Michael Elleman 記者による2019-10-9記事「North Korea’s New Short-Range Missiles: A Technical Evaluation」。
結論。3種類の短距離地対地ミサイルKN-23/24/25は、いずれもさらなる発射実験が必要。そのテスト回数を見ていれば、北鮮の「狙い」も読める。
20回ほど繰り返すようなら、それは短射程SSMによる敵軍相手の打撃能力を持ちたいからだ。
テスト20回未満で新SSM群を実戦配備するなら、彼らは敵の軍隊相手に必要になる命中精度についてはまったく妥協したことになる。命中精度が悪いSSMは、実戦では、1目標に対してやたら多数を発射しなくてはならない。対都市攻撃の役にしかたたないのだ。
おそらく北鮮は液燃式のレンジ300kmの「火星5=スカッドB」とレンジ500kmの「火星6=スカッドC」を、固体燃料式SSMで更新することを望んでいる。それは発射シークェンスが短いことでも有利。
米国の調べ。KN-21はレンジ250km。KN-18は450kmだろう。
KN-02トクサは、ソ連のSS-21「トチュカ」に似ている。レンジは大きく見積もって120kmか。固体燃料。
20回も飛翔テストをしているから、命中精度については北鮮軍は納得したのだろう。
KN-23はイスカンデルもどきだ。420kmは飛ぶだろう。ポテンシャルとしては600kmくらい。
KN-24は、ATACMSもどき。すでに実射で400km飛ばしてみせた。
KN-25は径45センチ弱の多連装ロケット弾で、レンジ380kmを実証済み。GPS誘導される。
KN-09は、径30センチの多連装ロケットで、レンジ250km。
KN-23からKN-09までは、すべて、弾道の最高点が50kmを越えない。これは、大気の抵抗を利用して空力フィンによってコースを変えることを可能にする。
落下中にGPSによってコースを自己修正できる場合、半数必中半径CEPは100mまで縮まると期待できる。GPSを利用できず、INSだけで自己修正する場合でも、CEPは200m以下を期待できる。
地上の硬化目標を破壊するには、500kgの弾頭が、距離20m以内で炸裂する必要がある。
地上に暴露している航空機を破壊するには、500kgの弾頭が、距離60mで炸裂する必要がある。
もし弾頭重量を1トンにできるなら、硬化目標は距離25mで、暴露航空機は距離70mで破壊できる。
この関係を数式的に言い表せば、単弾頭の重量を8乗に増やしたときに、やっと、必殺半径を2倍にできるのである。
すなわち、砲弾や、地対地ミサイルの単弾頭を重くしていく努力をするよりも、軽い弾頭の地対地ミサイルの精度を高める努力をした方が、ずっと、軍事資源は節約できるというわけだ。
新顔の北鮮ミサイルの弾頭重量のデータは得られていない。推定では250kgから500kgの間だ。
もしある単弾頭の破壊殺傷半径がCEPに等しいならば、破壊殺傷期待率は0.5である。すなわち50%である。
もしある単弾頭の破壊殺傷半径がCEPの2倍であったならば、破壊殺傷期待率は0.94になる。
スカッドB=火星5の弾頭重量は1トン。CEPは750mから1000mであった。このレベルの精度の地対地ミサイルでは、何か特定の軍事目標を破壊できると期待することはできないことが、わかるたろう。
だからロシアはイスカンデルMをつくった。
北鮮はこれを模倣することで、破壊殺傷期待率が0.5(すなわちCEPと破壊殺傷半径がイコール)から0.9(すなわち弾頭威力=破壊殺傷半径がCEPの2倍ある)のミサイルを獲得したがっているはずだ。
KN-23/24は、400~500kgの単弾頭か、数百発のクラスター子爆弾を運搬するのだろう。
その破壊殺傷期待半径はだいたい50mから100mである。
KN-09/25の弾頭はKN-23/24の半分くらいだろう。ところが、弾頭重量が半分になっても、もし精度が等しければ、破壊殺傷期待率は、2割しか減じないのだ。
もし1発の地対地ミサイルでの目標破壊期待率を90%に高めたかったら、そのミサイルのCEPは25m未満にせねばならない。
それには最低限、GPS誘導と弾頭センサーによる終末ホーミング装置が不可欠である。
あるSSMの弾頭が特定目標を破壊するのに必要な炸裂距離が、そのミサイルのCEPの半分であった場合、90%の期待率でその特定目標を破壊したければ、同一座標に対して13発のミサイルを発射しなければならない。
北鮮にはCEP40mを実現する技術はない。200mで妥協するしかないだろう。すると、1軍事目標の破壊には、最新型ミサイルが10発必要だ。
これを覚えておけば、近未来の脅威を読み間違えることはないだろう。スカッド・レベルの旧式ミサイルは、都市攻撃以外には、無意味である。
KN-02は20回の実射テストでようやく精度面での納得が得られた。
20回未満の実射テストしかやってない北鮮の新顔ミサイルは、CEPを期待されていないか、未完成品である。