして「30秒メシ」も加えなくちゃいかんぞ。

 次。
 David Hambling 記者による2022-9-20記事「The Covert Arms Race Between Bombs and Concrete」。
    イスラエルがイランの地下核工場を破壊するのにバンカーバスターが必要だと考えたのは2005年。米国は2009年にそのリクエストに応えて 重さ5000ポンドの「GBU-28」を与えた。これはそれ以前にイスラエル空軍に売られていた重さ2000ポンドの「GBU-31v3」爆弾の四倍の侵徹力があった。

 いまイスラエルは対米要求をさらに引き上げている。
 「GBU-72」をくれと言っている。5000ポンドだが、さらに貫通力を強化したタイプだ。ただし性能の詳細はまったく外部には漏れていない。

 米空軍が最初にバンカーバスター爆弾を導入したのは1985年であった。通常の投下爆弾(汎用爆弾)よりも弾径を細くし、充填炸薬は少ないが、殻が厚い。

 2000年代の前半、米空軍は、「エグリン・スチール」という、専らバンカーバスターの弾殻に用いる特殊な合金を開発した。「エルウッド・ナショナル鍛造会社」の協力を得て。

 「エグリン鋼」は、炭素含有量が少ない。ニッケルも少ない。タングステン、クロム、マンガン、珪素などの元素をそれぞれ微量に含む。

 ながらく、徹甲爆弾用の金属素材としてこれがスタンダードだっが、近年米空軍は「USAF-96」という番号の特殊鋼を調達し始めた。硬さや靭強性は「エグリン鋼」に等しいが、製造コストがより低く、しかも加工しやすいという。

 防弾チョッキのインサートプレートは「ボロン・カーボン」でできたセラミック。やたらに硬いが、至近距離から射たれたタングステン・チップのライフル弾が当たれば、割れる(タマの前進エネルギーはそのかわりに減殺される)。

 地下施設を空爆から防護するための硬化コンクリートも、セラミックプレートに似ている。それは基本的に、割れ易い。コンクリートはそもそも、粘り強い結合をしておらず、引っ張られる力には弱いのだ。

 最新の強化コンクリートのいくつかは、アルミニウムよりも強い。しかし、比較的に割れ易いという特性は、なくすことができない。

 だが、UHPC=ウルトラ高機能コンクリート の性能向上も目覚しい。すでに「1平方インチあたり4万ポンド」の押し圧に耐えられるものがつくられている。多くは、砂利のかわりに強靭な「金属繊維」「特殊繊維」が混ぜられたコンクリートだ。

 繊維が引っ張り力を担任する。それによって「割れ」に抵抗し、もしヒビが生じても、それが拡大するのを阻止する。

 スチールのウィスカーを考えてみよう。これをセメントにまぜればまぜるほど、コンクリートは強靭になる。ところがしかし、もしも重量にして1%よりも多く、繊維を混ぜ込もうとすれば、その繊維素材が互いにくっついてしまう。まずい現象だ。これが、解決至難な、ハードルなのだ。

 1991年1月、米空軍は察知した。バグダッドの周辺に新しい地下の指揮所が建設されていた。それは厚さ数フィートの耐爆コンクリートで囲まれていて、米空軍が持っている2000ポンドのバンカーバスター弾では貫徹は難しいだろう、と。

 そこで5000ポンドの新型爆弾が開発されたのだ。
 フロリダ州エグリン空軍基地内に「空軍弾薬研究本部」があった。そこが1月18日に相談を受けた。

 とにかく時間が無いため、ありあわせの素材として「203ミリ榴弾砲」の砲身を、爆弾外殻として転用することにした。炸薬充填は手作業であった。弾頭部分だけは、ゼロから製造する必要があった。

 1ヵ月もしないで試作品ができた。それを、橇の上に縛りつけ、水平にロケットで加速させてコンクリート標的にぶつける試験にかけたところ、厚さ20フィート以上を侵徹できると確かめられた。

 2月27日、F-111が2機、この爆弾を1発ずつ、イラクの地下指揮所に投弾。
 6秒後、入り口から煙が出てきたので、中味はあらかた片付いたと推定された。

 2012年、米空軍は、UHPC製の防爆壕を貫徹破壊できる新型爆弾の研究開発プロジェクトをスタートした。米空軍はこのために、かれら独自のUHPCをまず製造する必要があった。「エグリン高強度コンクリート」と呼ぶ。

 前後するが、米空軍は2011年に、重さ3万ポンドという「MOP(大型徹甲)」爆弾を受領している。5000ポンドのバンカーバスターでは貫徹できない目標が現れるのではないか、心配だったのだ。

 ちなみに「空気爆発大型爆弾」略して「MOAB」の全重は2万1000ポンドだから、MOPはそれを凌ぐ横綱サイズである。でかすぎるため、B-2爆撃機だけが、これを運用できる。

 トロントにある「先進マテリアル開発会社」のヴァルタノフ博士いわく。UHPCと徹甲弾の勝負は、徹甲弾が「エグリン・スチール」のような「均質合金」の弾殻素材を使う限りは、UHPCの方に分があり、徹甲弾は負ける運命だ、という。
 (その主張の根拠となる数式を、博士が『Aerospace & Defense Technology』誌の2021-2月号に寄稿している。)

 さいきん、中共の研究所が「GFGC」(段階機能性セメント複合材)を研究していることが明らかにされた。
 それは三層からなる。表層は薄い砂利コンクリートのUHPC。中層は分厚い複合素材繊維入りのUHPC。そして最終層はスチールファイバー入りのUHPCだ。

 最終層は特に引っ張り力を強化してあり、固体中を伝導する衝撃波が起こす「スポーリング」(コンクリートの塊が内側壁から剥離して高速で飛び散る現象)を抑止してしまう。

 中共はすくなくも4年間、すでにこの「重層コンクリート構造」による防空壕設計の研究を続けてきていたようだ。

 英国のシンクタンク「RUSI」に所属しているジャスティン・ブロンクいわく。マッハ5で飛翔するハイパーソニック弾に、タングステンの弾芯を仕込み、炸薬なしでバンカーに突入させれば、それは理想的なバンカーバスターになるだろうと。

 敵の指揮所の地下壕を完全破壊する必要はない。入り口にダメージを与え、通気孔や通信線を遮断するだけでも、目的は達成されると。

 ※究極の地下防爆壕構造は、断面が六角形の「コンクリート製土管」を、巨大な集束ケーブルのように束ねて、それを水平に長~く伸ばして埋めてある構造だと思う。つまりおおきなスペースをまるごと包もうとするのではなくて、おおきなスペースを細長く分割して、敵空軍が狙いをつけられないようにしてしまうのだ。この「土管」の下層、もしくは端縁部の内部は、誰が考えたって無傷で生き残るだろう。米空軍は、コンクリートの床の階数をカウントできる、特殊な徹甲弾用のスマート信管をもっているが、六角形土管が積層されている地下構造物が対象となったら、その信管もまた無力であろう。

 次。
 Boyko Nikolov 記者による2022-10-2記事「Turkey’s newest Ak?nc? UCAV is already on a mission over Syria」。
   バイラクタル社製の最新の攻撃型ドローン「アキンジー」が、北部シリアの上空で作戦飛行を開始した。写真が撮影された。

 アキンジーのエンジンは、「イフチェンコ・プログレス・モトル・シッチ AI-450T」ターボプロップ×2発で、すなわちウクライナ製である。
 最高速力361km/時。巡航速度は240km/時。
 常用高度は9000m。最大上昇限度として1万3000mまで行ける。
 燃料満タンで、航続距離7500km。

 トルコ陸軍はすでに同機を12機、受領済み。

 次。
 2022-9-30記事「Drone crash into powerline “cuts electricity supplies to over 2000 Brisbane residents”」。
   オーストラリアのブリスベーンで、荷物配達用のドローンが送電線を切断。2000戸を停電させ、完全復旧までに3時間かかった。 

 次。
 「Case Study: Multi-Fuel Engine for Long-Range Unmanned Helicopter」という記事。
    ヘリコプター型の無人機「センチネル・ロングリーチ70」が搭載する「DF70LC」エンジンは、70cc.の2気筒で、水冷式。「ヘヴィー・フュール」すなわちJP5〔艦上機用で灯油系〕やJP8〔陸上機用で灯油系〕や「Jet A1」〔民航機用で灯油系〕を、ガソリンと同様に燃焼させることができる。出力/重量比は、抜群である。

 このUAVは、最大離陸重量30kg、最大ペイロード6kg、燃料は10リッター、滞空最大8時間可能、ホバリングだけでも6時間可能。

 ※『道新』の記事によると、デントコーンが高さ2mまで繁茂した畑の中にヒグマがいてもまったく地上からは発見することができず、もし猟銃を発砲してもデントコーンで弾道が邪魔されてしまって、殺せないかもしれないという。現代の「徐州作戦」か!? だからドローンを使って垂直に銃撃する必要があるんだよ。いつまでもしょうもない議論をしていないで、わたしのネットパンフレット『鳥獣から人間を保護する法律が必要だ』を一読したまえ!



ウクライナの戦訓 台湾有事なら全滅するしかない中国人民解放軍

BOOTH
鳥獣から人間を保護する法律が必要だ──「害獣退治庁(仮)」の組織および装備を提言する