小川寛大氏がまた南北戦争の本を出した。中公新書ラクレの『南北戦争英雄伝』。

 奥付によると11-10発行。
 小川氏のグループは十数年以上も前から「全日本南北戦争フォーラム」の会報その他を通じて、多くの日本人が注目しないアメリカの内戦に光を当て続けてきた。こうしてそのエッセンスが新書になって手にとりやすくなるのは、よいことだ。

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 Brendan Cole 記者による2024-10-31記事「Putin’s Generals Are Turning on Each Other」。
   アレグザンデル・オグロブリン少将は、露軍の通信部隊の親玉だったが、ロシア国内の通信会社「Perm Telephone Plant Telta」から1000万ルーブリの賂いを受け取って随意契約を続けたというので逮捕された。仲間はもっといるらしく、ショイグも怪しい。

 英国防省の見るところでは、かつてのショイグの系統の将軍たちの汚職が、洗い直されようとしているようだ。

 ※プー之介とFSBは、ウクライナ戦争を切り上げるタイミングでショイグを逮捕させ、侵略が失敗したのはすべてこいつが露軍を腐敗させていたせいだった、ということにしたいのではないか?

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 Defense Express の2024-10-31記事「All Electronics From the russian Foam Drone Gerbera Featured in One Photo」。
   露軍がUAVと巡航ミサイルで空襲をしかけるとき、宇軍のAAアセットをまず浪費させてやるために、囮ドローン「ガルベラ」を放つ。
 この固定翼無人機は、じつに部品が少なくて、安上がりにできているので、研究する価値が大きい。

 まず機体の胴体は、発泡プラスチック外皮+合板骨組である。

 胴体の背部には「腹腔」があり、アビオニクスに必要な電子部品はそこにぜんぶ、入っている。

 たったふたつの回路基盤がある。

 ひとつの基盤には、スイスの「Ublox」社製の「NEO-M8N-0」という航法用チップが載っている。チップの製造は中共国内でされておて、通販単価は31ドル50セントだ。まとめ買いすれば、その数分の一で足りる。
 この基盤には、そのチップの他に、微少な加速度計やジャイロも載っている。

 2枚目のボードは、〔アクチュエーター用の〕電力の昇圧コンバーターのようだ。中心チップは「XL6009E1」。このボード全部でもコストは「数十ドル」というところだろう。

 さらに、4Gモデムと、ウクライナ国内の携帯電話網に対応するSIMカード。

 これら電装系ぜんぶひっくるめても、搭載の中国製ガソリン2サイクル・2気筒水平対向エンジン「RCGF STINGER 30CC」1基(アリババ通販で265ドル7セント)より安くおさまっているはずだ。

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 Defense Express の2024-10-31記事「Ukraine Poised to Break Drone Production Record in 2024?2025: 1.8 million UAVs Contracted」。
   ウクライナ国防省から、統計数値の発表あり。
 2024年の年頭から10月31日までのあいだ、ウクライナは、128万機の無人機を国内で製造した。
 さらに年末までに、36万6940機の無人機を、軍に追加納入するであろう。

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 The Maritime Executive の2024-10-30記事「China is Building a New Mini-Carrier at a Civilian Shipyard」。
   COMEC造船所を撮影した衛星写真。
 どうやら中共は「ミニ空母」の量産に入ったらしい。650フィート×130フィートの「フラットデッキ」船。

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 Defense Express の2024-10-31記事「russian Occupiers Return to Old Assault Tactics Using Motorcycles and Quad Bikes」。
    露軍が、最前線への物資補給に、自動2輪車、4輪ATV、4輪バギーを多用しているのは、こうした輸送手段を本格的なトラックにしたところで、今日のドローン脅威下では、「復路」に生き残ることができないから。常に、片道特攻補給手段となる運命なのである。
 だったら、安いほど良い。それで、オートバイが復活しているのだ。

 最前線まで物資を補給しおえたそれらの軽快車両は、そこで乗り捨てられる。宇軍のドローンに見つかり次第、灰にされる運命なので。それは時間の問題なのだ。

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 ウィキペディアの「Shield AI」の項目。
 WSJのトピック記事が読めないのでその代わりに。

   サンディエゴに本社がある「シールドAI」社の無人機「Nova」は、米軍が公式に採用した初のAI駆動式ドローンである。

 シールドAI社は、2015年に、元ネイヴィシールズの将校(姓はシナ系)によって創立された。
 彼はアフガニスタンに派兵されていたとき、建物内の敵を偵察することができなかったために痛い目を見たので、そのときから、無人機メーカーが成長株になると信じていた。

 2022年にはUAEにも支店を開設。その長は、元シールズの准将。

 Nova は、クォッドコプターだが、全自動で未知の建物の内部をマッピングしてきてくれる。リモコンの必要がない。GPSにも依存しない。
 もちろん、センサーの中軸はLidar。

 2021年には「Nova 2」をリリースした。

 次。
 Svetlana Shcherbak 記者による2024-10-31記事「Ukraine Tests High-Precision Munitions for Drones That Can Be Dropped from an Altitude of 1 km: A Significant Leap in Effectiveness」。
   ウクライナ軍の技術開発部門は今、6軸の大型マルチコプターから、複数の爆弾を精密に次々と投下する技術を完成しつつある。高度1000mから投下して、落下した小型爆弾が、標的に正確に当たるという。爆弾が、自律誘導されるのかどうかは不明だが、とにかくその高度でも精密に当たるようになったという。

 高度が1000mあれば、敵の塹壕陣地内にあるECMアンテナからの距離が十分なので、妨害の電界強度は弱まる。だからドローンは悠々と照準を付けられる。1000mだと小火器で狙撃してもまず当たりはしない。



南北戦争英雄伝-分断のアメリカを戦った男たち (中公新書ラクレ, 825)


《カミカゼ》を学び直す――長射程の対艦UAVは、どのようなコンセプトでなければいけないか?

 並木書房さんから強烈な力の入ったハードカバーの新刊が出た。ロビン・リエリー氏著『日米資料による 特攻作戦全史』。
 このジャンルの集大成的決定版資料ではないかと思われるゆえ、いずれふさわしい方々が本格的な書評・註解をなさるに違いない(昨年の『米軍から見た沖縄特攻作戦』との違いも含めて)。

 小生は、速読の結果、来たる対支防衛戦――おそらくは同時に台湾有事でもある――に対処すべき《日本版レプリケーター》の戦果を左右するかもしれぬ重要ポイントを、本書のおかげで改めて整理し得ました。

 卒爾ながら、それを列挙しておきます。

 ◇九三中練のような、木骨羽布張りの旧型練習機は、レーダー被探知距離が6km台と短かっただけでなく、AA砲弾のVT信管が作動しないで通過してくれるので、165km/時の低速しか出せなかったのにも拘わらず、しばしば被撃墜を免れて、小型艦の回避機動にも能く追躡し、著功を挙げている。たとえばDDの『カラハン』をみごと撃沈。

 ◇いやしくも可動するエンジンならば何でも取り付けて送り出せるように考えた中島キ115「剣」のコンセプトは、今日のレプリケーター特攻機にも使えるはず。離陸後投棄される降着装置や、突入寸前に翼面積を最小にして着速を増大させる工夫なども。

 ◇濃密な米海軍の防空網を突破して艦艇への突入を成功させるための最善の分散法は、とにかく「多方向」からアプローチするようにすること。

 ◇艦艇からのAAが弱くなるアプローチ方位は、艦尾方向だということは、日米両軍でよく理解していた。

 ◇当時のAAの機械的限界のため、艦艇の真上をウロウロし続け、まっすぐ降下してくる日本機は、CAPが追い払わないかぎり、対処できなかった。たとえば40ミリ機関砲は給弾が人力だが、砲身が90度上を向いていると、給弾が無理。

 ◇艦艇側では、雨で視程が不良の夜が、最もくつろいでいられた。ぎゃくに月明の夜は、最悪だった。カミカゼ側としては、雲隠れを利用しやすい雨天の昼間がいちばんありがたかった。

 ◇AAのタマに曳光弾を混ぜすぎると、カミカゼはその曳跟軌跡を辿ることによって敵艦の位置をすばやく見定めてしまう。僚艦のAA射手も、派手な曳光弾の行き先にばかり注意が向いてしまう。

 ◇航空エンジンは製造工場において15時間もの回転試験が必要だが、1944以降、そのために必要な燃料が日本国内で涸渇した。

 ◇陸軍の「マルレ」(韜晦呼称「連絡艇」の略号)は、フィリピン戦が初陣だが、海軍の「震洋」以上に大活躍している。ただし、爆雷投下後、敵艦から離れていく段階で、多くが火器の良いマトになった。

 ◇「震洋」は、メインの起爆システムが電気式であったため、迷走電流などで、海辺のトンネル倉庫内でよく自爆事故を起こした。後知恵はこうだ。メインの衝突起爆はメカニカル雷管とし、サブの自爆手段として電気もしくはケミカルバルブを備えておくべきであった。

 ◇「回天」の起爆機構は、メインが慣性衝突信管で、サブが、搭乗員が手動で作動させる電気信管。

 ◇「回天」は、針路を定めるときに深さ1mから潜望鏡を上げたが、そのあとは5mまで潜り、潜望鏡無しで衝突する。

 ◇サイパンの日本軍守備隊は、アルミの航空機用増槽を「ミジェットサブ」に改造した。実物写真あり。

 ◇カミカゼは、遅くとも10月26日には、敵艦へ一直線ダイブする途中ずっと、機銃掃射をし続けている。以後、それは常套行動となり、珍しくない。

 ◇リバティ船よりさらに大型の「ヴィクトリー船」という戦時標準型輸送艦を米軍は44年以降、534隻建造した。全長139m、15ノット。(ちなみにこの前ご紹介した最新の「HIGH BULK 40E」型貨物船は183mで13.6ノット。)

 ◇カミカゼ攻撃の矢面に立ったのは、LCTやLSMのような、艦名が数字でしか表されない、無名の輸送艇だった。こうした船艇が、ガソリンや弾薬を手分けして補給していた。

 ◇遅くとも12月30日には、カミカゼ特攻機は、艦艇に命中する寸前のタイミングで、吊下している爆弾をリリースする小技を採用していた。これにより爆弾にはブレーキがかからずに、鋼鈑デッキを何層も貫徹できる。この分離衝突方式はとても効果的であった。今日の対艦攻撃用の自爆型UAVも、衝突コースの最終段階で兵装を分離するのがよいかもしれない。それで敵艦のAA用レーダーに負荷をかける効果もあるはずだろう。

 ◇遅くとも45年1月8日のパラオ諸島以降、「遊泳特攻」戦法が、機会のあるかぎり採用されていた。伏龍のような本格的なスーツを着用せぬ泳者によるもの。

 ◇LSTの舷側の真下までやってきた「マルレ」をLSTの自動火器は射撃できない。俯角に制約があるので。「マルレ」が逃げて離れて行く段階で、ようやく、射撃できるようになる。後知恵。マルレは「煙幕」を張りながらUターン避退できるようにしておいたら、合理的だっただろう。

 ◇救命胴衣は、紐を結ぶ方式ではいけない。被弾船の乗員は手に大火傷をしていることがあるので。

 ◇遅くも45年1月21日には、日本機は、帰投する米機の後ろからゆっくりと追躡することによって、敵艦のレーダーエコーの上で、あたかも米機であるかのようにみせかけるという、巧みな欺騙アプローチ術を会得している。

 ◇護衛空母『ビスマーク・シー』の教訓。下層甲板に格納する飛行機からは、めんどうでも必ずガソリンを抜いておかないと、それが被弾を致命傷にまで拡大してしまう。

 ◇回天よりも「マルレ」の方が活躍している。桜花よりも、練習機や九七戦ベースの低速特攻機の方が多大の戦果を挙げている。これらはそっくり、「レプリケーター」の「仕様」にかんして、よく考えるべき教訓だ。

 ◇新田原が米機から空襲されそうになると、所在機は、朝鮮半島の群山飛行場まで一時疎開した。

 ◇駆逐艦『ゼラーズ』の戦訓総括。同時2機のカミカゼは、撃退できる。しかし同時3機となると、1機はかならず透過して来る。

 ◇ヴィクトリー船のキングポスト(自前クレーンの主塔)は、カミカゼ機が命中しても、倒壊したことなし。

 ◇5月4日以降、沖縄で、手漕ぎ船による肉薄攻撃が催行されている。武器は手榴弾。それに比して大発は、案外、特攻の道具としては顧みられていなかった感じ。問題は、音で気取られないことか。

 ◇4本煙突の旧式駆逐艦を輸送船に改造したものは、泊地でカミカゼに狙われると、とっさに身動きもかなわず、防禦するのはお手上げであった。こういう旧いアセットを最前線まで持ってきてはぜったいにいけない。

 ◇大本営は、米軍の九州上陸作戦は輸送艦艇1000隻でやって来ると正確に予想。その半数の500隻を撃沈するためには、特攻機が3000機必要である、と計算していた。

 ◇200kg以下の投下爆弾や爆雷の、アンダーキール炸裂が、水上艦を1発で廃船にできることは、沖縄戦のさなかに、複数の偶然の事例から、知見が得られた。今日の「クイックシンク」の淵源。

 次。
 ストラテジーペイジ の 2024-9-16記事。
   現況、最前線のウクライナ軍は、露軍占領エリア内に縦深20kmまで、自前のFPV自爆ドローンを送り込める。
 「有効射程」ならぬ「有効ドローン覆域」が20kmと表現できる。

 このため最前線の露軍将兵は、飲用水すら前送されてこなくなってしまって、困っている。

 クォッドコプター型のFPV自爆ドローンは、双方とも、1機のコストが500ドル。
 ただしこれはサーマルビデオを搭載していない型で、夜間作戦用にナイト・ヴィジョンをとりつければ、単価は2倍以上になる。

 1機が搭載する炸薬量は500グラムほどだ。

 当初イランはロシアに「シャヘド136」を1機20万ドルで売った。
 しかしウクライナのエンジニアは、巧妙に設計すれば、等しい性能の自爆固定翼ドローンを、2万ドル未満で生産できると考えている。

 ドローンは空軍の仕事も変えた。
 かつてはBDA=爆撃加害評価 が空軍にとっては大仕事だった。自軍機が投弾した後からふたたび写真偵察して、爆撃の効果がどれくらいあったのかを判定しないことには、次の手が決められなかった。

 2002年から米軍がアフガニスタンとイラクで始めた「テロとの戦い」ですら、WWII式のBDAが不可欠だった。

 それが、2022~のウクライナ戦争では一変したのである。ドローンが、BDAを即時にやってくれるから。

 それ以前であれば、確定的なBDAには、人間の地上偵察員を現場まで派遣する必要があった。
 しかしいまやドローンが、人の代わりに、建物の敷地内や、トンネル内をすら、覗き込んで調べてくれるのだ。

 次。
 Josh Luckenbaugh 記者による2024-9-16記事「Startup to Produce Energetic Materials With 3D Printers」。
   テキサス州にある「スーパーノヴァ」社はこのほど、3Dプリンターを使って、軍用レベルの新火薬を量産する道に目途をつけた。

 粘性がふつうの100倍もある樹脂を、立体リソグラフィーに使えるようにした。

 もともと3Dプリンターは、粘性の高い素材とは相性が悪い。会社は、その壁を乗り越えた。

 エネルギー・レベルの高い爆薬のような粉体に、光硬化性の結着媒体を混ぜる。かなりの粘性となるが、その混ぜ物には、いささかの気泡も生じさせない。これを3D出力して造型し、そのまま紫外線で硬化させる。

 たとえば、無弾頭の紙飛行機と見えても、じつは、機体素材全部が爆発物である、そのような造型。

 3Dプリンターを使えるということは、最前線でもこれを量産できるわけだ。

 また、最先端のロケット推進剤を、いきなり複雑巧妙な立体構造に、固化させてやることもできる。

 ミサイル弾頭も同様。特別な対戦車弾頭を、アイスクリーム工場のようにオートメーションで量産できる。革命だ。

 ※HEAT弾頭の正面のコーン状空隙は、ただ空気を入れておくのはスペースがもったいないから、たとえば酸化剤を不活性物質の樹脂バブルで封入したもの等を、充填してはいかんのだろうか? その特殊な樹脂を、特殊3Dプリンターで製造することができるのではないか?

 次。
 ストラテジーペイジ の2024-9-16記事。
   米国はウクライナに対して、米国から供与した特定の兵器を、どこに対して使ってはいけないか、事細かに注文している。じつはその注文のおおもとは、ロシアの国防大臣から米国の国防長官に対する直通通信によって、さいしょになされているものだ。米国政府は、ひたすらにそれを反映しているのである。

 ウクライナが国産している兵器を、ロシア領内の標的破壊のために使っても、米国政府はキーウに公式に苦情を言ってくることはない。

 そこでウクライナ側は、米国供与兵器と同等のレンジをもつ長距離自爆UAVを国内で製造して使用し、それと混ぜて米国供与品も、黙って勝手に使ってしまう。そして米国政府に対しては「国産兵器によって攻撃している。ロシアのクレームは、いつもの嘘だ」と回答する。米国政府はそれ以上、突っ込まない。

 ロシアがいつも嘘ばかり発表するものだから、この回答が有効なのである。
 現状、こんな感じとなっている。

 次。
 The Maritime Executive の2024-9-11記事「CNOOC Makes First Ultra-Deepwater Gas Discovery in South China Sea」。
   中共の国営エネルギー会社 CNOOC が、大深度の海底ボーリングにより、有望なガス田をブチ当てたと発表している。
 場所は、珠江の河口。
 シンセンから150浬南――すなわちEEZ内――にある、白雲と呼ばれる海盆。
 深さ4400mまで掘ったところ、650mのひろがりのあるガス溜まり〔ただし頁岩層?〕を見つけた、と。

 ちなみにこの会社のトップは汚職で追放されている。



日米史料による特攻作戦全史


知床半島の「世界自然遺産」と、欧米の「不法移民保護」に共通した偽善。

 どちらも、住民や中流以下の労働者を危険にさらしてかえりみず、政府は得たいのしれない団体から称賛をされながら同時に治安基盤を侵蝕され、奇麗事を語る金満階級はその私邸が厳重に警備されているおかげでまったく危険とは無縁に暮らし、作為した環境から私的な収益を上げ続けられる。

 住民を守れない政府は政府ではない。増やしてはいけない羆をこんなに増やした責任を環境省や文科省は取らねばならない。

 知床の「世界自然遺産」はただちにユネスコに返上し、北海道の羆は皆殺しにする法令を整備しよう。そして知床海岸には高さ600mの電波灯台を建設し、その電源にはアイソトープ電池を使おう。

 (2022年に「Booth」で世に問うた「鳥獣から人間を保護する法律が必要だ」の提言は、今日ますます有意義だと思います。)

 次。
 Boyko Nikolov 記者による2024-6-18 記事「Russian Su-34 NVO wings seem to overheat when launching a missile」。
   17日の速報で、露軍は「スホイ34」の最新型である「M型」もしくは「NVO」型を受領していることが確認された。
 何が変わっているかというと、チタン合金でコーティングした防炎板が、追加された。
 これが意味すること。これまでの型の「スホイ34」からある種のミサイルを発射すると、主翼の特定部分が危険なまでに熱せられていたのではないか?

 あるいは、主翼内にある電子部品が、これまでは、ミサイル発射時の昇熱で壊れることがあったのではないか。

 次。
 Clarence Oxford 記者による2024-6-13記事「Heat-Resistant Metal Alloys Under Study」。
   「デザイン・アロイ」と呼ばれる新合金の模索がせかいじゅうで続けられている。原子レベルで挙動が「見える」ようになってきたので。
 無銹鋼は、鋼鉄にクロムを混ぜることで表面に酸化膜ができ、それ以上の腐食を食い止める。

 この昔からあるステンレススチールをさらに改良強化することで、核融合炉やジェットエンジンの高熱にも耐えられる合金素材を得ようというのが、研究者の野心だ。

 米国の一チームが今、探索しているのは、コバルト、クロム、鉄、ニッケル、マンガンを等量ずつ混ぜた「カンター合金」を出発点としたもの。

 クロムとマンガンは、いちはやく酸化して皮膜となる。鉄とコバルトは膜の下に潜る。ここで、アルミが加えられていると、それ以上の腐食は食い止められ、高温にさらされたときの焼蝕にも強くなるという。

 新世代合金の発見には、これからAIが投入されるようになるだろう。ここでも、競争が始っている。

 ※2024-6-18『北海道新聞』によると、日本製鋼所の社長が2024-6-14日に、5年間の中期経営計画の説明会にて発表。これから5年間で室蘭の子会社に200億円設備投資する。新工場も建てる。防衛装備品や鍛鋼品の受注増を見込んでいる。……これって十五榴の砲弾ラインがとうぜんに含まれるよね? パトリアのMICVも室蘭で造るらしいし、このまま《日本のラインメタル》に大成してくれ!

 次。
 Defense Express の2024-6-18記事「Manufacturer Reveals Specifications of Mace UAS, the Ukrainian Counterpart to Lancet」。
    「ユーロサトリ2024」にウクライナ版ランセットが出展された。
 このロイタリングミュニションは、ウクライナ国内では「ブラヴァ」と称され、輸出営業では「メイス」と名乗っている。

 ※外見は、イスラエルの「HERO-400」とクリソツである。というかそもそもランセットがHERO初期型の図面流用だと私は強く疑う。

 会場の説明看板によれば、メイスのMTOWは11kg。弾頭重量は3.6kg。成形炸薬+サーモバリックの合体にしてある。
 時速100kmで50分、上空ロイタリングを続けられる。
 動力は電池である。
 翼丈1.6m、胴長1.5m。

 センサーは「マシン・ヴィジョン」と一体。昼夜、機能する。

 ※アル・ゴアの豪邸を空撮した写真がSNSに出回っていて、屋根に太陽電池パネルが1枚も見られない。象徴的すぎた。


BOOTH
鳥獣から人間を保護する法律が必要だ──「害獣退治庁(仮)」の組織および装備を提言する


ウズベキスタンは数年前までエネルギーの純輸出国だったが、人口が増えたため今や電力が大ピンチ。

 ※そんなうらやましい悩みに襲われている国もあるわけだ。

 次。
 Trevor Hunnicutt and Lananh Nguyen 記者による2024-6-9記事「Exclusive: G7 plans to warn small Chinese banks over Russia ties, sources say」。
   米財務省の幹部はくりかえし警告している。欧州の銀行であれ中共の銀行であれ、ロシアを助ける金融機関は、西側による経済制裁に直面するぞと。

 国家安全保障副補佐官のダリープ・シンが、シンクタンクのCNASで語った。G7は今週の会合で中共に照準を合わせていると。

 中共はますます「ロシアの戦争工場」となりつつある。
 いわば、非民主主義の兵器廠だ。
 その悪影響はウクライナ戦線にとどまらず、全欧州とアメリカ大陸にまで及ぶ。

 だが中共の巨大銀行に制裁をかけると敵は報復できる。そこでインサイダーたちはこのオプションを「核攻撃」と呼んでいる。実行をためらってしまうわけだ。

 オプションとしては、中共の中小銀行を狙い撃つことになるかもしれない。

 ※6月6日の「ガイアの夜明け」に出てきた「スイトルボディ」は、注意深く改良すれば熱傷患者の初期治療に使えるのではないかと直感した。その分野の関係者なら、そう考えた人が多いのではないか? 中共が東京を核攻撃して何十万人もの火傷患者がいちどに発生したとき、もはや救急車は、やってきてくれない。地域病院の機能も、パンクしている。あとは、生き残った地下シェルターの倉庫内にある道具だけで、何とかしなければならないはずだ。そこでは「真水」も、限られているはずだ。

 次。
 2024-6-8記事「IAI Unveils WIND DEMON Long-Range Air-to-Surface Cruise Missile」。
    IAI社が、新型の空対地ミサイルを発表した。「ウインド・デモン」と称する。プラットフォームとしては、ヘリコプターや警備艇でも可いそうだ。レンジは200km。

 基本は、射ち放し式である。ただし、途中で攻撃中断コマンドを送ることもできる。よって、ロイタリングミュニションとしての運用も可能。

 弾頭重量は20kg。
 飛翔高度はとても低い。
 光学シーカーでパッシヴに標的を探す他、レーザー反射点にセミアクティヴ誘導で突っ込むことも可能。
 念のためビデオ映像をプラットフォームへ送信し続ける。

 飛翔の中間部分では、速度を抑制する。
 ※さもないと光学センサーによる地形照合が至難になるからだろう。

 最後の突入ダッシュで再加速する。

 ※不思議なんだが、イスラエルの兵器メーカーは、戦争中に、どこで「実験」を続けてるんだ?

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 Defense Express の 2024-6-9記事「Ukraine Hit russia’s Latest Su-57 Aircraft for the First Time at Akhtubinsk Air Base」。
   6月8日、「Akhtubynsk」航空基地に駐機していた露軍の「スホイ57」×1機が爆破された。ウクライナ軍情報部が発表。

 民間の衛星写真でこれは事実だと確認ができる。

 スホイ57は、今次戦争では、空対地巡航ミサイル「Kh-59/69」のキャリアーとして作戦している。
 最新型で高額。よって機数も少ない(10機未満)。それが初めて全損となった。

 ※ブダノフの作戦だとすると、これは長距離無人機ではなく、潜入挺進隊員が小型ドローンを基地の外柵のすぐ外から放ったのか?

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 Wyatt Olson 記者による2024-6-8記事「US Army brings its premier training center to Philippines for first time」。
   米陸軍はこのほど、ハイテク訓練機材を用いた「歩兵大隊対抗」の実動演習を、初めてフィリピンのマグサイサイ基地に持ち込み、フィリピン陸軍と、陣地の攻防を手合わせした。

 実弾こそ発射しないが、当たったか外れたか、損害はどの程度か、デジタルでリアルタイムに判定され、モニターされ、すべて記録され、状況終了後の反省会に活かされる訓練システム。

 ハワイとアラスカには2021年からこの訓練設備環境がある。
 またその可搬型のセット「JPMRC-X」は、インドネシア軍とのガルーダシールド演習や、豪州軍とのタリズマンサブル演習に持ち込まれたことがある。

 ※「note」 = https://note.com/187326mg/ を視てくれている人は、ここ半月のうちに、すっかりベトナムのカーゴバイク通になったのではないかな? みんなで沼にハマろう!


ベトナム軍新兵に輸送自転車操法を教育している公式動画(ソースは https://www.youtube.com/watch?v=XumCPx9_jwM)から学ぶこと。

ベトナム軍の新型専用輸送自転車は2021年まで遡ると確認できたので「2022年型」の仮称は撤回します。(ソースはすべて Vietnam メディア)


オランダ空軍のF-35Aは、6月1日をもって、「B61-12」水爆をモスクワへ配達できる態勢を整えた。米空軍以外のF-35としては、初。

 かつてKLMの旅客機を撃墜された怨みのあるオランダ人は、いつでもロシアに報復することを躊躇しない。だから、迫力があるわけ。

 次。
 Defense Express の2024-6-3記事「How Much Does a Regular Modern Anti-Personnel Hand Grenade Cost Now?」
   このほどスペイン国防省は、最新型の手榴弾を4万2500個、発注し、その入札の上限額を公表している。
 同省は、納期1年で、最高550万ユーロまで出すとしていた。

 スペイン国内で手榴弾を永年製造しているメーカーはひとつしかない。サラゴサ市にある「Instalaza」社である。その手榴弾は「アルハムブラ D/O (M2)」という。

 要求仕様によれば、この対人用手榴弾は、総重量400グラム。
 樽形の容器の外皮はプラスチック製だが、そのプラスチック皮の中に整然と、径2㎜の鉄球が3500個、層状に封入されている。
 樽形の外皮には、この2㎜球の他には、金属が使われていない。したがって、重くて致死的な高速破片は物理的に生じないようにできている。そのかわり、半径10m内では濃密な対人毀害力を確実に発揮し、ほぼ必殺である。

 ※2㎜の鉄球をいかほど加速しようとも30m(=人力投擲限界)も飛散はしないだろうし、風向きのかんけいで万一飛んだとしても致命傷にはなるまい。したがって、歩兵部隊が突撃のきっかけを作為するための「攻撃用手榴弾」としては好適なわけである。投擲者が見計らった爆発タイミングに膚接して立ち上がり、そのまま突撃前進しても、こっちには破片は来ないと確信ができる。そういう寸法なのだ。しかしこれが、第二次大戦中の米軍型手榴弾(すなわち陸自の現有手榴弾)だと不規則に大きな破片が生じてしまい、それは50m先でも人に致命傷を与え得る速度と重量を持つ。5月30日に北富士演習場で投擲訓練に立ち会っていた陸自隊員が死亡した事故も、報道から想像をすると、爆発点よりも30m後方で、頭を壕から出して見ていたところに、おそらく数万分の1の確率でたまたま重い破片が1個飛来し、それが運わるく頚部動脈を傷つけた。陸幕はこの貴い犠牲を無にすることなく、西欧諸国軍が採用している新型の手榴弾に、すぐにきりかえろ! そして旧式手榴弾は、ウクライナへ送って無人機用の兵装に現地改造してもらうがよい。

 さてスペイン軍の新調手榴弾だが、計算すれば1発129.4ユーロ=138ドルだ。
 これは入札価格だから、納入契約ではまた違ってくるだろうが、そう大きく変わることもあるまい。

 「アルハムブラ」は信管に特長がある。フライオフレバー式のメカニカルフューズ(レバー解放後、4秒遅延)であると同時に、底部の穴に、電気発破のコードをつなげることもできるようになっている。
 つまり即興的にブービートラップなどへの転用も自在なわけ。

 充填炸薬量は104グラムである。

 ※ベトナム軍の「2022年型」自転車の、ダウンチューブから垂直に立ち上げてトップチューブを下支えしているようにみえる短いパイプチューブの側面に沿って、2個のボルト穴があいた「取付け金具」も熔接されているのだが、その目的がわかった。この自転車を、負傷兵後送用の「ストレッチャー」に仕立てるときに、T字形の金属支柱を増着しなければならないのだが、そのT字支柱の取付け用の螺子穴なのだ。詳しくは今日以降の「note」で解説するから、そっちを見ていてくれ。(画像検索を手伝っていただいている御方に、ここで感謝を申し上げます。)


兵頭二十八 note


《世界自転車デー》とやらに、ちりん、ちりん!

 6月1日の「note」で紹介した2022年型のベトナム軍用輸送自転車の「謎のプレート」は、「後輪ブレーキ」なのではないかと察した。
 すなわち、ノーマル状態で10度後傾している「檣状の押し棒」を、さらに後方へプラス10度、強く引いて傾きを増してやれば、その小プレートがタイヤ表面を圧し、制動がかかる仕組みなのであろう。

 (これはパーキングブレーキとしても重宝するかもしれぬ。)

 そうだとすると面白い想像ができる。
 サドルに腰掛けて急な坂道を下っているときに、じぶんの尻を後方に突き出すことによって、強力な後輪制動をかけてやれるわけだ。「尻ブレーキ」だ! (略して「尻ブレ」)。こいつは発明じゃないか?

 ふつうの乗用自転車にも、この機構を付け足したらいいんじゃないか? 咄嗟のブレーキングと前傾姿勢とはミスマッチでしょう?

 あと、ベトナムから雑貨を輸入している小商店は、どうしてこういう面白自転車を輸入しないんだ?

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 Juki Trinh 記者による2024-6-2記事「Vietnam and Cambodia Clash Over New Mekong Canal」。
  メコン河は、カンボジア領内から南ベトナムへ流れ下り、最終的に南支那海まで注いでいるのだが、昔から中共の手下であるカンボジアの政府が、その流路をベトナム国境の手前にて70度ばかり右へ向け変え、人工水路によってカンボジア領だけを通してタイランド湾に早々と吐出させてしまおうというトンデモ・プロジェクト。

 着工寸前であり、ベトナム政府は怒り狂っている。もちろん、水路の掘削工事は中共企業が実施し、その工費170億ドルは「一帯一路」計画の基金から北京が貸し与えるのだ。

 この新水路の河口には中共海軍のための軍港施設があり、それも拡充される予定。

 ※『北海道新聞』の2024-6-3号に、宗谷岬から襟裳岬まで、積雪期に、北海道の分水嶺をたどって670km踏破した山岳ガイドの人の講演内容が載っている。重要な数字を抜書きしておく。1日の移動距離は、調子がよくても20km。最難関の日高山脈では1日に8kmが限界。食料は1日3500キロカロリーを用意したが、それでも後半1ヵ月は空腹でたまらず、体重が10kg減った。出発は2月末、ゴールは4月29日だった(トータル64日間)。連日、8時間から10時間歩いた。背負った重さは45kg(ただしルート上に点々と食料を事前に置いた)――。ここから言えること。兵隊の行軍では、武器弾薬だけで13kgくらい担がねばならないから、どんな超人でも45kg-13kg=32kgのコメを出発点において担ぐのが、せいぜいだったのだ。

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 Ehren Wynder 記者による2024-5-31記事「Bezos Earth Fund awards $30M to N.C. State to research sustainable proteins」。
    ベゾス・アース・ファンドは、このたび、ノースカロライナ州立大学に3000万ドルを与えて、「サスティナブルな人造培養肉」の産業化研究を加速させる。

 ※世界一の金持ちが目を着けたのは、やはり、人工食料だった。

 次。
 Ben Wolfgang 記者による2024-4-18記事「Israel’s war against Hamas posts lower civilian-to-combatant death ratio than other urban battles」。
   米軍が2016年から2017年にかけてイラクのモスル市からISを叩き出したとき、シビリアンの住民が1万人、巻き添えで死んだ。IS戦闘員の死者はそれに対して4000人だった。

 この比率と比べると、イスラエル軍は「人道的」に作戦していることがおのずからあきらかだ。この時点でイスラエル軍はハマスを1万3000人始末したという。かたわら、ガザの民間人の死者は2万人という。

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 APの2024-6-3記事「German police officer dies of wounds suffered in knife attack」。
   金曜日、29歳のドイツ人警察官が、抜き身の中型ナイフを白昼堂々とふりかざした25歳のアフガニスタンからの「移民」の男によって首の後ろを複数回刺されていたが、日曜日に病院で死亡した。マンハイム中央広場にて、この移民は他にも5人に切りつけて負傷させている。

 この犯人は他の警察官の銃によって倒され、確保されている。まだ生きている模様。訊問には答えられないコンディション。

 金曜日に広場では、イスラム移民が増えすぎてヨーロッパ社会の平和にとって有害な政治的存在感をますます強めていると警鐘を鳴らすデモが行われていた。

 ※あたりまえの話だがドイツの一般人の憤懣は昂じている。しかしそのあたりまえの意見を公言すると、腑抜けたマスメディアによって「極右」のレッテルを貼られる。だから誰も口にはしない。私は予言するが、ドイツはむしろ若年層からの要望によって、徴兵制を復活させるだろうと思う。「三十年戦争」後の「近代」のルールに背を向ける異教徒らの数の横暴によってここまで社会秩序が挑戦されてしまうと、そこから社会が自衛反撃する手段はなまなかなものでは焼け石に水なので、残された有力オプションとして若者が自発的に徴兵制を選ぶようになるだろう。北欧と一部東欧では、その流れは先行している。ポスト冷戦の《欧州流偽善》が、今日の自業自得の事態を招いた。人がもし知性ある生き物ならば、他者の大失敗を見て、みずからはその破滅を避けられる筈。日本人は欧州人の猿真似をしなかったおかげで今日の平和を築き得たのである。その幸運を噛み締められる者は、さらに歴史を学べ。

 次。
 2024-6-2記事「Protected motorcycle. Source: btvt2019」。
   ウクライナ戦線の露軍が、現地改造の「サイドカー」を持ち出すのは今に始まったことではないが、その側車とオートバイ本体をまとめてすっぽり「コープケージ」で囲ったモノが、ついに登場した。

 SNSの「テレグラム」に、その面白い写真が出ている。

 自動二輪車の車格は、みたところ、せいぜい90cc.~200cc.といったところ。記事によると、このオートバイには150kgまでのモノが載せられるのだという。

 ※戦場でサイドカーを使うときに何が苦労するのかを知りたい人は、「大阪市立大学大学院経済学研究科」が2014年にまとめているディスカッションペーパー(PDFで公開されています)「日本内燃機“くろがね”軍用車両史」を一読することをおススメします。図版満載で、わたしゃ読み通すだけでも6日くらいも要したわ。読後感として、もしバギー型の4×4が手に入るのなら、わざわざサイドカー(デフなしの3×2)など製造・調達する価値などない――と説得されます。にもかかわらず、私は、フィリピン軍が「サイドカー型タクシー」(3×1です)を対支有事のさいフル活用する研究を今からすすめておくべきだ、との自説を、維持いたします。理由は、すでに現地で大量生産されていて、重宝もされているモノならば、それは有事にも役に立つ蓋然性があるから。


兵頭二十八 note


自転車で勝てた戦争があった


ランニング ワッショイ の罰

 Andrew Cockburn 記者による2024-5-29記事「Ukraine War rips veil off of US weapons superiority」。
    米国製の高額な兵器がウクライナでまったく調子が出ていないのは、米軍には「適切なテスト」をするという文化が無いからである。リアルな試験をやる予算を惜しんで他に使うように、制度が誘導しているともいえる。それは結局、高くつくのだが……。

 「スイッチブレード300」は少しも「ゲームチェンジャー」ではなかった。M-1戦車、155㎜エクスカリバー誘導砲弾も、まるでダメだと分かった。

 ウクライナ兵は1機6万ドルの「スイッチブレード300」をすばやく見限って倉庫内に放置し、通販で1機700ドルの中国製ドローンを取り寄せて、そっちに爆装して使っている。役にも立たぬ兵器に命を預ける義理はないのだ。

 野戦重榴弾砲のM777はラフな戦場で使うにはデリケート過ぎて、頻繁にポーランドの工廠まで後送してリペアしなくてはならない。さらにまずいのが砲弾不足。クリントン政権が、米本土の分散的な砲弾工場を1工場に集約させる流れを作った。戦時の「生産弾撥性」「リダンダンシー保険」をなくしてしまったのだ。いまではペンシルベニア州にGD社が運営する古びた工場に155ミリ砲弾のほとんどを発注しなければならない。それが実戦の実需には応じられないことがはしなくもバレた。

 ペトリオットは敵の弾道弾を迎撃するとたちまちタマ切れするから、弾道弾がキーウに降ってきても迎撃しない。それで乞食坊が不満タラタラだ。

 HIMARSは、燃弾の分散秘匿を心掛けないマヌケが相手のときは役に立っている。しかしそれらマヌケな敵は戦場淘汰が進み、今、生き残っている狡猾な敵に対しては、HIMARSもパッとしない。

 4月に調達整備担当国防次官のウィリアム・ラプランテがCSISのカンファレンスで語った。GPSに依存しないで飛べると威張っていた「Skydio」のマルチコプターが露軍のジャミングを受けて逸走したと。

 露軍が出てきているハルキウ方面の前線では、築城工事に投じられていたはずの数億フリヴニャの資金が中抜きされており、防備土工が皆無。ハルキウ市に巣食う腐敗ウクライナ人どもが、平然と領土を売り渡しているのである。

 ハルキウ市の防衛築城請負い企業体に渡された、米ドルにして1億7300万ドルが、使途不明。

 次。
 ストラテジーペイジ の2024-6-1記事。
   DARPAが開発したUUVの「マンタ・レイ」。
 全重30トン、ペイロード10トンのバケモノである。

 全重18mで、幅6m、高さ3m。
 リチウムイオン電池にフル充電すると、3000kmも潜航してくれる。水中最高速力は18km/時。

 だいたい連続6週間、活動できる。
 西太平洋の島嶼に展開した味方特殊部隊のために、こっそりと補給品を届けることができる。

 「マンタ・レイ」を分解すると、舶用コンテナの中に完全に収納できる。その姿で世界各地に急送できる。


兵頭二十八 note
ベトナム式輸送自転車の細部がわかる写真をさらに拾い集めますた(ソースはすべてベトナムのメディア。画像検索すると、たぐれる)


自転車で勝てた戦争があった


全国の書店員さんは『月刊正論』7月号の新刊紹介記事をコピーして『自転車で勝てた戦争があった』のPOPに使おう!

 ベトナムから発信されているユーチューブに、インドシナ戦争中の輸送自転車の動画集があります。また、先日のパレードの準備風景もあって、いずれも貴重。
https://www.youtube.com/watch?v=VpFIa43oIJk

 さらに、先日noteで紹介したスチルでは不明であった「後輪用のブレーキ・レバー」を、右手で掴む「縦棒」に後付けできるようになったこともわかる、貴重な動画も。2024年の映像。
https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=uGNtumL8mBI

 そしてもっとすばらしい動画。2022年に新コロ対策として食料配給をすることになったベトナム政府が、軍の輸送自転車部隊を動員しているのだが、まさにベトナム・スペシャルの専用自転車のディテールが分かる。百聞は一見に如かず。
https://www.youtube.com/watch?v=xz1jnV_XeoU

 数日以内に、他の未見スチル写真についてもコメントできると思いますので、おまちください。あいにく不敏にしてベトナム語は読めませんが、テキストの数字部分を眺めるに、どうも2022年時点の最新製品では1台に300kgまで積載できるようだ(280という数字もある)。しかも荷物を運ばないときは、普通の乗用自転車にもなる。こんなユニークな工業製品をどうしてベトナムは輸出しようとしないんだ?

 次。
 2024-5記事「Aeronautics Launches the Hybrid Octoper: Multi-Rotor UAS」。
  アエロノーティクス社が、エンジンで発電してモーターを回す重量級の軍用マルチコプターを完成した。
 ローターは4軸に串状に配列されているので、オクトコプターに分類される。

 メーカーは「ハイブリッド・オクトパー」と称す。
 内燃エンジンなので4時間も滞空できる。

 内燃機関は連続して400ワットを発電する。電池容量は10分間の飛行をそれだけでまかなえる。
 10分あれば、安全な平地を探して緊急着陸することもできるだろう。

 GNSSが使えない環境でも運用可能だという。

 次。
 Rebecca Grant 記者による2024-記事「Bye Bye Bad Chinese Routers――House Committee Bipartisan Move Against TP-Link」。
    「ルーター法」と俗称される、中共製の安価なルーターをスパイ端末と看做して米国内の官公署等から追放する連邦法が、共和・民主の超党派の意思として成立する。下院の「エネルギー・商業 小委員会」で43対ゼロで可決。

 バッドニューズもある。中共の「TP-Link」社製のチープなルーターは、すでにかなりの数量が、NASAやペンタゴン内にまで設置されてしまっているのだ。

 2024年1月、ヨーロッパ内で活動する、中共をバックとするハッカー集団が、「TP-Link」製ルーターの脆弱性を利用してサイバー・エスピオナージに精を出していた。

 「ルーター法」は、米商務省をして、危険な外国製ルーターはどれか、調べさせる。疑惑のルーターが浮上すれば、2019年の「安全・あんしん通信ネットワーク法」に基づいて、連邦通信委員会が、その製品の市販を禁ずることができる。その上に「ルーター法」は、既設の当該商品の撤去までも可能にする。

 次。
 Joe Saballa 記者による2024-5-28記事「China, Russia Trying to Infiltrate US Military Bases: Navy Admiral」。
    米海軍の聯合艦隊司令長官ダリル・コードル提督がFoxニュースに対していわく。中共とロシアは、米国領土内の米軍基地内への「立ち入らせ工作活動」に熱心だと。
 海軍基地だけでも、毎週、2人以上が、MPによってつまみ出されていると。

 こやつらは口を揃えて「私はただの学生」「私はただのマニア」などと無害性を強調するのが通例。まったく信用に値しない。

 釈放する前に、しっかりと、バイオメトリクスは採取させて貰う。

 コードルによると、2023年の1年間で、シナ人だけでも100名以上が、米海軍基地内に立ち入って嗅ぎ回っているところを押さえられた。

 フロリダのロケット射場の近くにスクーバダイビングで肉薄し、捕縛されたシナ人「観光客」もいた。
 また数人が、ニューメキシコのミサイル射場に潜入していたところをつかまっている。

 コードルいわく。過去3年で、中共から合衆国への移民は8000%も急増している。これはマズいだろう、と。

 密入国しようとして国境でとっつかまっているシナ人も、2021年には342人だったのが、今年はもう2万4125人である。

 次。
 Sofiia Syngaivska 記者による2024-5-31記事「The russian Ground Forces Received the Upgraded 2B14 82 mm Light Mortars」。
    ロシア国営の兵器メーカー「ロステク」社が、射程よりも軽量化(可搬性)を重視して改修した、旧型の82ミリ迫撃砲「2B14」を、露軍部隊に納品し始めた。

 「2B14」はソ連時代から今日まで製造が続いているのだという。部隊の倉庫にはストックも大量にある。

 メーカーによると、最新バッチは、金属素材が見直されて軽くなった。
 ベースプレートは、全くの再設計になっている。地面への密着性を増し、ヨリ安定させたという。


兵頭二十八 note
5月5日は日本では「自転車の日」。6月3日は「世界自転車デー」だそうです。


自転車で勝てた戦争があった


月刊正論 2024年 07月号 [雑誌]


トルコ航空が、カブール空港との定期便を再開した。過去3年近く、中断していたが。

 The Maritime Executive の2024-5-20記事「China May Start Detaining Philippine Nationals in Philippine Waters」。
   先週、北京はアナウンスした。「海警」に権限を与える。誰であれ、中共が支配権を主張する海面に入った外国人を逮捕して60日間、収獄できる権限を。もちろん、裁判無しに、である。

 この権限は、6月中に、執行可能となる。

 次。
 Mark B. Schneider 記者による2024-5-20記事「FAS’s Report on Russian Nuclear Weapons: Flaws and Fallacies」。
  引用できる資料として定評あるFASが、ロシア軍の最新の核戦力(数量)について詳細に推定してくれている。
 愚生は本日、多忙ゆえ、抄訳もせぬ。

 タイトルだけ掲げておくから、必要なときは、あとでここを参照汁。

 次。
 Evan Loomis 記者による2024-5-21記事「The Urgent Need for Security Clearance Reform」。
    米国政府のセキュリティ・クリアランスは、いま、四レベルに分けられている。

 すなわち、
 「トップ・シークレット/センシティヴ・コンパートメンテド・インフォメーション(TS/SCI)」
 「トップ・シークレット(TS)」
 「シークレット(S)」
 「コンフィデンシャル(C)」
 である。

 こうしたクリアランスが個人に与えられる前に、その個人は数ヵ月から数年も背景を調査されねばならない。
 冷戦時代はそれでよかったが、今は、そこが政府を困らせる。
 今日の技術的な進歩は、数週間とか数日の単位で急進展するからだ。

 たとえばAIで革命的な技術を実装し市販可能にしたスタートアップが登場したとする。
 しかし米政府の最高幹部は、その創業者兼技術部長をただちにワシントンDCに呼んで、ある敵国のさしせまった工作から米国を防衛するためにそのシステムを利用させてくれ、などと相談することはできない。その創業者には、セキュリティ・クリアランスが与えられていないからだ。そいつの身体検査だけでも1年もかかる。かたや、最先端技術の相互進化の方は、1ヵ月も待っていてはくれない。どんどん政府=国防総省が、時代遅れになってしまう。

 私企業の幹部の方でも、いったいじぶんたちの政府がいま、どんな困難に直面して、いかなる課題を解決したくて困っているのか、それを知ることができないまま、いたずらに時間が過ぎる。


兵頭二十八 note

やはりベトナム軍は「押して歩く」専用の自転車を、今日なお 整備し続けているぞ!


自転車で勝てた戦争があった


全国の書店員の皆さん! 本日の『読売新聞』の広告を切り抜いてPOP化し、『自転車で勝てた戦争があった』を販促しよう!

 Cynthia McFadden, Kevin Monahan and Alexandra Chaidez 記者による2024-5-18記事「Ex-military surgeons embrace new mission: stop Americans from bleeding to death」。
   軍医のジョン・ホルコムは1993のモガディシュでこんな体験学習をした。ブラックホークが撃墜されて大量出血の負傷兵が多数発生。しかしソマリアにはまともな病院などなかった。軍医長がこう言った。「歩く血液銀行の準備をせよ」。

 衛生班の全員が横になり、腕から血を抜いて、即時にその場の負傷兵たちに輸血。
 それが終ると、次の繃帯所まで皆で歩いて移動する。だから「ウォーキングブラッドバンク」なのだ。

 出血外傷治療では、いかにすみやかに輸血してやれるかが、救命率を左右するのである。

 今日、ホルコムは、元軍医・衛生兵らの有志でつくっているグループに加わっている。このグループは、怪我人が病院へ送られる途次にも速やかに緊急輸血できる体制の整備を提言している。なかなか主張はうけいれられないので「全血マフィア」と自嘲しているところだ。

 彼らの主張。そもそも救急車やレスキュー・ヘリコプターの中に輸血用の血液が置いてないというのが、よくない。それがあれば全米で毎年数万人が救命されるはずである、と。

 しかしこの実現には数々の障壁がたちはだかっている。
 まず、カネ。
 病院到着前に救急車の中で輸血した分について、保険会社は、それは保険の適用外だと言うにきまっている。
 いま米国内の外科病院では、全血輸血をするところは50%しかない。あとは成分輸血。
 しかし、元軍医たちにいわせると、外傷輸血は全血がいちばん良い。

 失血のため真っ白になって担ぎ込まれてきた患者に全血を輸血すると、あなたの目の前で、みるみる生命の色が蘇って来る様が、観察できますよ――とホルコム。

 ちなみに『NATOエマージェンシー戦時手術ハンドブック』の共著者には、ホルコムが加わっている。

 次。
 ストラテジーペイジの2024-5-18記事。
    ロシアの極東部には、住民は830万人いる。ロシア極東部の面積は米本土48州に近似するが、米本土48州には3億1000万人が暮らしている。いかにシベリアの人口扶養力が低いかが分かるだろう。

 ロシア人の貧困率は2022以前は12%だったが、今は20%になっている。

 ロシアは軍用資材も民用資材も、デュアルユース需品も、すっかり、中共1国に依存するようになった。他に同盟国がないので、それ以外に道の選択は無いのだ。
 その中共に対して支払う代金は、間もなく「土地」を切り売りするしかなくなるはずである。

 ※ロシアは占領したマリウポリからベルディヤンスクへ、新しい鉄道支線を敷設した。これと同じことをなぜウクライナ側ではできない? 首都で遊んでいる若い奴ら、あれは、何なんだ?



自転車で勝てた戦争があった