ノーヘル平和賞

 Nikita Lalwani 記者による2025-4-15記事「How America Can Stay Ahead of China in the AI Race」。
   2024年の最初の7ヵ月間に、中共は、260億ドルのチップ製造機械を西側から輸入した。記録的な金額である。オランダのASML社製を筆頭に、 Tokyo Electron製、および、米国の Applied Materials 社製もある。

 オランダ政府と日本政府は、2025前半に、これらの対支輸出ができないようにした。

 米国には、米国製の特定技術を買った外国人の買い手を、その末端までもあれこれ縛ってしまえる法律がある。日本とオランダにはそれがない。つまり、ハイテク機械を輸出した先で、それがどこへ転用されて使われるかについては、何の強制もできない。

 また、日本やオランダの技師が中共内の工場に出向いてその機械類のメンテナンスをしてやることを、誰も止められない。米政府はこれが不満である。

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 Stuart Lau 記者による2025-4-16記事「Xi and Putin Drive Japan and NATO Closer Together」。
   欧州NATOはここへ来て、日本の軍需産業ポテンシャルに期待し始めた。
 日本によって、米国がカットするウクライナへの軍需品支援を、代置させたいのだ。
 マーク・ルッテはその模索のために訪日した。

 米国は、イスラエルにより多くのペトリオットを供給するために、日本がその製造に加わってくれることを歓迎している。

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 Gavin Bade, Brian Schwartz 記者による2025-4-16記事「U.S. Plans to Use Tariff Negotiations to Isolate China」。
    米政府は、70ヵ国以上に対し、中共製品の迂回輸出に協力するな、と釘を刺しつつあり。
 この「対支戦略」のイニシアチブをとっているのは、財務長官のスコット・ベッセントである。

 ベッセントは、中共経済と米国経済の遮断を構想している。
 中共の証券ビジネスと米国の証券ビジネスも、遮断したい。手始めにまず、米国の証券取引所においては中共証券の売買ができないようにしたい。

 ※中共中央政府は、西域沙漠に「地下人民公社」を建設せよ。沙漠に、オープンカット工法により、長大な「渠溝」を一直線状に掘る。そこには遠くの高地山脈から鉄管で水を引いてきて、人畜の居住と水耕栽培を可能にする。「渠溝」には透明素材の「天窓」を蓋として嵌め、入射する光量を自在に調節できるようにする。空間は、半地下に位置するおかげで、冬の暖房と夏の冷房のためのエネルギーを、最小限で済ませることができる。この巨大公共土木建設事業は、これまで地方都市に濫立した無人アパートのように、壮大な浪費に了ることがない。それはケインズ流の国民経済救済となるだけでなく、将来の核戦争から人民をサバイバルさせてくれる。私は何年も前からこの最善の社会工学提案を公示してきた。ここでもう一度、書いておく。捨てよ、沿岸部都市開発路線を! 海洋には、中国の未来は無い。

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 ストラテジーペイジの2025-4-16記事。
  ロシア国内に、ロシア人を喰いものにするハッカーが横行しており、取り締まり切れていない。
 過去3年だけでも数十億ドルを、彼らはロシア企業や個人から盗んだ。
 犯人グループのプロファイルは絞り切れていない。ロシア人もいれば外国人もいるようだ。

 2024の被害額は22億ドル。23年は16億ドル。2025年は過去最高になりそうだ。一部のロシア人は、これはウクライナ政府機関の仕業だと叫んでいる。

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 Howard Altman, Tyler Rogoway 記者による2025-4-15記事「Australia Casts Doubt On Russia Basing Bombers At Indonesian Air Base」。
   月曜日に『ジェーンズ』がすっぱ抜き。ロシアがインドネシア政府に対して公式に、長距離重爆用の基地を貸すように申し入れたと。その基地とは「Manuhua Air Force Base」(=民間のフランス・カイシエポ国際空港BIK)で、豪州のダーウィンからは850マイル北である。
 ※ビアク島の南端である。西パプアのマクノワリから東へ200kmくらい。

 豪州政府はこの報道を否定した。

 しかし『ジェーンズ』は詳しい。ロシアのセルゲイ・ショイグ(今は安全保障会議の筆頭者)が、インドネシアの国防相 Sjafrie Sjamsoeddin に2025-2に会ったときに申し入れたとしている。

 ロシア空軍が何の機種を着陸させたいのかは伝わっていないが、察することは容易だという。というのは、直近の数年、これまで何度も、その基地に「Tupolev Tu-95」重爆と「Il-76」大型輸送機を着陸させてくれんか、という申し入れをしてきているから。

 米空軍は、豪州内陸の Tindal 基地に「B-52」をときどき飛来させている。
 また、ダーウィンには米海軍と海兵隊が、2500人規模のローテーション駐留部隊を置いている。
 ダーウィン基地にも滑走路が付属しており、Boeing 747 も離着陸可能。

 かたや、インドネシア政府側としては、このようなロシアからの要求を受け入れて得になることが何もない。それは周囲のほとんどの諸国から反発を買ってしまうだろう。インドネシア軍は米国製の高性能兵器も購入しているが、その関係も危うくなってしまう。

 ただしインドネシアが米国べったりでないことも事実。2020に米政府は「P-8 Poseidon」を複数、Manuhua に着陸させてくれとリクエストしたが、インドネシアは断っている。これはロイターが報じている。

 火曜日、豪州のABCテレビは、インドネシアの国防相が、豪州の国防大臣リチャード・マーレスに、露軍機に同飛行場を使わせたりしないと伝えてきていることを報道した。

 と同時に報道は、昨年11月にインドネシア海軍がジャワ海においてロシア海軍と合同演習している事実も思い出させた。

 『ガーディアン』紙の解説。インドネシア軍は、自国領内に他国の基地が置かれることをたいへんに厭がる。だから、露軍の常駐化などまずあり得まい。

 ロシアは、南米のベネズエラに対しても、「ツポレフ95」を常駐させろと要求しているらしい。

 次。
 「mil.in.ua」の2025-4-16記事「Russia Begins Equipping Aerial Bombs with 12-Channel Kometa Antennas」。
   宇軍の電子妨害を回避するため、露軍は、その滑空爆弾の自律誘導のための衛星信号受信アンテナとして、12チャンネルの「Kometa CRPA」を取り付けるようになった。これはこの4月かららしい。

 「シャヘド136」の国産品にも、この受信アンテナがすでに取り付けられているという。こちらは3月に確認された。


<正論>日清戦争の教訓と明治の大局観/軍事評論家・兵頭二十八
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Amazonの『世界の終末に読む軍事学』は、本日から買えると聞いています。(奥付では15日発行ですが…。)

 Matthew Ward Agius 記者による2025-4-9記事「Trump’s tariffs: Why won’t countries buy US meat products?」。
  トランプは2日に、豪州を名指しし、米国は昨年だけでも30億ドル豪州牛肉を輸入しているのに、豪州は米国産牛肉をまったく買わない、と発言。

 また英国とEUが米国産牛肉を買わない根拠は非科学だとなじり、アルゼンチンが米国産の生きた牛を輸入しないことも非難した。

 では、そこに科学は反映されていることを説明しよう。

 豪州とアルゼンチンは、2003年に米国牛が「狂牛病(BSE)」を発症したので、その輸入を制限したのである。
 プリオンというタンパク質は脳神経を冒す。これにまみれた牛肉を人が食べると、その人も狂牛病を発症することがある。「クロイツフェルト-ヤコブ症候群」といい、これまで既に全世界で233人がこれに罹って死んだ。彼らの全員が、BSEにまみれた肉を食べていたのである。

 米保健当局は、BSEの国内流行を抑えようと努めた。その成果は認められたから、豪州政府は2019に米牛肉の輸入を解禁している。

 ところが、トランプを筆頭とする米国人たちは、豪州政府がいまだに米国産肉の輸入を禁じていると思い込んでいるようなのだ。

 豪州政府が外国業者に要求しているのは「バイオセキュリティ」である。これは豪州の法律で決められている。米国の牛肉輸出業者は、その牛肉が、米国内で繁殖された牛であって、かつまた米国内で育成された牛であって、かつまた米国内で屠殺処理された商品であることを、豪州政府に対して証明ができなければならない。

 しかしそのような「トレーサビリティ」を実現するためには、生産者は余分なコストを負担せねばならない。米国の畜産関係者たちは、そのコストと面倒を厭い、豪州政府が求める「証明」ができる牛肉が、事実上、いまだに皆無なのだ。だから豪州には、米国産の牛肉は、入って来られない。

 アルゼンチン政府は、BSEを理由とした米国産牛肉の輸入制限を2018年に撤廃している。ただし、米国からの生きた牛の輸入は、ひきつづいて禁止をしたままだ。米政府とアルゼンチン政府は、生きた牛が衛生的で安全であるといかにして証明できるかについて、いまだに合意には至っていないからである。

 EUと英国は、1989から、米国産の牛肉の輸入を規制している。理由は、米国内の畜産農家が「成長ホルモン」を肉牛にも乳牛にも投与し、育成期間を短縮したり、肥育効率を高めているからだ。代表的なホルモン剤としては「estradiol 17ベータ」や「テストステロン」がある。

 EUは、そうしたホルモンを投与されていない牛の肉については、米国から輸入をしている。
 英国はEUを離脱した後も、独自の研究調査により、ホルモン漬け牛肉の輸入を禁止している。たとえば「estradiol 17ベータ」は、ヒトの癌性腫瘍の増大を加速することが、医学的に確かめられているという。

 これに対して米当局は、成人がそういう肉を食べても健康には何のリスクもない、とEUに反論している。

 それに対して英国の学者先生いわく。あいにく英国には健康な成人だけでなく、嬰児・児童もいれば老人もおり、免疫障害をもった人も住んでいるのである、と。

 またEUは米国当局よりも、ホルモン薬漬け牛肉の危険について、包括的に評価を下している。

 トランプはEUが、米国産の家禽(ほぼ、チキンのこと)の鳥肉を、塩素殺菌処理をしていることを理由に、輸入を許可しないことを非難している。

 米国では、campylobacter のような食中毒の原因となるバクテリアを殺菌するために、塩素溶液で鶏肉を洗浄するのである。

 EFSA=欧州食品安全局 は、そうした薬剤が鶏肉消費者の健康に害をおよぼすとは考えていない。

 しかし、最後に塩素で殺菌すりゃあいいんだという雑駁な考え方であれば、おそらく最終食肉処理に至る前の養鶏の全段階で、劣悪杜撰な予防衛生や、欧州基準からは許し難い虐待的「ブロイラー生産」様式がまかり通っていることであろう。欧州は、そうした「動物福祉」を軽視する者たちに対し、目をつぶらないのである。

 欧州の倫理基準では、畜産養鶏業界が「ファーム(農場)からフォーク(皿)まで」、動物福祉を遵奉することを求めるのだ。

 そもそも、塩素消毒液で鶏肉の表面を洗ったからといって、肉の隅々までよく殺菌されているわけではない。ただ、とおりいっぺんな検査で、菌が検出されなくなる、というだけ。あちこちに残ったバクテリアは、いつでも増殖したり、移ったり、誰彼を病気にさせかねないのである。そしてじっさい、米国内でのバクテリアが原因の食肉食中毒事故は、欧州よりも発生率が高いのである。

 2020年の世論調査によると、英国人の80%は、塩素殺菌された米国産の鶏肉の輸入に、反対である。

 ※米海軍は「MQ-4C Triton」をまた沖縄に配備する。数週間後から。

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 Dylan Scott 記者による2025-4-9記事「Why RFK Jr. wants to ban fluoride in water」。
  ケネディ厚生長官は、米国の上水に弗素を混ぜて、人々の虫歯を防いできた、1950年から続く連邦の政策を、これから、逆転させようとしている。

 はしかのアウトブレークが起きているのに、はしかワクチンへの連邦補助金を打ち切るなど、ケネディはますますじぶんのしごとにうちこみちゅうである。

 ケネディにいわせると、弗素は工業汚水であり、それを水道水に混ぜていることにより、全米の児童の神経は障害され、骨の癌になるのだという。

 ※映画の『ドクターストレンジラブ』に出てくる気違い基地司令官と、ものすごくイメージが重なるのは、どうして?

 ユタ州は、水道からフッ素を追放した、最初の州になった。

 エビデンスある統計。フッ素水道水のおかげで、米国の子どもも成人も、虫歯が25%すくなくなっていると。
 そして現状、三人のうち二人のアメリカ人は、地域の上水システムの水道水を飲用している。

 CDCは、フッ素水と癌のあいだに何の相関もないという研究結果を公表している。

 ハワイ州はそもそも水道にフッ素を入れさせていないが、フッ素を禁じているわけでもない。

 加州やイリノイ州などでは、一定規模以上の市の水道局に対して、上水にフッ素を混ぜることを州法によって義務付けている。

 次。
 Edward Luttwak 記者による2025-4-8記事「Tariffs will awaken the American Dream Trump must ignore the lords of Martha’s Vineyard」。
   これまで数十年、米国は後進国の業者に市場を開放してきた。後進国は貧民を安く働かせて安い商品をつくり、それを米国市場へ輸出できた。
 結果、後進国内の貧民はますます貧しくなり、米国の労働者は職を失った。米国の二大政党は、自由貿易万歳を叫び続けた。

 当初、チープなローテク商品の流入を無限に許容するいっぽうで、米国側からは、それら後進国へ、農産品や、コカ・コーラや、烟草を輸出した。しかし次第に、米国からは「米国政府国債」を輸出するようになったのである。

 米国債を、米国に対して商品を輸出している国々は、よろこんで買った。そうすることにより、ドルは高くなった。ドルが高くなれば、米国向けに輸出される商品の米国内での価格競争力は、ますます強くなるのである。

 このような貿易を続けたことで、米国内のビジネス風景は、変わった。米国内では、ローテクな工業は、まったく商売にならなくなった。従来そういう分野で就労していた人々は、これからは工場ではなくて、サービス産業に転身すれば、楽にカネが稼げますよと、政府からそそのかされた。

 外国から安く輸入される製品の製造などには見切りをつけ、マーケティング分析だとか、外国為替取引の仕事で成功すれば、すぐにも高所得層の仲間入りができるんだよと。

 米国のエリートたちは、演説でも、新聞記事でも、大学の授業でも、工場で働く時代はアメリカ人にとってはもう終わったのであり、これからはみんなで高サラリーの市場コンサルタントだとかフィナンシャルアドバイザーになるんだよと、推しまくった。

 さて、じっさいはどうなったか?

 かつて、時給30ドルで、工場で組み立てをしていた労働者たちは、その工場が外国製品との価格競争に敗れて潰れた後、時給3000ドルの外国為替トレーダーに転身できただろうか? 

 然らず。
 彼らは、時給10ドルの、ショッピングモールの警備員におちぶれるほかになかったのである。

 1993年に記者〔ルトワック〕は、『危険に瀕しているアメリカン・ドリーム』という本を公刊し、アメリカ国内のローテク工業はこのままでは壊滅し、それは米国の家族の日常を亡ぼしてしまうんだぞと警告した。

 まだフェンタニルなんていう麻薬は街に侵入していなかった。だが、精神破壊は待った無しだった。弁当箱を抱えて毎朝出勤する親父は、見られなくなった。その親父たちは失業者となり、運よくありつける再就職先はウォルマート。時給も前職よりもガックリと下がってしまう。そこで彼が売らねばならぬ商品群は、すべて外国からのチープな輸入品だ。そのいくつかは、かつて彼が、工場で仕上げていた製品の、中国版のバッタ物なのだ。

 記者はその著書の中で、米国社会がこのようにしてまず破壊されると、次に来るものは、「製品改良されたファシズム」だぞと予言した。とうじの書評屋どもはこぞって、記者を、愚かな保護主義者だと罵ったものである。

 米支配階級は、ドグマを信じている。無制限の交易は、全世界を今よりも富ませる、と。いかにもその通りであろう。だがグローバリゼーションは、同時に、アメリカ国内の工業労働者については、今よりも貧乏にさせてしまう。その貧窮は、わが子を大学へ進学させられないレベルである。かつては可能だった、次世代の「Upスキル」が、できなくなっているのだ。これがアメリカン・ドリームの危機でないことなどあり得ようか?

 ビル・クリントンのせいだ。奴が、カナダやメキシコから米国への製品流入を合理的な範囲に規制する防潮堤を、いっさい、とっぱらってしまった。だったら世界中の企業がメキシコに工場を建てるのは、あたりまえではないか。そこから工業製品が、無制限の大洪水となって流れ込み、とうとうアメリカ社会を水没させてしまった。

 韓国はアメ車を事実上、締め出してきた。GМは、ソウル市内にショールームを借りることすらできなかったのである。ビルのオーナーが貸そうとすると、韓国政府からオーナーは報復のイヤガラセを受けたのである。

 中共は米国債を買い続けている。人為的な為替操作だ。ドルを高くすることで、ますます輸出が楽にできるのだ。
 ウォルマートでは、中共製の工具97種入りセットが、1箱数ドルで買える。その現状が、どうして悪いことなのかって?
 消費者視点からは、問題などない。だがアメリカ社会を構成するのは消費者だけじゃない。良い家族、良い町、良い都市を構築するには、労働者に「良い職業」があることが、不可欠の資材なのだ。その「良い職業」を、グローバリゼーションは、無意義化してしまうのである。消費者だけからなる家族と町は、ゴミと麻薬だらけの、モラルも何もない、犯罪と暴力と非知性に支配された、ゾンビの生け簀でしかないだろう。

 米海軍は、必要な数の軍艦を決まったスケジュールで納品してもらえなくなっている。ボーイングの空中給油機は、いつまでも完成しない。いや、民航旅客機でも納期の遅れが生じている。何故? 米国本土で、機械製造業種の中小工場が、数百社も、消滅しているからだ。かつて彼らは、大メーカーが急いで仕事を進められずに困った折に、助っ人として、熟練工を応援に送り込んでくれた。そんな、いつでも頼りにできた職工予備軍のバッファーが、今や、存在しないのである。

 有名大学に連邦補助金を出さなくする措置は、よいことだ。それら大学はくだらない社会学者を量産しただけだ。補助金を切ることにより、従来なら、しょうもない主張で世の中をかき乱す運動家になっただろう人材が、配管工になる。それはよいことだ。

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 Van A. Mobley 記者による2025-4-9記事「Why Comparing Trump’s Tariffs To The Smoot-Hawley Act Is Dishonest」。
    19世紀、英国は世界に先行して自由貿易を主唱したが、ドイツとアメリカはそれに乗らずに自国産業をタリフで守った。だから両国は成長できた。

 スムート=ホーレイ関税法を制定したとき、米国は、世界最大の債権国だった。このタリフのせいで、欧州諸国は米国相手に物を売れなくなり、外貨をかせげなくなった。すなわち、米国からのWWI中の借金を、返したくとも返せなくなった。それは、グレート・ディプレッションの引き金になった。

 今日、事情は1929年とは反転している。合衆国は、世界最大の債務国である。もし米国がその借金を返せなくなれば、全世界の金融が崩壊するのだ。
 スムート・ホーレイ法は、悪だった。トランプ・タリフは善である。これをやらなければ米経済はじきに借金の重さに破滅し、道連れに、全世界経済も破滅させるから。

 ※1930年代に欧州は米国への借金を簡単に返すことはできた。たとえば英国はインド植民地を米国商人に開放するだけでよかったのである。自国植民地を米国に対して閉ざしておいて、借りた金も返さないと開き直った欧州諸国は、WWIIの人命でそのツケを払った上に、植民地もすべて失った。

 ベン・バーナンキの説。米準備銀が大間違いをやらかしたのが、大恐慌の真因であったと。金利を引き下げて金融緩和のマネタリー政策を打ち出さねばいけなかったときに、真逆の、金融ひきしめ政策を打ち出し、公定歩合を上げてしまったから、1930年代のグレートディプレッションになったのだとする。


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 Kamsi Obiorah 記者による2025-3-30記事「Taiwan’s Defense is out of Stock」。
   国防総省は、高額・高性能な空対艦ミサイルであるLRASMの調達をこれまで停滞させるに任せ、また米政府は、機能に定評がある地対艦ミサイルのハープーンを敢えて台湾に売ろうとしてこなかった。このおかげで2027の「予定日」を前にして、台湾防衛構想が難しくなっているのである。

 米空軍は、FY2020とFY2022に、ただの1発のLRASMの予算も要求しなかった。FY2021には、わずか5発が予算要求されている。

 米海軍は、FY2020からFY2025にかけて、毎年平均71発のLRASMを要求し続けている。しかしそれは空軍の無気力を補うほどの数量ではあり得ない。

 いまの調子だと、2027年には、海軍と空軍あわせて629発のLRASMを揃えていることになるだろう。しかしRAND研究所の見積りでは、台湾をめぐる65日間の米支戦争に必要なLRASMの数量は、1200発だという。

 台湾は、2020年に、FMSによる400発のハープーン・ミサイルと100台のラーンチャーの発注を済ませた〔代金を米政府に対して前払いしているということ〕。
 しかるに米政府がボーイング社にその製造を発注したのはそれから2年半後だった。

 いまのままだと、台湾は2026年の時点でも、既発注分の三分の一のハープーンを受領できているのみであろう。

 米政府は、ハープーンをまずウクライナにやり、ついでサウジアラビアに売るという優先順位を決めているのだ。台湾はその後まで待たされるのである。

 2023公表のCSISによるシミュレーション。もし2026に台湾有事となれば、米兵の1日あたりの死者数は、ベトナム戦争が酣だった時を上回るだろう、と。
 しかもLRASMは開戦初盤の3日目にして、すべて撃ち尽くされてしまうという。

 中共の建艦能力は今、米国の15倍である。中共の『076』型揚陸艦は世界最大サイズで、しかもカタパルトを有し、数十機の航空機を放つ。

 台湾の主力兵器メーカーは、近過去2年に、131発の「Hsiung Feng」対艦ミサイルを製造した。
 このポテンシャルは拡張されなくてはいけない。

 記者の提案。同時にアメリカは、有事に台湾を防衛するという約束を撤回するべきだ。なぜならアメリカには、その約束を果たすに足る、対艦ミサイルのストックがないからである。

 ※この記者には軍歴は無く、外交シンクタンクである「John Quincy Adams Society」に属す。このシンクタンクからは、米国は欧州防衛にもアジア防衛にも積極的に乗り出すべきではないという論議が量産されている。


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 ストラテジーペイジの2025-3-31記事。
  シンガポールは、そのマラッカ海峡警備のために、「MARSEC」という無人リモコン艇を採用した。排水量30トン。長さ16.9m、幅5.2m。最高速力50km/時弱。航続時間は40時間。

 これは2人のオペレーターによって操縦される。その操縦は、陸上または、すぐ近くの別の船の上からなされる。

 無線を有していなさそうな小舟に音声によって警告するため、LRAD= Long Range Acoustics Device も搭載している。
 武装は複数の 12.7mm machine-gun である。
 また、非殺傷性の、レーザー光線銃も備える。これは海賊に対して目潰しとして用いるそうだ。

 中共は、2000トンの『Zhu Hai Yun』を登場させた。
 それ自体、無人で動かせるという。AIを使うとフカしている。
 そしてその船内には、無人艇(一部は潜水型)と無人機が15機、収容されている。マザーシップなのだ。

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 Vladimir Signorelli 記者による2025-3-31記事「The Weaker U.S. Dollar Is MAGA’s Silent Killer」。
   ステフェン・ミランは、トランプ政権の経済アドバイザーの座長。この御仁、ドルを弱めればよいのだという考えなのだが、それを実行するとどうなるか。

 世界の「備え用の通貨」としてのドルの価値が下がるということ。
 トランプ就任いらい、ドルはすでにGoldに対して値を下げ続けている。
 Goldの価値がこのように上がるのは、歴史に徴して、警告である。これから経済の大波乱が来るという。
 1880年代、ドルは(重さ約二十分の一オンスの)Goldに兌換比率が固定されていたので、それは関税の変動に対するガードレールになっていた。

 1970年代にニクソン政権はドルの価値を引き下げた。それはスタグフレーションにつながった。今、ドルを弱くすれば、同じことになるだろう。

 弱いドルは、輸入品、なかんずく原油の価額を押し上げる。それは自動車燃料、食糧品、日用品の価額を押し上げる。それは、選挙でトランプを熱烈に支持した低所得者層の家計を直撃する。

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 Joel Jose and Siddarth S 記者による2025-3-31記事「Goldman raises odds of US recession to 35%」。
   ゴールドマンサックスは、米国経済のリセッションは20%ではなく、35%になるだろうと、予想を悪い方へ修正した。
 また米国の2025年の経済成長も、2.0%ではなく1.5%だろうと、下方修正した。

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 AFPの2023-3-31記事「China discovers major new oilfield off Shenzhen」。
  深センの170km沖の海底を掘れば天然ガスが出てくるという、昔も聞いたような大本営発表。
 CNOOC=China’s National Offshore Oil Corporation が月曜日に。
 埋蔵量は1億トンだそうだ。

 「Huizhou 19-6」という海底鉱区を試掘したところ、日量413バレルの原油と、6万8000立米の天然ガスが得られたと。

 ※このような宣伝をすることで、いったい今、誰にとっての得があるのか、絞り込めない。

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 The Maritime Executive の2025-3-31記事「Iran Reports Stopping Two Foreign Tankers for Oil Smuggling」。
  イラン当局は、外国船籍の2隻のタンカーを密輸容疑で拿捕して曳航中という。積み荷は「diesel fuel oil(=軽油)」だという。

 船名は『Star 1』と『Vintage』。
 うち1隻はUAEの所有らしい。イランから石油製品を搬出する密輸集団が存在するのだという。

 また1隻は、中共から固体ロケット燃料用の原料を運んでいるとの既報あり。

 ※イランはホルムズ海峡の水中で核実験するだけでトランプ政権を打倒できる。ガソリンが高騰するとどんな米政権ももちこたえられないのだ。トランプもそれを知っているし、イランもそれを知っている。だからイランが空爆されることはない。

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 Mark S. Bell and Fabian R. Hoffmann 記者による2025-3-31記事「Europe’s Nuclear Trilemma」。
   欧州はロシアの侵略を、短射程の戦術核だけでは、止められない。というのは、ロシアは初盤で簡単にバルト三国を占領してしまい、そこを次の作戦基地にできる。「アグレッシヴ・サンクチュアリゼーション」という戦略だ。そこに居座った露軍に対しては、英仏は、核攻撃をしかねるだろう。

 ※バルト三国がダーティボムと長距離UAVを組み合わせた対モスクワの報復手段を取得する以外に、合理的な抑止は無理だろう。無理な抑止を構築するに足るカネが、英仏にはもう無いはずだ。


世界の終末に読む軍事学


ポーランドが今、露軍から侵攻された場合、弾薬の備蓄量からして、単独では、2週間しか戦争できないそうだ。

 同国の、国家安全保障委員会の大将が、報道機関のインタビューに答えた。

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 Gary Warner 記者による2025-3-25記事「Navy to spend $300M to prepare Naval Base Kitsap as a homeport for Ford-class aircraft carriers」。
    ワシントン州の軍港キットサップにフォード級の巨大空母『JFK』を受け入れるための改修工事に、海軍は3億ドルを投ずるつもり。
 それには、隣接ブレマートン市に新設される変電所と新電力系統も含まれる。

 『JFK』は今年の夏に就役する予定。建造したのは東海岸のニューポートニューズ。今は東海岸で公試運転中。

 ただし、キットサップの改修は、工期4年が見込まれている。そのあとで、ようやく『JFK』の母港にすることができる。2029年より先の話なのだ。

 電力網の一新は、なぜ必要か?
 『ニミッツ』級空母の母港には、4160ボルトの給電が必要だったのに対して、『フォード級』だと1万3800ボルトが必要なのだという。※ワットアワーではなく電圧で表現している記事の意味がどうも呑み込めぬ。

 『フォード』級は、『ニミッツ』級よりも電力を喰うのだが、そのかわり、固有の乗員は減っている。最後の『フォード級』空母である『GHWブッシュ』(2009就役)よりも344人、省力化されている。だいたい2800名である。

 これは、出撃時に連れていくパイロットと整備員2500名とは別。

 『ニミッツ』級は、艦のサービス・ライフを50年として設計されている。その現役の中間時点で、大修理を施す。長期間ドックに入れて、上甲板から機関室までバラし、2基の原子炉内の核燃料を交換するのだ。この作業は、ニューポートニューズにあるハンチントンインガルス造船所でしかできない。
 1番艦『ニミッツ』はもうじき、退役して解体工程に入れられる。

 海軍は、今11隻ある『ニミッツ』級を、古いものから逐次、『フォード』級で更新するつもり。
 いまのところ、『フォード』級は6隻、計画されている。しかし工事はスケジュールより遅れている。

 もっか建造中である3番艦『エンタープライズ』は2029年に就役させようとしているが、どうなるかわからない。

 4番艦の『ドリス・ミラー』(真珠湾空襲のときに炊事係ながら対空機関銃を撃ちまくった黒人水兵の名にちなむ)は2032年に就役させたい。5番艦『クリントン』は2036に就役させたい。6番艦『GWブッシュ』は何年の就役を見込むか、発表されていない。

 ※むかしの帝国海軍ならば、敵の最新鋭巨大空母(エセックス級)が登場する前に対米開戦せねば――という発想になっちまったわけだが、今日、中小の水上艦をベルトコンベヤ式にマスプロしているのは中共の側なので、彼らはぜんぜん焦っていないだろう。それに、大急ぎで開戦に間に合わせた『瑞鶴』も、就役して1~2年は大活躍なんかできなかった。空母システムは2年くらいかけないと、チームとして仕上がらないからだ。中共は、『JFK』が2027の台湾戦争に間に合うとは思っていないだろう。ところで『カールビンソン』が先日、グァムに入港した直後に、島に接近中の同空母の航跡を宇宙から撮影したと称する人工衛星の写真が、なぜか、公表されている。そしてウェブサイトで調べれば、現在はシャム湾の奥、バンコックのすぐ南の沖に所在することも分かってしまう。あたかも、中共海軍からの先制攻撃を誘っているように見える。ヘグセスの「シグナル」事件は、じつはイランからの奇襲攻撃を誘う罠のつもりだったのでは? トランプは、金喰い虫の米空母が無用の長物であることを、なんとしても証明したいのでは? そして私は予言する。フォード級の建造が中止と決まらない場合には、7番艦の艦名は、トランプとされるだろう。

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 Alison Bath 記者による2025-3-26記事「Navy’s shipbuilding strategy requires total overhaul to meet aims, audit finds」。
    米会計検査院GAOは、火曜日に報告した。
 米海軍は、今296隻ある戦闘用艦艇(補給艦なども含む)をこれから30年で381隻に増強したいと言っているが、無理じゃね? と。

 非現実的な設計計画のLSМも、このままでは、ズムウォルト級や、新鋭フリゲート艦の轍をなぞり、コスト数倍、納期は延び延び、けっきょく数隻の調達で打ち切りという運命が見えているぞ、と。

 ※GAOは米海軍に対して、軍艦の建造に適用できる民間商船の建造ノウハウが数百もあることを細かく教示し、その提案のうち数十は、過去にじっさいに反映されたそうである。すげぇ。

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 Jorge Rivero 記者による2025-3-25記事「Innovating Under Fire: Lessons from Ukraine’s Frontline Drone Workshops」。
   記者はことしの1月、5日間にわたってウクライナ軍の海兵部隊を取材し、根掘り葉掘り、最新知見を集めることができた。

 現状、露兵の死傷原因の7割は、宇軍のUAVによっている。
 また、露軍兵器の破壊要員の9割が、宇軍の無人機攻撃によっている、そんな戦線もある。

 宇軍のすべての前線「大隊」内に、12人くらいからなる「無人機ワークショップ」がある。そこで諸問題が機動的に解決され、最新戦術も生み出される。
 急に必要になった部品は、3Dプリンターでこしらえる。

 電池のメンテナンスも、このワークショップの担任だ。電池供給が、いまや、死活的に重要。
 不良電池をつけてUAVを飛ばすと、途中で墜落したり、目標破壊に失敗する。これによって攻撃が頓挫するだけでなく、得られなくてはいけなかった情報も得られなくなってしまう。影響が甚大。だから、悪い電池を1個でも混在させてはいけない。

 敵のEWに即座に対処する決定権限も、ワークショップが担うしかない。この対応を軍隊の官僚機構に任せていたら、数週間も、敵の優勢を許してしまい、こっちの領土が削られてしまう。とりかえしがつかない。

 ワークショップがあることで、過重労働で疲労しているドローン操縦チームが、さまざまな余計な雑務から免除される。ドローン戦術に持続して集中できるようになるのである。

 ドローンへの爆薬類の取り付けは、電気雷管や火薬類を取り扱えるプロが所在しているワークショップが専任する。これを末端のドローン部隊にさせることはまったく推奨できない。危険すぎるからだ。

 ワークショップは、敵も優先的に破壊しようと鵜の目鷹の目で探している。もし所在が絞り込まれると、ミサイルが飛んでくる。だから、ワークショップは車両で移動できるようにする。最前線で味方にサービスしつつ、敵の砲兵の的にはならないように、河岸を変え続けるのだ。
 この車両には、デジタル通信端末も、備わっていなくてはいけない。

 リトアニア軍もこの研究をしていて、UAV用のワークショップを一式載せて移動できる車両は、他からの燃料補給等がなくとも2日間は活動できるようにできていなければならないと結論している。

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 AFPの2025-3-25記事「NATO takes Ukraine lessons into Europe’s top air defence drills」。
   NATOはこれから連続十日間の防空演習をする。反映されている最新のシチュエーションは、「シャヘド136の大量使用」である。西側の防空担当者は、この難問に即時に向き合わなくてはいけない。

 「シャヘド136」が特定目標を攻撃するとき、その「軌跡」にはパターンがあるだろうか? 有益な情報は、すべて、ウクライナ軍が持っている。


<正論>硫黄島の戦いが今に伝えること/軍事評論家・兵頭二十八

※産経新聞WEBサイトに無料登録すると読めます。


来月の新刊の予約が可能になっているようです。

 並木書房さんの『世界の終末に読む軍事学』です。

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 The Maritime Executive の2025-3-16記事「Second Shipload of Ballistic Missile Fuel Nears Iran」。
  貨物船の『MV Jairan』がマラッカ海峡を通過した。同船はイランが中共に派遣した2隻の貨物船の2隻目で、中国産の「sodium perchlorate」=過塩素酸ナトリウム を満載して、バンダル・アッバス港に戻らんとす。

 過塩素酸ナトリウムは、過塩素酸アンモニウム(ammonium perchlorate)を製造するための原料になる。イランは、過塩素酸アンモニウムから、弾道ミサイルの固体推薬を製造する。

 ※ウィキで補うと、過塩素酸アンモニウムに合成ゴムとかアルミ粉を錬り混ぜたものが、日本のH-II型ロケットのブースターになっている。別なモノを混ぜれば「カーリット」という爆薬になってしまう。

 このフネのオーナーであるイランの船会社は、米国財務省によって制裁対象に定められている。
 いまのところAISは切っておらず、おそらく3-26よりも早い日に帰港するだろう。

 『ジャイラン』は1万6694トン。このたびの過塩素酸ナトリウムは、24個のコンテナに詰め込まれている。
 この量だと、過塩素酸アンモニウムにした場合、250発の中距離弾道弾のブースターに化けるだろう。

 イラン国内のロケット推薬工場は、Parchin (テヘランの南)と、Khojir にある。

 フーシやヒズボラにロケット弾を援助しまくっているイランは、どうやら、深刻な「過塩素酸アンモニウム飢饉」の状態にあるらしい。

 貨物船は、マラッカ海峡を抜けてインド洋に入ったところで、イラン海軍からのエスコートを受けるはずである。

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 ストラテジーペイジの2025-3-16記事。
  世界の原油生産のビッグ3は、合衆国、サウジ、ロシアである。この3国で39%を掘っている。

 ロシアは、イランからカスピ海の舟運を使って入手したモノを活かすために、ヴォルガ川とドン川を連絡する、長さ101kmの運河〔1952年にできたという〕を2023に大浚渫し、大型船が、カスピ海と黒海の間をそのまま行き来しやすくなるようにした。

 現状、積み荷5000トン、全長140m、幅17m、吃水3.5mまでの貨物船なら、カスピ~黒海を自由に出入りできる。

 件の運河は、年に1200万トンの物資を通す。現状、その半分は原油もしくは石油製品である。
 ロシアは、イラン船がこの運河を利用することを2021に許可した。

 この運河の途中には13箇所の閘門がある。
 ヴォルガ河は、カスピ海に注いでいる。
 ドン河は、アゾフ海に注いでいる。

 カスピ海の塩分濃度は、黒海の三分の一くらい。

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 Olena Harmash 記者による2025-3-17記事「Ukraine’s Zelenskiy appoints new chief of general staff to speed up reforms」。
  ゼレンスキーは、Anatoliy Barhilevych 中将の参謀総長職を解き、後任に、Andriy Hnatov 少将を据えた。日曜日の人事。
 Hnatov の軍歴は27年である。

 ウクライナ軍はいま、88万人、いるであろう。

 今年はじめ、宇軍の中枢は、「旅団」中心の編成を、「軍(corps)」中心の編成にあらためたい、と言っていた。
 これは、総延長1000kmある対峙線で有機的に重点を形成するためには、旅団単位で決心していては、スピードが遅すぎるという反省から。

 ※自由主義世界の――つまり統制経済システムではない――先進社会においては、これからは、大型工事だとか大規模建設プロジェクトにかかわることが、ますます《不吉》になる一方だという厭な予感がする。その代表例は北海道新幹線だが、これは永久に完成しない気がする。核戦争後の倉庫になると思えば、既成部分は無駄にはなるまいが、未整部分は、どんどん完成予定年度が遠くへ離れ去っていく。あたかも膨張する宇宙の辺縁のようだ。上水網や下水網だって、自治体はこれから、まともに維持するだけでも手一杯になるだろう。投機マネーを集めて比較的に速く完工するタワーマンションも、数十年経てば共用部分の修理がマネージできなくなり、廃墟化すると噂される(人が住まない前提のフラックタワーは、この苦労が無い)。おそらく、これからの正しい方向は、システムをできるだけ細分化することだ。「旅団」を「軍」にまとめてしまうのではなく、その逆に、「旅団」を「小隊のあつまり」に替えて行くイメージだ。200cc.以下の「サイドカー」で16歳の少年が荷物を運搬して小遣いを稼ぐことを、法令で許すべきだ。そのドライバー経験を2年積んだら、こんどは18歳で「乗客」を運んでもいいことにするのだ。この流儀なら、過疎自治体の独居老人は、生き残れる。

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 Defense Express の2025-3-16記事「How Ukrainian Soldiers Counter Enemy Tactics in the Kupiansk Sector」。
  露軍は歩兵を小部隊に分割して、夜間、宇軍の背後の補給道路に地雷を仕掛けさせている。これを翌朝に除去する宇軍の工兵の負担が増している。

 露軍の自爆ドローンもさいきんは、光ファイバー・ケーブルで操縦されるようになった。これを迎え撃つ宇軍の兵士は、ポンプアクションのショットガンを使っている。宇軍のすべての部隊に、その散弾射撃の専門兵が置かれている。彼らは特別に訓練されている。

 ※宣伝ビデオによると、露軍は「シャヘド136」の国産品を、ピックアップトラックに背負わせて、そのトラックを疾走させることで、離昇のための初速を与えてやり、それによって、RATOの調達費用を節約している。おそらく、RATOを量産するための過塩素酸アンモニウムの入手が、おいつかなくなってしまっているのではないか? こうした特定ケミカル原材料の不足は、世界的な現象のように思われる。

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 AFPの2025-3-16記事「China’s Baidu releases new AI model to compete with DeepSeek」。
  また新しい無料のAIサービスがインターネット市場に投入された。
 「百度」が開発した「Ernie 4.5.」。
 1月にリリースされたライバルの「ディープシーク」よりもさらに低コストだという。
 また、他社のAIよりも回答が速く出てくる、と主張している。

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 The Maritime Executive の2025-3-16記事「Russia Agrees to Help Landlocked Ethiopia Rebuild its Navy」。
  エチオピアは、海軍を復活したがっている。ロシア海軍はそれに手を貸しましょうと言って、エチオピア政府に近づいている。

 エチオピア海軍は1950年代に創隊されたが、1993にエリトリアが分離独立してしまったことにより、エチオピア領土には海岸線がなくなってしまった。

 しかし2018年、エチオピアの新首相アビィ・アーメドは、海軍を再建することに決めた。フランスが助けてくれると彼は思っていた。
 2019にマクロンがエチオピア訪問。まず人材教育がスタートした。
 それは外国頼みとならざるを得ないので、ロシアが手伝いますよと言って来れば、エチオピアは断らないのである。

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 「mil.in.ua」の2025-3-16記事「US Considering Recognition of Somaliland in Exchange for Military Base」。
  『フィナンシャル・タイムズ』紙によるすっぱ抜き。
 米政府は、ソマリランドを国家承認してやるかわりに、紅海に面するベルベラ港付近に米軍用の海軍基地を置かせろ――と要求しているそうだ。

 ついでに、ガザ住民や、米国内から追放する輩の定住地も、ソマリランド内に提供してくれよ、と言っているらしい。

 なお、「国際刑事裁判所に関するローマ規定」の「アーティクル7」によれば、住民を強制移住させることは「人道に対する罪」とみなされ、ICCがトランプ一派を訴追することになるであろう。

 ※雑報による、カナダ人と米国人の労働者としての境遇比較。カナダの最低賃金は1900円~1500円。米国の最低賃金は7.25ドル=1078円。連邦の所得税の中央値は、カナダが20.5%、米国が22%也。健康保険は、カナダは税金でカバーされ、米国は1人が平均7000ドル/年を負担する。労働組合の組織率は、カナダが30%、米国10%也。有給の育休は、カナダでは最大78週間。米国ではゼロ。よってカナダ人はトランプ軍とあくまで戦う。併合されても良い事無いから。


世界の終末に読む軍事学


ポルトガル軍は米国製のF-35の購入をキャンセル。手持ちのF-16も、欧州製戦闘機で更新するという。

 Sofiia Syngaivska 記者による2025-3-14記事「Over Half a Million Wounded Service Members, the Strain on russian Military Medical System Further Drains」。
   ロシアの諸地方で、民間の病院や医院の閉鎖が相次いでいる。無医村がどんどん増えている。
 医師や医療従事者たちが、皆、傷痍軍人の手当てのために、西部の都市に駆り出されているからだ。

 2024年には160の公立病院が閉院した。それには産科18施設、小児科10施設が含まれる。
 げんざい、ロシアには50万人以上の傷痍軍人がいるはずである。

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 ロイターの2025-3-13記事「Trump says he still has ‘great relationship’ with North Korea’s Kim Jong Un」。
  トランプは語った。ひきつづいて北鮮の三代目とは良好な関係を維持していると。

 これはNATOの事務総長のマーク・ルッテを前に、オーバルオフィス内で語った。そのさい、三代目のことを「ニュークリア・パワー」だと表現している。「I have a great relationship with Kim Jong Un, and we’ll see what happens, but certainly he’s a nuclear power」。

 ※たぶん国務省系のスタッフの入れ知恵だろうが、「IT」でもなく、「SHE」でもなく、「HE」を使うことで、米政府が北鮮を「核武装国家」として認めたわけじゃないよ、とエクスキューズができる余地を生じさせた。トランプは、1月20日に、北鮮国家を指して「ニュークリアパワー」と呼んでしまったので、その痛い失言を、修正させるべく、国務省系スタッフが、わざわざこの場で発言させたものと思う。表には出てこないが、有能なプロンプターが、居るのである。あたかも、日銕の会長が不必要千万に攪乱してくれている日米関係を、水面下で必死で鎮静化させるべく奔走しなければならないわが外務省スタッフたちの図。

 ※3-10に北鮮は、日本海ではなく黄海に、弾道弾複数を打ち込んだ。この日よりも前の時点で、トランプと三代目との間になんらかの連絡があったと邪推することもできよう。米軍基地とかんけいない方角、なかんずく中共領土の方角に発射するのなら、不問に付すというわけだ。

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 Zach Winn 記者による2025-3-14記事「Making airfield assessments automatic, remote, and safe」。
    数学の博士号をこれから取ろうというランドール・ピーターセンは、MITの修士学生として5年間、米空軍のために、空爆を受けた滑走路をすばやく点検して被害の全体図を得る最適手順の研究を続けてきた。
 敵の攻撃には、ケミカルもあり得る。残っている脅威には、不発弾もあり得る。

 デブリが散乱している広い飛行場の景色から、クラスター爆弾の「子弾」の未発弾を、いかにして瞬時に見分けるか。

 ピーターセンは、その仕事はUAVにさせるしかないと理解している。もともとピーターセンは西海岸の空軍大学校で土木建設の勉強を始めた。スポーツとしてクロスカントリーも続けている。歩き回るのは嫌いじゃないが、飛行場はとにかく広すぎるのだ。しかも被爆後の踏査には防護服の着用が必要だ。

 マルチスペクトラムの光学センサーを積んだ無人機が、いちばん早い仕事をしてくれる。

 MITが研究の場として優っているのは、そこでは企業や軍のパトロンがすぐにみつかる。それと、学科や専攻を越えた「お知恵拝借」がふつうに可能で、難題を次々に乗り越えられる。

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 WSJ の記事「When Dana Bare tried to quit Xanax, it was too late」。
  ベンゾジアゼピンは、抗不安、催眠、筋弛緩の作用を服用者にもたらす。連用すると、脳がやられて痴呆化する。

 2023年には米国内で2400万人以上が、「ザナックス」のような薬物を摂取している。ザナックスはベンゾジアゼピン系である。ベンゾジアゼピンが、政府公認の処方薬の中に入っているのだ。

 症例。ダナ・ベアー。ザナックスを飲むようになってから2年後、パニック障害が突発するようになった。
 しかも、なにかをすぐに忘れるようになってしまった。

 ダナ・ベアーは、医師から処方された不眠治療薬として、ザナックスを飲み始めた。10年以上前だった。
 すぐに眠れるようになった。

 しかし、やがて彼女の神経系は衰弱し、身体が、このドラッグに依存するようになった。
 5年前、彼女はザナックスをやめようとした。すると、脳が電撃を発して身体を苦しめた。たとえばシャワーを浴びるや、何かにつきとばされたような感覚が走り、激痛が1時間以上続いて、ついには失神するのだ。

 ザナックスを服用すれば、このような苦痛は収まる。身体が依存症になったわけである。ヤク中だった。

 Xanax は、alprazolam のブランド名である。近似した薬品には、Klonopin (clonazepam)、Ativan (lorazepam)、Valium (diazepam) がある。これらは、たちどころに服用者を鎮静させ、眠らせてくれる。不安の多い時代には、需要されるのがしぜんだ。

 ザナックスは、パーティ・ドラッグとしても濫用される。
 長期服用者は、しだいに、必要量が増えて行く。

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 Ian Schwartz 記者による2025-3-13記事「Rep. Maxine Waters: Trump Expects Violence and Confrontation, “He’s Working Toward A Civil War”」。
   加州選出の民主党下院議員、MAXINE WATERS は言う。奴はもう一回、米国内で内戦を起こす気だ。そしてアメリカの独裁者になるつもりなのだ。
 奴が「鑑」と讃仰しているのはプーチンと三代目だ。

 奴は選挙前から言っていたじゃないか。当選しなかったらシヴィル・ウォーだと。隠してないんだよ、そもそも。

 キング牧師は、細民は抵抗するために組織としてまとまれ、ただし暴力はいかんぞ、と教えていた。俺はその教えを守ってきた。
 だが奴の方は、米国社会をどうしても暴力の巷へもって行く決意なんだ。

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 AFPの2025-3-14記事「US bars Thai officials over Uyghur deportations」。
  タイ政府が、国内にいた数十人のウイグル人を2月後半に中共の求めに応じて中共へ身柄送還してしまったことに米国政府は腹を立て、マルコ・ルビオは金曜日、タイ政府の公務員に対するヴィザの発給を停止させた。

 ルビオはカナダで開催されたG7に出席している。
 ルビオは上院議員時代から、ウイグル問題で中共を攻撃し続けていた。



世界の終末に読む軍事学 [ 兵頭 二十八 ]

(管理人より)

 兵頭本最新刊『世界の終末に読む軍事学─パズルのピースは埋めておけ』
 兵頭二十八先生は、普通の会社員がマジで引くくらい貧乏だったので(いまも?)、本当に売れてほしいです。私は当然に買います。


【臨時急告】またしても「お役立ち」動画が出ましたぜ! 

 YouTube に「kurobe356」さんがアップロードしてくださいました。

 「【切り抜き動画】ベトナム人民軍式自転車による負傷者運搬訓練」です。
 https://www.youtube.com/watch?v=KDqoRidJKso

 担架を同時に2つ運び出すことができる《縦列2輪荷車》なんてものが、あり得るのかどうか、疑っておられる方は、まずこれをご覧くださり、その後で小生の「note」をご確認くだされば、理解は進むでしょう。

 ご注意。
 動画では、物資運搬のついでに、人が「乗車」しているシーンがあります。それに対し、私がこれから実車製作してテストしようと念願しているのは、あくまで、《特別な荷車》です。
 座席は最初から設けず、後輪を駆動させるメカニズムも一切無し。したがって日本の法令上の「自転車」ではございません。

 小生の管見ですが、概して「自転車マニア」の方々は、今回の事業のパートナーにはなり難い人々だと想像をしています。スポーツ競技やレジャーへの関心が強すぎるためです。
 「輸送」や「補給兵站」や「救護」にご関心の中心のある方々にこそ、この動画は見て戴きたい。切なる祈願であります。


兵頭二十八 note

【切り抜き動画】ベトナム人民軍式自転車による負傷者運搬訓練


兵頭二十八先生の産経新聞「正論」欄の連載が始まりました。(管理人より)

(管理人より)

「正論」新メンバーに前駐中国大使・垂秀夫氏ら 新たに10人決まる

 一体いつ始まるのだろうと思っていたけど、2月6日に公開されていました。まさか単発ってことはないと思うので、良かった良かった。
(「いつ始まるんですか?」とご本人に聞けば良いじゃねえかと思う方もいるかもしれませんが、待てばわかるものを質問するのは、私は苦手なのです)

<正論>ベトナム「2輪荷車」が秘めた力/軍事評論家・兵頭二十八

 無料の会員登録が必要になるようですが、ネットで読めました(ベトナム政府様! マジでよろしくお願いします!)

今更ですが皆様、2025年もよろしくお願いします。


電気ストーブの消し忘れをなくすには、人が立ち上がって室内を見渡したときに、必ず視野に青色の輝点が飛び込んで来るように、商品の頂部(天板)にLEDの通電インディケーターが上向きについているべきである。

 募集中! タンデム2輪の「手押し」荷車の模型を造ってくれる人、ご連絡ください。

 次。
 David Hambling 記者による2025-1-10記事「1,200,000 Drones: Ukraine’s Unmanned Weapons are Transforming Warfare」。
   2024年の1年間だけで、ウクライナは120万機のドローンを組み立てた。
 長距離片道攻撃用の「Lyutyy」という国産無人機は、レンジが600マイルである。

 それらすべてのドローンのうち、9割は、対AFV用のFPVクォッドコプター。

 民間篤志のファンドライザーが、国家以上の貢献をしている。Serhii Sternenko というボランティアは、13万3000機のFPVドローンを宇軍に寄贈した。これはNATO加盟国のどの1国の陸軍の保有ドローン機数よりも多いのである。

 FPVドローンの主流は、サイズが「7インチ・フレーム」から「12インチ・フレーム」までの、レーシング用ドローンである。

 FPVドローンの搭載爆薬量は、劇的に増えた。2022年においては、1.5kg=3ポンドの爆装がギリギリだった。しかし最近では、3kg=6ポンドの爆装をしているものがある。
 特攻マルチコプターのレンジは、理論上、12マイルあるが、現実には3~6マイル飛んだところで目標に突入している。

 片道特攻UAVのうちどのくらいが、サーマル・カメラを搭載しているのか、その統計は無い。しかしSNSに上がっているビデオの比率からして、その数はまだとても少ないものと考えられる。

 24年に、ウクライナ軍は、露軍のUAVを空中で体当たり撃墜する作戦を始めた。その撃墜スコアは、いまやトータルで1000機を越えている。

 Sternenko が扱っている FPVドローンの単価は、昼間用カメラ搭載モデルだと、300ドルから460ドルくらい。価格はフレーム・サイズに比例する。
 夜間対応カメラ搭載モデルだと、これが、700ドルから800ドルになるという。

 偵察用として最もポピュラーな市販機は、「DJI Mavic 3」だろう。
 滞空45分可能、ズームは標準で56倍である。
 「Mavic 3T」は、サーマルカメラ搭載のバージョン。小売価格にして4000ドルだ。

 固定翼の偵察ドローンは、2024年に5000機が供給された。品名としては、「Shark」「GOR」「Furia」など。

 そのうち「A1-CM Furia」は、電動で3時間滞空可能。最大で50km先から動画を電送できる。航法にGNSS信号は必要としない。夜間も飛べる。コストは7万ドル。

 重量級のマルチコプターは、2024年には2000機が供給された。「Nemesis」「Kazhan(“Bat”)」「Vampire」などの品名あり。ヘクサコプター型もしくはオクトコプター型である。これらはすべて、夜間飛行に対応。

 単価2万ドルする「E620 Kazhan」のペイロードは20kg。レンジを8マイル以上にしたければ、この荷物は減らす。
 重量級マルチコプターは、82ミリ迫撃砲弾や、120ミリ迫撃砲弾を投下する。「TM-62」という対戦車地雷を改造した特製爆弾も投下する。
 重量級マルチコプターを、地雷敷設に使うこともある。地雷原には最初、味方が通行できる通路を設けてあるものだが、敵がやってきたら、その通路にも地雷を置かねばならない。そういう任務に役立つ。

 片道長距離自爆攻撃機は、2024年中に、6000機以上、調達された。品名としては「Lyutyy (“Fierce”)」や「Firepoint」など。
 精油所や、空軍基地を空襲しているのは、このタイプである。
 宇軍は2025年には、このタイプを3万機、調達する計画だ。

 「Lyutyy」はウイングスパンが23フィート、ペイロードは100ポンド超で、レンジが600マイル以上。「シャヘド136」の対抗品といえる。単価は20万ドル。

 軍功章を授与されたオペレーターの Timofiy Orel は、2024-1~5月、42両の戦車、44両のBMP、10両のMT-LB、28両のBTR装輪AFV、露兵400人を、その率いるチームのドローンで破壊殺傷した。

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 Prabhat Ranjan Mishra 記者による2025-1-10記事「New US spy drone can fly at 15,000 feet for 14 hours, pack 30-pound payload」。
 米陸軍は、「Textron Systems」社が開発した新型ドローンを受領した。1月中に、用法に習熟する。
 「MK 4.8 Hybrid Quad (HQ) Aerosonde」という。
 4軸電動ローターにより、垂直に離着陸するが、巡航時は、内燃エンジンのプッシャープロペラと主翼の揚力を用いる。滞空14時間可能。高度1万5000フィートまで上昇でき、ペイロードは30ポンド。主に偵察に使いたい。

 BCT=旅団戦闘団 の目となる。

 機材は、兵隊2人で担いで動ける。組み立てて発進させるまでの時間は30分。
 エンジンの燃料は「JP-8」。

 ※陸軍のプロジェクト名を「FTUAS」と言うらしいのだが、これはぜったいに、彼らの脳内で「フタ」と変換されている。日本のエロアニメ・ジャンルの「ふたなり」はすでに英語として通用するのだ。

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 Victor Davis Hanson 記者による2025-1-10「X」投稿「Dresden in Los Angeles and our Confederacy of Dunces」。
  LAの有権者は、じぶんたちで選んだ左巻きのペテン師たちの行政のおかげで、このたび廃墟を得た。

 新規の貯水池整備を禁じ、既存のダムをぶっ壊して陸水を無駄に海へ注がせ、「気候変動」に対処した気になっていた、その愚劣の報いをじぶんたちが受け取ったのだ。

 古いタフガイ・タイプの白人男性消防士はよくないといって上から下までDEI採用枠を増やした、その結果が示された。LAはWWII中のドレスデンにされてしまった。

 次。
 Howard Altman 記者による2025-1-10記事「One Of Just Two CL-415 Super Scooper Planes Taken Out Of Palisades Fire Fight By Drone」。
   2機しかなかった「消火用飛行艇」のうち1機は、ドローンとの衝突により、飛べない状態だった。

 「CL-415」は別名、スーパー・スクーパー。海面に着水して5分ほど滑走すると、胴体内の1600ガロンの水タンクが一杯になる。それを抱えて離水し、山火事の上から散水できる機体だ。

 FAAによると、消防活動を妨害したドローン操縦者は、禁錮12ヵ月+科料7万5000ドルに直面する。

 ※海水をポンプで汲み上げて消火栓に供給する「Fire main」という設備が大型船にはあるようだが、これを陸上に常設できるかどうかが、今後、研究される価値があるだろう。それにしても、金満家の豪邸の多くが「耐火」設計になっていなかったとは、呆れた。もしLAが核攻撃を受けた場合、いちばん遠くまで届く熱線により、住宅は全滅だろう。考えが甘いにも、程がある。


新年あけましてお目出度う存じます。

 このようなご挨拶が毎年可能になっている、身の幸運を噛みしめております。
 ちかごろ旧往来の整理がままならず、賀状を出しそびれてばかりなのですが、この場を使いまして、皆々様のご厚誼に心より御礼申し上げます。

 次。
 David Choi 記者による2024-12-31記事「North Korean troops making ‘human wave’ attacks against Ukrainian forces, US says」。
    ウクライナに対するバイデン政権最後の軍資金援助(それには文官の給料も幅広く含まれる)についてイエレン財務長官はコメント。ウクライナがうまく行くことが、合衆国のコアな利益なのである。ロシアによる違法な侵略を阻止することは、世界の民主的でルールに基づいた秩序を擁護し、米国の安全と経済的利益を増進する所以だ。またこれが、他の専制主義体制や侵略計画国〔=中共〕に対し、お前らは揺るぎのない決意に直面するんだぞ、との、疑いの余地のないメッセージにもなる。

 ※これは、次のトランプに対する、最も短く要約した説教になっている。トランプ爺さんは長い文章は読んでくれないらしい。しかしこのくらいのレトリックなら、テレビ・ニュースの音声を通じ、頭に入るだろうという計算を、現政権の中枢では、しているのだろう。現政権スタッフが、最後の仕事と思って、張り切っている感じがする。

 次。
 James W. Carden 記者による2024-12-30記事「The Untold Story of Carter’s Fateful Foreign Policy」。

  カーターは長寿だったが、ロザリン夫人もすごい。77年間連れ添って2023-11にご逝去であった。

 カーターの外交は、ズビグニュー・ブレジンスキー補佐官(国家安全問題担当)が領導した。
 ブレジンスキーはなんとしても政権中枢に参与したかった。だから、1976の大統領レースでカーターの敵手になった者たち複数にも、自分を売り込んでいる。

 トルーマン政権の四人目のセクデフだったロバート・ロヴェットは、《米国生まれならぬ者を国家安全保障担当補佐官にしたらダメだ》と言っていた(ちなみにキッシンジャーも帰化移民)。

 クリントン政権で国務長官に就いているオルブライトは、ブレジンスキーの弟子だった。ブレジンスキーがその後の米国の対露姿勢を画定したので、その弟子なら不安は無かろうというので、オルブライトは抜擢された。

 記者いわく、過去数十年、米国の外交は、ボス(大統領)に面従腹背の専門エリートたちによって、牛耳られている。

 カーターは、国務長官にはジョージ・ボール(国務省の高官経歴あり)が良いと思ってはいたが、おそらく上院が承認してくれまいと懸念した。当時「ネオコン」は民主党が基盤で、上院議員のヘンリー・ジャクソンが領導していた。反イスラエル的な発言をためらわぬジョージ・ボールを、ヘンリー・ジャクソンは気に入るまい、とカーターは懸念し、それでけっきょく、国務長官にはサイラス・ヴァンスを登用したのである。

 ジョージ・ボールは、リンドン・ジョンソン大統領のインナーサークルに属していたとき、ベトナム戦争についての先見の明をあらわしていた。おそらく、ボールが国務長官になっていたなら、ブレジンスキーと衝突しただろう。

 カーターの最初の間違いは、イスラエル・ロビーに、あっさりと戦利品を与えたことで、二番目の間違いは、ブレジンスキーを重用したことだ。

 ソ連について2つの学派があった。ブレジンスキーは、ソ連の内部構造なんて考えてやる必要はなく、ソ連が過去にしてきたことと、今、諸国に対してやらかしていることを見るだけでも、これからソ連が対外侵略しかしない未来は確定なんだという主張。
 出てくるアウトプットが、ひたすらの対外侵略なのだから、レーニン、スターリン、フルシチョフ、ブレジネフにどんな差異があるかなどと考えるのは無駄だ。非ロシア世界の諸国民にとっては、そんな差異は無意味なのである。

 ハーバード大教授のアダム・ウラムもブレジンスキーと同じポーランド移民だから、まったくブレジンスキーに賛成であった。
 これに反対していた学派の代表は、プリンストン大のステフェン・コーエン教授(ロシア政治研究者)だった。

 ブレジンスキーにいわせると、キッシンジャーとニクソンが進めたデタント(この用語はドゴールから借りた)に、良い結末など、ありえぬことだった。

 ブレジンスキーは1998にフランスの新聞に明かしている。ブレジネフは1979-12-24にアフガニスタンに対する侵略戦争を始めた。そのあとCIAは、公然とムジャヘディンを支援した。これが知られている公式史実。だがじつは、1979-7-3にカーター大統領が命令を下していた。カブールの反ソ勢力に密かに援助しなさい、と。同日、ブレジンスキーはカーターにメモを書き送ったという。その援助は、ソ連の軍事的な干渉を呼ぶであろう、と。

 じっさいにソ連軍がアフガンに南下した行動は、ソ連がペルシャ湾まで南下しようとしているのではないかというかねてからの疑いを、米国要路に納得させた。ブレジンスキーは正しく、ロシアの内部構造などどうでもいいのである。ロシア国家は、勢力をますます拡張して全世界を支配することしか頭にないのだ。

 ※人が何を語っているかではなく、何をやってきたかだけを見なさい、というのがナポレオンの金言。それは、「構造」は行動に統計的に表れる、という知恵なのだろう。「構造」内部はブラックボックスで可いのである。いずれにしても、それを他者が知ることなど不可能なのだから。しかし「機能」は推定できるし、予言も可能だ。

 ペルシャ湾を米国はぜったいにソ連の支配下には置かせない、という骨子の、「カーター・ドクトリン」が策定された。書いたのはブレジンスキーである。

 ブレジンスキーは2017に死去しているから、2014のロシアのクリミア切り取りも見届け、《俺が正しかっただろう》と言えるのだ。

 ※ハンナ・アレントの名言を引く価値があるだろう。いわく。〔ヒトラー隆盛時代の党による〕常続的な嘘の発信は、人々にその嘘を信じさせようとしたのではない。誰も、何も信ずることができぬ空間をまず定着させることが、必要だったのだ。なぜなら、真実と嘘との判別ができなくなった空間内においては、人はもはや、善と悪の区別がつけられない。そこでは人々は、考える力を剥奪される。知ることも、意志も奪われた人間は、嘘の支配に屈してしまう。そうなった後でなら、政府はその民衆に、どんなムチャクチャなことでも、させられるのだ。

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 Clarence Oxford 記者による2024-12-23記事「DARPA’s ASIMOV seeks to develop Ethical Standards for Autonomous Systems」。
   DARPAは、AI利用の自動兵器システムに「倫理」を嵌め込む研究を、「CoVar」社に委託した。複数年契約。

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 「mil.in.ua」の2024-12-31記事「Ukrainian Naval Drone Hits Russian Mi-8 for First Time」。
  無人ボートに積載されたSAMを遠隔操作で発射して、1機の「ミル8」を撃墜した。

 またしてもブダノフの「国防情報局」がやってくれた。無人ボートの「マグラ V5」から「R-73」という対空ミサイルを放ち、露軍の「ミル8」を返り討ちにした。このヘリは先にボートを銃撃してきたものである。
 その日付は12月31日だったという。場所は黒海。

 このSAMは操舵に可動フィンの他に「ガス噴出」も使うタイプ。もともとは、短距離用のAAMなのだが、それを転用した。

 さらにもう1機のヘリも損傷させている。しかし、そのヘリは陸上基地まで辿り着けた模様。

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 『The Maritime Executive』の2024-12-30記事「U.S. Coast Guard Warns Shipowners to Watch Out for Fake Pilot Ladders」。
  水先案内人が入港直前の大型商船に乗り移るときに、金属梯子を垂らしてもらうのだが、この「パイロット・ラダー」を安価なまがい物で間に合わせようとする海運会社が跡を絶たない。それは、水先人の命に関わる危険な欠陥を内包している。

 法規によって、この「パイロット・ラダー」の規格は定められている。それが守られていない。


(管理人Uより)

 兵頭二十八先生の記事が掲載されるのでしょう。良かった良かった。

産経新聞
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