「あぶく」そのものを「機雷」にする新案があり得る。

 Martin Pengelly 記者による2020-6-21記事「Trump adviser Navarro blasts John Bolton’s ‘silly’ China claim」。
    ボルトンの暴露本『それが起きた執務室』の中で、トランプが習近平に再選支援を頼んだ、とか書いている。

 「そんなの聞いたことがない」と、大統領の現役貿易補佐官のピーター・ナヴァロが断言。「私はその執務室にいたけどね」

 ボルトンは2018-4から2019-9まで、大統領の安全保障担当補佐官だった。その間に大統領執務室で見たこと聞いたことをメモしており、それに基づいて暴露本を出した。

 トランプ陣営はこの本の出版をさしとめられなかったが、そこからボルトンが得る収益はすべて没収してやるという民事訴訟を起こしている。

 ナヴァロはCNNのインタビュー番組の中で、ボルトンが縦縞スーツを囚人服に着替えるときが来ると吼えた。

 習近平と大統領の会話の内容は、基本的に直接引用だが、国家安全保障上の観点から、出版にさしつかえない形に修正されている、とボルトンは書いている。

 『ヴァニティ・フェアー』誌はこう報道している。2019に日本で開かれたG20のディナーの席上、トランプは習近平にこう語ったと。「俺が選挙に確実に勝てるようにしてくれ。どの道、俺は再選はされるだろうが、米国の農民をがっかりさせないでくれ。そっちが大豆と小麦を大量に輸入してくれれば、再選確実になるんだ」。

 ナヴァロは言う。トランプは歴代大統領の中で最もタフに中共の不公正な貿易流儀を攻撃している大統領だ。ボルトンの対大統領攻撃は、だから、馬鹿々々しい。

 しかしボルトンは、トランプから習へのこのような要求は、公職にある者として法的に弾劾されても仕方のないものだという。それは、ウクライナ政府にバイデンのあら捜しをさせるよりも悪い、と。

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 ストラテジーペイジの2020-6-21記事。
   IRGC(イラン革命防衛隊)は、あらたに112隻の武装スピードボートを調達した。
 主力は『ゾルファカー』『ヘイダー』『ミーアド』の三タイプ。

 『ゾルファカー』ボートは、時速120kmで航走できる。しかも「ナスト1」対艦ミサイルを2発、搭載できる。このミサイルは1発の全重が350kgである。それを、全長16.3mの小型高速艇に無理に積んでいる。

 中共製ミサイルをコピーした「ナスト1」は、固体ロケット・モーターで、射程35km。弾頭シーカーはアクティヴ・レーダーだ。

 ここから考えて、『ゾルファカー』は15km先の大型タンカーを発見して、「ナスト1」を発射し、すぐUターンして逃げることができるだろう。
 ミサイルは1分しないで、タンカーに命中するはずだ。

 しかし100kgの炸薬がタンカーの上構を損傷させ、火災が起きても、巨大タンカーが沈むことはないし、おそらく航行がストップすることもない。
 巨大タンカーの「不沈」ぶりは、1980年代のペルシャ湾の「タンカー・ウォー」以来、幾度となく証明されている。機雷でもミサイルでも、沈められないのだ。

 『ゾルファカー』から「ナスト1」が試射/実射されたことはない。だから、本当に運用できるかどうかも分からない。

 『ゾルファカー』は、イギリス製の定評ある高速艇『ブレードランナー』型(16トン)をイランでコピーしているものである。
 2010年にイランは『ブレードランナー51』を1隻密輸入して、そこから『セラジ1』型と『ゾルファカー』系列をつくりだした。『ゾルファカー』には2門の12.7ミリ機関銃などが据えられた。

 イランはいま、紅海でシーア派ゲリラに使わせるための、無線操縦無人特攻ボートの技術を、提供している。
 IRGC(イラン革命防衛隊)とイラン正規軍の海軍が保有し運用する小型スピード艇はぜんぶで1500艘くらいある。予算はIRGC(イラン革命防衛隊)の方がずっと豊富で、正規海軍はカネがない。

 IRGC(イラン革命防衛隊)の保有する武装小型高速艇(100トン~200トン)は40隻ほどある。魚雷艇サイズだ。
 それよりも小さな舟艇なら、1000艘以上ある。船外機と、機関銃×1といったレベルだが。

 棲み分けがある。ペルシャ湾からオマーン湾までの海面は、IRGC(イラン革命防衛隊)の海上部隊が仕切っている。インド洋沿岸と、カスピ海は、イラン正規軍海軍が担当している。

 ※ペルシャ湾の主要航路帯の水深80mというところが微妙なのだ。この深さだと、ふつうの沈底機雷では、効果ゼロ。まして今の世代のタンカーは二重底・三重底なので。繋維機雷にすれば外鈑に破孔ぐらいはできるだろうが、油槽には区画があるから、漏出も最小限で済んでしまう。そして繋維機雷は浮力を稼ぐための容積も必要なため、沈底機雷よりも炸薬量は減ってしまう。おそらくブレークスルーは、沈底機雷の罐体から「バブル」を噴出させて、その「泡」の中味が、「酸化剤ガス+サーモバリック成分ガス」になっていて、混合から10秒くらいで自爆するという新システムではないかと空想する。

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 ストラテジーペイジの2020-6-20記事。
  イスラエルの地対地戦術長距離ミサイルのLORAとATACMSの関係について。

 5月にイスラエルは地中海上で短距離弾道兵器の実射テストを行なった。
 複数、発射されたうち、2つは、LORA (Long Range Artillery Rocket) であった。ロケットと名がついているが、INSで中間自律誘導し、GPSで終末誘導される。
 最大で400km飛ぶ。
 アゼルバイジャンには、輸出されている実績あり。

 イスラエルは米国供与のATACMSを参考にして2007年からLORAを開発した。だから直径が610ミリで、同じ。部隊配備は2018年である。

 LORAの全重は1.8トン。弾頭重量は400kgから600kgまで幅がある。
 通常、レンジは300km。特別に軽い弾頭にすると400kmまで飛ぶ。

 LORAの弾頭にはテレビカメラを付加することもできる。本当に目標に当たったかどうか、電送されてきた映像を見て、射ったそばからすぐ確認できるのだ。

 2017年以降、イスラエルは、貨物船のありふれたコンテナからも、LORAを発射できるようにした。
 テストは、そのコンテナを搭載したトラックを、まるごと貨物船の最上甲板に載せて、実施された。

 このトラックは2台必要である。
 1台のトラックにはLORAが4発、入っている。発射するときは非油圧の電気モーターで仰角をかける。ある方法により、貨物船の甲板が火熱で傷むことはないという。

 もう1台のトラックのコンテナには、発射管制装置や予備部品が収められている。
 発射用の複数のトラックを、1台の管制装置で管制してもよい。大きな貨物船の甲板なら、それが可能になる。
 コンテナに封入したLORAは、5年に一度、点検するだけでいい。

 ※陸自の地対艦誘導弾も、チューブ状のランチャーが上空から目立ちすぎるので、6本全体を、薄いアルミパネル(波板)で覆って、移動走行中は、衛星写真では輸送用トラックと区別がつかぬようにするべきである。