ハルキウ東方の前線で9日、投降意思を表示した露兵を、宇軍の4×4タイプの地上走行ロボットが誘導して、捕虜にした。

 孤立していた2人の若い兵士。
 この陸上ロボットは、敵塹壕に対する自爆攻撃にも使われていた。同じものが、投降兵を《道案内》した。UGV戦史における、初のケースとして記録されるだろう。

 ※7-8の別報。さいきん米軍が、航空基地で飛行機の離発着を邪魔して困る野鳥を追い払うため、「犬型ロボット」を試用してみたところ、移動するスピードが遅すぎて、鳥からすっかり舐められてしまい、ちっとも脅かしの役には立たないと判明した。そこで「4×4」駆動の装輪車台に樹脂製のコヨーテ像を載せて疾走させたところ、さすがに鳥どもは逃げ散ってくれたという。

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 ロイターの2025-7-10記事。
  ロシア政府は国内の大資産を有する私企業を次々に「国有化」せんとしつつあり。特に地下資源採掘系。

 企業資産の押収によって政府歳入の穴を補填しようというのだ。蛸の脚喰いじゃないか?

 ※TASSの2025-7-8記事によれば、ロシアではウォッカの生産量が、前年の1月~6月に比較して、10.9%減ったと。アルコール飲料全体で見ても、生産が16.1%減っている。「要塞ロシア」などと呼号し、国内経済を総軍事化しようとすれば、民需生産には、人もモノも資金も割り当てられなくなる道理。支那事変中の日本経済と同じだ。酒の分野でこの数字が出て来たのは、《氷山の一角》を敢えて広報したものだ。

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 7-9にロシアは、無人機とミサイル、合計741発を、主に、ウクライナ西部のリヴィウ市へ集中した。それら無人特攻機の飛行動線は、ウクライナ国内の隅々を洩れなく網羅するように企まれており、どこに防空の隙があるかを、一晩で把握できるようになっていた。


ガ島近海アイアンボトムサウンドで巡洋艦『USS ニューオリンズ』の艦首が発見された。

 Mark Price 記者による2025-7-8記事「Mystery on Pacific seafloor proves to be part of daring WWII saga, US Navy says」 。
  無人潜航艇により、深さ700mの海底にあることが、初めてつきとめられた。この長さ30mの艦首部は、1942-11に日本軍の魚雷で吹き飛ばされていた。『ニューオリンズ』乗員は、応急にココ椰子の材木で艦首をこしらえて、米本土まで戻った。沈没船体は船員の墓場と看做されるので、勝手に荒らされるのを予防するために、その正確な座標は公表されない。

 ※この爆発で182人が戦死したとされている。艦首部の防水区画の中に、その一部が残っている可能性は大きい。しかし、そうした遺骸はけっして回収はしないのが、世界の海軍の慣行なのである。

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 Stephen Cimbala 記者による2025-7-8記事「Midnight Hammer and After」。
  ケイン大将の説明によると「ミッドナイトハンマー」作戦では、125機以上の米軍機が動いた。精密誘導弾薬は総計75発、消費された。そのうち「MOP」は14発で、実戦での使用は初めてであった。

 イランはホルムズ海峡を封鎖することもできようが、それをやると中共相手に原油を売ることができなくなり、政府の収入がなくなる。

 ※60%しか濃縮していないウランでも、それをありったけかきあつめて「砲身型」の爆発装置に組み立てることはできる。ただし1回使ったら、イラン国内にはもうほとんど濃縮ウランの在庫はなくなってしまう――という実情なのだろう、と推定できるようになった。疑似原爆をただ1回しか使えないのでは、政治的な交渉力にはならない。もし疑似原爆2発分の在庫があったなら、ホルムズ海峡の水中で1発デモンストレーションしただろう。


ハイテク素材を惜しみなく注入した「投げる網」の開発が待たれている。

 できればそれは火薬を使わずに上空に投射できるものであることが望ましい。なぜなら、大都市の防空に使うものなので。

 また、これを、105ミリ/120ミリの砲弾バージョンにもして、高仰角をかけられる戦車砲からも投射できるようにすると、旧来の、もはやほとんど最前線に出すことが不可能になったストック戦車の再利用価値を上げることができる。

 純然たるバネの力で大型のブーメランを投げ、そのブーメランが、設定されたタイミングで、上空でばらけて網に変わるという仕組みは考えられないだろうか? この大型のブーメランに、光学センサーと「マシンビジョン」基盤を仕込むのは、たやすいだろう。

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 Gaurav Sen 記者による記事「How Taiwan Must Prepare To Face Chinese Drone Saturation」。
    中共からの無数の無人機による飽和攻撃を凌ぐためには、台湾は、低価格の「対UAV兵器」を揃えなくてはならない。
 現況、台湾国産の「天弓3型」SAMや、米国から輸入している PAC-3 は、高額すぎて、ダメである。一瞬で飽和されておしまいだ。

 先日の印パ紛争。パキスタンですら、300機から500機のドローンをインド領空内に送り込めている。

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 Frangis Najibullah 記者による2025-7-6記事「Kabul On Course To Be World’s First Capital To Run Out Of Water」。
  アフガニスタンのカブール市に人口が集中しすぎて、上水の給水がまもなく絶対的な不足水準に陥ると予想される。そうなったら、首都なのに水道の水が出ないという、世界初の失敗事例になる。

 同市の地下水の水位は、過去10年で30m、低くなった。
 同市の上水は地下水頼みなので、このままだと、2030年までに給水ができなくなって、大量の流民を生ずるだろう。

 現状でも、住民は「水屋」から有料で飲用水を買い求める必要があり、「飲み水か、食い物か」のシビアな選択を迫られつつある。

 カブール市の人口は、2000年には200万人だった。今は600万人を越えている。※イランも今年の1月からすでに45万人のアフガン人難民を追い返したそうだ。

 ※「上総掘り」について細かく説明してくれている動画がYouTubeに公開されていて、それを視たことがあるのだが、ある特有の地盤層(地下構造)でないと水は自噴してくれないのだと理解することができた。あんなにも完成したノウハウがありながら、それを海外の半沙漠地には適用できないというのは、残念なことだね。

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 ストラテジーペイジの2025-7-7記事。
  インドは83機ある「テジャス1A」を、イスラエル製の電装品でアップグレードする。レーダーもイスラエル製のAESAにする。

 インドが欲しいのが、イスラエル製の「I-Derby ER」というアムラームもどきで、これによって古いロシア製の「R77」を更新したい。長射程のAAMがこれからの空戦の鍵であることは、先回の衝突で証明された。

 インドは、げんざい、世界最大の、イスラエル製兵器のバイヤーになっている。

 AMRAAMは自重152kgで、だいたい距離160km飛ぶ。これが長射程AAMのベンチマーク。
 R77はそれより重いのに、射程が70km以下。
 ダービーERは、AMRAAMより軽いが、交戦レンジ100kmあるので、性能としては十分だ。

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 雑報によると、ロマン・スタロヴォイトの射殺死体はモスクワ市内の屋外駐車場で7月7日に発見されている。元交通大臣は、自殺したのではなく、「処刑」され、その後からプーチンが、あたかもまだ生きているかのように「解職」を発表した。


バルト海の Ust-Luga 港内で6日に積み込み作業中のロシアのアンモニア・タンカー『Eco Wizard』号の機関室で2度の爆発。浸水し、左舷に傾斜しているという。

 Defense Express の2025-7-6記事「How Vector Survives Under Enemy Fire in Ukraine: Quantum-Systems Reveals Details of Combat Episode」。
  ドイツのQuantum-Systems社は、ウクライナ軍に「Vector」という固定翼の偵察ドローンを供給している。
 この偵察機はハイブリッドで、3軸の電動プロペラシャフトを、鉛直ポジションから水平ポジションまで変化させられる。そのうち1軸は垂直尾翼にとりつけられているので、あたかもクォッドコプターのように地面から垂直に離陸して、上空において水平飛行に遷移することができる。

 メーカーのCEOである Dave Sharpin は語る。ウクライナの最前線に持ち込んだ機体が、下界の露兵から射撃を喰らった事例ありと。
 銃弾は11発が命中した。うち1発がカメラのジンバルに当たったので、偵察ミッションは続行できなくなった。

 しかしこの機体はちゃんと帰投し、修理されて、今でも飛んでいるという。

 同社はウクライナの実戦場で、トータル数千時間の飛行経験を重ね、データと知見を蓄積しつつある。
 また同社は2023年からウクライナ国内に無人機の組み立て工場を建設し、それは2024年に操業開始している。

 同社は、このドローンに、やはり同社が開発した「聴音センサー」を搭載して、音響によって遠くの敵軍の野砲の陣地を探り当てる技法を模索しているところだ。

 ※米国予算法案の成立を聞いて、ドイツの実業家たちはひそかにこう思ったはずだ。「このままいくと、ドイツは戦争しなくても世界に冠たる経済大国になっちまうんじゃね?」……と。

 ※7-5報によるとロシアはラオス人を「地雷除去作業のかんたんなお仕事です」という名目で大量にリクルートしてクルスク戦区まで連れてきて「外人部隊」に仕立てる気だという。

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 2025-7-3記事「Ukraine and Swift Beat Sign Memorandum to Expand Production of Unmanned Systems」。
  2011年までグーグルのCEOだったエリック・シュミットが率いる「Swift Beat, LLC」は、すでにウクライナ国内に製造拠点を保持しているが、このほどデンマークにおいて、ウクライナ政府とさらなるパートナーシップ提携を公表。

 ※《AIの専門家で、しかも、軍事的なビジョンを持った富豪》は、この広い世界にも、なかなか、いそうでいないのであるが、このシュミット氏だけは例外。彼は2024年8月から、じぶんのスタートアップ企業の製品によってウクライナ防衛に決定的にコミットする肚をくくっている。AIとドローンを組み合わせれば、それは可能になると見透しているのだ。同年、彼は、戦場に生身の兵隊を出す時代じゃないぞと発言したのに続き、10月のサウジ国内のカンファレンスにて、戦車は「useless」だとインタビュアーに断言している。5000ドルの無人機が500万ドルの米国製戦車を破壊しているじゃないかと。その後も、米国内にストックされている大量の古い戦車(М1シリーズ)なんか米政府はぜんぶ売り払ってしまうべきで、米政府はもっとドローンを買うべきだ、等と公言し続けている。トランプなど眼中にないことが分る。

 ※ぜんぜん関係ないのだが、昔、「フリッツ・フォン・エリック」という芸名のプロレスラーがいた。ガキの頃はまったくその名前の意味などわかるはずもなかったが、こういうのは、とうじの、小学校しか出ていないような労働者たちにも厭というほどわかりやすく、「こいつはドイツ系=旧敵国キャラの強敵役だよ」と、キャラ売りしていたわけなのだね。

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 「mil.in.ua」の2025-7-6記事。
  韓国は現在36機陣容の「アパッチ」を72機に倍増するつもりで、その胴体の製造分担まで開始していたのだが、同国国防省はウクライナ戦場を分析して、もはや「AH-64E」などが通用する時代ではないと考え始めており、この追加の36機がキャンセルされる可能性が出てきたという。

 ※これは対トランプの交渉カードとしてわざと漏洩させた話かもしれない。もし、本当にキャンセルされた場合は、ポーランド軍がよろこんでそれを買い上げるだろうから、ボーイング社としては実質の損は無いと思う。イスラエル軍がやってみせたように、「アパッチ」は、すくなくとも「シャヘド」の迎撃ミッションには、役立っている。


イーロン・マスクは来年の中間選挙で上下両院に「第三党」の議員を送り込む。

 ロナルド・レーガン以来の「減税」ポピュリズムが、超富豪たちを生んだ。その超富豪たちが、いつまでも、レガシー政党人たちの下僕に甘んじているはずなど、どうしてあろうか?
 マスクの人望にではなく、その追求する利害に、他の複数の超富豪たちが同心するときが、近いと思う。

 奇貨居くべし!

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 Defense Express の2025-7-5記事「Why Ukrainian Armor Turned a 60mm Mine into the UB60D FPV Drone and How It Improves Combat Readiness」。
  ウクライナ軍が、「UB60D」という名前の、新顔のFPVドローンを使い始めている。60ミリの迫撃砲弾を工場出荷時から横向きに固定してあるため、最前線の塹壕内で兵隊が危険な爆薬をとりつける作業の面倒がない。

 この60mm迫撃砲弾は、1150~1380グラム。迫撃砲から発射された場合のレンジは2500m。
 「UB60」というのが砲弾の名前で、それをドローンにとりつけたから「UB60D」と称する次第。

 レンジ2500mの迫撃砲を最前線に持ち込むことは、今日のドローンだらけの戦場では、困難のきわみである。すぐに敵の偵察ドローンに陣地の位置がみつかり、そこを自爆ドローンで襲撃されてしまう。だから、この転用は、合理的であり、且つ、必然なのである。

 「UB60D」をザポリッジア戦区の前線で実際にテストしてみたのは、2025-1月であった。その成績がよかったので、フルスケールの量産にGoサインが出た。

 「UB60D」を運用する中隊は、250機のこの特攻ドローンを抱える。

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 ストラテジーペイジの2025-7-5記事。
  スパイダーウェブ作戦に使われた117機のドローンのコストは、ぜんぶで50万ドルだった。
 1つの破壊目標機につき、2機もしくは3機のドローンが、割り振られた。それらは、敵爆撃機の燃料タンクの上に降着して起爆するように指定されていた。

 破壊目標機は、重爆撃機だった。その1機が毎回、8発の「Kh-101」ミサイルを、ウクライナの都市に向けて発射するので。
 「Kh-101」はトマホークの模倣だが、実用化されたのは2010年である。弾頭重量を軽くすればレンジは5500kmに及ぶ。対ウクライナでは、そのミサイルの燃料を減らし、弾頭重量を800kgに増やしている。SAMで落とされない用心として、露軍の重爆は、その空対地巡航ミサイルを、国境の1000km手前で、リリースする。


金曜日にチェコ共和国で全国規模の大停電。

 地下鉄網は動いており、当局は、これはテロではないと言っている。欧州熱波の影響? 木曜日のプラハは最高35℃だったが、金曜日には25℃だったという。

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 『デイリー・メイル』の2025-7-4記事「Oil tycoon falls to his death from elite Moscow apartment block in latest mystery death to hit Russia」。
  ロシアの「Transneft」社は、原油パイプラインの運営会社である。その副社長の Andrey Bedelov(別ソースでは Badalov) が、モスクワ市の Rublevskoye Highway 沿いにある自宅高層マンションの窓から転落死した。4日の朝。

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 Steven Rattner 記者による2025-7-3記事「How Bad Is This Bill? The Answer in 10 Charts」。
   記者はオバマ政権当時の財務省の顧問だった。

 こんどの破滅的な阿呆Billは、2017の第一期トランプの税法案と同様に、国家の負債を加重し、意味のある経済成長には結びつかないだろう。
 これから10年間に、3兆ドルもの赤字が、積み増されるのである。前回の倍、悪い。メリットを得るのは、金満階層だけである。

 1972年には、社会医療保険のコストはGDPの1.2%だったが、いまや、メディケア+メディケイドの費用はGDPの5%以上になっている。
 2017に法定した減税を、その期限切れに任せて終了させることは、米国民の62%にとっては「増税」のように実感されるであろうが、しかしそれは、必要なのである。

 今日の米国の全世帯を所得別に5段階に区分すると、最上級の人々、すなわち人口の五分の一の金満世帯(年収12万390ドル以上)は、その年収が新法案により2.3%=6055ドル、増やされることになる。減税の恩恵で。
 反対に、米国で最も貧しい五分の一の窮乏世帯は、今よりも年収が560ドル減るのと同じことになる。これは、メディケイドやフードスタンプが削減されるからである。

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 Dmytro Shumlianskyi 記者による2025-7-4記事「Russia Launches Shaheds Using Chinese-made Catapult Mounts」。
   7月3日~4日の夜間空襲でキーウに大量に飛来した「シャヘド」自爆ドローンは、中国製の新型のカタパルトによって射出されていることを、ウクライナの情報部はつきとめた。

 しかもドローンの胴体に「Suzhou Ecod Precision Manufacturing Co., Ltd」という中共製であることを示すマーキングがあった。これは回収破片の証拠がある。蘇州にある、金属鍛造メーカーだ。

 従来、電装品やエンジンを中共からとりよせて無人機を組み立てることは、ロシアでは普通であった。このたびの発見は、片道特攻無人機の機体そのものまで中共に外注するようになったことを物語っている。

 ※この「カタパルト」について文章では一切、解説がされていないないのだが、写真が公表されている。それをながめると、トラックで牽引する、長さ7mほどの4輪のトレーラー荷台をベースにしているようだ。ただし、そこに、ドア式のヒンジによって前方と後方に展張される、エクステンド・レールがあり、運行時にはこれらは三つに畳んだ姿勢(前後長7m)にできるのであろう。牽引トラックを切り離し、ヒンジを展開すると、全長が21mくらいの「トラス橋」のような姿になる。アウトリガーによってわずかに仰角をかける。前端部は、アウトリガーというより、手動で展張する「梯子」のように見える。射出動力は何か? 長さ5mくらいの「砲身」形の装置が、トレーラー荷台上に載っている。この前半部のシリンダー表面は白光りしているので、油圧アクチュエーターのように伸縮するのであろう。動力は、圧搾空気、あるいは、カーバイド爆発で水蒸気を急膨張させるなどの熱源を利用する仕組みかもしれない。RATO用のロケット・モーターが大量供給されるなら、このような大袈裟な機構は必要がないのだが、さしものロシアでもロケット用のケミカル材料ストックがなくなり、機械式カタパルトを工夫するしか手がなくなっているものと想像される。


とうとう「ドローン・ナルコ・サブ」が実用域に! コロムビア当局が押収した麻薬密輸出用の潜航艇には、人が乗っておらず、スターリンク経由でリモコン・ナビゲートされるようになっていた。

 「マリタイム・エギュゼクティヴ」によれば、数年前から試作は進んでいた模様。

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 Robert E. Rubin and Lawrence H. Summers 記者による2025-7-2記事「We Both Served as Treasury Secretary. We Know This Bill Is Dangerous」。
  記者両名ともに、クリントン政権の財務長官経験者だ。
 大統領選挙中、トランプは、じぶんは米国の債務を増やさない、と誓っていた。財政の健全性を維持しますよ、と公約しまくっていた。然るに彼のこのたびの「ビッグ・ビューティフル 予算法案」なるものは、その真逆である。

 われわれが仕えたクリントン大統領も、有権者国民に同じ約束をしたものだ。そして嘘つきトランプとは異なり、クリントンはその約束を実行した。クリントン時代に米国財政は「均衡」したのである。過去半世紀以上、米国政府の財政が黒字だったのは、あのとき(90年代)だけだ。

 当時、世の中に急に「インターネット」が普及しはじめていて、それが経済を激変させつつあった。ちょうど今、AIが市場を連打しつつあるインパクトと、似ている。

 われわれは当時、最善の目標を選定したうえで、あくまで堅実な計画を立案した。投資を刺激しつつ、赤字は減らさなくてはいけなかった。われわれは冗費を削減し、公定歩合を引き下げ、投資を喚起して、経済を健全に成長させた。

 政府は、責任ある財政運営によって、連邦準備銀行がインフレを抑制することを扶け、強いドルを保たせる。われわれはそれをやった。

 今の政権は、この良循環モデルを逆回転させることで、米経済を破滅に向かわしめている。連邦準備銀と対立し、濫りに関税をもてあそび、歳出を爆増させ歳入の喉を締めるだけの「ビッグ・ビューティフル 予算法案」とやらを通さんとす。

 今、米政府の負債は、国内総生産と同額だ。しかしトランプの阿呆法案が通ったら、赤字の規模は、国内総生産の135%増しにまでなって行くだろう。2035年まで、毎年、GDPの8%の赤字だよ。

 ※原子力規制委員会のクリストファー・ハンソンをトランプが解任した背景は、おそらく、トランプが、超小型新型原発の安全審査をたいがいにしてさっさと実用化してしまえと急かしていることに、とうぜんながらハンソンが反対するからだろう。こんなものが10年や20年で商用化されるという幻想が、どこから出てくるのか? そんな気違いプロジェクトに比べたら、これまで何十年チャレンジしても誰も成功していない潮力発電や波力発電に投資した方が、その失敗の過程からでも、社会と住民は経済的に救われるはずだと直感する。

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 Taras Safronov 記者による2025-7-3記事「United States Proposed to Arm Israel With B-2 Bombers to Destroy Iran’s Nuclear Facilities」。
  米国はイスラエルへ「B-2」を売ってやれと発言している連邦議員がいる。イランの今後に備えて。
 フォックスニューズによると、民主党下院議員のJosh Gottheimer と共和党の Michael Lawler である。

 特にGottheimer は2022年からこういう提案を繰り返している。

 GBU-57 MOP (Massive Ordnance Penetrator) は、重さ 13,600 kg の徹甲弾である。その中には 2,423 kg の炸薬が入っている。
 これを高度1万数千mから正確に投弾できなくてはならない。いまのところB-2だけがそれを実行できる。

 ※「ウォーゾーン」のアルトマンの記事によると、MOPの開発の初期段階では、ドイツの粒子加速施設を使って、金属徹甲弾の製造のためのデータが取られていた。MOPは同じ場所に3連打する必要があった。1打ごとに上皮層がふきとばされ、次打の穿貫が深くなるというイメージ。

 ※NYTのすっぱぬきという。このたびのイラン空爆の作戦詳細を、ペンタゴンはトランプに対して正確にブリーフィングしていなかった。実行の前にトランプがSNSでそのことを吹聴したり暗示でもしたら、すべてがブチ壊しになるからだ。そこで、もっともらしくできているけれども、じつのところまったくでたらめである、フェイクのディテールを「ご説明」してやっていたという。もし、それをトランプが誰かへ漏らしても、真の空爆作戦には実質の支障がないように、よく考えられたストーリーを「こどものおもちゃ」として持たせてやったわけ。ほんとうなら、トランプが現役復帰させてやったケイン空軍大将がそれに一枚噛んでいるのは確実だから、ケインはすごい英傑国士だということになる。いちど予備役にされた自分はすでにいちど死んだ人間だから、後からトランプにキレられても切腹すれば済む、との覚悟? そしておそらく、ヘグセスはまったく蚊帳の外だっただろうとも想像がついてしまう。――いや待て。この「裏話」そのものが、よく考えられた「偽情報」だとしたら? トランプにはけっして塁を及ぼさないように、ケインだけがバッシングを被る、練り上げられたストーリーなのだとしたら…?


シャドウ・フリートを操業できなくする専用の「魚雷」を、西側企業は開発できるはずだ。

 Sofiia Syngaivska 記者による2025-7-2記事「Explosion Hits russian Shadow Fleet Ship in the Mediterranean Sea」。
  西側の制裁をかいくぐってロシア産原油を輸出する商売に従事していたタンカー『The Vilamoura』号が、地中海上で機関室に爆発があり、立往生。6月27日に。

 この原油タンカーは、ギリシャの港を出て、リビアのZuwetina港へ向かう途中であった。爆発地点はリビア領海より150km北方。

 船にはすくなくとも100万バレルの原油が積まれている。登録船籍は「マーシャル諸島」。

 タンカーは自航不能になったので、マルタの航洋タグボート(放水消火能力兼帯)が、ギリシャのラコニア湾まで曳航しているところだ。7月1日現在。

 ※舷側に貼り付けるリムペット機雷のようなものではなく、もっと巧妙な破壊工作のようだ。意図的に実行された例は聞いたことがないが、十分に離隔した水中での沈底機雷の爆発衝撃波によって、物理的に船殻は破損しないのに、機関だけ故障させられてしまう可能性があることは、すでに知られている。もしかすると、その最新兵器を誰かが使ったのか?

 ※ロイターによるとロシアから「ターキッシュ・ストリーム」パイプライン経由で西欧へ輸出される天然ガスは、2024年と比べて半減のペースであり、ほとんど1970年代レベルになったと。ガスプロム社は6000億立方メーターの売れ残り在庫を抱え、これは中国も買ってくれず、1兆ルーブリの減収だと。

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 『The Maritime Executive』の2025-7-1記事「Russian Attack Sub Surfaces Right Next to French Trawler off Brittany」。
   ロシア海軍のキロ級潜水艦が、フランスのトロール漁船の目の前に、いきなり浮上したという。土曜日。場所は、イギリス海峡。

 キロ級潜水艦は、その浮上航行状態のまま、海峡を北上したという。終始、フリゲート艦の『ノルマンディ』が密着していたそうだ。

 この潜水艦は、シリアの軍港を出港して、北海の母港に戻る途中であった。

 ※1999年に米軍のF-117ステルス攻撃機がNATOのセルビア攻撃の一環として、グラファイト・フィラメントをぎっしり詰めた「BLU-114/B」クラスター爆弾を変電所等に投下し、全土を停電させている。そして2025-6-29の『サウスチャイナモーニングポスト』紙によれば、中共は地対地ミサイルに90発のクラスターをとりつけて、その子弾からグラファイトを飛散させて敵地を停電させるための兵器をこしらえたと、CCTVが動画宣伝しているそうだ。


露軍の「スホイ34」が訓練飛行から戻るときに、首輪は降りたのだが左右の主脚が降りず、胴着同然になって空中勤務員のうち1名は死亡したという。

 その着陸前の姿を地上から撮影したビデオがSNSに出ている。

 また、6月27日のヴォルゴグラード州マリノフカ空軍基地が宇軍のドローンによって空襲された際、地上にて3機の「スホイ34」が全損し、他に2機が損傷を蒙ったそうである。

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 2025-6-18記事「Can Israel End Iran’s Nuclear Program?」。
  イランの核については第一人者とされているデヴィッド・オルブライトの解説ラッシュが怒涛の絶好調だ。
 米国の「参戦」前になされているこのインタビュー記事によれば、ナタンズやFordowの地下にある遠心分離機には、共通の弱点がある。制御されていない流儀—たとえば電源喪失—によって高速回転を停止させてやれば、回転数が下がってくる途中で「共振点」と合致してしまい、激しい首振り現象のために、分離機のケーシングの内壁に、高速回転体がぶつかり、機械はオシャカになるという。

 イスラエル空軍は、地上の電源設備を空爆破壊すれば、地下の遠心分離機カスケードも全滅させられることをナタンズ爆撃で実証したようだ。それで、おそらく20日の米軍のFordow空爆も、給電系の急所だけを確実に爆破したのだと考えられる。
 地下には発電施設がないことは調べ上げられているから、Fordowについては、あれにて一件落着なのだ。

 ※『Armed Forces Press』の2025-6-28記事「A Brilliant Stroke」にサラッと書いてあることなのだが、B-2の護衛戦闘機にはF-22が付き、先払いはイスラエル空軍のF-35が担当したらしい。詳細皆無ながら、F-35については、ものすごく納得ができる。もし有人機がイラン領土内に墜落するようなことになってしまったら、米政府として極めて苦しいことになるので、その最大のリスクをイスラエル軍に負ってもらったのだ。F-22は、出動はしなかったか、もし出動していたとしても、まったくの別行動(たとえば陽動任務)だったのではないかと、私は疑う。万一B-2が墜落した場合、その機体を完全爆破するための戦闘機もどこかに控えていた筈で、その役目がF-22に割り振られていたのではないか。

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 2025-7-1記事「Guerrillas Stop Russian Trains by Blowing Up Railroad Track In Occupied Zaporizzhia Region」によると、占領下のザポリッジャで潜伏ゲリラが鉄道線路を爆破し、ロシア軍の長大な貨物列車をふたたび運行できなくした。爆破後の空撮映像あり。

 ※比較的近距離の敵地内のゲリラ戦も、ドローン時代には様変わりすると信じられる。たとえば、何百kgもの鉄道爆破資材は、ウクライナ国内から、複数のドローン便を飛ばして、占領地内の目立たない森林内に真夜中に空輸して集積してやることができる。WWII中に英軍のチンディッツ部隊がビルマで固定翼輸送機を使って実行したことを、今日では、ドローン配達が、安全&確実に、毎晩でも連続して、代行できるのだ。ゲリラは重い資材をみずから長距離、運搬する必要がなくなり、それだけ身軽となり、敵の憲兵からはあやしまれにくくなる。その流儀ならゲリラは、自転車で機動したっていいわけだ。


じつはブッシュ(子)の2003-3のイラク占領作戦は、無駄ではなかった。

 この作戦の直後の8月末にイランは秘密会議を開き、核武装プランの日程を再調整して先延ばしすることに決めている。その経緯は2018にモサドがイラン国内の特殊作戦によって奪取したおびただしい機密文書の束を翻訳したことであばかれた。

 要するにブッシュのイラク占領がなされていなかったならば、イランは悠々と20年前に核武装してしまったかもしれなかった。

 米軍が行動するということは、それがいかに未熟な指導部の判断に基づいていたとしても、何かを解決することがあるのである。トランプはブッシュにごめんなさいと言うべきだろう。

 次。
 Rinzen Widjaja 記者による2025-6-29記事「Protecting small-town America: Why high-speed rail is the wrong track for the US」。
    中共には高速鉄道網が発達している。米国はそうではない。これを比較して、米国は中共に負けていると指摘する論者は多い。

 たとえば上海リニア鉄道(The Shanghai Maglev=magnetic levitation)は、時速268マイル。印象的だが、それと米国の何を比較しようというのか? それはリンゴとミカンを比較するに等しいのである。

 高速鉄道網を北米大陸にめぐらすとなると、連邦が巨億の公共投資をせにゃならぬ。いま建設中の、加州高速鉄道は、初期見積りでは330億ドルかかるだろうと計算されたものだが、今日、それは見直され、1130億ドルに膨らむのは不可避だ。有限の連邦予算が、それだけ、他の分野には使えないことになってしまう。

 米国人は自動車で長距離を旅する。それが、ロードサイドの小さな町の商売を成り立たせてきた。鉄道網はその既存エコシステムを亡ぼす。

 中国の実験でも「サイホン現象」が確認されている。高速鉄道網が発達すればするほど、田舎の町村には誰も用がなくなり、もとからある大都市だけがますます投資機会・就労機会を吸引する。地方は干からびる一方になって、衰微する。

 アイゼンハワーは偉大だった。彼は「インターステイト」道路網を整備させた。その全米道路網は、大都市だけでなく、すべての田舎住民に恩恵をもたらした。すべてのアメリカ人が、自家用車で全米のどこへでも旅行できるようになった。中国では、政府に盾つく者は、汽車の切符も買えない。鉄道は、中央集権の支配に役立っているのである。

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 AFPの2025-6-30記事「Sweden to restrict use of semi-automatic weapons for hunters」。
  スウェーデン政府は月曜に禁止方針を公表した。「AR-15」型の半自動小銃を、猟銃として所持することについて。

 ことしスウェーデンでは、AR-15を使った10人射殺事件が起きている。犯人は35歳で、自決。これがきっかけになっている。

 政府は2023に、猟銃としてのAR-15に基本的なライセンスを与えていたのだが、これは撤回する。
 ただし、スポーツ射撃、射的競技にAR-15を使うことは、ひきつづいて、今後もお構いなし。この場合、銃オーナーはローカルのれっきとした「射撃クラブ」の正規メンバーであることが、許可証(2年間有効)取得の前提要件だ。そのオーナーは、そのAR-15を転売する自由もある。

 政府は国民の火器所持の制約を緩めることも考えている。現状、1人が4梃までの火器を私有できる。これを8丁までに拡大する。
 自宅保管場所についての規制も緩められるという。

 ※いうまでもなくスウェーデン当局は、近々、露軍が侵攻してきたときの国民総武装の必要を予期しているのである。猟銃と射的銃は、それを自家用車に積んで自宅外へ持ち出すときの動線規制に雲泥の相違がある。猟銃は一層自由であるため、警察がとりしまりにくく、乱射テロに使われやすい。だから、猟用小銃だけが、規制される。