1945年製の艦載高角機銃を銃塔ごとAPC上に無理やり載せた改造車を露軍が前線へ投入しつつある。

 Courtney Kube and Carol E. Lee 記者による2023-3-5記事「Two Ukrainian pilots are in the U.S. for training assessment on attack aircraft, including F-16s」。
   いま、ウクライナの空軍パイロット2名がアリゾナ州のツーソンに派遣されていて、彼らがF-16の操縦をマスターするのに何ヵ月かかるものなのかの実験台になっているという。

 この実験台の人数はこれからさらに増やされてデータを取られる。とりあえず追加で10人。

 実験は主にシミュレーターを活用し、実機は使わない。

 ※データ取りが目的なので、シミュレーターは「A-10」でも試すことであろう。その調子が意外によければ、まず「A-10」をくれてやろうという話になるかもしれない。殊に年寄りパイロットをわざわざF-16にコンバートさせても投資効率は悪く、諸資源の無駄となってしまうはずだ。A-10をあてがうのがちょうどいいかもしれない。

 通常、F-16を飛ばせるようになるまでに18ヵ月かかる。米政府に言わせると、ウクライナはあと18ヵ月も戦争したいのかよ、という話だ。

 しかし空軍の部内者の一部などがマスコミに、素質のあるパイロットなら半年とか9ヵ月でコンバート可能だと証言する。そうなると庶民ウケを狙う連邦議員どもが「早くF-16をくれてやれ」とか騒ぐから、米政府としては、とにかく実データを揃えて、科学的に政策を説明できるようにしたいわけ。

 将来、ウクライナ人のパイロットを特訓するとしても、それは30人くらいだろう。
 30人で戦争を終らせられるもんじゃない。

 下院軍事委員会のコリン・カールの言うところでは、ウクライナ空軍は最終的に50機から80機のF-16によって、今のスホイやミグを更新する必要があるだろう、と。

 しかしこれから新造するF-16を数十機も揃えるのには6年かかる。中古機を渡すなら2年でできる。
 そして米国が負担するその費用は110億ドルになるだろう。

 次。
 Mike Hanlon 記者による2009-3-2記事「Mortar Stowage Kit brings automation to the battlefield」。
   ※古い記事です。

 120ミリ重迫は、砲身と床板と2脚がコミで重さが300ポンドもあるけれども、これを最初から一体の形で、ミニトレーラーから地面に下ろしてくれるシステム。陣地を撤収するときにはまた、地面からトレーラーに掬い上げてくれる。操砲員は、アームを動かすボタンを押すだけ。アームは油圧と電力で動くので、人手がかからない。

 これを使うと、重迫の陣地進入や撤収が、たったの3分で済んでしまう。
 つまり、HMMWV+ミニトレーラーで、120迫撃砲が事実上、「自走砲化」するのである。班員の人数も減らせる、大発明だ。

 3分で撤収ができてしまうとなると、敵軍は、対迫レーダーを持っていたとしても、この重迫の座標に対して「撃ち返し」をすることは不可能である。

 BAEシステムズ社が、米陸軍から588個のM326を受注したのが、2007年9月のこと。総額は2050億ドルくらいではないかと見られる。本格量産は2009-6からスタートさせるという。

 ※写真を見ると、ミニトレーラーに弾薬も積まれている。だから万一、弾薬に被弾して殉爆しても、HMMWVは無事だ。

 次。
 Defense Express の2023-3-5記事「Ukrainian Warrriors Use the American M326 MSK Super-Trailer, Which Turns the Mortar Into a Self-Propelled Mortar」。
    120ミリ迫撃砲は、欧米製の最新のものでも150kgのシステム重量。旧ソ連製だと200kgを越える。

 2007年にBEA社が最初の受注をしたとき、この自動布置キットの値段は、1式が2万3600ドルであったという。安い。

 米陸軍の空挺部隊も愛用している。

 ※州兵が装備している写真がネットでヒットするので、州兵の現用兵器をウクライナに供与してやっているのかもしれない。さてそうなると気になるのは、かつてアフガンで大活躍していた、GPS誘導の120ミリ迫撃砲弾だ。まだ相当の数量が米軍の国内外の弾薬庫にストックされているはずだ。それをいよいよ放出するのではないか?

 次。
 2023-3-4記事「Sputnik V vaccine creator strangled to death in his Moscow apartment」。
   ロシア版の新コロワクチンである「スプートニクV」を開発したアンドレイ・ボティコフ(48)が、扼殺死体で発見された。モスクワ市内の自宅で木曜日に。

 1人の侵入者がベルトを使って殺したとの情況証拠/証言あり。
 警察は29歳の容疑者を拘束している。風俗商売に関して刑務所に10年いた前科者だという。

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 2023-3-3記事「Hurricane Airprox operator fined £3000」。
   イギリス人マーク・バギュリーは、2022-7にRAFが「ハリケーン」戦闘機の実物をデモフライトさせたイベントを撮影すべくドローンを近くに飛ばし、パイロットと観衆に重大な危険を生じさせたというので、このほど裁判所から、罰金3000ポンドを課されたうえ、禁錮6ヵ月、執行猶予1年を言い渡された。100時間の勤労奉仕も義務付けられており、来年5月までは、勝手に旅行することは許されない。

 ※こういう確信犯的な阿呆は、ウクライナ戦線で「ご奉公」させた方が宜しかろう。

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 Gary Mortimer 記者による2023-3-5記事「DJI stops selling Aeroscope」。
    DJI社がとつぜん、「Aeroscope」の販売を止めると決定した。これは、半径10km以内を飛んでいるDJI製マルチコプターの位置だけでなく、その操縦者の位置までも把握ができてしまう、有料のソフトウェアである。

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 Svetlana Shkolnikova 記者による2023-3-3記事「US to send bridge-launching vehicles for tank deployments to Ukraine in new $400M aid package」。
    米国から追加でウクライナに送られる装備の中に、「M60 AVLB」が含まれていることが分かった。

 装甲架橋車で、M60戦車のシャシの上に、尺取虫式に折りたたんだカンチレバー橋桁を背負わせたもの。油圧で展張できる。その上をいちばん重いMBTが走っても折れない。

 ※この公表はショルツ訪米の直後なので、こういう意味なのだろう。レオ2ばかりあったって、宇兵がそれを野砲的に運用するのではいつまでも戦争のラチがあかない。機甲戦力は機甲戦力としてフル活用させる。それには架橋戦車も必要なのでとりあえず米軍手持ちの古いAVLBを与える。これにより、レオ2だけでなく、重すぎて浮航ができないM2ブラドリーも、いたるところで露軍の背後へ回り込ませられるようになる。M1エイブラムズは来年の寄贈になるが、ブラドリーはすでに続々と搬入されているから、喫緊の支援車両であった。またこの車体とエンジンの整備にウクライナ兵が慣れてくれると、将来、台湾などに大量にある中古のM60戦車をウクライナへ増派できるようにもなるだろう。その穴は新造のM1を売りつけて埋めればいいのだ。なお、架橋戦車は川を越すだけが能ではない。露軍はクリミア半島の付け根に「マジノ線」もどきを工事中だが、その数線の対戦車壕を任意の数箇所で超壕させねばならぬ。まずはそれに使う気だろう。

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 Boyko Nikolov 記者による2023-3-5記事「Civilian truck is secretly transporting UK Spartan APCs to Ukraine」。
    英国は昨年の開戦いらい、ウクライナに「FV103 スパルタン」APCを送り続けているが、その輸送方法は謎であった。このたびビデオが公表された。

 どうやって搬入しているのか?
 民間の大型トレーラーが使われている。ロシアの衛星によって探知されないように、トレーラーは、フルアルミパネル。したがって中味が何なのかは、誰にも窺い知れないわけ。完全にカバーされた荷台に、スパルタンが2両、入ってしまうのである。

 スパルタンAPCは、自重が11トン。固定武装は7.62ミリ機関銃×1だけだ。

 ※衛星やドローンから見下ろされてもいいように最初から考えることが、これからは、あらゆる兵器を設計するときに、基本的に要求される着意だ。援助用の車両兵器は、できれば「鉄道/船舶用コンテナ」(20フィートコンテナ)の中にそっくり収納できる外寸にするのが理想的である。大きくするばかりが能じゃない。無人化時代、スウォーム化時代の今日では、むしろ小さくまとめておくのがとても有利。「武器援助外交」の自由度、オプション幅が、ぜんぜん違ってくるのだ。

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 2023-3-5記事「OTO Melara Mod 56 105-mm howitzer in service with the Ukrainian Armed Forces」。
    ウクライナ軍は、スペインの演習場で、イタリア製の「オットーメララ Mod 56」105mm野砲の操法を習い覚え、げんざい、ドンバス戦線で使用中である。
 スペイン軍が2022-11に6門、寄贈した。

 この野砲の砲身は、14口径長。
 最大射程は10km。

 大砲は、かんたんに12個のパーツに分解できる。つまりこいつは「山砲」だ。
 イタリア軍は、バラした「Mod 56」を騾馬に駄載して山地機動させるつもりで設計させた。

 防楯をとりつけないことにした場合、この野砲は、そっくりM113APCの内部に収納できる。M113は浮航ができるから、砲兵は、フェリーを頼まなくとも、簡単に渡河させられてしまうわけだ。

 「Mod 56」は、世界の30ヵ国の軍隊によって、採用されている。

 ※こういうのが、尖閣諸島や先島群島の防備用に、便利このうえない装備であろう。ところで、ラバに駄載できるということは、いちばん重い砲身部分でも重量が110kgくらいになるように設計しているはずだ。これは何を意味するかというと、インドシナ戦争中にベトミンやベトコンが駆使した「輸送用自転車」によっても、楽々と搬送できるということ。なにしろ1台で200kgくらいは平気で吊るしていたのだ。さすがに2人がかりで押すのだが、それでもラバの秣の心配をしなくてもいいメリットは絶大だったろう。そこでとつぜん話が変わるのだけれども、読者の中に「自転車の改造」が趣味の人はいないか? ベトナム戦争中の輸送用自転車をリアルに再現したものでひとつ実験をやってみたいので、ご連絡ください。その写真を小生の次著の中で使い、お名前を紹介するというのが、報酬になります。


最新の《note》 https://note.com/187326mg/  は、『The Camel and the Wheel』・ほか です。

 イスラム勢力の出発点はメッカです。そこには駱駝はあったのですが、車両(荷車や戦車)は一切、無かった。
 それなのに、イスラム軍は、先進文明大国であるペルシャ(イラン)を征服してしまった。同様にまた、アナトリア(トルコ)まで征服してしまいました。馬や馬車がゴマンとあった大国の軍隊を、ラクダだけで撃ち破っているのです。

 まさに謎です。敵国の内訌を利用したという説が有力ですが……。

 中世のイスラム教軍の強さを唯物的に究明したければ、アラビアの沙漠にまさしく特化順応していたヒトコブラクダの歴史を知らなくてはなりません。

 知れば知るほど、凄い動物です。反面、ヒトコブラクダが放牧状態で繁殖するには、常時「乾燥」した土地と、短期間の「雨期」とが必要で、そんな条件がないところでは、住民による利用も定着しませんでした。

 また人為繁殖のノウハウを握っていたのはベドウィン系の一部部族だけで、アラブの都市商人たちも、ラクダを繁殖させたりトレーニングする方法を知っていませんでした。彼らにとってラクダは、育てて増やすものではなく、買うものだったのです。

 20世紀のアラビア人たちは、ラクダはじぶんたちの後進性の象徴だと思っていました。それで、恥じるところがあり、誰ひとり、ラクダの歴史なんて研究をしていないのだそうです。そこで米国の東部名門大学の先生が乗り出した。

 膨大な手間隙をかけて、利用可能な資料をほぼ博捜して遂にまめられたのが、この本です。
 1975年に米国で出版された Richard W. Bulliet 氏の決定版的研究『ラクダと車両』(本邦未訳)。

 この書籍をPDFで貸し出している外国の図書館があること等について私に教えてくださった方、この場を借りまして御礼を申し上げます。どうもありがとうございました!

 軍隊と交通/運送手段の関係について、興味・関心がある方ならば、この1冊は必読だと思いました。
 その内容を、私訳によって摘録しました。


兵頭二十八 note

★《続・読書余論》Richard W. Bulliet著『The Camel and the Wheel』1975年刊


みなさま、ご喜捨をどうもありがとうございました!

 電車の吊り広告が出たかどうか知りませんが、『Voice』は発売日が6日ですよね?
 ひさびさに原稿を載せましたので来月はその稿料で少し息をつけそうです。

 2月も初旬を過ぎますれば、函館市内では、みるみる昼間が暖かく体感されるようになります。灯油代の嵩む冬場のピークの危機は乗り切ったかな……と思っております。これもひとえに皆様のおかげでございます。ご支援、ありがとうございました。

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 Megan Eckstein and Stephen Losey 記者による2023-2-5記事「Undisclosed number of Ospreys grounded until clutch-related part fixed」。
    総機数は公表されていないが、米三軍が保有する「V-22 オスプレイ」が臨時に飛行禁止。
 エンジンにつながったギアボックス内に挿入されている「管状の部品」の交換DATEが問題。それをあまり長く交換せずにいると、クラッチの結合を重くしてしまうおそれがあるという。

 海兵隊、海軍、そして空軍がもっているオスプレイは、ぜんぶで約400機だ。

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 SETH J. FRANTZMAN 記者による2023-2-5記事「F-22 performs first-ever air-to-air ‘kill’ – analysis」。
   米宇宙軍は、ウェブサイトで公表した。ヴァジニア州ラングレー空軍基地から発進した第1戦闘機大隊所属の1機のF-22が、AIM-9X サイドワインダーミサイル×1発で、中共のスパイバルーンを撃墜したと。

 撃墜した目標の高度は、6万フィートと6万5000フィートの間であった。
 ミサイル発射時のラプターの高度は、5万8000フィートであった。

 この撃墜をサポートした他の空軍機がある。
 マサチューセッツ州のバーンズ基地(州兵空軍基地)から、複数のF-15が。
 また、複数の空中給油機が、オレゴン州、モンタナ州、南北カロライナ州から離陸している。

 カナダ空軍は、バルーンの飛行経路の追尾に協力してくれた。
 米海軍は、駆逐艦の『オスカーオースチン』、巡洋艦『フィリピンシー』『カーターホール』、また揚陸艦1隻も支援のため展開させた。

 ニュースメディアの『ザ・ドライヴ』によると、地上の民間人が最初にこの気球を目視発見したのは、2月1日のモンタナ州ビリングズ市であった由。

 「フランク01」「フランク02」というふたつのコールサインが傍受されているので、F-22は、2機が飛んでいたとみられる。
 このフランクというのは、1918年にドイツの気球を18機撃墜して議会勲章を授与された、米陸軍航空隊中尉のフランク・ルーク・ジュニアにちなむそうだ。

 FAAは、付近の空港に命じて、民航機の離陸をしばらく停止させている。
 洋上の民間船舶に対してなんらかの警報を出したかどうかは、不明である。

 『ドライヴ』の記事によると、F-22はかつては「AIM-9L/M」を、搭載していた。「9X」ではなく。
 「9X」の「ブロックII」は、F-22から発射後にデータリンクによって標的に空中ロックオンさせることが可能。※だから理論上は真後ろの敵機も攻撃できる。

 こんかい発射した「9X」に通常の爆発弾頭をとりつけていたかどうかは、不明である。

 F-22は2005年に米空軍に実戦配備された。これまで敵機をじっさいに撃墜したことは一度もない。今回が、初手柄である。

 ※なぜF-22が撃墜役に選ばれたのかには、特に謎は無いだろう。「なんで領空侵犯を見逃していたんだ」という米世論と議会からの批判に、米空軍の威信をかけて応える必要があった。万が一にも撃墜に失敗するようなことがあってはならないのである。中共軍は米軍を嘲弄するため、さらに気球の高度を上げさせる可能性もあった。だから上昇力にいちばん余裕があるF-22を選んだまでだろう。もしもサイドワインダーが外れたら、次の手段を何段階にも、準備だけはしていたはずだ。また、こんかい、一切報道は無いが、気球のデバイスからどんな無線信号が送信されているのか、ほどほどの距離からモニターし続けた電子戦支援航空機が、必ず、在空していたはずである。

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 Victoria Bisset 記者による2023-2-4記事「In a world of drones and satellites, why use a spy balloon?」。
   ロンドン大学の東洋アフリカ研究所の所長(支那系)氏が解説する。
 米軍は中共の沿岸域で、恒常的に偵察機を飛ばしている。それと同じことが、シナ軍にはできないものだから、シナ軍は悔しい。世間に対して見栄が張れない。それで、俺たちだって米本土の軍事施設を偵察できているんだぜと、目立つ形で誇示したい。それが数年前からのバルーン飛ばし。実質の偵察能力は、伴っていなくてもいい。視覚的な宣伝になることが、すべて。

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 Sakshi Tiwari 記者による2023-2-5記事「1000 Rounds Fired, Why Canada Could Not Shoot Down This ‘Research Balloon’ Using Best Of Fighter Jets 25 Years Ago?」。
    今回の事件のような高々度用気球は、膜が分厚くタフで、しかも、内部のヘリウムの気圧と外気圧との差がないため、かりに機関砲で穴をあけても、中味のガスはごくゆっくりとしか漏出してくれない。ヘリウムは水素と違って、燃えあがりもしない。

 いまから25年ほど前、逸走した気象観測用の巨大気球を、戦闘機で撃墜しようとしたことがあった。
 そのさい、20mm機関砲の弾丸を1000発以上、貫通させたが、気球は浮かび続けたという。

 APの報道によると、それは1998年8月のカナダでのこと。オゾン層を観測するための気球が、カナダを大陸横断し、大西洋に出て英国領空に到達。さらにそれはアイスラン領空も通過し、ひきつづいて北上しようとした。

 気球がニューファウンドランド上空を過ぎたところで、カナダ空軍のCF-18が2機、これを機関砲で撃墜しようとした。しかし1000発以上を撃ち込んでも、ヘリウムの漏出は緩徐であった。

 その気球の大きさは25階建てのビルに匹敵するものだった。
 しかし、相手は対気速度がゼロ。こっちのCF-18は高速飛行でないと浮いていられない。だから照準と発砲のチャンスが一瞬しかない。それで、てこずった。

 AAMを使用すると、爆発破片のデブリが降り注ぐことになる。下界の住民たちがこころよく思うはずもない。それで、ミサイルの使用は控えるしかなかった。

 他のメディア記事によれば、この1998年の放浪気球には、英空軍機や米空軍機もくらいついたが、撃墜できなかったという。

 ※南米のコロムビア上空を通過中と伝えられた別の支那気球に関しては、続報に接せず。

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 TOC の2023-2-5記事「In the city of Yelabuga, Russia begins Shahed drones production」。
   『WSJ』の報道によると、「シャヘド136」の量産工場はイェラブガという寒村に建設される見通し。年産6000機になるかもしれない。
 1月前半にイラン人技師がやってきたという。

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 2023-2-4記事「Russian oil restrictions could be threat to environment in Gulf of Finland」。
   ロシアから輸出される原油を西側先進国は買わないことにした。制裁として。
 その結果、フィンランド湾にやってくる原油タンカーは、西側先進国が傭船したものではない、いかがわしい素性のタンカーが増えるはず。それらはきっと、バルト海の海洋汚染を増してくれるだろう。

 フィンランド湾には、毎週、60隻から80隻ものタンカーが出入りする。それ以外の貨物船は150隻/週というところ。

 国庫歳入の三分の一を原油の輸出代の上納金に頼ってきたロシア政府は、こんごますます、原油輸出に注力するはず。

 ロシア自身は、タンカー船団は保有していない。だから、外国船籍のタンカーを、ロシアの港まで呼び込むことになる。それに応ずる国々は西側先進国ではなく、その差し回すタンカーは、建造年の古いボロ油槽船船が多いだろう。ナビゲーション装備にも不足のあるそれらのタンカーが、流氷だらけの冬のバルト海で、どんな原油流出事故を起こすか、知れない。

 ギリシャの船会社のタンカーが、きっと傭船されるだろう。

 流氷域を航行するタンカーには、特別に分厚い船殻が要求されるのだが、薄い船殻のボロ船が冬にやって来られると、氷との衝突で船槽に穴が開いて原油が漏れ出しかねない。バルト海は浅いし、フィンランド湾は沼袋のような閉じた海水面だから、汚染は超深刻になる。

 フィンランドの専門家の先生いわく。ノルドストリームを爆破したプーチンには、隣国に対する厭がらせとしてタンカーを意図的に沈めて海浜を原油で汚染してしまうくらいは、朝飯前である。複数のタンカーを同時に沈めておいて、ぬけぬけと「偶然の事故だ」と主張するだろう。いまからバルト海沿岸諸国は、そんな環境破壊テロにも備えねばならないのだ。

 次。
 2023-2-5記事「Britain Bans Migrants from Appealing Deportation」。
   英政府は、「国外追放された」と主張して英仏海峡を渡ってくる「ボート難民」の入国は認めない方針を打ち出す。英『タイムズ』紙の報道。

 2022年には、4万5756人もが、小船で英仏海峡を渡ってきやがった。

 次。
 2023-2-4記事「Coating prevents synthetic fabrics from shedding harmful microplastics in the wash」。
   ナイロン、ポリエステル、アクリル繊維、レーヨンなどの化繊衣類を洗濯機に突っ込むと、洗浄槽との摩擦でマイクロプラスチックが剥離し、それが排水といっしょに最終的には海へ、さらには大気循環で全地球を、マイクロプラスチックが充満した環境に変えてしまう。

 このたびトロントの大学研究チームが、化繊をシリコンベースの有機ポリマーでコーティングすることによって、マイクロプラスチックの生成を防止する技術に目処をつけた。

 次。
 AFPの2023-2-3記事「US, Philippines to restart joint patrols in South China Sea」。
   米国防省の発表。米比軍は、海上における合同パトロールを再開した。

 合同パトロールは、前政権のドゥテルテがとりやめていた。

 ※オースティンはフェルディナンド・マルコスに対して「熊プーは2027年に台湾侵攻すると命じた」という機密情報を伝達したのだろう。台湾作戦の前哨は比島になるから、今から大急ぎで米軍を比島内に再展開してもらった方がいいというコンセンサスに、比島指導層の内部が、達したのだろう。



VOICE2023年3月号


商用4WD車(左ハンドル)の右側ドアをそのまま81㎜迫撃砲の底板にする場合、この「簡易型自走中迫」システムはどこまで軽くできるか?

 いまウクライナ軍に必要なのは、配備まで半年もかかる重戦車ではなく、いますぐ急速に、続々と展開できて、訓練がほとんど必要なく、弾薬補給の心配も将来にわたってまったくありえない「移動火力」である。

 これなら量産と増強のテンポにおいてロシアの今の後方能力を圧倒できる。

 システムまるごとの進退、集中、分散が機敏であるので、ロシア側からみると「対抗不能」である。

 どこが敵の弱点か(いままさに火力を集中すべき方面か)は、最前線のウクライナ兵が判断すればよく、高級エリート幕僚の育成も必要がない。

 この簡易システムにより、最前線の敵軍の士気は全線で萎靡すると期待ができる。

 ではそれをいかにして実現しうるのか、以下に説明する。

 6人乗れる商用4WD車をカスタムベースにする。
 前列の右席は取り払い、そこに81㎜迫撃砲(砲身13~16kg、支持架13kg)を固縛する。

 右側ドアは取り払い、かわりにランプドア(あおり開閉板)をとりつける。
 迫撃砲の底板(12~13kg)は、走行移動中は、そのランプドアに固縛された状態だ。

 ランプドアの開閉は、ワイヤー+滑車+手回しクランク による。
 ランプドアのヒンジは、リジッドにはせず、簡便にとりはずせる構造とし、発射衝撃等によってランプドアがいくら歪もうとも開閉に特に不自由は起こらぬよう配意する。

 参考値。商用乗用車のドア1枚は、十数kg~25kgていどの重さがあるらしい。

 車両の後席には、砲員2~3人を乗せ、当座発射見込み分の迫撃砲弾(1発 4.1kg)を、複数発、積む。

 81㎜迫撃砲弾に充填されているTNTは700グラムである。ドローンから投下できるチャチな擲弾とは比較にならない致死威力を発揮する。

 一般的な対人用の81㎜の迫撃砲弾は、最小レンジは150m。最大は5600m。零下46度でも問題なし。

 もし、ACERMという特殊な高性能弾薬を使うと、レンジは20km、GPSまたはレーザー誘導で誤差1mで落ちるという。
 対戦車用の特殊な81㎜の自律誘導砲弾もある。

 5km台という距離は、最も簡便なクォッドコプターの往復進出可能距離(ラジオ通達距離)にほぼ一致する。偵察と、射弾の観測は、商用のクォッドコプターを役立てることができる。

 5km以内まで敵戦車が近寄ってくることは考え難い。というのは、その距離だとジャヴェリンやTOWが届くので。

 このシステムは、数週間にして数百、数ヵ月にして数千、2年あれば数万も増強してやることができる。露軍はもっかの後方兵站環境ではこれに対抗することはできず、全線で、圧倒されてしまう。

 西側製の重戦車×数百両で、1年後に、露軍を敗退させたとしよう。そのあとのウクライナはどうなる?
 専門の訓練を受けた膨大な人数の戦車兵を、戦後も、そっくり、維持し続けなくてはならなくなる。

 それは民間経済の復興に回せる人材を無駄に拘束することと同義である。

 私が提案する簡易火力システムならば、兵隊は戦後は全員、復員してしまって可い。
 車両は、迫撃砲を卸してしまえば、商用の運搬車として復興に使うことができる。

 迫撃砲は倉庫にしまっておいても邪魔にならない。

 この簡易火力システムは、台湾有事など、将来、別な地域で侵略事態が発生したときにも、各地に同じようにして応用することができる。

 読者の篤志の方にお願い。
 このコンセプトに基づいて実車サイズのモックアップを製作し、その動画を撮影してSNSにUpしてくれる人はいないだろうか? 世界の軍事バランスを日本のアイディアで変えよう!
 なお御礼として、道南の回転寿司くらいは、奢らせていただきます。


ドイツはすでに2022年夏から、約100名のウクライナ軍将兵に、レオパルト2の運用に必要な教育を開始していた。

 NTVDEという独ニュースTVチャンネルのすっぱ抜き。ウクライナ政府関係者も肯定した。
 この人数はどんどん増やされる予定だという。

 ※独政府は欧州諸国の最先頭に立ちたくない。しかし水面下では、やることはやっている。ウクライナ軍の自前の整備能力は今でも不十分なのに、高性能AFVをあまり急激にたくさん与えられても、単純に故障続出するのが目に見えている。これは仏国内でも同意見。しかし旧東欧やバルト海沿岸諸国は、気持ちとして、とても待ちきれるものではない。

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 2023-1-12記事「Hundreds of U.S. military vehicles arrive at Dutch port before moving to Poland & Lithuania」。
   ポーランドとリトアニアに今年後半、展開する予定の数百両の米軍車両が、まずオランダの港に陸揚げされた。

 ※おそらく米軍の見積もりとしては、半年くらい教育に時間をかけないと、ウクライナ国内で西側最先端の重AFVの整備ができるようにはならないだろうと思っているのだろう。しかし旧東欧やバルト海沿岸諸国は、とうていそんな悠長に構えていられる気分ではないのだ。

 ※雑報によると、ラトヴィアとリトアニアを結んでいたガスパイプラインが謎の工作部隊によって爆破された。

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 2023-1-13記事「The Ministry of Defense will acquire UAVs for 20 billion UAH in 2023」。
   ウクライナ国防省は、今年、2000万UAHを投じて各種のドローンを調達するつもりだ。
 ※UAH=1ウクライナフリブニャは3.48円。

 国内で製造している航空ドローンとしては、「Leleka-100」「А1-SM Furia」「Windhover」「PD-2」「ACS-3」などがある。
 Leleka-100 は2020年に完成。今、エクスカリバー砲弾を誘導するのに使っている。

 次。
 謹告。私事ですが、地方での葬儀に参列するため、暫時、PC通信ができない環境に移動します。
 この間、緊急のご用がある方は、携帯電話にお願いします。


すべての戦争は「消耗戦」(war of attrition)になることで終局に動く。

 例外が、『孫子』の謂う「戦わずして人の兵を屈する」宣伝&心理戦政略と、そのカウンターである「伐謀」という上策。このふたつに失敗すれば、侵略に抗する側の独立防衛策としては、ぎゃくに長期戦化を狙うしかない。それは消耗戦以外の何物でもあり得ない。

 だから、弾薬が大事。それはハイテク正面装備よりも大事。ISRの次に大事(敵を知り、己を知らなくては、策を立てられない)。

 火薬や鉄道の発明は真の革命だった。だがそれも戦争を短期化することにはつながっていない。

 ハイテク兵器は戦争を短期化しない。『孫子』は兵器を論じていない。戦争が長期化するか短期化するかは、兵器技術の高低とは何の関係もないのである。ここを錯覚させたのが「RMA」というたわごとだ。

 1979の中共による対ベトナム戦争、1991デザートストーム、2001タリバン放逐作戦は、孫子の「拙速」を守ったから《一撃離脱》で短期化できた。ハイテク兵器のおかげで短期化できたわけではなくて、政府が出口戦略を開戦前に決めていたから短期化できたのである。そこを誤解させたという点で「RMA」という浅薄なキャッチコピーの罪は深い。今は死語だと信じたいが……。

 次。
 Hritika Mitra 記者による2023-1-66記事「Russia shells Ukrainian city hours after announcing temporary ceasefire: Report」。
   AFPの速報によると金曜日、さっそくロシア軍はウクライナの都市を砲撃した。プー之介が「金曜日の午前9時から、土曜日の午後9時まで、停戦する」と嘘をついてから数時間後のこと。いまさら誰も驚かぬ話。

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 Sergio Miller 記者による2023-1-6記事「Russia’s withdrawal from Kherson」。
   ドニプロ河の左岸、ヘルソン州から、露軍は撤退した。この撤退作戦のスケジュール表をウクライナ軍は入手した。それを解析することで、いくつか貴重な所見が得られた。

 露軍全体の中で、「空挺部隊」(VDV)が、ものすごく最上部から信頼されていたのだ。親衛ナンバーのついた機甲部隊などよりも、断然に。

 これをわかりやすくたとえれば、VDVは、湾岸戦争のときの「サダム親衛隊」の地位だ。いまの露軍においては「VDV」(約1万人)が大黒柱なのである。

 ということは、もしこのVDVをあのサダム親衛隊のように撃砕殲滅してやることができさえしたら、91年のイラク軍がたちまち雲散霧消してしまったように、露軍も即座に全軍が崩壊した蓋然性が高い。
 そのチャンスはあった。しかし、宇軍は敢為を欠き、みすみすその長蛇を逸してしまった。

 ヘルソンから露軍が出て行ったのは、宇軍が「反転攻勢」したからではない。
 河の部分凍結が迫り、補給が切れて孤立する危険があったので、自主撤退したのである。

 まず宇軍は、HIMARSによって、ドニプロ河にかかっていた「アントノフスキー鉄道橋」および「アントノフスキー道路橋」(この2つは橋脚を共有していない)と、その70km上流部の「ノヴァカホウカ水力発電ダム」の上端を利用した道路&鉄道併設橋を、精密に打撃し損傷させ続けた。これはもちろん意義があった。

 「アントノフスキー道路橋」は7-20に最初のハイマーズ攻撃を承け、それから14週間にわたり、修理のたびにハイマーズ攻撃された。

 3つの橋は、おおよそ、8月第一週の週末以降は、露軍が軍用交通路として頼れなくなってしまった。
 だが、「アントノフスキー鉄道橋」には石油燃料のパイプラインが併設されていて、そのパイプラインは破壊されずに機能し続けている。

 HIMARS攻撃にもめげず、露軍は、重門橋(ポンツーンフェリー)を5箇所に架設して、右岸への支援を続けた。

 ※記事には浮橋ではなく重門橋と書いている。記憶がさだかでないが、戦車用の浮橋も1本ぐらい無かったか?

 11月に撤退するまで右岸で露兵4万2000人が戦い続けている。

 最終局面では、民間用の車両渡船や自航バージも徴発されて使われている。

 フェリーやバージは動くものだから、HIMARSでは当てられない。よって固定橋よりもしぶとく生き残り、活動を続けられる。

 ※この戦訓からすぐに出てくる結論。重門橋を1発で転覆させられるくらいの、FPV操縦式自爆ドローンが必要である。破壊力は、最低50kg投下爆弾級。

 撤退するまでのあいだ、右岸の露軍には「燃料不足」の兆候は皆無であった。果敢な逆襲行動も見られた。

 撤退を強いたのは、冬の結氷が迫っていたからだった。平年だと、連続して20日、真冬日が続けば、ドニプロ河は結氷する。
 氷は、岸から中央に向けて張り出して行く。こうなると、フェリーや門橋は接岸が不可能になるから、フェリー自体が無傷で存在していても、意味はなくなる。だから露軍はそうなる前に撤収した。

 言うなれば、露軍を右岸から追い払ってくれたのは「冬将軍」であった。HIMARSではなくて……。

 露軍上層では、虎の子のVDVを、ルハンスクの守備へ転用したいという判断もあっただろう。

 これに対して宇軍は果敢に圧迫攻勢をかけ得なかった。リスクを嫌い、遠くから見ていただけだ。
 ここは、リスクを取るべき局面だった。プロ軍隊ならば……。

 もし4万人がそこで捕虜になればプー之介の屋台骨も揺らいだはずだ。一気に戦争を終わらせられたかもしれないのである。

 このとき、宇軍には、VDVを中核とする4万人を殲滅する好機があったのに、宇軍はそれを逃した。

 ※衛星写真を見ていたすべての先進国軍隊の情報部は、「歯がゆい」と感じたのだろうね。「俺たちなら、ここで全力チャージだ」「突撃喇叭を吹けよ」と。敵の半渡に乗じ得る千載一遇の場面なんだから。それが伝わってくる記事だ。

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 2023-1-5記事「Ukraine: Getting F-16s is more realistic than creating our own version of Iron Dome
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   ウクライナ空軍のスポークスマンいわく。ウクライナにイスラエル式のアイアンドームを構築するのは資源面で不可能。そんな夢物語よりも、F-16戦闘機を供給してくれさえすれば、現実的なミサイル防衛が可能になるのだ――と。

 なぜアイアンドームが非現実的かというと、国土面積がイスラエルとは大違いで、防衛すべき重要資産がその広い国内のあらゆる都市に散在しまくっているから。

 カネの上でも問題外。その上、そのシステムに貼り付けねばならないおびただしい人数の専門技能兵と将校たちをどこから集めてくるというのか。ロシアの大軍と熾烈な陸戦の攻防が続いているこんなときに。考えるだけムダな案である。

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 Defense Express の2023-1-6記事「For a While U.S. Has Been Delivering Weapons to Ukraine By Sea and Railway, and the Scale is Impressive」。
   米軍の輸送機関が対宇支援物資をどのくらい運んだかの一端が明かされている。

 船で積み出した車両などは、ギリシャのアレクサンドロウポリ港か、ルーマニアのコンスタンツァ港に揚陸して、そこから陸送に接続させているようだ。

 空輸は、開戦前はキーウに近いボリスピル空港を使い、開戦後は、ポーランドのRzwszow空港を使っている。平均して毎日3機、武器弾薬満載の輸送機が着陸している。

 「ラストマイル」の運搬にはトラックが用いられている。

 IDCC=国際寄贈者調整センター という臨時機関が立ち上がっており、そこが受け付けた武器弾薬がそこからどこへ行くかは一切秘密にされている。

 ※仕事早すぎ! もうブラドリーの援助第一陣が、民間のトレーラーに乗せられてウクライナ国内を走っているのが撮影された。

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 Defense Express の2023-1-6記事「40 Marder Vehicles by March: Germany Reveals to the Pace of Long-Awaited Deliveries, How Many More to Expect Afterward」。
   APの報道ではドイツはマルダーをとりあえず40両、ウクライナに送るという。

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 Defense Express の2023-1-6記事「Ukraine’s Buk SAM Will Receive RIM-7 Sea Sparrow Missiles, Which Solves the Missile Shortage Problem」。
   『ポリティコ』の特だね。米軍はすでに技術問題を解決した。旧ソ連のSAMシステムから、「シー・スパロー」を発射させることができる。ウクライナ軍保有の「Buk」の場合、そのシースパローのバージョンはまったく問わないという。

 シースパローは米本土に大量の在庫がある。だからこれは朗報である。

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 ストラテジーペイジの2023-1-6記事。
   ロシアは無計画にも、フィンランド国境付近での大軍拡方針を表明していて、それには同地に30個師団を新規に駐屯させる必要がある。建物も、これから造るという話だが、仮に建物ができても、人が集まるわけがない。ウクライナで喪失した2個旅団の穴埋めすら、ままならないのだから。

 ただしプー之介がやっていることには国内政治的な合理性もあって、レニングラード方面ではプー之介の「失政」は有権者からほとんど非難されないのである。政治地盤なのだ。レニングラード管区で徴兵された兵隊がウクライナで大量に戦死しても、他の地方ほどにはプーチン批判の声は上がらない。

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 Ashish Dangwal 記者による2023-1-6記事「US Nuclear Submarines For Australia Hits Rough Waters; Canberra Confident of AUKUS Deal Despite Leaked Letters」。
   豪州に原潜を売るという話に、上院議員のジャック・リード(民主)とジェイムズ・インホフェ(共和)の2名が、懸念を表明する連名書簡をバイデンに送っていたことが判明した。

 リードは上院の軍事委員長である。もうひとりのインホフェは引退が決まっている長老で、この委員会内の共和党メンバーの筆頭。

 要するに米国内の原潜造船所はパンク状態だから。
 余計な注文を入れることで、米海軍用の最新の原潜の調達スケジュールに悪影響が出てしまう。

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 2023-1-6記事「Army holds combat readiness drill in Chiayi featuring tactical drone」。
   台湾の国営兵器開発部門である「中山科学技術研究所」が開発した、シングルローターのヘリコプター型の近距離用物資輸送無人機が、初めて防衛演習で飛ばされた。

 演習は、嘉義空港を占領しようとする敵を、機械化歩兵旅団で拒止するという内容。

 この無人ヘリは「カプリコーン」と称し、自重25kg、戦闘行動半径30km、高度は1500mまで行ける。滞空60分。

 ボーフォート・スケール「6」の強風下でも飛行可能。もちろん夜間にもサーマルイメージで視野が確保される。

 ナビ用のセンサーは三重にしてあるので、ひとつが電子妨害を受けても切り抜けられる。

 台湾陸軍は米ドルにして2537万ドルの予算で100機を発注。そのうち28機は2022年中に納入された。2024年までに残りが届く。

 ※米海軍は正月早々、台湾海峡でFONOPを実施していて、士気旺盛だ。

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 Joseph Trevithick 記者による2023-1-5記事「Mexican Light Attack Plane Strafes Cartel Forces After Arrest Of El Chapo’s Son (Updated)」。

 メキシコの麻薬組織シナロア・カルテルの幹部を逮捕しようとするのにメキシコ軍はライトアタック機による機銃掃射が必要であり、それに対してカルテル側が、「.50」口径のセミオート狙撃銃「バレット」で対空射撃しているビデオがSNSにUpされている。こんなムチャクチャな国が合衆国と陸上国境を長々と接しているのである。

 ライトアタックの機種が、まだ判明していない。ビーチクラフトの「T-6C+ テキサンII」か、ピラトゥスの「PC-7」だろう。そこに固定武装としての機関銃が搭載されているのである。

 メキシコ海軍はテキサンにFN Herstal社の「HMP250」というガンポッドを1個吊るしている。これは12.7㎜のM3P機関銃である。
 またメキシコ空軍は、テキサンとPC-9とPC-7を運用する。このうちPC-7には、やはりFNのガンポッドを搭載できる。

 どちらの機種もふだんは練習機として使われていて、こういう捕り物があるときなどに、武装して対地直協に任ずることが可能。ただし従来だと、銃撃はヘリコプターからすることが多かった。


(管理人Uより)

 2022年度のユグドアへのご喜捨、送金額(若干の出金手数料が差し引かれるのです。ただしユグドアへのマージンというのは無いようです。不思議なサービスです)、メッセージ、Kindleの売上、送金額の報告書を兵頭先生へ送信完了。皆様、いつもありがとうございます。
※簡略化した報告メールは随時、報告書は毎月送信してもいます。兵頭先生もユグドアのアカウントは閲覧可能です。私だけが閲覧・操作できる状態はマズいので。


鐘撞き放題、ただし有料……というニッチ・ビジネスは、どうだろう?

 東北とか北海道は山の中に土地が余っているんだから、そういう山奥に「鐘撞き堂」を置いて、賽銭箱に現金を投入すれば、誰でも1年365日、1日24時間、いつでも何発でも鐘つきほうだいできる――というようにすればいいじゃないか。

 ストレス解消にもなり、インスタ映えもするだろう。アクセス歩道にはソーラー照明を設置するとよい。

 ……というわけでみんな、正月そうそうすまぬが、「カネをくれ!」。

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 Kris Osborn 記者による2022-12-24記事「What it is Like to Fly an F-35: Interviews with Three F-35 Pilots」。
   F-16からF-35に乗り換えたパイロットの感想。
 F-35の搭乗員は、パイロットというより、センサーの監督。

 豊富なセンサー情報を見渡して、次に打つべき手を決める。それが仕事。

 F-16はもちろん、F-22であっても、空対空の戦闘のさなかにこっちがAAMを放った後の面倒な心配事がたくさんある。それは本当に命中したか? 敵の方からもAAMやSAMが飛んできてはいないか? それを避けるためにじぶんは機動しなくちゃいけないんじゃないか? 首をひねって回りを見渡さねば! ……これらの心配事が、F-35の場合、まるで、無用なのである。

 すべて、見えている。肉眼では何も見えやしない距離なのだが、統合センサーの表示パネルが、必要なことぜんぶを明瞭にリアルタイムに教えてくれるのだ。だから、操縦者が肉眼で警戒をしたり、肉眼で外界を確かめる必要がない。こんなに仕事の楽な戦闘機も無い。

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 Peter Aitken 記者による2022-12-30記事「Kremlin showing cracks as Putin fires another general, British Intelligence says」。
   英国防省の情報分析によると、露軍のイェフゲニィ・ニキフォロフ中将が、露軍の西部軍集団の司令官に据えられようとしている。

 ニキフォロフはこれまで、露軍東部軍集団の参謀長であった。

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 Boyko Nikolov 記者による2022-12-31記事「Damages to 16 of 18 Caesar SPHs delivered to Ukraine ? Le Figaro」。
    フランスはウクライナに18両の「カエサル」装輪自走砲を供給したが、はやくもそのうち16両が損耗している。

 故障の理由は露軍のせいではない。砲身内部の耐久性が足らぬために実戦の激しい連射によって焼蝕が進行してしまったのだ。
 『ル・フィガロ』紙12月28日刊号がすっぱぬいた。

 仏軍はカエサルを2008から使っている。砲身は52口径長である。
 ロケットアシスト弾を使うと最大レンジは50km。

 ※ちなみに露軍の新鋭の牽引式152ミリである「2A36 ギアツィントB」榴弾砲はレンジ40km、それより古い「D-30」三脚牽引砲だと22kmである。

 ウクライナは、榴弾砲の修理は自国内で実施したい。いちいちポーランド領まで持ち出したり持ち帰ったりするのでは、その輸送の途中を露軍に攻撃されるおそれがあるので。
 そうでなくても国外整備は時間がかかりすぎるとウクライナ軍は感じている。

 ウクライナ国防相はとうぜん、フランスのルコノー国防大臣に前々から「ルクレール」主力戦車を供与してくれと頼んでいる。
 しかし仏側は、ウクライナ人に新鋭戦車の整備は無理、という理由で拒否している。

 カエサルは、ベースのトラックを6×6にしてもいいし、8×8にしてもいい。デンマーク軍はタトラの815のシャシ(8×8)に載せている(現有19両)。このデンマークが何門かをウクライナに無償提供することを、フランスは許可している。

 あまり報道されていないアイテムとしては、「HDP-2A2」という対戦車地雷を、フランスはウクライナに供与しているそうである。

 ※ウィキによるとこれは自己鍛造弾薬と電子フューズを組み合わせたスマート地雷で、仕掛けて10分後に活性化し、獲物が通りかからなかった場合は30日後に自動で無害化する。仏軍は2006年に40万発も注文した。他にはベルギー軍とノルウェー軍がユーザー。スイスは「対戦車地雷88」の名でライセンス製造している。炸薬3.3kg。地雷の厚さ104ミリ。水深1.5mの水底にも仕掛けられる。

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 2022-12-26記事「German power to the people, trains and stations of Ukraine」。
   ウクライナ国鉄「UZ」は、「ドイチェ・バーン(独鉄)」から、63基の「発電機」をプレゼントされた。
 この発電機、動いている列車の中でも、使うことができる。とつぜんの停電が発生したときに、それによって短時間、車内照明や暖房を継続できるというわけだ。

 次。
 Emma Helfrich, Tyler Rogoway 記者による2022-12-30記事「U.S. Building Advanced Over-The-Horizon Radar On Palau」。
    フィリピンとグァムとニューギニアの中間にあるパラオ諸島。ここに米空軍が、新しいOTH(超水平線)レーダーを建設して、中共軍の動きを見張る。

 レンジが戦略視程ではないので、戦術移動式OTHレーダー、略してTACMORと称する。
 グァム島に近づく物は何でも遠くから分かってしまう。

 建設予算として1億1840万ドルがつけられた。
 完成は2026-6を期す。

 ※中共軍がグァム攻略に資源を集中する気配があるが、米軍はそこから一歩も引く気はない。アプラに碇泊するイージス艦の対弾道弾迎撃機能も強化するようである。

 次。
 ストラテジーペイジの2022-12-30記事。
   スペースX社の新ビジネス構想。スターリンクのような無数(数万機)の小型衛星群に、地上センサーも搭載してやる。そして、そこから得られる全地球規模のリアルタイムの情報を、国家機関に切り売りする。米政府と、同盟国政府の。

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 2022-12-31記事「South Korean National Assembly delegation visited Taiwan: MOFA」。
   韓国の国会議員団が、訪台した。12-28から31日まで。
 台韓友好議員団というのがあるのである。

 次。
 Lawrence Chung 記者による2022-12-31記事「Taiwan’s plan for 1-year compulsory military service includes teaching young conscripts to fire missiles」。
   2024年から、台湾の徴兵年限が4ヵ月から1年に延長されるのにともない、訓練内容を高度化する。すなわち、歩兵銃の操作だけでなく、スティンガーやジャヴェリンも扱えるようにする。

 ※1630年代、すなわち三十年戦争のさなか、スウェーデンのグスタフ2世は、じぶんの歩兵たちに、乗馬して機動できることと、砲兵の代役にもいつでもなれるよう、野砲の操砲までも教え込んでいた。歩兵をマルチタスク化した先駆者である。

 1987年以前の台湾の徴兵は、3年も服務する義務があったので、それにくらべたら緩いものだ。

 新制度にともなって俸給も増額される。今は6510台湾ドルしかもらえていないが、それを20320台湾ドル(660米ドル)以上にする。

 小火器訓練も、たんなる的射ち練習ではなく、彼我近接した市街戦の基本を教える。
 実弾も1年間に800発は撃たせる。

 ※わが陸自も、三曹以上になったら、ただの小銃班員であるとしても、対戦車誘導兵器、対空兵器、ドローン等のうち複数の操作の知識があるようにしておくことは、これからは当然だと思う。ウクライナ人は3ヵ月ですべて覚えたぞ。


(管理人Uより)

 あけましておめでとうございます。

 正月早々ユグドアのご喜捨の送金手続き完了。
 右や左の旦那様、皆様から兵頭二十八先生へのお年玉でございます。

 今年も兵頭二十八ファンサイト半公式をよろしくお願いします。


どなたか『朝鮮鉄道四十年略史』のPDFをめぐんでくだされ。1940年版という。

 Joseph Trevithick 記者による2022-12-21記事「The F-35B Can Eject Its Pilot Automatically」。
    12-15にフォートワースで垂直着陸に失敗してベイルアウトに至ったF-35B。じつは、B型には、全自動で射出される座席がついているので、あれはパイロットが判断して脱出したわけではないのである。

 射出座席は、マーチン・ベイカーの「US16E」だ。

 ちなみにハリアーの射出座席は自動ではなかった。それでなんの問題もなかった。だから英BEA社のテスパイ氏は、F-35Bになぜそんなものが必要なのかと2020時点で疑問を呈したものだ。今、英海軍はB型のユーザーである。

 とうぜん、理由がある。
 ハリアーとF-35Bでは、下向きジェットの固有安定度が異なるのである。
 ハリアーの下向きスラストは、機体中央部にあるひとつのエンジンから、機体重心点を均等にとり囲んだ4個のノズルに分配されて噴き出すようになっており、したがって、もしエンジンが咳き込んだ場合、そのすべてのノズルが同じように咳き込む。そのさい、重心を中心とした垂直軸は、崩れない。

 ところがF-35Bは違う。主エンジンは機体後部にあり、ベクタードスラストで尾端から真下向きにジェット噴流を出せるが、それは機体重心からは外れている。それを補償すべく、動力伝達シャフトによってVTOL時だけ、胴体前方にあるリフト専用ファンを回すのだ。

 そこに万一、ホバリング中、主エンジンの推力だけが急低下するようなトラブルが生じたら、リフト用ファンの推力のために機体は不慮のバック転に入ってしまうだろう。
 またもし、リフト用ファンの推力だけが突如うしなわれれば、機体は不慮の前転に入ってしまうだろう。

 それゆえ、AIが危険を判断してパイロットの決心よりも早く、座席をエジェクトさせるようにしないと、射出方向が地面へ向いてしまって、救命が間に合わないのだ。シャフトが折れた場合、この前転は2秒で起きるという。

 前転と後転とでは、前転が危いと考えられている。というのは、主エンジンのタービン回転には大きな慣性があるから、それがとつぜん推力ゼロになるようなことはまずないだろう。しかしリフト用のファンは軽いから、慣性も小さく、すぐに止まってしまう。結論として、ホバリング中の不慮前転のリスクが、F-35B型では大きい。

 ソ連の「ヤク38」「ヤク141」にも、同じ理由から、自動射出座席システムが備わっていた。ただし、ヤクのVTOL方式は、リフトファンではなくて、専用の小型のリフトエンジンを、主エンジンとは別に積むスタイルであった。

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 『The Maritime Executive』の2022-12-22記事「MSC Containership Held Offshore After Belgium Receives Bomb Threat」。
   コンテナ船『MSC ロレナ』6万トン(4870TEU)は、12月23日にアントワープ港に入る直前に、爆弾を仕掛けたという脅迫電話があったので、沖待ちさせられている。
 ベルギー政府は、この船をアンカレジまで戻してチェックさせたい。
 この船はアフリカ諸港をまわって、アントワープにやってきた。

 脅迫電話はベルギー連邦警察にかかってきた。アントワープ港に接岸した直後に爆発すると言ったそうだ。

 次。
 Brendan Cole 記者による2022-12-22記事「Russia’s Only Aircraft Carrier Catches Fire」。
    ムルマンスクでここ何年も修理を続けている唯一のロシア空母『アドミラル・クズネツォフ』艦内でまた火災が発生した。

 ※サットン氏によると黒海の軍港にまた露艦が集まってきているので、近々、何かやらかす気ではないかという。

 次。
 ストラテジーペイジの2022-12-22記事。
    フィンランドのパトリアAMVは2004から同国軍に採用されている。その2013年の改良型が「AMV XP」である。
 これによって陸自の360両の「96式」を更新して行く。

 ※モスクワ市内のフィンランド大使館の、通りに面した庭に、覆面の男たちがスレッジハンマーを投げ込む嫌ガラセ事件が12-20に発生。もちろんロシアの警察はこれを取り締まっていない。

 ※雑報によると、コラ半島からGPS攪乱電波が輻射され続けており、11月以来、民航のフィンマークは大迷惑を蒙っている。

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 Elisabeth Gosselin-Malo 記者による2022-11-21記事「Serbia may become biggest operator of military drones in Balkans」。
   コソヴォで緊張が高まっている中、セルビアの大統領は、軍の施設の近くを飛ぶUAVはぜんぶ撃墜しろと命令した。
 そしてイラン人の示唆によると、セルビアはイラン製のUAVを買い付けようとしている。

 バルカン半島の中で、2019年以降、セルビアは最大の軍事予算支出国である。
 同国はすでに2020-6に、中共から「CH-92A」無人機を複数買っている。戦闘行動半径250km。

 ユーロサトリ2022に、セルビアは「ガヴラン」という国産のロイタリングミュニションを出展した。最大離陸重量50kg、ペイロード15kg、最高速力120km/時を30分間発揮可能、航続距離100kmという。、

 マルチコプター型で、トラックやトレーラーからスウォーム運用できる。
 自爆ではなく、弾薬を投下するバージョンは「ヴラバク」という。40ミリ擲弾を6発、吊下できる。

 このほかセルビアは、イスラエルから「オービター1」を買っている。また、国産品の「シラク 750C」というドローンもある。

 イラン軍少将のラヒム・サハァヴィは、セルビアはイランから無人機を買っている22国のうちの1国になるだろうと発言した。これは、トルコから「TB2」を買おうという話がなくなることを意味する。

 ※雑報によると11月16日のオリヨールの原油タンク空爆は、TB2のしわざであったという。特攻自爆ではなく、UAVから爆弾を投下して直撃させるIRビデオが、SNSに出ている。

 次。
 Jaroslaw Adamowski 記者による2022-12-22記事「Romania spends $410 million on Israeli-British Watchkeeper drones」。
    ルーマニアの国営軍需企業「ロムテクニカ」は、同国国防省の代理人として、契約した。相手はイスラエルのエルビット社。「ウォッチキーパーX」というドローンを最大7機、買う。

 税抜きで4億1000万米ドルの取引になるだろう。
 3機目からは、一部のパーツを国産化する。

 ウォッチキーパーは、「ヘルメス450」の派生型だ。そのメーカーの株式の49%は、「タレスUK」が持っている。

 次。
 Steve Holland 記者による2022-12-23記事「Exclusive: US says Russia’s Wagner Group bought North Korean weapons for Ukraine war」。
   火曜日、ホワイトハウスの国家安全保障委員会のスポークスマン、カービィが発表。
 ワグネルグループは世界中から弾薬を調達して露軍に届ける特務機関の役割を果たしつつあり。
 すでに北鮮がワグネルに初回バッチの弾薬を売り渡したことを米政府は把握していると。そして先月、北鮮製の地対地ロケット弾と地対地ミサイルが、ワグネル部隊が使用する分としてロシア領内に搬入されていると。

 ワグネル部隊の兵力は5万人。うち4万は、刑務所から集めた囚人兵。

 ※ゼレンスキーを米連邦議会に招くと同時にペトリオット1基の供与を確定した演出はさすがである。これについてモスクワがもし脅迫めいた言辞を弄するなら、それは米議会に向けた脅迫になる。米国の「宣戦布告権」は米議会にあって、大統領にはないのだ。また一連の演出は、トランプとプーチンは国内外の民主主義の敵なのだというイメージを明確化することにも成功した。


駱駝の本はなんとかなりました(九拝)。あとはベトナムの自転車の本を宜しくお願いします!

 Jeff Schogol 記者による2022-12-9記事「Who is Paul Whelan, the Marine veteran left behind in Russia in the Griner-Bout prisoner swap?」
   元海兵隊員の犯罪者ポール・ウェランはひきつづいてロシアの監獄の鉄格子の中だ。
 ウェランはモスクワにて、自動車部品メーカーのセキュリティ担当部長として働いていたが、2018年にスパイ容疑で逮捕された。2年後、裁判所で16年の強制労働刑を言い渡されている。

 家族も、あまり彼の救出活動には熱心ではない。

 ウェランは1994から2008まで、海兵隊の予備役であった。2004-2~2004-8、そして2006-2~2006-12の二度、イラクに出征もしている。

 しかしウェランは素行が悪く、2008-1-14に、曹長から二等兵に降等された上で除隊させられせられた。
 軍法会議によると、こやつは窃盗、職務放棄、公文書偽造、他人の社会保険証番号の悪用、小切手詐欺、などを在職中に繰り返していた。

 NYT報道によれば、当初ロシアは、もし米政府がウェランを釈放してくれと頼むなら、そのかわりにヴァディム・クラシコフを釈放せよと要求した。クラシコフは殺人罪でドイツの刑務所に無期服役中の男。ベルリンにてチェチェン分離主義者を暗殺したのだ。

 またロシアは、このクラシコフの釈放を条件に、グリナー(バスケ選手)+ウェランを交換釈放する、とももちかけていた。しかし11月になり、提案を改めた。こんどは、グリナーとひきかえにボウト(武器密輸商)を交換釈放せよと。

 というわけで、このたびはホワイトハウスが「グリナーかウェランか」の選択をしたわけではないのである。
 ※米国内のキチガイ右翼は、ウェランを愛国者のようにもちあげてバイデンを叩いている。たしかにグリナーは反米スタンスのしょうもない人物だろうが、ウェランとは比較にならん。

 次。
 Adam Taylor and Claire Parker 記者による2022-12-9記事「Who is Viktor Bout, Russian arms dealer swapped for Brittney Griner?」。
    ヴィクトル・ボウト〔ニコラス・ケイジ主演の映画のモデルとされる〕は55歳。元、露軍の通訳。ソ連崩壊後に国際航空運送業に進出。

 ボウトは2008にタイで逮捕された。ひっかけ捜査だった。
 コロムビアの革命軍に武器を供給した嫌疑について有罪とされ、そこで米国人の命を危なくしたというので、裁判で有罪を宣告され、イリノイ州の刑務所に刑期25年でブチ込まれていた。

 クレムリンは長年、ボウトの釈放を働きかけてきた。

 ※モスクワのショッピングモールを爆破したのはルカシェンコかもしれんぞ。外相をFSBに暗殺されたままで泣き寝入りはできぬから。やられたらやり返す。是大原則也。

 次。
 ロイターの2022-12-10記事。
   カンサス州で、径36インチの原油パイプライン(油田から精油所へ向けて送り出している)から環境中への大漏出が始まってしまい、えらい騒ぎになっている。

 パイプラインを保有し運営している会社は「TCエナジー」社。

 パイプラインは全長が4324kmもある。2010年の運開いらい、漏出事故はこれで三度目だという。前回の事故では、漏れを止めるのに2週間を要した。

 次。
 Boyko Nikolov 記者による2022-12-10記事「US allies pay $1B for new F-35’s computer ? twice as planned」。
   『ブルームバーグ』が12-9に報じた。F-35を買った諸国は、総額で10億ドル、追加でロックマートに支払わねばならぬ。というのは7億1200万ドルで開発できるはずだった新コンピュータ機能にどんどん追加費用が発生し、最終的に、それプラス、6億8000万ドル必要になったから。

 ※まさかこのおかげで空自がカニバリズム整備をしているわけ? でも最初から読めてたよね、こうなって行くであろうことは……。

 ソフトウェアを刷新したF-35の納品開始は2023-7と設定されていたが、それが大幅に遅れることも避けられないそうだ。

 すでにF-35を買っている諸国は、ソフトウェアのアップグレード費用の請求書を見て、これから、目玉が飛び出すはずである。

 ひとあし早く、豪州ジャーナリストが、F-35を買ったのは大きな誤りだったと政府を糾弾している。

 ※この流れの中から、日英伊共同開発のFXが正当化されるわけか。ネットテック企業大手による世界支配にひとびとが目を奪われていたあいだに、じつは、「ロックマート」という、米政府にも米議会にもまったく制御できなくなっている「スーパー越後屋」(おぬしもワルよのう)が成長していたと考えられる。外国政府の顧客にハードウェアを買わせたあとで、無制限にソフトウェアのアップデート費用を毟る合法スキームを、彼らは完成してしまった。

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 Joseph Trevithick 記者による2022-12-9記事「Russian Su-35s Could Soon Be Delivered To Iran, Pilots Trained Last Spring」。
   イランがロシアから「スホイ35」を来年の春に調達するのは確実だ。イラン人パイロットの飛行訓練を、来年春からロシア国内で開始するという。

 ※そのチップはどこから入手するんだよ? また真空管に戻すか?

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 Defense Express の2022-12-10記事「India Purchased French Carrier-Based Rafale M Fighters Instead of russia’s MiG-29K」。
  インド政府は26機買うことを決めた。フランスのダッソー社製「ラファールM」艦上戦闘機を。

 「マルチロール母艦搭載戦闘機」、略して「MRCBF」を、インド海軍は探し求めていた。候補としては、F/A-18 スーパーホーネットと「ミグ29K」も挙がっていた。

 ラファールMは、ミグ29Kより小型である。

 ※イタリアやトルコはもう無人機空母の建造に動き出している。インドはパキ相手に有人機+空母で買った勝利体験があるから、この古い路線からのがれられない。日本も同じだね。

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 Rojoef Manuel 記者による2022-12-9記事「Japan to Replace Armored Personnel Carriers With Patria’s Modular Vehicles」。
   AMVとは、「装甲モジュラー車両」の略号である。

 フィンランド企業のパトリア社が日本国内の工場で製造する。
 AMVの系列を採用するのは、日本が9ヵ国目である。

 パトリア社は、2018年から、日本の次期装輪APCに関して、日本と協働してきた。日本国内に支社を置いて。

 日本側にパトリア社の技術を移す、ライセンス交渉がこれから始まる。

 ※雑報によるとモロッコが初めて対ウクライナ武器支援に乗り出す。数十両の古いT-72を放出する見込み。

 ※ある考古学者がこんなことを書いている(ラクダの本の冒頭に引用されていた)。古代中東で製造されて遠くシナまで波及した、2頭曳き~4頭曳きのチャリオット。土地がよほど平滑でしかも無植生でもなければ、こうした多頭曳きの「戦車」は使いづらいものだ。むしろ1頭曳きを工夫した方が現実の役に立ったはずである。しかし古代人は敢てそうはしなかった。なぜか? かれらはまず、リアルのチャリオットに先立って、「神の勇姿」として、多頭曳き戦車のイメージを確立してしまっていたのだ。地上の王たちは、是が非でもその神の姿に似せて行かないと、どうにも権威が伴わぬように思われたわけである。……いやこの話、現代にもあるでしょう。MBTとか有人艦上戦闘機とか、こだわる必要がどこにあるんですかい?


どなたか Richard W. Bulliet 著『The camel and the wheel』(1975)の古本をめぐんでくださらないだろうか? その後のペーパーバック版でも可。

 あと、Jean Fitzpatrick 著『The Bicycle in Wartime』(1998)の古本もおねげえしますだ。ただしこっちは必須ではねえ。ベトナム戦争中の自転車兵站に関しては、英文サイトの公開記事だけでもかなり真相に迫れますで……。念を入れて確認をしたいだけなんで……。

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 Tanmay Kadam 記者による2022-12-9記事「US Equips Ukraine With ‘Fake’ Missile Defense Systems To Confuse Russian Fighter Pilots & Suppress Air Raids」。
    米国がウクライナに一風変わった電子戦装備を供与している。SAMの偽レーダー波を輻射する装置だ。トラックで牽引する。

 ロシア空軍機は、ウクライナ軍がS-300やBuk-M1をもっているうちは、高度4500m以上は飛べない。しかし低空を飛び続けるということは、こんどはMANPADSの餌食に、いつなるかしれぬということである。

 その中高度~高々度用のSAMをウクライナ軍が発射するペースが落ちている。残弾が少なくなってきたからだ。これは放置するとマズイ。

 宇軍はS-300のラーンチャーをすでに36基、爆砕されてしまった。これはオリックスによる確認カウントだから、実数はもっと多いはずだ。

 7月に観測されたところでは、宇軍は週に3基または4基のS-300ラーンチャーをやられている。

 ウクライナはS-300を国内生産しておらず、いまはストックをひたすら食い潰している状況。
 誰かに補給してもらわねばならない。

 「S-300」がそこにあるかのように見せかけられる、フェイクの対空レーダー(脅威エミッター)を米国がウクライナに供給しているという特だねは、『エビエーションウィーク』が12-4に報じた。

 ノースロップグラマン社は「ジョイント脅威エミッター」なる製品を作って、空軍に納めている。
 指揮所装置はトレーラーに載っているので、それをトラックで牽引して移動展開させる。

 この1つの指揮所装置から、12個のエミッター装置を統制できる。
 1個のエミッター装置は、同時に6種類の既知のレーダー製品に擬態することも可能という。

 「脅威エミッター」がうまく機能していると、飛んできたロシア空軍のパイロットには、地上に有力なウクライナ軍のSAM基地群が健在であるとしか思えなくなる。そんな空域に敢て接近はしがたくなるのである。

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 Defense Express の2022-12-9記事「Tu-22M3 Vanished From russian Airfields After the Explosion on Dyagilevo Air Base (Photo)」。
    ディヤギレヴォ空港に10機いたはずの「ツポレフ22M3 バックファイアー」が、基地を逃げ出したことが民間衛星写真で確認できる。先日12-7の無人機特攻におそれをなしたのだ。

 尾翼とテールを損傷した1機も消えた。あの状態で飛んだのである。すげえ。

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 David Brennan 記者による2022-12-8記事「It’s Time For NATO To Give Ukraine Tanks, Long-Range Missiles: Estonia FM」。
 エストニアの外相が呼びかけている。NATOは西側製のMBTと長距離ミサイルをウクライナに供与して、はやく勝利させなくてはダメだと。

 ※雑報によると、宇軍はイタリアから120ミリ重迫を貰って、それをもう前線で使っている。ロケットアシスト弾だと13kmも飛ぶという。

 ※「スカイ・ワイパー」というドローン・ジャマー。兵隊が一人で操作できる電子機材。露軍の「Mavic 3」をじっさいに地表に着地させてしまう動画がSNSに出ている。

 ※スロヴァキアは無人地雷処理車両を2両、ウクライナに寄贈した。なんと5000mも離れた場所からリモコンできる。

 ※ドイツはこんどは「RC-155」という最新鋭の装輪式十五榴を18両、寄贈するという。これは8×8の「ボクサー」装甲車の車体に、PzH2000のターレットをのっけたもの。走りながら射撃ができるとフカしている。

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 Defense Express の2022-12-9記事「russians Use MiG-31 Aircraft With R-37 Missiles Against Ukraine’s Aircraft, But Ukrainian Pilots Know How to Evade the Threat (Video)」。
   ウクライナは「ミグ29」の英雄パイロットのインタビュービデオを公表した。5機の「シャヘド136」を10-12に撃墜したものの、そのさい破片がコクピットを直撃してしまい、自機もやられてしまった。

 この少佐いわく、露軍の「ミグ31BM」が、しばしば長射程のAAMを放ってくるが、回避するのは簡単だという。

 ※モーターはすでに切れていて、上空から惰性で落下してくるだけなので、こっちが大きく機動すると、もはや追随しては来られない。余談だがカモフ52を撃墜したS-300の命中動画も、斜め上から降って来た感じだね。

 ロシアの宣伝では、「R-37M」という超射程AAMは、NATOのAWACSと空中給油機を攻撃するために開発され、射距離が400kmもあるというのだが、この少佐いわく、それはプロパガンダにすぎない、と。

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 ストラテジーペイジの2022-12-9記事。
  11月2日に伝えられたこと。中共からナイジェリアに輸出した「VT4」という戦車に、ユーザーの戦車兵たちがクレームを付けている。別名「MBT3000」。

 戦闘中、125粍砲弾を装填して発射するまでに30分もかかった――そうだ。

 訓練もなければ、整備もしない。それがナイジェリア軍だが、「VT4」は基本、T-72の派生バージョンなので、ウクライナの実情を見て戦車兵たちが不安を覚えるのはあたりまえだろう。

 ちなみに「VT1」は別名「MBT2000」。中共では90式戦車とも称するが中共軍では採用していない。
 中共軍が使っているのは、重さ54トンの「99式戦車」である。T-72の国産型で2001年からある。

 2011年に、4トン重い改良型が採用された。それら99式はぜんぶで1200両ほど現役。

 T-72と同格の中共戦車はぜんぶで2500両あるはず。そしてT-54/55同格の古い戦車は3500両ほどあるはず。

 ※露軍はウクライナで2-24いらい、すでに900両のT-72系を破壊された他、550両が戦場に遺棄されて宇軍に奪われている。

 ※いまベトナムでささやかな兵器展示即売会をやっているそうだ。とうぜん、米国はベトナムに152ミリ砲弾や155ミリ砲弾を安く製造させて大量に買い付けるオプションを模索しているはず。何の報道もないがゆえに、目が離せないぜ。このビジネスが拡大すれば、ベトナム経済は「技能研修生」など送り出す必要はなくなる。

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 Valerie Insinna 記者による2022-12-8記事「Congress protects F-22s from retirement, oks sending some A-10s to the boneyard」。
   FY2023にて21機の「A-10」をボーンヤード送りにすることを、連邦議会が初めて承認した。
 まずインディアナ州兵空軍(フォートウェイン)のスコードロンが、A-10からF-16に切り替えられる。

 他方で、上下両院は、空軍が33機の最も古いF-22(ブロック20)をモスボールしたがっているのを禁ずる。

 空軍の言い分では、この古いF-22は戦闘に投入できるコンディションではすでになく、今後8年間で18億ドルもの無駄な整備費が税金から支出されることになりますぜ。

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 Jedrzej Graf 記者による2022-12-9記事「Korea or Nothing. The Only and Last Chance to Boost the Polish Industry [COMMENTARY]」。
   もともとポーランドは「レオパルト2PL」を国内生産する計画だった。それは2021年には生産開始されているはずだったが、遅れに遅れ、いまの見込みでは2027年にならないと生産開始できない。
 これではヨッパライの平凡爺さんが支配する気違い隣国からのヤケクソ攻撃の切迫に対応ができない。

 そこで物事の決定が早い韓国製の導入を決めた。需要と供給がマッチした。

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 Boyko Nikolov 記者による2022-12-9記事「Japan begins production of Patria AMVXP 8×8, replacing Type-96」。
    小松のAFV事業撤退により、「96式装輪装甲車」の後継8×8IFVは、フィンランドのパトリアAMVXPに決まった。これはパトリア社が公式発表した。

 パトリアAMVは2004からフィンランド軍が使っている。フィン軍によってアフガニスタンに持ち込まれていた他、サウジ軍が買ったものが対イエメン作戦でも使われている。すなわちコンバットプルーフが完全に済んでいる。折紙付きだから安心できる。

 陸自はパトリアに次のような注文をしたという。105mm砲や120ミリ重迫を搭載しようと思えばできること。また、パワートレインは日本で勝手に選択するから。

 基本、AMVには、3種類のディーゼルエンジンが用意されている。「DI 12 スカニア」か「DC 12 スカニア」か「DC 13 スカニア」。弱いやつは480馬力。強いやつは600馬力だ。

 AMVXPは路上では時速100km出せる。10km/時で浮航もできる。満タン燃料にて600kmから1000km走れる。

 完成品輸入ではなく、ライセンス生産になるようだ。

 ※バルセロナにあるニッサンの巨大工場で、8×8IFVの「ドラゴン」を生産してスペイン軍が調達するという報道が2021-12にあったのだが、続報は聞かぬ。