加圧水型原発は、米海軍の原潜用のコンパクトなボイラーを陸上に据えつけたものだった。
その発想をさかさまにし、陸上に人工の池(ドック)をつくり、「前に進まない原潜」を浮かべておけば、どんな大地震がきても平気な原発ができるだろう。ちなみに、米海軍の原潜用エンジンがメルトダウンなどの放射性物質を撒き散らす大事故を起こしたことは、過去に一度もない。初代のノーチラス号から、一度もだ。
経済社会の安全のため真剣に投資しようという気があるのなら、日本もこのくらいのことはできるだろう。
ところで米軍は、日本政府や自衛隊が、秘密を満足に保てぬ機構であることを、確認してしまった。
秘密を守れなくなった理由はシンプルで、日本の防衛はある時点から真剣なものではなくなり、「防衛ごっこ」と堕しているからである。緊張の糸は溶解してしまった。
MDなんてものが役に立たぬことを、防衛省の役人も、歴代長官経験者も、請負メーカーも、知り尽くしている。しかし核武装ができないから、そんなものにでも打ち込まなければならぬ。与野党の政治家にシナ・北鮮と戦う気概はない。米軍は陸自を対支戦の尖兵に仕立ててみずからは極東を傍観しようとしている。
日米同盟はソ連に対しては有効だったが、シナに対してはどうだか分からない。なにせ、アメリカが自身でシナと陸戦を闘う気はぜんぜんないのだ。またシナの日本に対する間接侵略の手段は、ソ連とは桁違いに多い。ソ共に一本釣りされた自民党の中堅若手などはいなかったろうが、中共(およびそのエージェントの北鮮)に一本釣りされている自民党の中堅幹部は何人もおり、それが除名もされず、堂々と活動を続けている。
そりゃそうだろう。そもそも台北にかえて北京を承認したのは彼らの先輩たちだった。1970年代初めに田中内閣が朝日新聞とコラボして「対支賠償利権環境」(=過去の侵略の捏造流布)を整えて国交を回復して以来の腐れ縁がある。
およそ攻防の協働がうまくいくためには、「遠-遠/近-近」の大法則にかなっていなければならぬ。すなわち、共通の敵国に対して、同盟国の間合いが等しくなければ、うまく働かない。
たとえばシナに対してモンゴルとベトナムが攻守同盟を結べば、これはトポロジカルには「近-近」の挟み撃ちになるから、理想的である。モンゴルを攻めようとすれば南からすぐにベトナムが出てくる。ベトナムを攻めようとすれば北からモンゴルがすぐに出てくる。そういう関係だ。
またシナに対して日本とインドが攻守同盟を結べば、これはトポロジカルには「遠-遠」の挟み撃ちとなり、やはり理想的だ。
しかし日米同盟は、対支の同盟として、トポロジーの条件が、理想からは程遠い。日本はシナにずっと近いが、アメリカは地球の反対側に位置する。おかげでシナは、アメリカを気にせず、近い日本を先に間接侵略してしまえばよいと考える。かたやアメリカも、シナ軍がもし国境外に出てきたら、日本の自衛隊を単独でぶつけさせるのが安全・安価・有利だと、合理的に考える。
かつてのソ連はアメリカとカウンターフォース・レベルのMADの関係を保とうと全力を傾注していた。経済関係の希薄な日本のことなどにかまけている余裕はとてもなかった。ところが今のシナは、ソ連を反面教師として、狡猾にも、アメリカに対しては、象徴的カウンターバリュー・レベルの「semi-MAD」までしか達成するつもりはない。これによってシナは米国から日本だけを切り離して恐喝もしくは篭絡することが可能になっている。核兵器をバックに、日本に対してのみ狙い撃ち式に間接侵略をしかけることができるのだ。
これに対抗するには、ソ連のときとは異なって、日本は独自の核抑止力(射程6000kmの弾道弾はシナ奥地をカバーするがカリフォルニア州には届かない)をもつ以外にない。エスカレーションのエンドラインに、相手の大都市を破壊できる核ミサイルが控えているからこそ、海上での通常戦力の挑発に実力を伴った外交で応対する度胸が日本の政治家に与えられるのだ。
しかし、シナと実力を背景にした外交をすべしと表明するマトモな政党が日本国内にない。
しかたなく日本の防衛関係者は、実力外交と切断されたMDなどという「ごっこ」((c)江藤淳)にとりくまねばならないのだ。
MDでは北京はビビらない。間接侵略は継続され、一本釣りは次々に成功する。政党まるごと朝貢団体化させる作戦は、第三党、第二党に関しては、順調に進捗しているようだ。第一党とて、この調子では、分からない。
こうした政府や議会を戴いて、まじめに国防の一線に執務する者ほど、まじめにヤル気が出てこないから、いきおい、組織全般の精神も頽廃し、同盟国から貰った兵器の秘密もありがたいとも思えなくなるのではないか。
1960年には、こんな精神頽廃はなかった。なぜなら1960年頃の国防指導層は、核武装を考えていたからだ。
「30ロケット」と呼ばれた、とっくの昔にスクラップにされている国産の地対地ロケットがある。こうした古い国産兵器のスペックは、後になればかなり詳細に明らかになるのが普通である。公開資料に逐次的に数値が載るのだ。ところが、この「30ロケット」のスペックのうち、弾頭重量と炸薬量だけは、いまだに分からない。自慢にもならぬが、いままでどこにもその数値が出ているのを読んだ覚えがない。(直径30cm、長さ4.5m、弾体全重650kg、射程20km以上、ひょっとすると30km前後かも、とだけ知られている。)
弾頭重量や炸薬量の秘密がこれほどよく保たれているのは、「30ロケット」が、日本版の戦術核兵器にするつもりで開発されたからだ。シナが核武装しそうだと判ってきた1959に、赤城宗徳氏が自主安保の結論に達した。またちょうど、米軍は世界最小の原爆を実用化しつつあり、その弾頭が核ファルコンやデイヴィークロケットに搭載される。核弾頭の直径は最小で30センチにおさめられるらしいとわかっていた。その直径30cmは、1960年から本格開発がスタートし1968に部隊配備された「30ロケット」と同じである。
とうぜん、核弾頭は通常弾頭より軽く、よって、「30ロケット」の最大射距離は、二種類あったのだろう。やはりいまもって詳細は公示されていないけれども、通常弾頭で20km前後、核弾頭で30km前後だったのではないかという想像はつく。その二種類のイマイチはっきりせぬ数値が、過去の一般向け媒体の中に散見されたからだ。
1960年代には、まだ旧軍の砲兵将校の生き残りがたくさん居た。「30ロケット」の弾頭重量や炸薬量が洩れると、「それは大距離射撃でありながら多連装でない狙撃的運用、しかも非誘導とする以上、通常弾頭としてはディスパージョンの関係から合理的ではあり得ず、おそらく核弾頭にするつもりなのだな」と容易に気取られてしまって、中共の手先である新聞どもが騒ぐに違いない、と懸念されたのだ。
対支にかんしてはアメリカは頼れず、日本国は自前で核抑止力をもたねばならないという正しい使命感に燃えてこそ、関係者は責任を痛感し、国家秘密を守るのである。
自衛隊が秘密が守れないから日本が核武装できないのではなく、日本の政治家に核武装する気がなくなったから、自衛隊にも「ごっこ」以上の緊張感が生じようがないのである。
原発関係者が役人化しているから日本が核武装できないのではなく、日本政府に核戦備の緊張感がないから、原発関係者も弛緩しっ放しなのである。
アメリカの原子力委員会は、核兵器を製造するための物質を管理する役目もあるゆえ、人選は厳重であり、秘密を洩らす者はすぐに逮捕される。
それにひきかえ、日本の原子力委員会には、核武装反対という政治的スローガンを信奉する反日的分子が入り込んでいて、誰も「核武装しよう」と意見表明できないような空気に満ちている。これは、初期の科学技術庁が明瞭に「核武装準備庁」だったので、ソ共が、全力で工作員を関係諸機関に送り込んだ成果もあろう。とうとう、科技庁そのものも、1970年代のある時点から、核武装をあきらめてしまった。これは、佐藤栄作と田中角栄の二人の「負のリーダーシップ」と関係がある。以後の科技庁は「不具合隠し」にしか興味がない役人の集まりだ。
ところで、故・宮澤喜一氏が存命中に、誰かが訊くべきだったことがある。昭和17年に死去している宮澤氏の祖父・小川平吉氏(元鉄道大臣)がもし終戦後まで生きていたならば、日露戦争いらいの政友会幹部としての華々しく勇ましい経歴からして、A級戦犯容疑で巣鴨拘置所に収容されたに違いないところだ。しかるに宮澤氏は、自民党の幹事長だったときに、日本の歴史教科書の編纂について、特定アジア国からの註文を特別に反映させろと指導する「近隣条項」を推進した。宮澤氏は、あるいは小川平吉がもし昭和23年まで生きていてもA級有罪になったはずはないと確信をするがゆえに、「近隣条項」などに賛成したのであるのかどうか。
「靖国=東京裁判」絡みでシナから何度もイチャモンがつけられた折々に、宮澤氏にインタビューする機会のあったヘタレ記者たちがこの詮索を一度も正面から試みなかったために、われわれは今となっては想像をすることしかできない。
しかし晩年の中曽根元総理との対談の中で、宮澤氏はいくぶん赤裸々に戦後の政府が選択したスタンスを告白した。片岡鉄哉氏が特に注目するように、それは、大国でありながら国家としての道義は忘れるという没義道の道である。近代国家倫理からの超脱だ。
中曽根氏も、1970年代以降、シナが米国の味方になってソ連と敵対する構図が、世界を多角バランスさせるといった、キッシンジャー流の自由道徳排除趣味を肯定していたように見える。科技庁が創設された頃の中曽根氏は、核武装論者だった。それが、佐藤内閣が核武装をあきらめ、シナの要求どおりにアメリカが横田基地から核攻撃部隊を撤去すると、自由か反自由かのイデオロギーはどうでも良くなった。宮澤氏の同類となったのである。
シナに屈服するという根源的な不健全路線を政治リーダーが選択しているときに、役人に国家のことを思えといっても、そりゃ聞こえない。
日本はげんざい、ひきつづいて、シナ・朝鮮から間接侵略を仕掛けられている。攻撃されているのである。脅威は日常、いたるところに迫っている。国民の各層はそれを直感している。官僚までが「護民官」役を放棄して久しいのだ。
政治リーダーが自主防衛を将来もずっと放棄し続けると裁断した1970年代から、役人の私益指向が進行した。米ソ対立のおかげでうまく隠されていた日本のパワーエリートの腐敗精神が、ソ連崩壊後、日照の下に顕かにされつつある。それが今日の事態だ。
では目下、シナ・朝鮮から日本人をまもってるくれる「護民官」は誰なのか。
人々はそれを知りたがっている。にもかかわらず内閣総理大臣は「五ヵ年計画」で頭が一杯だ。
岸信介を峻絶した60年安保いらい、日本人は、「満州臭い」やり方を、ご尤もとは思わなくなっているのである。
有権者に対して何の責任も負っておらず、今後5年は自主退職する気もない中堅官僚が「五ヵ年計画」を夢想するというのは、あり得るし、自然なことだ。
またアメリカのシンクタンクが「日本はこれから五年でどうなるべきか」を考えるというのも、学問思想表現の自由で、ご勝手だ。
当選を果たした参議院議員候補者が、さてこれから任期6年の間に何をしてやろうかと抱負を蔵するのも結構なことだ。
しかし国の議会と衆議院議員選挙を通じて国民に責任を負う代議士である内閣の筆頭大臣が、もし「五ヵ年計画」のスケジュールをガチガチに固めて自分の最初の組閣をしたとしたら、それは、自信過剰かもしれない。五ヵ年計画の強力な推進役と、護民官役とを、一人二役に演ずることは、超人でなければ不可能である。
護民官は急場の役に立たねばならず、突発案件に十分に集中できなければならない。国家も、あっという間に亡びることがあり得る。スタッフには任せられない。
北京政府の攻撃手法も、決して相手に息つく暇など与えるつもりはない。不断に揺さぶりをかけてくるのだ。それに備えるだけでも、日本政府の筆頭者は、五ヵ年計画どころではなくなってしまうはずだ。
戦後日本のリーダーは、護民官、集票マシーンに徹するべきであり、五ヵ年計画は、じぶんの後継、もしくは自分よりも眼識があると見込むナンバーツーの有能な閣僚(一人で無理なら複数でもいい)に託すべきなのである。小泉氏は、これをやったから偉いのだ。ブッシュ氏はチェイニー氏に中期計画をゆだねているだろう。
日本のナンバー2クラスの閣僚ではないすべての衆議院議員は、仕事期間が保証されていないからこそ、五カ年計画ではなく、百年後の日本を誤らせぬための心配を、日々、国民と共にするのでなければならぬ。その訓練がベーシックになされていなければ、総理大臣が五カ年計画を任せるべきナンバー2も、どこにもみつからないだろう。
そのベーシックな訓練は、GDP大国日本が核武装に向かって歩き出したあとからでなければ、確実に行なわれることはないだろう。
カテゴリー: 兵頭二十八の放送形式
航空法と消防組織を変える必要がある
原子力関連施設の上空と、川崎コンビナートの上空は、やむをえない場合や管制官の指示による場合以外、原則として、民航機も自衛隊機も飛べないことになっている(空航第480号、防運第2899号)。
なお、敦賀と美浜原発の場合は、2000フィート以上の水平飛行に限り、許されている。(おそらく、海岸線が大きく内側に引っ込んだところに立地しているため、すべての民航機に大きく避けて通れというのが不合理だから。)
こんかい、東京電力柏崎刈羽原子力発電所の空撮映像が無いらしいのは、だから、当然だ。もしあったら、その放送局と航空機を出した会社は、国交省との関係が、まずくなるだろう。
「ヘリを飛ばせないなら、裏山の稜線から撮影すればいい」と報道会社は考えたはずだ。が、そのような写真も、インターネットで巡回した限り、リリースされていない。
このことは、北朝鮮ゲリラにとっても、刈羽原発の襲撃の下見がしにくいことを意味するのだろう。良いことだ。
ところで、『力の意志』7月号にも寄稿した如く、スイスはあのような小国で、しかも陸封されており、海岸というものがないにもかかわらず、ちゃんと原発を複数稼動させてきた。
スイスとスウェーデンは、新型の原発の独自開発と販売のための合弁企業もつくっている(戦間期のスイス・エリコン社やスウェーデン・ボフォース社がワイマール・ドイツの兵器技師の避退温存先だったように、たてまえでは原発を放棄すると言っている今のドイツだって、将来、ヨーロッパ情勢が激変すれば――それは今のロシアを見ていれば誰でも想像することだが――思い立ってすぐに、原発や原爆を獲得できるのだ)。
スイスに見習って、日本のすべての都道府県が原発(もちろん高速増殖炉)をもつのが望ましい。そのくらいでないと、来たるべきオイルショック(これはシナある限り、必ず来る)で、日本はシナといっしょに沈没してしまう。1県に最低ひとつの最先端原発を建設するという国家サバイバル・プロジェクトは、日本の株も上げるだろう。(川の最下流にバラ蒔いて年収500万円未満の労働者の老後貯金を増さしめるだけの旧套型ケインズ政策と、軍事ハイテクという川の最上流に一点かけながしして日本の産業構造を新陳代謝させ景気も好転させる、あたらしいケインズ政策との違いを、23日発売の『別冊正論』7号で、是非確認して欲しいと願う。これは、どの政党が採用しても構わない、日本にとって最善かつ必要不可欠な政策である。また、文科省の学制の統制を撤廃することによる、家庭の学資貯蓄の必要減→消費拡大という策の方は、8月1日の雑誌上で詳しく話す。)
ただし日本中に原発をつくろうという以上、昭和46年の航空法は、少し変えなければならないだろう。だいたい、現行のままでは、ヘリコプターで原発の火事を消すことも考えられないではないか。
〈地震で電話回線が混んでいて119番通報ができなかった〉という今朝の「共同」発のニュースはほんとうだろうか? なんのために、電力会社はマイクロ・ウェーブ通信網をもっているのだ? それに、電力線をつかった有線通信(データ伝送)も、やっているのではなかったか?
こんなていたらくでは核武装は無理、と思う人もいるだろうが、話は逆なのだ。シナ・朝鮮などに隣り合わせる経済大国でありながら、核武装から逃げているような没倫理の社会は、必然的に、役人を頽廃させるのである。公共度が高い電力会社は、准公務員組織である。
前々から提言がされているが、消防を自治体だけに任せていたら、有事のさいの国民保護はできない。国が「空中機動消防隊」を全国数箇所に展開し、大災害が発生したところに、外部からかけつけるようにすべきなのである。もちろん原発側はその機動消防隊本部とのあいだに複数の直通回線を構築するであろう。
お知らせと御礼
1月27日に募集をかけました支那事変カウンター・プロパガンダ漫画用のボランティア作画家さんが大阪でみつかりましたので、ひとまず募集を締め切ります。
参院囈語
参院選比例代表用のテープ原稿(既定)を点検しよう。
これは全部で28パラグラフあり、そのすべてのパラグラフは4行の文章から成っている。
第一行目は、「こちらは維新政党・新風です」で、最初のパラグラフから最後のパラグラフまで、すべて共通だ。
第二行目は「めざめよ日本!」というものと、「取り戻せ国家の誇りと日本のくらし!」というものの2種のパターンがあって、1パラグラフごとに、交互に唱えられる。
第三行目が、具体的な政策や訴えで、パラグラフごと、ひとつひとつ違う。つまり計28種類ある。
第四行目は3種のパターンがある。「参議院選挙比例代表の一票は新風へ」「参議院選挙比例代表は新風、新風とお書き下さい」「参議院選挙比例代表は新風、新風への御支援宜しくお願ひ申し上げます」。これが順繰りに使われる。
わたしは以下のように注文をつけた。
まず第四行目だが、これは全パラグラフを通して「参議院選挙・比例代表は、しんぷう、とお書きください」で統一すべきであろう、と。
なぜか。
この第四パラグラフは、軍隊の命令で言えば、「貴隊は7月29日0900、×××小学校の体育館付近に進出し、別命あるまで確保すべし」といった、いちばん肝腎な行動命令の部分に該当する。
さて、このテープをたまたま聞いて感心した有権者は、何をどうしなければならないのか? 耳に残るだろうか? 間違いなく理解するだろうか?
どの投票場に行き、どの用紙に、何と記入すればいいか。それを、選挙カーが歩行者の近傍から遠ざかってしまうまでのごく短い時間に、極端に物分かりが悪い子供でさえもしっかりと把握するように、忙しい人の耳にも残るように、あいまいさを排して、いちばん簡潔に伝えねばならない。しかも、一回聞き逃しても、二回目に確認できるように、言い方を変えてはよろしくない。
支持政党が無い一人の市井人を、たまの日曜日に投票所に行かせるというのは、それだけでも大変なことだ。既定原稿は、そこが分かっていない。選挙のアマチュアだ。人々は皆いそがしく、他に興味のあることや気がかりなことがたくさんあって、しかも大衆は、ほとんど衆議院と参議院の区別も意識しておらず、いわんや地方区と比例区の違いなど承知してはいないのだ。
「フール・プルーフ」――馬鹿でもぜったい間違わないマニュアル式に、誘導できるかどうか。無効票とならぬように徹底親身に配意して、誘導ができるかどうかが、およそ宣伝の骨法である。
「よろしくおねがいします」なんていう、何をしたらよいのかさっぱり分からない曖昧情報を、第三行目に関心を持った有権者は、期待してはいないはずだ。しかも、下手に出る態度によって、そこには泡沫オーラさえ滲むであろう。ダークホースだからこそ、昂然としていた方が、見ず知らずの他人から、頼もしく思われる。
次に、第三行目の全28パターンを、逐条的に検討する。
以下、●は、オリジナル(既定)原稿であり、○は、それについての兵頭の校訂案である。
校訂案はけっきょく魚谷党首によって採用されなかったので、全国の皆さんは、これを耳にすることはない。
※は、校訂理由の説明だ。
【 】は原稿のパラグラフに便宜的にふった番号だが、テープ(MD?)はエンドレス再生だから、聞く側にとっては、意味はない。
【1】
●新風は、日本の現状を憂へる国民有志によつて、草の根的に結成された唯一の政党です
○新風は、強い国家と、個人の自由を両立させようとしている、唯一の政党です
※「草の根的に結成された唯一の政党」と言い切ったら、それは公的な嘘になるのではないかと用心するのが公人の心がけではないか。「憂国」を強調すればバカ右翼や全体主義者と混同されて無党派層が引いてしまう。逆に個人の自由をこそ強調すべきなのである。
【2】
●新風は、利権保身と無縁な唯一の政党です
○新風は、どんな不公平な特権勢力も許さない。法の下の平等を実現する政党です
※既定原稿は、他党の候補だって一様に口にすることであり、新味なく、忙しい有権者にとって無価値・無内容な情報であり、通行人の右の耳から左の耳に抜けて行くだけで、次のパラグラフへの興味もほとんど失わせるに足るものであろう。せっかく、せと氏が部落や創価学会や在日と対決しようとしてくれているのに、そこを強調しないでどうするのか。なおかつ、党としては、合法的な金儲けに反対するマルキストや、レイシストではないことを、「法の下の平等」という短いキーワードで、インテリ層にも説明できるのである。
【3】
●新風は、誤魔化しとタブーに満ちた戦後政治をただせる唯一の政党です
○新風は、マスコミがおそれて報じないタブーをすべて批判できる唯一の政党です
※ここでも、そんなことを言って公的な嘘をつくことにならないのか、自動的に自省できないようでは、公人公党の資格に疑問符がつくであろう。聞き飽きた、手垢のついたような、紋切り型の呼びかけに、どんな通行人が耳をそばただせるのであろうか。大衆に関する想像力がまるで乏しい人の書いた原稿に違いない。
【4】
●新風は、北朝鮮拉致犯罪に十三年前から取り組んだ唯一の政党です
○新風は、北朝鮮の拉致犯罪と十三年前から戦ってきた、皆さんを守れる政党です
※拉致の公然化は特定の誰かの手柄ではないのではないか。それよりも、拉致が公然化したあとに6か国協議などに組み込まれて同胞救出の手を打たない既製の与野党を叩くレトリックを考えるべきだろう。
【5】
●新風は、勇気と信念で真の政治改革を断行できる唯一の政党です
○新風は、役人や特権勢力が、国家と国民を食いものにしないように見張っています
※「勇気」「信念」「政治改革」なんていう常套句を使ったが最後、無党派の有権者はソッポを向くにきまっているではないか。無党派層とは、じつは皆リアリストであり、無内容なスローガンによってどんな幻想も喚起されることはない。現実の壁を知っているからこそ、当選確率の高いタレント候補に投票して、己れ一個の存在の手ごたえを知りたがるのである。とにかくパンチがなさすぎるぜよ。
【6】
●新風は、真面目に働く労働者、心ある日本人の怒りを真に代弁する唯一の政党です
○新風は、外国人の不正な就労を禁じ、日本人の雇用と給与を劇的に改善してみせます
※大正デモクラシーがなんで続かなかったか。当時の政党政府は、国全体が貧乏で、しかも人口が増え続けているときには、ケインズ政策が不況対策として最も道徳的であるという判断ができなかったのだ。逆に、利子生活者の味方になってしまって、大衆から見限られたのだ。ダークホースの政党として、目下の構造的なデフレと戦う施策をもっているのか。一個の具体策も挙げないのでは、「口だけ」「中味なし」と疑われておしまいだ。これまたパンチがなさすぎる。「不法就労者を追い出す」と言えるのは新風だけなのだから、そこを強くPRせねば。
【7】
●新風は、日本の正義を回復させる憲法を制定できる唯一の政党です
○新風は、天地の公道に基くまっとうな憲法を実現し、隣国からの脅威は実力で防ぎます
※公的な嘘をついていないか? 「天地の公道」は五箇条の御誓文を指す。つまり、明治憲法へ単純に戻れとは叫ばない。それはバカ右翼と思われるだけ。
【8】
●新風は、治安悪化の一因である不良外国人の追放を強く主張してゐます
○新風は、不法な外国人を国外へ追放し、正直者が安全平和に暮らせる社会を防衛します
※「不良」だから追放するのではなく、「不法」だから追放するのが近代国家だろう。ここが分かっていないと思われることは、近代法哲学と議会制民主主義政治そのものを理解していないと疑われるもとになろう。それに「強く主張しています」って何だ? ちっとも強そうに聞こえないんだよ、そんなテープじゃ。頼りなさげのオーラ出すぎ。
【9】
●新風は、公立学校を週六日制に戻し、子供たちの学力の向上を図ります、
○新風は、中学からすぐに大学へ進学できるようにして、日本の学問水準を引き上げます
※他党でもやるといっており、趨勢としてそうなるに決まっていることを、仰々しく宣伝して何になる? 前向きの、斬新な提案をしなさい。あるいは日教組を名指しで叩くべきところでしょ。
【10】
●新風は、農業や林業・漁業の新興に努め、安全な食糧確保と自給率向上を図り、豊かな日本の自然環境の維持に全力を尽くします
○新風は、農林漁業は国家の安全保障問題だと位置づけ、輸入品との競争から保護します
※長すぎる! 選挙参謀は、一度はスーパーマーケットの売り子のバイトをした方がいい。客は7秒で眼の前を通り過ぎる。だから7秒以内で、なぜ今このトマトを買わないとあなたは損をしてしまうのか、明確に分からせるのが口上だ。この一行だけで7秒使ってしまう。次の投票行動の説明は車が遠すぎて聞こえないだろう。しかも、内容が陳腐で、いかにも本気なさげ、「お義理でとってつけました」感全開でしょう。有権者の耳には「耳タコ・フィルター」がかぶさってるのよ。だから、既定原稿では、少しも記憶に残るまい。
【11】
●新風は、男性は男らしく、女性は女らしくが社会の基本と考へます。行き過ぎた男女共同参画条例に反対してゐます
○新風は、新しい時代の個人の実現を支持し、反日フェミニストの利権暗躍を許しません
※アルカイダ級のセンスの無さ。これで大衆有権者の支持が得られるとでも思っておるのか? 敵は誰なんだ。有権者の半分である女なのか、外国の工作員なのか。本当に議席が欲しいならば、有権者を侮るな。
【12】
●新風は、真面目に働く勤労者や中小企業事業者が報はれる簡素な経済システムの確立に努めます
○新風は、中小企業事業者の会計業務を最も簡便にする新しい税制システムを提案します
※労使をいっしょくたにして短いアピールなんかできないよ。短く分けてアピールしなきゃ。労働者には別パラグラフですでにアピールしてあるから、ここは零細事業主に訴えかける。「簡素な経済システム」じゃ、2.26の皇道派バカ将校と同じと思われるネ。北一輝もそんなこと言ってないよ。
【13】
●新風は、テロ国家・北朝鮮による拉致・誘拐を断じて許しません。金正日体制を打倒する徹底的な制裁を実行します
○新風は、不良外国人や北朝鮮のテロと戦う警察官を応援し、警察官の数を倍増させます
※テロや拉致に選挙で賛成を唱える政党なんてあるわけないんだから、自党の差異化にあまりならないし、「断じて」とか「徹底的に」という力瘤が、逆に痩せ犬の遠吠えのイメージを醸し出すことに気付いて欲しい。大衆は「できもしないことを言いやがる」と、見抜いてますよ。それよりも警察官を味方につけろ。警察官に朝鮮人や共産党員やカルト宗教信者はいないんだから。
【14】
●新風は、矛盾だらけの現行占領憲法を破棄し、自衛隊を国軍として再編し、力強い国家を創ります
○新風は、防衛力を先進国の平均水準まで高め、近隣諸国の横暴から国内を安全にします
※憲法と防衛は票につながらない。大衆は興味を持っていない。それよりも、ヘタレどもやサヨク工作員からの讒謗に対する反論を展開しておく。先進国の平均水準とは、GDPの5%である。その世間並み水準の防衛支出で、フランスやイギリスのような核武装国を凌ぐ核抑止力の確保ができるのである。だが選挙カーのテープで長ったらしい説明はできない。新風は1930年代のファシズム路線を目指していないという端的な説明である。
【15】
●新風は、アメリカ追従の外交から、独立主権国家として毅然とした外交を展開します
○新風は、アメリカからの理不尽な要求をたしなめられる、当たり前のつきあいをします
※なぜ入学試験の1時間目は「国語」なのか。どの国でも、国語ができない人には、複数の他者を自分のために働かせるパワーはないからです。国語がおかしい人に議会で法律をつくってもらいたいとは、誰も願わない。もちろん、文法的におかしくてもインパクトのある表現はあるが、既定原稿はそれに相当すまい。それと、沖縄暴行事件のようなトピックスが伴っていれば格別だが、何もトラブルがないときにやみくもにアメリカを攻撃して、誰の支持を得たいのか。これでは反日サヨク工作員と差異化できないではないか。
【16】
●新風は、ロシア・中国・北朝鮮の核の脅威に対抗して核保有を前提とした国防政策を実行します
○新風は、脅しで日本を屈服させようとする外国には、適切な核武装で対抗します
※経済活動は、手段は有限、目標は無限。しっかり合法的なら、一人で何兆円かせいで贅沢三昧しようと、ご自由なわけです。逆に、国防は、法秩序が敵の暴力で蹂躙されようとする危機的異常事態なので、目標が有限(法秩序の回復)、手段は無限(自律軍法のみが顧慮される)でなくては成り立つものではない。しかし短い選挙カーのテープでこんな難しい話はできない。核武装を公約にしている珍しい政党なんだと印象づけることができればそれでいい。わざわざ敵国の名前を列挙する必要はありません。有権者ひとりひとり、憎らしい外国が違うのです。そこに投網をかける印象誘導ができなくなる。
【17】
●新風は、人権擁護法案や在日特権などに反対してゐます
○新風は、法の下の平等に反した在日特権、人権特権、団体特権などに堂々と反対します
※大衆は「人権擁護法案」の何が問題なのか、ほとんど知りません。朝鮮人や同和マフィアを攻撃するのは、かれらが「法の下の平等」を歪め、近代民主主義を破壊しているからです。そのキーワードを入れて常に強調をしていかないと、逆差別団体だと人々から思われる可能性がある。バカ右翼まるだしで「民族」というのもやめましょう。それは Racism に他なりません。
【18】
●新風は、台湾・チベット・南トルキスタン・南モンゴルの解放独立を支持してゐます
○新風は、国外の反近代的な専制政治の暴虐の犠牲者を無視せず、救援の手を講じます
※頭を抱えるとはこのことだ。大衆は未だ、シナが世界の癌だという認知に達するレベルではない。なのにその先の話をしてどうする。4つを敢えて列挙している背景も不審だ。
【19】
●新風は、子供たちに正しい歴史を教へ、国家と伝統文化に誇りの持てる教育を推進します
○新風は、子供たちに正しい歴史を教え、公的教育から、悪らつな反日工作を除去します
※自民党がいいそうな奇麗事を新風が言ってもインパクトは無い。新風は敵を識別済みであると印象づけよ。
【20】
●新風は、大都市と地方との格差是正に努めます
○新風は、大都市の地方税を、大都市の国際競争力を維持・向上させるために還元します
※都市部の浮動票をあつめなかったら、1議席もとれないんだっていうこと、分かってます? 都市に媚びようよ! そこが票田なんだから。「格差是正」じゃ民主党と同じだし、あまりに具体案なさすぎて、ああ、誰も何も考えちゃいないんだ、ってことが、もうバレバレ。
【21】
●新風は、家族を解体する夫婦別姓に反対し、伝統的生活文化と家族の絆を守ります
○新風は、反日工作員が、日本の家族文化を破壊しようとする策謀を見破り、粉砕します
※新風に投票してくれるであろう、ニート、ひきこもり達には、別姓なんて何の興味もない話。また、同じことを言うのにも、後ろ向きでネガティヴに聞こえる言い方と、前向きでアグレッシヴに聞こえる言い方があるわけ。大衆は、攻撃精神や元気のない候補はちゃんと見破っていて、ハナから何の期待もかけないわけ。
【22】
●新風は、靖国神社に代はる新たな戦没者追悼施設建設の策略に反対してゐます
○新風は、靖国神社に外国が口を出すことを認めず、そのような外国とはつきあいません
※「反対」してるのは何も新風だけじゃない。多くの団体や個人が反対を表明してるんだ。その他に何をするんだ、新風は?
【23】
●新風は、年金・健保制度を一元化し、相互扶助的社会保障制度の確立に尽くします
○新風は、年金・健保を税金に統合し、国家が個人の保証人となる安心な制度を作ります
※漢字を11コ並べて、「確立に尽くします」だぁ? 有権者を舐めるんじゃないよ! 「ああ、この政党は頼りになりそうだなあ」という印象を、これっぽっちも与えないよ。
【24】
●新風は、真の行財政改革を断行して、巨大赤字のつけ廻しを中止させます
○新風は、武器の輸出も解禁し、最先端産業の成長を通じた財政の健全化を提案します
※せっかくの選挙カーなんだからさぁ、沿道で聞いた人を「エッ?」と注目させちゃうようなこと言おうよ。前々からいろんな人や団体が言い散らかしてきた定型表現を並べられても、誰の耳もピクリとも反応しやしませんよ。「断行」ってのは、政権党か野党第一党が使う言葉であって、1議席もない新風が使ったら、いかにも滑稽でしょ? 「真の」って何か説明してよ。真空としか受け取られませんよ。
【25】
●新風は、労働環境・社会秩序を悪化させる安易な外国移民受け入れに反対してゐます
○新風は、病院経営の統制しすぎを見直して、医療従事者に真の働き甲斐を与えます
※不法就労者の話はすでに前のパラグラフでしているよね。これからは病院や介護施設で勤務する労働者や医師の「士気(モラール)」の問題が必ず浮上します。新風はそこにツバをつけておいた方がいい。医師たちは本当に悩んでいますよ。
【26】
●新風は、靖国神社問題などの内政干渉を繰り返す中国・韓国には安易な妥協を行ひません
○新風は、公務員の国家反逆罪を新設させ、スパイや工作員を、政・官界から一掃します
※靖国の話は前に出てきたし、「靖国神社問題」と手前で「問題」なるものを肯定するのはおかしなもんだし、安易な妥協を行ひませんと力んだって泡沫政党が何を決意して腕まくりしたって敵には視界外でしょ。シナ・朝鮮の手先になっている日本人を征伐しようと街宣すべきじゃないの? それは選挙後の政界にも残響を刻み付けますよ。
【27】
●新風は、中国・ロシア・韓国による不法な領土侵犯に断固とした外交姿勢を主張してゐます
○新風は、日本領土を不法に占領している外国との交流をあくまで制限し、筋を通します
※日本の大衆は、面倒な問題、特に内国問題ではない外国の問題からは、できれば関係を断ってしまいたいわけ。忘れ去りたいわけ。その素朴な感情を代弁する政党が、これまではなかった。
【28】
●新風は、宮沢・村山・河野談話を撤回して、内外に歴史の真実を堂々と訴へることを主張してゐます
○新風は、宮沢・村山・河野談話を撤回させ、対外宣伝省を設けて世界に真実を伝えます
※ポジティヴに行きたい。外務省ではもうダメなのだという共通認識は既に有権者にはあるんですよ。そこをどうするのか。
雑。
新風比例区のテープ原稿を直したという話をしましたが、吹き込みは、旧原稿のママで行なわれた模様です。
地方区の録音はとっくに終わっているそうですから、これで、次の参院選の新風の選挙カーから聞こえてくるエンドレスのテープの内容は、兵頭二十八とはいっさい関係ないことになりました。以上、訂正のお知らせでした。
久間氏辞任のニュースを読みて
『力の意志』という雑誌に、「核戦争」と「核抑止」と「核武装」の違いを分かり易く解説しているので、「新風」のスローガンに疑問のある人は、読んでみてください。
以下、遇懐。
米国は日本の防衛大臣に(たぶん)次のような要求をしていた。
○陸上自衛隊を、イラク、アフガン、シナ大陸へ、オールラウンドの戦闘目的で派兵できるように、日本の法律と政府見解をさっさと変えろ。こっちは陸軍が足りなくて世界中で困ってるんだ。やる気がないなら北鮮をもっと増長させてやるぞ。こっちは痛く痒くもないんでな。くやしかったら陸上自衛隊で人質を奪還しろ。北京と戦争しろ。
○最新流儀の地上戦には不向きなユニットであるために、合衆国の官僚組織として陸軍への統廃合=消滅の危機にさらされている「海兵隊」が有している沖縄利権を、絶対に縮小させないように働け。海兵隊をリストラする反面で、上下両院の海兵隊出身議員は、少しあやしてやらんといかんのでな。
○予測できないはるか遠い将来にアメリカ本土防空の役にたつかもしれないMD先端分野に、巨億の日本資金を投入してくれ。オレたちが北鮮問題で北京と当面事を構えないことの国内大衆向けの言い訳になるし、わが閣僚の縁故会社の株を上げたいんだ。
これに対して防衛大臣は米国に(たぶん)次のような要求をしていた。
◇オレも代議士だ。日本が損するだけのそんな諸政策の実現に苦労しても、票にもカネにもつながらず、まるでくたびれ儲けだ。見返りをよこせ。
◇とりあえず武器メーカーにおいしい話を持ち帰ってやりたい。土産も無しじゃ、接待された分のお返しもできん。F-22を三菱にフルにライセンスさせると早く約束してくれ。
◇安倍が改憲するまでは派兵の話は無しだ。マッカーサー糞憲法を変えるのには時間がかかるんだ。そのくらい理解しろ。
◇沖縄に滑走路を増やしたって、俺の懇意の土建業者には一文も入って来やしねえじゃねえか。俺が何か儲かるようなスキームを提供しれや。俺が自民党のドンになったら、海兵隊についても悪いようにはしねえからよ。
◇オイオイ、MDなんて短距離でも1割しか当たるもんじゃないってことを、メーカーとツーカーの俺様が知らされておらんとでも思っておるのか。武器輸出が全面解禁されるまでには時間がかかるんだ。MDビジネス拡大の話はそれからだ。そのあとでなら、日本のメーカーにも仕事が回せるしな。
◇だいたいお前らのくれる情報はデタラメだ。信用できねえんだよ。何か俺にだけ、スゲーひみつの話を教えてくれねえかな。誰にもバラさねえからよ。それを利用して、もっとビッグになりてえわけよ。
これに対して米国政府は安倍氏に(たぶん)次のような意見を述べた。
◎防衛大臣は好ましからざる人物である。所属する派閥も腐っているようだ。誰か、世界政策のビジョンについて高度な話が通じ、民主主義の理想を語りつつ国内産業の金儲けにも抜け目無く配意しつつ絶対に歴史問題での失言はせず、テロリストにチャンネルがつながる灰色ビジネスにも無縁という、マスコミ時代の公人としてよく訓練されている人物と替えてはどうか。そんな彼もしくは彼女が将来の日本の指導者を目指すのなら、アメリカのパワーエリートは、長期的に応援したい。
有意義だった熊本視察
今回の訪問で新風の選挙用レトリックの弱点を把握することができた。ポスターと地方区の選挙カーの録音はもう間に合わぬが、比例区用のテープはギリギリ間に合うようだから、さしでがましいけれども、テープ原稿の校正意見を魚谷さんに伝えた。
続いて、うぐいす嬢用のアドリブ挿入原稿も考えたい。
熊本県本部のスタッフの方に、金峰山のふもとの曹洞宗雲巌禅寺の霊巌洞に案内していただいた。持参の磁石で、洞窟の開口部の方位は南西もしくは西南西向きであることを確かめた。思ったよりずっと小さな寺だった。信州の戸隠神社のようなスペース感と想像していたのだが……。閑雅を得たら、また『五輪書』序文の意味を再考したい。
熊本市内の「四時軒」に保存されている、横井小楠が暗殺された折に敵の攻撃を3太刀まで防いだ懐剣の実物(刃部でモロにうけとめた状態がまざまざと残っている)は、剣技に興味のある者なら必見。(本物に間違いなくば)実物史料として重文級ではないか。
25日配信の「読書余論」は衝撃を与えたと思う。米国の東アジア戦略は時々刻々に変わるようなものではなく、選挙後の北鮮問題の展開も予測容易なのだ。
御礼一号。
ネット ゲリラ 潜水艦 で検索できるブログさま、わざわざ転載して下さり、まことに辱う存じます。
「日本エロ本史」の企画案がしかるべき版元の目にとまりますよう、祈り上げます。
謹んで媒体を公募いたします。
あたらしいマッカーサー伝を書きたいと思っております。ただし、この企画は雑誌連載でないと成り立たないと思いますので、下記のように媒体を公募し、応ずる声が皆無ならば、企画そのものを無期延期します。
○執筆の狙い:
戦後62年になりますが、いまだに日米関係は尋常妥当であるようには見えません。その原因は人々の憲法無知にあり、さらにその原因の一つには、古い世代の戦後左翼から戦後保守までに共通する「マッカーサーの神格化」があるのではないでしょうか。
一例に挙げて恐縮ですが、渡部昇一先生のマッカーサーの神格化も、困ったものだと思うのです。
愚生の思いますところ、ダグラス・マッカーサーは、非アメリカ的な異常な人生観をもっていたのであって、それを自己演出の才能でごまかしていました。戦場指揮官として凡庸であり、マネージャーとして有能でした。まさにその故に、フィリピン人と日本人と朝鮮人の支配者としては適任ではないかと、米国東部人からは見積もられていたのです。「マッカーサー、イコール、アメリカ」ではありません!
日本人を特異的に良好に支配できたマックの立場に、一度なりきってみることにより、尋常妥当でない憲法と、尋常妥当でない対米関係を、クールに観察できる視力を、わたしたちは獲得できるでしょう。
○雑誌連載でないと困る理由:
これまで愚生はあらゆるテーマを「単発書き下ろし」で追求してきましたが、1歳児を抱える家計の維持という最近の免れ難い任務から、取材に手間のかかる、この重いテーマに限っては、雑誌連載形式でないと、とうてい完遂不能――と予見しております。
○希望する媒体:
特にありませんが、月刊ですといちばん助かります。アカ系でも宗教系でも朝鮮系でも「無問題」です。破格の稿料をいただけます場合は、愚生じしんが転向入信or顧問就任するかも……! ご連絡は、管理人さん経由で。
……という世知辛い話のあとで、雑談に移りましょう。
S51刊の『最後の参謀総長 梅津美治郎』によると、二・二六事件で刑死した将校の遺家族が窮乏してその日暮らしをしているのを、昭和13年に石丸志都麿・予備少将(S6待命)が救済してやろうと運動したのだそうです。陸軍省では、天皇と世間に誤解を与えかねないというのでこれに関与することを渋りましたが、けっきょく今村均(兵務局長)が次のような方策をまとめてやったといいます。
すなわち、遺家族のうち、10歳以下の男子を徴兵保険、女子を嫁入保険、さらに40歳以上の人々を養老保険に入れ、その掛金は陸軍省が一括払いし、保険証書を各家庭に贈呈する。もしも家族が至急に現金を必要とするときには、証書を担保として、保険会社から低利で借金ができるという特約もあったんだそうです。
この逸話には、これから最も市場で歓迎されそうな現代の金融商品のヒントが隠れているような気がします。
また、おびただしい資産を退蔵させている団塊世代から、より消費性向の強い若い世代に、途中で贈与税を抜かれないように「遺産」を「安心(綜合保険)」に転換して移転(生前継承)させてやるという便法は、もっと私企業によって研究され、また国によって奨励されるべきではないのかと思いました。
上甲板がない構造の舟で日本海を渡るのは自殺と同義
海上自衛隊・函館基地隊(主幹は第45掃海隊)の浮遊機雷の処分のピークは1955年であった。朝鮮戦争でウラジオストックを防御するために仕掛けられたソ連製触発機雷の係維索が切れて浮遊化したものの中には、津軽海峡を抜けて、苫小牧まで流れ着いたものすらあったのである。
1951年5月から1953年3月まで、日本海から太平洋に常に流れている潮流に乗って次々に入ってくるソ連の浮遊機雷を、目視で避けて走る必要から、すべての青函連絡船は、日没から日の出まで、運航が停止されていた。
(もっと詳しい情報は、隔月刊の『北の発言』のバックナンバーの兵頭記事を見れば、載っているだろう。)
つまり、ウラジオに近い北鮮の東海岸から何かを漂流させたとき、それが青森に漂着する場合があることは、別段、不思議なことではない。
もちろん、ボロ船に人間が乗って沖に出て、その人間が生きたまま無事に日本まで辿り着ける確率は、日本海がおだやかになる夏季であっても、ごく低いだろう。そんなマネが確実にできるくらいなら、とっくに何千雙ものタライ船が、日本を目指して脱出してきているはずだ。
今回の漂着事件は、北鮮軍にまた一つのヒントを与えてしまった。――乾舷高をギリギリに低くした木造ボロ舟の舟底に、海面上からは視認できぬように、航続力の大な低速の小型船外機をとりつけて、青森県または秋田県沖まで、漂流木同然のスピードで到達する。海保ではこれに注意することはとてもできぬ。そして、海の深いところで、特殊船外機は切り離し、海底へ投棄してしまう。かくしてどこから見ても真のボロ舟の姿となって、あとは手漕ぎで、海岸に達着。もし海岸に日本の警察の有力な部隊が待ち構えているようであれば、脱北難民を装う。さもないときは、コマンドー部隊のミッションを継続し、白神山地~八甲田を夜間に縦走して、三沢もしくは六ヶ所村に向かう……。
漂着鮮人のためにわざわざ裏日本に迎賓館を建ててもてなす必要は無論ない。なかんずく東北地方の良いところは、シナ人や朝鮮人などがうろついていれば、すぐに分かるというローカル性にある。特亜人収容所などを造ったらその地域の長所は失われてしまう。よろしく旧式軍艦の船倉に留置し、そこから韓国政府さしまわしの伝馬船に移乗させるようにはかることだ。
北鮮にいくらボロ舟があろうと、港や海岸は自国警察と密告隣組によって厳重に監視されており、地元漁民でもない者がおいそれと漕ぎ出せるような環境ではない。それより気になるのは現今の同地における「櫓」の普及度だ。船外機の普及で、櫓漕ぎの技能など廃れてしまっているようであれば、ますます、生きたまま日本まで到着できる確率は微小である。