ドック入りした軍艦には、修繕工事が終わるまでの毎晩、水兵数十人からなる夜間巡視隊をして各層デッキ内くまなく巡邏せしめるべきではないか。

 万一の火災を小火のうちに発見・消火できる態勢を維持すべきことの緊要たることが証明されているのだ。
 その人手が足りないなら、近くの陸自駐屯地から応援を出すべきではないか。

 次。
 Jim Golby 記者による2020-12-7記事「Sorry, Gen. Lloyd Austin. A Recently Retired General Should Not Be Secretary of Defense.」。
    ※記者は、バイデンとペンスの特別アドバイザーである。

 ペンタゴンは文民が仕切るべきであり、その一点で、オースティン大将の起用は不適切である。
 1947の国家安全保障法により、正規将校が現役を退いてから10年経たなければ国防総省の長官にはなれないと決められた。1950にトルーマン大統領はジョージ・マーシャル元帥を国防長官にするためこの例外を上院に求めた。
 2008年に連邦議会は、この10年ルールを7年に短縮した。
 しかしトランプ大統領がマティスを起用しようとしたとき、この7年ルールも破られた。
 こんどやれば3例目となる。

 1950のときは上院議員のハリー・ケイン(ワシントン州選出)が例外承認に反対した。ペンタゴン内部の人々となじみでありすぎるのがいけないというのが彼の考えだった。ちなみにマーシャルは退役後に国務長官をやっており、国務長官にはこの「10年ルール」は関係なかった。

 ※すでに朝鮮で独断命令を出しまくっていたマッカーサーを統御するためにこそ、トルーマンはマッカーサーより陸軍の古参(ただし参謀総長になったのはマックもより遅い)で、政府の仕事を十分理解していたマーシャル元帥をペンタゴンのトップに据える必要がどうしてもあり、上院もそれには納得していたと思われる。しかしこの記者はぜんぜんそう考えていない。

 ケインの心配は正当化されるだろう。トルーマンがマッカーサーを解任しようとしたとき、マーシャルはそれを阻止しようとし、けっきょく、しぶしぶ従ったのだ。

 ※マーシャルはフィリピン防衛に関してマックとは気脈を深く通じていた。B-17があれば日本軍は比島に手出しできないと信じていた点で、マックと同じくらい軍事的な不適任性を証明しているのだ。マーシャルがセクデフであったのは1950-9-21から1951-9-12。9-15の仁川上陸作戦の直後から、マック解任騒ぎの本国議会でのカタがつくまで、起用されたわけだ。

 記者の見解。現役軍人を統御するために、古参軍人を起用すればいいという考えが間違っていることは、マック対策としてマーシャルを起用したトルーマン時代に証明されているのだ。

 この理由により記者は、オースティンであれ誰であれ、退役して数年しか経っていない元将官をセクデフに起用すべきではないと信ずる。

 次。
 Thomas Joscelyn 記者による記事「Joe Biden’s Curious Defense of Gen. Lloyd Austin」。
   オースティン大将のセクデフ起用方針を擁護する記事が『The Atlantic』に出ている。バイデン陣営の主張だ。それによるとオースティンは2011年にイラクから15万人の米軍将兵を撤収させたから偉いのだという。
 反論する。

 ひとつ。米国の軍事史では、整然たる撤収作業を、軍人の偉業だとは看做さない。
 ふたつめ。オバマ政権がイラクから米軍を撤収させたからISがのさばった。つまりあの撤収は間違っていた。

 三番目。バイデンは寄稿の中で中共に一言も触れていない。オースティンも中共のことは何も知らない。不適任である。

 次。
 Eliot A. Cohen記者による2020-12-8記事「This Is No Job for a General」。
   記者は2017-1-10に上院軍事委員会に政府側の証人として出席し、マケイン議員らからの質問に答えた。
 そのときは民主党側からの証人、カスリーン・ヒックスも、マティスのために「7年ルール」をまげるべきだ、と答えたものだ。

 かつてマーシャルがセクデフに起用されたとき、すでにトルーマン政権にはルイス・ジョンソンというセクデフがいたのだが、ほぼ無能で、原爆実験に成功したスターリンが朝鮮動乱を機に西欧になだれこむかもしれないという大危機に対処できる器とは思われなかったので、お役ご免となったのである。

 1917-1の上院軍事委員会で記者は説いた。マティスをセクデフにすれば、トランプ政権は、愚かな、危険な、あるいは違法な軍事行動をやらかすおそれがなくなるだろう、と。

 つまりマーシャルとマティスのケースはどちらも、国全体が必要とした人事であったといえる。

 退役将官に軍部大臣をやらせていた国としてはWWI前のドイツとWWII前の日本がある。どっちもうまくいかなかった。軍部大臣は文官の方がいいのだ。

 イスラエルの国防大臣としていちばん成功したのはベングリオンだが、彼の軍隊(旧英軍)でのランクは伍長にすぎなかった。

 今は危機の時代ではない。フロノイがダメだというなら、ジェー・ジョンソンでいいではないか。
 もしマケイン氏が生きていて、また委員会で証言を求められたら、こんどは7年ルールを守らなくてはいけません、とわたしは強く主張するであろう。



東京裁判の謎を解く―極東国際軍事裁判の基礎知識