米軍のレーションはさらに進化して軽量になったという。

  Mandy Mayfield 記者による2020-10-27記事「JUST IN: GM Defense Delivers First Infantry Squad Vehicles to Army」。
    「GMディフェンス」社が、米陸軍から注文されていた4×4の歩兵分隊機動車「ISV」のファースト・バッチ、4台を納品した。

 あらゆる地形で9名の乗員を運搬する。
 ベース車体は「シヴォレー・コロラド ZR2」中型トラックである。パーツの9割は民間仕様の転用。
 ただし側面ドアはなく、前方ウインドウは下半分しかない。屋根はロールバー+防護ネットのみ。
 軽いのでUH-60でスリング吊下できるし、小さいのでチヌーク機内にも自走で収容できる。そのかわり、ほぼ、無防備。

 こんかいは3社の競争試作となったが、過去の新装備の採用過程があまりに時間がかかりすぎていたとの反省から、手順を高度に迅速化した。3社指名が2019の話。1社決定が2020-6、納車が10月という早業になった。

 量産拠点は最終的にはノースカロライナのムーアズヴィィル工場になる。今後8年間に2000台強を製造することになるかも。

 「GMディフェンス」部門は2003年にジェネラルダイナミクス社へ売却されていたが、親会社が2017にまた復活させたのである。

 ※どうせまた日本の自動車メーカーは「これはチャンス!」「HMMWVに続く柳の下の泥鰌ハケーン」と思って《そっくり装備》の大綱組み込みを画策するのだと思うが、乱暴に乗り回すこと前提の車両づくりではトヨタすら米国企業にはかなわないということが、水害に弱いHMMWVもどきで証明されていると思うので、こいつは輸入で行くと決めて米国次期政権への手土産にするべきだと私は愚考する。

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 Caleb Larson 記者による2020-10-23記事「The Worst British Tank of the Second World War」。
      第二次大戦中、英陸軍は、最小の全重で、じゅうぶんに重装甲な戦車をつくれないかと思った。結果、できあがったのが「ヴァリアント」戦車だった。

 車体正面の装甲厚は当時としては厚い114ミリ。
 犠牲にしたのは車体下のクリアランスで、9インチしかなく、オフロード機動にはさしつかえる低さであった。

 備砲は6ポンド速射砲(57ミリ)。ドイツ軍戦車相手にはちょっと不足であった。

 車体全体を小さくした皺寄せはエンジンに。なんと210馬力しか出ないものだった。ちなみに米軍のM4シャーマンは、非力なタイプでも375馬力。高馬力タイプだと450馬力のエンジンを積んだものである。

 結果、「ヴァリアント」は舗装路上でも時速15マイルがせいぜいだった。
 敵陣に向かってノロノロ進む戦車のすぐ後ろを歩兵がついて行く、という《歩兵の盾》用法を想定していたので、それでよしとされたのだ。ロードクリアランスが少ないのも、《盾》になるには隙間が小さい方がよいからである。

 操向メカニズムも悪かった。ステアリングのためには操縦手の全力が必要であった。

 なによりタイミングが悪かった。「ヴァリアント」は試作1両が作られたのみで、計画を凍結された。

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 Joe Varner 記者による2020-10-27記事「Swarms Over Kavkaz」。
    先月になされた露軍の大演習「カフカズ2020」で注目したいこと。
 露軍もUAVをスウォーム運用するようになった。
 「フォーポスト」「オルラン10」「エレロン3」の三機種がすくなくも確認できた。
 「Forpost」はイスラエル製の「サーチャー」のライセンス品らしい。

 「オルラン10」にはもう5タイプぐらいある。
 「Eleron-3」は専ら偵察・指揮通信用である。

 これら無人機は高度100mから5000mまで展開し、敵第一線のずっと後方まで偵察した。
 「攻撃型無人機」としての運用はこの演習では観察されなかった。

 ウクライナ戦線での露軍のUAV運用は、あきらかに、多連装ロケット砲の「スメルチ」「ウラガン」のためのFO機能に特化している。
 2014-6のゼレノピリャ戦線では、この空地コンビのためにウクライナ軍の数個歩兵大隊が、数分間にして全滅させられている。攻撃準備のため旅団を集合させている段階で敵のUAVから発見され、先制的にロケット弾を雨下させられたのだ。

 ※数号前の『朝雲』新聞で新刊紹介されていた『自衛隊最強の部隊へ』シリーズのFTC対抗部隊編を読んでみて、衝撃と焦燥を覚えた。衝撃というのは、三十年以上前にPXで買って営内で読んでいた武岡淳彦著『小部隊の戦術』(S48)の中で、「〔演習で〕このように正面からの攻撃ばかりやっていると実戦に臨んでも敵にぶつかった場合には心手期せずしてそれが恰[あたか]も当然かのように正面から攻撃して何ら疑念を感じないようになるものである」(p.66)と指摘されていることが2004年頃でもまだ直ってないと確認できたからである。ガダルカナルでは何が起きたのかを想像させてくれる指摘だった。焦燥というのは、対抗部隊(甲)がなんでドローンを1機も飛ばさないのかということ。これは次に書く本の中で解説しようと思っているが、リビアではトルコのバイラクターと中共のCH-3(UAEがハフター派に提供している)が2019年後半から無人機空襲の応酬をするようになっており、ナゴルノカラバフではそれがもっと進化しつつある。未来の敵軍を再現すべきFTCが昭和の博物館では、どうしようもないではないか?



自衛隊最強の部隊へ-FTC対抗部隊編: 無敗の最強部隊を殲滅せよ!


軍学考 (中公叢書)