まだまだ団。

 Zoe Schlanger 記者による2020-12-24記事「The Mink Pandemic Is No Joke」。
   オランダのミンク飼育場が武漢肺炎にやられたのは4月であった。それは6月にはデンマークに広がり、10月までには米国ユタ州に広がった。
 現在は、スペイン、イタリア、リトアニア、スウェーデン、ギリシャ、カナダにも広がっている。すなわち合計9ヵ国。

 これは不吉な趨勢だ。このままだと、ミンクとミンクの間の感染を繰り返すうちに新種の武漢肺炎ウィルスができあがり、それがミンクから人に移り、人から人へも移ることになりかねない。

 ウィスコンシン州北部にある4000人しか人が暮らしていないメドフォード市は、最大規模を誇る養ミンク城下町である。ここのミンクにもついに症状があらわれた。10月のこと。

 ミンクは呼吸器系の病気に非常に弱く、罹るとすぐに死ぬ。結核にもなりやすい。そして高速で他の個体に感染させる。
 これはイタチ科に共通で、だからフェレットは人間のウィルス性呼吸器疾患の実験材料になるのだ。

 どうしてウィスコンシンの農場がやられたかだが、感染経路は要するに、人間の陽性者が、飼育場でくしゃみをしたのだろう。時間の問題であった。こうなるのは。

 ちなみに乳牛にも新コロは感染するが、牛の体内ではウィルスの増殖がうまくいかない。だから爆発的な流行は牛農場では問題にならない。レセプターが違うわけである。人間とミンクのレセプターは相似ているのだ。

 世界最大のミンク輸出国デンマークの養殖産業は壊滅に瀕している。感染個体はすべて間引きされ、浅い土中に埋められている。おそろしい光景は、それらが地中で発酵し膨れ上がり、また地表に出てくるのである。

 農場内のミンクだけに病気がとどまっているうちは、まだ、対策の目処はつく。しかしもし、野生ミンクにこの病気が広まれば、もはや人類はお手上げだ。どこでどのように異株ができるか予想もつかない。

 米国の場合、口蹄疫が牛の間で流行して殺処分するとなったなら、農家には補償金が行政から与えられる。しかしミンク養殖業についてはこのような救済の仕組みは整備されていない。

 63匹のミンクが陽性か陰性かテストするのに3000ドル必要であった。牛ならばこれは耐えられる金額かもしれないが、ミンクの総数は桁違いだ。全頭検査が必要だとなったら、それだけでも農家は破産するだろう。
 したがって全数殺処分しかない。飼料も糞便も、完全に土に埋めなくてはいけない。

 じつは欧州では、毛皮のために動物を養殖することは禁じようという流れがかなり前からあった。それが今回の一件で加速する。
 たとえばオランダ政府は2021年にミンク養殖を禁ずるとアナウンスした。武漢肺炎の前から、2020年代にミンク養殖を禁ずることは決まっていたのだが、そのスケジュールが前倒しされたのだ。

 フランスは2025年をもってミンク養殖を終わりにするとアナウンス。
 ポーランド政府もまちがいなく続くだろう。ミンク養殖場では「共食い」が起きているというショッキングな告発ビデオが、以前に同国内から投稿されていて、評判が悪いのだ。

 アイルランドにはミンク農場は3件しかなく、ミンク養殖の可否を問う投票でも禁止は免れていたのだが、こんどの騒ぎを承け、感染が飛び火するまえに、全頭殺処分して商売を畳んでもらうことに決まった。

 世界最大のミンク輸出産業は今日では支那にある。8000件の農場が500万匹を飼っている。デンマークのミンクが壊滅したおかげで、彼らの毛皮の値が3~5割も上がってごきげんだという。中共域内では養殖ミンクも野生ミンクも感染は皆無だとされている。

 だが専門家は、アジアの野生ミンクにはとっくに武漢肺炎はとりついていると考えられると述べている。

 12月13日、ユタ州で捕獲された野生のミンクが、テストで新コロ陽性と出た。

 ※大昔、上富良野駐屯地内で、どこかから脱走して野生化していたミンク(と、今にして思われる)を追っかけまわした記憶がまた蘇った。側溝の暗渠に隠れたので新聞紙を燃やして煙でいぶし出し、知らない部隊の物置きみたいな事務所に飛び込んだところに続いて突入した。走るスピードじたいは大したことはないのである。ただ、すばしっこい。中にいたおじさんの陸曹のひとたち(もちろん一面識もなし)と協力して取り押さえたが、戦車兵用の緑の皮手袋をしていたにもかかわらず、奴の針のように細い犬歯はそれを貫通してこっちの手の皮まで届きやがった。首のよほど上の方を押さえないと、奴らの首は180度回って反噬できるのだ。ちっこいながらもやはりあなどれぬ肉食獣であった。もちろん、すぐに逃がすしかなかったのさ。



文庫 「日本国憲法」廃棄論 (草思社文庫)