露領のブリヤンスクで石油貯蔵施設が大火災。鉄道線路も破壊されたと。同地はウクライナに近接。

 カミル・ガリーフ氏の2022-4-20記事「What to read about Russia?」。

  ロシアを深く知りたいか? だったら、これを読め――という記事なのだが、スターリンの話が面白すぎた。

 英文で読める書籍のリストについては直接にガリーフ氏のツイッターを参照されたい。

 英語にすら訳されていないディープな文献が5冊紹介されており、これが貴重。

 その筆頭の1冊が、Bazhanov が書いた『I was Stalin’s secretary』。※原題は仏語だろう。

 バザノフは1923年にスタの秘書(ポリトビューロ関係の専門)になった。1928に彼はイランへ逃亡し、そこから英領インドに入り、最終的にフランスへ。そこでスターリンの暴露本を書いている。

 バザノフは毎日十回以上も、スタの執務室に入る必要があった。
 スタは、バザノフが持ってくる文書の全部に目を通しもせず、バザノフに処置を委ねてしまうことがしばしばあった。

 ならば、スターリンはいちにち、何をしていたのか?
 部下幹部党員どうしの、有線電話の会話を、執務室において、盗聴していたのである。

 スタの部屋には4つの、ふつうの電話端末があった。
 ひとつは中央委員会に直通。
 他の3つは、クレムリン内外の幹部につながる電話だった。

 そしてもうひとつ、ふつうでない電話端末があった。それは傍聴専用の受話器で、こっちから話すことはできない。

 バザノフは、グリゴリィ・カネル(秘密警察担当秘書)から、どういう仕組みになってるのかを、聞き出した。

 かつてレーニンが、手動電話交換機室の女たちが、ソ共幹部同士の会話を簡単に傍聴できることを問題視したのだという。
 そこでレーニンがスターリンに命じ、中枢幹部80人(Vertuskha)に関しては自動交換機経由で互いに安全に交信のできる電話システムを導入させた。

 そのシステムはクレムリン内のスターリンの部屋に設置されることになった。
 システムの構築は、1人のチェコスロヴァキア人の共産党員の技師が請け負ったという。
 そのさいスタは、幹部同士の秘密の通話を、まったく気付かれずにこっそり盗み聴きできるような回路を、じぶん専用として、追加させた。「コントロール・ポスト」と称した。

 表向きは、このポストは故障箇所の発見用だと説明された。どこが悪いのかを、聞いてチェックするための回線だと。
 その端末が、スタの個人の机に、装置されたのである。

 すべてが完成したところで、カネルは秘密警察長官ヤゴダに命じて、チェコスロヴァキア人をスパイとして逮捕し、処刑させた。ヤゴダは、それは国際スキャンダルになるだろうと心配したが、スターリンも逮捕を承認した。

 バザノフは解説する。1920年代を通じ、スターリンの毎日の執務は、この秘密端末を使って、他の幹部同士の電話通話を盗聴することに、ほとんど費やされていたのだと。

 ※NSAの濫觴だね。

 ほかにも面白い話が満載だから、この1冊は、早く英訳したほうがいいだろう。

 英訳されている書籍のひとつは、こういうことを教えてくれる。いわく。トルコのナショナリズムはフランスからの輸入だが、ロシアのナショナリズムは、ドイツのコピーなのである、と。