『武器が語る日本史』よりもテキスト量が多い、18禁新作官能小説(未発表)『ああいう夏(Are you nuts?)《第一部》』の梗概。

 ちょっと雑談をします。
 
 これまでずっとやってきた軍事系の著述は、私の意識の中では「おおやけ=日本国」への奉仕に近かった。
 私以外にそれを適切に書ける者がいるのかという心配も一方にあって、かつまた、どうしてもチャレンジしたいと思うテーマも複数ありました。
 次々に、その取り組みに、追われて来ました。
 しかし、2019年に『武器が語る日本史』を出したことで、ひと区切りついたと思いました。

 もう59歳にもなるんだから、あとは成人向けの面白小説を書いて暮らしても、うしろめたいとは思いません。唐の玄宗皇帝は若いときはまじめに政治をやっていたけど、壮年以降にとつぜん、それが馬鹿々々しくなった。たぶん、じぶんの投げかける議論に誰も乗ってこなかったからじゃないかな。

 わたしの実父は69歳で病死しています。川端も三島も、晩年の数年間はロクな業績がありません。このふたりとも自殺してますけど、あきらかに、「書けなくなったから死にたくなった」のです(三島については江藤淳がそう言っていた)。その江藤も66で自殺しましたが、やはりその1年以上前から脳機能の衰えを自覚したと思しい(ウィキペディアには手首を切ったとか書いてありますが大嘘で、酒の力を借りて入浴中に意図的に溺死したのです)。

 そこを考えましたら、来年還暦のわたしの頭が調子よく働くのも、おそらくこれから、たったの数年間しかないのでしょう。
 たった数年の、限られた、与えられた時間を、いちばん有意義に、使いたい。

 それは官能小説の分野だと、じぶんで分かった。

 伊能忠敬じゃないが、家業はもうキッチリと果たし了えたんだから、晩年の余生はじぶんの好きな趣味に走らせてくれるとありがたい。福澤諭吉は一身にして二世を生きた。運がよければ、私は一世のうちに二身を体験できるかもしれないと思う。59歳で別人に生まれ変われるとしたら、さぞ愉快でしょう。

 ところで、人の性的な好みは千差万別です。これはインターネットでエロマンガを1000ファイルくらいも閲覧したら誰でも認めざるを得ませんよね。いやしくもクリエイターなら、市場の万人を満足させる表現方式や作風はどこにも存在しないとも知っています。したがいまして、この表現分野で、「あれは良いが、これは悪い」などと、じぶんの「好き嫌い」の議論を展開することぐらい無益なことはない。

 もちろん私はじぶんの表現の中で「これだけはしない/これは必ずこだわろう」という個人的な嗜好とマイ・ルールを保持します。が、それについて誰かに詳しく説明しようとは思いません。作品をいっぺん通読すれば、おのずと見透かされることなのです。

 こんど投稿したのは、英ドラの『ヒューマンズ』みたいなロボットの話じゃありません。
 私のノンフィクション系の既著を読んでくださっている方々にはその理由はおわかりの筈。「好き/嫌い」ではなしに、それは「成り立たない」からです。人類がロボットと物理的なセックスをするようなステージなど非常に短期間で終わってしまって、その先には、脳内だけでセックス体験を完結させるようになるに決まっていると私は思っています。

 既著の『米中「AI大戦」』(2018)の中で、アンリ・ベルクソンの『物質と記憶』を引用しました。ヒトのような「身体」と神経によって結合されず、したがって「身体」によって感覚を限定されることのないAIは、そもそも夢と現実の区別がじぶんでは付けられないはずなので、人類を支配するどころじゃないんです。また、人類自身が必然的にVRセックスに向かって人類はじぶんから滅亡するという話は『AI戦争論』(2018)の中でしましたよね。これは、われわれが「宇宙人」を目にすることがなぜないのかのじゅうぶんな説明にもなっていると思いますよ。

 ……という長い余談を、意図的にワンクッション置いたうえで、以下に、梗概をお見せしようと思いますが、あらためてご注意!
 18禁世界に近づきたくない方は、この続きは読まないほうがよいですよ。

▼梗概
 Fラン女子大生エイコは、親の事故死によって人生暗転するかと思われたが、街頭で《ふぇらてぃお・ふぁいなんす》のフェラリーダー、エミから声をかけられる。
 この謎の非認定NPO法人は、まじめなのに幸薄い20代女性に《時間》を貸すという。
 特殊な電動車イスに乗った少年のような代表《烈東人》と誓約をかわし、《レトロ・フィード》を体内に受けたエイコは、JDの頭脳のまま高校1年生の肉体に戻されて、帰国子女の多いお嬢様高校に編入し、3年以内の女子高生起業家をめざす。
 彼女たちフェラメイトは、烈東人のオーラルオフィスからの《呼び出しフェラ》には、いつでも応じなければならない。学資も生活費も心配はいらないが、中味がJDであることを隠すために、親友だけはつくれないのだった。
 そんなある日、同じ学年のハーフ美少女キミコが、エイコとほぼ同期のフェラメイトであったと分かり、エイコとキミコは《フェラ友》になる。
 じつはキミコは、中央公安局《レイプ特捜課》から送り込まれた潜入捜査員だった。
 特捜課主任のミツコは、平成××年にS県で起きた、常習的暴行魔による連続輪姦事件の主犯が、今の烈東人ではないかと疑っていた。そのとき無慚にレイプされた最初の女子中学生が、じつはキミコなのだった。
 烈東人とキミコの間には、奇妙な精神の交感が生じたことをエイコは目撃する。エイコとエミ、さらに最高管理職の《女子事務員》にして烈東人の一夜妻でもあるリョウコらは協働して、ついに、かつて烈東人がキミコと同世代の女子中学生であったことをつきとめる。
 烈東人を性転換手術したのは、今は《ふぇらてぃお・ふぁいなんす》の保健師となっている、ひきこもり女医のマリ博士だった。
 マリ博士は、平成××年の第2のレイプ事件に遭遇し、カミナリに打たれて女性機能を失った患者《L´》を救命した。そしてMTF(身体的特性が女性なのに心は男性)であった本人の希望を叶えて、特殊な陰茎形成術をほどこしたのだった。
 うまれかわった烈東人は、粘膜性交によって取得したある女子の遺伝子ゲノムを保管し、射精によって別な女子の遺伝子損傷を修復することができる媒介者の役割が果たせる存在となっていた。だから烈東人と性交し続ける女子は、肉体が老化しないのだ。
 ミツコの部下たちによって誘拐され、性的拷問を受けそうになったリョウコは、エイコらの助けも得て、逆に、真犯人の死体が消えてしまった謎を、事件現場の《玄門村》に臨場して解明する。こうして烈東人に対する中央公安局の嫌疑は最終的に晴れ、烈東人はLGBTとして8年間片思いしていたキミコと深く結ばれた。だがそのとき、エイコの身には、大変なことが起きていた……。